『さすらい』
 スピッツ

 
2007年(平成19年)
 アルバム『奥田民生・カバーズ』収録曲

 浮気という感覚がなく、
 罪悪感もまったく
 ありませんでした。
 (はちみつきんかんのど飴)
まわりはさすらわぬ人ばっか 少し気になった
風の先の終わりを見ていたらこうなった
雲の形を まにうけてしまった

大学のときに、夜遅くまで大学に残って
レポートなどをしていました。
ある先生と仲良くなり、
帰りにその先生のところへ顔を出したりしていました。
いろんなことを話し合って、
ある日、先生からキスされました。
もともと学生との噂が絶えない人だったので
たまたま私がひっかかっただけだったのでしょう。
自分も初めて好きになった彼氏と
別れてさみしかったので
そのままつきあいがなんとなく始まりました。

デートの誘いはいつも向こうからでした。
泊まりがけの出張などは、こっそり同行しました。

そんなつきあいが大学卒業後もしばらく続きました。
私は彼氏がいましたが、
時間をやりくりして先生とも会い続けました。
浮気という感覚がなく、
罪悪感もまったくありませんでした。
ちょっくらスポーツジムに行ってくる
といった感じでした。
私は「すぐ恋に落ちるがすぐ冷める」タイプで、
なかなか長い深いつきあいができませんでした。
短いサイクルでの恋愛を繰り返してばかりでした。

私がある事情で日本を数年離れることになり、
そのことは先生にとくに伝えませんでした。
帰国後、大学で先生と偶然再会しました。

自分も何も思うことなく、
そのまま挨拶程度で別れました。
先生のそばには、別の女子学生がいて、
つきあっているんだとわかりました。
ああまたやってるね‥‥と思いました。

私は今、愛する旦那様と子どもと一緒に暮らしています。
初めて、付き合った後も冷めない人と巡り会えました。
ダンナ大好き病で浮気しようとまったく思いません。
ダンナの帰りが遅い日々が続くと精神的につらくなり、
泣いてしまうほどです。

数年前、先生はまた別の女子学生に手を出し、
それが大学の知れるところとなりました。
色々あったようですがまだ大学には残っているようです。

(はちみつきんかんのど飴)

純愛でもなく、かといって
完全に遊びという感じでもなく。

大学時代の、先生との恋。
「ちょっくらスポーツジムに行ってくる」
という表現が印象的です。

大学を卒業したあとも続き、
彼氏ができても終わることはなく。
ふつう、そういった恋愛は、
宿命的であるにせよ、腐れ縁的であるにせよ、
ある種の「運命」のように
語られることが多いかと思うのですが、
投稿には独特の不思議な軽さがあります。

たぶん、この、先生との不思議な関係を、
この方は「必要なことだった」と
とらえているのではないでしょうか。

形の定まらぬ雲にも、
見る瞬間には形があるように。
たとえ、どこかにたどり着くにせよ、
そこへ到達する自分であるために
「さすらう」期間が必要なように。

曲のオリジナルはもちろん奥田民生さん。
矢野顕子さんもカバーされています。
スピッツによるカバーバージョンは
今年発売されたスピッツの特別アルバム、
『おるたな』にも収録されています。

「さすらい」の2番にこんな歌詞があります。

 胸のすきまに 入り込まれてしまった
 誰のための 道しるべなんだった
 それを もしも 無視したらどうなった

この曲を思い浮かべながら
(はちみつきんかんのど飴)さんの投稿を読むと
なぜだかしっくりきます。
当時の、というよりも
いま、振り返ってのBGMな感じがして。
いまのダンナ様へのラブと
当時を振り返る冷めた目が、クール。
そこに「さすらい」がぴったり来るんですね。

しっかし、懲りない男。
それでも生き延びてるだけの
タフさがあるんですねえ。
こういう男性からの恋歌の投稿も
読んでみたい気がします。

スピッツの『さすらい』を今回はじめて聴きました。
ずっとスピッツファンをやっていますが、
どういうわけかこの演奏は聴いていませんでした。
奥田民生さんの『さすらい』とくらべると、
草野マサムネさんが歌うそれは、
より甘く切なく、それでいてのびやかで、
民生さんとは別な場所を
さすらっているような気がしました。

(はちみつきんかんのど飴)さんの投稿には、
直接この曲が登場してはいません。
このアルバムのリリース年を考えても、
先生とおつきあいしていた頃に流れていた
思い出の一曲ではないはずです。
つまりは、たぶん、
その思い出の「テーマソング」なのかな思いました。
先生との記憶は、
スピッツが奏でるような『さすらい』だったのかな、と。

ぼく自身の感想としては、
前半の思い出に、とても乾いた印象を持ちました。
正直に言えば‥‥
リアルではあるけれどなかなか感情移入できないまま
前半を読み進めていました。
淡々と正直に書いてくださっている‥‥。
果たしてこのドライな空気ままで、
物語はさみしい結末へと向かっていくの‥‥?
そんな余計な心配をしながら読んでいました。

でも‥‥
ご覧のように、湿度たっぷりの結末になりました。
あー、よかったぁ。
「ダンナの帰りが遅いと泣いちゃう」だなんて、
前半のキャラクターからはほど遠いです!
あー、よかったぁ。

適度な湿り気のある
豊かな大地に根ざした情愛が現在にあるから、
あのころの『さすらい』を振り返られるのでしょう。

最後にひとつだけ書かせてください。
この投稿だけでその方のすべてをどうこうは言えませんが、
「先生」に関しては、やれやれと思います。

すぐに恋に落ちるがすぐに冷め、
彼氏がいても先生とも会い続け、
ちょっくらスポーツジムに行ってくる感じ、
だったのに、
いま「ダンナ大好き病」になったのは
いったいどうしたことでしょうねぇ。
不思議だー、不思議だ不思議だー。
でも、ああ、そうです、さすらいです。
先生は、ダンナさまに会うための
道しるべだったのかもしれない。

人生にはいろいろ登場人物がいるけど
恋愛関係者は、自分の気持ちを中心に
進展させたり停滞させたり軽く扱おうとしたり
「どーにもならんわ!」てなことも起こるから
なんだか深く残ります。
このさすらいの道は
自分しか知らない恋の道です。
友人とか知り合いも大切だけど、
悔しいが、影の濃さがちがうもの。

あんときゃわかってなかったな、とか
出張にこっそり同行なんて
あんがい一所懸命だったんだ、とか
振り返ったときにしかわからない道の跡も
いろいろいろいろあるはずです。

みなさんの恋の道のお話、歌に乗せて
ぜひ投稿してくださいね。
お待ちしています。

しかし‥‥学生との噂が絶えない先生、
いったいどんな人なのかな。
ものかげから見てみたいです。
それではまた、土曜に。

2012-09-12-WED

はじめて投稿するかたは、
「ゆるやかな投稿のルール」
をお読みください。

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2012-01-08
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『魔法の鏡』
 荒井由実
2012-03-03
『Alone』
 岡本真夜
2012-03-07
『大きな玉ねぎの下で』
 爆風スランプ
2012-03-10
『さよなら夏の日』
 山下達郎
2012-03-14
『ミュージシャン』
 中島みゆき
2012-03-17
『接吻 –kiss–』
 ORIGINAL LOVE
2012-03-21
『スローバラード』
 RCサクセション
2012-03-24
『スローなブギに
 してくれ』

 南佳孝
2012-03-28
『かもめはかもめ』
 研ナオコ
2012-03-28
『メトロポリスの片隅で』
 松任谷由実
2012-04-04
『想い出にかわるまで』
 スターダストレビュー
2012-04-07
『私が
 オバさんになっても』

 森高千里
2012-04-11
『霧に走る』
 中島みゆき
2012-04-14
『赤いスイートピー』
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『チャイナタウン』
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2012-04-21
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 さだまさし
2012-04-25
『また会おね』
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『バレンタイン・キッス』
 国生さゆり
2012-04-29
『恋とマシンガン』
 フリッパーズ・ギター
2012-04-30
『西部警察PART-II
 ワンダフル・ガイズ』

 
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『恋しくて』
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2012-05-02
『八月の濡れた砂』
 石川セリ
2012-05-03
『世界地図』
 東京スカパラダイス
 オーケストラ
2012-05-04
『東京』
 くるり
2012-05-05
『青春の影』
 チューリップ
2012-05-06
『夏の終りのハーモニー』
 井上陽水・安全地帯
2012-05-09
『どんなときも。』
 槇原敬之
2012-05-12
『A HAPPY NEW YEAR』
 松任谷由実
2012-05-16
『どこにいても』
 中島みゆき
2012-05-19
『朝日のあたる道』
 ORIGINAL LOVE
2012-05-23
『慟哭』
 工藤静香
2012-05-26
『愛は勝つ』
 KAN
2012-05-30
『DESTINY』
 松任谷由実
2012-06-02
『SNOW DANCE』
 DREAMS COME TRUE
2012-06-06
『風をあつめて』
 はっぴいえんど
2012-06-09
『パンプキン・パイと
 シナモン・ティー』

 さだまさし
2012-06-13
『聖母たちのララバイ』
 岩崎宏美
2012-06-16
『時間旅行』
 DREAMS COME TRUE
2012-06-20
『勇気100%』
 光GENJI
2012-06-23
『星影のワルツ』
 千昌夫
2012-06-27
『Talk Walk Drive』
 Julia Fordham
2012-06-30
『家に帰ろう』
 竹内まりや
2012-07-04
『さよなら』
 オフコース
2012-07-07
『おだやかな構図』
 山口百恵
2012-07-11
『旅の手帖』
 サニーデイ・サービス
2012-07-14
『蒼いフォトグラフ』
 松田聖子
2012-07-18
『あなたに
 会えてよかった』

 小泉今日子
2012-07-21
『はじまりはいつも雨』
 ASKA
2012-07-25
『ぼくらが旅に出る理由』
 小沢健二
2012-07-28
『ためらい』
 松任谷由実
2012-08-01
『愛しさと心の壁』
 サンボマスター
2012-08-04
『愛が止まらない』
 Wink
2012-08-08
『あなたを・もっと・
 知りたくて』

 薬師丸ひろ子
2012-08-11
『雷が鳴る前に』
 槇原敬之
2012-08-15
『星になれたら』
 Mr.Children
2012-08-18
『マイ・ピュア・レディ』
 尾崎亜美
2012-08-22
『蒼い時代』
 中島みゆき
2012-08-25
『ジーザス!ジーザス!』
 JUDY AND MARY
2012-08-29
『半袖』
 今井美樹
2012-09-01
『ラブソングを
 唄わない男』

 怒髪天
2012-09-05
『片恋』
 さだまさし
2012-09-08
『いとしのエリー』
 サザンオールスターズ
 
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