いつもくちびるに、季節の風とラブソングを。
こんにちは、恋歌くちずさみ委員会です。

あまずっぱい企画は、とっても好評!
たーくさんの、おたよりがとどいています。
みなさんの、
たいせつなたいせつな思い出の「恋歌」、
どんどん紹介していきますね。
なのでどしどし、おたより(メール)くださーい!

この悲しみをどうすりゃいいの
誰が僕を救ってくれるの
(投稿者・たま)
『大迷惑』
 ユニコーン

 1989年(平成元年)
 

My恋歌ポイント

 この悲しみをどうすりゃいいの
 誰が僕を救ってくれるの

高校2年生。
周りはもうそれは
「中学のころから好きな人がいてどーこー」と
騒いでいたにもかかわらず、
私はそういう気持ちが全然わかりませんでした。
仲良くし続けていたいなあ、と思っていた
幼馴染がいましたが、
周りがそれは恋だなんだと騒ぎたて、
いつの間にか話もできない、
腫れ物に触るような状態になってしまいましたし。

そういう状態で、
たまたまグループの延長で付き合っていた
5男2女のグループ交際もどき。
同じ中学出身だけど、全員が見事に別々の高校へ。
恋も愛もわからないまま大きくなって、
わからないなりに、
「付き合うならこの人がいいなあ」
という子がいました。

でも彼は全然そういうタイプではなかったし、
私も別にそういう相手が
必要かどうかわからないし。
適当に時々みんなで会っては
映画を見たりしてました。

ある日、家に「話があるから」と
電話がかかってきて。
心の中で「お、これは告白ですか?(笑)」と
一人でくだらない事を考えつつ、
そう思って出かけていって
違ってたら笑えるよなあ、と頭をふりつつ。
で、二人で並んで座った山の斜面で、
彼が言ったのはやっぱり
「俺はお前が好きだ!」でした。
ただ、その瞬間、
頭の中で大音響でユニコーンの
「大迷惑」が流れたのです。

なんだそれは、状況に全然合ってないぞ!
どうしたんだ私の頭!と、
場違いなパニックになりました。
結局付き合うというのはどういうことか、
彼が望んでいるのはどういう付き合いなのか、
何もわからず、
わからない事のプレッシャーも、
周りからの過剰なアドバイスも、
すべてが重たくて、
2週間で電話をかけて終わりにしました。

それから、大学の時に一度会って食事をして、
その時には私もやさぐれていたし、
目標も野望もあったので、
話す事も近況報告以外なく、
グループ内で結婚していた友人たちが
離婚したのをきっかけに、
それっきり完全に彼とは会わなくなりました。
20年くらいたった今でも、時々
あの「大迷惑」はなんだったんだろうと思います。
多分、好きだったから、
そのままの状態でいたかったのだと思います。
恋愛とか、そういう壊れる関係には
なりたくなかったんだと思います。
友達で、ずっと仲良くしていたかった。
それだけなんですけどね。

なぜか大音量で歌が流れだす。
そんな投稿をときどきいただくのですが、
今回も、ああ、おもしろい。
しかも、お人柄がしのばれるこの投稿、
さっぱり系女子にちがいない。
「腫れ物に触るような状態になってしまいましたし」
サイコー。
「それだけなんですけどね」
サイコー。
最後の6行、そのとおり。
拍手!

すごいな、脳内BGM。
あたまのなかにDJがいて
「いまだ!」ってタイミングで
かけてくれるんだ。
思いもかけない自分のほんとの気持ち、
それでわかっちゃうなんて‥‥!
個人的にはそういう経験がないので
ひじょうにうらやましいです。
そんなシチュエーションにおかれて
戸川純の「好き好き大好き」とか
かかっちゃったらどうしよう‥‥

それにしても
「好きだったから、
 そのままの状態でいたかった」
という、さっぱり系おんなごころ。
むずかしいですなあ。

ユニコーンの「大迷惑」は、
「パニックの曲」と言ってもいいでしょう。

♪この悲しみをどうすりゃいいの
 誰が僕を救ってくれるの

その歌詞はもう完全に、こころの混乱状態。
曲のアレンジもなんというか‥‥
やっぱりそう、「パニック」な感じ。

(たま)さんのその経験、おもしろいなぁ。
パニックに陥っているはずなのに、
そこに自分でぴったりなBGMをあてはめてるわけで。
客観的なんです、すごく。
そういうさっぱりとした部分が
(たま)さんの魅力で
彼はそこにまいってしまったのでしょうねー。
「俺はお前が好きだ!」と言った、その彼。
すごく立派だと思いました。

いや、スガノも触れてますけど、
この「一発書き!」みたいな文体が
おかしくてしょうがない。

書きながら、思い出してるうちに
その「めんどうだった感覚」まで
よみがえってきて、
とりあえずどんどん書いて見直しません、
みたいな感じ。

最初に読んだときは、
「なぜそこで『大迷惑』?」という
エピソードそのものがおかしかったんですが、
読み返してみると投稿そのもの、
文体がおかしくて、たまりません。
「その時には私もやさぐれていたし、
 目標も野望もあったので」あたりの
乱暴な説明が、ほんと、いいわー。

たいへん勝手ながら、
「うちの会社に出入りしている
 よその会社のおもしろい女性」
って、しばしば、こういう感じなんですよ。
会って話すとおもしろいんだろうなあ。

そうなんです、冒頭の
「高校2年生。」という書き出しから、
好感度の風、男らしい風、
ブワッと吹きました。
おもしろい方なんだろうなぁ、
いいなぁ〜いいなぁ〜。

さっぱり系女子というのは、勝手なもので、
・いつまでも親友扱いされて残念だ。
・告白なんて面倒くせぇ、もう会えないじゃんか!
という、相反することに悩まされます。
だから、男友達は
「じゃあ、どうすりゃいいのさ」と泣いています。
どっちにしろ「大迷惑」。
ワーワー! がんばれ、さっぱり女子!

ちなみに、
「その瞬間、なぜか脳内でこの曲が!」
というパターンの名作としては
『また逢う日まで』がありますね。
読んでない方はこちらもぜひ!

あー、あれも名作でした。
われわれ委員会で一時流行りましたもん。
チャッチャチャラ〜チャチャッ、ドン!

では、また来週、ドン!

2012-02-18-SAT

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