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ほぼ日刊イトイ新聞

2021-11-29

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・ずっと昔に思いつきのように
 「ペンは剣よりも強し。だから武器よさらば」
 ということばを書きとめた。
 たいていのことばは、光の当て方によって、
 見え方も変わるし、受け取られ方も変わるから、
 これをどういうふうに読むのも自由である。

 ぼくが、この冗談のようなことばを思いついたのは、
 「だから武器よさらば」からだった。
 「ペンは剣よりも強し」ということが、
 過剰に認められるようになると、
 ペンで人を攻撃することがいくらでもできるようになる。
 ペンで強い攻撃を受けている者は、いたたまれない。
 ペンは武器だよ、ボクサーの拳以上の強力な武器だよ。
 そういう気持ちが心のなかに溜まっていたのだろう。
 そこに、「武器よさらば」というフレーズが思い出された。
 「武器よさらば」はいかにも「ペンは剣よりも強し」と
 言いたがる人が好みそうなことばだ。
 その「武器よさらば」を、
 「ペンは剣よりも強し」に続けると、
 妙に矛盾をはらんだおもしろい言い方になる。
 どっちも正しいと信じて言ってたことなのに、
 「どうなんだろう?」と我に返るようなことになる。
 思いついたときには、そういう照明のなかで見ていた。

 しかし、それからも、ぼくはいろんなことを考えたし、
 いろんなものを見聞きしたり、いろんな経験もしてきた。
 「ペンは剣よりも強し。だから武器よさらば」に、
 別の角度から、ちがった照明を当てて見ることもあった。
 「ペンは剣よりも強し」で、
 ほんとうによかったと思えることは、たしかにある。
 同時に「武器よさらば」と言いたいこともあり、
 「武器を持っててよかった」と思うこともある。
 武器の包丁を磨いておきたいことも、
 魚をさばくとか料理に使いたいということも、
 それを人に向けて振り回したくないという気持ちもある。
 武器はどこか金庫にしまって出さないでおきたいとか、
 見せびらかすのをみっともないと思うこともある。
 こういうようなこと、すべてひっくるめて、いまも
 「ペンは剣よりも強し。だから武器よさらば」かなぁ。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
切れない包丁で切られるのが、いちばん悲しいと魚が言った。


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