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ほぼ日刊イトイ新聞

2019-11-17

おしらせ

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・「初雪や これが砂糖なら おおもうけ」
 「くちなしや はなから下は すぐにあご」
 なんて、もちろん、ぼくがつくったわけじゃない。
 幼い頃に聞いた落語のなかにあって、
 こどもごころに「おもしろいなぁ」と思って、
 ついつい憶えてしまったものだ。
 「なかでねずみが、ちゅう」だの、
 「いまはお茶が怖い」なんてオチのことばは、
 こども時代のぼくでもよく憶えているくらいだから、
 けっこうな大人も、それを頭に入れて暮らしていた。

 ある時代まで、いわば「庶民の娯楽」として、
 落語や、漫才、ときには香具師の口上のなかから、
 おもしろい言い回しが拾われて、
 ふつうの人の生活で「おもしろいこと」が語られていた。
 これはこれで、文化であり教養であると言えるだろう。
 たくさんの人たちが、「しゃれた言い回し」を
 頭のなかの会話用の引き出し入れておいて、
 取り出したり貯めたりして日常を遊んでいた。
 ぼく自身は、育った地域がちがうので
 あんまり詳しくないのだけれど、大阪方面では、
 落語漫才にかぎらず、人々のおしゃべりのなかから
 湧き出すように生まれてきた「ギャグ」というものを、
 共通の「ことば玩具」にして遊んでいるらしい。
 これも、各人それぞれに引き出しに貯めてあって、
 出したり入れたりしながら広めてきたものだ。

 で、この「笑いの教養」の総量というやつは、
 昔よりも今のほうがずっと増えているのではないかと、
 このごろ、ぼくは思っている。
 引き出しのなかの「ギャグ」を出さずに、
 いわばジャズのアドリブのように「自前の笑い」を、
 機関銃のように連発するのが、いまのおもしろさだ。
 「ダウンタウン」登場の影響が大きいとは思うのだが、
 引き出しの在庫に関係なく、なにがおもしろいのかさえ、
 一から考えさせてしまうような笑いが、生まれている。
 これ、実は大転換だったと思うのだ。
 笑いも、「ストック」から「フロー」への時代だ。
 おなじみの在庫より、新鮮な「フロー」が尊ばれる。
 いつのまにか、笑いの世界も大変化していたわけだ。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
笑いの在庫量より、産みたてが。瞬発力と新鮮さの時代か。


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