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ほぼ日手帳

糸井重里

・そういえば、ぼくにも「あの人のようになりたいなぁ」
 と思うような大人がいた。
 「尊敬する人物はだれですか?」なんて質問には、
 考えなしに「ケネディ大統領」とか答えた気がするが、
 もっとほんとうの気持ちで、
 「あんなふうになりたい」と思う人はたくさんあった。

 それが、学校の先生だったりすることもある。
 何人か、大好きな先生がいたことは、とても幸運だった。
 たとえば、じぶんの好きな小説や映画について、
 ほんとうにうれしそうに語ってくれる先生のことは、
 もうそれだけで「いいなぁ」と思えた。
 その先生が「好きな人」のことを語るのは、もっといい。
 歴史上の人物であれ、どこかの誰かさんのことであれ、
 その人のことをほめているのは、聞いていてたのしかった。
 先生でなくクラスメイトでも、歌謡曲の大好きなやつが、
 バス旅行のときに「いい気持ちで歌ってる」のは、
 ぼくにもつくづく「いいなぁ」と思えた。

 人がなにかを好きだと思っているものごとは、
 おそらく、だいたいみんないいんだ。
 なにか、その人が見つけた「いいもの」があるはずなのだ。
 その「いいもの」に、ぼくも触れてみたくて、
 ついつい、もっと話を聞いてみたくなってしまう。
 なんなら食べてみたり、買ってみてしまう。

 「好きな人や好きなこと」について、
 本気で語るだけで、子どもは、つまり昔のぼくは、
 「あの人のようになりたいなぁ」と思ってしまったのだ。
 そして、おそらくだけれど、ぼく自身もまた、
 「好きな人や好きなこと」を
 探しては語ったりする人になった。

 ものごとのアラを探したり、人を腐してばかりいる人には、
 「あの人のようになりたい」と思えなかった。
 やせ我慢して明るくしている人や、なんかへっちゃらな人、
 なんとなく親切な人とかには、憧れがあった。
 人は、憧れのほうに近づいていくものなのだと思うよ。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
子どもたちよ、大人たちの「好き」の話をしてもらいなさい。

昨日のコラムを読み逃した方はこちら。

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