お気に入り記事の保存はアプリが便利!

ほぼ日刊イトイ新聞

2023-12-02

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・「かわいい子には旅をさせよ」ということばがあります。
 これは、ほんとうにすばらしいことばだと思います。
 いつごろから言われているのかは知りませんが、
 旅が、いまよりもずっと危険だった時代でしょう。
 便利も安心もない世界に、かわいい子どもを行かせる。
 送り出す親は、子ども本人に増して勇気のいることです。
 ほんとうに危険な目には遭わせたくない、
 だけれど、命があるなら「あらゆる状況」に対して、
 どうすればいいのかを判断できる人になってほしい。
 いつもの場所にいるだけではありえない出来事に、
 うろたえたり困ったり、知らなかったじぶんを発見したり、
 ありえないような美しさを感じたりね、してほしい。
 そういうことを願って「かわいい子には旅をさせよ」です。

 したくてしたわけじゃないとも言えるけど、
 思えば、ぼくもいろんな意味で旅をしてきました。
 旅行という意味だけではなくね。
 で、いまごろになってあらためて思うわけです。
 「かわいいじぶんには旅をさせよ」とね。
 別に高い山に登れとか、荒波を泳ぎ抜けとか、
 そんなことをやる必要はまったくないんだけど、
 老いも若きも旅をしろ、とつくづく思うのです。
 やっぱり、特に一人旅かな、二人でもいいですけど。

 どんなにしっかりしているとじぶんでは思ってても、
 旅をしたら、だいたい事件やら事故やら起こります。
 事件とか事故とか大げさな言い方かもしれないけど、
 予定通り予想通りには、だいたい行くもんじゃない。
 昨日、ぼく自身が仙台駅で降りるべきところを
 すっかり寝過ごして、盛岡まで行って戻ったりしました。
 ご迷惑をかけた方々には申し訳なかったですが、
 正直、そのとき「これだ、これが旅だよ」と思いました。
 やっちゃいけない乗り過ごしと遅刻なのです、むろん。
 だけど、旅をするとこういうことが起こるんですよね。

 さらに、そのあとの仕事の時間は、もっと旅でした。
 その日、どんなことを話そうかと考えていたことは、
 大きな波に浮かぶ小舟のようにもまれました。
 その波で、ぼくのほうが揺られて遊んでいたようです。
 「かわいい老人にも旅をさせよ」という一日でした。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
いずれ、この一日のことはあらためて詳しくお伝えします。


ここ1週間のほぼ日を見る コンテンツ一覧を見る
ほぼ日の學校
吉本隆明の183講演
ドコノコ
ほぼ日アプリ
生活のたのしみ展
TOBICHI東京
TOBICHI京都