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ほぼ日手帳

糸井重里

・子どものころとか、若いころ、
 「どうして年寄りはニュース番組ばっかり見るのか?」
 と疑問に思っていた。
 単純に、視聴者をおもしろがらせてくれないし、
 何度も同じニュースをやっているのを、何度も見るって、
 おかしいんじゃないかとも思えた。
 けっこうおやじになってからも、そういう気持ちがあった。

 それなのに、ああ、まったくそれなのに、
 我が家の大画面はなにかとニュース番組を映している。
 ぼくがつけたテレビでも、上司がつけたテレビでも、
 どこかの局を選ぼうとしたあげくに、
 「見たいのないね」と、ニュース番組にしてしまう。
 おそらく、年齢が高くなってから、
 おもしろがらせようと騒がしくしている番組が、
 うるさく感じているのだろうと思う。

 しかし、よく考えてみると、じぶんたちよ、
 同じニュースを何度も見ていて、それで満足か。
 いやいや、満足なんかしていない。
 たしかに同じニュースなのだ、いまだったら
 高市新総理がどうしたということと、とにかくクマだ。
 どこかのガラス戸に体当たりするクマの映像を、
 どれだけ見たかわからない。
 世界中に、それなりに興味深いニュースは、
 もっとあるとは思うのだけれど、よそがやってるのを
 うちだけやらないわけにはいかない、ということで、
 みんな同じニュースを放送することになる。

 さらに、「時事に関心があること、ニュースを見ること」が
 「善いこと」であるという考えは、ほんとうなのだろうか。
 子どもが新聞を読んでるとほめられる、というのと、
 年寄りだけど「ニュース」をよく見ているということは、
 なんだか同じように「えらいですね」と言われてきた。
 しかしね、なにを知って、なにを考えて、なにをしている? 
 ちょっと時事について知ったかぶりをしたり、
 世を憂いて見せたりするのが、そんなに「善」なのかなぁ? 
 と、じぶんが年寄りになって、また疑うようになったよ。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
ま、テレビを見る習慣があるだけでも、年寄りなんだろうね。

昨日のコラムを読み逃した方はこちら。

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