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ほぼ日刊イトイ新聞

2024-12-13

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・「自分を愛せ」と言われたら、どう思う? 
 ぼくは、そう言われたのははじめてだったので、
 しばらく考えていた。
 そういえば、「自分を愛せ」とは思ってなかった。

 日本武道館のコンサートの会場で、
 その日の主役である矢沢永吉
 30歳くらいの時代のビデオが流れて、
 その矢沢が「自分を愛せ」と言っていたのだった。
 そして、その過去の自分自身の発言を受けて、
 いま現在75歳の矢沢が、そのことばを繰り返した。
 その真剣な言い方は、全体の観客たちに響いていた。
 「ぱっつんぱっつんの満杯」と言われた
 その夜の日本武道館の観客のひとりとして、
 ぼくはコンサートが終わってからも、
 ずっと「自分を愛せ」について考えていた。

 この夜、偶然でもなんでもなく、
 ぼくの隣の席には「いつか行きたい」と言っていた
 矢野顕子がいたものだから、帰りの食事のときに、
 「自分を愛せ」についての話をすることにもなった。
 彼女も、そのことばが気になっていたのだった。

 自己愛とか、ナルシズムとかにとても近く聞こえるが、
 「自分を愛せ」はそれとはちがっている。
 説明することはできるかもしれないが、
 それよりも、「自分を愛している」人は、
 どういうふうに生きているかと考えるほうがよさそうだ。

 おそらく、自分を愛していたら、盗みはできない。
 たぶん、自分を愛していたら人を騙せない。
 きっと、自分を愛してる人は、人を愛そうとするだろう。
 自分を愛せていないから、やってしまうことがある。
 自分が愛せないから、勇気を出せないこともある。
 自分を愛していないから、人のことも愛せない。
 そういうふうにも考えられる。

 仕事のために、家族のために、友人のために、国のために、
 そうじゃなくて、まず「自分を愛せ」なくてどうする? 
 そんなこと、あらためて気づかされた夜だった。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
「まだまだやります!」ということばも、本気だったなぁ。


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