糸井重里

・「つまらん、おまえの話はつまらんっ!」と大滝秀治さんが
 岸部一徳さんに向かって怒鳴るCMがありました。
 殺虫剤の広告でしたが、とにかくあのセリフがすごい。
 いまごろになって気づくのですが、人が人に向かって、
 「話がつまらない」と怒っている場面など、
 それまでにあったでしょうか? 
 「まちがってる」とか「わかりにくい」とかではなくて、
 「つまらない」という批判はしていいものだったのか。
 まぁ、ほんとは、世の中の話のだいたいはつまらないので、
 みんなして「そこは言わないことにしていた」のでしょう。
 岸部一徳さん演じる人物も、「そこ、言われるのか」と、
 不意をつかれたのではないでしょうか。

 そうなんです、だいたいの話は「つまらん」のです、
 あんまりおもしろくないのがふつうなのです。
 しかし、ある割合で「おもしろい話」もあります。
 「おもしろい話」をするのが、「おもしろい人」です。
 そして、ここんところが大事なのですが、 
 「おもしろい人」は、その人自身がおもしろいというより、
 その人の「見ているもの」「聞いているもの」のほうが、
 おもしろいということなんですよね。
 たとえば、その人がアリンコを見ているとします。
 おもしろいなぁという目で見ている。
 そのことを話すだけで、おもしろいということが伝わる。
 アリンコのなにかがおもしろいだけじゃなく、
 アリを見ているその人の「目」が、
 そして彼の目とつながっている「心」が、
 おもしろさというものを生み出しているのです。

 逆に、「つまらん」と言われる人の場合は、たぶん、
 その人の目がおもしろいものを見ていないのです。 
 その人の目とつながっている心も、
 おもしろさと無縁のところにあるのでしょう。
 ま、実は、CMのなかの岸部一徳さんは、
 商品の説明を述べているだけなので、
 おもしろくないに決まっているんですけどね。
 結果、大滝さんに怒られたことが、おもしろかったですね。
 できるだけ、世界が、おもしろくありますように。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
2003年のCMらしいので、知らない若い人もいるかもなぁ。

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