いつもくちびるに、季節の風とラブソングを。
こんにちは、恋歌くちずさみ委員会です。

あまずっぱい企画は、とっても好評!
たーくさんの、おたよりがとどいています。
みなさんの、
たいせつなたいせつな思い出の「恋歌」、
どんどん紹介していきますね。
なのでどしどし、おたより(メール)くださーい!

彼は本当にいい人でした。
何も悪くありませんでした。
(投稿者・チェルシー)

『銀の指環』
 歌/チューリップ

 1974年(昭和49年)
 

My恋歌ポイント

 二度と帰らない 夢のような恋よ
 君はいつのまにか 消えてしまったよ

海の見える田舎の中学生だった私。
洋楽好きで大人の恋に憧れるスポーツ少女。

中学2年の秋に体育祭の応援団の練習で
一緒になった3年生の彼。

応援団長でちょっと浅黒い肌に大きな澄んだ目。
高校生のお兄さん達とバンドを組んでいるんだって‥‥
そんな噂も後押しし、
あっという間に激しく恋してしまいました。

厳しくて優しくてカッコ良くて。
一生懸命話しかけ、出来る限り彼のそばにくっついて‥‥

応援団の練習が永遠に終わらなければいい、と心から願い
毎日毎晩、片思いの切なさにずっぽり漬かっては
ため息をついていたキンモクセイの香る季節。

そしてとうとう体育祭も終わり。
夕暮れの校庭の隅で落ち込み涙ぐんでいる私に
「泣くなよ、練習が終わってもまた会おうな」
って言ってくれた。
1ヶ月の片思いが両思いに!
その瞬間はあまりにも嬉しくてまた号泣でした。

その後、田舎の中学生だった私たちは
特にデートするわけでもなく
親もうるさいので長電話もせず、
私の家の近くの海の見える公園で
日曜日の午後に会うようになりました。
家からは5分でしたが
彼の家からは歩いて20分以上の距離。

ブランコに並んで座って
ゆらゆらしながらたわいもない話。
大人と信じていた彼が
実は末っ子で甘えん坊だったこと、
カッコよいと思っていた彼の容姿に
彼自身がコンプレックスを持っていたこと、
色んなことを私に打ち明けてくれました。

だけどそんな胸のうちを聞くたびに、
だんだんと片思いの時思い描いていた
「大人の恋」とのギャップが大きくなっていき‥‥。

彼は本当にいい人でした。
何も悪くありませんでした。
なのにある日突然、彼の熱い感じに耐えられなくなり
私は公園に行かなくなりました。

本当に理由も何も言わず突然に。

その後何回か人づてに、
彼が日曜日の公園で待っているよ、
行ってあげなよ、と聞きましたが
結局行くことはありませんでした。

そしてそのまま彼の卒業まで
まったく話もしなかったのです。

今考えると
なんてひどいことをしてしまったのだろうと‥‥。

卒業式に彼の友達から
1本のカセットテープを渡されて。
その中に入っていた曲が「銀の指輪」でした。

思い出すと胸が痛くなります。

あの頃の自分は想像の中の恋と現実の恋をうまく
調整することが出来ませんでした。

その後会うこともなく、現在に至りますがどこかでこれを
見ていたら、「ごめんなさい」と‥‥。

(チェルシー)さんとは、たぶんほとんど同世代。
当時中学生だったぼくもおこづかいをかきあつめて
『銀の指環』を買いました。
たいせつな1枚でした。
何度、ドーナツ盤に針をおとしたことか。
B面の『セプテンバー』もいい曲だったなあ‥‥。
ビートルズ好きだった友だちはみな、
その香り漂うチューリップのファンだった気がします。

で、投稿。
もう、正統派のあまずっぱい物語ですね。
いいなぁ。

 ブランコに並んで座って
 ゆらゆらしながらたわいもない話。

この2行の、あまずっぱさ!
この2行、大好き!!

‥‥応援団長の彼、
何かの偶然でこのページを読んでないかなあ‥‥。
そんなことってあり得ない?
あったらいいのに。
『銀の指環』好きの応援団長ー、
(チェルシー)さんが
「ごめんなさい」って言ってるよー。

いやぁぁぁ。

最後に「銀の指環」を贈るなんて
いい男です。
かっこよくて、
そこにコンプレックスもあって
それをわざわざ打ち明けてもくれて、
ほんとに最高。
でも、それがわからないんです!
その、わからない気持がわかります。

彼から発せられる、
到底受け止めきれないことに対して
適当に逃げたり流したり、ということもできず
戸惑いますね。
団長だってもうすこし調整すりゃよかった。
大人の階段はそうやってワンステップ目が
築かれていくのですね。

どこかで彼が見てると
ほんとにいいのになぁ。

チューリップは、男子のあまずっぱさが
たくさん詰まっていると思います。
最近聴きはじめたけど、もっと若いときに
たくさん聴いておけばよかったわー。

もう、この恋歌くちずさみ委員会では
ある種のセオリーのようになってきました。

理由なく、そうしてしまう女子と、
理由をもとめておろおろする男子。

たぶん、日曜日の公園で彼女を待ちながら
彼は何度も何度も思ったことでしょう。
「俺の何が悪かったんだろう?」と。
でも、彼女はこう断言しています。
「彼は何も悪くありませんでした」。

どうしようもなく好きになったり、
どうしても許せなかったりすることに
明確な理由なんてないし、
それらしいことばを並べて
理由づけするようなものじゃない。
そんなふうには、十代の男子には
とても思えないですよね。

男子にとっての若い日の恋は、
そういった「なんでやねん」の
連続なのかもしれません。

そして、その「なんでやねん」に、
とりあえずの決着をつけるために
少年は唐突に歌を送つけたりするのです。
いまやそんな蒼い風習もないのかしら。

そっか、そうだよねえ、永遠に、こうだ。
てか、永田さん、女子に限らないんじゃないかなあ。
「ある日突然」好きになることがあるように、
「ある日突然」やんなっちゃうことも、
自分にはあったよ。
そして(チェルシー)さんとおなじように
ものすごく突然、お別れした。一方的に。
‥‥ああ、想い出したよ、想い出したくなかったよ、
あったよ、あった。
ああ、ひどいめに遭わせたんだよな。
きっと。
その後を知る由もなかったど、
共通の友人から「なにかあったのか」と
すごく落ち込んでいる様子を聞かされ、
問いただされて、しらんぷりしたよ。
若かったから。小芝居うまかったから。
「なにそれー。知らねー。ひゅ〜〜♪(口笛)」
みたいに。
なんてひどい。
いま──もうン十年経ってるのに、
いまだに街で面影を見て(絶対に別人なんだけど)
「あちゃーっ!」とか思うことあるもの。
これはあくまでも個人的な思いだけど、
たぶん、いま、会えたとしても、
ごめんなさいと声をかけたとしても、
そのごめんなさいは、届かない気がする。
なんか、どうにもならない、
そんな気がする。
そのくるしさがじつは
“二度とはずれない不思議な指輪”なのかもしれません。

って、あれれ、ぼくはいったい何を
書いているのでしょう!
順番が最後になると、こわいー。
ではこんどは土曜日に! ひゅ〜〜♪(口笛)

2011-12-07-WED

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