いつもくちびるに、季節の風とラブソングを。
こんにちは、恋歌くちずさみ委員会です。

あまずっぱい企画は、とっても好評!
たーくさんの、おたよりがとどいています。
みなさんの、
たいせつなたいせつな思い出の「恋歌」、
どんどん紹介していきますね。
なのでどしどし、おたより(メール)くださーい!

差し込む夕日が3人の先輩を照らし、
紅潮しながら歌う瞳はキラキラ輝き。
(投稿者・優嬉YOU)

『君のひとみは10000ボルト』
 歌/堀内孝雄

 1978年(昭和53年)

My恋歌ポイント

 君の瞳は10000ボルト
 地上に降りた最後の天使

風に乗ってふんわりと
金木犀が香る時期がやってくると、
今でも鮮明に思い出す中学2年の放課後‥‥。

私は中学2年の時、
東京から地方の中学校への転校生となりました。
都会の生徒と違う素朴で純粋な同級生に
戸惑うばかりの、トッポイ学生でした。
前の学校で入部していたクラブが、
田舎の学校では人が集まらず
部員2名と言うまさに休止状態で、
放課後、他の同級生の部活を窓辺からぼんやり眺める
退屈な毎日がつづいていました。

いい加減そんな毎日に飽き飽きしていたある日、
音楽室から流れて来たのは
男子2名の見事なまでにハモる、
『君の瞳は10000ボルト』でした。
私はそっと音楽室を覗くと、
ひとつ上の先輩男子3人が、
ギター片手に演奏し2人が歌っていたのでした。

窓辺から差し込む夕日が3人を照らし、
紅潮しながら歌う瞳はキラキラ輝き、
とても格好良くて
ときおりふんわりと香る金木犀の香りに、
見ていて胸がキュンキュンしました。

今迄まったく名前さえ知らなかった先輩が、
私の放課後をカラーに塗り替えた瞬間でした。

10月、風に揺られ窓辺から香る金木犀に、
幼かった昔が愛しく思えます。
この曲を聴くたびに、
あの時の3人の輝く瞳が今でも鮮明によみ還ります。

運動会のころになると香ってくる、
独特のあまーい香り。
あの香りがスイッチとなって
想い出をよみがえらせるひと、
すくなくないですよねー、きっと。

ヘビーな愛の物語で
おなかいっぱいになるのもいいですが、
柑橘系のあまずっぱいヤツ、
やっぱりいいなあー。

キラッキラの先輩たちのハモりに、
キュンキュンする10月の放課後っ!
そういう瞬間に出合うために、
ぼくらは生きているのかもしれない。
‥‥などと大げさなことを思ってしまうほど、
うらやましくて、かわいくて!

ぼくも転校をくり返していましたから、
その、自分からはどうしようもない
不慣れさ、不本意さ、もどかしさ、
といったものはよくわかります。

たとえばことばのイントネーションが
ちょっと違うだけで、
「ふつうにおしゃべりして笑い合う」
みたいなことだって、
なかなかむつかしいんですよね。

そのもやもやした日々を
吹っ飛ばす、ハーモニー!
『君のひとみは10000ボルト』!
あー、いいなあ。
読んでてスカッとしました。

「私の放課後をカラーに塗り替えた」
という表現も素敵です。

いまや「えんか」なイメージの
堀内孝雄さんですが、
谷村新司さんといっしょに、
バンド、やってたんだよー。
「アリス」っていうんだよー。
あの耳に気持ちの良いメロディと
ちょっと文学的な歌詞が
まさか「えんか」に
まっすぐ延びている道だとは
当時の中学生は
思いもよらなかったわけですが、
それはさておき、
君のひとみは10000ボルトですよ。
ああ、なつかしい。
とび色のひとみに誘惑のかげりですよ。
金木犀の咲く道を
ジャンヌ・ダルクが駆け抜けてくるんだよ。
サンキューうっ!(堀内孝雄のマネ)。
ありがっとうっ!(谷村新司のマネ)。

いまの時代って、合唱がさかんだと、
高校生男子が家族にいる山下が言ってましたが
ぼくのころもそうでした。
クラス対抗の合唱コンクールもあったし
少人数の、ギターデュオとかが出場する
学内のコンテストもありました。
ぼくは楽器ができなかったから
なおさら、そういうときに演奏する同級生が
まぶしく見えたなぁ。
ギターに放課後の西日が当たると、
ちょっとまぶしいんですよね。
それを見てる女子、いた、いた!
そんなふうに全国にたくさんの
(優嬉YOU)さんがいたのかもしれないねー。

歌声と金木犀と夕日、
耳と鼻と目にいちどに飛び込んでくる
うつくしい「情報」。
あふれる感動が
毎日を「カラー」にサッと塗り替えるひとコマです。
読んでいても、ほんとにきれいです!

歌のタイトル
『君のひとみは10000ボルト』は
資生堂の広告のコピーで、
(コピーを書いたのは土屋耕一さん)
全体の作詞は、堀内さんとおなじ
アリスのメンバーである谷村新司さんです。
で、アリスではなく
堀内孝雄さんのソロ名義の作品である、と。

これ、実は私が小学3年生のときの
学芸会の合奏曲でした。
そのため、よく憶えているのですが
歌い出しは、リコーダーでいうと
「トゥトゥトゥトゥトゥ」と
同じ音がつづきます。
サビの「君のひとみは」も同じ音の連投。
この、同じ音のつらなりがとても気持ちよく、
リコーダーを吹きながら、おかっぱ頭で
白目をむくほど幸せオーラを出していたので、
(それ以来同じ音のつらなりファンになって、
 たとえばビリー・ジョエルの
 Tell her about itの歌い出しも好きです。
 細かい話でほんとうにすみません)
今回の「男子3人」のキラキラした感じが
とてもよくわかります。
しかも歌詞が
「10000ボルト」とか「とび色」とかでしょう?
いい歌はきもちいいです。

ジャンヌ・ダルクという人をはじめて知ったのも
この歌だったなぁ。

ああ、またもやいい歌を、思い出してしまった!
まだ冬休みなので、またカラオケに‥‥‥‥
レッツゴー。

2012-01-03-TUE

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