『木根川橋』
 さだまさし

 
1979年(昭和54年)
 アルバム『夢供養』収録曲

私の好きな男の子の
出席番号は1番でした。
(投稿者・kei)

『先生、あの頃よくのりちゃんと銭湯行ってね
 あいつときたら、15番の下駄箱があくまでは
 どんな雪の中だって
 雨の中だって中へ入らなかった
 先生、覚えてるかな
 うちのクラスの15番、そう、
 目のステキなのりの好きだったあの娘の
 出席番号だったんですよ』

中1のとき。
私の好きな男の子の出席番号は1番でした。
親友の好きな男の子は3番。
親友とふたりでその番号を
ラッキーナンバーのようにしてました。
バスに乗れば、つり革を彼の出席番号の指の数で持つ。
私は1本指で、親友は3本指で。
私はチビだったから、
人差し指1本でつり革を持って体を支えるのは大変でした。
それでも楽しくて、
「あの子が好きだ」
というささやかな決意表明だったんですよね。
今日は目があった、話ができた。
そういうことを親友と二人できゃあきゃあ言って、
お互いに報告してました。
それだけで満足できたんです。
気持ちを伝えるなんて、そんな発想はありませんでした。

(kei)

きました、さださん。
しかも『木根川橋』。
名盤、『夢供養』収録曲です。

(kei)さんの投稿そのものが、
まさしくこの名曲の
エッセンスなんだと思います。

ああ‥‥ひさびさの、
歌詞がつるつる出てくる物件。

この投稿が届いた日の深夜、
くちずさみ委員会の男子内で、

♪きねがわばしからー
 すいどうみちーぬけたー
 しらひげーじんじゃーのー
 えんーーーにぃーちはーーー

と、ただただ歌詞を書いて送るだけという
メールのやりとりが行われました。

いいなぁ、ほんとに、いい曲だなぁ‥‥。

♪アセチレンたいてー
 あんずあめーうってますかーー
 あーいもーかわぁーらずー
 にぎやかなんでしょうね

 G  Em
 ん〜 ん〜

♪あのころなにやらおぼえているのは〜
 あのこのえがおとつめたさと〜
 ふしぎなむねのどよめきと
 あっけらかんと
 あっけらかんと
 みんなみんなゆるせたまいにち〜♪

と、きもちよく一番を歌い終わりました。
そっか、男3人、歌えるんだ。
シングル曲じゃないのに!

(kei)さんの投稿にあった
「My恋歌ポイント」は、
曲間のせりふなんですよ。
イントロと、曲間と、エンディングに、
語りが入るんです。そういう歌なんです。

両思いになれる、げんかつぎ、がんかけ。
いいなあ!
「木根川橋」の主人公も、
“あのこの名前に、じぶんの苗字をかぶせて書く”
ってことをしてたはず。
ぼくはどういうわけか
そういう想い出がないんですよー。

出席番号ってさー、
なんか、特別なものでしたよねー。
なんだろう、あれは。
少なくとも、社員番号なんかとは
ぜんぜん神秘性が違うなぁ。

移動教室にお気に入りの机があったり、
部室の雰囲気が部によってぜんぜん違ったり、
たむろする場所があったり、
なんか、学校生活には、
魔力の宿る場所とか時間がありましたよね。

恋する生徒がそこに
なんらかのジンクスやげんかつぎを
もとめるのは当然のことでしょう。

♪あのころちゃりんこ
 ころがしていったー
 ひきふねおしあげ
 あさぁーくさーのーー

あ、そうそう、ぼくはこの歌で
曳舟、押上っていう地名を覚えました。
いまだに「押上行」の半蔵門線が
ホームへ滑り込んでくるときは
この歌のことがうすく頭をかすめます。

げんかつぎ、がんかけってことでいうとね、
すばらしくくだらない思い出を書いてもいいですか。

中学3年のとき、友だちのTが、
学級新聞を書く当番になって、
こんな感じの記事を書いたのでした。

 ひとつお願いがあります。
 ろっかーの鍵をなくしたり
 こわしたりしないでください。
 がっこうのものはたいせつに。
 すすんで
 きれいに使いましょう。
 (Tより)

とまあ、これはいま書いたデタラメな文面ですが、
こういう大胆なことをやらかしたんです、Tは。
お気づき、ですよね?
‥‥各行、最初の1文字をタテに読むと‥‥。

Tは、ひろこちゃん(仮名)が好きだった!
その壁新聞は、
そういう意味でのスクープをしらせる結果になりました。

ながながと、失礼しました。
思い出したもので。
それにこれ、「がんかけ」じゃあないですね。
神秘性もない。
ただね、Tは、必死だったんです。
その想いを何かのかたちに
いちかばちかであらわしたかった。
バレて、真っ赤になってくちびるを噛んでいたT。
一生懸命、みんなでさりげなくなぐさめたなぁ‥‥。
元気かなあ、T‥‥。

♪なんともはや すてきだった
 仲間達に カンパイ!!

知らない。
この歌、知らない。
ぜんぜん歌えない。
そんなに語れる
歌なんですかーっ。
男子たち、うらやましいぞ。
『夢供養』というアルバムなのね。
聴いてみます。聴くぞ。
聴きこんじゃうよ。

中学のとき、
部活のユニフォームの背番号が
好きな人と同じでうれしかったなぁ。
だけど、おとなになってからはふしぎと、
そういう、願をかけるような
気持ちはなくなった。
なんでだろう???

それでは、また、来週
おめにかかりましょーっ。

 

2012-04-21-SAT

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