おいしい店とのつきあい方。
七冊目

098 飲食店の新たな姿。その18
値段が変わればサービスが変わる。

サービスって一体、どういうことをいうんだろう‥‥。

最近しみじみ思います。
「service」を日本語にしなさいと言われると、
困ってしまう。
奉仕。
おもてなし。
どれもなんだかしっくりこない。
経済学的な世界では「用役(ようえき)」とか
「役務(えきむ)」を表し、
売買したあとにモノが残らず
効用や満足を提供する
形のない財のことをいう‥‥、と定義している。

なるほどたしかにそうだけど、
ボクたちがお店で提供されるサービスの正体を
説明するには不十分‥‥、って感じてしまう。

日本語に翻訳しづらい。
あるいは説明しづらいということは、
つまりそもそも日本には英語の「service」にあたる
概念がなかったんだろう‥‥、と思うのです。
誰もその正体をきっぱりと説明できないものを、
お店はちょっとでも良くしようと日々努力し、
お客様はより良いそれを求めて店選びをする。

お客様とお店の間では、
さまざまなトラブルが発生します。
ここ数年、
こんな悩みを持つお店が増えました。

あそこのお店ではこんなサービスをしてくれたのに、
なんでここではしてくれないの?
とお客様がクレームをつける。

「けれどお客様がおっしゃるその店って、
うちの客単価の倍もする高級店。
そこでやっているサービスが出来ていないって
叱るんです」

‥‥、って。

値段が変わればサービスが変わる。
当然のコトなんです。
飲食店の料理の値段は、基本的にサービス込みの値段。
厳密に言えば「いわゆる」サービスだけじゃなく、
お店の雰囲気や立地、営業時間やインテリアまで含めて
値段は決められている。
つまり私たちはサービスをお金で買っている、
ということになる。

日本にもチップ制度があればいいのになぁ‥‥、
って飲食店で働く人たちはなにかにつけて思います。
いいサービスをしてチップがほしいからじゃない。
サービスというものはただではなくて、
お金を出して買うだけの価値のあるものなんだ‥‥、
ということをみんなにわかってほしくて、
チップ制度があればいいなぁと思うのです。

日本の人たちは「サービスはタダなんだ」と思いがち。
ただのサービスをもっと良くしてもらおうとすると、
値段を下げてもらうしかなく、
だから安くするコトを
「サービスする」と言うことすらある。

八百屋さんなんかの店先で
「サービスしておいたからネ」って、
玉ねぎを1個、袋の中に入れてくれたり。
あるいは、おしの強いおばちゃんが
「もっとサービスできないの」って言ってみたり。

今の日本のどこかで誰かがなにげなく使う
この「サービス」という言葉と、
飲食店における「サービス」は、
まるで違ったサービスなのです。
でもそれがどこか混同されてしまうのが、
日本におけるサービスというものの
曖昧で不確かな現実じゃないか‥‥、とも思ったりする。

決してただではないサービス。
ならばお金を払えば
よいサービスを受けることができるのか、
というと、そうでもないのが
サービスというものの不思議なところ。
人が人に対して提供するコトです。
同じお店で同じ人が同じようにしようと努力をしても、
そのときどきでそのサービスは違って当然。
同じ代金を払っていても、
そのお店にいるすべてのお客様が
同じサービスを受けられているとは限らない。

そもそもサービスは「受けるもの」ではなく
「感じるもの」なんだと、
最近、ボクは思うようにしています。
同じサービスも感じ方次第で良いサービスと感じたり、
物足りないと感じたりする。
サービスをどう感じるか。
ちょっとでもよいサービスを受けていると感じる、
その「感じ方」はどうすればいいんだろうか‥‥、
と、それを来週のテーマとしましょう。

また来週。

2019-09-19-THU

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