おいしい店とのつきあい方。
七冊目

115 飲食店の新たな姿。 その2
トレイにおいたまま食べたくない。

商品提供は食器の片付けと対をなすモノ。
そう考えると、先週の記事の最後の疑問、
「飲食店が料理を運んだお盆を
そのまま食卓の上に置く、その理由は?」
は、あっさり解決してしまいます。
そしておそらく、その答えが今、
多くのレストランがお膳やトレイにのせたまま
料理をテーブルに置くようになった
理由のひとつであろうとボクは思います。
一人分の食器を一度に下げしまうことができる便利さは、
人手不足の今にはとてもありがたいことですから。

そしてもうひとつ。
フードコートやセルフサービスのお店が増えたというのも、
お膳やトレイごと食卓に置いて食事することへの
抵抗をなくさせたんだ‥‥、と、そうも思う。
食べる人が自ら「配膳」する。
料理を運んだトレイから、
ご飯や汁、おかずをいちいち外して食卓に置く面倒は
なるべくならば省略したい。
しかもほとんどのフードコートやセルフサービスのお店では
食べ終わったら食器を自ら片付けなくてはならないわけで、
ならトレイから外さず
トレイにおいたまま食べればいいや‥‥、
ということになる。

ボクはどうにも、料理を運んだトレイを
食卓においたままで食事することに抵抗があります。
自分で料理を運んだトレイは、
「料理を運ぶための道具」にしか思えないのです。
だって、家で出来上がった料理を、
台所から食卓に運んだお盆を、
そのまま食卓においたら母に叱られましたもん。
そんなお行儀が悪くて雑なことをしちゃだめだって。
だから、セルフサービスの店でもバフェでも
トレイがあってもそれは料理を運ぶだけ。
料理が入った器をテーブルに移して食事の準備をします。
特に何人かで集まってバフェをたのしむようなとき。
トレイをそのままテーブルにおくと、
妙によそよそしい気持ちになります。
トレイが自分の領地だって主張しているように見え、
寄り合い所帯のように感じる。
トレイを外して料理だけを並べると
ひとりひとりの領地の境目がなくなって、
「みんなの食卓」って感じになってく。
だから必ずトレイから器を食卓に移して食べるのです。


ただ、トレイやお膳に食器をおいたままで食べたときと、
トレイを外して食べたとき。
食べ終わったテーブルの汚れ方が違います。
食べるものを落とさぬように、
こぼさぬようにと注意しながら食べるのだけど、
それでもやっぱり汁が垂れたり
揚げ物の衣が飛んで散らかったりと
テーブルの上は汚れてしまう。
食べ終えた食器をトレイに再び乗せ直すのも
手間だと言えば手間だし、
トレイごと料理をおいてしまいたくなる気持ちもわかる。
でもやっぱりトレイの上に並んだ食器が
チープに見えることがあり、
そんなときにはトレイを外して食事をする。
食べ終わったテーブルをきれいな状態にしておくために、
最近では吸水性のよい手ぬぐいとそれが収まる
小さなビニール袋をかばんに入れて
持ち歩くようになりました。
お店の人の作業を増やさず、
自分のわがままをたのしむために、
お客様としてできることはしなくちゃネ‥‥、って。

ちなみに食器をテーブルに移し終えて
しばらく出番のないトレイはどうするのか‥‥。
よほど上等な素材でできていたり、
繊細な作りのものは別として、
洗浄機でガンガン洗っても平気なような丈夫なトレイは
椅子の背板と背中の間にしのばせます。
トレイになるべく触らないよう座るので
背筋がシャキッと伸びて姿勢がよくなって、
食べる姿がキレイに見える。

ところでほとんどの飲食店の人たちは
お膳やトレイで運べば何度も運ばなくてすむから、
人手がかからないと思いこんでいる。
でも本当にそうなのか‥‥、
というと決してそんなこともなく、
じゃあなんでそんなことはないのか? 
ということを、次の週からのテーマとします。

サービスの一連の流れの6つ目。
中間サービス。
作業の話も、後半に向かいます。

2020-01-16-THU

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