おいしい店とのつきあい方。
七冊目

077
ちょっと寄り道。その1
ゴールデンウィーク前の飲食店は。

さてゴールデンウィークを控えての今。
ちょっと寄り道をいたしましょう。

毎年、ゴールデンウィークが近づいてくると
飲食店はさまざまな対応をはじめます。

人が遊ぶときに忙しくなるのが飲食店です。
働く人のランチを提供するのが仕事の
街中にある飲食店は別として
ほとんどの店はゴールデンウィークは大忙し。
お客様がいつも以上にやってくる上、
働いてくる人を集めるのに苦労する、
店長泣かせの時期でもあります。

しかもゴールデンウィークの時期が
お店にとってなんとも微妙。

年度変わりの4月から
1ヶ月も経っていないというタイミング。
お店には新人さんが溢れています。
新入社員は入ったばかり。
アルバイトくんも入れ替わる時期。
高校生なら3年間。
大学生だと4年ほど
一生懸命働いてくれたベテランくんたちが卒業したあと、
戦力不足をまだ働き方もつたない新人で
おぎなうことをしいられる。
しかもめくるめくほど忙しいのです。

一般的に気軽な値段の飲食店で、
厨房の仕事をひと通り学んで覚えるのに3ヶ月。
サービスの仕事を身につけるのに
1ヶ月ほどかかると言われる。
まだ仕事をはじめて1ヶ月しか経っていない人たちが、
厨房の中でできる仕事と言えば皿洗いくらいしかない。

皿洗いは重要な仕事です。
特に忙しいとき、厨房のスタッフが総出で料理を次々作り、
さぁ、盛り付けというときに
器がまだ洗いあがっていなかったりすることがたまにある。
せっかく作った料理はみるみるうちに劣化していく。
器がなければ提供できないから、
結局作り直しになって経営的にも痛手だけれど、
なにより厨房のムードが悪くなっていく。
「なにやってんだ」
「すいません」
と怒号飛び交う中で新人くんは、
とんでもないところに飛び込んじゃったぞ‥‥、
とびっくりしながらそれでも働く。

「お冷です」
と提供されたグラスがホカホカあったかだった。
洗浄機からグラスが出てきたばかりで、
あぁ、厨房の中はかなりの忙しさなんだということが
手から伝わる。
ナイフフォークに白いまだらな模様のようなものが
ついてやってくることがあります。
汚れのように見えるけど、
洗浄機で洗ったときにくっつき残る泡の跡。
グラスにも白いスポットがつくことがあり、
人に無害の泡の跡だから、それこそが
「洗いたてで誰も触れていない究極の清潔の証」
と考える人もいる。
でもそれを不快に感じる人の方が圧倒的に多いから、
拭いてピカピカにしてから提供することがほとんど。
でも時間がないとそのまま提供してしまう。
あぁ、洗浄機の周りは
てんやわんやの大騒ぎなんだろうな‥‥、と思わせる。

店長や幹部社員と言われる人たちにとって、
ゴールデンウィークの最中に気になることが
いくつもあります。
売り上げは予想通りにとれるだろうか。
忙しいからと
お客様に迷惑をかけるようなことはないだろうか。
雑な料理やおざなりなサービスで
お客様を帰してしまったら、
あの店はダメだったとマイナスの宣伝をしてしまう。
そんなことになったら
ゴールデンウィークが終わった途端に、
人気をなくして売り上げが下がってしまう。
それは大変。

それ以上に馴れぬ仕事とあまりの忙しさで
せっかく入ってくれた新人くんたちの気持ちが折れて
辞めたりしないだろうか‥‥、と気をもむ。
実際、ゴールデンウィークが終わった5月は
離職率が上がる時期でもあるのです。

仕事のたのしさ。
お客様に喜んでいただくたのしさを味わう前に
辞めてしまうなんてもったいない。
そう思う店長は、洗い場で食器をあらう新人くんの横で
一緒にお皿を洗う。
お客様であるボクたちも、
新人くんのためになにかできることはあるんでしょうか。
また来週。

2019-04-25-THU

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