ぼくの宝物をためてくれる
貯金箱みたい。
2008.03.24
テレビやラジオで
スポーツキャスターとして活躍するだけでなく、
白鴎大経営学部の助教授として
スポーツマネジメントを教えていたり、
北海道の栗山町に「栗の樹ファーム」という
手作りの野球場まで運営している栗山英樹さん。

365日、休みなし!
いつもどこかでなにかをしているという
お忙しい日々のかたわらでほぼ日手帳は
どのような役割をはたしているのでしょうか。



カギカッコの言葉が大事。
―― 栗山さんが初代からほぼ日手帳を
使ってくださっていると聞いて、
ずっとお話を伺いたかったんです。
栗山 お役にたてるといいんですけど‥‥
昔からぼくにとって一番大事なことって、
カギカッコなんです。
―― カギカッコ?
栗山 ええ。
選手と話をする、関係者と話をする、
球団のフロントと‥‥って
ぼくの仕事はいろんな人と話をすることなんです。
彼らが話すこと、
つまりかれらのカギカッコの言葉と
その言葉の行間を読み取るというのが
仕事のひとつなんです。

そのためには自分の中にベースとなるものが必要ですよね。
それがノートや手帳に蓄積されているんです。
ぼくは引退してから結構長いんですけど、ある人に
「同じ形と大きさのノートに書いておかないと、
 なくしちゃうよ」って言われたんです。
メモやノートって違う形のものを使ってしまうと
十何年経つと、昔のものがなかったりするんです。
だから昔から一般的な大きさの大学ノートを
使っているのですが、
そのノートは大きいので持ち切れないことも多い。
そこで一番、活躍してくれるのが手帳なんです。

スケジュールには行く場所となにがあるかということが
おおざっぱにしか書いていないのですが
こっち(1日ページ)には
カギカッコの言葉がバーッと書いているんです。

―― 手帳に書くのはどのようなタイミングなのでしょうか?
インタビュー中? インタビュー後?
栗山 ぼくは人前では、メモを取らないんです。
話に集中してあげたいというか、
ぼくらは記者とちょっと違っていて、
選手が個に対してぶつかって話をしてくれるんですね。
だからこそ話をしてくれているときは相手の目を見て、
じっくり聞いて、把握をして、
その後に出していいもの、
出しちゃいけないものを咀嚼しながら
表に出すっていう作業がいるんですね。

そこでインタビューが終わって、
一人になったり、移動中に
バーって手帳に書いていくんです。
ただ、2時間後に書き始めても、
ちょっと忘れていたりしていますよね。
これがつらくて(笑)。


ぼくの宝物をためてくれる貯金箱みたい。
―― けっこう細かく書かれていらっしゃるようなのですが
こんなことが書いてあるというさわりを
教えていただくことはできますでしょうか。
栗山 いいですよ。なにかいい話、残ってないかな‥‥。
(しばらく手帳をめくりながら)



去年の7月9日に早稲田大学の斎藤佑樹君が
大学の日本代表として
アメリカのマイナーリーグ「ダラム・ブルズ」
というチームと対戦したときに聞いたことはどうでしょう。
今年、ソフトバンクに入った大場(翔太)くんや
ヤクルトに入った慶應の加藤(幹)くんたち4年生の中に、
斎藤君が1年生として入っていたんです。
アメリカでの試合が大変ですごく疲れているのに、
大場くんはものすごいタフで
本当に遅くまで野球の話をしているんですって。
そのときに
「『今、楽するな』って言われているんですよ」って。
「疲れているし勝つことを宿命づけられているから、
 変化球が多くなっちゃうんだけど、
 まっすぐをちゃんと投げていないと、
 まっすぐが行かなくなる、
 っていう話を言ってもらったんですよ、俺」って。

注目されているので
どうしても勝つために、変化球を投げてしまう。
するとまっすぐを投げる数が少なくなるから、
将来的にまっすぐが走らなくなる怖さがあることを、
先輩の大場くんなんかが見ているんですね。

そういう、みんなが助け合う場が、
なにかの会話の拍子に起こっていたりする。
そんなことを知っていると、
斎藤祐樹くんがプロに入って、大場くんと対決したときに、
お互いの感謝の気持ちの中で勝負をするから、
全力を尽くして相手に勝とうとするし、
見ている側としても
楽しかったりするじゃないですか。
―― 野球がますますおもしろくなりますね。
栗山 そうなんですよね。
本当に愛情を持って言ってくれる言葉っていうのは、
ものすごく心にしみたりする。
そういうところに出会うと
「ああ、野球人っていいな」と思うし、
「スポーツマンっていいな」って思うし、
「人っていいな」って、ぼくなんか思うわけですよね。
―― うわぁ、すてきな話しをありがとうございます。
栗山 こういう話がこの手帳にたまっているんですよね。
ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃ書いているんですけど。
忘れてしまうので、ものすごくありがたいです。
ほんとに大事な手帳というか、
ぼくの宝物をためてくれる貯金箱みたいなものですね。
―― 宝物がたまっている貯金箱が
毎年同じサイズで、積み重なっていくんですよね。
大学の授業でも
このようなお話をされているんですか?
栗山 大学の授業はスポーツマネジメントを教えているので
経験論に頼らずに、
ちゃんと調べて楽しく話しをしようとしています。
大学の授業用には専用のノートがあるんですね。
でも普段、空いている時間に資料を読んで
気になることは手帳に書いていたりします。
例えばこの前、資料を読んでいたときに書いたことは、
テレビやラジオの中継が
どのようにメジャーリーグで始まったか、です。
こういう歴史の中で、
ラジオの持っていた意味みたいなことを
学生に授業で説明したりするんです。


使い終わった手帳の行方
―― 初代の手帳、つまり2002年から使ってくださっていると、
今年で7冊の手帳がお手元にあると思うのですが
これらはとってあったりするのでしょうか。
栗山 もちろんです。
使い終わったノートと使い終わった手帳が
机の横の本棚に毎年裸になって重なっていってます。
残ったカバーには文庫本を入れて持ち歩いているんです。



特にこのペンさしが助かる。
よく本を読みながらメモをしているので。
いつも何冊か本を持っていたりするんですけど、
歴史物は絶対入っていますね。
ほら、このカバーの中も。
―― 『秀吉と武吉』(城山三郎著)ですね。

栗山 野球人は歴史物が好きだったりするんですけど。
「たまたまこいつがこういうふうに言ったから、
 歴史が変わった」
というようなことは今も昔もあることですよね。
そういうことを想像するのが好きなんです。
ぼく、すごいバカみたいな夢を持っていて。
将来、60を越えたらね、
戦国時代のことを書く作家になりたいんです。
自分の足で歩いて
「このときに信長はこう考えたんじゃないか」とか、
想像できるかもしれないじゃないですか。
歴史物って、
少ない資料の中でみんな想像するから、内容が違う。
だからこそ、おもしろい。
今、やっていることとは全然関係ないんですけど(笑)。
―― 楽しそうな夢ですね。
いつか、ぜひ読んでみたいです。
歴史の話をふくらませていくときも、
ほぼ日手帳がお役に立てるようでしたら
うれしいです。
今日はどうもありがとうございました。



取材に授業に、とお忙しい栗山さんですが
ちょっとでも時間が空くと
「栗の樹ファーム」に足を運んで
球場の手入れをしているそうです。
「蛍も見えるようになったんですよ」
とうれしそうにおっしゃる姿が
とっても印象的でした。

栗山さんの活動や、栗の樹ファームについて
くわしくは
栗山さんのオフィシャルホームページ
ぜひご覧ください。