カギカッコの言葉が大事。
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栗山さんが初代からほぼ日手帳を
使ってくださっていると聞いて、
ずっとお話を伺いたかったんです。 |
栗山 |
お役にたてるといいんですけど‥‥
昔からぼくにとって一番大事なことって、
カギカッコなんです。 |
―― |
カギカッコ? |
栗山 |
ええ。
選手と話をする、関係者と話をする、
球団のフロントと‥‥って
ぼくの仕事はいろんな人と話をすることなんです。
彼らが話すこと、
つまりかれらのカギカッコの言葉と
その言葉の行間を読み取るというのが
仕事のひとつなんです。
そのためには自分の中にベースとなるものが必要ですよね。
それがノートや手帳に蓄積されているんです。
ぼくは引退してから結構長いんですけど、ある人に
「同じ形と大きさのノートに書いておかないと、
なくしちゃうよ」って言われたんです。
メモやノートって違う形のものを使ってしまうと
十何年経つと、昔のものがなかったりするんです。
だから昔から一般的な大きさの大学ノートを
使っているのですが、
そのノートは大きいので持ち切れないことも多い。
そこで一番、活躍してくれるのが手帳なんです。
スケジュールには行く場所となにがあるかということが
おおざっぱにしか書いていないのですが
こっち(1日ページ)には
カギカッコの言葉がバーッと書いているんです。
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―― |
手帳に書くのはどのようなタイミングなのでしょうか?
インタビュー中? インタビュー後? |
栗山 |
ぼくは人前では、メモを取らないんです。
話に集中してあげたいというか、
ぼくらは記者とちょっと違っていて、
選手が個に対してぶつかって話をしてくれるんですね。
だからこそ話をしてくれているときは相手の目を見て、
じっくり聞いて、把握をして、
その後に出していいもの、
出しちゃいけないものを咀嚼しながら
表に出すっていう作業がいるんですね。
そこでインタビューが終わって、
一人になったり、移動中に
バーって手帳に書いていくんです。
ただ、2時間後に書き始めても、
ちょっと忘れていたりしていますよね。
これがつらくて(笑)。 |
ぼくの宝物をためてくれる貯金箱みたい。
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―― |
けっこう細かく書かれていらっしゃるようなのですが
こんなことが書いてあるというさわりを
教えていただくことはできますでしょうか。 |
栗山 |
いいですよ。なにかいい話、残ってないかな‥‥。
(しばらく手帳をめくりながら)
去年の7月9日に早稲田大学の斎藤佑樹君が
大学の日本代表として
アメリカのマイナーリーグ「ダラム・ブルズ」
というチームと対戦したときに聞いたことはどうでしょう。
今年、ソフトバンクに入った大場(翔太)くんや
ヤクルトに入った慶應の加藤(幹)くんたち4年生の中に、
斎藤君が1年生として入っていたんです。
アメリカでの試合が大変ですごく疲れているのに、
大場くんはものすごいタフで
本当に遅くまで野球の話をしているんですって。
そのときに
「『今、楽するな』って言われているんですよ」って。
「疲れているし勝つことを宿命づけられているから、
変化球が多くなっちゃうんだけど、
まっすぐをちゃんと投げていないと、
まっすぐが行かなくなる、
っていう話を言ってもらったんですよ、俺」って。
注目されているので
どうしても勝つために、変化球を投げてしまう。
するとまっすぐを投げる数が少なくなるから、
将来的にまっすぐが走らなくなる怖さがあることを、
先輩の大場くんなんかが見ているんですね。
そういう、みんなが助け合う場が、
なにかの会話の拍子に起こっていたりする。
そんなことを知っていると、
斎藤祐樹くんがプロに入って、大場くんと対決したときに、
お互いの感謝の気持ちの中で勝負をするから、
全力を尽くして相手に勝とうとするし、
見ている側としても
楽しかったりするじゃないですか。 |
―― |
野球がますますおもしろくなりますね。 |
栗山 |
そうなんですよね。
本当に愛情を持って言ってくれる言葉っていうのは、
ものすごく心にしみたりする。
そういうところに出会うと
「ああ、野球人っていいな」と思うし、
「スポーツマンっていいな」って思うし、
「人っていいな」って、ぼくなんか思うわけですよね。 |
―― |
うわぁ、すてきな話しをありがとうございます。 |
栗山 |
こういう話がこの手帳にたまっているんですよね。
ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃ書いているんですけど。
忘れてしまうので、ものすごくありがたいです。
ほんとに大事な手帳というか、
ぼくの宝物をためてくれる貯金箱みたいなものですね。 |
―― |
宝物がたまっている貯金箱が
毎年同じサイズで、積み重なっていくんですよね。
大学の授業でも
このようなお話をされているんですか? |
栗山 |
大学の授業はスポーツマネジメントを教えているので
経験論に頼らずに、
ちゃんと調べて楽しく話しをしようとしています。
大学の授業用には専用のノートがあるんですね。
でも普段、空いている時間に資料を読んで
気になることは手帳に書いていたりします。
例えばこの前、資料を読んでいたときに書いたことは、
テレビやラジオの中継が
どのようにメジャーリーグで始まったか、です。
こういう歴史の中で、
ラジオの持っていた意味みたいなことを
学生に授業で説明したりするんです。 |
使い終わった手帳の行方
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―― |
初代の手帳、つまり2002年から使ってくださっていると、
今年で7冊の手帳がお手元にあると思うのですが
これらはとってあったりするのでしょうか。 |
栗山 |
もちろんです。
使い終わったノートと使い終わった手帳が
机の横の本棚に毎年裸になって重なっていってます。
残ったカバーには文庫本を入れて持ち歩いているんです。
特にこのペンさしが助かる。
よく本を読みながらメモをしているので。
いつも何冊か本を持っていたりするんですけど、
歴史物は絶対入っていますね。
ほら、このカバーの中も。 |
―― |
『秀吉と武吉』(城山三郎著)ですね。
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栗山 |
野球人は歴史物が好きだったりするんですけど。
「たまたまこいつがこういうふうに言ったから、
歴史が変わった」
というようなことは今も昔もあることですよね。
そういうことを想像するのが好きなんです。
ぼく、すごいバカみたいな夢を持っていて。
将来、60を越えたらね、
戦国時代のことを書く作家になりたいんです。
自分の足で歩いて
「このときに信長はこう考えたんじゃないか」とか、
想像できるかもしれないじゃないですか。
歴史物って、
少ない資料の中でみんな想像するから、内容が違う。
だからこそ、おもしろい。
今、やっていることとは全然関係ないんですけど(笑)。 |
―― |
楽しそうな夢ですね。
いつか、ぜひ読んでみたいです。
歴史の話をふくらませていくときも、
ほぼ日手帳がお役に立てるようでしたら
うれしいです。
今日はどうもありがとうございました。 |