有名ブランドの生地を手がける
牧野隆司さんに訊く
2012年のマキノコレクション。
2011.11.16
有名メゾンブランドに
日本製の生地を提供する牧野隆司さん。
そんな牧野さんが持っている生地を使った手帳カバー、
マキノコレクションは、
ノワール、キラキラ、花壇の3種類。
それぞれの特徴を牧野さんの視点で
語っていただきました。
そこには牧野さんの生地に対する姿勢や
信念なんかも見え隠れします。
さらに、本邦初公開の生地工場の様子も
ちょこっとお見せしますよ。
では、牧野さん、よろしくお願いいたします。

日本製の素材が世界のトレンドになっていく。

私は、欧州のメゾンブランドに
日本で作られている新たな素材を、
私の視点でチョイスし、提案しています。
それらは主に、
「エレガント、モダン、ハイテクでハイクラス」
という言葉で表される素材です。
こちらからおもしろいと思うものを
提案し、採用されて、流行になっていく。
日本製の素材が世界のトレンドになっていくわけです。

今回、ほぼ日さんが選んだ3種の生地を見て
「かなりシックなものを選んだな」と思いました。
と同時に「かっこよさ」と
「ゴージャスさ」も兼ね備えている。
シック、かっこよさ、ゴージャスさ。
今年のマキノコレクションは
この3つのキーワードで表されるのではないでしょうか。

ノワール。
「ニードルパンチ」によって得られた
モダンさと高級感


ノワールの素材は、
山梨県富士吉田市という
昔から絹の産業が盛んな地で作られています。
特徴は、やはりこの独特な起毛感です。



これは、「ニードルパンチ」と呼ばれる
起毛感を出す製法を応用したものです。
通常のニードルパンチは、
2枚の別々のタイプの生地を
針で幾度も突き刺し絡みあわせて起毛を作り上げます。
例を挙げると、表が無地の生地、
裏がストライプの生地でこの加工をおこなうと
無地の部分にうっすらと
ストライプが浮かびあがってくる、というわけです。

一方、このノワールで使われているニードルパンチは、
ジャガード織りのチェックの生地1枚だけで
加工したものなんです。
※複数色の色糸を編み込んで柄を表現する編みかた。

ジャガード織りでチェックを表現しているだけなら、
正直、おもしろくない素材でしたが、
そこにニードルパンチをおこなうことで、
モダンさと高級感を引き出したところに惹かれました。
しかも「いかにも起毛加工をしました感」ではなく、
自然な形の起毛感が表現されています。

(どういう用途で使われてますか? の問いに)
レディースのコートなどに使われています。
じつはこれ、とあるデザイナーブランドとの
コラボレーションによって生まれた生地なんです。
残念ながらそのブランドがどこなのかを
明かすことはできません。ごめんなさい。

キラキラ。
ラメとウールのコラボレーション。
その光りかたは上品の極み。


この生地は愛知県一宮市で作られました。
ここは古くからウールの産業が盛んで、
工場がたくさんあるんです。

ラメをねじり合わせて撚糸(ねんし)し、
これを上質なウールの糸に打ち込んで織っていきます。
このラメを撚糸したので、
どの方向から見てもキラキラ輝いて見えるんです。
そしてウールの糸とラメのコラボレーションのおかげで
ラメにありがちな、いやらしい光りかたをせずに、
品のある光りかたをするというわけです。



しかも、これ、実は、
あの有名なパリのブランド向けに作ったものなんです。
実際には採用はされませんでしたが‥‥。
僕としては、パーティなどで女性が着るような
ドレスやスーツに仕立てたいですね。

花壇。
縮絨加工と天日乾燥で
生地独特の風合いを出す。


花壇は、群馬県桐生市の織物会社、
ミタショーで作られています。
デザイナーの三田修武さんが手がけられたものです。

ニットのセーターのように見える織物素材なんですが、
縮絨(しゅくじゅう)加工という加工
(濡れた状態で生地を揉むことで毛が絡み合い、
 生地の表面が均一化すると同時に
 織目(組織)が密になる加工)と、
天日乾燥を行うことで、
このふんわりとした膨らみ感と
自然な風合いを作り出しています。



また、多色の糸を使って柄を表現しているので
触って楽しいだけでなく、
見ていても楽しい生地だと思います。
三田さんの生地は、
「世の中にこんな素材は見たことがない」と
思わせてくれるくらい完成度のレベルが高く、
人を楽しませてくれるものばかりです。

では、最後に特別に
ミタショーさんでの花壇の制作風景をご覧ください。



ぜひ、今年のマキノコレクションも
存分にお楽しみください。

【オリジナル】

ノワール キラキラ 花壇


【カズン】

キラキラ 花壇


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