第二の手帳人生、はじまる。
|
ーー |
はじめまして。
今日はお忙しいところありがとうございます。
あ、名刺が。
|
藤巻 |
別に名刺入れもあるんですけど、
名刺を内側のポケットに入れておくと
便利なことがわかりまして、
でも挟みすぎてふくらんじゃって、
あげくの果てに家にあったこのバンドを
手帳に巻くようになりました。
こうやって、名刺をはさんでおくと、
パッと取って、すぐ出せるんです(笑)。 |
ーー |
すでにヘビーユーザーの風格がある手帳ですが、
今年から使いはじめてくださっていて、
使い心地はいかがでしょうか、など
お話をうかがえればと思っています。
どうぞよろしくお願いします。
|
藤巻 |
よろしくお願いします。
じゃ、タテマエ抜きで言いますね。 |
ーー |
は、はい。 |
藤巻 |
ひさしぶりに使ってみたい手帳に
出会いました! |
ーー |
そ、そうですか!(ホッ) |
藤巻 |
いや、ぼくね、
手帳を持ったの、ひさしぶりなんですよ。
7年振りぐらいかな。 |
ーー |
7年振り。 |
藤巻 |
7年前までは、
わりとちゃんと手帳を使ってたんです。
ただ、あんまり向いてないなと思ったのと、
仕事も増えてきて、
それだけでは管理できなくなりまして。
この6年間は秘書がスケジュールを
管理してくれるようになったので、
手帳を持つのをやめていたんです。 |
ーー |
なるほど、なるほど。 |
藤巻 |
その間は、秘書がスケジュールを書いている
ノートのコピーを週末に受け取って、
翌週分と、だいたいいつも
1カ月くらい先のものを束にして
持ってたんですね。
ただ、会議とかちゃんとした席で
そのコピーを出すと、あまりにも‥‥
「それ、なんですか?」って
ま、失笑をかうわけです(笑)。
やっぱり手帳を持たなきゃな、って
意識しはじめていたところに、
森蔭さんが「ほぼ日手帳」のカバーを
つくったと聞きまして。
よし、ファッションの手帳を持とう、
と思って、京都のモリカゲシャツで、
この手帳を買いました。 |
ーー |
ありがとうございます。
そうすると、きっかけは
森蔭さんのカバーのデザインを気にいって。 |
藤巻 |
そうですね、まずはそうです。
ところがですね、
使い出したら、これが、
ものすごく使いやすかったんですよ。 |
ーー |
それはよかったです!
使いやすいと思ってくださったのは、
どんなところでしょう? |
藤巻 |
まず、スペースがたっぷりあるのが、
ありがたいです。
メモをとるのが好きなので、
ものすごく、書くんですよ。
それも、大きな字で書いたり小さな字で書いたり、
それこそ気分で書くので、
スペースがたっぷりの、このゆとり。
|
ーー |
はい、1日ページの。 |
藤巻 |
ぼくなんかも昔、
ブランドものの手帳をもらって
使っていたことがあるんです。
それって、見かけはいいんだけど、
なにせ書くスペースが狭すぎて、
使いつづけられない。 |
ーー |
ええ、ええ。 |
藤巻 |
あと、どんなふうに書いてもかまわない、
ふところの広さ、ですね。 |
ーー |
はい、方眼は、
無地にも近い感覚で使っていただけるので
罫線にとらわれないで書くかたにも
ご好評をいただいています。 |
藤巻 |
見かけもよくて、使い勝手もいい、って、
なかなかないと思うんですよ。
でもこれは、便利。
自分の書きたいように書ける、
自分のオリジナルで使い切れるというのが、
いちばん気にいってるところですね。
おかげさまで、
手帳人生がまたはじまった、という感じです。 |
手帳の使いかた、フジマキ流。
|
ーー |
そうすると、使われているのは、
1日ページが中心でしょうか。 |
藤巻 |
そう、1日のページですね。
週末に受け取ったスケジュールのコピーを
まずは写していって、
やっぱりだいたい1カ月くらい先まで
書いてますね。
▲手前が、秘書のかたがスケジュール管理をしているノート。
奥が藤巻さんのほぼ日手帳。
最初、使いはじめのころは
どんなふうに使おうかなと思って、
時間別に細かく書いたりもしていたんですが、
じょじょに、だんだん無視しだして、ですね。
あるときは、線をひいて、
こっちにスケジュール、
こっちはメモにしてみたり。
メモのほうには、たとえば、
だれかが言った、いい言葉を
書いておいたり、気ままな感じで(笑)。
|
ーー |
では、先にスケジュールを書いてあって、
当日にその日のメモを? |
藤巻 |
そうです、そうです。
あと、日曜日はよく街を歩いてるので
紅茶とか飲みながら、来週のことを考えて、
こう、書いたりしてますね。
ああ、これがあるから
あの本買っておこうかなって考えたり。 |
ーー |
このナナメの線が引かれているのは
どういった?
|
藤巻 |
うん、バツはけっこう書いてますね。
あぁ、きょう終わった、バツ、
京都行くぞ、バツ、みたいな感じで(笑)。
躍動してる感じが好きなんですよ。 |
ーー |
‥‥つまりそれは、勢い? |
藤巻 |
あははははは。
そう、ルールはないんです。
9割がた意味はないかな。 |
ーー |
自由奔放な感じで‥‥ |
藤巻 |
人生、落書きですから(笑)。
こんな感じで、使いかたはほんとに雑です。
すみません(笑)。
みんなきっと、きれいに書くんでしょうね。 |
ーー |
ああ、いえいえ、
みなさん、いろんな使いかたをされてます。
几帳面に書いているかたもいらっしゃいますし‥‥ |
藤巻 |
生まれかわったら、
そうなってみたいもんです。 |
ーー |
いえいえ、自由に、
自由に使っていただくのが、
いちばんです。 |
藤巻 |
我ながら、すっごい自由ですよ(笑)。
どうもね、きっちり線があるのとか、
嫌なんです。
その線に沿って使わなきゃいけないようなのは。
こうやって使いましょう、みたいに
使いかたが決められてるようなのも、
ぼく、あまのじゃくなんでまったくダメで。
自分のオリジナルで使えるところが、
とってもいいんですよ。 |
ーー |
ちなみに昔、手帳を使っておられたときは、
どんなタイプの手帳だったんですか? |
藤巻 |
見開きでウィークリーになってるものでした。
ご覧になります? ありますよ。 |
ーー |
あ、よろしければぜひ! |
藤巻 |
いや、このあいだ家の棚を整理してたら、
たまたま昔の手帳が出てきたんですよ。
伊勢丹サラリーマン時代のやつなんで、
しっかりスケジュール管理に使ってるんですけど、
あらためて見たら、使いかたが
変わってない部分があることに気づきましてね。
これなんですけど。
1997年、13年前ですね。
|
ーー |
すごい、スケジュールがぎっしりですね。
なんて忙しい。
あ、やっぱり線を引いてる(笑)。 |
藤巻 |
そうそう、この頃からやってるんです。
この色分けなんかも、ルールはないんですよ。
この頃は、ブランドの導入をはかって
伊勢丹の4階をつくっているときで、
ものすごく仕事していた時期ですね。
ロンドン、ミラノ、パリコレ行って、
ああ、アントワープにも行ってますね。
ここなんか、きっと
すごい大事だと思ったんでしょうね。
思いっきりマーカーで塗りつぶして、
肝心の部分が滲んじゃってますよ(笑)。
しかし我ながら、よく動き回ってますね。 |
ーー |
1週間の密度がものすごく濃いですね。 |
藤巻 |
真面目なサラリーマン時代ですね(笑)。
でも、なんだかんだいって、
基本は変わってないみたいで、
ルールはなくて、その場その場の勢いで
書いてるあたり、とくに。 |
ーー |
スケジュール管理専門だったんでしょうか? |
藤巻 |
ページの余白にメモみたいなことは書いてますね。
これには、98年、99年には
こんなことをやりたいということが
書き込んであります。
なんとなく、3年ぐらいは先のことを
常にイメージしていたくて、
頭のなかで設計するクセがあるんですよ。
いや、昔の手帳を見返すのって、
おもしろいなぁ。
ほかの手帳はみんな捨てちゃってて、
たまたまこれだけ残ってたんですよ。 |
ーー |
「ほぼ日手帳」をお使いのかたは、
保管されているかたが多くて、
やっぱり、あとから読み返すとおもしろい、
とおっしゃってます。 |
藤巻 |
そうか、今年の手帳も残しておいたら
おもしろそうですね。 |
ハッとする言葉に出会う。
|
藤巻 |
あとね、これが好きなんですよ。
この、下に入ってる言葉。 |
ーー |
そうですか。うれしいです。
その日のページの言葉を、
その日に読まれるんですか。 |
藤巻 |
ええ、朝、まずその日のページの言葉を読むんです。
それから時間のあるときに、
その前後もなんとなくパラパラと読んで。
言葉って、ほんと、好きなんですよ。
ここからフッと、想像が広がっていって、
心のゆとりが生まれるっていうのかな、
手帳にこんなふうに
想像をふくらませてくれるネタが
いっぱいあるって、すごいですよ。 |
ーー |
なるほど、なるほど。 |
藤巻 |
で、いいなと思った言葉は
さっそく他所で引用したりして(笑)。
重松清さんの言葉もありますよね。
お仕事をごいっしょさせてもらって
それ以来のおつきあいなんですけど、
大好きなんですよ、あったかくて。
ここに載ってるのも、いい言葉ですよねぇ。
あるいは、知らない人の言葉だったら、
その人の本を読んでみようかな、とかね、
きっかけになるし。
こんなふうに、
ワンフレーズで、元気になったり、
ハッとしたり、言葉の力ってすごいですよね。
1行の言葉に心動かされますよ。
なんでも、核になることって、
全体の一部分だったりしますしね。
これ、すごい深いですよ。 |
ーー |
これまでのところでなにか、
印象に残っている言葉があったら
教えていただけますか? |
藤巻 |
たしか印をつけてるところがあるんですよ。
印は気まぐれなんですけど、
いい言葉だなーと思って、
星印をつけたんですよね。
あれ、どこだったかな‥‥ |
ーー |
あ、ここ、3月31日の言葉に
印がついてます。
「どんな道のりを歩んだって、
どこかにはたどりつく。」
「はじめに急ぐ者も、あとで走る者も、
ずっと歩いて行く者も、
どこかにはたどりつくもんだ。」 |
藤巻 |
そうそうそう。だから、たまに
意味のある落書きもあるんです(笑)。 |
どんどん詰め込む。
|
ーー |
お使いになって2カ月ちょっとの間に、
もうすっかり手帳が厚くなってますね。 |
藤巻 |
ええ、あるものはみんな使うタチなので、
手帳のポケットにも、
どんどんどんどん入れちゃって。
すでにヤバイ、バンドが必要(笑)。 |
ーー |
ちなみに、どんなものを
入れてらっしゃるんですか? |
藤巻 |
領収書とか、ショップカードとか‥‥
絆創膏も入ってますね。あと、写真。
この写真は、ぼくの師匠にあたる人が
お正月に亡くなって、
トリビュートで挟んであるんです。
伊勢丹の会長だった武藤(信一)さん、
ぼくの育ての親みたいな人なんです。
▲アナ・スイ(右から4人目)を囲んで。
三越伊勢丹ホールディングスの会長だった
故・武藤信一氏は右から3人目、左端が藤巻さん。 |
ーー |
大事なお写真ですね。 |
藤巻 |
いちばんの宝です。
これは、たぶん95年頃かな。
アナ・スイと伊勢丹の提携が決まった
記念すべき夜だったんですよ。
アナ・スイとご両親とご親戚と、
武藤さんはたしかまだ部長ぐらいのころで、
みんなでお祝いの席をもうけたんです。
ちょうどこのあたりから
伊勢丹の進撃がはじまっていって、
ぼくが伊勢丹バイヤー時代でいちばん燃えていた頃。
原点のひとつですね。 |
ーー |
大事なものを手帳に入れつつ、
手帳はお出かけのときにも、
持ち歩いてらっしゃるんですか。 |
藤巻 |
そうです、かならず。
手帳と筆記具はつねに
トートバッグに入れてます。
ぼく、トートバッグが大好きで。 |
ーー |
こちらのお店も、オリジナルの
シャツとトートバッグだけを。 |
藤巻 |
そうです、そうです。
森蔭さんにデザインしてもらっている
「CRUM」のトートバッグのポケットに、
すっぽり入るんですよ。
ホラ、こんな感じ‥‥
|
ーー |
わ、おそろい! |
藤巻 |
これ、トートバッグにインナーをつけて、
付け替えられるようになってるんです。 |
ーー |
で、きょうはグリーンのギンガム。 |
藤巻 |
トータルコーディネイトも万全です(笑)。
色とかね、持つものには、
やっぱり妥協したくないので。 |
ーー |
お店に並んでいるシャツやトートバッグ、
空間まで、コーディネイトされているような
気がします。 |
藤巻 |
ここがぼくの拠点で、戻る場所で、
ぼくの心臓部分と言ってもいいです。 |
ーー |
多岐にわたる活動をされている
藤巻さんの、ここが落ち着く場所なんですね。 |
藤巻 |
そうなんですよ。
それにしても、このトートバッグ、
すっごいなんでも入ってるなぁ(笑)。
いろんなものが入ってるんですよ。
えっと、あれ? 手品の道具、きょうは‥‥ |
ーー |
手品の道具がトートバッグに?(笑) |
藤巻 |
きょうは入ってないですねぇ。
残念だなぁ。
ひとを笑わせるのが大好きなもんで、
かばんにも、手帳にも
そういうネタを常にしのばせているんです。 |
ーー |
いえ、もうじゅうぶんに(笑)。
手帳、たのしんで使っていただいていて
ほんとによかったです。 |
藤巻 |
たのしいですよ。
こうやってイイモノを手にすると、
ひさしぶりに、燃えますね。
ぼく、あきっぽいもんで、
こういう出会いはうれしいんです。 |
ーー |
あきっぽいんですか? |
藤巻 |
好きなことにはものすごく執着するんですけどね。
そうじゃないことは、5分であきる。
これはつづいてるから、
じゅうぶんハマってますね。 |
ーー |
よかった(ホッ)。 |
藤巻 |
これは、一生使いつづけますよ。 |