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「8182」ができるまで
- 伊藤
- イブルというと、
いわゆる「韓国のお布団」として知られていますから、
本国ではちょっとほっこりしたというか、
生活に密着した道具の印象があるように思います。
でも「8182」のものには洗練を感じるんですよ。
とても素敵なものを作ってらっしゃいますよね。
- 香
- ありがとうございます。
現地のものとは、
また雰囲気が違いますでしょう?
- 伊藤
- はい。たとえばキルティングのピッチ(縫い線の幅)。
細いんですよね。
- 洋奈
- このピッチができる工場が限られてることもあって、
とりわけ今回のものが細いので、完成したときは
「ああ、いいものができたな」と思いました。
新しい世界というか、新鮮な印象がありますよね。
- 伊藤
- このサイズのピッチは、今まで、なかったんですか。
- 洋奈
- 生地としてはあるんですけど、
お布団にはありませんでした。
それができる工場を探すところから始めたことが、
とても面白かったです。
- 伊藤
- ありがとうございます。
完成してよかった!
- 洋奈
- いやあ、ほんとうに!
- 伊藤
- それでは、お2人のブランド
「8182」(はちいちはちに)について
教えていただけますか。
どういう成り立ちなんでしょうか。
- 洋奈
- 元々は、私が18年ほど前に
韓国雑貨を輸入するお店を始めたんです。
そのときにイブルと出会いました。
使い心地がよく、
アトピーを持っている私にも気持ちよくて、
洗ってすぐ乾くという良さもあったので、
実際に自分が使うために輸入をして
販売を始めたんですす。
そこから長年販売をしてたんですけれど、
向こうの工場を紹介していただいて、
オリジナルアイテムを作るようになりました。
実際にブランドとして立ち上げたのは
4年ほど前のことです。
- 香
- 最初は8182(はちいちはちに)という名前ではなく、
イブルは韓国雑貨の一商品でした。
- 洋奈
- それをブランドにしてみるのはいいかなと思って。
- 伊藤
- それは、やっぱり需要が増えてきたってことなんですか。
- 洋奈
- それはありますね。タイミングもあったと思うんです。
イブルっていうものが日本でも
浸透してきたというか。
- 伊藤
- イブルって、韓国では問屋街で
売っているじゃないですか。
韓国のお友達に、
「すっごく素敵だよね、どういう存在なの?」
って訊いたら、「んー?!」だったり、
「え、何が?」って感じなんですよ。
- 洋奈
- きっとそうですよね。
- 伊藤
- いろいろ知りたくて深く掘り下げようとしても、
「別に、前からあるものだし」みたいな感じで。
私たちにはすごく新鮮なんですけれど。
- 洋奈
- 「おばあちゃんが使ってたもの」
っていうイメージが韓国の方にはあるみたいです。
- 伊藤
- おばあちゃん。なるほど。
- 洋奈
- 色も韓国特有の赤とか黄色とか、
原色のものが多いので、
なぜそれを日本の方が好きなの? みたいに、
韓国の方は不思議に思うみたいです。
- 香
- おばあちゃんの家にあった、とか、
地方に行ったらあった、みたいな感じ。
- 伊藤
- そういえば、
「若い人たちで、使ってる人はいないよ」
とまで言われてしまいました。
- 洋奈
- そうなんですよね。
- 香
- 確かにそう、韓国の若い人は
たぶんあまり使ってらっしゃらない。
- 伊藤
- でも問屋街にはいっぱいありますよね。
- 香
- あります、あります。
あんなに消費できないっていうくらい。
- 伊藤
- 私、2024年の秋に
20年ぶりぐらいに韓国に行って、
問屋街で比較的落ち着いた色味のイブルを見つけ、
やっぱりこれって素敵だなあと感じたんです。
それで買って来て友人たちに見せたんですよ。
紹介したいなと思って。
- 洋奈
- そうなんですね。
- 伊藤
- 洗えるし、いろいろな使い方ができるじゃないですか。
- 洋奈
- そうなんですよ!
- 伊藤
- 「そもそも」を知りたいんですが、
なぜお2人は韓国と繋がったんですか。
- 洋奈
- たまたま韓国旅行に行ったんです。
その時はこれが最初で最後かなという感じで
「一度は行っとかないと」って。
それがきっかけだったんですよ。
- 香
- パック旅行で、私も一緒に。
- 洋奈
- 二人とも初めて行ったんです。
そしたら、すごく面白くて。
- 伊藤
- へえー!
その時はソウルですか。
- 香
- ソウルでしたね。
雑貨が、すごく新鮮に感じられて。
- 洋奈
- 色とかデザインに惹かれてしまった。
あ、こんなに近くの国なのに
何も知らなかったっていう衝撃もあったし、
「焼肉とキムチしか知らなかったなぁ」って。
- 伊藤
- とくに雑貨に惹かれて?
- 洋奈
- はい。デザインがすごく優れていたり、
こういう暮らしのものを使うなんて、
知らないことばかり。
そしてその時に出会った人たちとの
ご縁が始まりとなって‥‥。
- 伊藤
- それが18年前?
- 洋奈
- はい、2007年の秋でした。
- 香
- 11月1日が仕事を始めて18周年だったんですよ。
- 洋奈
- 初めて行ったのが、その半年前ぐらいだったのかな。
「これは面白いから日本に紹介できたらいいなあ」
ということを思い、向こうで出会った方に相談したら、
「すぐやればいいじゃない」。
日本語のできる韓国の方だったんですけど、
そう言われて「そっか」ってそのときに思って。
- 伊藤
- すごくないですか、それ。
初めて行ってから半年後に仕事に!
- 洋奈
- そうなんですよ。
ほんとにその勢いで始めました。
ショップもオンラインだったこともあって、
始めやすかったというのもあります。
- 伊藤
- その前もそういうお仕事をされてたんですか。
- 洋奈
- いや、全然違う仕事でした。
ヨーロッパのファッション関係、
コレクション系の雑誌を作る編集者でした。
- 伊藤
- えっ。すごい。
- 洋奈
- そこから韓国に行ったことをきっかけに、
なぜか急に韓国にベクトルが向いて。
- 伊藤
- そんなことって、あるんですね。
- 洋奈
- 友達にも驚かれてます。
「まさかの韓国! ヨーロッパじゃないの?」みたいな。
- 伊藤
- そこからお店を始められたわけですが、
他にどんなものを売られてたんですか。
- 洋奈
- 文具的なもの、アクセサリーもありますし、
向こうのブランドの洋服です。
- 伊藤
- じゃあ買い付けて撮影をして、紹介して、
オンラインで売っていた。
- 洋奈
- 今もファッション系のアイテムは
続けているんですけれど、
「8182」はイブルとヌビに特化しているんです。
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
12月25日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
fog linen work
バスマット(厚地、薄地)
2018年の、
「ほしいものはたくさんある。」
という鼎談から生まれたバスマット。
水しぶきを気にしないで使える、
大きなサイズのバスマットがずっと欲しかったのです。
使い始めて5年経ちますが、
さらりとしたリネンが、
お風呂上がりの足元を、
気持ちよく迎えてくれる。
私の暮らしになくてはならない存在になっています。
洗って乾かしてもへこたれず、
いつでもきれいさっぱり。
今回作ったのは厚地と薄地の2種類。
お好きな肌触りをえらんでくださいね。
(伊藤まさこさん)
이블(イブル)
はじめてソウルを訪れたのは、
20年くらい前。
布の美術館や博物館をめぐり、
旅から帰ったあと、
自分なりのポジャギ(*)を作る‥‥という取材。
毎日、朝から晩まで、
目にするのは布、布、布。
とくに問屋街の物量には圧倒されたものでした。
限られた時間で、
気に入りの布を探すというミッションを抱え、
必死に問屋街を歩き回る私。
それでも、
疲れないし、飽きることなどない。
「好き」という気持ちはすごいのです。
昨秋、娘と久しぶりにソウルを訪れ、
問屋街に入ったとたん、
思い出したのは「イブル」という存在。
そうそう、こんなキルティングの生地、
前も見た気がする。
いや、でもだいぶ洒落たものになっているぞ。
その時会った友人に、
イブルって韓国の人にとってどんな存在?
と尋ねると、
「?」と不思議そうな顔。
あまりに生活に定着したもの過ぎて、
今の私たち日本人から見た「おしゃれ」なイメージに、
ピンとこないんですって。
今週のweeksdaysは、
韓国のイブルをご紹介。
今の私たちの暮らしに合うような、
シックでシンプルなものができましたよ。
(*)ポジャギは褓子器と書き、韓国伝統的の布。
端切を縫い合わせてパッチワークでつくる。
日本の風呂敷のように物を包んだり、飾ったりして使う。
服が私に与えてくれるもの
- 伊藤
- 滝口さんは
「nest Robe」のプレスをされてきて、
今はご自分でも、
ものづくりをしてらっしゃるんですよね。
- 滝口
- そうですね。
当時はプレスを担当しながら、
企画会議などにも入っていたんです。
「この時期にはこういうものを作ると売れやすい」
というようなこともわかってきて、
15年ほど、企画から宣伝まで携わりました。
うちの母が美容師で
子どもの頃から手を動かしているのを見ていたので、
「自分もモノを作る人になりたいな」
という想いはずっと心の中にはあったんです。
それで大学は服飾系に進んだんですけど、
卒業していざ服に携わる仕事となると
なるべく自分でも作りたいなと、
今でも思っています。
- 伊藤
- 先ほど伺ったリネンのスカートのほかには、
どういったものを作られているんでしょう。
- 滝口
- 刺繍の図案を考えて、
デニムに入れたりしています。
実際の作業は、
山形でパッチワーク教室の講師もしている義母に
お願いしているんですけど。
- 伊藤
- あら、お義母さまが刺繍を?
- 滝口
- はい。デザインは、
私が10代の頃に気に入って着ていた
ヴィンテージの服があって、
その刺繍をベースに
オリジナルのものを考えているんですけど、
刺繍は義母にしてもらっているんです。
サンプル制作の段階では、
手伝ってくれている妹がそれを送ってくれて、
「糸の色はこっちでお願い」という感じで、
お菓子といっしょにお戻して、完成に持って行く。
そんなふうに一緒に仕事をしているんですよ。
- 伊藤
- それはお義母さまはうれしいでしょうねぇ。
- 滝口
- そうだといいなぁと。
「やらなくちゃ」って、
日々の張り合いにはなってるみたいですね。
完売したりするとなおさら。
- 伊藤
- それはすごいですね!
次に作るものの計画もあるんですか。
- 滝口
- ちょうど今「fofofofa」で制作しているのが
「DWELL TROUSERS」(ドゥエルトラウザーズ)
というデニムです。膝から下くらいに
筆記体の欧文をプリントしているんですが、
その言葉は、制作に携わっているみんなからの
「守りたい場所」をテーマにしたものなんですよ。
- 伊藤
- 言葉、ですか。
- 滝口
- たとえば、もう閉店してしまって今はないけれど、
子どもの頃父と行った喫茶店の名前。
そういった自分の中で大事にしたい場所や言葉を、
一緒に作っている方たちと持ち寄って、
ばーっと並べたデザインです。
- 伊藤
- おもしろそうな試みを
いろいろされているんですね。
好きな服は、歳とともに変わりますか?
- 滝口
- ベースの部分というか、
自分のスタイルは変わらないかもしれません。
アクセサリー感覚で
「こういうのが欲しい!」という
突発的な欲求はあります。
- 伊藤
- パンチのある柄ものとか。
- 滝口
- まさにそうですね。
刺繍、大切にしたい言葉たち‥‥。
菊池(亜希子)さんもそうなんですけど、
伝えたいこと、表現したいことがたくさんあるんです。
- 伊藤
- それはすごいことですよ。
- 滝口
- 「言いたいことを言わせてくれよ」
みたいな、
ちょっとパンクなバンドマンに
近い感覚かもしれないです(笑)。
- 伊藤
- かっこいい!
それが服づくりに現れてますね。
- 滝口
- 菊池さんとのものづくりでは、
どちらかというと私は受け止める係になろうかな、
と思いながら彼女が、私を、ひきだしてくれる事が
たくさんあるんです。
「あ、こういうことなんだ」と、
自分で驚いたりするんですよ。
方向性が合わないことももちろんありますけど、
それはそれで出来上ったものがおもしろい。
「こう合わせたら私も好きだなあ」とか
方向性が合わない事があっても
それ自体が面白い! (笑)
周りにいるいろんな方もサポートしてくれるから、
ライブみたいな感覚で作っています。
- 伊藤
- すごくいい関係ですね。
私たちはセレクトショップだから、
自分たちでアトリエや工場をもって
一からものを作っているわけではないんです。
作ってくれる人がいる。
そこが、滝口さんの仕事と、少し違うかも。
「こんなのが欲しい」というのを伝えて、
それを作ってくれそうなところを探したり。
- 滝口
- 一から作るとなると、
途方もなく時間がかかりますものね。
- 伊藤
- 生地からとか、
もっと考えたら糸からとかね。
食材づくりのような感じですよね。
- 滝口
- 天然素材の服を作る工程の話を
聞いたことがあるんですけど、
糸をつくるまでに、
まずは畑からリネンの草を刈ってきて、
1度水に浸して腐らせる
ということをするらしいんですよ。
そうすることで、レッティングといって
草から繊維を取り出しやすくなる。
たとえばエジプトでは
雨があまり降らないので、川の水に浸し、
雨が降るヨーロッパでは、
畑の土の上でレッティングをする。
その結果、同じリネンであっても、
場所が違うとできる糸の色が全然違うんですよね。
- 伊藤
- すごいですね。
結局、やっていることは「農業」ですよね。
私も日本酒を作っている方に取材したときに、
「お酒造りは農業だ」って言われてました。
水と土からお米を作って、
それを醸造してできるわけだから、
なるほどたしかに、と思って。
- 滝口
- 本当にそうですよね。
考えてみれば服もそうだなと気づきました。
知れば知るほど奥が深いというか、
何ごともわかった気になったらいけないなと。
何年も仕事をしてきましたけど、
学ぶ気持ちは忘れちゃだめだなと感じます。
- 伊藤
- でもそういうことを知っていると、
愛着が湧いて手離せなくなりそうですよね。
- 滝口
- なります。
大切にしなくちゃって。
- 伊藤
- ALWELのことも、
こんなに素敵な服をどうやって作ってるのか
詳しく聞いてみたいですよね。
今度、展示会にご一緒しましょう。
- 滝口
- ぜひ伺いたいです。
たのしみにしていますね。
洋服好きが、きっと好きになる
- 伊藤
- 滝口さん、こんにちは。
今回はALWELのベストを着てくださって
ありがとうございます。
- 滝口
- こちらこそありがとうございます。
どちらを表にして着るかで雰囲気が変わるので、
着こなしがたのしめました。
- 伊藤
- どちらを表にしようか、
迷っちゃいますよね。
- 滝口
- そうなんです。
ファーを外にするときは、
中に白いシャツを着て、
ショートパンツにタイツを合わせると
きれいめのコーディネートになって
素敵だなと思いました。
- 伊藤
- いいですね!
そんな時は、小さいバッグを持ったりして。
- 滝口
- そう!
この服には「小さいバッグ」が似合いますよね。
ファーの質感が、小物でほっこりした印象になって。
この服、手持ちのいろんな服に合う気がするんですよ。
- 伊藤
- 私もこのベストを見たとき、
「これはいい!」って思ったんです。
1枚着るだけで
なんとなく今らしい着こなしになりそう。
- 滝口
- そう「今の感じ」がするんですよね。
ぐんと冷えてきたけど、
電車の中は暖房で暑いし、
分厚いアウターやダウンはまだ着たくないな、
というときにも、ちょうどよさそうです。
車移動が多い方にもいいですよね。
- 伊藤
- たしかにそうですね。
気温が変わりやすい季節にも便利かも。
寒いときには、
ファーを中にして着たら暖かかいんです。
- 滝口
- 機能的なだけじゃなく、
着方によって表情が変わるのも
すごくうれしいですよね。
- 伊藤
- そうなんですよ。
裾を絞ったり、
前のジッパーを開けたり閉めたり、
着る人に自由がありますよね。
ファーを外にして着たとき、
腕の下の脇線のところだけファーがないでしょう。
ここまで全部ファーだったら、
着たときにちょっとモコモコになりすぎる。
さすがだなぁと思うんです。
- 滝口
- 全面ファーだったら、
シルエットも変わってきちゃいますものね。
- 伊藤
- ナイロンを表にしてジッパーを閉めたときに
首元のファーがちょっと出るのもかわいいんです。
ALWELって、こういうバランスが、
ほんとに上手なブランドなんですよね。


- 滝口
- わかります。
細かいところまで、
きちんと計算されて作られている気がします。
- 伊藤
- 縫製もきれいで、
ものすごくいいんです。
ALWELって、洋服がすごく好きで
ベーシックなものはひと通り持っているという方も
気に入ってくれるブランドかもしれない。
「おや?」みたいな発見があるんですよね。
- 滝口
- それはあるかもしれません。
だから1枚でも「なんか素敵じゃない?」って
思わせてくれるんでしょうね。
- 伊藤
- 滝口さんは、
毎シーズン、お洋服を買われますか。
- 滝口
- 買います。
自分のと、娘の分もあるので、
部屋が服でいっぱいになっちゃって(笑)。
そろそろ断捨離しなくちゃと思っています。
- 伊藤
- ふふふ。そんなに?
お洋服が好きなんですね。
- 滝口
- 好きですね。
私の中では「服を買う=夢を買う」
みたいに感じているところがあって。
こんな自分になりたいなぁという
願望を満たしてくれるツールだと思ってます。
- 伊藤
- 「夢を買う」。
そうかもしれないですね。
- 滝口
- 基本はデニムやオーバーオールに
Tシャツやニットを合わせることが多いんですけど、
「こういう恰好がしたいな」
「これにあれを足そうかな」
なんていつも考えています。
- 伊藤
- スカートはあまり穿かれないですか。
- 滝口
- 多くはないんですけど、
実はいま、私が穿きたいスカートを
作っているところなんです。
- 伊藤
- あら。
ご自身のブランドで?
- 滝口
- ボリュームたっぷりのリネンのスカートなんです。
足元にぶわっとギャザーが広がって、
マニッシュな生地感と女性らしさが感じられるものが
欲しいなと思って進めています。
- 伊藤
- いいですね。
そのスカートにもこのベストは合いそう。
- 滝口
- 絶対合うと思います!
それから菊池亜希子さんと一緒に取り組んでいる
「fofofofa」というものづくりプロジェクトがあって、
最近はハーフパンツが私たちの中でブームなんですよ。
以前作ったものが人気だったので
今回コーデュロイ生地でも作っているんですけど、
それにこのベストを合わせてもすごくかわいいと思います。
ちょうどお尻が隠れるベストだから、
ハーフパンツの裾を見せて、
タイツも合わたらバランスもよさそうです。
- 伊藤
- そう、丈感もいいですよね。
色も素敵だし。
- 滝口
- 黒でも茶でもなく、
何でもあわせやすい絶妙なカーキですよね。
- 伊藤
- 今日は滝口さんに3パターンほど
着こなしを紹介いただきましたけど、
最初にこのベストを見たときに
「あの服に合わせよう」って
ピンときたんですか。
- 滝口
- そうですね。
このベスト自体が、
いつもの私というか、
無理をして頑張っていないときの自分の装いに
ぴったりだなと感じました。
デニムにも合うし、
シンプルだけどアクセントにもなる。
きれいな感じで着たいときは
ファーを外にしてヒールの靴に合わせてもいいし、
反対側はアウトドアっぽく着られるのもいいなって。
もう、コーディネートが無限に浮かんできました。
- 伊藤
- 考えるのがたのしいですよね。
これを羽織るだけで “いい感じ” になるし。
「ALWEL」の服って、
どれもすごくわかって作られてるなって思うんです。
Tシャツも、ありそうでない、
欲しかったと思えるものが見つかったり。
- 滝口
- わかります。
うちの70歳になる母が
山形の実家で美容師をやってるんですけど、
「ALWEL」のTシャツをプレゼントしたら
とても気に入って着てるんです。
ブランドには詳しくない人なんですけど、
毎日のように着ていて、
それでも生地と縫製がいいからなのか、
全然くたびれた感じにならないんです。
いつもの母が、なんかおしゃれなんですよ。
- 伊藤
- 素敵。
そう、おしゃれになるんですよね。
- 滝口
- 不思議です。魔法かなって。
袖のカットなのか、首のカットなのか、
何かが違うんでしょうね。
- 伊藤
- すこし前にALWELのジャンパーも
取り扱わせていただいたんですけど、
それもとってもよかったんですよ。
いろんなバランスが、すごくいい。
そんなブランドだなと思います。
ふわふわ、もこもこ
ふらりと入った骨董屋で、
小さな瀬戸の片口をしげしげと見ていると、
「なんて気持ちよさそうなコートなの!
触ってもいい?」
お店の方にそう声をかけられました。
はじめて会ったその人は、
とてもにこにこうれしそうで、
私も思わず答えたのでした。
もちろん! って。
もこもこのコートが縁で、
話が弾み、
晴れてその片口は私のものになったのですが、
その方に声をかけられていなかったら、
もしかしたら買っていなかったかもしれない。
話は変わって、この週末。
撮影用にと娘から借りてきたくまのぬいぐるみを、
なんとはなしに玄関に置いてみたら、
いつもの我が家の玄関が、
チャーミングになった。
小さくて白くてすこし古ぼけたそのくまが、
そこにいるだけで、
こんなにもうれしい気持ちになるなんて!
今週のweeksdaysは、
ALWELのリバーシブルファーベスト。
ふわふわ、もこもこって、
人の心をやわらげる作用があるよね。
デザインは「人」なんです
- 臼井
- 伊藤さんは、インプットしたことは、
しばらく寝かしておく、っていう感じですか。
- 伊藤
- どうなのかなぁ。どうだろう?
- 臼井
- ひょっとして、しぜんと
周りの人に話してるんじゃないかな。
- 伊藤
- 「こんなものを見たよ」とか
「これ、よくない?」とか。
たしかにそういうことは、すぐにしていますね。
「weeksdays」のチームLINEには、とくに。
- 臼井
- やっぱり。僕と伊藤さん、似ていると思うんですけど、
インプットしたことを、すぐに発信してるんだと思います。
伊藤さん、内緒にしてること、あります?
あんまりないと思うんだけどなあ。
- 伊藤
- ふふふ、どうでしょうね。
でもやっぱり人と会ってしゃべると、
インプットもアウトプットもして、広がりますよね。
話すといってもそんな根を詰めて
「デザインとは何か」じゃなくて、
「あそこに行ったらこんな店がよくて!」みたいな。
- 臼井
- 先日、アパレルの人たちと話す機会があったんです。
僕たちがやってる家電とか工業デザインとは
全然違う世界なんだけれど、
話してみたら根っこは一緒だなって思えて。
いいものを作りたい、そういうものを届けたい、
そういう気持ちは一緒なんですよね。
そういうクリエイティブな仕事の人たちと話すと、
自分自身の学びになるって感じがしました。
- 伊藤
- それもまた、
チームのみなさんのいい仕事につながる。
- 臼井
- はい。デザインって人なので、
いい環境を整えていい仕事のやり方をデザインし、
いい若いデザイナーたちがフルスイングできる場所を
つくりたいなって思うんです。
今は、僕が具体的な製品のデザインを
するわけじゃないので、
そういうフルスイングできる場所を用意するのが
マネージャーとしての僕の仕事です。
- 伊藤
- そういう意味でもこの場所を作られたのは
すごくいいことなんですね。
- 臼井
- すごくよかったと思います。
いいタイミングで、ラッキーでした。
でもまさかのコロナはびっくりしましたよ。
せっかく作って人が集まっていたのに、
コロナ禍を機に誰も来なくなってしまった。
でも、出社しなくても仕事ができるようにもなり、
それでワークライフバランスをとってる人たちも
いっぱいいるわけで、
たとえば介護をしながら仕事をする人もいるのに、
それを無理に出社しろとは言えない。
人が集まることの難しさを感じます。
僕としては、ここをもっと魅力的で、
行きたいっていう場所にしないと、って思います。
「行きたいオフィス」っていうか。
- 伊藤
- 臼井さんは執行役員になられて、
マネジメントというか経営側の視点も
もたれていると思うんですけれど、
デザイナー出身で経営側ということについて
葛藤みたいなものはありますか。
- 臼井
- 僕はデザインやブランドの仕事をしてるじゃないですか。
すると「お前は非財務だからいいよな」みたいな印象を
持たれることがあるんですよ。
「お前の言うことは青臭い」とか
「お前の言うことは金のにおいがしない」とか。
もちろん数字をターゲットにすることは大事だけれど、
僕が言うのは
「僕たちがやってるのは別に非財務じゃない。
でも短期的な売上ではなくて、長期財務だと思ってる。
こういう活動ってじわじわ効いてくる話なんだ。
僕たちは未来に向けて考えてるし、
お客さん側から考えている」と、
一所懸命説明するんですよ。
これから儲かる話をしてるんだよ、と。
- 伊藤
- でも経営って1年ごとに区切りがあるわけじゃないですか。
- 臼井
- そうです、そうです。
ただデザインやブランドのことをやっている僕には
あまりそこの追求はないんですよ。
だから周りから見るとお気楽な人みたいな感じに、
どうしても、なっちゃうんですよね。
- 伊藤
- そんなことないと思いますけれど。
- 臼井
- あはは、でも逆にそれを利用してね、
ちゃんとお客さん側から見ることをやろうと。
海外の家庭調査訪問もそれなんですよ。
僕がすごくインプットをたくさんしているのは、
世の中に変化が起きてるところを自分で見ておきたいから。
数字を見ている人たちが手が届かないところを
ちゃんとやっときたいなあと強く思うんです。
これはちょっと真⾯⽬に。
これ、経営にとってすごく大事なことじゃないかなって。
でね、これがわかる経営者を増やしたいんですよ。
だってリベラル・アーツ(*)って言ったって
日本の経営者は腰が引けるじゃないですか。
センスとかデザインって言葉に過敏。
(*)リベラル・アーツは「人が、自由になるための学び」。いろいろな分野から広く知識を吸収して、人格の成熟を目指すこと。
- 伊藤
- そうですね。なんででしょうね。
- 臼井
- それを言われるのがすっごい嫌なんじゃないかな。
「あなた、センス悪いですね」って言われたら
もうショックで立ち直れないんだと思いますよ、たぶん。
伊藤さん、ズバズバ言いそうだけど。
- 伊藤
- そんな、言わないですよ~。言えないですよ。
- 臼井
- でも柔らかく言うでしょ?
- 伊藤
- いやあ‥‥、ま、身近な人には、ね。
- 臼井
- ほら。あはは!
ほんと、そこ、大事でね、
松下幸之助も裏千家でお茶を点てていたし、
阪急の小林一三だってすごい文化人だし。
昔の経営者ってすごい文化人じゃないですか。
- 伊藤
- 確かに。そうね。そうか。
- 臼井
- だから伊藤さんとかやられてるようなこと、
とっても大事なんです。
ファストファッションができてから、
ファッションって、下が上がったけれど、
上は下がりましたよね。
昔の方がおしゃれな人がもっといっぱいいた。
- 伊藤
- そうか。確かに。
ところでお宅訪問、国内でも、
Panasonicのデザイナーが、
じっさいのユーザーのお宅を訪れるような
取材も見てみたいです。ユーザーとして。
- 臼井
- ああ、それ、面白いと思いますよ。
コロナで今まで見えなかった家の中が
SNSで公開されるようになりましたよね。
日本人って今まで
家の中をあんまり公開してなかったから、
インテリアを人が見ることがなかった。
これ、見栄えだけの話じゃなくて、
実際の体験とか動線とか、
家の中ですごく大事なそういうことが含まれているから、
取材を通してそれがわかるといいですよね。
- 伊藤
- テレビはふだんクローゼットにしまってるんですとか、
夜、階段が暗くて怖いからLEDのランタンを置いてます、
とか、家電のことにしても、
「そうか!」って思うことがありそう。
- 臼井
- そういう具体的なシーンがあった方が
「これをうちに置き換えたら」って考えられますね。
文章で言われてもなかなかイメージが浮かばないけれど、
そういう具体的なものを見せてあげると。
そういう意味で、伊藤さんの軽井沢のおうちは、
いろんな実験の要素が盛り込まれていて面白いですよね。
- 伊藤
- またぜひいらしてくださいね。
- 伊藤
- 話が尽きませんが、そろそろ予定のお時間に。
臼井さん、お忙しいなか、
今日はありがとうございました。
またぜひゆっくりお話をさせてくださいね。
- 臼井
- こちらこそありがとうございました。
またぜひいらしてくださいね。
僕も遊びに行かせてください。
インプットの多さ、アウトプットのはやさ
- 臼井
- ところでこのHalf Round Table、
奥行きがあるように感じるんですよ。
半円なのに、それ以上というか。
面白いなあと思って。
- 伊藤
- これ、ちょっと秘密があって、
完全な半円じゃないんです。
2つ合わせても正円にはならないんです。
- 臼井
- そうなんですか!
- 伊藤
- 半円をいちばん美しくしよう、
っていうコンセプトで設計をしていて、
ほんのすこし奥行きを足しています。
- 臼井
- あぁ、それはすごい!
- 伊藤
- その天板の大きさもそうですし、
脚のラインであるとか、
こまかいところを家具のチームといっしょに
かなり考えてつくったんです。
角に丸みを持たせすぎるとファンシーになりすぎる、とか。
といってシャープにしすぎると
「かっこよく」なっちゃうから違うね、とか。
- 臼井
- 伊藤さんの細部への目はすごいですよね。
軽井沢の家にあったカウンターのハイチェア、
裏っ側がかっこよかったですもんね。
脚の付け根のところ。

撮影=有賀傑
- 伊藤
- あれはソファーに座ったときに見えるので、
始末をきれいにしてほしかったんですよ。
でもそれはね、プロの方たちがやってくれるので、
私はこれがいい、って言うだけなんです。
- 臼井
- 最初に言ったように、テーブルにくっつけてみませんか。
よいしょ‥‥(運ぶ)。
ぴったりでしょう。
- 伊藤
- すごい! イメージ変わりますね。
お仕事のテーブルが、かわいくなりました。
面白いなあ、角と丸の違い。
- 臼井
- あえて離して置いたのは、
仕事をするところと、
ちょっとブレイクするところが、
いい感じで離れてるのがいいかなって思って。
でもくっつけても、違う世界がありますね。
- 伊藤
- 臼井さん、いかがですか、半円家電。
- 臼井
- あはは! でも炊飯器だったら
中のお釜まで作んなきゃいけないからなぁ。
- 伊藤
- そっか、そういうこと。
かんたんじゃないですよね。
- 臼井
- ピザ釜は全体が丸いほうがいいし。
‥‥空気清浄機ならできるのかな。
- 伊藤
- 「weeksdays」では
半円の傘立てを扱いましたよ。
- 臼井
- 「半円にならないかな?」は、
課題として面白いですね。
いろんなものに当てはめて考えると。
「これほんとうに、四角くなくちゃいけないの?」って。
家電の場合は中の機構の問題がありますけれど、
昔、Panasonicでデザイナーズ商品っていうのがあって、
たとえばこれ、当時の電話機なんですよ。
面白くないですか。
- 伊藤
- え、かわいい!
見たことなかったです。
- 臼井
- このCDラジオも引き算のデザインです。
以前、社長が言ってくれたんですが、
「デザインを良くしたら、
お客さんは大事にしてくださるから、
それが一番ロングライフになるよ」って。
だからデザインってすごく大事なんです。
- 伊藤
- 「いい家具はずっと使える」のと一緒ですね。
- 臼井
- やっぱり丁寧に作って丁寧に使ってもらう、
っていうことがすごく大事だと思います。
Panasonicの家電も、
社内で過剰品質って言われてるぐらい、
“やりすぎ家電”なんですよ。
ちょっとやりすぎじゃないの、
もっと効率化して安くできるじゃない? みたいに。
でもいちユーザーになったら
そのくらいやってくれてるから
お金を払いたいって思う。
僕はそのくらい過剰でいいんじゃないのかな、
と思うんです。
同時に、デザインはシンプルにすることを考えながら、
「シンプルになったあとをどうするか」も
考える段階に来ているんです。
具体的に言うと、家電のリサイクルや、
修理をしてもっと使えるようにする、
という取り組み。そういう違う軸が要るなと思います。
2023年からは、さまざまな理由で当社グループに
戻ってきた家電をもう⼀度使える状態に再⽣しご提供する
Factory Refreshもスタートしました。
- 伊藤
- なるほど‥‥。
- 伊藤
- 臼井さん、月に1回は海外に行かれるのは、
インプットをすごく大事にしているということだと
おっしゃっていたんですよ。
そんなにインプットして大丈夫なんですか。
頭の中がぱんぱんになっちゃいそう。
- 臼井
- え! そんなこと考えたことなかった。
スケジュールはちゃんと調整してもらってるんですが、
それでもこの間、上海に0泊2日だったかな、
そんなこともあるんだけれど、
いくらネットで情報や動画が見られても、
やっぱり自分で行って見て体験したものが
全てじゃないかなって思うんです。
北欧に行ったときにはサウナに入って
冷たい海に飛び込みましたよ。
- 伊藤
- あら、それはどんなお仕事なんですか。
- 臼井
- 家庭訪問調査です。
これがめちゃくちゃ面白いんです。
- 伊藤
- わぁ‥‥一緒に行きたいくらい興味があります。
- 臼井
- でしょ。やっぱり暮らしなんです。2025年の
「世界幸福度ランキング」(国連がまとめたもので、
「人生に対する自己評価」をもとに算出している)で、
日本って55位なんです。
前年の51位から下がった。
で、フィンランドは8年連続1位なんですよ。
それはなぜなんだろう、
幸せに暮らすってどういうことだろう、
ということを実感したくて。
フィンランドの人、
インテリアがとてもきれいなんですよね。
冬は夜が圧倒的に長くて、家で過ごす時間が長いから。
そして家を訪問したいというと、
多くの人が快く迎え入れてくれる。
逆に、スペインでは、まず家に上げてくれない。
「だったらバルに行こうよ、家は来なくていいよ~」って。
どうしてもってお願いして訪ねて見たら、
家のなか、そうとう、散らかっているんです。
だから人を呼ばないんでしょうね。
でもスペインの人は
外でみんなでお酒飲んでおいしいものを食べて、
絶対人生楽しいよなあっていう暮らしをしている。
そんなふうに幸せなところを
ちょっと見に行くという仕事です。
- 伊藤
- そのインプットしたことは、
どんなふうにアウトプットなさっているんだろう。
- 臼井
- インプットをしたことはけっこうすぐみんなに
いろんなところで話します。
たとえば僕、部下全員に、
誕生日メッセージを送ってるんですよ。
毎日のように。
多いときで1日に7人ぐらいになるんですけど、
誕生日の朝起きたら、誕生日メッセージが、
AIじゃなくて僕が書いたものが届くように。
僕、これ、部下とのコミュニケーションにおいて
すごく大事にしていることなんです。
ほら、スマホだと、このくらいの文章です。
- 伊藤
- (スマホをのぞいて)えっ、すごい!
ちゃんと長いお手紙。
- 臼井
- これを1対1のコミュニケーションでやってます。
面白いんですよ、履歴が残ってるから、
1年前にはこんな話をしたということもわかる。
「え、もう双子が1歳になったの?」って書いたら、
「そりゃそうですよ、1年経ったんですから」みたいな。
それで子どもの写真を送ってくれたのを見て、
「そっか、お父ちゃんを、ちゃんとやってんだなぁ」って。
- 伊藤
- そうなんですね。すごい。
- 臼井
- だからデザイナーの名前と顔と仕事内容は
だいたいわかってますね。
くじけそうになるときあるんですけど、
海外出張のときは海外先から書いてます。
「今どこどこにいるんだけど」って。
- 伊藤
- お忙しいなかで!
- 臼井
- 眠たいときは「やばいっ」。
時差で日本は次の日になっちゃう!
と思って、慌てて書いて。あはは。
でもいいコミュニケーションになるんですよ。
だから入れたものをすぐ出してるんだと思います。
引き算をしよう
- 臼井
- 僕が1990年にプロダクトデザイナーになったとき、
デザインは技術の視覚化でした。
中に入ってる技術をいかにお客さんに伝えるかみたいな。
だからいい音のものだったら
いい音が出ることを強調したデザインのラジカセを作った。
音を誇張する、みたいな感じですね。
でも僕が日本に戻って来た2016年、
みんなに言ったのは「引き算をしよう」ということでした。
電子レンジに何百個のメニューがあっても、
使ってない機能があったらお客さんは使いづらい。
じゃあいらないものを省いてって
ほんとにプリミティブなものを作った方が
いいんじゃないの、って。
伊藤さんの軽井沢のおうちなんて
もうまさに引き算の家みたいな感じじゃないですか。
無駄なものがいっさいない。
「え、ドアもないの?」みたいな。
巾木すらない、カーテンもいらない、
「え、バスタブ? いらないでしょ」って。
あれはもうすごく伊藤さんならではの
「行き切った」感じだけれども、
僕たちもそれに近いものっていうか、
引き算をしようよ、と。
でも引くのって、すごく難しいんですよ。
ことに、会社の中でやるのは。
足すより引くのが難しい。
- 伊藤
- そうですよね。
私「ほぼ日」では引き算担当。

カーテンも巾木もいらない。ダイニングテーブルもなし。(撮影=有賀傑)
- 臼井
- それ、すごく大事ですよ。
お客さん側から見たときに。
- 伊藤
- 「これ欲しいけど、ここにロゴやタグがなければいいのに」
っていうのありません?
- 臼井
- あります、あります。
- 伊藤
- そういうもやもやを一気に解消してるのが
私たちのお店です。
- 臼井
- うん、うん。
そうだ、これ伊藤さんに紹介しましたっけ。
- 伊藤
- あら、これ、開化堂さんの茶筒?
- 臼井
- そうそう、でもね、蓋を開けると‥‥。
- 伊藤
- あれ? あっ!
- 臼井
- これ家電なんですよ。
- 伊藤
- えっ! スピーカー?
- 臼井
- 蓋の開閉がオン・オフで、
こうして蓋をすると音楽が止まるんですよ。
- 伊藤
- 商品ですか。そんなの作ってるんですか。
- 臼井
- これね、ミラノ・サローネ(国際家具見本市)に
出るっていうときに作って、賞をもらったんです。
実際に生産もしたんですよ。
1個30万円で100個限定で作り、一瞬で売り切れました。
会社の中では
「こんな30万円のBluetoothスピーカーなんて
誰が買うねん」みたいな話になってたらいまわしになって、
それでもなんとか。

ミラノ・サローネで受賞したときのトロフィー(木馬型)。
- 伊藤
- まさしく京都をベースになさっているから
できたものっていう感じがしますよね。
- 臼井
- 「Kyoto KADEN Lab.(京都家電ラボ)」
というプロジェクトで、
ほかにも京都的な家電のプロトタイプがあるんです。
水道の水のように、
豊富に物をつくれば人々の暮らしが豊かになる、
それがこれまでのPanasonicだったけれど、
今はそれをやる会社がたくさん出てきてる。
日本の家電メーカーもどんどんなくなってきている。
じゃあ今のPanasonicは何をやるのっていうと、
こういうことをやらないと生き残れないんじゃないか。
それでプロトタイプを作っているんですよね。
- 伊藤
- 私たちが知ってるPanasonic製品、
冷蔵庫とかドライヤーとか
家の電気基盤みたいな「必要なもの」のほかに、
こういうこともなさっていこうと。
- 臼井
- そうですね、はい。
より文化的な側面、日本らしさを入れ込んで、
もう1段階ステップアップしたいなと。
バランスが難しいんですけれどね。
やりすぎるとトゥーマッチになっちゃうから。
でもこういうプリミティブなものを試行錯誤中です。
まだ、答えはないんですけど。
- 伊藤
- 私が臼井さんに提案してるのは、
おうち1軒まるごと、なんです。
リノベーションして、
さりげなくPanasonicのものがあるっていう。
「あ、冷蔵庫がこういうふうに置かれてるんだ。
こういうふうに食洗器って使えばいいんだ」
みたいな自然光が入る一戸建てのショールーム。
そういうのがあったらいいんじゃないかなあと思って。
‥‥って勝手に言ってるんですけど。
- 臼井
- でも京都だったらあるかもしれないですね。
町家の再生プロジェクトと一緒にやるとか。
中国では家の中を丸ごとPanasonicでリノベして
老人ホームや住宅をやったりしてるんですよ。
- 伊藤
- 壁の色と家電を揃えるとか、
そういうのもいいかもしれないですね。
- 臼井
- そうですね。確かに。
- 伊藤
- そういえば移動できるテレビも驚きましたよ。
- 臼井
- そういう、僕たちの既成概念を
壊していくことはできると思うんですよね。
伊藤さんの軽井沢の家を拝見してから
ずっと家のことを考えているんですよ。
たとえばコンセントって隠せないのかな、とか。

暮らしをどこまで引き算できるか?と考えながら作った軽井沢の山荘。コンセントもなければないでどうにかなる。ただ「ちょっと不便くらいがいい」と思えるのは、別荘だからなのかも?(撮影=有賀傑)
- 伊藤
- 深澤直人さんのアトリエでは、
壁のむこうに空調機器があって、
天井近くのスリットから温冷風が流れ、
床近くのスリットでは吸気をするしくみになっていて、
いつも風がめぐって常に快適な温度と湿度でした。
それもデザインですよね。
- 臼井
- うちの空調チームが、今まさに、
そういうことをやってますよ。
東京の⽇本橋に実験施設をつくって、
時にはお客様と共創しながら
デザイン起点でのソリューション開発を推進しています。
今、エアコンってすごく飛び出してるんですよね。
省エネをしようと思うとどうしても
奥行が必要になるんですよ。
- 伊藤
- 軽井沢は、もともと夏でも
空調機器がいらなかった地域なんですけれど、
だんだんいるようになってきて、
うちのところもおそらく5年先には暑くなるから、
先につけちゃいましょうって。
だから天井に埋め込みました。
家を作るときって、家具の配置を考えがちだけれど、
それよりも電気の配線をどうするかとか、
そういうのをきれいにすることを
すごく考えましたね。
- 臼井
- 順番からいうとそうですよね。
- 伊藤
- とはいえ、かんたんには作れないですものね、家。
私の東京の住まいも賃貸ですし。
‥‥Half Round Tableの話に戻りますが、
スペースや見た目だけじゃなくて、
角がないことで近くを歩くときの動線が
とてもスムーズになるんです。
- 臼井
- いま置いている入口脇も、絶対そうですよね。
四角だったら当たっちゃう。
- 伊藤
- これで半円がすごくいいなと思って
薪ストーブも半円形でつくってもらったんです。
- 臼井
- あれ、いいですよね。
- 伊藤
- はい。そしたら職人さんがやってみましょうって言って。
結果、やっぱり動線がうまくいって。
臼井さん、家電にも半円はいかがですか。

形や色合いは、Half Round Tableを意識してデザイン。結果、同じ空間にあってもすっきり。(撮影=有賀傑)
- 臼井
- 半円家電! あはは。
- 伊藤
- そう、半円家電。
- 臼井
- 天井の角に取り付けるコーナーエアコンっていうのを
昔やってたんですけどね。
コーナーに置くと風が部屋中に拡がる、っていうので。
- 伊藤
- あら、それ、やってないんですか、今。
- 臼井
- 今はやってないんです。
CI-VA、わたしのつきあい方 伊藤まさこ
CI-VAのバッグは母と共有していて、
今、私の家にあるのが今回販売する、
ブラックとグレー。
季節を問わず、
服をえらばず。
過去に何度も販売してきたCI-VAですが、
この2色はだんとつで使い勝手がいい。
「はじめてのCI-VA、何色がおすすめですか?」
と問われたら、
ブラックかグレーはどうでしょう? と、
胸を張って薦めたい。
私の中でも特に気に入りの2色です。
バッグはふだん、
木のオープン棚に収納しています。
かごバッグやトートバッグは、
そのまま棚に。
CI-VAのバッグやクラッチなど「平たいもの」は、
箱に立てて収納し、
引き出しのようにして使っています。
こうすることで型崩れも防げるし、
中に何が入っているか一目瞭然というわけです。
お財布、スマートフォン、鍵、
ハンカチ、リップクリーム、ハンドクリーム、
それから水筒にエコバッグ。
私のふだんの荷物はこの8つが基本。
バッグの形はフラットでかなりコンパクトな印象ですが、
意外なほど容量はたっぷりで、
基本の荷物がすべて収まる。
水筒(350ml)を入れても大丈夫なんです。
このバッグは、
最初の販売の時に買ったから、
使い始めてもう6年。
ふだんのお出かけにはもちろん、
旅にも何度も持って行きました。
6年前に比べると、
革の様子はしっとり、つややかになりました。
特にこれといったお手入れはしていないのですが、
使うごとにいい感じになっていく、
それってすごいことなのではと思うんです。
仕事柄、革製品をたくさん見てきましたが、
CI-VAの製品は、とてもなめらかで上質。
ヒモ部分は長さ調整のため、
何度も結んだりまた元に戻したりを
繰り返しているにもかかわらず、
擦り切れない。
これはバッグのすみっこにも言えること
(すみっこが擦り切れたバッグほど
もの哀しいものはないですよね‥‥)。
ずっと使いたくなる理由は、そんなところにもあるのです。
こちらはここ最近の私のCI-VAコーディネート。
アウターにブラックを持ってくるときは、
中は肌馴染みのいい色でまとめます。
デニムコートやレオパード柄のコートを着る時は、
ブラックを。
また、フラットなので、
ショルダーバッグとしてはもちろん、
バッグインバッグとして使えるところもいい。
‥‥と好きなところを語りだすと、
止まらない。
CI-VA好きが集まって、
CI-VA愛を語る。
そんなコンテンツもいつか作ってみたいなぁ。
違和感がないことのたいせつさ
- 臼井
- 僕は、チームのみんなに、
課題の本質がどこにあるか、ということを
考えてもらうようにしています。
僕もいろいろぶつかってきたんですよ。
プロダクトデザインで家電製品を作ることにかけては、
僕もプロフェッショナルだったんですけど、
営業や技術の人にいろいろリクエストされて、
「お店で一番目立つ冷蔵庫を作ってくれ」とか。
- 伊藤
- えっ、家電売り場で目立っても仕方ないですよねえ。
- 臼井
- そうなんです。だから
「すいません、僕、お店で一番目立つものを
買ったことがありません。
だからそういうのを作んない方がいいと思います」
みたいな感じでやってきました。
課題の本質は違うとこにあって、
いいデザインとは何かをどうやって決めるかっていう。
- 伊藤
- どうやってお客様に届けるか。
- 臼井
- そうです。そのプロセス。
CMの話も同じことで、
どういう表現がお客さまに届くのか、
っていうことなんですよね。
- 伊藤
- それこそ小型のシェーバーのCMで、
洗面所の棚に置かれているシーンを見ると、
「あ、こんな小っちゃいんだ」とわかるし、
これが家にあると、こういう風景になるんだなって
イメージがつかみやすい。
- 臼井
- シェーバーって黒と銀で
なんだか「男の世界」みたいな印象でしたよね。
でも洗面所に置いとくんだったら
石ころみたいな方がいいんじゃないのかな、って。
サニタリールームに置いて違和感がないものを、と。
- 伊藤
- 石ころというキーワードは、臼井さんが?
- 臼井
- いえ、若いデザイナーが、
河原で石を拾った、っていう話から始まりました。
じゃあそういうマテリアルを探そう、と。
僕はもう細かいデザインはやっていないんですよ。
- 伊藤
- そうなんですね。
技術の進歩もありますよね、
小っちゃくできたっていうのは。
- 臼井
- 今までって、技術が先にあって
デザインはその後に考えることが多かった。
だけどこれはこのサイズがいいから
このサイズに入れ込もうとなった。
その技術がすごいと思います。
このサイズ、握り心地がよかったり
出張のときとかに鞄にポイって
入れていくだけでいい。
Type-Cだからスマホと一緒の充電器で充電できるし。
- 伊藤
- すごいですね。優しい感じがする。
さきほど「サニタリールームに置いて違和感がない」
というデザインだとおっしゃっていましたが、
私、家電売り場で冷蔵庫を買う時、
宣伝のことばや写真がいっぱい、
冷蔵庫のドアに貼ってあるのを見て、
これだと家に置くイメージが
全然わからないって思ったんですよ。
- 臼井
- ああ、POPがいっぱいだから。
- 伊藤
- そう。だから取ってほしいとお願いしたら、
お店の人、取ってくれました。
- 臼井
- いい電器屋さんですね。
- 伊藤
- その冷蔵庫、料理家の友達が使ってたんですよ。
購入のきっかけは、やっぱり使ってある様子。
食洗器もそうです、あるかたのおうちで
「これいいですね」と品番を控えさせてもらいました。
友達がどういうふうに生活に馴染ませてるかとか、
うまく使ってるのを知ると、
「これが欲しい」ってなりますね。
- 臼井
- パナソニックのデザインフィロソフィー(哲学)で、
3つのプリンシパル(重要だとしていること)があって。
それは
「人の思いを察して」
「場に馴染んで」
「時に順応する」
ことなんです。
とくに場に馴染む、空間にとけ込むことは、
すごく僕たちのデザインとしては大事にしてる。
人に威圧感みたいなのを与えない、
あくまでも人が主役。
家ってそういう場所ですから。
- 伊藤
- 人が主役。そういう哲学でいろいろなものを
デザインなさっているわけですね。
- 臼井
- うちの会社って音楽のための機器もデザインしてるし、
コーヒーメーカーなどの調理器具も
もちろんデザインしてるし、
自転車もやってるんですよね。
- 伊藤
- 自転車も?!
- 臼井
- そうなんですよ。
唯一日本でツール・ド・フランスで優勝してるの、
Panasonicなんですよ。
そういう、なんかこう、
風を浴びたり音楽を聞いたり、
コーヒーの香りを感じるみたいな暮らしを、
ちょっと豊かにするようなものを作ってるんです。
そういう暮らしをお客さんに届けたいな、
っていうのはずっと考えています。
伊藤さんのキャリアも、
「食」(食器)から入られて、「衣」もなさって、
今「住」に強く興味をお持ちじゃないですか。
僕、すごく面白いなあと思ってて。
衣食住、全部なさっているのが。
- 伊藤
- どんどん広がってきた感じです。
- 臼井
- でも、衣か食か住か、手段が変わってるだけで、
目的はあんまり変わっていないんじゃないのかな。
心地いい暮らしってなんだろうと、
伊藤さんはずっと考えられてるのかなって。
そういう面で、家電のデザインとは違うけれど、
目指してるところはすごく似てるんじゃないのかな、
そんなふうに思っているんです。
- 伊藤
- 最初の「食」で、
料理家のかたのテーブルのスタイリングでは、
テーブルの上のことだけだったのが、
「じゃあ、テーブルもいいものがあったら」とか、
「テーブルのあっち側の窓のカーテンは」と、
どんどん広がっていったような感じがします。
窓からどんな光が差し込むかも
スタイリングのひとつだと思っていて。
- 臼井
- そうですよ、世界観を作ろうと思うと、
絶対そうなりますもんね。
- 伊藤
- 私がアシスタントをしていた30何年前は、
撮影となったらハウススタジオを借り、
家具も借りて運び入れ、
全部コーディネートをしていたんです。
それが、私が30歳ぐらいのとき
『クウネル』っていう雑誌が出てきて、
そういうのがなくなったんですよ。
普通の人の暮らしが注目されるようになった。
「やっぱり作り込んだものじゃないのがいいんだ」と
あらためて感じました。
ちょうど私に子どもが産まれて
家の中にいることが多かったことも
関係していたのかもしれません。時代の流れと共に。
臼井さんって、なにをしている人?
- 伊藤
- 以前は京都にはデザインの拠点がなかったんでしょうか。
- 臼井
- 元々は滋賀と大阪で、
デザインの部署がバラバラだったんですよ。
それを一つにまとめようと思って。
そのときにどこにまとめるかすごく悩んで、
いろんな人に話を聞いたときに、
「10年先だったら東京でいいけれど、
100年先を考えるんだったら京都がいいよ」
と、京大の教授に言われたんです。
特に暮らしのデザインをしているのなら、
日本の豊かな暮らしと、人との繋がり、
文化が残っている場所にすべきだと。
- 伊藤
- 京都には“人間らしい”感じがあるわけですね。
- 臼井
- そうですね。それで京都にしようと決めたものの、
空いてるオフィスがないなかで、
たまたまここが見つかったんです。
元々は大手の通販事業の会社が入っていました。
いちどスケルトンにして、デザインのメンバーみんなで
どんなオフィスにしようかを考えました。
- 伊藤
- 滋賀と大阪にあったデザインの部署は、
こんな雰囲気ではなかったんですか。
- 臼井
- 工場の隅っこにデザインの部屋みたいなのがあって、
なんか黒い服着てる秘密結社みたいな感じでしたよ。
ほかのみんながデザイン室にはなかなか入りづらい、
みたいな雰囲気で。
だけどやっぱりいろんな人が集まる場所にしたかった。
そのためには街中で、
人が来やすいような雰囲気にしようと。
ここを作ってから採用もすごく増えたんです。
- 伊藤
- あ、そうなんですか!
- 臼井
- キャリア(転職)の人からの
応募数も一挙に上がって。
- 伊藤
- すごいことですね。
「ここで働きたい」ってことですよね。
- 臼井
- そうです、そうです。
空間って人を引き付ける力がある。
こういうことにコストをかけることについて、
僕たちみたいなメーカーだと
疑問視する声もあったんですが、
当時のトップの人たちの中に
「やっぱりデザインはいい環境でやることが大事だよ」
「いい環境で、デザインがよくなるんじゃないかな」
と言ってくれる人がいて。
あと松下幸之助が、商売は大阪でやってたんですけど、
いろんなこと考えるのは京都だったんです。
だからデザイン部門が京都にあるのは、
この会社のストーリーテリングとしても
すごく合ってるよね、と。
- 伊藤
- こうやって自然光が射し込むところは
家電に絞れば私たちが使っている環境に近いし、
閉ざされた空間で蛍光灯の下、みたいな机の上だけで、
っていうのとは、違う気がしますね。
- 臼井
- しかも、外に出たら生活感があり、
外国人がスーツケースをガラガラと運んでいる。
そういう世の中の動きみたいなものを
肌感で理解できる場所でデザインするっていうことが
大事かなあって。
- 伊藤
- なるほど、だんだんわかってきました。
いま、臼井さんの仕事ってなんですか。
- 臼井
- 僕、何してるんですかね。
- 伊藤
- そういえば。
- 臼井
- 基本的にはPanasonicのデザイン部門の責任者です。
もともと僕たちがしているのは家電の
プロダクトデザインだったんですけど、
プロダクトデザインだけをよくしても
お客さんに伝わらないと思い、
僕はけっこう仕事を越境してやっているんです。
たとえば、もともとマーケティングにあった
コミュニケーション‥‥CMとか作ってる部隊も
デザインに持って来たりとか、ブランディングとか、
ちょっと違うことまで広げているんですよ。
デザインをすることをデザインしてるみたいな。
最近PanasonicのCMがちょっと変わったと思いません?
以前に比べて、タレントさんではなくて、
物中心でデザインをしているんです。
ほかにもSNSとかでバラバラだったデザインを
統合していったりも。
そういう全体の世界観づくりですね。
- 伊藤
- 20何万人も社員の方たちいらして、
いろんな部署があるのを、
デザインを通してまとめる。
- 臼井
- そうです、そうです。
デザインとしてのパナソニックの世界観を
作っていくためには
どういう理念とかどういうガイドラインとか
どういうシステムで運用していくか。
それ作って現場に戻していくんです。
- 伊藤
- なるほど。あまりにも規模が違うけれど、
私たちの「weeksdays」もそうなんです。
インスタの投稿の写真はこういうルールで、
みんな好き勝手に上げないでね、
こういう言い回しはやめましょう、
みたいなことをちゃんと考えるようにしているんです。
- 臼井
- そういうことです。
全く一緒だと思いますよ。
「それはちょっと、うちっぽくない」って。
でもこれってガイドラインを明確にできる話じゃなくて、
やってる人はイメージがあるんだけど、
明文化できない。
- 伊藤
- 「weeksdays」のチームは小さいので、
私が伝えたことに対して
すぐにみんなからの反応がありますが、
臼井さんの率いるチームは
すごく大きいじゃないですか。
- 臼井
- いや、もう、めちゃくちゃ大変ですよ。
毎日、けっこう、仁義なき戦い、じゃないですけど。
例えば、意図は合っていたとしても
表現されていることがブランドのパーソナリティーに
合っていないものを⾒つけたら
その時は「こう変えませんか」と⾔います。
- 伊藤
- あら、本当にそういう言い方なんですか。
もうちょっとハッキリ怖い感じとか? ふふふ。
- 臼井
- いや、そんな感じなんです。
- 伊藤
- でも臼井さんに言われたら、
反抗的な気持ちにはならないように思います。
- 臼井
- 言い方としては、
「これあと何年ぐらいやろうと思ってます?」とか。
「これ5年ぐらいやります?
5年先もこれでいいと、そこまで考えてます?
‥‥考えてないですよねぇ」みたいな。
- 伊藤
- だんだん、こう、埋めていくんですね(笑)。
なるほど。
日本らしさを考えるきっかけ
- 臼井
- 伊藤さん、こんにちは。
今日は京都までお越しくださって
ありがとうございます。
- 伊藤
- こちらこそありがとうございます。
臼井さん、こんな素敵なお部屋でお仕事を?
- 臼井
- ありがとうございます。
- 伊藤
- Half Round Tableを
使ってくださっていて
とても嬉しいです。
- 臼井
- これ、実はこのテーブルの奥行きと
ぴったりおんなじサイズで、
高さも同じなので、
くっつけても使えるんですよ。
最初、Half Round Tableが届いたときは、
テーブルに寄せてセッティングしていたんです。
メンバーと、角が半円になるのが面白いなあ、って。
いまはこうして壁に寄せて
飾り棚のようにしていますけれど。
- 伊藤
- とっても嬉しいです。
このオフィスは、ちょっと住宅のような
おもむきがありますね。
- 臼井
- オフィスに暮らしを引っ張りこんでいる、
みたいなイメージなんです。
だから、ほら、
ターンテーブルとコーヒーとお花。
- 伊藤
- いつもそうなんですか?
- 臼井
- あはは、お花は、すみません、
今回の取材のために
僕がいつも自宅に飾るのに
買いに行っているお花屋さんが
器といっしょに用意してくれたんです。
- 伊藤
- ご自宅はお近くに?
- 臼井
- ここ(京都の中心部)から1時間ぐらいです。
でも毎日ここに来ているわけではないんですよ。
- 伊藤
- たしか、月に1回は海外に行かれているとか‥‥、
あ、「weeksdays」の読者のみなさんには
臼井さんは「はじめまして」ですね、
そこからお話をすると‥‥。
- 臼井
- 『& Premium(アンド プレミアム)』という雑誌で、
うちの女性デザイナーが対談をさせていただいたのが
ご縁のはじまりでした。
- 伊藤
- そうでしたね。
- 臼井
- そのあと、社内イベントで
トークセッションを開いたとき、
伊藤さんに京都に来ていただいたんです。
伊藤さんがうちのシンプルなドライアイロンを
使ってくださっていたのを知ったので、
ぜひ、と思ったんです。
トークセッションは、
暮らしの豊かさ、がテーマでしたね。
それで伊藤さんの軽井沢と東京の二拠点生活とか、
無駄なものをそぎ落としていく暮らしについて
お話をききたくて。
- 伊藤
- 臼井さんたちは、そのトークセッションの前に、
軽井沢の家に来てくださって。
- 臼井
- セッションでは「研ぎ澄まされたものってやっぱりいい」
という話で盛り上がりましたね。
- 伊藤
- 社内向けの動画配信だったので、
目の前に人がいなかったんですが、
社員のみなさんが20万人くらいいらっしゃると知り、
全員がごらんになっているわけではないでしょうけれど、
その数にびっくりしつつ、
楽しくお話をさせていただきました。
その時、糸井さんの「ほぼ日」で
「weeksdays」というお店をやっている、
という話をしたら、
Half Round Tableに興味を持ってくださって。
- 臼井
- 家に欲しいなって思ったんです。
でも今回、伊藤さんが「weeksdays」の対談に
呼んでくださったと知ったうちのメンバーが
「臼井さんの家よりも会社でちゃんと使ってください」。
- 伊藤
- このオフィス(Panasonic Design Kyoto)も、
お家っぽい雰囲気がありますよ。
この臼井さんのお部屋に限らず、
上のフロアに大きなキッチンがあったりして。
- 臼井
- そうです。ベランダに植栽をしたり、
ビールサーバーやワインセラーを入れたりとかして、
夜はみんなで飲んだりするような感じです。
暮らしの延長みたいなところで
デザインすることが大事だと考えて、
こんなふうにしているんですよ。

「京都家電ラボ」制作の、ワインクーラーのプロトタイプ。
- 伊藤
- Panasonicといえば、臼井さんを知る前、
深澤直人さんのアトリエにおじゃましたとき、
たまたま電灯のスイッチが気になったんです。
そうしたらPanasonicなんですよ、って、
それが「so-style(ソー・スタイル)」
だと知って、「あ、発見!」っていうか。
- 臼井
- Panasonicって家電のイメージがあるんですけど、
そういったスイッチ類もそうですし、
実はコンビニの決済端末とか
病院のマイナカードの認証機械も、
よーく見たらPanasonicって書いてあるんですよ。
あと空港の顔認証ゲートとか。
もちろん家の中でお料理したり
髪の毛を乾かしたりするのもそうなんですが、
家の外に出ても、けっこういろんなところで、
人々の暮らしのとこに溶け込んでるんです。
- 伊藤
- 初めましての方に向けて言うと、
臼井さんはその中で“偉い”人として。
- 臼井
- いやいやいや! そんなことはないですよ。
- 伊藤
- デザイナーから初めて役員になった人、ということで
ニュースになっていましたよ。
臼井さんの仕事の歴史を
教えていただいてもいいですか。
- 臼井
- はい。僕は1990年、
バブルがはじけるちょっと前ぐらいに入社しました。
ちょうどその頃ってテレビ売上がすごいときで、
僕も最初はテレビのデザインをしていました。
もちろん液晶テレビとかじゃなくて
ブラウン管の箱みたいなテレビのデザインを
10年ぐらいしていたんです。
そのあとに家電に移って、洗濯機などのデザインをして、
次にアジアの家電を全部統括するみたいな仕事になり、
中国にデザインセンターを作るからっていうので、
2007年、北京オリンピックの前の年、
40歳になるちょっと前ぐらいに上海に行き、
9年間を上海で過ごしました。
上海の最後の方は中国の人だけじゃなくて
ヨーロッパや中米の人も一緒に、
多国籍にやっていたんです。
自分で欧中連携っていう言葉を勝手に作って、
ロンドンのデザイン事務所と一緒に仕事をしたり。
ところが日本に帰って来たら
「日本は全然変わっていないぞ?!」っていうので、
これはまずい、と、そのことが
この京都の拠点をつくるきっかけになったんです。
- 伊藤
- 「日本は全然変わっていない」というのは、
ご不在の9年間、まったく変わらなかった、
という印象を持たれたということですか。
- 臼井
- はい、その危機感です。
2007年から2016年って、中国では
北京オリンピック、上海万博があり、
もうすごい勢いでぶわーっと伸びた時期なんですよ。
- 伊藤
- とても面白いときに上海にいらしたんですね。
- 臼井
- そうです、そうです。
僕が最初に行った2007年って、
上海の電器屋に行ったら
Panasonicのテレビが他の⽇本メーカーの製品と⼀緒に
エスカレーター前のいいところに
並んでるような感じだったんです。
でも途中で日本メーカーはなくなり、
韓国メーカーさえもなくなり、
最後にはもう電器屋自体がなくなって、
全部eコマースに移る、みたいな。
5本くらいだった地下鉄が20本近くになったし、
中国はそのくらいの変化をしたんですよね。
- 伊藤
- 街の人はそのめざましい変化に
ついていってるんでしょうか。
- 臼井
- ついていっています‥‥けれど、光と影があります。
めちゃめちゃついてってる人がいる一方で、
配送とかはデジタルにならないから、
ほこりだらけのバイクが街にあふれたり。
そういう激しいコントラストはありますが、
全体的に見ると、すごいスピードで、
日本は中国に一挙に抜かれていった、と感じました。
- 伊藤
- それをほんとに見てきたわけですものね。
- 臼井
- そうですね。だから日本に帰って来たときの、
変わってない感じに危機感をおぼえました。
「外堀、かなり埋められてるぞ」って。
ならば、僕たちはやっぱり
自分たちの強みでしか勝てないから、
日本らしさみたいなところの再定義をしようと、
京都っていう場所にしたんです。
- 伊藤
- なるほど。
やわらかなイメージ
自分で作るのもいいけれど、
時には誰かに作ってもらったごはんが食べたい。
そんな時に行きたくなるのが、
山の麓の和食屋。
ていねいで実直。
食べるとお腹がほんわかあったかくなって、
満ち足りた気分になる。
おいしいお米と、しじみの味噌汁。
魚はいつもいい焼き加減。
添えられた小鉢や漬けものは、
季節の野菜をふんだんに使っていて、
量も過不足なし。
思い立った時に、ひょいと行ける距離ではないから、
ますます恋しくなるのだけれど。
つい先日たのんだのは鯖の定食。
ふっくら焼き上げられた鯖は、
もちろんおいしかったのだけれど、
印象的だったのが、蕪の煮もの。
ほっくりとやわらかく煮てあるのに、
型くずれなし。
よくよく見てみると、
ひとつひとつ面取りしてあって、
口あたりがやさしい。
その小さな器の中の美しい蕪を見ながら、
そうか、遠くても通いたくなる理由は
こんなところにあるのでした。
今週のweeksdaysは、
Half Round Table。
半円のテーブルは、
見た目にやさしく、動線もスムーズ。
角がないというだけで、
こんなにもやわらかなイメージになるのだなぁ。
人も、丸くなると「角が取れた」なんて、
言いますものね。
コンテンツは、
Panasonicの臼井さんと対談。
そうそう、weeksdaysの定番、
CI-VAのバッグの再販も。
盛り沢山な1週間です。
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
12月11日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
Fatima Morocco
シンプルバブーシュ
(グレー、ホワイト、ブラック)
家の顔とも言える玄関なのだから、
そこに並ぶ室内ばきは、
気に入ったものを揃えたい。
履き心地がよく、
たたずまいの美しいものを。
値段も飛び抜けて高くなく、
一年中履けるものがいい。
ファティマ モロッコのバブーシュは、
どれもが合格点。
ことに、かかと部分に入ったクッションがふかふかで、
足に負担がかからないところがいいんです。
今回、
weeksdaysでご紹介するのは、
無地のロゴ無しタイプ。
すっきりした見た目は、
さまざまなインテリアに馴染みます。
履いてうれしく、
置いて美しい、
そうそうこんな室内ばきが欲しかったんです。
色は、
ブラック、ホワイト、グレーの3色。
インテリアに合わせてお好きな色をどうぞ。
(伊藤まさこさん)
Le pivot
ブロードロングシャツワンピース
(ブラック、ブラウン)
第一ボタンをきっちり留めたり、
または2、3個外したり。
襟を少し立て気味にしたり、
ベルトでウェストマークしたり。
中にパンツやスカートを重ねて、
ちょっとコート風に着たりと、
一枚でいろんな表情が作れるシャツワンピースです。
前からはもちろん、横のラインも、
また背中に寄ったギャザーもきれい。
シャツが長くなっただけではない、
見せ方(魅せ方)の工夫がそこかしこにあるんです。
一枚サラッと着ただけで様になりますが、
レースのストッキングやフワフワ靴下、
ブーツやスニーカーなど、
足元のおしゃれを忘れずに。
サンダルと合わせてもいいなぁ‥‥と思うと、
一年を通して着られるアイテムではないでしょうか。
(伊藤まさこさん)
COGTHEBIGSMOKEのトップス、こんなコーディネートで 伊藤まさこ 02 差し色に加えるなら、ぜひレッド
レッドに、COGのタグが映える。
このタグの後ろ姿を街で見かけると、
なんだか勝手に仲間意識。
つい話しかけたくなります。
「いいブランドですよね!」って。
そして、かなりの確率で、
COGの服を着ている人って、
すてきな大人の女性が多いんです。
今回、モデルをつとめてくれた
カイノユウさんもとてもよくお似合い。
ANNA LOOSE HIGH-NECK TOP(レッド)/COG THEBIGSMOKE
スカート ¥24,200/le ciel de HARRISS(株式会社 金万)
ブーツ ¥75,900/DIVINA(株式会社 金万)
シンプルなパンツはもちろん、
ギャザーたっぷりのスカートとも相性よし。
ANNA LOOSE HIGH-NECK TOP(レッド)/COG THEBIGSMOKE
ジャケット ¥48,400/Harriss(株式会社 金万)
スカート ¥24,200/le ciel de HARRISS(株式会社 金万)
ジャケットや、
コートにも。
「赤」って着るだけで、
インパクトがある。
そして着るだけで元気にもなるんです。
ベーシックなMID GREYやNAVYもいいけれど、
もしも差し色をワードローブに加えたいなら、
SCARLETもおすすめ。
このSCARLETのトップスは、
私自身が持っていて、
デニムに合わせたり、黒のパンツに合わせています。
印象的なカラーなので、
1泊2日の旅に持って行くことも。
同じパンツやブーツでも、
初日はトップスをグレーに、
2日目はレッドにすればイメージはがらりと変わる。
軽くて、畳めばコンパクトになるので、
旅行にはもってこいというわけです。
旅に、街に。
仕事にも。
きちんと見えて、でも楽ちん。
この冬、欲しいのはそんなアイテム。
COGTHEBIGSMOKEのトップス、こんなコーディネートで 伊藤まさこ 01 ベーシックに使えるグレーとネイビー
前身頃と後ろ身頃のバランスが絶妙なCOGのトップス。
気になる腰回りをカバーしつつ、
着た自分を引いて(鏡でチェック)みると、
全身のバランスがいい。
これ、本当にすごいと思うんです。
ANNA LOOSE HIGH-NECK TOP(グレー)/COG THEBIGSMOKE
ストレートスカート(ブラック・38)/SAQUI
ブーツ ¥97,900/trippen(トリッペン原宿店)
首回りは適度なゆとりが。
袖はぴたりとし過ぎず、
スッと見せてくれる。
素材のよさもあいまって、
ブラックのスカートにブーツ、
なんていうシンプルなスタイルもバシッと決まる。
大ぶりのピアスにしたり、
時にはスカーフを巻いても。
タートルニットなので、
髪はまとめてすっきり見せるといいみたい。
REVERSIBLE SLEEVELESS JACKET/ALWEL(2025年12月発売予定)
ANNA LOOSE HIGH-NECK TOP(グレー)/COG THEBIGSMOKE
ストレートスカート(ブラック・38)/SAQUI
ブーツ ¥97,900/trippen(トリッペン原宿店)
カーキのベストを上に。
裾からちらりとのぞくグレーがいい表情を見せてくれます。
ANNA LOOSE HIGH-NECK TOP(ネイビー)/COG THEBIGSMOKE
パンツ ¥35,200/Harriss × Keiko Okamoto(株式会社 金万)
ブーツ ¥49,500/DIVINA(株式会社 金万)
こちらはNAVY。
グレーのワイドパンツに合わせてみました。
NAVYは、
どんなアイテム、どんな色とも相性のいい色。
グレー、黒、または同色の
ネイビー同士でまとめてもいいし、
バッグや靴に差し色を持ってきても。
首元はこんな風にくしゃっとさせてもいい感じ。
寒い時に、首回りを守ってくれる。
それでいて、窮屈じゃない。
これから春までの、
数ヶ月、きっとあなた(私も)の
役に立ってくれるはずです。
ここに来れば
夏の終わり頃から、
骨董市通いが続いています。
きっかけは、とあるイベントのための器集め。
もう充分な量の買いつけができたにもかかわらず、
それでもまだ足が向く理由は、
そこで過ごす時間が楽しいから。
何度か通ううちに、
自分好みの店が分かってきて、
店主と顔馴染みになったりもして。
「こういう感じ、お好みでしたよね」
なんて、
奥の方からがさごそ言わせながら、
新聞紙で包んだ器を出してきてくれる。
ここに来れば、
なにかいいものが見つかる。
そんな店の存在って、
ありがたいことだなぁと思うのです。
今週のweeksdaysは、
COGTHEBIGSMOKEのトップス。
私にとって、
「ここに来れば、
なにかいいものが見つかる」
頼りにしているブランドなのです。
チャコさん流コーディネート
- 伊藤
- このバッグに合わせる、
チャコさんのお気に入りのコーディネートはありますか?
- 鈴木
- 毎回すごく考えているわけではないんですけど、
レオパード柄を持つ時は
着るものは無地とかベーシックなものを選ぶかな。
柄 × 柄だとごちゃついて見えるので、
バッグがアクセントになるように
バランスを取っています。
- 伊藤
- ブラックやホワイトは
どんな色の服にも合いますよね。
- 鈴木
- ブルーでもベージュでもブラウンでも、
幅広いカラーに合います。
もちろんシーズンレスに使えますけど、
これからの季節、
ホワイトのパキッとした色は
「冬の白」という感じで
コーディネートのアクセントになるかなと思います。
私は上下がデニムのときなんかに
ホワイトを合わせてます。
- 伊藤
- このレザー、
すごくしなやかで柔らかいけど
ちゃんと革の素材感もありますよね。
- 鈴木
- そうそう、
シボ(革表面の細かいシワ)のあるレザーを使ってます。
スムースレザーだと
ボールペンの跡とかつけちゃうんですけど、
これなら汚れも目立ちにくくていいですよね。
- 伊藤
- ボアはどういう感じで合わせられますか。
このモコモコを目立たせるには
服はボリューミーじゃない方がいいのかしら。
- 鈴木
- 私もそう思います。
例えばレザーのライダースのような、
男の子っぽいハンサムなものを合わせるといいかも。
- 伊藤
- チャコさん、ライダースお好きですもんね。
いつもすごく似合っていて憧れます。
- 鈴木
- 好きなんですよ~!
ボアと合わせると「甘辛」という感じで
バランスがいいと思います。
- 伊藤
- 甘くなりすぎなくていいですね。
ツイード生地のブラックも、
黒のジャケットに合わせて持ったら
かっこよさそうです。
- 鈴木
- 素材ちがいの黒、
かっこいいと思いますよ。
- 伊藤
- 足元はどんなものが合うでしょう。
- 鈴木
- パリは道が悪いから
私はふだんスニーカーが多いんですけど、
これからの季節はブーツにも合いますし、
「ポシェットP」にはヒールもおすすめです。
- 伊藤
- たしかに、クラッチ型だから
ちょっとドレスアップのときにもいいですね。
- 鈴木
- パーティーやお出かけのときに
持っていただいても素敵だし、
貴重品を入れるバッグインバッグにしても便利ですよ。
- 伊藤
- バッグインバッグ、ほんとですね。
お財布と鍵とスマートフォン、
最低限のものは全部入りますし。
- 鈴木
- レストランに入るときなんかに
大きなバッグだけレセプションに預けて
「ポシェットP」だけ持てば身軽ですし、
背筋を伸ばして歩けてかっこいいですよ。
- 伊藤
- 仕事帰りで荷物が多いと、
レストランの席まで大きなバッグで行くのを
ためらいますよね。
そういうときは、これだけ取り出して行けばいいんですね。
- 鈴木
- 会社員の方はランチタイムに
これだけ持って外に食べにも行けますし。
- 伊藤
- 「ポシェットP」はもしかして、
ウエストポーチのようにも使えますか?
- 鈴木
- ええ、
ウエストベルトに通してもかわいかったですよ。
あとね、リングに手を通すと両手が空くでしょう。
だから私はパーティーのときに
片手にシャンパン、
片手に「ポシェットP」とおつまみ、
っていうふうに楽しんでます。
- 伊藤
- わぁ。最高ですね!
チャコさんは旅先に
いくつか持って行ったりしますか?
- 鈴木
- 無地とレオパードとか、
ボアとレザーみたいに、
タイプちがいでいくつか持って行きます。
私は旅のとき、
3泊でも必ず靴は2~3足持って行くんです。
機内でリラックスするときの靴、
たくさん歩ける靴、ディナーにも行けるヒールとか。
でもバッグはどうしてもかさばるから
二の次になっていたんですけど、
このバッグならスーツケースにペタンと入るから、
靴と同じようにいくつか持ち歩くようになりました。
- 伊藤
- 3つくらい入れても、
厚みはそんなにないですものね。
- 鈴木
- そうそう。
気分もね、
旅先の予定に合わせて
「今日のディナーはこのバッグかな」
なんて選べるとたのしいでしょう。
- 伊藤
- これしかないというんじゃなくて、
チョイスが広がりますね。
- 鈴木
- 旅先って、非日常でしょう。
ホテルの部屋のクローゼットを開けて、
バッグはこれ、靴はこれって選べる方が
特に女性は気分が上がるかなって。
- 伊藤
- うん、うん。
すごく同感です。
- 鈴木
- 服も体型も選ばず
何にでも合わせられるバッグだと思うので、
恐れずに手に取っていただけたらうれしいです。
- 伊藤
- レオパードも取り入れやすいですからね。
素敵なバッグをたくさん、
どうもありがとうございました。
- 鈴木
- ありがとうございます。
たのしんでくださいね。
「あら、それ、いいわね」
- 伊藤
- リングの色は
素材によって違うんですね。
- 鈴木
- ホワイトとベージュにはシルバーで、
他のカラーにはゴールドのリングを合わせています。
- 伊藤
- 組み合わせが素敵です。
このリングは、
どんなふうに使うのがいいでしょうか。
- 鈴木
- そのまま垂らしておいてもいいですし、
私はハンドルをリングの中に入れて
口をぎゅっと絞るような形で使うことが多いかな。
スリ対策にもなるので。
- 伊藤
- それはパリでは大事ですね。
- 鈴木
- それから、リングを手首に通した姿が、
一見、ブレスレットっぽくも見えるんですよ。
ちょうど私、このリングと似たような
ネックレスを持っているんですけれど、
お揃いのアクセサリーみたいな感じで合わせています。
- 伊藤
- いろんな持ち方ができるバッグですね。
中にいっぱい、ものを入れて、
立体的に持つのもかわいいかも。
- 鈴木
- そうそう、量もね、意外と入るんですよ。
私はエコバッグを持ち歩く習慣がないんですけど、
仕事帰りに買い物へ行くときは、
これに入れちゃいます。
アーモンドミルクとニンジン3本とか。
- 伊藤
- えっ。そんなに?
まさかそんなものが入ってるなんて
見えないバッグですよね。
- 鈴木
- お友達の家に呼ばれしたときには
ワインボトルも入れて行きます。
- 伊藤
- わぁ。
たくさん入るけど、
ハンドルの長さが絶妙ですよね。
ショルダーバッグみたいに長すぎない。
- 鈴木
- そうですね。
ワンハンドルなので、
肩にかけるよりは
手で持ってちょうどいい長さにしています。
私はスリに合わないように
手首に通してから口のところを
手で閉じるように持つことも多いです。
- 伊藤
- なるほど。
真っすぐ下ろしても床につかない、
ちょうどいいバランスですね。
- 鈴木
- やぼったく見えない長さですよね。
デザインがシンプルだから、
ちょっと粋に見えるようにと。
- 伊藤
- シンプルなぶん、
そういう長さとか幅を
すごく考えられてるんですね。
ほんと、粋に見えます。
コートのような分厚めの服を着ても
持った感じが窮屈じゃないし。
- 伊藤
- チャコさん、このバッグを持っていたら、
パリの街で声をかけられるんじゃないでしょうか。
「あら、それ、いいわね」みたいに。
- 鈴木
- ええ、よくありますよ。
私の通っている歯医者さんのセクレテール(秘書)の方は
「病院じゅうに宣伝するから売ってちょうだい」
って言ってくださいました。
「早く知らせてくれないと、
ノエル(クリスマス)のプレゼント需要に
間に合わないわ!」って。
- 伊藤
- それはうれしいですねぇ。
- 鈴木
- 行きつけのネイリストの方も
気に入ってくださいましたし、
この前、ミラノのファッションウィークに
仕事でお邪魔したときには、
後ろから追いかけてきた方に
「そのバッグ、どこで買ったんですか?」
と聞かれました。
本当にうれしいです。
- 伊藤
- 私もこの前よく行くお蕎麦屋さんに
レオパードのポシェットを持って行ったら、
お姉さんが「かわいい~」って言ってくれましたよ。
- 鈴木
- ほんとですか。とってもうれしい!
- 伊藤
- いろんな方の目に留まる
かわいさのバッグだと思います。
- 鈴木
- 私の中でもこのバッグは
大切に大切に考えてきたもので、
毎年新しい形を出すのではなくて
このデザインをベースに素材を変えたり、
マチをつけて大きさを変えたりしながら
育てていきたいなって思ってるんです。
新しいものは世の中に次から次に出てきますけど、
私自身、それにちょっと疲れてきてしまって、
本当に気に入ったものだけを
持っていられたらいいかなと最近感じています。
それにパリのみなさん、
お財布の紐が結構固いんですよ。
- 伊藤
- そうそう、
パリの人って意外とそうですよね。
セールも利用するし。
- 鈴木
- 納得がいくまで吟味して、
長く使えるものを買われている気がします。
まさこさんもそうですよね、
「とりあえず」で買われないでしょう?
- 伊藤
- ええ、選んでいますね。
- 鈴木
- 私もそうですけど、
間に合わせで買ったものって
やっぱりそれほど愛情が持てない気がします。
このバッグも、
長く大切に使っていただけるような
存在になってほしいな。
- 伊藤
- 大きさや形、
素材ちがいで無限に楽しめるバッグですね。
- 鈴木
- ちょうど次のシーズンの展開を
考えているところなんですけど、
ベルベット生地もいいし、
自分だけがたのしめるように小さい刺繍を入れて
カスタマイズができるものにしてもいいかも?
なんて思っています。
レオパード柄はパリらしいマテリアル
- 伊藤
- チャコさん、
送っていただいたこのバッグ、
大活躍してます。
- 鈴木
- あら、よかった!
- 伊藤
- 展示会にうかがったときに
レオパード柄の「ポシェットP」が素敵だなと思って
「weeksdays」用にサンプルをお願いしたんですけど、
別のタイプのバッグを一緒に送ってくださったんですよね。
それを「weeksdays」のチームのみんなで眺めながら、
「色柄、素材ちがいで2つ欲しい!」なんて、
ものすごく盛り上がりました。
見ているうちに、2つどころか、
全種類が欲しくなっちゃって。
- 鈴木
- うれしいです。
形と大きさ、素材ちがいで
いくつか作らせてもらいました。
基本の形がこの「サック・カレ」――、
「カレ(carré)」はフランス語でスクエアという意味で、
四角いバッグです。
ブラックとベージュのボアはミディアムサイズ、
レオパードはもう一回り大きいラージサイズです。
ホワイトだけ、
「サックボワット」という形で
マチをつけてボックス(ボワット)型にしています。
それから形が全く違う
クラッチ型の「ポシェットP」を加えた5種類。
- 伊藤
- 以前「weeksdays」で作っていただいたのは、
ハンドルがリボン型になるバッグでした。
- 鈴木
- そうそう。
あの形は、最初、LERET.Hの下着を買ってくださった
お客さまへのプレゼントとして考えたんです。
すぐ不要になる梱包ではなく、
その後も使えるような布の袋に入れてお渡しするのが
私の夢だったんですよ。
それで実際に作ってみたらかわいかったので、
バッグとして商品化しようということになりました。
今回作ったものはハンドルを一つにした
形ちがいになります。
- 伊藤
- うん、かわいいです!
素材もそれぞれ違っていてたのしいですね。
どんなふうに選ばれたんでしょう。
- 鈴木
- 例えばレオパードは
パリのインテリアファブリック屋さんで
見つけたものを使っているんです。
- 伊藤
- インテリアの生地なんだ!
すごく手触りがいいですよね。
- 鈴木
- 上質な感じですよね。
フランスは椅子の文化が長いので、
いいものがたくさん開発されてきたんです。
マテリアルもデザインもよく考えられていて。
レオパード柄は、フランスで60~70年代に
ブルジョワ階級の間で
インテリアによく取り入れられていたモチーフなんですよ。
彼らがソファカバーやひじ掛け椅子に使ったので、
肌触りがいいものが作られてきました。
- 伊藤
- なるほど、
肌に触れるのが前提ですものね、ファブリックって。
- 鈴木
- そうなんです。
それで、今でもパリにはレオパード柄を
センスよく取り入れている方たちがいて、
皆さん、やっぱり上質な素材のものを
選ばれているんですよ。
なので私もバッグを作るとき、
「これはインテリア用だけれど、
このツヤ感とヌメ感があれば品のよいバッグになるはず」
と、選びました。
- 伊藤
- パリらしいマテリアルなんですね。
でもインテリア用の生地を見て
バッグにしようと思うのがすごいです。
- 鈴木
- 同じレオパード柄でも、
薄いコットン生地だと全然印象が違うでしょう。
デザインがシンプルなバッグなので、
ある程度の厚みと質感のある素材を選ぶのが
大事だなと思ったんです。
モチーフがかわいいというだけじゃなくて、
持ったときにおしゃれで上質に見えなくちゃ、と。
- 伊藤
- お話を聞いていたら、
サックカレのレオパード柄も
欲しくなってきました。
- 鈴木
- まさこさんはシンプルなものがお好きだから
レオパードを持たれている印象はなかったのですけれど、
すごくお似合いですよ。
- 伊藤
- そうそう、
以前の私なら選ばなかったんです。
でも小物から使い始めたら、
だんだん大丈夫だわって思えてきちゃって。
これは年の功かも? ふふふ。
大きい面で身につけるのは勇気がいるという方でも、
こういうバッグから始めると
コーディネートのポイントになりますよね。
- 鈴木
- ほんとに、かっこいいと思います。
- 伊藤
- ホワイトはレザー素材ですか。
- 鈴木
- はい。
本革で作ったきっかけは、
男性でも持てるものが欲しいというリクエストを
いただいたことなんです。
- 伊藤
- なるほど、素材でずいぶん印象が変わりますものね。
これだったら男性のかたが持ってもよさそうです。
おしゃれ好きな男の子が持っても、かわいいかも。
それでそのリクエストをくださったかたは、実際に、
使ってくださっているんですか。
- 鈴木
- それがね、その男性、ご購入くださったんですが、
そのまま奥さんにプレゼントなさったんですって!
- 伊藤
- それはそれで嬉しいですね、ふふふ。
ところで、制作は、日本で?
- 鈴木
- そうなんです。
レザー工場のコネクションがなかったので、
ネットで岐阜県にあるレザー屋さんを探して、
パリから電話をしたんですよ。
「はじめまして。
バッグを作っているものなんですが、
レザーでバッグ製作のできるところを探してまして」って。
そしたら、LERET.Hのサイトを見てくださって、
「こういうバッグですね、やってみましょう」と。
- 伊藤
- すごいですね。
チャコさん、たしか下着をつくるときも、
あちこちの工場へお手紙を書かれていましたよね?
- 鈴木
- そうそう。
お手紙と電話作戦。
- 伊藤
- メールじゃないところが
チャコさんらしいです。
そうやって正面から行っても受けとめてくれるって
気持ちがちゃんと伝わっている証拠ですよね。
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
11月27日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
Le pivot
ダンボールストレートスカート
Tシャツやシャツなど、
夏のアイテムに合わせたいスカートって、
探すとなかなかないものだなぁ‥‥
と思っていたのですが、
展示会でこのスカートを見た時に、
「これだ!」とピンときました。
ウェストはゴムなので、
はいていてとても楽‥‥
なのですが、
ただ「楽」ではないところがpivotの服のすごいところ。
ウェスト部分にタックがとってあったり、
素材えらびに工夫があったり‥‥と、
様々な「きれい」に見える工夫がされています。
詳しくはコンテンツをどうぞ。
(伊藤まさこさん)
ほどよく
似合うものが少なくなってきたなぁ、とか
服はたくさんあるはずなのに、
何を着ていいか分からない、とか。
そんな40代の迷いを乗り越えて、
服えらびに関しては、
ちょっと落ち着いたかんじがしている。
50代も半ばになると、
自分の好きなものがわかってくるし、
人からどう思われようが気にしない、
という図太さもくわわって、
今の私は着心地が最優先。
窮屈な服はもう着たくないし、
がんばって着ようとも思わない。
体の気になる部分をほどよくカバーしてくれて、
今の気分をほどよく取り入れてくれる服がいい。
この「ほどよく」が大事なんです。
今週のweeksdaysは、
LERET.H のバッグ。
大好きだった踵の高い靴も手放した今、
楽しんでいるのは、
バッグのおしゃれ。
シンプルなコーディネートに、
プラスするだけで、ぐっと洒落た雰囲気にしてくれる。
頼りにしている存在です。
RaPPELERのコートと by basicsのマフラー、こんなコーディネートで 伊藤まさこ 02 色をたのしもう
メリノウールマフラー(ホワイト)/by basics
ANNA LOOSE HIGH-NECK TOP(ネイビー) COG THEBIGSMOKE(2025年11月発売予定)
パンツ ¥35,200/Harriss × Keiko Okamoto(株式会社 金万)
by basicsのマフラー、
ホワイトはどんなスタイル、
どんな色にも合う万能カラー。
ここではネイビーのトップスと。
広げて、
肩にかけて。
メリノウールマフラー(ライトブルー)/by basics
ループインレー圧縮ニットコート(オフホワイト)/RaPPELER
ニット ¥23,100/Harriss(株式会社 金万)
パンツ ¥24,200/Harriss(株式会社 金万)
二つ折りにして、
首にかけるとこんな感じ。
どの色もとてもきれいなのですが、
今回、新鮮だったのはこのライトブルー。
RaPPELERのコート、どの色とも相性よしでした。
ネイビー好きな方におすすめしたいのは、
明るめネイビー。
ダークネイビーのコートにこのマフラーをくるり、
なんて着こなしもすてきです。
メリノウールマフラー(ネイビー)/by basics
カットソー ¥16,500/le ciel de HARRISS(株式会社 金万)
パンツ ¥19,800/le ciel de HARRISS(株式会社 金万)
グレーやデニムとも相性よし。
やっぱりネイビーってすごい色なのだと再認識。
RaPPELER のコート、最後はブラック。
中に朱色のタートルを合わせました。
きりりとした大人の着こなし。
ループインレー圧縮ニットコート(ブラック)/RaPPELER
ANNA LOOSE HIGH-NECK TOP(レッド)/COG THEBIGSMOKE(2025年11月発売予定)
スカート ¥24,200/le ciel de HARRISS(株式会社 金万)
ブーツ ¥75,900/DIVINA(株式会社 金万)
合わせたのは、ハリのあるスカート。
コートからのぞくスカートや
ブーツの分量が多くても大丈夫。
こんな風にうまくまとまるのは、
オーバーサイズでもなく、
かといってタイトでもない。
コートの適度なボリュームのおかげです。
RaPPELERのコートと by basicsのマフラー、こんなコーディネートで 伊藤まさこ 01 気分はロングカーディガン
今回ご紹介するのは、
RaPPELERのコートとby basicsのマフラー。
やわらかなメリノウールのマフラーは、
ホワイト、ローズピンク、
イエロー、ライトブルー、ネイビーの全5色。
ベーシックなカラーに加え、
冬の街に映えそうな差し色もそろえました。
コートはこちらのオフホワイトと、
ベージュとブラックの3色。
ループインレー圧縮ニットコート(オフホワイト)/RaPPELER
カットソー ¥14,300/Harriss(株式会社 金万)
テーパードリボンパンツ(ブラック・38)/SAQUI
サイドゴアショートブーツ(ブラック)/VELOZ
オフホワイトのコートには、
ブラックのタートルネックとパンツ、
足元はブーツを合わせます。
全身黒のコーディネートですが、
オフホワイトがくわわることによって、
やさしい雰囲気に。
ファスナーを開けると、
縦のラインが強調されてスッとした印象になります。
ループインレー圧縮ニットコート(オフホワイト)/RaPPELER
メリノウールマフラー(ローズピンク)/by basics
ローズピンクのマフラーをくるりと巻いて、
マフラーの色を効かせた着こなしに。
ループインレー圧縮ニットコート(オフホワイト)/RaPPELER
カットソー ¥16,500/le ciel de HARRISS(株式会社 金万)
パンツ ¥19,800/le ciel de HARRISS(株式会社 金万)
このコート、
トレーナーとデニム、なんて
カジュアルなアイテムとも合うんです。
単(ひとえ)仕立てなので、
気分はロングカーディガン。
気軽に羽織れるところもうれしい。
ループインレー圧縮ニットコート(オフホワイト)/RaPPELER
ニット ¥23,100/Harriss(株式会社 金万)
パンツ ¥24,200/Harriss(株式会社 金万)
ホワイトのタートルに、
きれいな色のパンツ。
足元も白でまとめて。

ダブルジップなので、
開き具合を自由に調整できます。
ループインレー圧縮ニットコート(ベージュ)/RaPPELER
ニット ¥39,600/le ciel de HARRISS(株式会社 金万)
パンツ ¥23,100/le ciel de HARRISS(株式会社 金万)
秋らしい色合いのベージュのコートは、
からし色のニットや深いグリーンのパンツを合わせて。
ニットと同じ色合いのマフラーを肩にかけ、
上からコートをふわりと羽織ります。
マフラーを重ねることで、
首回りに表情が出る。
羽織るように肩にかけたり、
さらりと巻いたり、
もっとぐるぐる巻きにしてもかわいい。
やわらか素材のマフラーだからこそできる巻き方、
いろいろ工夫してみてくださいね。
羽織って、巻いて
10月の終わりは何かと忙(せわ)しなく、
衣替えができずにいました。
薄手のニットとコートを重ねて着て、
ストールを巻けばなんとかいける。
11月に入っても、
そんな感じなものだから、
やがて来る寒い冬に何を着ていいのかが、
想像つかない。
衣替えが延ばし延ばしになっていたのは、
そんな理由もあったのでした。
11月の連休、
晴れが続いたこともあって、
エイヤッ! と重い腰を上げ、
ついに厚手の冬服を出したのですが、
これ、いったいいつ着るんだろ?
というものが数枚。
中でも、
「寒冷地でもこれさえあれば大丈夫」
そうすすめられて買ったダウンコートは、
そういえば去年一度も着なかったな。
結局、まだ着そうにないものは、
クローゼットの奥にしまい、
今すぐ着たい服だけを並べてひと段落しました。
今週のweeksdaysは、
RaPPELERのコートとby basicsのマフラー。
軽やかに羽織って。
くるりと巻いて。
そう、今、身につけたいのはこんなアイテム。
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
11月20日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
GERMAN TRAINER
「全身黒(もしくはネイビー)」
になりがちな冬のコーディネートですが、
数年前、足元だけ白にすると
全身が軽やかになることに気づいてから、
ひとり実践しています。
白いショートブーツ、
白いTストラップシューズ、
白いスニーカー。
白い靴はいくつか持っていますが、
最近の気に入りはこのGERMAN TRAINER。
革素材なので、
カジュアル感がそっと抑えられ、
スマートに履けるところがいいんです。
年々、スニーカーのフォルムは
大きくなってきているように感じますが、
大人の足元はこれくらいのボリュームがいいな、
なんて思っています。
(伊藤まさこさん)
ベビーアルパカのよさを最大限に
- 伊藤
- こうやってお聞きすると、
ひとつの帽子の中にも、
いろんなアイデアが詰まっているのがわかります。
それを、シーズンごとに、40も‥‥。
ちなみにニットの割合は
どのくらいあったんですか?
- 苣木
- 秋冬の半分はニットだと思います。
ベレー帽とか、縮絨のウールも含めて。
- 伊藤
- さっきおっしゃった2泊3日のデザイン合宿では、
この帽子のほかにも、いくつか?
- 苣木
- その工場で作りたいなって思ったニットを、
7型ぐらい。
- 伊藤
- 2泊3日で、7型同時進行。
すごーい!
- 苣木
- 夕方になってから
「ああ、これもうちょっとこうしたい」とか
「ゲージをこうして」と伝えて帰ると、
次の朝来たら、それがもうできていて。
- 伊藤
- ほんとうにすごい。
それは苣木さんから言葉で伝えるんですね。
- 苣木
- そうですね。その職人さんとは、
もうだいぶ感覚的にわかりあっているので、
まずは言葉で伝えますけれど、
そのままだと別の機会に
同じものを作ることができないので、
しっかりデータを残しておきます。
- 伊藤
- いちばん最初はデザイン画を描かれるんですか。
- 苣木
- はい、コレクションを考えるときは、
すべてラフスケッチを描きます。
お絵かきみたいものですけれど。
で、このときは、この形を描いて、
「何リブ、何ゲージ」
「ここからここの長さを何センチに」
みたいな指示を添え、
職人さんに託し、編んでもらうんです。
たたき台がないと形にならないので。
- 伊藤
- それはそうですよね。
だからこんなふうにでき上がるんだ。
- 苣木
- しかもこの子は、
ベビーアルパカのよさを出すために、
1回洗いをかけてるんですよ。
- 伊藤
- 製品ができ上がってから?
- 苣木
- そうです、そうです。
それで大変だったのが、
サンプルをひとつだけ洗うときと、
製品化のためにまとめていくつかまとめて洗うのとでは、
縮率のデータに違いが出てくることでした。
サンプル通りにはいかないんですよ。
それで洗いの加工屋さんと
「1回洗って5分乾かして」とか、
「もうちょっと乾かして」っていうやり取りを
3往復くらいして、やっと納得のいく形にできました。
- 伊藤
- 洗わない状態だと?
- 苣木
- もうちょっと肉が薄く、ベローンと伸びてます。
- 伊藤
- それが、洗うことでちょっと詰まるんですね。
- 苣木
- そうです。キュッと詰まり、
毛がふわっとしてくるというか、
やわらかい感じになります。
- 伊藤
- 洗う作業がとても重要なんですね。
- 苣木
- すごく重要です。
それを省くと、この風合いにならないんですよ。
- 伊藤
- そして今回の3つの色、とても素敵ですよね。
ベーシックなクリーム、ネイビーに、
ポップなカラー「シトロン」が加わって。
- 苣木
- シトロン。この色、かわいいですよね。
- 伊藤
- 雪の中とかで目立ちそうですね。
- 苣木
- アハハ、きっと、きれいです。
この2色に、シトロンが入ることで、
それぞれの良さが引き立つなあと思います。
- 伊藤
- ネイビーとかオフホワイトの服を持っている人が、
シトロンを被ったらかわいいかなと思うんです。
もちろん同色で揃えるのも、
すごいシックでステキなんですけど。
- 苣木
- それもすごくかわいいと思います!
- 伊藤
- この帽子を被る日がたのしみです。
東京でも暑すぎないと思うんですよ。
- 苣木
- アルパカは、吸湿性が高く、
蒸れにくいって特徴もありますしね。
てっぺんを二重にしなかったのも、
多くの人に被ってほしかったからなんです。
全部を二重にすると、すごく厚い帽子になって、
極寒仕様になる。
ここが一重になることで、
見た目にも軽やかさを出しています。
- 伊藤
- これなら晩秋あたりから被れますものね。
そうそう、後ろ側についているパーツは‥‥?
- 苣木
- あ、このパーツですね。
小原聖子さんっていう金工家のかたの作品です。
真鍮に、漆の樹脂を塗っているんです。
真鍮を手でたたくので、
実は表情がひとつずつ違うんですが、
それを後ろに糸で留めました。
- 伊藤
- かわいいですね。
これがあるとないとで、印象が違います。
これが後ろですよという目印にもなるけれど、
チャームポイントにもなっている。
このパーツ、クリーニングに出しても大丈夫?
- 苣木
- このパーツに塗っている樹脂が
有機溶剤で溶ける可能性があるので、
ドライクリーニングに出していただくときは、
クリーニング屋さんに相談してみてください。
品質ラベルを見せて素材を伝え、
パーツが真鍮でコーテイングしているので
剥がれるのが心配なので、
保護か部分洗いでお願いできますか? と。
パーツを外してくださいと
言われることもあるかもしれません。
その後、縫い付けるのが大変という方は
ご自分でも洗えなくはないです。
型くずれしてしまうことを考えて
手洗い不可という表示にしているんですが、
私はこれ、ネットに入れて手洗いで回してます。
少し風合いがふんわりと変化はしますが
ご了承いただけるなら手洗いも。
ただ乾燥機は絶対に避けてくださいね。
縮んでフェルト状になってしまうと元に戻りませんから。
かたちをととのえて平置きか
中にタオルや紙を入れて立体的にして
干してもらえれば大丈夫。
吊るして干すのは避けてほしいですね。
- 伊藤
- わかりました。どうもありがとうございました。
旭川、そのうち遊びに行かせてくださいね。
- 苣木
- ぜひ! ここのアトリエは、
JRの旭川駅から歩いて15分くらいなので、
もうちょっと落ち着いたら、
予約制でお客様をお呼びして、
お買い物もできるようにしたいなと。
一緒にお話を聞きながら、
似合う帽子を探して、って。ふふふ。
- 伊藤
- いいですね、うんうん。
- 苣木
- ここは何がいいって、10階の窓から
旭岳っていう山がバーッと望めるんです。
- 伊藤
- ほんとに山がお好きなんですね!
- 苣木
- そうなんです。
ぜひいらしてくださいね。
美瑛も近いし、おいしいものもいっぱいありますし。
- 伊藤
- はい、ぜひ!
今日は、ひとつの帽子から、いろんな話が聞けました。
そのストーリーが毎シーズン、
40くらいずつあると思うと、
信じられないって思います。
- 苣木
- そんなぁ。帽子しかやってないですよ(笑)。
- 伊藤
- ふふ。次のコレクションも楽しみにしてます!
- 苣木
- どうもありがとうございました。
2泊3日の合宿で
- 伊藤
- 今回「weeksdays」で扱わせていただくこの帽子も、
耳を覆うことができるようになっていますが、
これもそんな体験から?
- 苣木
- はい。これ「リブワッチ」っていうんですが、
ちょっと耳が隠れるだけでも、
ほんとにあったかいんです。
もちろんすっぽり耳まで被ってもいいですし。
- 伊藤
- 首のあたりまですっぽり
被ることができるのもいいですよね。
真冬って、うなじも寒いから。
苣木さんの帽子は、長さや大きさのバランスが
さすがだなあと感じるんですけれど、
たとえばこれも試作を重ねて、
ミリ単位で調整なさったんでしょうか。
- 苣木
- そうですね。
このフラップの大きさも、かなり検証しました。
やっぱり適度なボリューム感が必要だなと思って。
短いとカジュアルすぎるんです。
- 伊藤
- うんうん。
- 苣木
- ぜんぶ下げるとほっぺたまで隠れて、
ほんとにあったかいですよ。
これで雪山に行く人はいないかもしれませんが、
うんと寒い日は、すっぽり被ると、
とてもあったかいと思います。
でもタウンユースをするときは
ちょっと曲げて(顔を出して)いただいて。
- 伊藤
- そんなふうに調整ができるのもいいですね。
- 苣木
- この帽子は、ニッターさんの工房に泊まり込み、
2泊3日でサンプルを作りました。
機械を動かしてもらって、編んでもらって、
そこから細かく修正をしていく、
ということを繰り返して、この形にしていったんです。
特徴としては「ホールガーメント」
(丸ごと立体的に編み上げる、縫い目のないニット)。
専用の機械で編んでいます。
ニットの帽子って一箇所縫い目があったり、
デザインにより上をカットして縫い合わせたりで、
縫い目が気になったり、
糸のロスが出ることもあるのですが、
ホールガーメントはこれらのことがありません。
データさえできれば立体的に筒状で出てくるので、
縫い目も気にならない、
糸ロスもなく、フィット感もいいんです。
- 伊藤
- ああ! ホールガーメントなんですね。
たしかに、ゴロゴロしたところや、
やけにキュッとしたところがありません。
- 苣木
- 日本が誇る技術なんです。
島精機さんっていう、
とても高い技術を持ってらっしゃる
編み機のメーカーさんの機械で、
世界の錚々たるコレクションブランドも、
これで立体的なニットを編んでいるんです。
まさこさん、触られてすぐ
「とっても気持ちがいい!」っておっしゃいましたね。
- 伊藤
- そう、気持ちがいいんです。
つい触りたくなる。
素材には、ベビーアルパカを使っていますし。
- 苣木
- そうなんです。
こういうニットのビーニー(ツバなし帽)って、
ウールやアクリルのものもありますが、
私はまさこさんが言われた
「やわらかい」「ふわふわ」
「気持ちいい」っていう感覚を、
この帽子に入れたかったので、
ベビーアルパカを採用しました。
アクリルなどの化繊混でも編んでみたり、
試したんですよ。
- 伊藤
- そうなんですね。
- 苣木
- そのなかでこのベビーアルパカが気に入って。
ベビーアルパカって、
赤ちゃんのアルパカの毛っていう意味ではなくって、
「アルパカが初めての毛刈りのときに刈られる、
最初のふわふわした毛」なんですね。
やわらかくて、繊維が細い、
アルパカちゃんの首から背中の一部だけを使うんです。
触ったときのふわっとしたやわらかさと、
ちょっとシルクのようなしなやかさがある。
それで、ベビーアルパカ100%、っていうのも、
もちろんあるんですけども、
今回、ナイロンとウールを少し入れています。
というのも、ベビーアルパカだけだと、
この立体的な形がキープできないんです。
やわらかすぎて。
- 伊藤
- なるほど。
- 苣木
- ベビーアルパカって、繊維の細さが、
人間の髪の毛の3分の1ぐらいしかないといわれ、
すごく細いんです。
それを編むことで、空気をたくさん含み、
やわらかくて軽くてあたたかいニットになる。
ただ、それだけだとちょっと繊維がもろいので、
帽子としてずっと長く使っていただけるよう、
ウールとナイロンを混ぜることで丈夫さを出しました。
ベビーアルパカが52%、
ナイロンが36%、ウールが12%なので、
ベビーアルパカの軽さとしなやかさは、
すごくよく出てると思います。
- 伊藤
- そのパーセンテージも、試行錯誤して?
- 苣木
- そうですね!
糸屋さんに相談して物性としてはもちろん、
快適性もちゃんと検証の上、
デザイン性にもぴったり合うものをご提供くださいました。
- 伊藤
- さっき「2泊3日で」って
おっしゃっていたけれど、
そんなふうに物作りができるのって、
素敵な関係ですね。
- 苣木
- 以前の勤め先でお世話になっていた、
秋田県の工房なんです。
辞めた人間がお願いするのも筋が違うかなと思って、
ずっとお願いしてなかったんですが、
去年の冬かな、ご連絡をいただいて、
「そろそろまた一緒に仕事をしませんか」と
お声をかけてくださったんです。
- 伊藤
- 嬉しいですね!
じゃ、秋田に行って2泊3日?
- 苣木
- そう、その工房で、
朝からデータを作って出してもらって、
その場でチェックして、
ふたたび提案をして‥‥を繰り返しました。
クイックに自分が思い描いたものが形になっていき、
自分の感覚に近いものができるので、
とても早くできましたし、いいものになりました。
この帽子も最初は上までぜんぶ、
表裏、二重だったんです。
でも途中で上部を切って、
二枚重ねにしない部分をつくることで
デザインの遊びを出すとともに、
暑くなりすぎないように実用性を考えました。
この帽子は、手を動かしながら、被りながら、
感覚にしたがって、その場で作っていったかたちなんです。
- 伊藤
- その特別な機械があって、
すぐれた職人さんがいたから、
機械ではあるけれども、
手編みをしながら作っていく感覚に
近かったっていうことですね。
- 苣木
- そうなんです。ありがたいなと思います。
やっぱり「現場に行ってものができる」っていうのは、
作り手としてすごくストレスが少ないんですね。
アトリエで考えて工場に出して、っていうのは、
どうしてもタイムラグが出ますよね。
送って、つくってもらい、受け取るまでに。
直でその場でできたことは、とても助かりました。
- 伊藤
- そんな背景があったんですね。
このとき(2025AW)のコレクションって、
何型くらいありましたっけ?
展示会場にずらりと並んだ光景が壮観でした。
- 苣木
- 40型ぐらいはあったんじゃないでしょうか。
- 伊藤
- 来年の夏もそれぐらい?
- 苣木
- 来年の夏もあります、はい。
- 伊藤
- すごーい!
どうやってアイディアが浮かぶんですか?
- 苣木
- ‥‥ふふふ、どうやってるんでしょうね? 私。
- 伊藤
- ほんと不思議でならない。
- 苣木
- 定番系のものについては、自分が常に被って、
「もうちょっとこうしたほうがよかったな」とか、
「来年はこういうかんじで被りたいな」と、
ブラッシュアップして出していきますね。
あとはやっぱり人に会ったり、
「この人こういう帽子、似合いそうだな」
ということを想像して、
それを作ってみることもあります。
- 伊藤
- そっか。じゃ、街ゆく人とか、気になりますか?
- 苣木
- 気になります!
東京にいるときは、それこそいろんなところで
ボーッと座っていろんな人の帽子姿を見てたんです。
北海道に来たら、そういうのはほとんどないんですけれど、
やっぱり東京などの都会だと、
帽子もファッションのひとつですものね。
でも、北海道にいる良さは、
「道具としての帽子」が体感できたこと。
そこにちょっとだけファッション性を入れると
どうなるかな? みたいな発想はうかびます。
東京にいるときはやっぱり、お洋服中心で、
そこに帽子を合わせたらどうなるかな、
という発想でしたけれど、
北海道では機能性、ベーシックな作りに、
少しだけファッションのテイストを入れた、
より日常の道具としての帽子作りが楽しくなりました。
- 伊藤
- 人の第一印象として、まず顔に目がいきますよね。
帽子がそのアクセサリーだと考えたら、
すごく重要なのかもしれないですね。
- 苣木
- そうですね、色、素材‥‥、あと、形ですよね。
お顔がすごく小さい方は気にならないと思うんですが、
私とか、いろいろたるんできたりして!
- 伊藤
- いやいや全然シュッとしてますよ!
- 苣木
- いえいえ(笑)、ニットの帽子って、
通常、ピタッと沿うものが多いと思うんですけれども、
今回のようにちょっとワンクッションがあることで、
まずそこに視線がいく。
そうすると、多少のお顔のたるみだとか、
大きさが気にならなくなるんじゃないかなって。
ちょっとゆるいほうが雰囲気もやさしく見えますし。
- 伊藤
- たしかに、全然ちがいますよね!
- 苣木
- 違いますよね、フフ。
旭川のアトリエから
- 伊藤
- 苣木さん、ご無沙汰しています。
先日の展示会、嵐で行けず、すみませんでした。
- 苣木
- とんでもないです。
すごい確率で嵐に当たっちゃいましたね。
でも、こうしてお話できて嬉しいです。
ありがとうございます。
- 伊藤
- 今は、北海道ですよね?
- 苣木
- そうです。旭川にいます。
病気があって、旭川の医大に入院していたので、
そのまま旭川にアトリエを構えました。
- 伊藤
- 久しぶりにお目にかかったのが今年の3月。
ご闘病のことを知らず、失礼しました。
- 苣木
- いえいえ、誰にも言っていなかったんですよ。
でも、復活してまいりました。
- 伊藤
- 入院中も病室で帽子のデザインをしていたと
おっしゃってて。
- 苣木
- そうなんです。副作用がないときを狙って、
デザインをしたり、サンプルを送ってもらって、
作業をしたりしてました。
時間はありましたから。
- 伊藤
- いま、モニター越しに、クルクルって髪の毛が。
- 苣木
- 抗がん剤の投与を始めたら、
2週間ぐらいでぜんぶ髪が抜けちゃって、
投薬が終わったら、クルクルの髪になりました。
- 伊藤
- そんなことが。でもお似合いですよ、かわいいです。
‥‥って、ご病気のことは
言わないほうがいいですよね?
- 苣木
- いいえ、全然大丈夫ですよ。
インスタでも、
お休みしてたときのことをお伝えしているんです。
- 伊藤
- そうでしたか。
ヘアスタイルが変わったことによって、
被る帽子って変わりました?
- 苣木
- ヘアスタイルもそうなんですけど、
髪を失ってみて、
「肌触り」とか、「フィット感」とか
「被り心地」がいかに帽子には大事かっていうことを、
身をもって体験しました。
髪がないと素材が直に頭皮に触れるので。
- 伊藤
- そうですよね。
- 苣木
- でも闘病中、自分が作ってきた帽子を被って
「いい素材を使ってきてよかったな」
と思いましたよ。
- 伊藤
- 本当にそうですね!
- 苣木
- 病院で被れる帽子と、
外で被れる帽子はもちろん違うんですよね。
闘病中は着ている服がパジャマでしょう、
それもちょっとベーシックな色の、
ナチュラルなものになる。
白血病や悪性リンパ腫など
血液の免疫の病気の方がいる病棟だったので、
感染症対策が徹底していて
外気に触れることができないんです。
外出はもちろん、窓も開けられない環境でした。
放射線治療後、さい帯血移植をしてもらったのですが、
その時はしばらく無菌室にいました。
そんな色がない無彩色の病室にいるから、
ちょっと気分を上げるために、
せめて帽子だけでもと色のあるものを被ったり、
スカーフを巻いたり。
副作用できつい時はもうそんなこと
気にしていられないのが現実でしたけど‥‥。
みなさん治療を受けて大変な中で、
髪の毛も抜けて体感的にも心地悪かったり、
見た目が大きく変わってしまうことに心を痛めてたり、
恥ずかしいという気持ちもあり帽子をかぶったり、
ウィッグをつけるの方が多いのですが、
『なかなかいいものに出会えない』っていうかたも
多くいらっしゃることを知りました。
この経験を通して、そういう方たちにお届けできる帽子を、
今後、作っていきたいなっていうふうに思いました。
もともと、うちのお客様には、ネットで、
「闘病中に被りたいので」という
お客様が結構多くいらっしゃいまして、
「いつか、いつか」って思ってたんですけど、
自分がリアルに感じないと、
髪がない状態での被り心地やフィット感って
わからなかったなあって思いました。
- 伊藤
- 絶対、欲している人、いますよね。
じゃ、すごく大変ななかで、
帽子を作ることがちょっと励みになったり?
- 苣木
- そうですね。
闘病中の日記にはどの素材がいいとか、
サイズ感はどうとかこんな帽子があったらいいかも
とか走り書きしていました。
- 伊藤
- 髪があるのとないのでは、
気温の感じ方も違いますよね、きっと。
- 苣木
- はい。それに髪があると
蒸れないんだっていうことも分かりました。
直に被ると、帽子ってすごく蒸れるんです。
- 伊藤
- そうなんですね。
- 苣木
- シルクなど、天然素材がなぜいいかというと、
湿気を吸ったり、外へ放ったり、
肌や空気と自然に調和してくれるんです。
特にシルクは繊維がとても滑らかで摩擦も少なくて、
髪が抜けて頭皮が敏感になっている時でも
安心して身につけられるんですよね。
優しい気持ちにもなるし、
精神的にも良い効果があったと思います。
洗いたての枕カバーが痛いと
感じる時にかぶって寝たりしていました。
思いがけずではありましたけど、
病気をして髪の毛が抜けて、
そういうときに心がどうなるか
ということも分かりましたし、
体感としてどういう帽子がいいか、
っていうのも分かったので、
今ならちゃんと、そういう背景も含めて、
自分でいいなと思えるものを作れるなって思いました。
- 伊藤
- 悩んでらっしゃるかたに、
すごく心強いと思います。
3月にお会いしたときは、
「もうすっかり元気です」って
おっしゃっていましたが、
あの頃から通常営業に戻った、
という感じだったんですか。
- 苣木
- そうですね。いまは完全に通常営業です。
家とは別にアトリエを借り、
薬も飲んでいない状態です。
- 伊藤
- すごーい!
- 苣木
- 12、3キロ痩せたんですけど、
それも戻りました。
- 伊藤
- よかったです、ほんと。
スタッフのみなさんとはオンラインで?
- 苣木
- はい、基本はオンラインですけれど、
ひとり北海道に移住してきたスタッフがいまして。
- 伊藤
- え? 苣木さんとしゃべってて、
いいなと思われたのかな。
- 苣木
- 何回か打ち合わせで北海道に来てもらううちに、
ここの環境が気に入ったのと、
北海道でもいくつかの市町村の小中学校で
山村留学という制度があるようで、
うちのスタッフは2人の子供と自然の中で
過ごしてみたいと移住してきました。
アトリエのある旭川からも
30分ほどのところに住んでいます。
- 伊藤
- 山村留学、かわいい名前ですね。
夏が暑い場所にいると、
北海道に住みたいっていう人も
増えてきたのではないでしょうか。
- 苣木
- そうかもしれないです。
ここもだいぶ暑くなってきましたけれど、
東京に比べたらもちろん涼しいので。
- 伊藤
- ところで、いま、オンラインの画面で、
苣木さんの背景に、
いっぱい帽子が見えますよ。
- 苣木
- そうなんです。
次の秋冬のコレクションの
デザインが始まったんです。
- 伊藤
- もう1年後の?!
そっか、そうですよねえ。
それを旭川のアトリエでなさっているんですね。
やはり北海道は東京に比べて、
冬に帽子を被る方が多いですか?
- 苣木
- 多いかなぁと思います。防寒としてあった方が安心!
基本、スーパーに行くにもコンビニにもほとんどが車移動で
ましてや冬はずっと外にいることはまずないのですが、
外に出ると冷気で耳の上の方が冷たくなって、
痛くなっちゃいます。
耳の上の方だけでもカバーされていると
寒さが軽減される気がします。全部カバーできたら最高!
- 伊藤
- そんなに寒いんですね。
だから耳まですっぽり被る
ニットキャップがいいわけですね。
- 苣木
- すごくいいですね。
私、ベレー帽が好きなんですけど、
こちらに移住してきてから、
耳まで隠れるようなフラップのついた
ベレー帽を作りました。
- 伊藤
- やっぱり体感してこそ、ですね。
わからないですもの、耳の上が寒いって。
- 苣木
- 私、雪山に登るんですけど、
極寒だと何が寒いって「眉間」です。
痛くなるんですよ、雪の中で。
- 伊藤
- 眉間が痛いって!
- 苣木
- 「バラクラバ」ってあるじゃないですか、
目だけ出す「目出し帽」のことですけれど、
あれは眉間が隠れることも、暖かさの理由なんです。
- 伊藤
- うわぁ、ほんとうに体験してこそ。