とにかくここに書いておこう。
仕事のこと、「青日記」、すべてが手帳に。 |
佐野 |
テレビ局でプロデューサーという仕事をしていたので
仕事をしているときは
1日ページはその日にやることを
時系列で書いているだけでぎっしりなんですよね。
ただ仕事と仕事じゃないことの境目が
ちょっと微妙といいますか、クロスしてくるんです。
気になったこと、好きな歌詞。
どこに書いただろうって思うより
とにかくここに書いておこう、
ここを探せば出てくるって思って、
とにかく全部これに書いていました。
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―― |
打ち合わせとやることがひたすら
書かれていますね。 |
佐野 |
そうなんです。
でも妊娠したことがわかってからは
書かれていることがちょっと変わったかもしれません。
ちょっと待ってください。
(手帳をめくりながら)
妊娠が判明したのが9月17日。
すごく、うれしかったんです。
この子の名前を「青(あお)」とすることは
すごく前から決めていたので
いきなり「青日記」ってタイトルをつけて
日記を書いていますね。
ただ、妊娠中はちょっと危ない症状があったので、
仕事を休んで家にいて、
お医者さんに行っては、
聞いたことや自分の状態を書いて
安心しようと、整理していました。
妊娠初期はしばらく「青日記」が続いています。
ちょっと落ち着いたころには
「青日記」と仕事モードを行ったり来たり。
そして、産休に入ったらあまり動くことができなかったので
雑誌や新聞で、絵本など素敵なものがあったりすると、
「ああ、こんなの見せてあげたらいいな」と思いながら
記事を切り抜いては手帳に貼っていました。 |
―― |
忙しく仕事をしているときとは
ページの雰囲気が
だいぶん変わってますね。 |
佐野 |
ええ。本から言葉を書き出したりもしています。
青が生まれる前日に
『モリー先生との火曜日』って本を読んだんです。
出産に対して「どうしよう、怖い‥‥」
という気持ちになっていたときですね。
もとは出産の1年ほど前に読んでいて、
この本は困ったときにもう一度読むと
いろんな言葉を拾えるって思っていたんです。
「感情の中の苦しいこと、つらいことも
その中に入ってしまうと
痛みとはどういうものかがわかる、
愛とは何かがわかる、
苦しみとは何かがわかる。
よし、自分はこの感情を経験した、
わかったっていって、次に踏み出せるよ」
というような言葉を本から拾って
手帳に書きながら自分を落ち着かせてました。
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―― |
そして、その翌日に青ちゃんが生まれたんですね!
妊娠中と出産後はまたまた大きな変化が
あったのではないでしょうか。 |
佐野 |
さすがに生まれてすぐは手帳を開けなかったのですが
生まれて10日たった5月19日に
青が生まれた日のことを振り返って
手帳に気持ちを書いています。
「我慢の限界だった。
これまで味わったことのないような痛み。
青が生まれた瞬間のこと。
私の人生の中でも最高にうれしくて幸せな瞬間だった。
あんな痛みはもう経験したくないけど、
あの生まれてきた瞬間は戻れるものなら
もう一度戻りたい」って。
こうやって見返していると思い出してきますね。
そのあとはひたすら授乳とおむつの繰り返しで
24時間が過ぎていくという日々で、
書くことはこれしかないというか、
ただただ記録に終始しています(笑)。
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―― |
ただ記録だけと言いつつ、
まさに青ちゃんが生きている証ですね。
記録の仕方も少しずつ変わっていったり
したのでしょうか? |
佐野 |
ペースがわかってくると
うんち、おしっこ、おっぱいの時間を書きつつ、
沐浴はどうだった、助産師さんが来てくれて、
こんなふうに言われたとか、
日記のようなことも増えてきます。
時間軸を使ってしっかり書きたかったのですが、
ちょっとうまくいかなかったので
ページの上から青の記録を書いていって
余ったら日記のようなことを書くみたいな
独自の使い方になっていってます。
出産直後はまったく余裕がない感じですが
出産から半年経つとちょっとゆとりが出てきて、
今、青は8ヶ月なのですが、
もうあまりおっぱいの時間とか書かずに
つかまり立ちを始めたなどという
エピソードが増えています。
育児日記をちゃんとつけているママさんたちは
もっときっちりと付けていると思うんですけど、
私ぐらいアバウトだと
ほぼ日手帳がちょうどいいのかもしれない。
自分のことも書けるし、気になったこと、
自分の好きな映画のこと、
見に行きたいものの切り抜きも貼れるし、
育児日記としても使えるし。
この子が大きくなってこの手帳を見せてあげるとすると、
何なのお母さんいろんなことが書いてあるぞって
不思議なノートになっていると思います。 |
―― |
ただの記録よりも
お母さんの思いがすごく伝わってくるでしょうね。 |
佐野 |
そうだといいんですけど(笑)。
今、改めてこうやって話してみると
頭のモードが仕事をしているとき、
妊娠している時、育児も段階がいろいろあって
この手帳があることで
自分のモードが整理されていて
使い方がぜんぜん違うことがわかりますね。
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友達のような、
話したり、話しかけられたりする存在。 |
―― |
佐野さんにとってこの手帳は
あえて言葉にすると
どのような存在でしょうか。 |
佐野 |
この手帳、私にとって友だちっぽいんです。
友だちや家族がそこにいたら話していると思うんですけど、
いつもいるわけではないので
この手帳に話をしているみたい。
今もこの子がちょっと昼寝しているとき、
いろいろやることはあるんですけど、
手帳に向かって
「こんなことがあって、
こんなふうに思った」って書き留めています。
人に言う代わりに手帳に自分の気持ちを書いていると、
手帳が何か言ってきてくれるんですよね、
一方通行じゃなくて、手帳に書いてある言葉が
私に問いかけてくれたり、教えてくれたり。
たまたま私が考えていることに
近いようなことが
手帳の下の言葉に書いてあったりすることがあるので、
何か本当に友だちと話しているというか、
友だちに言っている感覚があるのかも。 |
―― |
そういう友だちとともに
青ちゃんが育ってきたんですね。 |
佐野 |
だからもう手放せないですね、本当に。
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古い手帳カバーは母子手帳入れに。
育児中の妹にも薦めました。 |
―― |
古い手帳カバーも活用されているようですね。 |
佐野 |
そうなんです。
昔のカバーが母子手帳入れにちょうどよかったので
保険証から何から病院で必要なものを
一緒に入れているんです。
母親って母子手帳を常に持ってないといけないらしくって。
ちょっと遠出したりするとき、
手帳とこの母子手帳入れ、
このふたつをいつも持ち歩いています。
こういう使い方もできるって便利。
そうそう、妹も子育て中だったのですが、
小学校の教師なので昨年の4月に
子どもを保育園に預けて復帰したんです。
子どももなかなか保育園に慣れずに泣いてばかりいる。
自分も新しい生活をしていくってときに
「何かこれがあったらがんばれるみたいなもの、
ないかな」って聞かれたので
「ほぼ日手帳って4月はじまりのものがあるよ」って、
勧めたんです。
手帳でがんばれるっていったら変だけど
これを持ってたら元気になれるみたいなものが
ちょっとあるような気がするの。
書くということだけではなく、
下に言葉が書いてあるじゃないですか。
「とっても忙しい日々が始まるだろうけど、
ちょっとおもしろいことが毎日書いてあって、
くすっと笑えたりするよ」って言ったんです。
妹もそこがすごく気に入ったみたいで、
すぐに手に入れて
「これでがんばれる」って言ってましたね。 |
―― |
姉妹で使っていただいて
どうもありがとうございます。
いつの日か、青ちゃんと、青ちゃんの従姉妹が
お母さんたちのほぼ日手帳を持って
話す日がくるのかもしれないですね。
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