とにかく
ここに書いておこう。
2008.02.18
ほぼ日手帳歴6年、
テレビ局でいそがしく働いていたときから
妊娠中、そしてお母さんになっても
ずっとほぼ日手帳を使ってくださっている佐野香さん。
妊娠から出産(2007年5月)、育児と
生活の変化とともに手帳の使い方も変わってきたという
手帳についてお話を伺いました。




とにかくここに書いておこう。
仕事のこと、「青日記」、すべてが手帳に。
佐野 テレビ局でプロデューサーという仕事をしていたので
仕事をしているときは
1日ページはその日にやることを
時系列で書いているだけでぎっしりなんですよね。
ただ仕事と仕事じゃないことの境目が
ちょっと微妙といいますか、クロスしてくるんです。
気になったこと、好きな歌詞。
どこに書いただろうって思うより
とにかくここに書いておこう、
ここを探せば出てくる
って思って、
とにかく全部これに書いていました。

―― 打ち合わせとやることがひたすら
書かれていますね。
佐野 そうなんです。
でも妊娠したことがわかってからは
書かれていることがちょっと変わったかもしれません。
ちょっと待ってください。
(手帳をめくりながら)
妊娠が判明したのが9月17日。
すごく、うれしかったんです。
この子の名前を「青(あお)」とすることは
すごく前から決めていたので
いきなり「青日記」ってタイトルをつけて
日記を書いていますね。



ただ、妊娠中はちょっと危ない症状があったので、
仕事を休んで家にいて、
お医者さんに行っては、
聞いたことや自分の状態を書いて
安心しようと、整理していました


妊娠初期はしばらく「青日記」が続いています。
ちょっと落ち着いたころには
「青日記」と仕事モードを行ったり来たり。

そして、産休に入ったらあまり動くことができなかったので
雑誌や新聞で、絵本など素敵なものがあったりすると、
「ああ、こんなの見せてあげたらいいな」と思いながら
記事を切り抜いては手帳に貼っていました。
―― 忙しく仕事をしているときとは
ページの雰囲気が
だいぶん変わってますね。
佐野 ええ。本から言葉を書き出したりもしています。
青が生まれる前日に
『モリー先生との火曜日』って本を読んだんです。
出産に対して「どうしよう、怖い‥‥」
という気持ちになっていたときですね。
もとは出産の1年ほど前に読んでいて、
この本は困ったときにもう一度読むと
いろんな言葉を拾えるって思っていたんです。
「感情の中の苦しいこと、つらいことも
 その中に入ってしまうと
 痛みとはどういうものかがわかる、
 愛とは何かがわかる、
 苦しみとは何かがわかる。
 よし、自分はこの感情を経験した、
 わかったっていって、次に踏み出せるよ」
というような言葉を本から拾って
手帳に書きながら自分を落ち着かせてました

―― そして、その翌日に青ちゃんが生まれたんですね!
妊娠中と出産後はまたまた大きな変化が
あったのではないでしょうか。
佐野 さすがに生まれてすぐは手帳を開けなかったのですが
生まれて10日たった5月19日に
青が生まれた日のことを振り返って
手帳に気持ちを書いています。
「我慢の限界だった。
 これまで味わったことのないような痛み。
 青が生まれた瞬間のこと。
 私の人生の中でも最高にうれしくて幸せな瞬間だった。
 あんな痛みはもう経験したくないけど、
 あの生まれてきた瞬間は戻れるものなら
 もう一度戻りたい」って。
こうやって見返していると思い出してきますね。
そのあとはひたすら授乳とおむつの繰り返しで
24時間が過ぎていくという日々で、
書くことはこれしかないというか、
ただただ記録に終始しています(笑)。

―― ただ記録だけと言いつつ、
まさに青ちゃんが生きている証ですね。
記録の仕方も少しずつ変わっていったり
したのでしょうか?
佐野 ペースがわかってくると
うんち、おしっこ、おっぱいの時間を書きつつ、
沐浴はどうだった、助産師さんが来てくれて、
こんなふうに言われたとか、
日記のようなことも増えてきます。
時間軸を使ってしっかり書きたかったのですが、
ちょっとうまくいかなかったので
ページの上から青の記録を書いていって
余ったら日記のようなことを書くみたいな
独自の使い方になっていってます

出産直後はまったく余裕がない感じですが
出産から半年経つとちょっとゆとりが出てきて、
今、青は8ヶ月なのですが、
もうあまりおっぱいの時間とか書かずに
つかまり立ちを始めたなどという
エピソードが増えています。
育児日記をちゃんとつけているママさんたちは
もっときっちりと付けていると思うんですけど、
私ぐらいアバウトだと
ほぼ日手帳がちょうどいいのかもしれない。
自分のことも書けるし、気になったこと、
自分の好きな映画のこと、
見に行きたいものの切り抜きも貼れるし、
育児日記としても使えるし

この子が大きくなってこの手帳を見せてあげるとすると、
何なのお母さんいろんなことが書いてあるぞって
不思議なノートになっていると思います。
―― ただの記録よりも
お母さんの思いがすごく伝わってくるでしょうね。
佐野 そうだといいんですけど(笑)。
今、改めてこうやって話してみると
頭のモードが仕事をしているとき、
妊娠している時、育児も段階がいろいろあって
この手帳があることで
自分のモードが整理されていて
使い方がぜんぜん違うことがわかりますね。

友達のような、
話したり、話しかけられたりする存在。
―― 佐野さんにとってこの手帳は
あえて言葉にすると
どのような存在でしょうか。
佐野 この手帳、私にとって友だちっぽいんです。
友だちや家族がそこにいたら話していると思うんですけど、
いつもいるわけではないので
この手帳に話をしているみたい。
今もこの子がちょっと昼寝しているとき、
いろいろやることはあるんですけど、
手帳に向かって
「こんなことがあって、
 こんなふうに思った」って書き留めています。
人に言う代わりに手帳に自分の気持ちを書いていると、
手帳が何か言ってきてくれるんですよね、
一方通行じゃなくて、手帳に書いてある言葉が
私に問いかけてくれたり、教えてくれたり

たまたま私が考えていることに
近いようなことが
手帳の下の言葉に書いてあったりすることがあるので、
何か本当に友だちと話しているというか、
友だちに言っている感覚があるのかも。
―― そういう友だちとともに
青ちゃんが育ってきたんですね。
佐野 だからもう手放せないですね、本当に。
古い手帳カバーは母子手帳入れに。
育児中の妹にも薦めました。
―― 古い手帳カバーも活用されているようですね。
佐野 そうなんです。
昔のカバーが母子手帳入れにちょうどよかったので
保険証から何から病院で必要なものを
一緒に入れているんです。
母親って母子手帳を常に持ってないといけないらしくって。
ちょっと遠出したりするとき、
手帳とこの母子手帳入れ、
このふたつをいつも持ち歩いています

こういう使い方もできるって便利。



そうそう、妹も子育て中だったのですが、
小学校の教師なので昨年の4月に
子どもを保育園に預けて復帰したんです。
子どももなかなか保育園に慣れずに泣いてばかりいる。
自分も新しい生活をしていくってときに
「何かこれがあったらがんばれるみたいなもの、
 ないかな」って聞かれたので
「ほぼ日手帳って4月はじまりのものがあるよ」って、
勧めたんです。
手帳でがんばれるっていったら変だけど
これを持ってたら元気になれるみたいなものが
ちょっとあるような気がするの

書くということだけではなく、
下に言葉が書いてあるじゃないですか。
「とっても忙しい日々が始まるだろうけど、
 ちょっとおもしろいことが毎日書いてあって、
 くすっと笑えたりするよ」って言ったんです。
妹もそこがすごく気に入ったみたいで、
すぐに手に入れて
「これでがんばれる」って言ってましたね。
―― 姉妹で使っていただいて
どうもありがとうございます。
いつの日か、青ちゃんと、青ちゃんの従姉妹が
お母さんたちのほぼ日手帳を持って
話す日がくるのかもしれないですね。


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佐野さんの手帳には
青ちゃんやご家族の写真、
そして「似ているかな、って思って探し出してきた」という
ご自身の子供のころの写真が
フォトアルバムに入れてはさまっていました。
この写真が記憶しているように、
ほぼ日手帳にも
佐野さんを中心に佐野さん一家のことが
刻まれていくんだろうな、ということを感じるお話でした。

子育て中の方にかぎらず
手帳は自分や自分の周辺の人との時間もしっかりと
聞いてくれているのでしょうね。
佐野さん、歴代の手帳が聞いているであろう
たくさんの話を
手帳クラブでおすそわけしていただき
どうもありがとうございました!



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