この手帳はぼくの気持ち、
ぼくの年輪のように思えます。
2007.09.13
「おいしい店とのつきあい方。」でおなじみの
サカキシンイチロウさん。
一昨年、『ほぼ日手帳の秘密』に登場していただき、
「行きたい場所、ほしいものがつまっている」
ごきげんな手帳使いの話を伺いました。

ところが、昨年と今年は
外食産業のコンサルタントの仕事が
かなり忙しく、仕事中心の日々とのこと。
2005年から2007年にいたるまで
どのように手帳の使い方が変わってきたか伺ってみると‥‥

ごきげんがつまっている、
2005年のスクラップ手帳。


―― 歴代の手帳をお持ちいただいたのですね。
どうもありがとうございます。
『ほぼ日手帳の秘密』でお話をうかがったときは、
雑誌の切り抜きやお店のカードが貼ってあって
雑誌のようなスクラップブック手帳でしたよね。

サカキ 2005年は「ごきげんな手帳」でした。
この年は、自分で自分の時間が
コントロールできた年だったと思う。
自分のペースで仕事ができていて、
旅行に行きたいと思えば行っていたし、
物を買おうと思えば買えた。
コンサートも、お芝居も行けて、
自分も時間も自由になったんです。

この手帳を使ってて、つくづくいいなと思ったのは
月ごとに色が違うところ。
そこがすごく好きなんです。
来週の予定を組もうというときと、
来月の予定を組もうというときは、
気持ちが違うじゃないですか。
一昨年は、色の違うページを見るのが
楽しくて仕方がなかったなぁ。

真っ白な手帳でわかる、忙しすぎた2006年。

サカキ ところが、一昨年の後半から昨年にかけては忙しくて
自分の予定をまったく立てることができなかった。
だから7月からまったく手帳に書いていなくて‥‥。
(昨年の手帳を開いてみて)うわ、すっげー。
わかりやす過ぎるよね。
ぼくの手帳は、ごきげんなページだけ残して
不機嫌な時期、つまり白いページは切っちゃっう、
年輪みたいな使い方なんです。
でも去年は切ることもできないぐらいまっ白だなー。



(手帳に貼ってある雑誌の記事を見ながら)
これ、まだ買ってないんだよね。
ここに行きたいと思ったり、
これ食べたいとか、これ欲しいとか思って
一所懸命モチベーションを上げてはいくんだけど
その気持ちがなくなるんだよね。忙しすぎて。
手帳を見直しながら、
いかん、いかん、みたいな感じだよ。
昨年はそういう年。
ごきげんがほとんどなかった年です。

一通の手紙がきっかけで
仕事を一所懸命するのも悪くないなと思った。


サカキ それで、今年ですね。
今までは手帳に仕事のことを
書いていなかったのですが、
仕事を一所懸命するのも悪くないなと思った
きっかけの手紙があったんです。

一緒に仕事をしている
富山のすっごいちっちゃい飲食店で、
もともと月80万くらいしか、
売っていなかったところが一所懸命勉強して、
月に400万くらい売るようになったんです。

そのお店に富山大学を卒業した男の子が
ずっとバイトしていたんですね。
その子から、
「一流企業に入るよりも、
 このお店に入って
 しばらく勉強したら独立できるから
 その方がいいやって思って、
 このお店に就職を決めました」
という手紙をもらって
「ああいいなぁ」と思って。
それで、この子の手紙で、
仕事ばっかりで
白いページが続いていた2ヶ月間を封印したの。
「勇気をくれてありがとう」って思いながら。


仕事のことを書いていたら、
仕事もごきげんになってきた。


サカキ とにかく今年は去年と同じように
仕事が忙しい状態です。
最初は、仕事をする手帳と
ほぼ日手帳をわけていたんですけど、
そうするとまた、去年と一緒で、
ほぼ日手帳を使っているときと、
使っていないときがでてくるんですよね。

だからもう仕事のこともほぼ日手帳に書こう、と
思ったんです。
おもしろいもので、
ほぼ日手帳に仕事のこと書き始めると
ごきげんな仕事にしなきゃいけないと思うから
けっこう、きれいに書いたりするんです。

例えば、あるレストランの一日のメニューを
つくったり、考えたりする仕事のこと。
自分で作ったメニューブックのミニチュアを
貼っています。



これで完成しているわけではなく、
改良版を作らなくてはいけないんですけど、
改良版の縮小コピーをして
クリップで止めてはさんでおく。
それで見直しながらどんどんなおしていく。
最終的には完成版ができあがったら、
途中段階のページは切って、貼付けて、
封印しちゃうんです。
―― そうすると、最終的に仕上がった、
ごきげんな仕事のページだけが残るんですね。
サカキ そう。ごきげんだけになる。
考えている過程もたしかにごきげんなんだけど
途中のものにはそこまで執着しないから
ごきげんな正解が出たところは
間をペタッと貼り合わせてしまいましょう、と。
途中のものを残すと、
永遠に使いまわしてしまうんですよ。
ちがうアプローチで考えて、
結論が同じであれば、構わないんだけど、
違う結論のクセして
どこぞのアプローチをそのまま流用するのは
最近すごいイヤなんです。
だから仕事の過程は封印してしまいます。



他にも仕事につかえそうな
アイデアのような雑談のような走り書きを
どんどんしています。
ビリーズブートキャンプは
なんで流行ったんだろう、とか
ユニクロがバーニーズを買収しようとしているのは
どうしてなんだろうとか。
そんなアイデアのような雑談を大勢の前で言った後、
手帳の前で反省するんですよ。
「うそをつかなかったかな」とか、
「大げさに言いすぎやしなかったかな」とか
あるいは
「今日しゃべったことを
 どこかでしゃべるとしたら
 どういうふうにしたら
 もっと伝わりやすかったのかなぁ」とか。
そんなことを思いながら、もう一度考えを、
ペンでなぞっていく。
そうすると考えが手帳の上で再結晶していくんですね。
ま、つまんないなと思えば破るなり、
ページを貼るなりしてしまいます。
そうすると、メモも
ごきげんなことしか、残らなくなる。

この見開き1ページの分量って
もしかしたら、すごくよかったのかも知れないんだよね。
ばーっと見て全体が一挙に把握できて
ぼくの中では、ここで書ききれなくなったらもう
それ以上膨らましても仕方がないってことにしています。
考えをもっと広げていこうと思ったら、
別のページに写して、広げてみる。
そこで広がるものと、
それ以上広がらないものが出てくるんですよね。



3年分の手帳をあらためて見直すと、
この手帳はぼくの気持ち、
ぼくの年輪のように思えますね。

一昨年は、仕事は仕事、遊びは遊びで、
サカキシンイチロウの生活の中に
仕事がにじみ出てこない努力を一所懸命した年。

去年は、仕事に負けた年。

今年は、仕事をする自分も
ちょっと好きになってみようかな、
って思っているってことがわかる。

こうやって見ながら楽しめるというのもいいよね。
未完成品を与えられて
わたしの物として完成品になっていく。
そういうところがこの手帳を使う楽しさだと思います。


サカキさん、どうもありがとうございました!
手帳にいろいろなものを貼りつつ、
使っていないページは切りとって、
残った部分を貼り合わせてしまうというのは
サカキさんオリジナルの使い方ですね。
「この手帳はぼくの気持ち、
 ぼくの年輪のように思えますね」という言葉は
スクラップを貼って膨らんでいたり、
使っていないページを切ってしまって
薄くなっている手帳の様子を
ずばり言い表しているなぁと思ってしまいました。

そして、2008年に使う手帳として
サカキさんが選んだカバーは「ミニドット」
どうか、仕事もプライベートも
ごきげんな手帳となりますように!