ほぼ日 |
今回、ほぼ日手帳用に2種類の生地を
用意していただきましたが、
フランスの有名高級ブランドと
取引をされているマキノさんに、
このふたつの生地のことを
お聞かせ願えればなぁ、と思っております。 |
マキノ |
わかりました。なんか緊張するな(笑)。
今回のこの2種類はですね、まず根底に
「新しいタイプのデニム」という
コンセプトがあります。
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ほぼ日 |
えっ? ‥‥デニム、ですか? |
マキノ |
ええ。
インディゴのデニムっていうのはもう
世の中にあって当たり前の商品なんですが、
これは、ほかの素材とは見えかたが違う素材の
デニム、言わば新しい感覚のデニム
「ポストデニム」なんです。 |
ほぼ日 |
ポスト‥‥デニムですか。 |
マキノ |
インディゴでないうえに、
リネンのデニムなんかあるわけないだろう、
というのが普通の考えかたなんです。
でも、僕らはインディゴや綿100%なものだけが
デニムじゃない、という感覚なんですね。 |
ほぼ日 |
‥‥なるほど。
僕らが普段目にしているジーンズのデニムだけが
デニム素材じゃない、というわけですね。 |
マキノ |
そうです。
それでいて、商売の相手がフランスのメゾン
(※高級ブランドを経営する会社のこと)
なので、カジュアルのデニムではなく、
高級感のあるもの、そういう素材を作ろう
ということになったわけです。
一般的にデニムっていうと、
インディゴ染めの洗うと色落ちするような生地、
要はジーンズになるような生地のことですよね? |
ほぼ日 |
はい。 |
マキノ |
デニムの起源だとか定義だとかから考えると、
この市松柄の生地は全然デニムじゃないんです。 |
ほぼ日 |
はい。 |
マキノ |
この生地の説明をするときって
「リネン100%で作った、張り感のある生地」
なんていうふうに説明しては、
相手はなかなか理解できないんです。
でも、デニムの持つイメージを進化させたら、
この生地はデニムというグループに属しても
いいんじゃないかな、って考えて、
「ポストデニム」という言葉で説明してます。 |
ほぼ日 |
つまり、このふたつの生地は、
マキノさんが考えた
「デニムの新たな概念」というわけですね。 |
マキノ |
そうです、そうです。 |
ほぼ日 |
なるほど。
最初聞いたときは「えっ?」て
思ってしまいましたが納得できました。
生地のプレゼンをするときって
そういうことから考えているんですか? |
マキノ |
商売の相手はデザイナーなので、
わかりやすい言葉で表現しないと
なかなか理解していただけません。
さっきの生地を「デニム」と言ったように
わかりやすい言葉で表現して
プレゼンしていくんですね。
デザイナー相手に
「この生地はスゴイ細い糸なんです」と
説明したところで「あ、そうですか」って
感じになっちゃうんです。 |
ほぼ日 |
うんうん。 |
マキノ |
そうやって、いろいろな生地を
デザイナーの方に持っていってます。
たとえば、いま持っていってるのが、
「JFKコレクション」って
呼んでるコレクションなんです。 |
ほぼ日 |
JFKコレクション! かっこいいですね。 |
マキノ |
いまヨーロッパにプレゼンしてるんですけど、
僕は、福井などで作られた生地が、
パリに認められているっていうのが
すごくおもしろいなと思ってるんです。 |
ほぼ日 |
福井といえば、繊維産業で有名ですもんね。 |
マキノ |
えぇ。そもそもJFKコレクションっていうのは
福井のみならず、
メイドインジャパンにこだわってるんですね。
で、ヨーロッパでもここ5年くらいで
かなり定着してきてます。
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ほぼ日 |
日本の生地が世界に通用するというのは、
どういう部分がほかの国の生地と違うんですか? |
マキノ |
そうですねぇ‥‥まず技術力ですかね。
どういうことをやれば、
どういう生地ができあがるのかを知っている人が
日本にはたくさんいるんです。
伝統工芸じゃないけど、
そういう職人的なところがすごく長けてますね。 |
ほぼ日 |
うんうん。 |
マキノ |
逆にヨーロッパの生地っていうのは
すばらしく見せるとか、
色の表現だったり柄の表現だったりなど
アートの面で長けてるんです。 |
ほぼ日 |
なるほど。 |
マキノ |
あとは、僕が個人的に思ってるんですけど。 |
ほぼ日 |
はい。 |
マキノ |
日本人って諦めないんですよ。
ものを徹底的に作る根気を持ち合わせてる。 |
ほぼ日 |
日本人の気質みたいなものですね。 |
マキノ |
えぇ。
だから日本とヨーロッパで同じような
素材を作ったとしても
まったく違う質感のものになりますね。 |
ほぼ日 |
へぇ~。
日本の生地のそういうこだわりの部分が
ヨーロッパのデザイナーさんにも
伝わってるってことですよね。 |
マキノ |
そうなんです。 |
ほぼ日 |
ヨーロッパのデザイナーさんが
認めた生地を、今回ほぼ日手帳に
使わせてもらうわけですが、
最初、生地を見せていただいたときに
すごく高級感があってビックリしたんですよ。 |
マキノ |
ありがとうございます。
ジャガードできっちりと柄を作ってますし、
リネン特有の反射でテカりが出る部分も
計算して作ってあるので
すごくバランスよくできてますよ。
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ほぼ日 |
そういうことって
マキノさんがディレクションというか
指示を出すんですか? |
マキノ |
そうですね、ある程度たたき台みたいなものは
あるんですけど、細かい依頼はします。 |
ほぼ日 |
ヘリンボーンって洋服にも使われるし
私たちもよく手にする素材だと思うのですが、
マキノさんのヘリンボーンと
一般的なヘリンボーンは素材から違いますよね? |
マキノ |
かんたんに言ってしまえば
糸の太さ、組み合わせ、密度のバランスの
違いですね。
そういった部分が絶妙に合ってないと
バランスのよい生地は生まれないんです。 |
ほぼ日 |
じゃあ、そのバランスを見つけるために
何度となくトライアンドエラーを
くり返しているわけですか? |
マキノ |
そうです。
計算上は合ってるのに、実際に作ってみたら
「あれ?」みたいなこともありますからね。 |
ほぼ日 |
なるほど。
そういう苦労があってこその
すばらしい生地というわけですね。 |
マキノ |
はい。 |
ほぼ日 |
いつもは洋服だったりアクセサリーだったりと
ファッションに関するアイテムに
素材を提供していますが、
今回手帳に提供してみていかがですか? |
マキノ |
そうですねぇ‥‥、
洋服って高級なものになるのは
想定内なんですけど、
こういうまったく別のものというのは
初めてなんですね。
こうやって実際に手帳になったものを見ると
やっぱり高級感を感じますね。
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ほぼ日 |
ありがとうございます。
せっかくの生地を縫製や内側の合皮が
足を引っ張らないように、
この生地の高級感をちゃんと商品にできるように
心がけました。 |
マキノ |
そういっていただけるとうれしいです。
ありがとうございます。 |
ほぼ日 |
ぜひ来年も何かいっしょにやらせてください。
お願いいたします。 |
マキノ |
こちらこそ楽しみにしています。 |