モノトーンチェックや
ヘリンボーンの生地を作った
マキノさんってこんな方なんです。
2008.12.23
ほぼにちわ、です。

ほぼ日手帳2009のファブリックカバー、
モノトーンチェックヘリンボーン
このふたつの生地は
マキノさんという方が手がけました。
この方、洋服やバッグなどに
使われる生地を扱っており、
作る人と売る人を兼任しています。
そのキャリアはフランスの有名ブランドも
一目置いているほどです。
簡単に言ってしまえば、
誰でも知っているあのブランドの洋服やバッグは、
日本でつくられたものなんです。

そのマキノさんとお話をする機会がありました。
時期的には、ほぼ日手帳2009の発売直前の8月。

マキノさんがどういう気持ちで生地と接して、
どうやって有名高級ブランドと渡り合って、
今回のモノトーンチェックとヘリンボーンの
手帳に対してどんな印象を持ったのか。
そんなお話をいろいろとお聞きしました。

それではマキノさん、
よろしくお願いいたします。

*****

ほぼ日 今回、ほぼ日手帳用に2種類の生地を
用意していただきましたが、
フランスの有名高級ブランドと
取引をされているマキノさんに、
このふたつの生地のことを
お聞かせ願えればなぁ、と思っております。
マキノ わかりました。なんか緊張するな(笑)。
今回のこの2種類はですね、まず根底に
「新しいタイプのデニム」という
コンセプトがあります。



ほぼ日 えっ? ‥‥デニム、ですか?
マキノ ええ。
インディゴのデニムっていうのはもう
世の中にあって当たり前の商品なんですが、
これは、ほかの素材とは見えかたが違う素材の
デニム、言わば新しい感覚のデニム
「ポストデニム」なんです。
ほぼ日 ポスト‥‥デニムですか。
マキノ インディゴでないうえに、
リネンのデニムなんかあるわけないだろう、
というのが普通の考えかたなんです。
でも、僕らはインディゴや綿100%なものだけが
デニムじゃない、という感覚なんですね。
ほぼ日 ‥‥なるほど。
僕らが普段目にしているジーンズのデニムだけが
デニム素材じゃない、というわけですね。
マキノ そうです。
それでいて、商売の相手がフランスのメゾン
(※高級ブランドを経営する会社のこと)
なので、カジュアルのデニムではなく、
高級感のあるもの、そういう素材を作ろう
ということになったわけです。
一般的にデニムっていうと、
インディゴ染めの洗うと色落ちするような生地、
要はジーンズになるような生地のことですよね?
ほぼ日 はい。
マキノ デニムの起源だとか定義だとかから考えると、
この市松柄の生地は全然デニムじゃないんです。
ほぼ日 はい。
マキノ この生地の説明をするときって
「リネン100%で作った、張り感のある生地」
なんていうふうに説明しては、
相手はなかなか理解できないんです。
でも、デニムの持つイメージを進化させたら、
この生地はデニムというグループに属しても
いいんじゃないかな、って考えて、
「ポストデニム」という言葉で説明してます。
ほぼ日 つまり、このふたつの生地は、
マキノさんが考えた
「デニムの新たな概念」というわけですね。
マキノ そうです、そうです。
ほぼ日 なるほど。
最初聞いたときは「えっ?」て
思ってしまいましたが納得できました。
生地のプレゼンをするときって
そういうことから考えているんですか?
マキノ 商売の相手はデザイナーなので、
わかりやすい言葉で表現しないと
なかなか理解していただけません。
さっきの生地を「デニム」と言ったように
わかりやすい言葉で表現して
プレゼンしていくんですね。
デザイナー相手に
「この生地はスゴイ細い糸なんです」と
説明したところで「あ、そうですか」って
感じになっちゃうんです。
ほぼ日 うんうん。
マキノ そうやって、いろいろな生地を
デザイナーの方に持っていってます。
たとえば、いま持っていってるのが、
「JFKコレクション」って
呼んでるコレクションなんです。
ほぼ日 JFKコレクション! かっこいいですね。
マキノ いまヨーロッパにプレゼンしてるんですけど、
僕は、福井などで作られた生地が、
パリに認められているっていうのが
すごくおもしろいなと思ってるんです。
ほぼ日 福井といえば、繊維産業で有名ですもんね。
マキノ えぇ。そもそもJFKコレクションっていうのは
福井のみならず、
メイドインジャパンにこだわってるんですね。
で、ヨーロッパでもここ5年くらいで
かなり定着してきてます。



ほぼ日 日本の生地が世界に通用するというのは、
どういう部分がほかの国の生地と違うんですか?
マキノ そうですねぇ‥‥まず技術力ですかね。
どういうことをやれば、
どういう生地ができあがるのかを知っている人が
日本にはたくさんいるんです。
伝統工芸じゃないけど、
そういう職人的なところがすごく長けてますね。
ほぼ日 うんうん。
マキノ 逆にヨーロッパの生地っていうのは
すばらしく見せるとか、
色の表現だったり柄の表現だったりなど
アートの面で長けてるんです。
ほぼ日 なるほど。
マキノ あとは、僕が個人的に思ってるんですけど。
ほぼ日 はい。
マキノ 日本人って諦めないんですよ。
ものを徹底的に作る根気を持ち合わせてる。
ほぼ日 日本人の気質みたいなものですね。
マキノ えぇ。
だから日本とヨーロッパで同じような
素材を作ったとしても
まったく違う質感のものになりますね。
ほぼ日 へぇ~。
日本の生地のそういうこだわりの部分が
ヨーロッパのデザイナーさんにも
伝わってるってことですよね。
マキノ そうなんです。
ほぼ日 ヨーロッパのデザイナーさんが
認めた生地を、今回ほぼ日手帳に
使わせてもらうわけですが、
最初、生地を見せていただいたときに
すごく高級感があってビックリしたんですよ。
マキノ ありがとうございます。
ジャガードできっちりと柄を作ってますし、
リネン特有の反射でテカりが出る部分も
計算して作ってあるので
すごくバランスよくできてますよ。



ほぼ日 そういうことって
マキノさんがディレクションというか
指示を出すんですか?
マキノ そうですね、ある程度たたき台みたいなものは
あるんですけど、細かい依頼はします。
ほぼ日 ヘリンボーンって洋服にも使われるし
私たちもよく手にする素材だと思うのですが、
マキノさんのヘリンボーンと
一般的なヘリンボーンは素材から違いますよね?
マキノ かんたんに言ってしまえば
糸の太さ、組み合わせ、密度のバランスの
違いですね。
そういった部分が絶妙に合ってないと
バランスのよい生地は生まれないんです。
ほぼ日 じゃあ、そのバランスを見つけるために
何度となくトライアンドエラーを
くり返しているわけですか?
マキノ そうです。
計算上は合ってるのに、実際に作ってみたら
「あれ?」みたいなこともありますからね。
ほぼ日 なるほど。
そういう苦労があってこその
すばらしい生地というわけですね。
マキノ はい。
ほぼ日 いつもは洋服だったりアクセサリーだったりと
ファッションに関するアイテムに
素材を提供していますが、
今回手帳に提供してみていかがですか?
マキノ そうですねぇ‥‥、
洋服って高級なものになるのは
想定内なんですけど、
こういうまったく別のものというのは
初めてなんですね。
こうやって実際に手帳になったものを見ると
やっぱり高級感を感じますね。



ほぼ日 ありがとうございます。
せっかくの生地を縫製や内側の合皮が
足を引っ張らないように、
この生地の高級感をちゃんと商品にできるように
心がけました。
マキノ そういっていただけるとうれしいです。
ありがとうございます。
ほぼ日 ぜひ来年も何かいっしょにやらせてください。
お願いいたします。
マキノ こちらこそ楽しみにしています。

*****

いかがでしたでしょうか?
マキノさんの、日本の生地に対する情熱は
並々ならぬものでした。
その想いをほんの少しでも
感じていただければ幸いです。

さて、マキノさんが手がけた
モノトーンチェックヘリンボーン
まだ若干在庫がございます。
この機会にぜひお手にとっていただけたらと思います。

ちなみに、前回お知らせしたとおり、
今回の入荷でほぼ日手帳2009での販売は
終了となります。
ご注意くださいませ。
※4月はじまりの「ほぼ日手帳2009 SPRING」でも
 モノトーンチェックとヘリンボーンの販売はございます。