未分類カテゴリー記事の一覧です

chizuさんに着ていただきました③

未分類

白から生成りにかけてのグラデーションがうつくしい、
ローブのコーディネート。
「同系色でまとめるとラクよ」。
さらりとおっしゃいますが、
折りあげた袖からのぞく、白い長袖Tシャツの分量とか、
素材の組み合わせ方とか。
さりげない「抜け感」は、
そうそう真似できない。

「60年も着たり脱いだりしていると、
これにはこれかな? なんて、なんとなく分かるものなの」

ローブについているリボンは、
結ばずにたらして。
ずるっとだらしない感じにならないのは、
身長168センチのchizuさんだからこそ。

今回、とても意外だったのは、

「最近、リネンの服を着る時は、
きちんとアイロンをかけてる」

というchizuさんの言葉。
リネンのシワも味わいのひとつ、
と思っていた私には目からウロコでした。

「くたびれたよさみたいなものが似合う年頃もあるけれど、
私くらいの年齢になると、それが似合わなくなるの。
とにかく身ぎれいにしていないとね」

なるほど。
おしゃれの先輩の言葉には、
説得力があるのです。

(伊藤まさこ)

chizuさんに着ていただきました②

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「パンツが多いけれど、スカートももちろん履くわよ。
ほとんどがタイトだけどね」

とchizuさん。
そういえばワンピース姿、
今までお見かけしたことないかも?
‥‥ということで、
今回、とてもたのしみにしていたのが、
chizuさんのスリップドレスの着こなしでした。

重ね着するのかな?
足元は?
「あまり出さない」とおっしゃっていた首元は?

とわくわくしながら待っていたら、
おー!!
スリップドレスの下に、
同じネイビーのシースルーのシャツ?!
足元は素足にすっきり白い靴!

「このシャツね、縫い目の線がいろいろあるから、
視線がシャツの奥にあまりいかなの。
素肌問題も解消よ」

とはおしゃるものの、なかなか真似できないスタイル。
でも、すっごくかっこいい。
リネンの服の違う一面を見たような気になりました。

足元は、
仕事の時は、歩きやすいスニーカーや紐靴を。
おしゃれする時はヒールは履かず、
今日のようなフラットな靴が多いとか。
「足全体をおおうスリッポンとかではなくて、
甲が見えるタイプのものが好き」。
甲を見せると足が長く見えるし、
足首も華奢に見えるでしょ?とのこと。
なるほど、こちらは真似できそうです。

ネイビーのパンツに、
Gジャンのシンプルなコーディネート。
ちらりとのぞくスカーフは、
あの高級メゾンの‥‥と思いきや、

「スーベニール(お土産もの)のものよ、
西海岸のなんとかパークの」

とおっしゃるではありませんか。
ああ、10代の頃にお土産でいただいた、
エッフェル塔柄のスカーフ、
だれかにあげるんじゃなかった!

「ブランドものも着るけれど、
でもそれだけじゃつまらないし、もったいないなとも思う」とchizuさん。
ファストファッションも着るし、
キッズものものぞくことがあるんですって!

ブランドものもファストファッションも。
垣根なく「いいものはいい」と、
取り入れられるその柔軟さは、
ご自分のスタンダードがあるからこそ。
chizuさんの「かっこいい」の秘密のひとつは、
こんなところにあるんだなぁ。

(伊藤まさこ)

chizuさんに着ていただきました①

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スタイリストをはじめて
40年近くになるというchizuさん。
知り合って四半世紀(もうそんなに!)になりますが、
その間、いつも私の先を歩く大先輩。
そのお仕事ぶりはもちろんのこと、
なんといってもご本人のかっこよさに、
いつも惚れ惚れしています。

今回、fog linen workと作ったリネンの服を、
どなたかに着ていただくコンテンツを作ろうとなった時、
まっ先に思い浮かんだのがchizuさんでした。

コーディネートによっては、
ともすると、ちょっと部屋着っぽくなったり、
ほっこりしすぎてしまうリネンの服。
chizuさんならばきっと、
そうはならない着こなしを披露してくださるにちがいない、
と思ったのでした。

黒のサロペットに合わせたのは、
大胆な柄のブラウスと、ワンストラップのスニーカー。

「ブラウスは20年くらい前に買ったマルニ、
スニーカーは知人のギャラリーのフリマで買ったものなの」

20年前!?
服の変遷期はなかったのでしょうか‥‥? とたずねると、

「そうねぇ、好きなものはあんまり変わらないわね」

とchizuさん。
それは服にかぎらず、
髪型も、ナチュラルなメイクも、
すらりとしたそのお姿も、
私の知るかぎり、
25年前からずっと変わらぬchizuスタイル。
そりゃ、憧れる人は多いはずです。

「もちろんいろいろ変わってきてるわよ、体型も肌も。
(サロペットを着た上から
カーディガンを羽織った私を見て)
そんなに首元、見せられないもの。
もともと襟ぐりがそんなに空いていない服が
好きではあるけれどね」

襟元はVネックより、
だんぜん丸首をえらぶことが多いのだとか。
それでも、きちんととめた第一ボタンの下から、
時々、見え隠れする素肌がかっこいい。
大人の肌の見せ方のバランスは、
こうなのか! と膝を打ったのでした。

(伊藤まさこ)

fog linen workのサロペット

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大人のサロペット

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若い頃は、
少ないおこづかいをやりくりして、
おしゃれを楽しんだものでした。
古着屋をめぐって、
ワンピースやアクセサリーを探したり、
問屋街に行って、
プロ仕様の安くてかわいい
バレエシューズを見つけたり。
欲しい服がないときは、
自分で服を縫うこともしょっちゅうでした。

似合うものより、着たいものを着る。
若いからこそのいきおいの、
なんとまぶしかったことよ‥‥。

それがだんだんと、
自分を客観視できるようになり、
これは似合う、これは似合わない。
そんな風にふるいにかけていくのが、
大人のおしゃれというものなのかもな、
なんて思う今日この頃。

けれども、
まだまだ挑戦したい服だってある。
去年あたりから、
ものすごく気になっているのが、
サロペットとオールインワンです。

今週のweeksdaysは、
fog linen workと作ったサロペットをご紹介します。
リネンをたっぷり使った、
大人だからこそ着こなせる服。

これを着ると、
まだまだ新しいおしゃれって、
あるものだな、なんて思うのです。

やすみの日にしたいこと[7] 靴をみがく

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履くたびに手入れができればいいけれど、
なかなかそうもいかない毎日。
ここ最近はやすみの日に、
えいやっとまとめて靴みがきをすることにしています。

手入れはいたってふつう。
ウェスに専用のクリーナーを取り、
靴全体にうすくのばしてから、
やさしく汚れを拭き取ります。

気がつけば、
今日はぐうぜん全部白い靴。
汚れが目立つからと、敬遠されがちですが、
私は大好き。
なんといっても全体がかろやかに見えるものね。

さて、
包丁も研ぎました。
ハーブも植えました。
靴も磨きました。
ふだんできなかったことが、
やすみのおかげで整って、
さあ明日からはりきっていこう、
そんな気分になる。
いつもの毎日があって、
やすみがあって。
そのメリハリがきっといいんだろうな。

(伊藤まさこ)

やすみの日にしたいこと[6] 好きなものを好きなだけ

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じつは休みの日にいちばんしたいことは、
「日がな一日、好きなことをする」
です。

眠たくなったら寝て、
喉が乾いたら何か飲む。
その日によってしたいことはいろいろだけれど、
時間を気にせず、自分のペースで好きなことをします。

朝起きて、ベッドでだらだらしながら本を読み、
クッキーをひとつまみ。
その後は、ソファに寝転びながら、
映画を2本観ていたら、
知らないうちにウトウト。
‥‥たとえば今日の私はこんな風。

夕方近く、
急にお腹が空いたので、
買い物に行き、
ステーキを焼きました。

部位はランプとヒレとトモサンカク。
せっかくだから、
3種の肉の味をたのしもうというわけ。

あとは赤ワインで、今日の晩ごはんはおしまい。
え?
つけ合わせはないの?
サラダも作らないの?
と思うでしょう?

そう。
だって今日は「好きなことをする日」なんだから、
これでいいのだ。

(伊藤まさこ)

やすみの日にしたいこと[5] ハーブを植える

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昨年の秋に引越した家のバルコニーには、
幅20センチ、長さ2メートルくらいの
細長い花壇があります。
土もいい感じにならされていて、
あとは植えるばかり。
‥‥なのですが、
じつは私、植物を育てるのが大の苦手。
グリーンフィンガーならぬ、
ブラウンフィンガーなのです。

窓の外のバルコニーを眺めるたびに、
ああ、ここにグリーンがあったらどんなにすてきなことか。
そう思うけれど、
今まで何度も枯らしてしまった苦い経験があるから、
手つかずのまま。

ところがある日、
ふと通りがかった近所の花屋の店先に、
いせいのいいローズマリーが並んでいるのを発見。
バルコニーに植わったローズマリーが風に揺れて、
いいにおいが部屋までとどいたらどんなにすてきなことか!
ためしに3鉢買って植えてみることにしました。

時々、水をやって、
時々やり忘れて。
そんなことを繰り返しているうちに、
春が来て、あれ?
気がつくと3倍くらいの大きさになっている。

これに気をよくした私は、
その花屋の店先でハーブの苗を見るたび、
時間ができたら植えよう、そう決めたのでした。

さて、休日の朝。
いそいそと花屋に向かい買ったのは、
ワイルドストロベリー、シソ、バジル、
タイムが2種類。
それに実家の母の庭のミントもくわえ、
さあ植えましょう。

時々、水をやって、
時々きっとやり忘れるにちがいないけれど、
なんだか今度はうまくいきそう。
そんな予感がしています。

(伊藤まさこ)

やすみの日にしたいこと[4] 煮込み料理

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一日中、家にいられる日は、
時間のかかる煮込み料理を作ります。

と言うと、
さぞかし手の込んだ‥‥と思われるかもしれませんが、
いえいえそんなことはありません。

たとえば、鶏一羽とブーケガルニ。
たとえば、根菜とソーセージ。
材料と水を入れたらあとは火にかけるだけ。
煮込んだ時間の分だけおいしくなる、
魔法のような料理なのです。

今日は、先日旅したハワイでおぼえた
オックステールのスープを作りました。
「作る」と言っても、
私がしたのは、
おいしそうなオックステールをえらんだことと、
ていねいにアクをすくったことくらい。

鍋にオックステールとネギの青い部分、
しょうがのかけらをいくつか入れて火にかけ、
煮たったら中火でコトコト煮ること3時間。

味つけは塩をほんの少し、
スープ皿に盛ったら、香菜たっぷり、こしょうを振って、
しょうが醤油をちょっとずつつけながらいただきます。

途中、大根を入れたのは私のアレンジ。
こんな風に、
旅の思い出が少しずつ変化しながら、
自分の家の味になっていく。
それはなんだかとってもうれしいことなのです。

(伊藤まさこ)

やすみの日にしたいこと[3] 白湯で過ごす1日

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時々、半日か1日丸ごと、
白湯だけで過ごします。

と言っても、
意識的にしているのではなく、
「もうお腹に何も入らない」
と限界を感じることがあるから。

頭の中もそうだけれど、
胃袋も情報がいっぱいになると、
自分に何も入ってこなくなる。
だからいったんからっぽにして、
一度、整えるというわけ。

「からっぽ」の日は、
パソコンも開かず、携帯電話も見ず。
連絡を取りたい時はどうすればいいの?
仕事は大丈夫?
なんて声が聞こえてきそうですが、
あんまり気にしません。

喉が乾いたら、白湯を飲み、
お腹が空いても少しがまん。
グーグーというお腹の音に慣れる頃には、
あれ? 体調がよくなっている。

読みたいなと思っていて、
手つかずになっていた本でも読みながら過ごす1日。
ほかにはなーんにもしません。
だって、せっかくのからっぽデーですもの、
たまにはこんな日があってもいいじゃない?

(伊藤まさこ)

やすみの日にしたいこと[2] カトラリー磨き

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包丁研ぎが終わったら、
次に向かうのは、カトラリー磨き。

ふだんお世話になっているにもかかわらず、
放っておいてごめんね。
曇ったカトラリーを見ながら、
反省することしきり。


フランスやイギリスで買ってきた、
古いシルバーのカトラリー。
いつの間にやらたくさん集まって、
今では100本くらいになりました。
といっても100本すべて磨くのは大変だから、
よく使うものを20本くらい、が1日のめやす。
せっかくの休み、根を出しすぎて疲れてしまっては
元も子もないですからね。

さぁて。
お茶を入れて、
ダイニングテーブルにずらり並べてはじめましょう。
好きな音楽でもかけながら。

(伊藤まさこ)

やすみの日にしたいこと[1] 包丁を研ぐ

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気づいた時に、
すぐ行動に移せればいいけれど、
日々の忙しさにかまけて、
なんとなく後回しにしてしまうことって、
いろいろあるものです。

やすみの日、
少しゆっくりした朝の時間を過ごしたら、
さて、と向かうのは台所。
ここ最近、ずっと包丁研ぎをしたいなぁと
思っていたのです。

有次の包丁に、
高知の朝市で買った菜切包丁、
パリの道具屋で買ったペティナイフ‥‥。

シャッ、シャッ。
砥石にたっぷり水を含ませて、
背筋をピンと伸ばして。
砥石と包丁がすれ違う音は、
なんとも気持ちがよい。
研ぐうちに、気持ちも研ぎ澄まされていくから不思議です。

包丁がピカピカになると、
料理もたのしくなる。
トントン、トントン。
台所に包丁の音がきげんよく響くと、
家中が、なんだかうれしそう。
道具の手入れって、
大事だなぁと思う瞬間です。

(伊藤まさこ)

イベントのおしらせ「伊藤まさこの器のお店」@TOBICHI京都

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伊藤まさこの器えらび』出版を記念して、
TOBICHI京都TOBICHI東京
イベントを開催します。
題して「伊藤まさこの器のお店」。
書籍の中で紹介されている
weeksdaysの鋼正堂の器をはじめ、
伊藤さんがセレクトした器などを販売します。
京都での期間は4月26日(金)から5月8日(水)まで。

1日だけ、書籍へのサイン会も行います。
ご来場くださった方には、
「TOBICHI京都から歩いていける おいしいものMAP」を
無料でお配りします。

このイベントは、
京都からスタートして、内容をすこし変えて、
東京では5月17日(金)から5月19日(日)に開催します。
関東圏のみなさまは、もう少しお待ち下さいね。

TOBICHI京都でのイベントの詳細は、
下記をごらんください。
TOBICHI東京の詳細は、後日お知らせいたします。

伊藤まさこさんのサイン会を
開催します。

4月26日(金) 14:00〜16:00ごろを予定しています。
・対象となるのは、
TOBICHI、または書店で
「器えらび」をご購入いただいた方。
・「器えらび」の書籍にサインをします。
・当日(4月26日)、12:00より、
TOBICHI京都のレジで整理券を配布します。
・整理券の配布状況や、定員に達した場合は、
TOBICHI京都のTwitterでご案内します。

「TOBICHI京都から歩いていける
おいしいものMAP」を
無料でお配りします。

伊藤まさこさんがおすすめする、
「TOBICHI京都から歩いて行けるおいしいものMAP」を、
無料でお配りします。
ゴールデン・ウィークのお出かけにぴったりですよ。

伊藤まさこさんがセレクトした
器などを販売します。

『伊藤まさこの器えらび』にも紹介されている
weeksdaysで取り扱っている器をはじめ、
伊藤さんがセレクトした器などを販売します。
普段はネット販売のみのweeeksdaysの器を
実際、手にとってご覧いただけます。
主な取り扱いは、鋼正堂、東屋などを予定しています。

みなさまのご来場、心よりお待ちしています。

気持ちのいい場所へ。

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伊藤
関根さんはリネンがお仕事の中心だと思いますが、
お店に伺うと、布だけじゃなくて
いろいろな雑貨が置かれていますね。
関根
はい。わたし、リネンの人間といわれますが、
どっちかっていうと雑貨屋だと自分で思っているんです。
伊藤
そういえばこのごろは
インドのものも増えてきましたね。
関根
そうなんです。金物をつくっています。
そもそもは、ワイヤーのカゴをずっと、
サンフランシスコのかたを通じて、
メキシコから仕入れていたんです。
ところが20年ぐらい経って、オーナーさんが亡くなり、
もうこれ以上カゴを供給できないと言われ、
メキシコに行ってほかのカゴを探そうかと
思ったんですけれども。
メキシコに行った人が、危ないよと。
それだったら、インドのほうが、
ほかにも何かいろいろあるかも? と探して、
カゴをつくってくれるところを見つけました。
伊藤
どうやって探したんですか?
関根
インターネットで探しました。
伊藤
!!!
関根
オーナーさんの写真は、
サングラスしていてコワモテだったんですが、
やり取りをしていると感じはいいし、
サンプルづくりもスムーズだったので、
1回訪ねてみたんです。
伊藤
ひとりで?
関根
ひとりですね。
なんとかなります。
そのバスケットをつくっているところは、
町中が金物をつくってる土地で、
どこでもトンテンカンってして溶接して、
金物をつくっているところでした。
バスケットはその町の中心部から車で30分ぐらいの
小さな農村で、農閑期にそれぞれのお庭で
みんなが編んでつくってくれているんです。
つくるものは、絵で説明をするんですって。
そして、日本に輸出するということは、
長く船に積まれることであるとか、
日本の気候のなかでどう使われるのかなどが
最初は抜け落ちていたので、
届いたら全部錆びていたりして、
大変だったんです。
今度はちゃんとしているかなって思ったら、
設計図とまるでちがう! ということも。
それで何回もやり取りがあって、
どうにかできるようになりました。
とはいえ、量をつくってもらうと、
直角にしてほしいところの角度がちがったり、
ちょっと気を抜くと、3歩進んだつもりだったのが、
また2歩下がるみたいなことが続いています。
それでも、インドに行くと
「もう家族だよ」って言われて、
社長の親戚の家でご飯食べたりもして。
インドの人とのやりとりは、
いろいろ失敗はあるんですけど、
本当に家族っていう感じになっているんです。
伊藤
関根さん、それをやり取りできるのがすごいと思います。
その動じなさも、おばあさまから受け継いだものなのかも。
これから、つくりたいもの、したいことも
たくさんあるんじゃないかしら。
関根
いまやってることを、
なんとかするのでせいいっぱいです(笑)。
南インドでの布製品づくりもはじめたんですが、
秋物を頼んだつもりだったのに、
まだ、できてなくて、
1年先になるかもしれません。
伊藤
fogの商品は、買いやすい価格で、
そのことにいつも驚くんです。
すごいことですよね。
関根
説明するのが苦手なので、
置いてさえおけば「いいものだ」って
わかってもらえるようなものをつくり、
納得いただける価格にしようと思っているんです。
──
今回、ローブとバスマット、サロペットなど
いくつか、一緒につくらせていただいたんですけれど、
バスマットの大きさに目から鱗で。
バスマットって、お風呂のドアのそばに置いたときに
ちょうどいいサイズにできていますよね。
そうするとじつはちょっと面積が足りない。
でも、まあ、そういうものしかないよな、
と思いながら使っているわけです。
ところが伊藤さんは、
大きな麻袋を使ってるっておっしゃって。
伊藤
イギリスで買ったんですけど、
穀物入れみたいな袋なんです。
わたしも常々、思いっ切り拭きたいのに、
自分がバスマットに合わせることないんじゃない? って。
こんなものかな、この大きさなんだな、
って使ってるものでも、
そうじゃなくていいんじゃない?
って思うものが多いんです。
──
それで、fogのリネンのバスタオルを
半分に折ると正方形になって、使ってみたら快適で、
「それでいいんじゃないかな?」って。
伊藤
リネンは、本当にすぐ乾きますしね。
毎日乾きたてで、気持ちよく使えるんです。
その流れで、「weeksdays」で
家で着るバスローブがほしい、という話になったんです。
そうして関根さんとものづくりがはじまりましたね。
そしていざサンプルができあがってきたら、
チームのみんなが「外へも着ていける!」って、
うれしそうにしているんです。
海に行ったときや、
ちょっとした夏の羽織ものみたいに着られると。
わたしはバスローブ、単機能を考えていたので、
なるほど! と思って、
それはわたしがみんなから教えてもらいました。
だからアイテムの名前からは「バス」の言葉を外しました。
バスローブとしても使える、ローブ。
そして、その下にも着るものもほしいねって、
どんどん夢が膨らんで。


──
バスローブ専用、となると、
ちょっとハードルが高い気がしたんです。
とてもべんりなものだということはわかるので、
「weeksdays」を通して
そのよさを広めたいなっていう気持ちは
伊藤さんにも、わたしたちにもあって。
ただ、使い慣れてない人は、
生活習慣からかえないといけない。
伊藤
関根さんはローブやガウンは
おうちで着られますか。
関根
わたしは、小さいときから、わりとガウン生活でした。
家族でみんなガウンを着ていたんです。
ローブっていうよりガウンですね。
パジャマの上に着ていたから。
盛岡で、寒かったせいもあって、
みんなそれぞれのガウンを持っていました。
weeksdaysは、これからバスグッズが広がるんですか?
伊藤
ずっと続けていくつもりなので、
「これがほしい!」って思いついたら、ぜひにと思います。
でもなにしろわたしがあつがりなもので、
バスルームの滞在時間が短いから、
長風呂系はないかもしれないですね。
それに、わたし、バスルームにものが少ない。
からだも手で洗うんですよ。
皮膚科の先生のおっしゃるとおりにしていて、
ゴシゴシするものを持っていないんです。
でもわたしがなるべくものを置かないのは、
汚れやカビの可能性が増えて、
その分掃除の手間が増えるからなんです。
関根さんには「理想のバスルーム」がありますか?
関根
うーん、どうだろう?
わりとわたし、いまの暮らしが気に入っていて、
トイレとお風呂が一緒なのも、使いやすいんです。
ただユニットバスがちょっと、って思ってるぐらいで。
でも‥‥もうちょっと洒落た感じになればいいかな。
伊藤さんは?
伊藤
すぐ乾くバスルームだといいな。
あと、白いこと、自然光が入ること。
実家のバスルームは広くて、出窓があるんですね。
だから昼間にお風呂に入りたくなる。
でもいまのような賃貸の集合住宅では
お風呂っていちばん選べないところで、
でも毎日使うから、入るたびに、
ちょっと嫌だなぁと思ったりもします。
関根
そういうこと、ありますよね。
伊藤
なかなか難問ですよね。
前に住んでたところは、
取り壊しになっちゃったんですけれど、
築50年ぐらいで、バスルームは本当に外国みたいでした。
洗い場がなく、バスタブのなかでシャワーを浴びる、
まあまあ不便なんだけど、すごくかわいいなって、
いつも思っていました。
わたし、便利より、かわいいほうがいいんだと思います。
関根
わたしも結構そうかも!
伊藤
便利、便利でいくと、
素っ気なくなっちゃいそうな気がするけれど、
きもちよくシンプルにしていくのはいいと思うんです。
シャンプーとか置く用の台なのか、
プラスチックの棚はいらないのになと思ったり。
置きっ放しにせず、
毎回シャンプーを持って行けばいいんだから。
関根
わたしも、お風呂の蓋さえ
いらないと思っていたんですけど、
絶対いるって言われました。
伊藤
ええっ、いります?
関根
冷めるから、あったほうがいいって。
伊藤
沸かし直すために。
でも、それでは乾くヒマがないというか、
カビの温床になりそうな気がして、
わたしは好きじゃないな。
関根
素敵なお風呂って難しいですね。
伊藤
「わたしが快適かどうか」は大事だと思うんです。
とあるかたの別荘に遊びに行った時、
そのかたもシャワー派だとおっしゃっていて、
湯船がありませんでした。
ベッドルームの脇にちっちゃいシャワールームがあって、
それだけ。
そっか、親しい人以外は家に入れないだろうし、
こんなふうに親密な感じでもいいんだ、と思いました。
ほしいものはほしいけれど、
いらないものはいらない。
「weeksdays」が提案しても、
「わたしはちがうな」ということがあれば、
それでいいと、わたしは思うんです。
関根
ほんとうにそうですよね。
伊藤
関根さん、いろいろお話がうかがえてたのしかったです。
今後のfogが、ますますたのしみです。
関根
こちらこそありがとうございました。
またぜひいらっしゃってくださいね。

リトアニアへ。

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伊藤
大伯母さまは、リトアニアで、
リネンの仕事をなさっていたわけじゃないですよね?
関根
そうじゃないんです。ふつうの主婦だったんです。
たまたまリトアニアから留学生がホームステイしていて。
その間に、リトアニアがロシアから独立したので、
情勢が危ないから家族も呼びたいと、
大伯母の家にご家族が引っ越していらして、
2年ぐらいいたんです。
そしてやっぱり国に帰りたいっていうときに、
むこうに帰っても仕事がない、となって、
大伯母が手伝って、
みんなで出資して和食の店を始めよう、って。
伊藤
えっ?!
大伯母様は、じゃあ、
そのご縁でリトアニアに?
関根
そうなんです。
といっても大伯母は基本的には日本に住んで、
ちょくちょく行っていたという感じですね。
伊藤
すごい‥‥。でも、そうでした、
先ほど話してくださった関根さんのご両親も
よく外国のお客様を招いていたというし、、
おばあ様は、たしか‥‥。
関根
そうです、そうです。
「みちのくあかね会」(*)。
伊藤
創立メンバーでいらしたんですよね。
盛岡の、戦争で夫を亡くした女性にも仕事を、って。

(*昭和33年に、羊毛を手染め、手紡ぎ、
手織りした織物をつくる「盛岡婦人共同作業所」が発足。
昭和37年に「株式会社みちのくあかね会」となる。
現在も、工程・運営のすべてを女性が行なっている。)

関根
はい。祖母は医者でしたから、
祖母自体が織ったりは全然してないんですけれども、
会社の立ち上げを手伝いました。
思えば、祖母も大伯母も両親も、
すごくオープンな感じで、
祖母の家にもいつも留学生がいましたね。
わたしも小さいときからそんな環境で。
伊藤
そうなんですか!
それで納得がいきました。
いま、外国のお客様をどうぞどうぞ、
長くいてくださいってお招きしたり、
リネンを探そうとリトアニアに行かれたのも、
関根さんにとっては、きっと、
躊躇するようなことではなかったんですね。
関根
もう、そのときは、本当に生活のためっていうか。
ここで何か稼ぐ手段を見つけないと
暮らしていけないって思っただけなんです。
「何か買い付けをしたい」と思って‥‥。
伊藤
リトアニアでは、すぐにリネン製品の
手配ができたんですか?
関根
ところが、探したかったものを
売っているお店がまったくなくて!
リトアニアはロシアから独立してまだ間もなかったので、
そもそもお店なるものがそれほどなく、
あっても普通のスーパーマーケットで、品薄でした。
お土産物屋さんに行っても、琥珀のアクセサリーと
結婚式用のドレスみたいなものがあるだけ。
普通の布巾とかエプロンとか、
みんながふだん使っている麻の布って、どうしてるの?
どこで手に入れるの? と聞いたらば、
「つくってもらえばいいじゃない」って言うんです。
大伯母の和食の店でも
座布団カバーや暖簾が麻だったんですが、
そういうのは近所のおばあさんに縫ってもらったと。
伊藤
近所のおばあさん!
関根
そういう人に頼んだら? って。
でも、日本で仕事にするには枚数が要る。
きっと何十枚もは縫ってもらえないし、
おばあさんも、その人たちも輸出の手続きはできない。
毎回、毎回、人を通すのも、
いずれ大変になるなと思ったので、
これはひとりでなんとかしなくちゃって、
電話帳で工場らしきところを調べて‥‥。
伊藤
電話帳!
関根
リナス(LINAS=リネンのこと)って書いてるところに
電話をしたんです。
といっても、3軒ぐらいしかなかったんですよ。
だから、全部に電話してみて、
日本に商品を買いたいみたいなことを英語で言ったらば、
1軒目は言葉すら通じず、すぐガチャンと切られて、
でも2軒の人は話を聞いてくれました。
行ってみたかったんですが、場所が首都から遠かったので、
資料を送ってくださいと言ったらば、
小さい封筒で、リネンの1センチ角ぐらいの端切れが
3つぐらい入ったものが郵便で届きました。
「この生地があるから、何がほしいのかを言ってください」
そうやっていまの工場とおつきあいがはじまったんですが、
わたしは自分で商品を企画しようなんて、
そのとき、まったく思っていなかったんです。
伊藤
あるものを買おう、と思っていたんですね。
関根
そう思っていました。
それまではアメリカで、できあがった製品を買って、
日本に持ち帰って売っていたわけなので、
リトアニアでも
製品になったものを買おうと思っていたんです。
だから「こういう商品をつくってください」という
指示書を書く仕事が、全然わからなかった。
伊藤
どうなさったんですか?
関根
昔働いていた家具の会社の人で、
そういう仕事をしていた人に、
どういうふうに指示書を書いたら
海外の人に通じるのか、教えてもらいました。
それでなんとか仕様書をまとめて、
キッチンクロスを30枚と、
エプロンも30枚ずつ、3型ぐらいお願いしたらば、
3週間ぐらいでサンプルが郵便で届いたんです。
伊藤
ああ、ドキドキ。でも早かったですね。
ちゃんと、できていましたか?
関根
はい! 「思った通りのが来た!」って。
リトアニアのひとたち、
きちんとしてるんですよ、すごく。
伊藤
「weeksdays」でもサンプルをお願いして、
あがってくるのがすごく早かったので驚きました。
関根
ありがたいです、本当に。
伊藤
それを、どこで売られたんですか?
まだfogのお店をつくられる前ですよね。
関根
そのときは、バスケットを卸しているお店があったので、
その方に声をかけました。
すぐになくなったので、
次の月は200枚ずつとかっていうふうにまた注文すると、
またそれが届いて、みたいな。
そうしてだんだん広がっていって。
伊藤
それが、いまに至る?
関根
はい、そうなんです。
伊藤
そして最初のお店をつくられたんですね。
たしか下北沢の周辺で、
本当にこじんまりしたお店でしたね。
わたしが『まいにちつかうもの』っていう本を出したときに
紹介させてもらったのを覚えています。
そのときの記事、自分で書いたのを見ても、
関根さんのつくられる麻の製品について
わたしの思っていることは、いまも変わりません。
「まとめて買ってます」
「どんどん使って毎日洗うと気持ちいいですよ」って。
当時、こういうものが日本にはなくて、
海外へ行くたびに買っていたんですが、
どうしてもいろんな柄のものになってしまうんですね。
かわいい柄のリネンは、
旅先で1枚、2枚買うと盛り上がるものの、
家にふえていくと、統一感がなくなっていくんです。
そしたら、関根さんがつくられているfogを知って、
「もう、全部換えてしまおう!」みたいな(笑)。
関根
全部(笑)!
伊藤
そうなんです。
たとえば野田琺瑯もそういう感じで、
食材を冷蔵庫にしまうのに
いろんなプラスチック容器を使っていたんだけれど、
白い琺瑯がとても気に入って、全部換えたんです。
fogのリネンに出会ったときもそう思いました。
しかもとても安価でよかったんです。
関根
キッチンクロス、最初の頃は
いまより安価でしたものね。
伊藤
リネンはずっとリトアニアですか?
関根
はい、リネンは全部リトアニアです。
伊藤
最初の工場のまま、
つくる量が増えていったんですか?
関根
最初からずっと同じ工場です。
わたしが最初訪ねて行ったときは、
もう家庭科教室みたいな感じで、
1部屋のなかに裁断するところがあって、
縫う人が4人ぐらいいただけの、
ちっちゃな工場だったのが、
なんと、いま、ビルになったんですよ。
伊藤
すごい!
リトアニアの経済にも貢献しているんですね。
関根
いや、いや、わたしたちは規模が小さいので、
そうとは言えないと思うんですけれど、
工場は着々と大きくなっているんですよ。
伊藤
いまも、年に何度も行かれるんですか?
関根
年にだいたい2回です。
基本的には電話とメールでのやり取りで、
1日に何回もしてるので、
国内の工場と同じような感覚なんですよ。
「ここ、どうするんだっけ?」
「こうしてください」みたいなことが
すぐに伝えられる。
伊藤
それでも、やっぱり年に2回は、実際に足を運ぶ?
関根
そうなんですよね。
会わないことには片づかないことが、
いろいろあって。
伊藤
たしかに、ものをつくっていると、
つくり手や工場のかたに会うことが
いかに大切かわかります。
全然違いますよね、仕上がりも、進むスピードも。
関根
そうですよね。
わたしが行くときは、工場の人にしてみたら、
関根が朝から晩まで難題を言いに来たぞ、
みたいな感じかもしれないけれど(笑)。
伊藤
ずっとお付き合いがあっても、
いまだに「えっ?」と思うことはあるんでしょうか。
関根
「えっ!」ていうことはないんですけど、
なかなか解決しない問題はあります。
たとえば端切れ。
布を使って製品をつくると、
端切れがどうしても出てしまいます。
いま、端切れだけで家1軒分ぐらいの倉庫があるんです。
手を変え品を変え、端切れセットを売ったりするんですが、
なにせ、どんどん出て来るので、なくならなくて。
使いみちのアイデアをインスタで募ったりしてるんですが、
抜本的な解決策は見つかりません。
伊藤
裂き織りにも短いですしね‥‥。

古本屋から雑貨屋へ。

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伊藤
関根さん、おじゃまします。
うわぁ、ものが少ない!
すごい、どうしてだろう?
関根
いらっしゃいませ。
ほんと、どうしてだろう?(笑)
伊藤
しかも扉のある食器棚じゃなくて、
オープンな棚に収納をしているんですね。
関根
この棚、わたし、自分でつけたんですよ。
伊藤
ご自身で? すごい。
関根
でもね、いつかドンって
取れてるんじゃないかなと、すごく心配。
水平が出ていないし、
浮いているところもあるし。
どうしてオープンな棚にしたかというと、
うちは、泊まりに来る人が多いんですね。
外国の人とか、長期滞在の人とかもいて。
だから勝手にいろいろできるように、
オープンにしているんです。
伊藤
1階はゲストルームだと
おっしゃっていましたものね。
キッチンのある2階も自由にどうぞ、
ということなんですね。
関根
はい。1階にはお客様用寝室がひとつ、
それからシャワーとトイレが、
3階のわたしたち用とは別に設けてあるんです。
伊藤
いいですね。
関根
わりと稼働率がよく、
いろんな人が泊まりに来るんですよ。
伊藤
あんまりお構いはしないんですか?
関根
お構い、全然しないんです。
盛岡にいた頃、両親も、
よく外国のお客様を招いていました。
あるとき、フランスの田舎町と
わたしの住んでいたところとで、
人の交換をしよう、っていうことになって、
それをうちの母と、母のお友だちグループが
めんどうをみていたんです。
どうやって実現したのかはわからないんですけど、
フランスにいた誰かの伝手で、
モンド・マルサンっていう、
ボルドーの近くのちっちゃい町から、
1回に12人ずつぐらいお呼びして、
盛岡のお家に1カ月ホームステイをするんですよ。
そうするとこんどは盛岡の人たちが
モンド・マルサンに行って、ホームステイをして。
若い人だけじゃなくて、60代ぐらいの人もいれば、
主婦のかたがいらっしゃったり。
伊藤
おもしろいですね。
しかも、その時代に珍しいですよね。
関根
不思議ですよね。しかも盛岡で。
だからわたしもぜんぜんへいきなんです。
伊藤
それにしても、ものが少ないですし、
おふたり暮らしと聞きましたが、
「だれか」の気配がない。
どうしてなんだろう?
関根
わたしが、引っ越しが多かったからかもしれません。
家の引っ越し、会社の引っ越し、
20回近く経験しているので、
また引っ越すかもって思っていると、
ものを、あまり増やさないようにしようと考える。
伊藤
わたしも引っ越しは多いほうですが、
そのたびにものを減らす努力はしていても、
いつもクローゼットは一杯になってしまうんです。
関根
それでも伊藤さんのお宅を誌面で拝見すると、
収納をきれいになさっているから、
とってもシンプルできれいですよね。
伊藤
ありがとうございます。
バスルームも拝見していいですか?
関根
どうぞ、どうぞ。
でも、ほんとうにふつうですよ。
ユニットバスですし。
伊藤
ううん、かわいい。
とってもシンプルで、いいですね。
ふつうのユニットバスでも、
こんなに“関根さんらしく”できるんだ。
同じ柄のバスタオルが2つ掛かっているのも、
とてもかわいい。
さすがにリネンが多いですね。
関根
こうして自分で使えるので、
麻の仕事をしていて本当によかったなと思います。
このテーブルクロスもそうですね。
伊藤
家具は古いものが多いですか?
関根
古い‥‥といっても、
ダイニングテーブルに使っているのは、
ずいぶん前の、MUJIの作業台なんですよ。
この椅子だって、大学を卒業して最初に働いた家具屋さんの
B品セールで1脚500円で買ったものです。
その後、「いつかいい家具を買おう」って
引っ越しのたびに思いながら、
結局、ずっと使っているんです。
伊藤
もともと家具の会社にいらっしゃったんですね。
関根さんのこと、知っているようで知らないかも。
どんなふうにいまのお仕事に就かれたのか、
教えていただけますか。
関根
学校を卒業して就職したのが家具の会社で、
5人ぐらいの小さい会社で、
すごくお世話になりました。
そこには2年間しかいなかったんですが。
フィリピンで家具をつくっていたので
出張に行かせてもらったり、
ヨーロッパの展示会も連れて行ってもらったり、
店をオープンするっていうので、立ち上げを手伝ったり、
そういうことをキュッとやりました。
辞めてから、赤坂に「ハックルベリー」っていう
小さい洋書屋さんがあったんですけれども、
そこでお手伝いをするようになりました。
ちょっと変わった本屋さんで、
電通と博報堂の人を中心に、6人のオーナーがいました。
みんなそれぞれお金を出して、夢を買おうっていうので、
ニューヨークのリッツォーリ書店から
本をセレクトして送ってもらったりと、
小さいけれども素敵な本屋さんだったんです。
入ったきっかけは、馬詰佳香さんという、
いま鎌倉でLONG TRACK FOODSを
やってらっしゃるかたが店長さんで、
誘っていただいたんです。
ところがだんだん都内に洋書屋さんが増えてきて、
お客さんが来なくなり、本が売れなくなり、
どうしようっていう話をしていたときに、
わたしが「ニューヨークに行って古本を買いたいです」
っていうふうにオーナーのひとりに言ったんですね。
そうしたら
「自分のお金でするんだったらいいよ」って言われて。
「お休みをあげるから、買うのと旅費は自分で、
そして買ってきた本は店先に置いて売ればいいよ」って。
その「ニューヨークに古本を買いに行く」というのが
自分で仕事をするスタートになりました。
伊藤
それは、どうだったんですか?
関根
その頃は、そういうことをやっている方がいなかったので、
古本を持って帰って来ると飛ぶように売れました。
もう25年ぐらい前のことです。
そうこうしてるうちに、
ニューヨークの古本屋さんでほしい本も買い尽くし、
サンフランシスコに行ったり、
ポートランドに行ったり、
アメリカ中のあちこちに行って、
さらにはヨーロッパまで行き、
毎月どこかに行って買って帰って来るという生活を
1年半ぐらい続けました。
伊藤
関根さんが仕入れたのは、
どんな本だったんでしょう。
関根
主に売っていたのは、
イラストがある料理の本です。
よく、料理研究家の方が買ってくださいました。
あっという間に売れるんですが、
仕入れはほんとうにたいへんで。
郵便局まで持って行って日本に送る分と、
持ち帰る分もあったので、
スーツケースは壊れるし、リュックは破けるし、
もう、このままだと身体をこわすかも!
と思うくらいでした。
そうこうしてるうちに、サンフランシスコで、
バスケットを売っている会社の人に会ったんです。
とてもステキだったうえ、日本に卸していないと知り、
じゃあ、わたしが日本に持って帰って売ってみたい、
というところから、雑貨業のほうに入りました。
伊藤
それがいまの原点ですね。
関根
はい。本は本で楽しかったんですけど、
古本は、売れたからといって、
また同じものが手に入るわけではない。
しかも自分で選びに行かないといけない。
売るときも1冊1冊違うので、
現物を見てもらうのに、
お店に持って行ったり、
うちに来て選んでいただかないといけない。
当時はワンルームマンションに住んでいたので、
ベッドの上に座って商談ということもありました。
伊藤
それがおいくつのときですか?
関根
26~7のときです。
それでだんだんと雑貨の輸入が広がってきて、
そうこうしてるうちに
『雑貨カタログ』とかという本で紹介してもらい、
卸先が増えていきました。
そうして、なにか布ものも欲しいな、
と思うようになったんです。
大伯母がリトアニアで和食のお店を始めたので、
じゃあ、リトアニアのリネンを探しに、
行ってみよう! って。
伊藤
それで、リトアニアに!

fog linen workのリネンアイテム

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リネンのこと。

未分類

台所仕事に欠かせないのは、
清潔なリネンのキッチンクロス。
ここちよい眠りのために
用意しているのは、
さっぱり洗いあがったベッドリネン。
fogのリネンと出会って20年近く経ちますが、
その間ずっと私の毎日を、
ささえてくれている。
なくてはならない存在です。

さらりとしたリネンが、
ことさら恋しくなる夏。
fogと一緒に服を作りました。

家でくつろぐ時、
リゾートにも、
また夏のお出かけ着として。

ローブ、スリップドレス、
ワイドパンツにキャミソール。

袖を通すだけで、
心の中に風が通ったような、
そんな気分になるリネンの服。
ワードローブにいかがですか?

わたしのバスルーム

未分類

南東ロンドンにある丘の町クリスタルパレスに引っ越して、そろそろ4年が経とうとしています。住所はどこ?と尋ねられるたび ‘I live in Crystal Palace.’ (ガラスの宮殿に住んでいるの) と、ギャグみたいな回答になるのが気に入っています。

私たち夫婦はここに人生で初めて住まいを購入しました。お買い得な物件を探し求め、いくつ内見したことでしょう。やっとのことで出合ったのが現在のフラットでした。

けれども、やっぱりうまい話はそうそうあるものではありません。値段のわりに広々としている点はよかったものの、前の持ち主は一刻も早くその物件を売りたかったらしく、低予算で急いで改装したと思われる内装はお世辞にも素敵とは言えないものでした。いちばん粗雑にリフォームされていたのはバスルームです。タイルの目地やシリコンはあちこちはみ出ていて、なによりも収納スペースが全くついていませんでした。必要以上に大きな洗面台とバスタブがいっそうバスルームを狭くしています。イギリスでは多くの場合がユニットバスで、バスルームは脱衣所も兼ねているのですが、あとから棚を設置する場所もなく、お風呂洗剤もトイレットペーパーのストックも隅っこのそのへんに置くしかありませんでした。

20代のころ、伊藤まさこさんが当時住んでいらしたご自宅に数日間居候させていただいたことがあります。白と落ち着いた木の色を基調としたお家は、食器、家具、ひとつひとつがきりりと美しく、すっきり片付いていて、朝日がさしこむと思わず目を細めたくなる清々しさ。当時まだ小さかったお嬢さんの胡春ちゃんもすでに片づけ上手の片鱗が見られ、案内してくれたお家の中の「秘密基地」も宝物がビシッと整理整頓されていて感心しました。うまく言葉で説明するのがむずかしいですが、伊藤さんのお家は自然体なミニマリズムが恰好よく、あたたかみのある整然さがとても快適でした。

中でもいちばん印象的だったのはバスルームの広い脱衣所です。白い壁の横に洗濯機がありました。これまた白い、モダンでおしゃれな洗濯機です。それだけでも絵になるデザインなのに、洗濯機の上に一枚の白い布が乗せられていたのです。私ははっとしました。それは明らかに洗濯機のボタンを隠すための布でした。きっと伊藤さんが縫われたのでしょう。パーフェクトなサイズの麻の布で、洗濯機をひとつの「白い箱」に変身させていました。その布があるのとないのとでは、はっきりと脱衣所が違って見えました。空間の中における「白」の追求と、さりげない工夫。伊藤さんのスタイルは、日常生活のその一枚の布に集約されている気がしました。

話を戻しまして、クリスタルパレスの我が家のバスルームは、当初、あこがれの伊藤家のバスルームとは対照的な、ごちゃごちゃしたものを隠せていない空間の代表でした。しかし、家を買ったばかりでもうお金がないし、チープでもいちおう新しいのでしばらくは我慢してこのまま使おう、と夫婦で話し合いました。お風呂の時間が大好きな私にとって、また、四国の温泉地出身の夫にとって、バスルームが使いづらいのは思ったよりもストレスで毎日足を踏み入れるたびにどよんとした気分になってしまうのでした。

それから2年後、私の40歳の誕生日がやってきました。学生結婚だったため、婚約指輪を辞退した私を今でも気にかけてくれている夫が「せっかく今は宝石の仕事をしているのだから、自分でダイヤモンドを選んで作ってみたら?」と、泣ける提案をしてくれました。けれども私の答えは決まっていました。「その案は(ちゃっかり)しばらく温めておくので、かわりにプレゼントは、豪華でなくていいから家族にとって使いやすいバスルームがほしいです」

イギリスですから便利な銭湯などありません。小さい子どもを二人抱えてのお風呂の改装は大変なので、施工時期は夏休みに子どもたちを連れて私が日本に帰省している間にすることに決まりました。収納スペースをつくるため、壁の一部も壊しての工事になり、施工期間は3週間弱。そのあいだ夫は仕事のかたわら現場監督をし、お風呂は勤め先の建物の中にある簡易シャワーで済ませる、という生活を続けました。

イギリスに帰ったら新しいバスルームが待っていると思うと嬉しくて仕方ありませんでした。建築の仕事をしている夫は気合を入れて自ら設計図をひき、収納棚の扉をヘリンボーンにするため、板を一枚一枚夜なべして貼り合わせました。ハイライトはイギリス生活十余年目にして遂に導入した、日本が誇るトイレテクノロジー(ウォシュレット)です。これまでイギリスの賃貸暮らしで、陶器製、アクリル製、木製、と、あらゆる冷たい便座を経験してきた私ですが、これでもう冬の苦しみとはおさらばです。

新しいお風呂公開の日、勇んで入ろうとする私と子どもたちを制し、夫が言いました。「一番風呂は、過酷な3週間を耐え抜いた者にのみその権利がある」と。(え、これは私の誕生日プレゼントでは?) 「ふう~、最高やわあ」幸せそうな夫の声がバスルームから聞こえてきました。

あれ以来、私は子どもたちや夫がお風呂やトイレを使って汚したままにしていると、「お母さんの誕生日プレゼントなんやから、バスルームは大事に使ってください」と、声をかけるようにしています。

ぼくの宝石

未分類

パチッ、パチパチッ。
木のはぜる音とともに、鉄製の湯船の底から
じんわりとぬくもりが上がってくる。
もうもうと立ちのぼる湯気にまじり、
ふんわり鼻先をかすめるのは煙のにおい。
そう、我が家のお風呂は薪風呂である。

ぼくは高知県・仁淀川上流の山あいにある、
築120年超のちょっと古めの家に暮らしている。
お風呂は薪火で焚くむかしながらの五右衛門風呂。
趣味や道楽で別設えしたものではなく、
ふだんづかいの唯一のお風呂が薪風呂なのだ。
山の暮らしのここちよさをヒントに
モノづくりをしたいと思い、
それなら自分が山に暮らさなきゃ、ということで、
住み慣れた京都の街から約5年前に夫婦で引っ越した。
ぼくは高知県生まれなのでUターン。
奥さんは生まれも育ちも京都なのでIターンとなる。

うちの集落は、
南国土佐といっても標高の高い山あいにあって、
冬本番になるとマイナス10度まで気温が下がったりもする。
そんな寒い一日のおわりに
薪で焚いたお風呂につかって芯までぬくもると、
寒さにちぢこまったからだもこころもカンペキにほぐれる。
なぜか電気やガスで沸かしたお湯とは、
ぬくもりかたがひと味ちがうのです。
しかも湯冷めしにくいのが薪風呂のいいところ。
どうも、湯船につかりはじめた湯温より、
出るころの湯温のほうが高くなっていると
しっかりからだがあたたまって湯冷めしにくいみたい。
流行する風邪の警報もどこ吹く風で、
こちらに引っ越してから風邪知らずで過ごしている。

そして薪風呂には入浴以外にもたのしみがある。
うちの場合、薪をくべる焚き口は、
台所からお勝手を出てすぐの場所にあり、
ちょくちょく火のあんばいを見るのに都合よくできている。
となると、食材を焼きたくなるのがヒトの性(さが)。
じゃがいもやたまねぎ、さつま芋などを
皮つきのままアルミホイルにくるんで窯に入れておくと、
だいたい2人ぶんの入浴時間で焼きあがる。
アチアチのアルミホイルをサササッとめくって
天日塩をひとふり。

ふうふうほうばる丸焼きの、
トロンとあまいおいしさと言ったら、もう。
田舎ばかり礼賛するつもりは露ほどもないけれど、
田舎のほうが敷地が広くて暮らしに自由がきくのは確か。
たとえば火を焚いてお風呂に入ったり、
庭に七輪をだして鮎や猪肉、干物を焼いたり。
家は暮らしの宝石箱でなければならない、
とはル・コルビュジエのことば。
じゃあぼくにとっての宝石とはなんだろう?
自家用の茶畑や菜園、それに果樹園、
陽当たりのいい南向きの縁側、
屋根ごしの天の川などを挙げたいが、
やはり薪風呂もそのひとつ。
ちょっと古めの家なので、いずれ手を加えて
よりよい宝石箱にしていきたい気持ちはある。
たとえば台所のリフォームや薪ストーブの導入など。
でもぼくたちにとっての暮らしの宝石は、
いまでもじゅうぶんに輝いている。
こういう、きもちのいい暮らしのなかから、
ぼくらなりのモノづくりを探っていくことができれば
なによりしあわせだと思う。

バスルームのごちゃごちゃ

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私たちの世代は、
お風呂がついてる部屋に住める学生は、
ものすごい勝ち組でした。
今では考えられないかもしれませんが、
「学生一人暮らし」というものは当然のように、
週に数回、銭湯に通うという生活が当たり前だったのです。

そのせいか、お風呂つきの部屋に引っ越せたときは、
かなり嬉しいものでした。
私の優雅な時間。
午前中も入れるんだ。
夜中だっていいんだもんね~。
あ、そうだ、雑誌とか持ち込んじゃわない?
今日からはお菓子だっていいんだよ。
湯舟に浸かりながら、
ああこれがお風呂だ! バスタイムだ!
と思えたものです。

もちろん住んでた実家には、
タイルのお風呂がありましたよ。
でも、こっちはちっとも自分の好みの空間ではなかった。
いつお風呂を沸かすのかは大人が決めるもんだったし、
子供はそのタイミングに従うものであり、
暗黙の了解でなんとなく入る順番もあるし、
今思えば身体を洗浄する、という目的のためだけの存在。
ちなみに大人たちのシャンプー類は、
いったいなんでこんなに片隅に何本も溜まるんだ?
というのも不思議でした。

しかし、
(あんなのお風呂じゃなかった!)と思ってたのは、
実は私だけではなかったようで、
実家を建て替えた時、父が
「24時間入れるという最新のお風呂にした!」
と幸せそうに言ってたのを思い出します。
循環させ、ろ過・殺菌したお湯が湯舟にある状態なので、
衛生的に問題なく、いつでもお風呂に入れる。
でも父がお客さんがやってくると
「よかったら入りませんか、ウチのお風呂に。」
とすすめるのを、母親がものすごくイヤがっていました。

ところで、かれこれ15年ほど前、
いまの私の自宅を設計してもらった時に
「奥さん、お風呂のテレビは、作りつけにしますか?」
と、当然のように聞かれました。
パンフレットを見ると、
湯舟に入れば目の前に
テレビがガラス張りで設置してあるデザインの壁が。
いかにもゴージャス。
でも設計師さんはこう漏らしました。
「ただネ~、正直お風呂のテレビって、
どんどん新しいのが出るもんで、
作りつけだと、買い替えにいちいち工事が入るのを
面倒がられるんすがね~」。
私は(なるほど)と納得し、あっさりやめましたが、
すでにお風呂業界も当然のごとく
「洗浄よりもリラックス空間」を
優先的に考えてくれてたんでした。

しかしです。
私のコドモ世代になると、
ちょっとまた変わってくる。
いわゆる朝シャン世代。
お風呂にテレビや雑誌なんてぜんぜんいらない感じで、
ゆったり・のんびりしたりしてません。
「あんた今日も湯舟に浸かってないの?」です。
温泉に行くと3回は入るクセに、いつもシャワー。
私にはコドモの気持ちがぜんぜんわかりません。
ただ、いつかコドモから
「いったいなんでシャンプー類がこんなに何本もあるの?」
と聞かれたことがあり、その時だけは
(あの当時の自分と同じだ)と、
気持ちがよくわかりました。
いろいろ決まらないの。大人になると。

移動祝祭日

未分類

ある光景を見て、
突然昔のことをありありと思い出すことがある。
それは駆け出しのカメラマンだった時に
住んでいたパリであったり、
19歳から20歳に変わる年を過ごした
アイルランドのダブリンであったり。
それらの光景を思い出しては
もうその瞬間に戻れなくなったことに気がついて
胸が締め付けられるような気持ちになる。

しかし学生時代に4年間住んだ別府は
他とどこか趣が違って
思い出すたびに、ほっこりと幸福な気分にさせられる。

僕はサンフラワー号という夜行船で
大阪から初めて別府に行った。
船内のアナウンスで起こされ、
売店でコーヒーを買いデッキに出て目にした別府の姿は
今でも細かく描写できるほど鮮明に覚えている。
朝日が降り注いで、海が輝き、
その先には湯けむり漂う別府の街並みが見えた。
別府の街は山のなだらかな傾斜にある街で、
海から見るとちょうど舞台から客席を見るように
全景をはっきりと見ることができる。
湯けむりが朝日に照らされて
少しオレンジ色に染まっていた。

別府は文字通り温泉が街にあふれていて、
観光客のみではなく土地の人々も日常的に温泉を利用する。
自宅に温泉を引いてあったり、
温泉付きの賃貸マンションに住んでいた友人までいた。
各地区にはそれぞれ小さい公衆浴場があって、
月に500円程度払えば入り放題だった。

実家から出て一人暮らしをしていた身としては
別府の温泉には経済面でも精神面でも救われた。
僕の通っていた浴場は坂の途中にあって、
5人入れば満杯といった具合の小さな浴場で、
建物の高いところについた窓から聞こえてくる声を聞いて
空き具合を確かめていた。
入り口に向かえば、
おばあちゃんが気持ちよく通してくれる。
服を脱いで浴場に入ると
いつも硫黄の匂いと石鹸の匂いが漂っていて、
お湯がかなり熱いとわかるほど蒸していた。

ある日の早朝に徹夜で書いていたレポートができあがると
無性に熱い風呂に入ってすっきりしたくなり、
いつもの浴場に向かった。
浴場は早朝から開いていたがその時にいたは僕一人だった。
朝の浴場はこれまで夜に見てきた雰囲気とは全く違った。
いつもの蒸した空気が、
朝のひんやりした空気で外に追いやられ、
中はひんやりしていた。
明るくて静かになった浴場で一人湯船に浸かると
徹夜の疲れが吹き飛んで、
目に映るものがキラキラと輝いて見えた。
以来私はどの温泉にいっても
早朝の風呂が一番良いと思っている。
あの浴場が今もあるのかはわからないが、
東京に出てきて何度あの風呂に
もう一度入ってみたいと思ったことか。

ヘミングウェイがパリについてこう語っていた。
“もし、きみが、幸運にも、
青年時代にパリに住んだとすれば、
きみが残りの人生をどこで過そうとも、
パリはきみについてまわる。
なぜならパリは移動祝祭日だからだ。”
自分は幸運にも青年時代にパリにいたが、
別府にも住むことができた。
そして別府の温泉の風景はどこにいようとも
僕についてまわるだろう。

インドと風呂

未分類

先日、久しぶりに風呂に入った。

この一文だけだとやたらに不潔な人なのだと思われそうだが、そういうわけではない。シャワーは浴びていた。1ヶ月半ほどインドへ行っていたので、浴槽がなかったのだ。

ちょっと熱めに調節した湯にゆっくり体を沈めると、言葉にならない呻き声のようなものが思わず出てしまう。身体の汚れと一緒に、インド生活で溜まった疲れも湯の中に溶け出していくような気分になる。日本に帰ってきたことを一番実感できる瞬間かもしれない。

毎年のようにインドを訪れるようになって23年が経つが、インドで浴槽に入るチャンスは今までに3回しかなかった。

1度目は、はじめて1年間の長期滞在をした20歳のときのことである。カルカッタの日本総領事館で副領事をしていた人の家へ遊びに行った際、白くて大きなバスタブを見かけたのだ。思わず「いいですねー。僕なんてもう半年ぐらい風呂に浸かってないですよ」と口にしてしまった。副領事は「入っていけばいいじゃん。タオル出すよ」と勧めてくれたのだが、「そうですか。それじゃあぜひ」とおもむろに服を脱ぎ始めるのも少し厚かましいような気がして辞退した。

再びチャンスが来たのは、それから4年後になる。シタール奏者の友人から、ムンバイにある高級ホテルの宿泊券をプレゼントされたので泊まりに行ってみたのだが、その部屋にバスタブがあった。

ただ、僕は宿泊前日にムンバイの路上で飲んだストロベリー・ミルク・シェイクによる盛大な食中毒の真っ最中で、風呂に浸かるどころではなかった。トイレから立ち上がるとき、手すり代わりにバスタブの縁を掴むのが精一杯だった。

更にその2年後、3度目のチャンスは自分で作った。ブッダガヤーという、ブッダが悟りを開いたとされる地への正月旅行を計画したのだが、その際にちょっと奮発して街で一番の高級ホテルを予約したのだ。バスタブがあることも確認済みだったので、今度こそ長年の夢が実現できるぞ、と楽しみにしていた。

お湯が出なかった。いや、正確に言うと湯温が上がらなかった。どんなに頑張っても(頑張りようもないのだが)30度そこそこにしかならず、真冬にそんな日向水みたいなのに浸かったら確実に風邪を引くだろうなと思って諦めた。

そんなわけで僕は、いまだにインドで風呂に入ったことがない。バケツに湯を溜め、小さな手桶でそれをパシャパシャと体にかける。それがインドにおける僕の入浴スタイルだ。毎日のように湯をたっぷりと張って浸かる習慣のある国に生まれ育ったのは、なかなか幸運なことだなと思う。

おふろにまつわる話

未分類

スウェーデンの西海岸にある
小さなアンティークショップの倉庫の片隅に転がっていた
無骨な陶器製の洗面器は、
スウェーデンでよく見られる古い塩釉のニシン保存壺と同じ
深い土色をしていました。
埃を拭うとHöganäsというスタンプが
少し傾いて押されているのを見つけて
(Höganäsは100年以上の歴史のある
スウェーデンの陶器メーカー)
その洗面器らしからぬ香るような土としての材料の主張が
どこから由来されているのかを知りました。
手についた泥や庭で収穫した野菜の泥を
ゴシゴシと洗い落とすにはうってつけの洗面器で
まさに僕らが探し求めていた洗面器そのものだったのです。
この土管のような無骨な洗面台との出会いから
我が家のお風呂の設計が始まりました。

次に僕らが探し始めたのは洗面器の前に掛ける鏡でした。
しかし、鏡探しは思いのほか難航することになります。
多分、ガーデン用として屋外で使われていたのか、
もしくは工場などで使われていたに違いない
個性的な洗面器と一緒に並べることができる
なかなか相性の良い鏡を
見つけることができなかったのです。

ある日、店舗用の商品の買い付けをしていると
倉庫の壁に飾られていた油絵の具で描かれた
1枚の田園風景画に惹きつけられました。
早速、その絵を購入して自宅に戻りナイフで絵を剥がすと
立派すぎない程よい控えめな彫刻が全面に施された
古い大きなオーク材の額だけが残りました。
その額のサイズに合わせて作った鏡を
はめ込んで仕立て直すと
ぴったりと洗面器に調和してくれたのでした。

洗面器と鏡が揃うとあとは余白を埋めるように、
順調に洗面器の相棒たちが集まり始めました。
すっかり曇ってぼやけてしか映らなくなってしまった
木製フレームのアンティークの鏡と
真鍮板を曲げたアーチ状の小さな鏡。
クラシックな壁付けの黒い棚。
収納の金具は全て仕上げをしていない
真鍮製のものとしました。
タオル掛けは、古い真鍮製の手すりの部品を利用して
新しい真鍮のパイプを組み合わせました。
2年前はまだ、ピカピカでよそよそしかった金具も、
ようやくくすんだ好ましい風合いを纏わせ始め
洗面器に馴染み始めました。

タオルとバスローブは
スウェーデン製のごわごわした麻製です。
日本製のふわふわなバスタオルには
到底かなわない硬い拭き心地ですが、
すぐに乾いて何年たってもへたらない
大工道具のような頼もしいタオルです。
吸水性にも乾燥性にも優れているので
バスタオルは使わずに
フェイスタオルを少し多めに所有しています。

お風呂場作りはまだ終わっていません。
少し窮屈そうにオークの天板にはめ込まれた
洗面器の横には、
ちょうど洗面器もう1台分の空間が残してあります。
いつか、もしもう一つ同じ洗面器を
見つけることがきたらと思って空けてあります。
2台並べて、その周りにタイルを貼ろうか、
真鍮の板を貼っても良いかもしれないと考える時間を
これからも楽しみたいと思います。

「生活のたのしみ展」出展のお知らせ

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weeksdaysは
第4回「生活のたのしみ展」
出展します。

[開催日]
2019年4月17日(水)→ 21日(日)
[時 間]
11:00 – 20:00
(丸の内仲通りのみ12:00 – 19:00)
[場 所]
東京・丸の内仲通り
丸ビル1階マルキューブ、3階回廊
Marunouchi Café ✕ WIRED CAFE
TOKIAガレリア

weeksdaysの場所は、東京サイド
TOKIAガレリア(「星のガレリア」)エリアのT-10です。
会場マップはこちらでご確認ください。

今回は「ふだん使い」をテーマに、
シンプルで使い勝手のよいリネン製品をつくり続ける
fog linen work(フォグリネンワーク)」と
コラボレーションした
5日間だけのとくべつなお店をつくります。

着心地よく、肩のこらないリネンウェアや、
オリジナルのバスマットなど、
weeksdaysならではの新商品を
ネットに先駆けて販売します。
ぜひ、実際に触って、お試しくださいね。

詳しくはこちらのページをご覧ください。

新商品のほかに、
お問い合わせの多い「大きな革のトートバック」も
白・紺ともに展示販売しています。
気になっていた方は、
この機会にぜひお立ち寄りくださいね。

温泉という名のバスルーム

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わたしのバスルーム‥‥というと
私は我が家のお風呂ではなく
温泉をおもい浮かべてしまいます。

わたしの温泉好きの歴史は、
スウェーデンから軽井沢へ移り住んだ10年前に遡ります。
帰国後、縁もゆかりもない軽井沢に暮らし始めた当初は、
裸でお湯を共有することに
少なからず抵抗を感じていた私でしたが、
秘湯という言葉の響きにめっぽう弱い旦那が、
ひなびた温泉地ばかりへ私を連れ回し、
そのうちすっかり温泉好きになってしまいました。

長野県に暮らしてから、
自宅のお風呂へそれほど快適性を求めなくなったのは、
温泉に恵まれた土地に暮らしているからだと思います。
温泉地に暮らす方の中には
ご自宅のお風呂にはほとんど入らないという方も
いらっしゃるようです。
ですから、自宅を建てた際には
風呂場のサイズは最小限に。
石鹸置きや鏡、蛇口など余計なオプションは全て排除。
結果的に余計なものがなければ汚れが溜まりづらく
掃除が簡単になりました。

お客様が泊まりにいらしてもタオルを持たせ
温泉をご案内するのが我が家の暗黙のルール。
暮らしてからわかったことでしたが
長野県は日本でも有数な温泉地でして、
軽井沢町内では4箇所の日帰り入浴ができる
温泉が沸いています。
車を30分も走らせれば個性豊かな様々な温泉を
1年中楽しむことができます。
特に午前中に入る温泉は格別です。
仕事前に温泉に入って、
かすかに硫黄の香りをただよわせながら仕事をするのは、
昼間からビールを飲む罪悪感と優越感に
少しだけ似ています。

温泉好きな我が家の車には
思い立てば温泉へすぐに行けるように
温泉セットが常備されています。
お風呂セットを入れるのは
長野県戸隠で作られるりんご収穫用の
根曲がり竹の籠を職人さんに頼んで
一回り小さく作って頂いたもの。
竹の籠は水にも強く、軽くて丈夫で、
中身が一目で確認できて、
ロッカーに入れることができますので
とても重宝しています。
その籠にフェイスタオルと手ぬぐいだけを入れた
シンプルなお風呂セットです。

自宅から最も近い温泉は
車で10分程度のところにあります。
幼稚園に息子を迎えに行ったその足で
そのまま温泉に向かうと湯船で
幼稚園のママと子供とばったりということもしばしば。
帰るときには子供たちを
パジャマへ着替えさせてしまいます。
温泉は育児にもとっても優しいのです。
温泉を大きなお風呂と呼ぶ長男にとって、
温泉は自宅のお風呂の延長線にあるのでしょう。

休日には少し足を伸ばすこともあります。
山の頂上にある展望露天風呂は
野性味溢れた開放的な温泉で
子供たちも大好きです。
こちらは、お空のお風呂と呼び、
秋になれば湯船いっぱいにりんごを浮かべた
長野らしいかぐわしい林檎湯が始まり、
こちらは林檎のお風呂と我が家では呼んでおります。
鉄分を多く含んだお味噌汁に浸かっている気分が楽しめる
個性的な温泉は、海外からのゲストが来るとサプライズに。
疲労回復には泡をまとった湯に浸かり、
とろみのあるいかにも肌に良さそうな湯は
毎日浸かりたいお湯です。

その日の気分に合わせ自分達が望む
温泉という名のバスルームを持てるのは
温泉地暮らしならではの贅沢だなと思います。

女子のための MOJITOコーディネート[2]

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同系色で。

同系色でコーディネートすると、
すごくさわやか。
ネイビー同士ですが
(色名は、ショートパンツ=ネイビー、
ニット=ブルーグレーです)、
ニットとパンツの素材の持つニュアンスが、
単調に見せず、
体を動かすたびに、新鮮な表情を見せてくれます。

パンツを白に変えると、
こんなかんじ。
見た目に、とても気持ちよさそうなのですが、
見た目以上に着心地がいい。
ちょっとじめっとする日でも、
さわやかに過ごせます。

黒Tと合わせて。

Tシャツとショートパンツ。
着てみたいけれど、
着慣れない?
そんな方は、
黒のフレンチスリーブの
Tシャツを合わせてはどうでしょう?
これだけで、ぐっと大人っぽく女の人らしくなるから。
髪型やメイク、アクセサリーなどを
工夫してTシャツとショートパンツの着こなしを
いろいろと楽しんでください。

白の着こなし。

レポート1でシャツと合わせた白ニットとパンツ。
さらりと着るとこんな感じになります。
思いっきりシンプルな着こなしなので、
リボンを目立たせて。

それからよくたずねられるのが、
下に着る下着のこと。
自分の肌に近い色を身につけると、
透けるのも気になりません。
ニットはタンクトップなどを着るとより安心です。

デニムと合わせて。

カーキとデニムの色合いって、
本当に相性がいい。
男の人が得意そうなこの色合わせだけれど、
どことなく女っぽい品のよさがただようのは、
襟ぐりの開き加減が絶妙だから。
真っ赤なリップをさっと塗るのも、
かっこよさそうです。

(伊藤まさこ)

女子のための MOJITOコーディネート[1]

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シャツとニットの重ね着で。

ニットは一枚でさらりと着るのもいいけれど、
下にシャツを重ねるとまたちがった表情に。
襟も袖も無造作に出して、
自然な感じに、くしゃっとさせると
こなれた印象になります。
写真は白いニットに白シャツをコーディネート。
パンツも白にするとよりさわやかな印象に。
髪は、襟元を見せるようにまとめ、すっきりさせます。

Tシャツとニット。

ニットの中に、Tシャツを。
一枚で着るのとも、
白いシャツを合わせるのともちがって、
ちょっとカジュアルな雰囲気に。
合わせたのは、このパンツ。
ちょっとボーイッシュなコーディネートです。
スニーカーを履いて、
元気に歩きたくなる、そんなスタイル。

Gジャンとニット。

ニットにパンツとGジャンをコーディネート。
さらりと気持ちいいニットは、
重ね着すると春や秋口にも着られます。
白と生成りの、こんなコーディネート、
大人っぽくて好きなのです。

ふたつのカーキ。

カーキのニットにカーキのパンツ
(色名は、ニット=コーヒー、
ショートパンツ=オリーブです)。
着る前は案外、男前になりそう?
‥‥なんて思っていましたが、
以外にもその逆。
女性が着ると、シックになるのです。
ニットの前身頃は、
少しだけパンツのリボンを見せるようにして。
素直にすとんと着るのもいいけれど、
リボンのニュアンスが出ると、
全体がやさしげになるのです。

(伊藤まさこ)

ぼくのつくった デイリーウェア。

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今回のRIVER FOREST CREWNECKは、
「春夏シーズンにふさわしいデイリーウェア」
というイメージでつくりました。
普段着、つまりトレーナーのような感覚で着られますし、
インナーをどうするか、ボトムをどうするかによって、
ちょっとしたリゾートウェアにもなるようにと考えました。

具体的なディテールのヒントは、
アメリカンレッドクロスのヴィンテージウェアです。
それはウールのものだったんですが、
アメリカの合理主義の極みのつくりかたを、
本家にはないリネン素材に落とし込みました。
リネンって、熱伝導率が高く、触って冷たく感じる素材。
乾きやすく機能的なところが夏向きですよね。
特徴的な襟のデザインである台形的なラインは、
クルーネックとボートネックのちょうど間で、
アメリカンレッドクロスにもあるかたちなんですよ。

夏に着るものということで、
とくに気を配ったのは透け感です。
今までのモヒートだったら
どれだけ“度詰め”をしてヘビーにつくるか、
という考え方でしたから、
まるで真逆のアイテムです。
とくにそのことを感じていただけるのは、
首周り、肩、それから袖付けのところです。
簡単に言うと“減らし”といい、
もうベンチレーションだというくらい。
これは、実用的な理由があって、
通気だけでなく、脇の目数を変化させることで、
横に伸びやすい、つまり、腕や肩が動きやすくなるんです。
人って、身長はもちろん、
身幅も厚みも人によって違うけれど、
このつくりかたのおかげで、
いろいろな人に快適に着てもらえるようになっています。

●スタイリングをくふうして。

たぶん──、みなさん、こういうニットは、
着慣れないかたちだと思うんです。
だからこそ、とくに女性には、堂々と着てほしい。
その「堂々とした感じ」が、カッコよさにつながります。

コーディネートとしては、
ぼくなら中に同系色のTシャツ、もしくはシャツを着ます。
でも女性だったら、透け感をいかして、
中にボーダーシャツを着るのもかわいいですよね。
白のレースのロングスカートとか、
黒のノースリーブのワンピースとかを合わせるのも
きっとカッコいい。
赤ベースに白のドットのワンピースっていうのも、
いいんじゃないかな。

ぼくは伊藤さんのスタイリング、好きだな。
夏の暑い時に、同系色で上下を合わせて、
ちょっとワイルドな感じが出ている女性。
ステキですよね。
男性だったらリネンの白いシャツや、
ポロシャツと合わせるのもいいはずです。

「weeksdays」で選んでいただいた色は、
オフホワイトと、コーヒー、ブルーグレーの3色。
これは、どう組み合わせても大丈夫です。
ウェブでは伝わりづらいかもしれませんが、
コーヒーは、色の名前で言うとオリーブブラウンに近い色。
ブルーグレーは、すこしグレイッシュな
ライトネイビーとも言えそうなニュアンスです。
どの色も、麻素材の特徴として、
光沢がすこしあるように見えると思います。

●ショーツに、新色がくわわりました。

GULF STREAM SHORTSは、
以前ネイビー1色だけ販売をしたものと同じです。
今回は、ホワイト、オリーブが加わり、3色で展開します。

コーディネートとしては、
もちろんクルーネックとの相性は抜群です。
男子だったら、ぼくのイメージは、
ヘミングウェイの着方で、
アブサンシャツという開襟の長袖と合わせます。
そして、女の子のコーディネートとしては、
ぜひ伊藤さんのスタイリングを
参考にしていただきつつ、
シャツとか、ボーダーのカットソーとか、
白のリネンのシャツも、きっと似合うと思いますよ。
ちょっとレース細工があるシャツ、
サックスブルーとか、真っ白とか、
ピンクもかわいいですね。

(山下裕文)

MOJITOのサマーニットとショートパンツ

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