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Satomi Kawakita Jewelry×weeksdays受注会  「ゆったりお見立て会」応募受付のお知らせ

未分類

伊藤まさこさんがニューヨークで出会った
ジュエリーブランド Satomi Kawakita Jewelry
(サトミカワキタジュエリー)と
「weeksdays」がコラボした受注会を行います。

詳しくはこちらのコンテンツをご覧ください。

今回の受注会では、リング、ネックレス、ブレスレットなど
500点ほどの商品がそろいますので、
そのボリュームと素敵さに、
見ているだけでもワクワクします。
もちろん直接手にとっていただいて、
ご試着いただけますよ。

そしてコラボ受注会のスペシャル企画、
抽選で当選されたお客さまだけが入場できる
「ゆったりお見立て会」のお時間を準備しました。
開店前の10:00~12:00にご来場いただき、
少人数でゆっくりご覧いただけます。
デザイナーのSatomi Kawakitaさんと
伊藤まさこさんに、商品選びの相談もできますよ。
思いもよらないアドバイスをいただけるかも。

通常の営業時間は12:00~19:00。
いらした方はいつでもお入りいただけます。

ニューヨークを拠点としているブランドなので、
東京での受注会は貴重なタイミングです。
ぜひいらしてくださいね。

■受注会日程
9月26日(木)~9月28日(土)

■開催場所
FOG 2nd FLOOR
東京都世田谷区代田5-35-1

■営業時間
営業時間:12:00~19:00
「ゆったりお見立て会」:10:00~12:00
伊藤まさこさんの在廊時間(予定):10:00~14:00

■お支払いについて
受注会でのお買い物は、
クレジットカードのみとさせていただきます。
以下をご確認ください。
————-
VISA、MasterCard、JCB
AMERICAN EXPRESS
Diners、DISCOVER
————-
現金や電子マネーなどのお取り扱いはございません。
ご了承いただけますよう、お願いいたします。

■受注品のお届け時期
受注会のお届け時期は12月中旬の予定です。
クリスマス前を目処としています。

■「ゆったりお見立て会」の抽選について
・応募受付期間
2019年9月5日午前11時~9月19日午前11時まで
・抽選結果のお知らせ
抽選の結果に関わらず、
お申し込みいただいたすべての方に、
2019年9月21日までにメールでご連絡をさしあげます。
・ご注意ください
1件の応募につき、入場できるのは1名様となります。

力強さ。

未分類

──
デザインのインスピレーションは、
どういうところからやって来るんでしょう。
Satomiさんのデザインって、
どうやって生まれるんでしょう。
Satomi
バシっとしたものが、好きじゃないんですよね。
キメキメ、みたいなものが苦手。
ダイヤモンドセッターの仕事をしていたときに、
扱っていた指輪って、ほぼそういう感じで。
直線的で、主張が強すぎるデザイン、
私がそういうのを着けたら
子どもがお母さんの指輪をつけてる、
みたいな感じになるんです。
もっとダイヤがランダムにちりばめられていたら、
もっとリング自体に表情があったら、
すごく良くなるのにな。
そろそろ30歳を迎えようとしていた時で、
シルバーや真鍮ではなく
ゴールドやダイヤモンドという
その頃の私からしたら”大人な素材”を使用したもので
自分が実際に身に着けれるようなもの、
着けたいと思うものが市販ではなかったので、
だったら自分で作ってみよう!
そういう気持ちから、自分のデザインが生まれました。
──
Satomiさんのジュエリーは、
オーガニックなデザインだとよく形容されます。
柔らかな曲線や、ぬくもりのある質感。
デザインに、心地いい揺らぎみたいなものがありますよね。
Satomi
アメリカにも揺らぎのあるデザインは
存在するんですけど、
ものすごくカーブがはっきりついていたりして、
揺らいでます! っていうアピールが強すぎる。
わかりやすすぎるんですね。
微妙な歪みみたいな、わかりにくいデザインは
アメリカでは珍しいのかもしれないですね。
──
伊藤まさこさんが、
「Satomiさんのジュエリーは、
とってつけた感じがなくて、すんなり自分になじむ。
しっくりくるデザインだった」
と言っていたのが印象的でした。
Satomi
私のジュエリーは厚みがないので、
誰にでも身につけてもらいやすいかなと思います。
邪魔になって、気になっちゃって、
仕事や家事ができなくなるものではなく、
身につけていることを忘れるぐらい、肌になじむもの。
自分が身につけたいと思えるものを
必ず試着を繰り返しながら、制作しています。
──
ファッションのジャンルや、人のタイプを選ばない。
あらゆる服装や雰囲気の人に似合っちゃう。
そういうところも、Satomiさんのジュエリーの
「すごさ」じゃないかと思います。
Satomi
意図はしてないけれど、幅広く、いろんな人に
楽しんでもらえてるのかなとは思います。
あんまり気合いをいれてないからかも?
こんなんつくったる! みたいな(笑)
──
あはは。ぐいぐいなのに、
そこの部分は、控えめなんですね。
「すごく小さなものなのに、
さりげなく惹きたててくれるところがすごい」、
伊藤まさこさんも、そんなふうに。
Satomi
ツヤ感をおさえて、ぎらぎらさせていないので、
肌になじむんでしょうね。
身につけた人の世界に、すっと入っていくというか。
──
実際に身につけてみると、
その感覚がすとんと腑に落ちてわかる感じですよね。
Satomi
とにかく、いろんな人に試して欲しいなって思うんです。
試してみると、「あ、意外と自分に合う」ってことが、
きっとあるので。
──
Satomiさんは、受注会を定期的に行なって、
お客さんにアクセサリーをお見立てする、
というスタイルをとっていますよね?
Satomi
お見立てするって、すごい大事だと思うんです。
このアクセサリーいいと思いますよ、って薦めると、
「自分だったら絶対に選ばないけど、
言われてみれば、確かに似合ってる」っていう、
おもしろい発見があるんです。
──
その人がまだ気づいていない、
新しい自分に出会えるというような?
Satomi
そうですね。
好みがすごくはっきりしている人も、
実ははっきりしすぎていて、
他のものが全然目に入っていない、
なんてことが多いと思うんです。
「そういうの、私は似合わないから‥‥」
って言われると‥‥
──
逆に燃えちゃう?(笑)
Satomi
そうそう(笑)。
決めつけちゃう人が多いんです。
私は指が太いから、とか、
揺れるピアスはちょっと、とか、
そんなことない、一回試してみてくださいよ、
って薦めると、
「ほんとだー!」ってなることが多いんです。
──
お見立てのとき、
Satomiさんはお客さんのどういうところを
見るんですか?
Satomi
全体の雰囲気と、肌の色ですね。
──
この人には、これが似合うっていうのが
ピピっとわかる?
Satomi
結構わかります!
──
例えば、伊藤まさこさんに会った時は、
どんなふうに思いました?
Satomi
シンプル。
スキっとしたものが好きなんだろうなと思いました。
ガーリーじゃなくて、クールなもの。
でもエッジが効きすぎてないもの。
クラシックっていう感じかな。
──
ところでみなさん、
どういう用途やタイミングで
ジュエリーを購入されるんでしょう?
Satomi
ブライダル、あとは自分へのご褒美が多いですね。
1個買ったら、また1年仕事を頑張ろうとか。
資格試験に受かったら、自分のために買おうとか。
──
ジュエリーが、モチベーションになる。
Satomi
ジュエリーを買うときって、
みなさんそれぞれに理由があるんですよね。
仕事をがんばったご褒美とか、
自分へのクリスマスプレゼントとか。
だからジュエリーを見ると、
その当時の自分や出来事を思い出すんです。
子どもが生まれた時だったな、とか
ダンナにプレゼントしてもらったとか。
ジュエリーの数だけ、ストーリーが存在する。
それが、おもしろいところです。
──
「これから、がんばろう」みたいな、
先行投資パターンもありますよね。
Satomi
それからもうひとつ、
ジュエリーを見につけると、
テンションがあがる、気分があがる。
そういう自己満足があります。
なにもない手もとに、1本の細い指輪があるだけで、
耳もとに、ピアスがひとつあるだけで、
不思議とちょっとうきうきするし、
背筋が伸びるような気分にもなる。
ジュエリーがもたらす効果って、
なんなんだろう?って。
セラピー的な効果も、きっとあると思うんです。
──
身につけて仕事に行くと、がんばれる気がしたり。
Satomi
お守り的な意味合いもあるのかもしれないですね。
ラッキーチャームっていうのかな。
よく言われるんですよ、
「Satomiさんのジュエリーを身につけてると、
力強さを感じる」って。
──
中に何か入ってるんですか(笑)。
Satomi
入れてますよ!(笑) 全部に、気持ちを。
ジュエリーって毎日身につけるものだし、
洋服とは違って、もっとパーソナルなもの。
だから、つくってる人の環境がすごく大事。
「なんでこんな指輪つくらされてんねん!」
って思いながらつくってたら、
きっとそれがジュエリーにも出ちゃうと思うから。
目に見えない部分だからこそ、
気をつけなくちゃいけないって思います。
恨み、つらみを考えながら、つくらないように(笑)
──
良いエネルギーで満たす、ということですね。
Satomi
そうですね。
ジュエリーって、なくても全然困らないけれど、
あると生活が楽しくなるし、彩りが加わります。
本当に不思議なものだなって思います。

ニューヨークの奇跡。

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──
いざ、NYにあるジュエリー学校へ通い、
彫金を学んでみて、どうでした?
Satomi
すごく、のめりこみました。楽しかったですね。
──
きっと、ガラスの時には感じなかったような
情熱だったんでしょうね。
Satomi
彫金のちまちましたところ、
細かいテクスチャーをつけたり、
ディテールまで仕事ができるところが、
楽しいんですよね。
まさに、自分のペースでできるものづくり。
ガラスみたいに割れたらおしまい、じゃなくて
修理しながら使えるし、サイズも変えられるし、
ゴールドにしても宝石にしても、
使い回してリサイクルできるのもいい。
材料を無駄にしない安心感もあります。
──
子どもの頃に「膨らむもの」や
「ケミカルリアクション」みたいなものに興味があった
という話でしたけど、それはどうですか?
Satomi
最初にワックス(蝋)で型をつくって、
それが最後は金属になって出来上がってくるんですけど、
その過程がおもしろいですね。
──
それもひとつの“リアクション”ですね。
ジュエリー学校の話に戻りますが、
学校は、わずか6カ月で
卒業しなければいけなかったと。
Satomi
はい。卒業して、仕事が見つからなかったら、
日本に帰らないといけない。
だから、入学して1日目から、
学校の先生に「仕事があれば紹介して」って
お願いしてました(笑)。
──
初日から(笑)!
ボストンのときもそうでしたよね。
ぐいぐいと、前のめり。
Satomi
すぐ焦っちゃうんですよね。
そうして先生にしつこく言い続けてたら、
ある日「いい仕事があるよ」と。
──
言ってみるものですね(笑)
Satomi
その時に紹介された仕事が、
ダイヤモンドセッターだったんです。
もちろん、なんでもやりますがな!って、
緊張しながら面接に行きました。
──
ダイヤモンドなどの石を、
指輪などのアクセサリーに留める仕事ですね。
Satomi
別の日本人が働いていたんだけど、
帰国することになって空きができて。
会社のボスとしては、もう誰でもいいよ、
OK、OKみたいな感じで。
──
あっさり合格(笑)。
Satomi
ところがビザのサポートはできないって、
ボスが言うんですよ。
──
困りますね。違法就労になっちゃう。
Satomi
それは絶対したくない。
ビザのことは全部私が調べるし、
弁護士も私が探すし、
とにかくあなたは書類にサインするだけでいいから
ビザを取らせてほしい! ってお願いして。
──
あきらめない強さ。見習いたいです。
Satomi
それで無事にビザが取れて、
結局7年半ぐらい働きました。
ダイヤモンドセッターの傍ら、
週末に少しずつ自分でデザインした
ジュエリーをつくるようになって、
友だちや知り合いに販売しました。
だんだん口コミで広がって、
オーダーも増えていきました。
Satomi Kawakita Jewelryとして
ブランドを設立したのは2008年です。
──
自作のジュエリーが入った小さなスーツケースを、
ごろごろと自分で転がして、
NYのいろんな店へ営業に行った、と聞きました。
Satomi
得意の行商です(笑)
でも、しんどくて、打ちひしがれてて、
もう日本へ帰ろうかと思ったこともあったんですよ。
ところが、2010年のある日、
ホームページのアクセス数が激増したんです。
調べてみたら、西海岸の著名なブロガーが、
Satomi Kawakita Jewelryを
ブログで紹介してくれていた。
そこから火がついて、
ブランドが一気に軌道に乗りました。
──
あきらめず努力する人には、
ご褒美があるものなんですね。
──
ジュエリーの制作プロセスを、
簡単に教えてもらえますか?
Satomi
ロストワックスと呼ばれる、
キャスティング(鋳造)でつくります。
例えば指輪だったら、
まずは筒状のワックス(蝋)をスライスして、
それを削って指輪の形に整えていきます。


──
あっという間に、
ワックスが指輪の形になりましたね。
Satomi
テクスチャーをつけたいときは、
別のワックスを火で溶かして、装飾していきます。
ドットの模様だったら、小さなワックスの玉を、
指輪の土台に乗せていく感じですね。
──
それにしても、なんて細かい作業。目が寄りそう‥‥。
Satomi
形ができたら、業者に鋳造をオーダーします。
あがってきた指輪に、鋳造用の注ぎ口をつけて‥‥
今度はゴム型をつくります。
──
ゴム型があれば、
同じ形の指輪がいくつもできるわけですね。
Satomi
そう。型さえあれば量産できます。
サイズだって、ワックスの指輪を切って縮めたり、
逆に伸ばしたりすれば、無限につくれるんですよ。
──
なるほど。Satomiさんの“展開癖”と、
ロストワックスという技法。
ふたつの相性がぴったり合ったことで、
Satomi Kawakita Jewelryの
バリエーションの幅が広がったわけですね。
Satomi
そういうことですね。
──
土台の指輪ができたら、
あとは石をセッティングする作業ですか?
Satomi
はい。指輪もピアスも基本はだいたい同じ作業です。

はじまりは「ガラス」から。

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──
NYが拠点のジュエリーブランド、
Satomi Kawakita Jewelryのデザイナーとして
活躍されているSatomiさんですが、
実はスタートは、ガラスなのですよね?
Satomi
そうなんです。
京都の美術短期大学へ進学したあと、
地元の大阪にある
ガラス工房に通ったのがはじまりです。
息をふきこむと、ふわっと形が膨らむガラスが、
魔法みたいでおもしろいなあと思って。
もともと子どもの頃から
膨らむものに興味があったみたいです。
──
膨らむものに?
Satomi
カルメラってわかります? 
屋台でよく売ってたお菓子。
──
わかります、わかります!
おたまみたいな道具に、砂糖を溶かして‥‥。
Satomi
重曹を混ぜたら、ばっと膨らむやつ。
ああいうケミカルリアクションみたいなものに、
昔からすごく惹かれてて。
橙の果汁で半紙に文字を書いて、あぶり出すとか、
プラバンも、よくつくりましたね。
(プラスチックの薄い板に絵などを描き、
オーブントースターで温め加工する工作)
──
懐かしいです。
手で何かをつくることが、好きだったんですね。
Satomi
そうですね、母が洋裁をしていたので
その影響があると思います。
そうそう、小学校低学年のときには、
針山をすごくたくさんつくったのを覚えています。
──
針山って、手芸用の針を刺すクッション。
そんなに数はいらないですよね?(笑)
Satomi
1個あれば十分(笑)。
でもつくりだしたら、何個も何個もつくりたくなるんです。
展開するクセ。
色の組み合わせをいくつも試すとか。
──
展開癖。おもしろい。
Satomi Kawakita Jewelryも、
デザインや色のバリエーションが豊富ですよね。
(指輪だけで、約150種類のデザインがあるそうです)
その片鱗がすでに、子どもの頃から‥‥。
ちなみに、ガラス工房では、
どんなものを制作していたんですか?
Satomi
アート作品ですね。
もっと身近な日常のものをつくりたかったんだけど、
当時(90年代)は、グラスは安価な工業製品でいい、
という時代だったし、
工房の先生が、アメリカでガラスを勉強した人で、
スタジオガラスムーブメントの影響を受けていたので、
アート志向だったんです。
ガラスはあくまでも表現する素材である、というね。
──
20歳の頃、アメリカへガラスのワークショップを
受けに行ったのも、工房の先生の影響ですか?
Satomi
先生から、「アメリカのガラスは、
日本のものとは全然違っておもしろい」と聞いて
2カ月間のワークショップに参加しました。
──
当然、授業はすべて英語ですよね?
Satomi
そう。でも高校で英語が好きだったから、
変な自信があって、なんとかなるやろう、みたいな。
それで、いざアメリカに行ったら、
まったく何を話しているのか、わからない!
しかも、吹きガラスでつくった作品を、
みんなの前で、英語でプレゼンしなくちゃいけなくて。
──
うわー‥‥。日本人がもっとも苦手そうな‥‥。
Satomi
10人ぐらいのクラスメイトの前で、
作品のコンセプトを、って言われても、
もう全然言葉が出てこなくて。
みんなの前で、3回は泣きましたね。
でも泣いたって、誰も助けてくれない。
生まれて初めての挫折でした。
──
心が折れちゃいそうです‥‥。
Satomi
辛かったです。
クラスに一人、日本人の女の子がいて、
彼女は英語ができたから、どんどん輪が広がって。
果てには、アメリカで就職するみたいな話も浮上して。
それを見て、くっそーー!って思いました(笑)。
語学でこんなに差がつくのかと。悔しかった。
──
自分の中に何かが残る結果になったわけですね。
Satomi
必ず死ぬまでに語学留学をして、
英語をきちんと話せるようになりたい。
そう強く思って日本に帰りました。
帰国後は、ガラス工房で働き始めました。
──
工房では引き続き、吹きガラスでアート作品を?
Satomi
でもつくりたいものが、全然思い浮かばないんですよ。
作品を通して、世の中に伝えたいことがあるわけじゃない。すごい違和感を覚えていました。
それと、吹きガラスのプロセスが、
自分にあってないとも思っていました。
一発勝負なので、プレッシャーを感じてしまって。
──
なるほど。吹きガラスって瞬発力がいりそうです。
Satomi
手芸のように、もっとゆっくり、
自分のペースで完結できるものづくりが
好きなんだと気づきました。
──
悶々としたものを抱えていたわけですね。
Satomi
そうこうしているうちに、ガラス工房が閉鎖して。
いい機会だから、語学留学を目指すことにしました。
アルバイトをして、費用を貯めることにしたんです。
同時期に、片手間でビーズ織りのブレスレットをつくって、
友人の店で売り始めたら、大当たりして。
──
おお! なんでそんなに売れたんですか?
Satomi
やっぱり、デザイン?(笑)
──
普通にはないデザインだったんですね?
Satomi
渋い感じの色あいとかね。
つくり始めたら、
いろんな色の組み合わせでつくりたくなって、
コレクションが膨大な量になったので、
値段を添えて、カタログもつくりました。
──
おおおお、やっぱり「展開癖」がある!(笑)
Satomi
カタログ片手に営業して、
関西や東京の店で扱ってもらえることになって。
内職の人を5人雇いましたね。
──
すごい。Satomi Kawakita Jewelryの前身ですね。
Satomi
予想以上の資金が貯まったので、
アメリカに留学に行くことにしました。
当時、付き合っていたアメリカ人の彼が、
ボストンに帰って仕事を探すって言うので、
だったら私もボストンへ行くことにしたんです。
──
恋の後押しもあったんですね。バラ色の留学生活。
Satomi
というより、とにかく焦ってましたね。
語学を早く身につけたくて。
そして、ボストンについた初日からメイン通りを歩いて、
ガラスを売っている店を見つけては、
ガラス工房を知らないか、と聞いてまわりました。
──
バイタリティーのかたまりですね。
語学だけではなく、やっぱりガラスもやりたかった?
Satomi
ネイティブの人たちと触れ合うきっかけとして、
ガラスという自分の武器を使う感じでしたね。
いくつかのガラス工房に連絡したら、
手伝いに来てほしいっていうところが見つかって。
工房でアシスタントをすることになりました。
しばらくしたら、そのガラス工房が、
ビザをサポートすると言ってくれたんです。
──
働くためのビザですね。
アメリカで取得するのはなかなか大変です。
Satomi
アメリカのビザがもらえるのは、とても大きなこと。
早速、NYの弁護士事務所まで相談しに行ったんですね。
そうしたら弁護士の人が
「その仕事、本当にやりたいの?」って。
その第一声に、「はっ」としました。
──
ガラスを本業にしていくのかどうか、
ということですね。
Satomi
そもそも日本のガラス工房にいたときから、
迷いがあった。
一生やりたいか? いざ考えてみたら、
やっぱりガラスじゃないな、と。
──
ビザが欲しくて、自分を見失いかけていた?
Satomi
弁護士の言葉で、目が覚めました。
「やっぱりやめます」って言って、
その足でジュエリーの学校に見学に行ったんです。
──
急展開ですね。なぜいきなり、ジュエリーを?
Satomi
ガラスをやっているころから、興味があったんです。
小さいスケールのものづくりだし、
自分がつくったものを身にまとえることが、おもしろい。
ビーズでアクセサリーをつくっていた時に、
市販の金具を使っていたんですけど、
ちょっと残念だなと思っていたんですね。
金具までつくれてなんぼやな、と(笑)。
彫金を学んで、金具を自分でつくって、
やっと「オリジナル」って呼ぶことができる。
──
なるほど。でもなぜ、アメリカだったんでしょう?
彫金だったら、日本でも学べそうです。
Satomi
日本に帰るのは、何かを手に入れてから。
自分で「手に入れたぞ!」って思えるぐらいの
何かがないと、日本に帰りたくなかったんです。
──
その時はまだ、手に入れてなかったんですね。
Satomi
そう。だからNYのジュエリー学校を見学に行って、
その場で入学の申し込みをしました。
──
いよいよSatomi Kawakita Jewelryへの
第一歩ですね。

Satomi Kawakita Jewelry

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Satomi Kawakita Jewelry

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笑顔になる。

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ニューヨークに行った時のこと。

「まさこさん、すてきなジュエリー作ってる人がいるの。
アトリエに一緒に行かない? きっと好きだと思う」

と友人。

食もファッションも、器も。
その友人のセンスは、
いつもとても的を得ていて信頼できるから、
「きっと好き」というジュエリーとの出会いが
とても楽しみになりました。

数日後にうかがったのは、
Satomi Kawakita Jewelryのアトリエ。
その日はデザイナーのSatomiさんの友人知人が集まる、
招待制の販売会。

これにしようかな、
それともこっち?
並んだジュエリーは、どれもさりげなくかわいくて、
欲しいものばかり。
あれこれ目移りしながら、
私が手に入れたのは
小さなダイヤがついたリング。

わあ、うれしいなぁ。

えらび終えて、ふとまわりを見渡した時、
目に入ったのは、
ジュエリーを前にする、
みなさんのそれはそれは幸せそうな顔。
そうか、美しいものは
人をこんなに幸せそうな顔にするんだ!
ジュエリーとの出会いはもちろんでしたが、
えらんでいるみなさんの表情を見られたことも、
その日の収穫なのでした。

weeksdaysでは、
Satomiさんにお願いして3日間、
会場を借りて、オーダー会を開きます。
「ゆったりお見立て会」と称して、
1日のうち2時間だけ、人数限定で、
Satomiさんと私とでお見立ても。

みなさんのすてきな笑顔に
出会えることをたのしみにしています。

あのひとの かごのつかいかた。 [3]LIKE LIKE KITCHEN 小堀紀代美さん

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小堀紀代美さんのプロフィール

こぼり・きよみ
料理家。東京・富ヶ谷にあった人気カフェ
「LIKE LIKE KITCHEN」を経て、
現在は同名の屋号にて料理教室を主宰。
大きな洋菓子店である実家をルーツとし、
世界各地への旅で出会った味をヒントに、レシピを考案。
著書に『予約のとれない料理教室 ライクライクキッチン
「おいしい!」の作り方』
(主婦の友社)、
『フルーツのサラダ&スイーツ
~もっとおいしい組み合わせで~」
(NHK出版)
などがある。
■インスタグラム
https://www.instagram.com/likelikekitchen/?hl=ja

今の家に越してくる前は、
伊藤まさこさんとお隣さんだったという
小堀紀代美さん。
新居への引っ越し祝いにまさこさんがくれたのが、
ベトナムのかごでした。
ちょうどキッチンで調味料を入れるものを探していたので、
早速に使ってみたのだそう。

「いちばん大きいサイズが、
キッチンの流しの下にぴったり収まったんです。
お酢や料理酒などの瓶がたくさん入るし、
使うときはかごごと引き出せば、
必要なものがすぐに取り出せる。
奥のものが取り出しづらくて古くなる、
なんてこともありません。
明るい赤の色は、
扉を開けたときの見た目が可愛いのもうれしい」

小堀さんは自宅で料理教室を主宰しているので、
キッチンはお客さまをもてなす場所でもあります。
生徒さんやアシスタントが戸棚を開けることもあるため、
収納棚の中まできれいに整理できていると
気持ちに余裕が生まれるよう。

「キッチンは、とにかく清潔感が第一。
このかごは、汚れたら水洗いできるのも利点ですね」

料理教室では、季節ごとにメニューが変わります。
それに伴って、使う調味料も変わりますが、
そんなときにも、ベトナムのかごが大活躍!

「デモンストレーションは、リビングの書棚の前に
作業台を設置して行っています。
いちいちキッチンに取りに行かなくても済むように、
使う調味料はかごにひとまとめにして、作業台の横へ」

今月のメニューは中華なので、
かごの中には、ごま油や紹興酒がずらり。

「箱だと持ち運びにくいけれど、
かごはそのままキッチンへ持って行けるので、
メニューごとに中身を入れ替えるのもラク。
見た目も可愛いし、ほどよくラベルが隠せるので、
インテリアとしても生活感が出すぎず、
助かっています」

料理教室や雑誌などの撮影の前は、
野菜や調味料といった材料の買い出しも大量!
小堀さんは自分で車を運転して、
日々の買い出しに出かけます。
「買い出しの量にもよりますが、
大きなサイズのかごがやっぱり便利。
買ったものがどんどん入るし、
車から家まで、そのまま運ぶことができます」

大きなサイズのかごはほかにも、
スタジオでの撮影時に調理道具などを入れて
持って行くときや、
自宅でシーツなどを収納するのにも重宝しているそう。

「小さなサイズも、1階と2階で物を運ぶときや、
ちょっとしたお使いのときに使っています。
とりあえず物をしまうのにも便利だし」

友人知人には”かごマニア”がたくさんいて、
私はそこまでではないけれど、と言いながら
やっぱりかごが好きな小堀さん。

「ベトナムのかごというと、
東南アジアで見かける
カラフルなタイプだと思っていたけれど、
これは単色なので私たちの暮らしにもなじみやすい。
縦長ではなく、横長の形も好みです。
引き出しみたいに使えるから、
インテリアのいろいろなシーンで役にたちそう」

そう言いながら、赤い大きなベトナムのかごを持って
車に乗り込む小堀さん。
その姿を見ていると、
インテリアだけでなく、
着こなしのアクセントにもなっているようです。

あのひとの かごのつかいかた。 [2]菓子研究家 長田佳子さん

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長田佳子さんのプロフィール

おさだ・かこ
foodremediesという屋号で活動する菓子研究家。
パティスリーやレストランで経験を積んだ後、
YAECAのフード部門、PLAIN BAKERYを経て独立。
心と体に優しく寄り添うお菓子は、
ひと口食べるとほっとする味わい。
著書に『季節を味わう癒しのお菓子』(扶桑社)、
『全粒粉が香る軽やかなお菓子』(文化出版局)
などがある。
Instagram

やさしく甘いお菓子で、
心と体を喜ばせることができたら。
そんな想いを込めて活動している長田佳子さん。
作るお菓子は素朴でありながら、端正な佇まいで、
ご自身も一見、もの静かでたおやかな雰囲気ですが、
実はとっても“男前”、
お菓子を作るときの手早い動作には惚れ惚れします。

長田さんは、イベント出店ともなれば、
材料やお菓子などたくさんの荷物を一人で持って、
日本全国、どこまでも出かけて行きます。
「とにかくいつも荷物が多いので、
普段は大きなビニール素材のバッグや布バッグばかり。
天然素材のかごバッグも可愛いなあと思うけれど、
実用性を重視してしまうから、
意外と持っていないんです」

と長田さん。

「ほら」と見せてくれたのは、
唯一、持っているマルシェバッグ。
アトリエの隅で荷物入れになっているそのかごには、
大きな穴が空いていました。

「大きなサイズだと、
つい入るだけ荷物を入れてしまうんです」

という長田さんですが、
このベトナムのかごには満足しているとか。

「強度があるので、たっぷり入れても安心だし、
底が四角くて広いので、何を入れても収まりがいい。
段ボール箱に入れていたものを
そのまま詰められるんですよ」

アトリエの作業台の下に3つ並べられたかごの中には、
お菓子の材料となる小麦粉や、
仕事で使う大きなクロス類、
増える一方のレシピや資料などの紙ものが
まとめられていました。

「通気性があって湿気がこもらないから、
粉ものを入れても安心。
段ボール箱やプラスチックケースに収納していたものを
このかごに入れ替えたら、
見た目もすっきりして気持ちがいいです」

出かけるときも、活躍してくれます。

「天然素材のかごより編み目がきっちりしているから、
底から中身がもれたりする心配がありません。
また、仕上がったお菓子は
バットに入れて保管していますが、
このかごは、バットが平らなまま入るので、
納品場所への移動もラクチン」

持ち手にビニールのカバーがついているので、
たくさん入れても手が痛くならないのも
うれしいところだそう。

また、雑誌などの撮影のとき、
スタイリングも担当することが多い長田さん。
このお菓子にはあの器、というふうに、
前もって準備しておきます。
そんな撮影セットも、このかごにまとめておけば安心。

「このまま持って行けばいいだけなので、
当日、現場でアレ忘れた! なんてことが
なくなりますね(笑)。
持ち上げても箱型のままで安定感があるので、
器などの割れ物も、神経質にならずに入れられます」

いつも、ゆったりと着心地の良さそうな服を
おしゃれに着こなしている長田さん。

「リネンやコットンなどの服が多いので、
自然素材のかごを合わせると、
少しほっこりしてしまうことも。
このビニールのかごの、あっさりした感じは
全体のバランスがとりやすいですね」

ホワイトを選んだものの、
使ってみるまでは「汚れやすいかな?」
と心配していたそうですが、
実際に使ってみたら、気にならなかったとのこと。
働き者の長田さんにとって、
ベトナムのかごがよき相棒となっていることは
間違いないようです。

あのひとの かごのつかいかた。 [1]TEALABO.t 主宰 武内由佳理さん

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武内由佳理さんのプロフィール

たけうち・ゆかり
老舗日本茶専門店に勤務後、料理家のアシスタントを経て、
中国茶や、オリジナルのブレンドティーを中心に、
「心と身体を整える茶」を提案するTEALABO.tを主宰。
全国各地のイベントやギャラリーショップなどにて、
出張喫茶やお茶会などを開催し、
お茶の魅力を伝え続けている。
■インスタグラム
https://www.instagram.com/t.tealabo/?hl=ja

お茶というと、お茶室で正座して
お茶碗を回しながら飲むスタイルを想像するでしょうか。
それよりももっと気楽に、気軽に、
幅の広い楽しみ方ができるのが、
最近、ぐんと注目度が上がってきている中国茶です。

TEALABO.t の武内由佳理さんは、
中国茶を中心に、
自分でブレンドした茶葉を販売したり、
イベントや食事会に出向いてお茶をサービスしたり、
そんな活動をしています。
仕事のメインは出張喫茶、というスタイルのため、
いつも荷物はパンパン。

「茶葉や茶器など、
軽いけれどかさばるものが多いんです。
送ってしまえば楽なんですが、
なんだかんだと手持ちのことも多くて」

そんなときに、ベトナムのかごを使ってみたら、
とても使い勝手がよかったと言います。

「強度のあるビニール素材なので、
中身が守られているような安心感があって。
重い荷物を手にかけると、
くいこんで痛くなってしまいますが、
このかごは、持ち手がぎりぎり
肩にかけられる長さなのもいい」

3サイズのうち、いちばんよく使うのは
真ん中のサイズとのこと。

「ファーマーズマーケットへ
野菜の買い出しに行くことも多いのですが、
このサイズだと、たっぷり入って重くなりすぎません」

同じサイズを「ちょっとそこまで」というときも、
重宝しているのだそう。

いちばん大きなサイズと小さなサイズを
入れ子にするのも、武内さん流の使い方。

「納品する茶葉を詰めた小さいサイズのかごを、
大きなサイズに重ねて持って行きます。
大きなサイズのなかでの小分けに、
小さなサイズを使う感じ。
出張先ではバラして、
それぞれを商品のストック場として利用し、
納品後は空になったかごに、お土産を詰めて帰れます」

中を見せてもらったら、
まるで引き出しの中のように、
美しく整理整頓されていました。

割れやすい茶器は箱に入れてから、かごの中へ。
小さなかごの中には商品類がぎっしり。
隙間に、クロス類が入っています。
これなら中身がぐちゃぐちゃで迷子になることもないはず。

外でのお茶会も、武内さんが提案していることの一つ。
冬はお湯を沸かす道具と茶葉と茶器を持って。
夏は、水出ししておいたお茶と茶器を持って。
ご主人とも、散歩がてらよく外でお茶を楽しむのだそう。

「家の近所にお気に入りの場所があるんです。
大きな川の河原で、のんびりお茶を飲んでいると、
疲れも癒されて、心底ほっとします」

この日もベトナムのかごの中に、
前日に茶葉と水を入れておいた
水出し茶入りのペットボトルと、
箱に詰めた茶器セット、白いクロス、
お茶受け用のパイナップルを入れて、河原へ。
ベンチの上にクロスを敷いて、ささっと茶席を作ったら、
なんとも優雅なティータイム。

「このかごは、汚れたらさーっと水洗いできるので、
気兼ねなく地面に置けるのもいいところ。
ピクニックやビーチに持って行くにもよさそうですね」

お気に入りをかごに詰めて、近くの公園へ。
次の週末は、そんなお出かけを楽しんでは
いかがでしょうか。

ベトナムのかご

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気兼ねなく。

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買いものに、
お出かけに、
家の中でも。

いろんな場所で、
いろんな使い方で、
一年中、活躍するかごですが、
とくに出番が多いのが、
今の季節のような気がします。

最近、気がつくと手に取っているのが、
このテープで編まれたベトナムのかご。
軽くて丈夫。
汚れたらじゃぶじゃぶ洗える働きもの。
かわいいだけじゃない、
「気兼ねなく使える」というのは、
道具として最高ではないかと思っています。

今週のweeksdaysは、
去年の秋、とても好評だった
ベトナムのかごをご紹介。
白とグレーにくわえて、
キュートな赤も。
街歩きにもよさそうな小さなサイズも登場します。

明日のLOOKBOOK、
どうぞおたのしみに。

母の眠り、子の眠り。

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薄暗くした部屋のなかで目をこらして、
ベッドにそっと近よって、娘の顔をのぞき込む。
呼吸する音はあまりにも小さくて、
耳を澄ませても聞こえてこない。
毎度のことなのに、そのことにちょっとドキドキして、
今度はおなかのあたりに手をあててみる。
そして、やわらかに上下しているのを確認して、
いつもほっとする。
心配しすぎ、と夫にはいわれるけれど、
心配なのだから仕方ない。
まだ一歳に満たない娘が寝ているとき、
夜はもちろんお昼寝のときも、
ついこんな行為を、わたしは繰り返してしまう。

昨年末に第一子が生まれた。
初めてのことづくしで、あたふたしてばかり。
けれど、その初めてのことに、驚いたり感心したり。
そんな経験をさせてくれる娘の存在は、
今ではわたしの日常の大半を占めている。

そんな日々のなかで、とくに眠りについて、
驚くことが多々ある。
まずは、眠っているときの赤ん坊の姿勢。
脚がカエルのように開いているのが
赤ん坊の股関節にはいいらしく、
仰向けになっているときも、
自然と外側に膝を曲げて大きく開いている。
そして腕も曲げて、脚と対称になるように大きくバンザイ。
いつもあまりにも気持ち良さそうに
その格好で寝ているので、一度真似てみたことがある。
わかりきっていることだったけれど、
からだの硬いわたしは、股関節は痛く、
腕は痺れるだけだった。

もうひとつ。
寝返りを自由にうてるようになった6ヶ月以降、
夜は静かに眠っていることがほとんどなのだけれど、
深夜、寝相がとてつもなく乱れる時間帯がある。
ベビーベッドの柵がガッチャンガッチャンと鳴り響く音が、
隣の夫婦の寝室にまで聞こえてくる。
娘が産まれてから、深夜の授乳のために
眠りが浅くなったわたしは、
毎度、その音にビクッと目醒めて様子をうかがいにいく。
ミルクを欲して起きたのかと思いきや、
娘はベッドの中でぐっすり。
思いがけない位置で、
たとえば、柵にへばりつくように寝ているのだった。
六畳の和室で寝かしたときは、
六畳を運動マットとみなしているかのように、
端から端まで縦横無尽に
(真ん中に敷いたおとなの布団を乗り越えて)
寝返りで動きまわっているのを夫が目撃し、
眠い目をこすりながら思わず笑ってしまったらしい。

一方、わたしは出産を経て、
眠りの質がすっかり変わってしまった。
眠りが浅くなっただけでなく、寝相もすこし変わった。
妊娠中はおなかを圧迫してはならないので
うつ伏せができなかった。
そもそもうつ伏せ寝の習慣はなかったのに、
してはならないとなると、
不思議なほど無性にうつ伏せが恋しくなってしまった。
そのせいか、出産後は待ってましたとばかりに
うつ伏せで寝るようになった。
そうすると、こころなしか安心感が増し、
よく眠れるのだった。
頬が布団やベッドに吸い寄せられて、
密着度が高まるからだろうか。

ところで、娘は寝心地がいいとか悪いとか、
どの程度感じているのだろう。
赤ん坊の寝返りなどの寝相の悪さは、
眠りがとても深いときに起こることらしく、
よく眠れているという証なのだそう。
仰向けに両手両足開いて寝ている姿も、
いかにも無防備で安心しきっている感じがする。
抱っこ紐で縦に抱かれて眠ることもよくあるが、
おとなはこの状態で眠れるのだろうかと、
そんなあり得ない想像をしてみたりもする。
おとなと赤ん坊の眠っているときの姿勢や、
どんな場所で眠るかといった違いは、
周囲を、この世界をどれだけ無条件に信頼しているか、
という違いなのかもしれない。

眠りが浅いので、
すこしでも心地よく眠れるように心掛けている
母としての日々。
赤ん坊の眠りの深さを見習って、
眠りの環境の信頼度を高めてみようか。
まずは、頬ずりしたくなるような安心感たっぷりのシーツを
探しだしたいと思うのだった。

トンネル。

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ふだんから暗いところも狭いところも平気なのに、
車を運転していてトンネルにさしかかると、
なぜか僕はちょっぴり緊張する。
特に長いトンネルを走っていると、
オレンジ色の照明が単調なリズムを刻むだけの景色が
続くものだから、
なんとなくグルグルと同じところを
回り続けているような気がしてきて、
そのうち、もしかすると
この光景がずっと繰り返されるんじゃないだろうか、
このまま永久に僕は外へ出られないんじゃないだろうか
なんてことを、ぼんやり頭の隅っこで考え始めるのだ。

妄想とはわかっているのだけれども、
それでも僕はゆるいカーブを曲がるたびに、
トンネルの両側にときどき現れる道路標識や
距離を示す看板の数字が
少しずつ変わっていることを頼りに、
ほら僕は世界の奇妙な裏側へ
紛れ込んでしまったわけじゃないぞと
自分を納得させようとするし、
遙か遠くに出口から差し込む光が見えてくると、
ようやくそのことを確信してホッとする。

眠ることは、そんなトンネルに似ているような気がする。
眠りは、今日と明日をつないでいるなんとも奇妙な時間で、
入口はわかるのに出口がいつ現れるのかは、
トンネルと同じように、
そのときになってみないとわからない。

僕は眠ることが大好きだし、
できればもうずっと布団の中で暮らしたいと
思っているくらいなのに、
どこか眠ることへの戸惑いのようなものがあって、
夜遅くベッドで横になるときには、
このまま永久に目が覚めなかったらと考えるし、
目を覚ませば、眠りについた自分といま目覚めた自分が
そのままつながっていることを不思議に感じてもいる。

きのうの自分ときょうの自分をつなぐ
眠りというトンネルをくぐり抜けて、
何とか僕は僕自身でいることを
保っているつもりなのだけれども、
本当に今のお前はきのうのお前と
ひと続きなのかと問われたら、あまり自信はない。
なにせ僕は自分が眠った瞬間から、
目を覚ますまでのことを知らないのだ。
もちろん夢は見ているけれども、
眠っている時間は、
僕にとっては存在しない空白の時間で、
その間にこっそり記憶が入れ替えられ、
世界のすべてリセットされていても
きっと僕にはわからない。

眠っているとき、つまり夢の中にいるとき、
僕には自分が夢を見ているのだという自覚はないし、
いま自分は夢を見ているのではないかと疑ったこともない。
どれほど奇妙に歪んだ世界でも、
そのときには現実として、
ただ受け入れているだけだから、
もしも夢の中から抜け出せないままでも、
僕はそのことに気づかないだろう。
ということは、今ここでこの文章を書いている僕だって、
本当は夢の中にいるかもしれないし、
そして、それを確かめる方法はどこにもない。

それでも僕にとって眠ることは喜びだ。
体を横にして目を閉じ、
明日の自分につながっているはずのトンネルの中へ
ゆっくりと潜っていくのはたまらなく心地いい。
たとえどれほど奇妙な世界に閉じ込められることになっても
それはそれで構わないように思う。
じつを言えばトンネルのどちら側も夢で、
僕はただ夢の中から別の夢の中へと
移動しているだけなのかもしれないのだから。

悪夢の頻度。

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旅館やホテルに宿泊して、自宅に戻ってくると、
生活感に圧倒される。
がっくりくるというより、
ここに人が住んでいます! と主張する
空気の濃さに完敗する感じ。
整頓魔ではないものの、親しい人が訪ねてきて
OKな程度には片付けているのに。
とくに、寝室に入るとどこかに
自分の分身が潜んでいるんじゃないかと思うくらいだ。
換気、掃除をし、
空気清浄機がまわっていても逃れられない。

よほど神経質なのかと思われそうだけど、そうではない。
こと睡眠に関しては、無頓着だ。
基本的に、どこでも寝ようと思えば寝てしまう。
睡眠環境についても、
枕が変わって寝られなかったという話をきけば、
「じゃあ枕を外して寝ればいいじゃない」
とギロチンにかけられそうな返事をしてしまう性質である。
仕事が立て込んでくると机の上で、
さらには机の下の床で寝ていることも多い。

こんなことを言うと優しい方からは心配されるが、
基本的にはベッドの上で寝ているので安心してほしい。
ただ、夢をみることはあまりない。
みても悪夢しかない。
悪夢は、自分のなかで力を入れている作品に
取り組んでいるときに多い。
みている間は辛いけれど、
「手応えあり」のサインなのだ。
悪夢は吉兆である。
とはいえ、そんな状態が続くと寝た気はしない。

さて、唐突だが、私は長年修道女に憧れている。
現世のしがらみがあるので現実では無理なのだけど、
睡眠環境だけでも真似したいと思って修行している。
写真集で見た小さな女子修道院の、
いかにも体が痛くなりそうな
木のベッド(マットレスなし)に寝られるようになりたい。
そう思ってここ数年は床に
5センチ程度の薄いマットをひいて、
手製のシーツをかぶせ、
その上に寝るという睡眠修行をしている。
すると、修道女に近づけたのかはわからないが、
悪夢を見る回数が減ったのだ。
不思議に思って、もとのベッドで寝てみると悪夢をみる。
寝心地はベッドの方がいいに決まっているのになぜ‥‥。

非理系人間である私は、
悪夢の頻度は体の下にあるマットレスの厚みに関係すると
仮説を立てた。
ベッドの、持ち上げられないほど重く
分厚いマットレスには、
いままでみてきた悪夢が貯め込まれているのだ。
反対に、ペラペラのマットは起床後は立てかけて
乾燥させてしまうので、悪夢が貯まる余地がないのだろう。

いまはこのふたつの睡眠環境を使い分けている。
夜寝るときは修道女をめざしてペラペラのマットで休み、
昼寝と病気のときはベッド。
悪夢をマットレス型の貯蔵庫から引き出すたびに、
さあ今回も腕を振るうぞと元気に
(他人からみるとげっそりして)目覚めるのである。

fog linen workのベッドリネン

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眠りをきちんと。

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ぐっすり眠り、
すっきり起きる。

1日を気分よく過ごすために、
睡眠をきちんと取ることはとても大切です。

おふとん、枕、ベッドマット‥‥。
ベッドまわりのものは
いろいろあれど、
私がとくに大切に思っているのが、
ベッドリネンです。
肌に直接、触れるものだから、
さらりとしていて気持ちのいいものがいい。
いつでもこざっぱりといられるよう、
さっと乾くものがいい。

今週のweeksdaysは、
fogのリネンを使ったベッドリネンを紹介します。
ボックスシーツはfog従来のものを。
コンフォーターケース(おふとんカバー)と
ピローケース(まくらカバー)は、
それより薄手のものにし、
さらに軽く、気持ちいいものに。

あつい夏も、
これさえあれば。
どうぞ洗いざらしのリネンの質感を
たのしんでください。

これからのホテル。

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伊藤
元気でいても、すこしずつ老いはやって来ると
最近、実感した出来事があって。
母がある日、大きなル・クルーゼの鍋を
「あげるね」と、私に譲ってくれたんです。
それでずっといろいろな料理を作ってきたのに、
なぜ? って訊いたら、「重いから」って。
そうか、って‥‥。
年を重ねることによって、今までいいと思ってたものも、
使うことが難しくなることがある。
ありがたく私が使うことにして、
その代わりに母には
アルミの打ち出しの鍋をあげたんですけど、
そんなふうに、変わってくるんだと思って。
でも、それを悲しむのではなく、
たとえば、杖が必要な年齢になったら、
オシャレな杖が欲しくなるだろうし、
年齢によって欲しいものって変わっていく。
そういうものなんだなと思うと、
まだまだ仕事のやりがいがある!
そんなふうに考えることにしました。
川上
「杖っていうのはこういうものだ」と、
そういう考えで続いてきたものに、
あたらしい感性が入ったら、いいでしょうね。
セブンデイズホテルにも、
バリアフリーの部屋があるんですよ。
伊藤
2階の、広めのお部屋ですよね。
泊まったことがあります。
手すりがしっかりしていました。
川上
ホテルの条例で車椅子の方の対応の部屋を
1室だけはつくることになっているんですね。
それをつくるときに、‥‥もうわかるでしょう?
「じゃあ、いちばんいい部屋にする!」って(笑)。
もちろん限界はありますよ、
本当に普通のビジネスホテルと
同じ総事業費ですから、その中でどうするかって。
セブンデイズホテルを見た業界の方が
「趣味ですか」ってよく仰るんだけど、
「とんでもないです」って。
伊藤
今、Airbnb、民泊が流行っていますよね。
ホテルをつくりたいって気持ちは、
人をもてなしたいっていう気持ちは
みんな持ってるのかなという気がして。
川上
ホテルを経営しているからこそ思うのは、
民泊ができるって、偉いなあ、勇気があるなあと。
こうして、私は、
見た目みたいなことばっかり言いますが、
いちばんはセキュリティ。
そして絶対、法を守る。
いくらそれをきちんとしていると思っても、
どこか抜かりがあるかもしれないという
恐怖というものが常にある。
逆に言うと、常にそういうものを持ちながら
ホテルを運営しないとダメなんだと思うんです。
だから、すごいな、偉いなって思っちゃう。
──
使う側としては便利で面白いので、
海外ではよく使うんです。
すると2種類あって、
本当に自分の住んでいる家や部屋をそのまま貸す人と、
それ用に小っちゃいホテルとして作り込む人がいて、
その作り込む人はIKEAの家具やお皿、カトラリーで
統一している人が多いですね。
デザインがいいし、壊れたり、なくなったりしても、
安価に補充ができるからだと思うんですが。
でも本当に、「昨日まで住んでたでしょう?」という
家を貸してくれる人もいるんです。
そういう人は、なにもかもそのままで、
ほんとうにプライベートな部分は
鍵をかけて仕舞ってあるけれど、
ふだん自分たちが使っているものを、
そのままどうぞ、っていうかたちです。
川上
西洋には、そういう歴史があるんですよね。
もともとのメンタリティが違う。
すごくオープンというか。
伊藤
外国の人って家に行くと、
全部を見せてくれますね。
ハウスツアーと言って、
ここがバスルーム、ここが寝室、って。
川上
けれども、民泊は、
私たちビジネスホテル業界の脅威なんです。
フランスはそれでものすごく
プチホテルが消えていった、
というニュースを見ました。
費用をかけてリノベーションしても
なかなか追いつかないと。
ある意味プロがやったのとは違う、
アマチュアの方ならではの魅力というのが、
きっと、あるんですよね。
伊藤
高知、何度か来ているんですけど、
日曜市に行くと、食材がすばらしくて。
買って調理したいけれど、できなくて。
川上
そう! 日曜市に行くと、
料理がしたくなるんですよね。
伊藤
この高知の豊かさを実感するのって
料理じゃないかなと思うことがあります。
だから、高知に、
キッチンがついてるホテルがあったらいいな。
川上さん、そういうのつくってください!
川上
あら(笑)!
伊藤
それに、今日のお話を聞いて、
川上さんのプロデュースする、
広い部屋があったら、泊まってみたくなりました。
川上
本当に? 実は、考えたことがあるんです。
私たち夫婦は、子どもが巣立って2人なので、
広くてもったいないねって。
だから、セブンデイズホテルのゲストハウスにして、
もちろんキッチンつきで、
みんなつくって食べて、泊まれる部屋がつくれたら
楽しいかもしれないって。
伊藤
そしたら高知に滞在する日数が増える気がする!
日曜市に売っていないもの、
例えば鮮魚だとか精肉だとか、
お酒だとか、きっといいお店がありますよね。
川上
あるんですよ! いくらでもおすすめします。
伊藤
そういうところに行きたいんだけれど、
そうするとセブンデイズホテルに
泊まれなくなっちゃう。
やっぱりここを拠点に、
その体験ができたら最高だと思って。
すみません、わがまま言いました(笑)。
川上
いえ、頭の中に入れておきますよ。
伊藤
川上さん、今日はどうもありがとうございました。
いちどゆっくりお話を伺いたいって思ってたんです。
ますます、ファンになりました。
川上
こちらこそ、ありがとうございました。
また高知にいらしてくださいね。

毎日がリセット。

未分類

伊藤
掃除といえば、セブンデイズホテルに滞在していると、
汚れていたり、散らかっていたり、
そんなふうに気になることがないんです。
朝食後、ごちそうさまってお膳を持っていくと、
その置き場を、スタッフの方が、
すっごくきれいに保っていらして。
川上
皆さんのおかげですよ。
伊藤
お部屋の掃除にいらっしゃる方も、
元気に、ニコニコしていらっしゃって、
そういう姿を見かけるのも,嬉しくて。
川上
やかましくなかったですか?
伊藤
ぜんぜん! むしろ、ここには
いい空気が漂ってるなぁ、と思いました。
川上
そうだったら嬉しいです。
やっぱり、空間も人も、
ごまかすと、空気に出ます。
スタッフのミーティングのときに、
そう言ったんです。
全部空気に出るんだよと。
お客様は、玄関を入った瞬間にわかるよって。
伊藤
うん、ぜんぜん、淀んでないですよ。
川上
淀まさないためにはどうするかというと、
それはやっぱりメンタル面も含めてのケアが
必要だと思うんです。
伊藤
川上さんの設計は、機能もそうですが、
美しさを大事にしているから、
なおさら、整頓や、清掃が大事ですよね。
ロビーのマガジンラックにしても、
お客様が雑誌を1冊取ったら、
並べた列が、ちょっと崩れる。
だからスタッフがまめに片付ける。
川上
そう。でも、カッコいいでしょ?
これもね、吊るためには、
天井を頑丈にしないといけませんよと言われて、
鉄板を入れたんです。
施工業者から「いったい何をするんですか!」って
驚かれましたよ。
「これを吊るしたいんです」って(笑)。
17年経っても、壊れていませんよ。
伊藤
ふつうの考え方だったら、
子どもたちがぶら下がっちゃいそうだからとか、
そういう理由で、諦める部分ですよね。
川上
そうですね。うちはやさしく「ダメよ」って。
伊藤
緊張感がありますね。
川上
そういうことはないですかって訊かれるけれど、
いたずらされるから無難なほうにしようとか、
そういう考えを持たないようにしています。
じっさい、何かをいたずらされたり、
壊されたりとかいうことはね、ないんです。
外のベンチもそうです。
私はベンチが大事だと思っていて、
常日頃、街に、腰掛けられる場所があるのは
幸せだなと思っているんです。
だから自分でまずやろうって。
設置するとき、「いたずらされますよ」って
言われたんですけれど、誰もしない。
きれいに使ってくださるし。
伊藤
どこかの国で、地下鉄のいたずら書きが
あまりにひどいんで、どうしようと考えて、
いくら書かれてもすぐに全部消して、
されたらまた消して、
つねにきれいにしていたら、
いたずらが減ったそうです。
川上
絶対そうだと思いますね。
伊藤
私、ホテルが好きなんですけど、
なぜかというと、
いつもゼロからのスタートだからなんです。
部屋には、あるべきところに必要なものが、
ピシッと置かれている。
それを毎日、同じように整えてくれる。
シーツもタオルも洗い立て。
それが家でもできないかなと思っているんです。
何かを始めるときに、
片付けてから始めるのではなく、
いつも同じ状態にしておきたい。
ホテルのあり方は、
私の理想とする部屋の整え方に似てるのかなって。
川上
ちょっとくじけると、すべてが崩れていく。
キッチンなんかも、夜、片づけができなくて、
「ああ、もう疲れたからこのままに」
と思うことがあるけれど、
「いけない、いけない。エイヤッ!」
ってやっておけば、次の日の朝、全然違うんですよね。
伊藤
たとえば写真を撮ろうというとき、
「ちょっと待って、片づけるから」
ということが、ないようにしたいんです。
川上
そうですよね。
伊藤
もちろん、「本の山の間で寝てます」
という人がいても、それはそれで、
その人が気持ちよかったらいいんですよ。
でも、私はそうじゃないかなって。
川上
伊藤さんにそう言ってもらえると、
すごく励みになるな。
伊藤さんは、そういう暮らしの在り方を、
雑誌や著作で発信なさっているでしょう?
それがすごく嬉しいんです。
私はちゃんと勉強をしたわけでも何でもなく、
雑誌や書籍で知ったことが大きいんですよ。
地方に住んでいると、先端のものに触れることだって
なかなかできない。都会に行かないと、
イタリア家具を見ることだって難しいですもの。
伊藤
ずっと高知にお住まいでいらっしゃるんですか。
川上
高知だけです。だから、東京に行くと嬉しくて、
「あぁ、素敵!」って、気持ちの貯金をして帰ってきます。
そして、実用書や、いい情報の載っている雑誌は、
ずっととっておくんです。
ずいぶん前のものでも、読み直したり。
伊藤さんの本も、そうなんですよ。
伊藤
ありがとうございます。
川上
私、年齢が、もう60代も後半に
向かっていくんですけど、
そうなるとね、「今さら」なんて
思わないわけです。
伊藤
「今さら」と思ったら、
いろんなことが止まっちゃいますものね。
川上
そうなんです。
人生短いかもしれないから余計に(笑)!
思いついたことは、やろう、って。
伊藤
ずっと、いままでも、これからも「自分」だし、
先々も、ずっと楽しく生きたいですよね。
川上
そうそう! そうなんです。
ある日突然、シニアの世界に入るわけじゃなくて、
ずっと続いていることなんだもの。
少しずつ、ね。

きれいに保つ。

未分類

川上
続けてきたからこそ、わかることもありますよ。
たとえば、ロビーの柱の角に、
プラスチックの丸いスツールを置いているのは、
柱や壁を守るためなんです。
フロントと玄関をつなぐ動線上にあるので、
トランクなどがぶつかって、
柱や壁が少しずつ壊れるんですね。
それを防ぐ目的で。
伊藤
あ、なるほど! なんでかなあと思っていました。
ああいうところはどうしてもひっかけたり、
子どもが遊んだりしてしまいますものね。
川上
はい。仕方なく始めたことだけれど、
違和感がないし、そのうち、
「なんかかわいいんじゃない?」となりました。
子どもとか、ちょっとお話ししてる人が
座ってたりするようになって、いい雰囲気で、
「いいんじゃない? こんなのも」みたいな(笑)。
壁や柱も、塗り替えが必要になるでしょう。
そういう時は
「真っ白は飽きちゃったから、
ちょっと変えよう」とか、考えます。
伊藤
なるほど! それであのきれいなピンクが?
私、あのピンクの手前に穏やかな白い椅子があって、
いい風景だなと思って、さっき写真を撮りました。
川上
あれは、コルビュジエ・カラーなんですよ。
伊藤
建築家のル・コルビュジエがつくった
カラーパレットに忠実な色ということですか?
すごい!
川上
そうそう、もう全部(笑)。
そういうことが生活にすごく大事だと
思っているんです。
伊藤
私は白が好きで、「weeksdays」の前身で
「白いお店」というものがあったんです。
いろんな白を集めて紹介をしていたんですが、
キッチンリネンでもタオルでも、
「白、汚れませんか」って声が上がる。
けれども、「だからいいんですよ。
いつも、きれいにするでしょう?」って。
川上
同じですよね。この床もです。
ライムストーン(天然石)なんですが、
貼るとき、散々、施工業者から
「絶対汚れる、すごく汚れる」、
白い塗り壁も「すぐ汚れますよ!」って。
だから、伊藤さんと同じように言うんです。
「だからいいのよ。
いつも、きれいにするじゃない」って。
伊藤
確かにこの頃、ホテルは
ダークブラウンなど、
濃い色のインテリアが多いですよね。
川上
そうですね、汚れにくいので。
伊藤
そういえば、ゴミ箱を探していたら、
模様のついたものが多いなあと思ったことがあって。
汚れがついてもわかりにくいように、
そうしているんですって。
だからこそ、白がいいのに。
そういえば、私にとっては日常なのに、
人に言うと驚かれることがあるのが、
ゴミ箱を毎日拭くことと、
五徳を毎日洗うことなんですけれど。
川上
素晴らしい。そういうところは、
私も伊藤さんの本を読ませていただいて、
「うんうん」って同意していますよ。
とってもよくわかります。
伊藤
ありがとうございます。光栄です。
川上
汚れたら、きれいにすればいい。
ホテルはまさしくその考え方です。
伊藤
ここは川上さんにとっては仕事場ですが、
だからといって、家と変わらない感じでしょうか。
川上
そうです、全然変わらないです。
伊藤
おうちだと思ってつくっているんですね。
川上
住んでいる家も、ここの延長線みたいな感じですよ。
ただ、今は、みんなが使う部屋を、
ちょっとストイックにしすぎているかも。
床を麻のカーペットにしたんですね。
私は、素足でいると非常に気持ちいいと思うんですが、
濡れるとしみになるし、
2歳と4歳の孫には、痛いって不評で!
伊藤
転んだら痛そう(笑)。
川上
私はその緊張感が好きなんだけれど(笑)。
伊藤
お家の中、ぜんぶ、そんなふうに緊張感が?
川上
いえいえ! 本当は自堕落に暮らしたいですよ。
でもそれは自分の部屋だけにしましょう、って。
自堕落は自分の部屋だけ。
夫婦別室にしているので、自分の部屋はもう本当に、
なんでもかんでもかごに入れっぱなしなんです。
入れちゃえば見えないぞって(笑)。
家族も、それぞれの個室では、自由。
お互い、そこには触れないようにしています。
伊藤
それは新しい暮らしの形かもしれない。
夫婦だからって必ず一緒にいなくてもいいと思います。
私の友人にも、結婚してから30年、
ずっと寝室は別っていう夫婦がいて、
それぞれ、自分の好きなようにしていますよ。
川上
それが長持ちする秘訣だと思ってます(笑)。
伊藤
自分の時間は大切ですもんね。
川上
大切です。夜中に本が読みたくなって、
電気をつけるのも自由だし、
ラジオを聞くこともできるし。
この年齢だから、自分の時間というものは大切。
伊藤
私も、娘と暮らしているんですが、
リビングに私物は持ち込まないことにしています。
川上
そう、同じ。
伊藤
撮影をすることもあるし、
打ち合わせで人も来るという理由もあるんですが、
私の性格もあるんでしょうね。
実家も、いつ誰を呼んでも大丈夫なように、
ピシッとしていたので、
それが気持ちいいということが染みついている。
川上
そう。結局、
いつも片づけておいたほうが、楽ですよね。
お掃除も全然楽だし、
食後、テーブルだけ拭いておけばいいくらいで。
伊藤
そうなんです。

ホテルはわが家。

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伊藤
川上さんは、ホテルをつくろうって、
そもそも、どうして考えたんですか?
川上
ホテルをつくりたいから
つくったんじゃないんですよ。
20年ほど前、
家業のガソリンスタンドが斜陽産業になったので、
次の世代に受け継ぐために、
何かしないといけないというところからです。
この場所を持っていたので、
どうしようかと考えていたら、
「ビジネスホテルはいかがですか」という話があって。
その頃は高知市内に
ビジネスホテルが少なかったので、
「そうですね」と(笑)。
伊藤
でも、いわゆるビジネスホテルをつくるのではなく?
川上
最初はね、商売だから、
普通のビジネスホテルをするんだと思っていたんです。
すごく大変な仕事かもしれないけど、
大変って考えちゃうと怖くてできないので、
自分が家にお客さんを招くときにすることと同じだと
考えるようにしたんです。
つまり、お掃除したり、絵を飾ったり、
花を飾ったり、お茶を出したり、
そういうことですよね。
そのぐらいの気持ちでやらないと、
恐怖のほうがね先に立っちゃって。
だから、商売をするのだけれど、まずは
「思い切り自分の好きなことしてみよう」と。
でもね、こんなこと言うと笑われるかもしれませんけど、
ほんとうに大変な仕事ですからね。
24時間、365日。
もちろん、どの業界でも大変だと思うんですけど。
伊藤
最初は、ボールペン1本も、
全部、川上さんが選ばれたと聞きました。
川上
そうですね。ボールペン1本、
スプーン1本まで、最初は徹底していました。
柳宗理さんのプロダクトが好きだったので、
カトラリーをすべて柳さんで揃えたんですけれど、
‥‥あっという間になくなるんです(笑)。
伊藤
残念。
川上
で、次はイタリアのグッチーニの
プラスチックのカトラリー。
これはね。日本中からかき集めたぐらい
買ったと思うんですけど、
やっぱり、全部なくなりました。
伊藤
なくなっちゃうんですね。
川上
そう、なくなっちゃう。
だから、それは、しかたがない、諦めようと。
今は、普通になっていますね。
これが宿泊料金5万円のホテルだったら
徹底することもできるでしょうけれど、
1泊5400円からですから、さすがに頑張れないんです。
最初は、「玄関にコルビジェの
LC2(ソファ)を置こう」とか、考えましたよ。
伊藤
ホテルをつくるというのは、
きっと、おそろしくこまかいことの積み重ねですよね。
川上さんが実際に
図面を引かれるわけじゃないでしょうけれど。
川上
ええ、図面を引くわけではないです。
高知在住の建築家の方と、
インテリアデザイナーの方と協力して。
伊藤
川上さんの思いをちゃんと
形にしてくれる方がいらっしゃる。
川上
そうなんです。私はもう頭の中だけ。
その方たちのアイデアもあって、
3人で意気投合して、
「いいよね、これいいよね!」って
楽しく計画を進めました。
伊藤
きっと、予算と、夢と、現実の
折り合いをつけないといけないですよね。
川上
予算は予算で頭の隅に置いて、
でも、普通のホテルだったらここに予算をかける、
ということを、全部取っ払いました。
伊藤
例えばそれはどういうところですか。
川上
業務用の什器や家具って、ものすごく高いんです。
不特定多数のひとが使っても壊れないふうに
丈夫に作っているし、量産はしていないでしょうし、
業界自体が小さいゆえ、割高なんですね。
伊藤
業務用ならではの特性、いいところがある分、
高価なんですね。
川上
でも私は、業務用であることは優先しませんでした。
予算の中で、
「こっちのほうがカッコいいんじゃない?」
って思えば、家庭用の家具でも、
それを選びました。
「こういう場所で使ったら、壊れますよ」
みたいに言われたけれど。
たしかに、そのとき選んだイタリア家具の
樹脂製の椅子は、
どんどん折れていっちゃった。
伊藤
家庭に比べて、激しく使いますものね。
日にも当たるでしょうし。
川上
そこで2年前に今の白い椅子に変えたんですけど、
気に入ったものを探したら、
こんどは、業務用より高かったりして!
それでも、「だって素敵じゃない?」
「これカッコいいよね」というほうを選びました。
私の基準、全部、そうなんです。
伊藤
そうなんですよね、
もちろん長く持つのも大切なんですけど、
使っていて気分がいいものが、いいんですよね。
川上
客室のデスクの照明も、
最初は、ドイツ製のスタンドライトだったんです。
とても好きなデザインで。
ところがこれが、ハロゲン電球ゆえに、
すごく熱くなるものだから、
お客様の迷惑になるかもしれないということで、
数年前に取り換えました。
いまは、LED電球のペンダントライトになっています。
伊藤
ホテルをオープンして日数が経つうちに、
やっぱりこうだった、ああだったということが
出てきたんですね。
それでも「嫌じゃない」ものを選んでいらっしゃるのは、
すごいことだと思います。

版画、名作家具、IKEA。

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川上
私、李禹煥さん(*)の作品が好きなんです。
*李禹煥=リ・ウーファン。大韓民国生まれ。
 日本を拠点に、世界的に活動するアーティスト。
伊藤
私も持ってます。すごく、小っちゃい作品を。
ほんとに、こんな(指でかたちをつくって)、
こんなに小っちゃいんです。
川上
素敵ですよね。じつは松林さんの前に、
李さんの絵を、
セブンデイズホテルに掛けていたんです。
墨で、ピッピッて描かれている作品です。
いまも、ときどき掛けるんですが、
なにしろ抽象画でしょう? 
お客さんも、スタッフも、誰もがみんな、
「自分でも描けるよ」なんて言うのね。
まあ、みんな、そう言いながらも、
興味を持ってくれているということで、
反論はしないんですけれど(笑)。
でも、それがあることで、
すごくキーンとした静謐な世界観を、
この、20年近くなるホテルにも、
空気として、運んできてくれるんです。
やっぱり、すごいですよ。
今は、松林さんが、ポップで、
この梅雨時の鬱陶しい時期に、
ぱあっと発散させるような空気を
出してくれているわけですけれど。
伊藤
セブンデイズホテルのロビーには、
松林さんのカエルの絵が掛かっていましたね。
きっと、季節に応じて掛け替えを。
川上
そう! 今は梅雨どきだから、カエル。
伊藤
私が李禹煥さんの作品を買ったのは、
直島の美術館だったんですけれど、
そこのお客様はアートに興味のある人が多いわけです。
けれどもセブンデイズホテルにいらっしゃる人は、
かならずしもそうではありませんよね。
みんながみんなインテリアやアートに
興味があるわけではないし、
むしろ、気付かない人だっていると思いますが‥‥。
川上
そうですよ、もちろん。
出張のビジネスマンも多いですし、
観光に来た家族連れや友達同士、
いろんな世代のかたがお泊まりになります。
アートを見たくてセブンデイズホテルに泊まる、
という人は、多くないと思いますよ。
伊藤
それでも、意識してなくても目に入ってくる、
その気持ちよさは、伝わると思うんです。
川上
「意識してほしい」ということはまったくないんです。
ただ、さきほど言ったように、
日常に作品があるということを、
当たり前のように暮らすことが、すごく大事だと。
たとえばここのロビーの壁には、
高知出身の現代美術作家、浜田浄さんの作品がある。
もし、これがなかったら、殺風景だと思うんです。
きっとインスタにも載らないくらい殺風景!(笑)
でもこの作品がバーンとあることで、
このロビーの空気が、違ってくるんです。
伊藤
作品が先ですか。場所が先ですか。
つまり、作品に惚れて購入なさるのか、
この場所をどうにかしようと、作品を探すのか。
川上
もちろん、作品が先です。
伊藤
ですよね。
彫刻も増えましたね。
川上
そうですね。丸尾康弘さんという作家です。
クスノキを使った彫刻家なんですけど、
本館にはウェルカムボーイって私が呼んでいる、
大きな彫像があります。
伊藤
ここ、セブンデイズホテルプラスにも
ちいさなウエルカムボーイがいますね。
川上
そうそう。
伊藤
そして、ロビーの家具には、
アルネ・ヤコブセンのスワンチェアがある。
かわいいですよね。
こういった家具を選ぶのと、アートを選ぶのって、
きっと、同じ基準ですよね。
川上さんがひとりで選ばれるんですか?
川上
そうですね。
こういうことに関しては、私の独断です。
もう本当、独裁者と言われてます(笑)。
伊藤
いろんな作家さんのもの、
いろんな国のもの、多分あると思いますけど、
トーンが揃っているのは、それゆえですね。
川上
違和感、ないですか?
伊藤
全然、違和感なく。
川上
よかった。
伊藤
私も「weeksdays」の中で、
やりたくないことは絶対やらないし、
それを「ほぼ日」のみんなが尊重してくれる。
好きなものというのは大事ですよね。
そういう意味では私も独裁者(笑)?
川上
ものすごく考えているというより、
例えばIKEA(イケア)に行っても‥‥。
伊藤
部屋のマグカップがIKEAでしたね。
とてもかわいい。
川上
そうです、スウェーデンに行ったとき、
ホテルのレストランでイケアのマグカップを
山のように積んでるのを見たんですね。
もういっくらでも飲んでください、みたいな。
それが本当にね、ポップでかわいくて、
いいなあ、いいなあと思って。
伊藤
ビジネスホテルは、いろんなお客様が毎日使うから、
ある程度価格を抑えて、丈夫であることが、
デザインと同じくらい大事ですものね。
川上
安いのに、割れにくいんですよ。
素晴らしすぎて‥‥。
じつは、色をときどき変えてるんです。
白にしてみたり、グリーンにしてみたり。
ちょっと劣化してきたら、どんどん換えていきます。
安かろう悪かろうではなく、
いいものはいいですね。
そんなふうに、マグカップひとつにしても、
「こういう空間を作りたい!」と考えて、
何を置くか考えるのが、もう大好きなんです。
うっかり、よそのことにまで口出しをしちゃうので、
興奮した馬をなだめるみたいに、自分に対して
どうどう、どうどうって言うんですけど(笑)。
伊藤
(笑)

アートが救ってくれたもの。

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川上
私は、美術の勉強をしているわけでも何でもなくて、
美術館に行っても「最速」って言われるんですよ。
どんなに並んで入っても最速で出てくるって。
伊藤
私もです!
川上
もうバーッと見て、解説も読まず、
気に入った絵を見つけたら
もう1回引き返して見て、
心の中で「これ、お持ち帰り! お買い上げ!」
って考えるのが好きだからなんです。
気に入った作品だけを見て、ものすごく満足する。
伊藤
わかります。
アートは、お宅にも飾られていますか?
川上
はい、みんなが集まる部屋にも、
それぞれの部屋にも掛けています。
子育てをしてきた過程でも、
この作者はすごく偉い人だとかいうんじゃなくて、
当たり前のようにそこにあるようにしていました。
そうすると子どもたちは、
独立してそれぞれの家庭を持ったときに、
やはり当たり前のように
絵は掛けるものだと考えてくれるはずだと。
自分たちが気持ちを豊かに暮らすために
それは必要なものだと思ってくれるはずだと。
模様替えをするにしても、
「ここにこの絵を掛けるために、
こういうふうにする」とか、
「こういう絵が掛けたいんだ」とか、
そういうことを、ハードルをうんと低くして。
伊藤
セブンデイズホテルプラスに
滞在して改めて思ったことは、
「嫌なものがない」ということでした。
もちろん絵があって気持ちいいし、
ベッドの寝心地がいい、そういうプラスのことも
あるわけですが、
「嫌なもの」が、ないんです。
川上
そうですか! 嬉しいな。
伊藤
リーズナブルな宿泊料金を設定するため、
ビジネスホテルはいろいろな面で節約をして、
調度品などを考えていると思うんです。
そのなかで、セブンデイズホテルのようなところって、
ほかにあまりないような気がします。
ビジネスホテルには、
出張で泊まることが多いんですが、
壁が不思議な色だなとか、
使いづらい机だなとか、段差が多いとか、
なぜこの絵を飾っているんだろうとか、
すごく気になるんですよね。
個人的に行くホテル、
たとえばリゾートホテルなら
「好きなものがある」ことが
選ぶポイントになるんでしょうけれど、
ビジネスホテルは、利便性や価格で選びますよね。
そんななか「嫌なものがない」と感じられるのって、
実はすごいことじゃないかなって思います。
出張や観光で泊まるのに、バジェットを抑えたくて
ここを選んだのに、こんなに快適だと、
みんな、思っているんじゃないかな。
川上
ありがとうございます。
伊藤
嫌なものがなくって、しかも松林さんの絵がある。
部屋は、ごてごてしてない空間の中に、
ぽつんと松林さんの版画があることが、
すごくポイントになっていますよね。
あの版画があることで、
「わたしの帰る部屋」になる。
すごいなあと思いました。
川上さんは、松林さんの作品の、
どういうところが好きですか?
川上
松林さんの作品には、具象っぽいものもあれば、
抽象的なものもあるんですけど、
私、線が好きなんです。
彼の描く線が。
伊藤
線! 昨日、スケッチブックを
見せていただいたんですけど、すごかったです。
川上
パッと線を1本描いただけで、
その線の力がわかるんです。
今、ロビーの、道路に面した側は、
ガラスにフィルムを貼ってるんですけど、
いちど、アクシデントがあって、
ガラスが大きく割れてしまったんですね。
幸い、けが人はいなかったんですけれど、
その日に泊まっているお客様もいるし、
その日にチェックインするお客様だっているわけです。
なのに、ホテルのロビーのガラスが
大きく壊れているのは、いけませんよね。
どうしたらいいかわからなくなって、
私は建設業者に連絡をするのとほぼ同時に
松林さんに電話をかけたんです。
「松林さん、すぐ来てください。助けてください」って。
伊藤
えっ? どういうことですか?
川上
建設会社の人に、
「今日中ですよ。今日中にパネルを貼ってください。
ブルーシートじゃダメなんです」とお願いし、
翌日に、松林さんに来てもらって、
そこにペイントをしてもらいました。
伊藤
すごい。
トラブルを解決したのは、アートだったんですね。
川上
そうなんです。通りがかる人も
「アートイベントですか?」って。
私も「そうです。素敵でしょう?」って(笑)。
それが、ものすごくよかったんですよ。
私も口を出してしまって、
「ここにもう1本、線があるといいんじゃない」
なんて、アーティストに向かって
何言ってるんだろうって思いながら(笑)。
伊藤
松林さんもすごく楽しかったんじゃないですか。
事故がきっかけですから、それを楽しいといったら
ちょっと失礼かもしれませんが‥‥。
川上
そのあと、あたらしいガラスを入れるために
パネルは撤去するんですが、
素晴らし過ぎて、壊したくないくらいでした。
本当に力を貸してくださった。
伊藤
具体的には、どんな絵だったんですか?
川上
これがその当時の写真です。
抽象画のような、具象画のような、
これぞ松林さん、という絵でしたよ。
伊藤
わぁ! 自由で、大胆で、
のびのびとしていますね。
川上
最初、どうしたかというとね、
白いパネルに線をサッと描いたんです。
その線、いっぽんが、もう素晴らしくて!
そして、こういう絵って、
なにをもって完成とするかは、
本人にしかわからないところがあるんですが、
普通はもっと描きたがるんじゃないかと思うところを、
えいやっと、きっぱり終わらせる、みたいなね。
伊藤
力があるんですね。
川上
ものすごく、よかったですよ。もう本当によかった。
そのあと、仮設のパネルをいったん壊して、
ガラスを入れるための工事をするために、
外側を、真っ白の丈夫で大きなテントで覆うのを見て、
松林さん、そのテントにも描こうって。
そうすると、前を通る人たちは、
事故があったことも気がつかないし、
工事のあいだ、絵がどんどん変化していくから、
「アートイベントだ!」と思ってくださった。
最後には、「これで完結ですか?」みたいな(笑)。
「そうなんですよ、素敵でしょ?」と、
そんなストーリーができあがったんです。
伊藤
すごいですね。
トラブルを解決するためのアイデアが、
アートだったって。
川上
ホテルにとって、事故というのは、
ものすごいマイナスな要因なんですが、
松林さんのおかげで、アートに救われました。
もう本当に、ピンチがチャンス! 
みたいな気分でしたよ。
メンタル的にテンション下がりそうで、
「どうしてくれるんだ」と、
事故を起こした人を責めそうなところを、
「しかたがない。起こったことはしかたない。
誰も怪我をせず、よかった。
じゃ、次に行きましょう!」
みたいな感じで(笑)。
伊藤
なるほど。その切り替え方をする川上さんに、
高知の女の人の気質を感じます。
川上
あら、そうですか?
だって、高知の女ですから(笑)!
それは例えばの出来事なんですけど、
アートって、それぐらい力を出せるわけです。
それがアートなんです。作品の力。
伊藤
今、考えてるのは、私が何か言葉を伝えて、
松林誠さんに描いてもらうのはどうかな? って。
交換日記のようなことをしながら、
つくっていけたらって。
川上
きっと、得意ですよ、松林さん。
彼に言葉を書いてもらうのもいいですよ。
大橋歩さんにも同じことを感じるんですが、
書かれる字が、すでに、アートなんです。
伊藤
そうなんですよね。
川上
松林さんも、一言書くその文字が、すごく素敵。
伊藤
スケッチブックに書いてある文字も全部素敵でした。
字なんだけど絵というか、
言葉の意味を持っているけれど、
絵の一部としての線のような。
あのスケッチブック、ずっと見ていたかった!
川上
客室に飾ってあるような小さい作品は、
場所を選ばないのもいいですよね。
大きな空間にポンとあってもかわいいし、
逆に、お手洗いのような
狭小な空間に飾るのもいいですよ。
セブンデイズホテルがオープンしたとき、
高知市内のアマチュアミュージシャンのみなさんと
記念にCDを作ったんです。
そのジャケットに、松林さんの版画を使ったんですけど、
その小ささが、すごく素敵でしたよ。

それがあるだけで。

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伊藤
高知を訪ねると、会いたい人がおおぜいいて、
短い日程では、なかなかそれもかなわなくて‥‥。
今回は、映画監督の安藤モモ子さんに会いました。
モモ子さんとお話ししたことは、いずれ
「weeksdays」のコンテンツとして
紹介しようと思っています。
川上
わぁ、とても楽しみです。
伊藤
そしてもうひとりが、アーティストの松林誠さん。
川上
松林さん! 私も、ずっと、ファンなんですよ。
伊藤
そうですよね!
私も松林さんの作品が大好きで、
部屋にも飾っているんです。
まだ先のことになると思いますが、
「weeksdays」でご一緒できないかなと、
相談をしてきたところなんですよ。


川上
もう、ぜひ! とても楽しみ。
伊藤
そして、今日やっと、ゆっくりお話する時間が持てて、
すごく嬉しく思っています、川上さん。
川上
あら!(笑) ありがとうございます。
伊藤
川上さんが立ち上げたこのセブンデイズホテルには、
松林さんのアートが至るところに飾られていますね。
ロビーや踊り場はもちろん。全室に?


川上
そうなんです。
伊藤
松林さんのアートがあることで、
空間がより、とくべつなものになっている気がします。
ビジネスホテルなのに、なんだか、あたたかい。
また泊まりに来よう! と思えるんです。
それで、ぜひ、川上さんに、
お話をうかがいたいなって。
こんなふうに、アートのある空間って、
いいですよね。
川上
ありがとうございます。
私、ずいぶん前から、
松林さんを絶賛しているんです。
ホテルをつくるとき、最初は、
いわゆるポスターを飾ろうかなと考えたんですよ。
けれども印刷物って意外と価格が高い。
額に入れるとさらに値段が張るわけです。
もちろんポスターにはポスターのよさもあるんですけど、
やっぱり「本物の」版画がいいなあと思いました。
版画っていうのは、作家や、
作家の認めた摺師が手で完成させるわけで、
その力はもうまったくポスターと違います。
伊藤
そうですよね。
川上
周りを見ると、インテリアに興味のある若い人たちも、
「本物を飾る」ということについて、
あんがいピンと来ていないように思います。
今、そういう本、実例も、たくさん出てるのにね。
それに、意外と、日常では、本当にプロの、
その人ならではの作風をもった、
しかも普遍性を兼ね備えた人の作品を目にしていない。
流行りとか、今こんなのが人気よねとか、
そういうんじゃなくて、
もうずっと力がある作品というものに。
伊藤
だったら、セブンデイズホテルで
見せてあげたいと?
川上
そう。いっぽうでね、「オリジナル」と言いながら、
私には魅力だと感じられないものが、
けっこうな値段で売られていたりもします。
本当、松林さんのあの力、
ああいうものがどうしてもっと一般に
伝わらないんだろう? ということを思っていて。
伊藤
きっかけが、ないのかな。
川上
そう! なかなかきっかけがない。
そういうのを手に入れるきっかけは、
たとえば個展にこちらから行かないと。
でも、個展に行くという、その日常が、ないんです。
伊藤
大きい美術展だったら、
北斎とか、若冲とか、
フェルメールとか、ゴッホとか、
長い行列ができるのがニュースになったりしますね。
でもそれはもう「向こうの世界のもの」で、
自分の家に持ってこようなんて思わない。
川上
ほんとに、そうね。
伊藤
でも私、思うんですけど、
たとえばこの椅子はウェグナーだとか、
私たちもいろんな建築家や
家具デザイナーを知るようになって、
家の中がオシャレに、ずいぶん豊かになった。
バジェットを抑えても、
おしゃれな家具が手に入る時代にもなりましたし。
川上
ええ、そうですね。
伊藤
だから、「あともうちょっと」だと思うんです。
川上
そうなんです。そこです。
もう本当にそうだと思います。
伊藤
部屋の中が整いました、
やっぱり自分のお気に入りのものを
一つ一つ揃えるのが気持ちいい、
早く家に帰りたい、みたいな感覚を
持つようになったのだから、
もうひとつ、
「それがあるだけで空気を変えてくれる」
みたいな存在があったら、って。
それがアートじゃないかなって。
川上
気づいてる人はたくさんいると思うんですけど、
目に触れるチャンスがないんですよね。
投資だからアートを買う、
という人はいるでしょうけれど。
もちろん、それを否定するわけではないけれど、
そういう場所からは遠いところにあるような
松林さんのようなアーティストがいることに、
気付いてほしいなって思うんです。
伊藤
いわゆるアートの市場とは別のところで
活躍なさっている。
川上
松林さんの作品は、私、20年以上前に感激して、
その感動はいまも続いていますし、
当時の作品が、いまも、色あせない。
力がある。
すごいことだと思うんですよ。
そして、「買える値段」であることも。
伊藤
本物がそばにあるって
すごいことですよね。
川上
小さい子どもたちにとってもね。
生まれたときから触れてるものが、
そういう作品であることの素晴らしさ。
──
今おふたりの話を聞いていて、
長い闘病の末、亡くなった友人のことを思い出しました。
彼はアートが好きで、近現代の写真や版画、
ドローイングなんかを買い集めていました。
もともと好きだったんですが、
病気がわかってから、さらに、まめに買っていた。
自宅で療養する時間が長くなって、
寝ることが多くなっても、奥さんに、
「こういうのがあるんだよ。買っていいかな」って。
そして、亡くなってからわかったのは、
コレクションといえるぐらい、
けっこうな数の作品があって、
すばらしいものばかりだったんです。
みなぎるような力があって。
もしかしたら彼が闘病生活で必要としてたものって、
そのアートの力だったのかもしれないと、
今、理解できました。
たぶん、ポスターじゃ、ダメだったんですね。
川上
きっと、本物じゃないと、いけなかったんですね。

心の余白がうみだすもの。

未分類

伊藤
服づくりはもちろん、
コレクションブックをつくるとか、
そういうアートディレクションも、全部サヤカさんが?
サヤカ
そうです。
実は、昨シーズンまで、判断が遅かったっていうか、
迷いもあったりとかして、忙しい思いをしていたんです。
でも今シーズンは暇になって、びっくりして(笑)。
伊藤
えっ、どういうこと?
サヤカ
こんなことは今までなかったので、
なんでだろう? と思ったら、
信頼できる、頼る人ができたんですね。
セールス、PR、パタンナー、縫製してくれる人、
そこがうまく回ったって初めて思えたのが今シーズン。
それから、自分の中で、ジャッジの基準とか速さとか、
それが整理できたように思います。
そうしたら、少し暇ができた。
‥‥っていうとあれなんですけど、
時間に余裕ができたんですよ。
伊藤
それはとっても大事なことですよ。
サヤカ
そうですね。それまで必死で来たんですけど、
「あぁ、よかった」と思って。
伊藤
自転車の立ちこぎをしていたのが、
やっと、自分のペースで。
サヤカ
情景を見ながら
走れるようになったみたいな感じです。
伊藤
でも、そうしたらそうしたで、
つくるものに、
だんだんと変化が出てくるんじゃないですか。
サヤカ
そうなんです。今まで立ちこぎだったので、
糸が張り詰めた感じでつくっていたんですよね。
それはそれで、生まれるものもあるんですけど、
今、ちょっとゆるめたものがつくりたいなぁって
思うようになって。
年齢的なこともあるのかな。今、35なんですけど。
伊藤
えぇっ? まだそんなに若いの?!
サヤカ
若いのかは、わからないですよ(笑)。
伊藤
私のほうがうんと年上なのに、
すごく成熟していて、
言葉も、たたずまいも、
堂々としてるから、驚いちゃった。
サヤカ
ありがとうございます。
20代で、なんとなく光が見えたくらいの時に
ブランドを立ち上げたので、
きっと、まだ、まとまっていなかったんでしょうね。
でも、今回のコラボレーションの中で
すごく考えることがあって、
本当にありがたかったんです。
今までは「人と違うものをつくろう」
「人と違う個性を出したい」っていう
アプローチだったんですけれど、
それが、ちょっとシフトしていった。
ちょうど、張り詰めていた糸がゆるんで、
余裕ができてきた時でしたから、
より自分の好きなものの
輪郭が見えてきたっていうか、
自分が本質的に好きなものをつくりたいと
思っていた時だったんです。
伊藤
そんなタイミングで、
私たちがお声掛けをしたんですね。
サヤカ
そのことを、直感的に感じていたけれど、
まだ言葉にはできていなかった時だったので、
まさこさんと話していく中で、
自分が感じていたことが、
具体的なテーマとして出てきたというか。
コラボレーションなので、
一方的にどちらかがいうものではなくて。
自分だけで決めることもしたくなかった。
お互いに好きなもので共通点を見つけて、
自分1人ではできないことがやりたいなぁと思ったし、
全然違うアプローチでやりたいと思ったし。
それで、素材を見ていただきながら、
「これ、私は好きだけど、
まさこさんは好きなのかな」
とか、そういうところを
探らせてもらったという感じなんです。
話をしていく中で、
「シンプルなものをつくりたいんですよね」って、
私、言ったと思うんですね。
すると、すぐにまさこさんも、
「私もシンプルなものが好き!」って。
「ほぼ日」の皆さんも「いいですね!」って
言ってくれて。
伊藤
まず、シャツについて、そう話しましたね。
シンプルなもの。
サヤカ
自分のコレクションをつくる時って、
コレクションのまとまりというか、
60の作品で1つの大きな絵を描く、
みたいな感覚でつくっているので、
雰囲気に合わないものは入れなかったりするんですね。
だから、好きなものでも、シンプルなものって、
出さないことがある。
でも、こういったプロジェクトで、
小さい単位でつくるときは、
考え方を変えたいなっていうのもあって。
だからコレクションでは
今までできていなかった、
もっと普通にシンプルな服が欲しいなって思って。
伊藤
そうそう、その時に、
日本のバイヤーさんには、
他と違うもの、
そのお店ならではの特別なものを
求められているっていう話をしましたね。
でも「weeksdays」は、
「やりたいことをやってください」みたいな感じで、
サヤカ
そんなふうにすごく気持ちのいい球を投げてくださって。
結局、自分が好きなものしかつくれないわけですし。
それで気持ちがスッとして、
「じゃあ、行ってきます!」みたいな(笑)。
伊藤
(笑)その次に日本で会った時、
サヤカさんが絵を描いてきてくださった。
サヤカ
そうですね。
シャツは、4つのパターンを
提案させてもらったんですけど、
まさこさんは、すぐに、
一番シンプルなものを、
「これ!」って、選んでくださって(笑)。
伊藤
私は、いつもそうなんだけれど、
もうあっという間に打合せが終わる。
「これがいい!」って。
サヤカ
気持ちよかったです。
本当に好きなものを、
っておっしゃっているだけあって、
判断のブレないところが、
自分もすごく勉強になったんですよ。
スケジュールにしても、「weeksdays」は
全然違うつくり方をしていますよね。
本当に好きなものをつくるために、
「できた時が売るときです」って。
伊藤
そう。みんながいいと思ったものが、
形になった時が売る時、って思ってます。
でも、それを言うと、
アパレルの人はすごくびっくりして。
サヤカ
びっくりしますよ(笑)。
こうじゃなきゃいけない、
ということがない。
ものづくりにおける、優先順位がちがうんですよね。
それよりも、かけなきゃいけない時間をかけて、
できた時がデリバリー(販売)。
それも気持ちよかったです。
伊藤
今年どうしてもこれを着たい、じゃなくて、
来年も着るし、長く好きでいたい。
そういう服をつくりたいからですよ。
サヤカさんの服って、
仁平さんが着ているのを見ると、
「これ、初期のものですよ」という服を今着ても、
全然古くなっていない。
流行とは関係がないし、
テイストを残しながらも、同じではなく、
ちょっとずつ変わっていくわけですよね。
サヤカ
はい。ずっと同じでいたいわけではなく、
変わっていきたいとは思っていて、
少しずつアップデートしている、という
気持ちでいるんです。
普遍性‥‥っていうと、
ちょっと自分の中では言葉が違って、
自分が変わった時にアジャストできるような、
器の広さをもつというか、
余白を残してつくりたい、
みたいなところがあって。
シンプルなものをつくる時でも。
伊藤
ああ、サヤカさん、
ポートレートも素敵だと思ったけれど、
言葉もいい。もう全部いい。
すごい。
サヤカ
本当ですか(笑)。嬉しいな。
でも、言葉はむずかしくて、
そもそも、言葉で表現するより、
潜在意識で感じていることを
形で表現するっていう立場なので、
言葉で表現することには
すごくチャレンジを感じています。
自分の表現と心っていうのは
つながっていると思っているんですけど、
表現から言葉への置き換えっていうのが、
すごくチャレンジに感じていて。
でも言葉も表現のひとつだし、
自分に合った言葉を
ちょっとずつでも選べるようになっていくと
いいなとは思っています。
まだ勉強中ですね。むずかしい、言葉は。
一緒にコラボレーションをさせてもらって、
つくるものがクリアになったら、
少し言葉もクリアになったなって思うんですけど。
伊藤
全然大丈夫ですよ。
たまに言葉が過ぎる人もいてね、
そこは難しいですよね。
サヤカ
そうなんですよ。自分のコレクションについて、
プレスリリースに言葉を書くわけですが、
「過ぎる」ことがあるんです。
それが嫌になって。
飾りすぎているのは、本当に気持ちが悪くって。
伊藤
急にドラマチックにもしたくないしね。
私は、サヤカさんは、
いまのままでもじゅうぶんだと思うけれど、
スタッフに恵まれているとおっしゃったから、
サヤカさんが言ったことをそのまま、
それ以上でもそれ以下でもなく
まとめてくれる人に出会えると思いますよ。
サヤカ
そうですね。
いっぽうで「自分で書きたい」という気持ちもあって。
写真家の友達と、言葉は難しいという話をしていたら、
「アーティストって、みんな言葉を持ってるよ」って。
たしかにそうだなと思ったんです。
それがまだ自分は
見つかっていないだけなのかもしれません。
伊藤
今回、ずいぶんたくさん会話を重ねて、
シャツと、シャツドレスができあがりましたね。
よかった。
サヤカ
会話の中から生まれてきましたね。
私は、シンプルなシャツが欲しいと思っていたけれど、
自分のコレクションの中ではつくれなかったんです。
たまたま、まさこさんと会う少し前に、
すごく信頼してる男性のパタンナーさんが、
「シャツを作りませんか」って言ってくれていたんです。
「すっごくいいシャツ作る工場があるんですよ」と。
で、そのシャツを見せていただいたんです。
それで「すごくきれいだから、ここで作りたい」
っていう話をしていました。
それで、タイミングと条件が合って、
今回シャツとシャツドレスをつくらせてもらいました。
女性もので、ディテールに力を入れたシャツが
あんまりないなって思っていて。
とくにシンプルなシャツは。
伊藤
うんうんうん。
サヤカ
女性のファッションって、
いわゆる「ファッション性」を求めるような流れが
たぶん全体的にあるんですよね。
ディテールよりも、ざっくりした、
大枠の見た目みたいなところが、
たぶん世の中のチェックポイントなのかなって。
それだけに、本当におもしろいですよ、
ディテールのデザインって。
ステッチの幅がこのくらいがいいとか。
伊藤
襟はこうだとか、
その芯はこっちがいいとか、話しましたね。
サンプルも何度もつくってくださって。
サヤカ
やっぱり一回作ってみてわかるところもあるので。
今回の素材は、コットンの産地である
浜松で、いちからつくったんです。
今、短サイクルでつくるものが増えているので、
その短サイクルに対応するために、
生地屋さんがストックを積んで、
それをアパレルが買うことが多いんですね。
そうすることで、生地の生産期間が短縮できるし、
追加対応もできる。
けれども世の中に出回るものは
似たり寄ったりになるわけですよね。
今回、本当に好きなものっていうことで
時間を頂いたので、いちからつくることができました。
ポプリンっていう、
高密度に織られている素材なんですけど、
そのままだと女性にはすこし硬い。
そこを、タンブラー加工といって、
生地をやわらかくする加工をかけているので、
着た時から、少し柔らかさがあるような、
女性らしさがあるような素材ができました。
そして縫製は、シャツ専門の工場です。
本当にシャツだけつくっているので、
ひと針ひと針がしっかりしている。
すごく詳しいことを言うと、
針目が3センチ間に10から15針とかで
縫われているものが一般には多いんですけど、
20から21針、入っているんですね。
かなり細かいんです。
この細かい針をきれいに縫うっていうことは、
やっぱり熟練してる人じゃないとできなくて。
伊藤
つれる(糸目で生地にしわがよる)問題も
出てきちゃうんですよね。
サヤカ
そうなんです。細かいと、つれやすいし、
単純に時間がかかる。
でも、この人だったら、
すごくいいものを作ってくれるって感じたので、
ぜひにとお願いしています。
襟の芯も、フラシ芯といって、
接着しないで加工をしています。
接着芯だと、生地にピタッと付くけれど、
洗濯すると、生地の収縮率ゆえに、
水泡みたいに、ポコポコしちゃうんですよね。
でも、フラシ芯っていうのは、
長い間で見た時に、表情の変化が少なく、
きれいに保てるんですよ。
ただ、縫うのがむずかしくて、時間がかかる。
だから女性ものでは、ないことはないんですけど、
一般的には接着芯を使うことが多い。
今回は、半フラシ芯っていうのを使っていて、
一回洗濯したら、剥がれるので、
しわや、ぽこぽこした感じにならないんです。
伊藤
なんてこまやかな気遣い。
サヤカ
そうですね。うんと細かいことですね。
伊藤
女性もののシャツでは、
あまり聞かない言葉ですものね。
メンズって、形にはそんなに
バリエーションがないけれど、
そういうところに、すごく気遣いがある。
サヤカ
そうですよね。
メンズの洋服って、それがおもしろいな。
でも、女性もののおもしろさも捨てがたくて。
伊藤
秋には、さらにふたつ、
「weeksdays」のためのアイテムを
用意してくださっているんですよね。
それも楽しみです。
今日は、ほんとうにありがとうございました。
サヤカ
こちらこそ。またニューヨークに、
遊びにいらしてくださいね。

ベッドに並べての展示会。

未分類

伊藤
思い切ってつくってみた、ファーストコレクション。
人に見せるのに勇気が要ったということですが、
じっさいに見てもらって、どうでしたか?
サヤカ
ちょうど年始パーティーの季節で、
わが家でもお客様を招くことが多かったなか、
ニューヨーク在住の編集者でライターの
仁平綾さんが来てくれたんですよ。
まず彼女に、
「こんなものをつくったんだけども、どうしようかな」
と、フワッとした感じでお見せしたら、
「(これを世の中に)出しなよ!」
みたいに、強く言ってくれて。
伊藤
へぇ、そうなんだ!
サヤカ
「出しなよ。私、全部買うよ!」って。
伊藤
なんて力のある言葉でしょう。
サヤカ
それで「やってみようかな」と思えたんです。
自分の中では、つくったのはいいけれど、
どのタイミングで出すのかっていう踏ん切りは、
まだ100パーセント、ついていなかったので。
伊藤
夫が「やりなよ」と言ってくれた。
でも夫が着るわけじゃないし、そんなときに、
仁平さんが「全部買うよ、着たい」
って言ってくれた。それは大きいですよね。
サヤカ
そうですね、実際のものを見て、
言ってくださったわけですから。
伊藤
仁平さんもほんとうにピンと来たんでしょう、
あの人、絶対、嘘は言わない人だから。
今だって、ほとんどのワードローブが、
サヤカ デイヴィスなんですもの。
仁平さんとは長いおつきあいだったんですか?
サヤカ
いえ、その日、初めて会いました。
共通の友人がいたので、お招きしたんです。
たくさんの友人を招いてのパーティーで、
ニューヨークにいると、そういうことが多くて。
信頼してる友達の友達は信頼できるっていうか、
最初から打ち解けられるようなところがありました。
それでベッドに服を並べて、お見せしたんです。
伊藤
すごい、ベッドの上で展示会!
その時、周りの人の反応は?
サヤカ
周りの人も、反応はしてくれたけど、
仁平さんほどではなかったです。
伊藤
「全部買う」に勝る言葉はないですよ。
サヤカ
それでファーストコレクションを、
小さいギャラリーを借りて開きました。
洋服は6点だけなので、壁に並べて、
アートみたいな感じで展示をして。
お客さんもそんなに呼べなかったんですが、
5店舗くらい「いいね」って言ってくれた所があって。
でも、その5店舗の内3店舗は
私が直接、営業に行ったんですけれど。
伊藤
持ち込みで?
サヤカ
はい。トランクに、つくった服を詰めて、
自分も着て、ニューヨークを行脚しました。
今はもうないお店ですが、
ジョイナリーっていうお店に
ガラガラとトランクを持って行った時は、
お店の人に話しかけられなくて、
グルグルと店内を回って、様子を伺って。
伊藤
えっ、アポなし、ということ?
サヤカ
そうなんです。アポなしで突撃。
というのも、好きなお店だったから、
知ってはいるけれど、
バイヤーさんの連絡先を知らなかったんです。
そうしたら、そのうち店員さんが気がついて、
「その洋服どこの?」って。
「私がつくったんですよ。実は、これ、
私のファーストコレクションなんです。
今日、持ってきてみました」って。
伊藤
すごーい!
サヤカ
そうしたら、「そうなんだ。すごく興味がある」
って言ってくれました。
「でも、ちょっと今、見られる時間がないから、
また日を改めて来てもらえる?」
って言ってもらって。
そこは個人でやっているような
ブティックだったんですけど、
感動したのは、仁平さんみたいな感じで、
ブランド名なんて誰も知らないのに、
いいと思ったものはいいと、
自分の立場で評価してくれたことです。
伊藤
飛び込んできた、無名の、東洋人の女の子に。
ほかのお店はどうでしたか。
サヤカ
何シーズンも手紙を書いて、
足で運んで持って行って、
e-mailもして、っていうことを続け、
やっと買い付けをしてもらえたお店もあります。
「ファーストシーズンだけじゃわからないから、
何シーズンか見てみたい」って、
様子を見ていてくれたんですね。
それでも「君の手紙はずっと読んでたよ」
って言ってくれたりしたんですよ。
伊藤
へぇ! 機が熟して、
声がかかったブティックもあるんですね。
サヤカ
そうですね。すごくうれしかったです。
e-mailはたくさん来るだろうし、
ちょっと目立たないだろうな、
ちゃんと伝わることがしたいなと思って書いた手紙を、
見てくれてたんだなって。
自分の好きなお店の、素敵だなと思う
バイヤーさんは、対応が素晴らしかった。
電話ひとつ、すごく丁寧で、
優しいなぁと思いました。
そういうふうにして、ちょっとずつ
広がっていったんです。
伊藤
日本では、どうやって?
ニューヨークでじわじわ広がったのを、
日本のバイヤーさんが見たんですか。
サヤカ
最初の3年くらいは、ニューヨークで
個人的に展示会を開いていたんですけど、
手が回らなくなって、
パートナーが欲しいなぁと思っていた頃、
当時NYのマルチレーベルショールーム(代理店)で
セールスとして働いていた、日本人の友人が、
ブランドを気に入ってくれて、
「日本でも売らせてほしい」と。
「この人だったら、一緒に広げてくれるな」と思って、
扱ってもらうことになったんです。
複数のブランドを同時に扱って、
一斉に展示会を開く、
そういうタイプの広いショールームです。
そこでやるようになって、
自分でリーチできなかったお客さん、
そのショールーム自身が持ってるお客さんにも
見ていただけるチャンスが増えました。
それが2015SS(春夏)のことでした。
伊藤
最初のコレクションには
ジュエリーがあったということですが、
いまもつくっているんですか?
サヤカ
実は、ジュエリーは、
今、お休みしてるんですけど、
趣味で続けています。
閃きで、やろうかなと思って始めたことが、
自分の表現方法に合っていた。
ジュエリーをつくることで
バランスを取っていたようなところもあります。
またやりたいな、とは思っています。
伊藤
要所要所で「閃く」んですね、サヤカさん。
サヤカ
そうですね。ピンと来る(笑)。
伊藤
岐路に立った時、「こっち!」って判断する時、
そういうカンに従っている?
サヤカ
そうですね、動物的カンで(笑)。
表現者としては、そこの直観を
強くしてたほうがいいと思っていて、
意識的にそういうふうに
決定しているところもあるんです。
伊藤
いろいろ調べて、
「こういう形をつくったら売れるだろう」とか、
そういうことは全然考えない?
サヤカ
そういうことは、本当にもう、
まったく、考えません。
そんなことをしたら、気持ちが悪くなりますね。
そういうつくり方は自分には合わないです。
意味を感じないです。
伊藤
本当に好きなものをつくる。
サヤカ
そうですね、本当に。
たくさんの人が関わって、
お客様も増えてきたりすると、
それぞれの視点や目標があるから、
いろんな意見を頂くんですよね。
結局自分が決めることなので、
それに左右されなくてもいいんですけど、
声が大きくなってくることで、
集中できない時期があったんです。
だから、意識的に、
ちゃんと集中していきたいなぁと思っていて。
伊藤
私が「weeksdays」で
サヤカさんといっしょに服をつくりたい、
と言いだしてから、
時間をかけてたくさん話して、
考えていきましたよね。
日本で「やりましょう」となって、
ニューヨークでサヤカさんから、
「どんなものが好きですか」と、
たくさんインタビューを受けて。
サヤカ
そうでしたね。
伊藤
その時、私からは、
サヤカさんに私がつくりたいものを
つくってもらうんじゃなくて、
サヤカさんがつくりたいものを
提案してほしいと言いました。
私は紹介をする立場ですが、
自分が着たいと思わないと、
みんなに「着て」って言えない。
だからサヤカさんのつくるものなら大丈夫、
と、そこは安心していたんです。
サヤカ
ニューヨークでは生地を見ていただきましたね。
伊藤
そうそう。
「これ好き!」とか
「やっぱり?」みたいな。
意見を無理に通すのではなく、
「でしょう?」みたいな感じでしたね。
あの時、ブルックリンで
早めのお昼の時間に待ち合わせをして、
パンケーキを食べて、ちょっと歩いて、
古道具屋を見て、食材店で買い物をして、
サヤカさんのスタジオに行って‥‥。
あれは、すごく意味のある時間でした。
サヤカ
うれしいです。
伊藤
この場所で、この服はできてるんだ、って、
肌で感じました。
サヤカさんのアトリエは、
ブルックリンの運河沿いにありましたね。
サヤカ
あのあたりはGOWANUS(ゴワナス)というんです。
お食事した所がキャロルガーデンという、
もともと、イタリアンコミュニティで、
かなり発展しているおしゃれな所なんですが、
ゴワナスは、まだ発展しきれていない、
けれどもアーティストの
コミュニティみたいな場所になっています。
毎年10月に、ARTS GOWANUSという
非営利団体が主宰する
Gowanus Open Studiosっていう企画があって、
ふだん事務所にしているようなアトリエも
その期間中はオープンスタジオにして、
みんなが作品を買ったり、見たりできるっていう
イベントもあるくらい、
アートのコミュニティができているんです。
私も、そういう空気を感じて、
ゴワナスにアトリエを構えました。
伊藤
その時もピンと来た?
サヤカ
その時もピンと来ましたね!
伊藤
古い建物のなかを区分けして、
アトリエが並んでいましたね。
サヤカ
ビル内にも友達が多くって、
ドキュメンタリーの映画監督とか、
グラフィックデザイナー、家具のデザイナー、
ジュエリーデザイナー‥‥。
伊藤
そこだけで、いろいろなことができちゃう。
サヤカ
実際にそういうコラボレーションを
したことがあるんですけど、
すごくおもしろいですよ。
伊藤
サヤカさんのアトリエも、
ルームシェアをしていましたね。
サヤカ
伊藤さんにいらしていただいたときから、
仲間が増えて、
今は、私と、ニットデザイナーのコンサルタント、
インテリアデザイナーの3人で使っています。
伊藤
サヤカさんの仕事は、1から全部、ひとりで?
サヤカ
そうですね。ただ、パターンを引くことや、
サンプル製作などは、外部の人にお願いしています。

ニューヨークだからできたこと。

未分類

伊藤
私がはじめてサヤカさんの服に出会ったのは、
2013年の秋のニューヨークでした。
友達で、編集・ライターの仁平綾さんに、
展示会に連れて行ってもらったんです。
サヤカ
2014SS(春夏)のコレクションを
ごらんいただいたんですよね。
伊藤
彼女の着ていたワンピースがとても素敵で、
「それ、どこの?」って訊いたら、
サヤカ デイヴィスというブランドで、
日本人女性がやっているんだよって。
仁平さんは、服の好みがシンプルで、
ワードローブが多いほうではないと思うんですが、
家のクローゼットのほとんどが
サヤカさんの服だったんですよ。
それで、「ちょうど展示会をやってるよ、行こうよ」
と誘ってもらったんです。
彼女はサヤカさんの服が
ほんとうによく似合っていて、
いっしょに街を歩くと、
「その服いいわね!」って言われたり、
スーパーマーケットのレジの人から、
「まあ、あなたがここでいちばんオシャレよ!」
なんて褒められたりしていて。
サヤカ
わぁ、嬉しいです。
伊藤
ニューヨークの人って、知らない人でも、
「これ、どこで買ったの?」とか、
「いいね」とか、普通に言ってくださる。
サヤカ
素直ですよね。
人のことを認めるのも、すごく。
伊藤
でもね、私も、日本なのに、
聞かれたんですよ、駅のホームで!
サヤカ
へぇ! 日本でもそんなことが。
伊藤
サヤカさんは、ニューヨークを拠点にし、
現地で展示会を開き、日本でも開き、
というスタイルでお仕事をなさっていますが、
さかのぼると、いつからなんですか。
サヤカさんの歴史、少し教えていただけたら。
サヤカ
ブランドを立ち上げたのは、
2013年の秋冬シーズンなんです。
12年に仕込みをして、
13年の2月にリリースしました。
経歴を言うと、
文化服装学院でファッションの勉強をし、
ニットデザイナーとして
日本の企業で働いていたんです。
けれどもずっと海外に行きたいと思っていて。
英語を勉強したいと考えていたんです。
伊藤
それで、ニューヨークへ?
サヤカ
はい。ニューヨークって、
行ったこともなかったんですけど、
「ニューヨーク、行こうか!」って(笑)。
伊藤
ピンと来たんですね。
サヤカ
はい。直観で動いたほうがいい、って
いつも思っているので、
語学留学をしようと決めました。
日本で5年勤め、ひと段落だったのもあって、
思い切って渡米しました。
最初は、語学留学を1年終えたら帰ろうと
考えていたんですけれど、
その1年の間に、ニューヨークで
ファッションに携わることが
できたらいいなって思い始めたんです。
それで、ユナイテッドバンブー
(United Bamboo)という憧れていたブランドで
インターンをさせてもらいました。
するとビザもサポートしてもらえることになって、
すごく働き方が自分に合っていたんでしょうね、
4年働きました。
渡米したのが2009年でしたから、
2012年までですね。
伊藤
働き方が合っているっていうのは、
具体的にはどういうことだったんですか。
サヤカ
ニューヨークに行って、自分の表現が
自由になったなぁと思ったんです。
外のことをシャットダウンして、
集中のできる環境だなって。
もちろん、ニューヨークにもいろんなブランドがあり、
マスに向けたブランドもあるし、
もうちょっと絞った世界観のブランドもあるので、
どこに関わるかにもよるんですけれど。
伊藤
さっき、「何かを考える時、もしかして、
英語になってるの? それとも日本語?」
みたいな質問をしたら、
「バシッと言いたい時は、英語のほうが」って。
サヤカ
そうですね、表現がしやすいです。
たぶん、そっちのほうが合ってるんでしょうね。
多様性を尊重するニューヨークは、
アメリカのなかでも特別なんだと思うんですけれど。
伊藤
ニューヨークって、ひとつの国みたいですよね、まるで。
サヤカ
そう、国だと思ってるんです(笑)。
ニューヨークっていう国は、いろんな人種がいるし、
多様性をアクセプトするところがある。
人と比べないし、自分はこれでいいし、
みたいなところもあって、
人のことを本当に気にしないし、
自分もこれです、みたいなストレートさがあって、
お互いを認める。
それがすごく好きなんです。
伊藤
肌の色も全然違いますものね。
サヤカ
そうなんです。肌の色も違うし、体型も違うし、
比べる対象がない、みたいな。
それが結構心地いいんです。
どうでもいい格好をして外に出ても、
誰も、何も気にしない(笑)。
伊藤
矢野顕子さんと話したんですが、
地下鉄に乗ると、
タンクトップにビーチサンダルの人もいれば、
革ジャンを着てる人もいて。
日本だと「こんなに寒いのに?」とか
「こんなに暑いのに」みたいになるのに、
自由というか、認めあっているんだなって。
もちろん、日本で大切にしていること、
たとえば四季に合わせて、この着物はこう着るとか、
帯留などの小物はちょっと季節を先取りして、
みたいなところも、素敵なんですけれど。
サヤカ
もちろん、その価値観も、すごく素敵ですよね。
伊藤
そうなんです。その一方で、
「冬なのにビーサンの人がいる!」、
そんなニューヨークって、
旅行者の私も楽だなって感じました。
なんだか、急に気分が自由になるんだもの(笑)。
サヤカ
そうなんですね(笑)。
伊藤
あと、みんなご機嫌っていうか、お店の人も、
「こんにちは」「いらっしゃいませ」じゃなくて、
「ハーイ、元気?」みたいな、
そういう日常感もいいですよね。
仁平さんに「なんでこんなみんな機嫌がいいの?」
って訊いたら、
「それが大人の証だと思っていると思う」って。
サヤカ
あぁ!
伊藤
気分のいい自分でいることが、大人の証であると。
サヤカ
なるほど、そういう考え方もありますよね。
そういうふうに考えたことがなかったな。
伊藤
マニュアル通りの対応だと、
小っちゃい子に対しても、
おじいちゃんに対しても、
同じ受け答えをすることになりますよね。
でも、その時、その人の気持ちで、
「こんにちは!」とか、
「ありがとう」って、言い方も変化すると思うんです。
ニューヨークではそういう挨拶が聞こえる。
それが、すごくいいなぁって思うんです。
サヤカ
たしかに、ストレートですね。
でも、機嫌の悪い日もあるんですよ、店員さん。
伊藤
そうそう。並んでいて、うんとしかめっ面で
「ネクスト!」って言われるとね、
本当に、怖い(笑)。
サヤカ
でも、それもちょっと人間らしいところかな。
コーティングされたコミュニケーションの、
表面のコーティングだけしか見えないより、
もしかしたら、気持ちがいいかなぁ。
伊藤
そうそう。それでいいんじゃないかな。
そんな環境で、
サヤカさんのデザインは、自由になった?
サヤカ
はい。日本で働いていた会社が
マス向けのブランドだったということもありますが、
ニューヨークでコレクションブランドに入ったら、
デザインというものは、自己表現か、
アートのような感じだったんです。
私は、それに興味がある! と思って。
伊藤
そうしてニューヨークで、
ブランドをひとりで立ち上げた。
‥‥って、どうすればいいのか、
全然わからないですけれど、
最初は何をなさったんですか。
だって、「何者でもない私」ですよね、
ニューヨークでは。
サヤカ
はい。きっかけは、会社の内情が変わって、
「洋服をやめましょう」となったんです。
「バッグや小物をやりましょう」って。
そういう状況に陥るまで、
洋服のデザインをすることが、
自分にとっていかに不可欠か、
気づかなかった。
バッグだからいいとは、
その時思えなかったんですよね。
で、「あ、なんかヤバい。違うな」と思って、
他のことがあまり考えられなくなって。
伊藤
洋服をつくる環境への転職は考えませんでしたか。
サヤカ
転職も、一応、考えたことは考えました。
けれども、そこも、ピン! と来て(笑)、
「ブランドを立ち上げるなら今かな」と。
もちろん、周りからの支援もあったんです。
たとえば夫は何年も前から
「自分で始めなよ」って言ってくれていた。
でも「うーん、ちょっと違う、まだまだ」
って私は言っていた。それがその時は、
「今、やろう!」と思って、
ファーストコレクションをつくったんです。
伊藤
それはどのくらいの規模で?
サヤカ
本当に小さいコレクションで、
洋服7着と、ジュエリー9点でした。
しかも、つくったものの、
「どうしよう? 人に見せていいのかな?」
と思っていたんですね、
「もうちょっとつくり直したいところもあるし」って。
時期的には、ニューヨークの
秋冬のコレクションは2月なんですけど、
出来上がったのがその直前の1月でした。


●サヤカさん着用アイテム
 ワンピース、アクセサリー:すべてSAYAKA DAVIS

[お問い合わせ先]
 Showroom SESSION TEL:03-5464-9968

●伊藤さん着用アイテム
 ワンピース(インディゴ):weeksdaysにて9月発売予定

SAYAKA DAVISのシャツとシャツドレス

未分類

あの大きな街で。

未分類

SAYAKA DAVISのさやかさんと、
はじめてお会いしたのは、
今から6年ほど前のこと。
ニューヨーク旅行のさなか、
春夏の展示会におじゃましたのがきっかけでした。

その時、私の心に残ったのが、
さやかさんご本人。

華奢なのに芯が太い。
自分を見失うと飲み込まれそうになる、
あの大きな街で、
行きたい方向にまっすぐ目を向け、
すっくと立っている、
そんな印象を受けたのです。

weeksdaysをはじめた時、
いつかさやかさんと一緒に、
ものづくりができたら、
そう思っていました。
それから、
東京やニューヨークのアトリエで、
幾度となく打ち合わせをし、
私たちの頭に浮かんだのは、
大人が着る「ふつう」の服。

やがてできあがったのは、
シャツとシャツワンピースがそれぞれ2枚ずつ。
さやかさんですから、
「ふつう」でありながら、
ふつうではない、
工夫が散りばめられた服ができました。

8/4からのインタビューも、
どうぞお楽しみに。

あたらしい老後の形。

未分類

大久保
最近、ほんとにちょっとまじめに思ってることがあって、
新しい家族の形、見つけたんですよ(笑)。
伊藤
新しい家族の形?
大久保
おぎやはぎの小木さんと仲がよくて、
たまにおうちに呼んでくれて、
ホームパーティーをするんです。
私、奥さんとも、すごく仲がいいんですよ。
小木さんは私と同級生なんですけど、
娘がひとりいて、たぶん独立しますよね。
そして私はたぶん、このまま結婚をしない。
だから、私、あそこの家に
小木夫妻と一緒に住んであげようかなって。
伊藤
え?!
大久保
これ、新しい形だと思うんです。
夫婦も倦怠期じゃないけど、
2人でいるのがしんどくもなる時期も
きっとあるじゃないですか。
伊藤
だから「住んであげようかな」。
大久保
そう。べつに養女にしてくれとかではなく、
そういう新しい形が今後
できていくんじゃないかって思ってて。
今、目星としては小木家か、
バナナマンの設楽家もいいなと(笑)。
私、わきまえる子なんで、
一部屋貸してもらえれば、
今日は一緒にご飯食べた方がいいなとか、
今日はやめとこうかなとか、
判断するし、迷惑はかけない。
こんな形が出てくるような気がするんです。
伊藤
なんかいい気がしてきました。
大久保
向こうにとってもメリットがあるんです。
二人夫婦より私が入ることで会話が弾むとかね。
伊藤
老後の夫婦関係も改善すると。
それ、小木さんにお伝えして‥‥。
大久保
まだ言ってないです(笑)。
怖がられると思って。
でも、お金はもちろん自分の分は自分で
持っていきますんで、
迷惑はそんなにかけないと思うんですよね。
伊藤
そうですよねえ‥‥そうですね。
大久保
Win-Winの関係になれるかな!
──
テレビで女芸人のみなさんが、
将来私たち独身のままで年をとったら
一緒のマンションに住もうねって。
大久保
はいはい、言いますね。
──
それとは違うんですか?
大久保
やっぱり女同士っていうか、友達って、
仲悪くなることもあるだろうし、
ガッと入り込んじゃったら、嫌だなと思うときが
絶対来るような気がするんですよ。
緊張感あるでしょ、小木夫妻と私なら(笑)。
ここは入っちゃダメだ、ここまで入っていい、
みたいな日々。
いいとこどりな関係にしたいんですよね。
もちろん得体も知れてるし。
この人が家のものを盗むとか思わない。
信頼はあるんで。
向こうも、かわいそうなね老女をね、
面倒みてるっていう優越感も持てるかもしれない。
たまに夫婦でね、「大久保さんかわいそうだから、
おいてやれよ」みたいな、ちょっとこそこそっと(笑)。
伊藤
小木さん、どう思われるんでしょうね。
大久保
そのへんは信頼してるんですよね、彼の感覚をね。
べつに常識にとらわれないタイプなんで、
信用をしてるんです、私は。
伊藤
すごいな。そんなこと考えてもみたことなかったです。
でも、いいかもしれない。
これから友達夫婦を見る目が変わりそうです。
大久保
そうですよ、どこにお世話になるかわかんないって
目で見てください。
伊藤
この人の奥さんはちょっとうるさそうだしな、とか。
大久保
そうそう、そこ。
奥さんとまず気が合うっていうのが大事ですからね。
伊藤
そうですね。
ああ、ほんとうにたくさんお話できました。
よかったです、今日、ほんとに。
大久保
ほんとに? よかった?
伊藤
ありがとうございます。
大久保
とんでもないです。
伊藤
せっかくなので、みんなからも、
なにか質問があればと思ってます。
誰か、ありますか?
男性
お願いします。
さっきのパーソナルトレーニングの話じゃないんですが、
僕も、すぐ妄想をするんです。
あの女の子、僕のこと
ちょっと好きなんじゃないかなとか。
大久保
それは幸せよね(笑)。
男性
スタバで紙コップに似顔絵を描いてくれたら、
ちょっと気があるとかすぐ思っちゃうんです。
そういうのとか、大久保さんも、あったりしますか?
大久保
妄想は、ゼロからはしませんよ。
でも今みたいにスタバでカップもらったら
似顔絵が描いてある、
そんなきっかけがあったら全然いけます。
楽しいですもんね。
今も、妄想してます。
今日はもうこれで別れるんですけど、
意外とあなたと私の最寄り駅は一緒で、
改札口でアッてなって、
さらに、行きつけの店行ったらいて、
またアレッてなったりして。
だから、もし偶然会ったら、
お互い頑張って声かけるってことでいいですか(笑)。
男性
はい!
大久保
一歩、踏み出さないとね。
伊藤
(笑)もう一人ぐらい。
女性
はい。私、お願いします。
大久保
あら、うれしい。
女性
先日「さんま御殿」で
梅沢富美男さんとケンカみたいに
絡まれてるシーンで、
今日のお姿とは全然違う、
芸人としてのスイッチが入っている状態を
見させてもらいました。
さっきのお話の中で、
急に落ち込んでいくときがあると、
そういう面も持たれているのに、
どうやってバラエティのスイッチを入れるのか、
それを教えてほしいです。
大久保
そうなんですよね、
気持ち的には今日無理だなっていうとき、ありますよ。
今日はもうテレビに絶対出たくないし、
今日の私のこんな嫌な気持ちのまま、
テンションを上げて、無駄に笑って、
トークのアンテナを張って、
なんか言われたらすぐ返さなきゃいけないなんて、
その何もかもが嫌だ! というときって、あるんです。
今日、もしかしたら
一世一代の失敗をするかもしれないとも思うし。
だけど、不思議なもので、
スタジオに入ってマイクをつけて座ると、
ちょっとオンになるんですね。
長くやってるのもあるから、意外と体が切り替わる。
そして、そういう時は、人に頼ります。
当たり前ですけど、みんなプロなんで、
その人たちが笑いをつくったら、
のっかっちゃおうと思います。
この状況にいるんだから、
「あっ、楽しい。よし、楽しもう。私もいける!」
みたいに、一瞬にして雰囲気にのまれる。
それでなんとかやってきてますね。
ありがたいのは
一流のプロの人たちの現場に
お邪魔させていただくことが多いから、
そこのテンポ、熱、エネルギーをちょっともらって、
「よーし、じゃあ!」ってのっかる感じでやると、
もう、だいたい収録の2時間が終わってる。
そんな感じですかねえ。
うん、周りに甘えてます。
じゃあ、親が死んだときもバラエティができるのか、
それはさすがにわからないですけど。
伊藤
たしか夫婦の経済についてのトークでしたよね。
自分で稼いだ金を自分で使って何が悪いと
開きなおる梅沢さんに、
立ち上がって喰ってかかる大久保さん、
さらに、ブス呼ばわりして罵倒する梅沢さん。
私も見ましたよ。
大久保
私は言葉のプロレスをやってるし、
梅沢さんありがとうっていう気持ちで、
もっとこい、もっとこいと思ってやってるんですけど、
世の中的には、
いまだにああいうことを笑いにして‥‥、
って嘆く人もいます。
何年前のテレビなんだっていう意見もあるし、
セクハラはダメ、
ブス呼ばわりはするのもされるのもダメだと。
それもTVショーだと思って
捉えてくれればいいんですけどね。
「大久保さんはそんな言うほどブスじゃない」って、
もう全然フォローでもなんでもないから!(笑)
伊藤
ほんとにね。
──
ずいぶん長い時間、話していただいて、
ありがとうございます。
今日、このあと、レコーダーはオフにしますけど、
伊藤さんがおつまみを作るので、
ビールサーバーもあるし、
ちょっと飲んでいきませんか。
大久保
あら、おもてなし。
いいんですか?
ありがとうございます。
伊藤
ほんとうにありがとうございました。
大久保
優しい方たち!
こちらこそありがとうございました。
じゃ、失礼しまーす。

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