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saquiを、この人に。[3] 服飾ディレクターの岡本敬子さんに 着てもらいました。

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今回、敬子さんがえらんだのは黒。
「白はもう少し日焼けしてからの方が
似合いそうだなって思って」
なるほど、肌の色とか髪の色とか、
そういうものもすべて合わせて、
ひとつのスタイルなのですねぇ。

「この黒は肌馴染みがすごくよくって。
久しぶりに体に沿うラインの服を着たけれど、
新鮮で気持ちよかった」

背筋をシャンと伸ばして着こなしたい、
という敬子さん。
その姿は堂々としていてかっこいい。

このオールインワンのチャームポイントのひとつが、
アンティークのガラスのボタン。
私が着る場合は、ボタンを目立たせようと
ピアスなどは極力控えめに・・・と思っていたのですが、
どうです?
このジャラジャラ具合!

「私も最初はボタンがあるからどうかしら?
と思ったんだけど、
あえてたくさんつけてみた」
Vネックがすっきり見せてくれるから、
アクセサリーたくさんでもしっくりくるんですって。
なるほど、なるほど。

数えたことがないくらい(!!)、
たくさん持っているというアクセサリー。
アシンメトリーにつけるのがお好きとか。
敬子さんならではの
ルールみたいなものはあるのでしょうか?

「もう、欲望のままよ(笑)」

アンティークのパーツをつなぎ合わせたネックレスには、
Zuni族のペンダントヘッドをつけて。
「丸でまとめた」という
右手の指輪は3つ重ねて。
「右は丸いっこいもの、左はしゅっとしたラインのものを」

「欲望のまま」とおっしゃいつつも、
アクセサリーづかいにはやはり敬子さんならではの、
計算があるようです。

靴はtrippenの黒を。
足先からのぞくペディキュアが
歩く時に見え隠れして、いいかんじ。

さて敬子さん、
このオールインワンにアクセサリー以外の
小物を足すとしたらどんなものを
合わせますか?

「メキシコのファイバーマーケットバッグ、
民芸的なものがいいかな。
あと、今日はかぶらなかったけれど、
帽子もいいよね。
ストロー素材のちょっとつばの広いものとか」

saquiのオールインワンに、
メキシコのバッグや、ストローの帽子をコーディネート!
まさに「好きなものを自由に着る」
敬子スタイル。
お会いするといつも、
おしゃれの幅を広げてくれる敬子さん。
私もまずはアクセサリーを
アシンメトリーにつけることから
はじめようかな。

(伊藤まさこ)

saquiを、この人に。[2] モデルの香菜子さんに 着てもらいました。

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「美大時代に、毎日のように着ていた」
というオールインワン。
それは「オールインワン」というより
「つなぎ」と呼んだ方がいい、
ヒッコリーストライプなどの作業着っぽいものだったそう。

「だからか、着るのに抵抗がなくて」と香菜子さん。
3年くらい前から、第2次ブームがやってきて、
ワンドローブにどんどん
オールインワンが加わってきているそう。
去年の夏はオールインワンばっかり着ていたそうです。

なるほど、バシッと似合ってる。
「着慣れている」という印象です。さすが。

「それ一枚で、決まるのがいいしね」

たしかに!

今回着ていただいたのは、生成り色。
陶器でできたブレスレットや
貝のピアスを同系色でまとめ、
靴とバッグは黒。

「かごも合わせてみたのですが、
洗練されたイメージだったので、
とことん大人っぽく着てみようと思いました」

「あと、ぺディキュアの色を派手にしたり、
大ぶりなアクセサリーをしたり、
ほかで遊べるのもオールインワンのいいところ」

今回、黒も着ていただきましたが、
また違った印象に。

「ウェストのところがもたつかないから、
きれいに着られますね。
このシルエットの美しさ、さすがsaqui。
2色、欲しくなってきちゃった」

すらりとした香菜子さんに、
それはそれはお似合いなのでした。

(伊藤まさこ)

saquiを、この人に。[1] 写真家の馬場わかなさんに 着てもらいました。

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「ふだん仕事の時は、
動きやすい、だぼっとしたチュニックに、
レギンスが多いんです。色は藍や白とか」
とわかなさん。

ああ、なるほど!
オールインワンを着た、その姿が新鮮なのは、
いつもと違うシルエットだからなのかな。

「素材がぴしっとしているから、
お出かけの時とかいいですね。
あらたまった感じがします」

そうそう。
ラフ、というよりきちんとした印象を受ける、
大人っぽい素材なのです。

「ふだんは靴下を重ねばきしているので、
わりとごつめの靴が多いのですが、
このオールインワンは、
しゅっとしたイメージだったので、
それだとちょっとバランスが悪いなと思って、
この黒い靴にしてみました」

ネックレスと指輪は、石のついたものを。
ピアスもお揃い‥‥?
かと思いきや、とてもシンプルなゴールドのもの。

「その方がすっきりするかな、と思って」

アクセサリーのえらびかたや、靴の形など、
幾度となく、わかなさんの口から
「バランス」という言葉が出ましたが、
なるほど、たしかにバランスばっちり。
ベリーショートもすごくいい。
自分を俯瞰してみるって、
すごく大事なのだなぁと思いました。

ちょっと肌寒い時は、
ストールを巻いて。
襟元が隠れるとまたちがった雰囲気になって新鮮です。

「saquiの服は、シワになりづらい素材の
(weeksdaysでも売っていました)
ワンピースとパンツを持っています。
ちょっとあらたまった場所でも着られて大助かり」

今まで、トイレ問題が気になって
二の足を踏んでいたというオールインワン。
こんなに似合っているのだから、
ぜひ着て欲しいな。

(伊藤まさこ)

自由を着る。saquiのオールインワン。

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自由を着る。

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saquiの服を着る人は、
自分に似合う、
自分のための服を、
自由に着こなす、
そんな印象を受けます。
人からどう見られるか気にしたり、
流行りに左右されたりはしません。

背筋はきりり。
でも表情や動作はやわらかい。
大人の女の人にこそ似合う服なのだと思うのです。

「今、オールインワンをデザインしているんです」
と聞いたのがまだ寒さの残る春先のこと。
saquiのオールインワン!
それは見てみたい。

幾日か経ってアトリエを訪れると、
それはすてきな一着ができあがっていました。

それからデザイナーの岸山さんとあれこれと相談し、
weeksdaysのために、
上質な生成りと黒のリネンコットンを使った
オールインワンを作っていただきました。

すっくと自分の足で立つ、
すてきな人に着て欲しい。
明日のLOOKBOOKをどうぞおたのしみに。

100冊の古書[6]

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86『ふたりの山小屋だより』岸田衿子/岸田今日子

娘がまだ小さな頃、
よく車を運転して軽井沢に行きました。
人でにぎわう街中を抜け、
山をぐんぐん登っていくと、
そこにあらわれるのは、浅間山。
北軽井沢と呼ばれる、そのあたり
(群馬県になります)にたどりつくと、
なんだか鼻がスン、と通ったような気になったものでした。
きれい、とか、
自然がたくさんある、とか、
そういうことだけではなく、
土地がもたらす効果というか。
とにかく気分がよくなるのです。

その土地のことを知ったのは、
詩人で童話作家の岸田衿子さんと、
女優の岸田今日子さん、
おふたりの山小屋だよりがきっかけでした。

「私と妹はたいていチェックか無地の洋服で、
花模様なんてめったに着せてもらえない。
母は少しもこわい人ではないが、
『まわりが花だらけなんだもの‥‥』が口ぐせだった。」

山の夏は花や甘酸っぱい木の実や草の根でうずまって
いたんですって!

87『食卓一期一会』長田弘

「人生を、急がずに、たっぷり味わいたい。」

  言葉のダシのとりかた
  絶望のスパゲッティ
  パエリャ讃
  食べもののなかには

テーブルの上にある、
詩人、長田弘さんの66の詩。

「人生とは──誰と食卓を共にするかということだ。」

88『貧乏だけど贅沢』沢木耕太郎

噂によると、沢木さんはとてももてる人らしい。

阿川弘之さん、
井上陽水さん、
高倉健さん、
群ようこさん‥‥。

対談相手の顔がほころんでいるのが
文章から読み取れる。
そうか、もてるのは女の人だけにあらず。
男の人の心もつかんじゃう。

読んでる人の心もつかむ、
対談集です。

89『木』白洲正子

いつだったか、
車を運転していると、どこからか
えもいえないかぐわしい匂いがただよってきたので、
思わず停めてあたりを見回したことがありました。

「ああ、これは朴の花だね」
一緒にいた人の指の先に目をやると、
そこには立派な一本の木がありました。

それから、5月になると、
その一本の木を思い出すのです。

檜、松、栃、楠、朴‥‥。

「木」そのものを愛し、
木から作られる木工を日常で使った白洲さんの、
「木」。

90『もしも僕らの言葉がウィスキーであったなら』村上春樹

「ウィスキーの匂いのする、
小さな旅の本を作ることにした。」

読んでいると、
おだやかな照明の下、
氷が琥珀色の液体にゆっくりと
溶け出す様子が思い浮かんでくる。
一気に読むのはもったいないから、
ちびちびと、
すこぉしずつ、味わいたい。

「──そこにはアイルランドの夏の光があふれ、
食堂には熱いコーヒーと、温かなアイリッシュ・
ブレックファストが用意されていた。
そして僕は旅の新しい1日へと、足を踏み入れていった。」

じつはウィスキーだけでなく、
熱いコーヒーも、黒ビールも飲みたくなる本なんです。

91『私の食べ歩き』獅子文六

頼りない味。
雅味。
珍しいだけの味。
濃尾の味。
甚だデリケートな味。
つならぬ味。
生き甲斐を感ぜしめる味。

「生来、私は胃が丈夫なうえに、
欲望崇拝家であるから──」

日本、中国、フランス‥‥。
美味を求めるエピキュリアン、
獅子文六さんのさまざまな味との出会い。

92『檀流クッキング』檀一雄

小さな頃、お母さんが
突然いなくなってしまったことから、
やむなく始まった料理人生。

けれども、
「アンカケ風に片栗粉で
トロミをつけることを覚えた時の
嬉しさといったらなかった。」
「ジャムをつくる事を覚えたのも、
愉快な思い出の一つである。」と
その当時を語る文からは、
つらさやさみしさは感じられない。
それどころか、
なにやらたのしそうではありませんか。

おふくろの味ではなく、
自分の味が自分の還る味。

サバ、イワシの煮付け、
小魚の姿寿司、
からしレンコン、
アンコウ鍋!?

「買い出しが大好き」という檀さん。
素材を見つけ出し、
料理に向かう。
その料理はまさに「俺流」なのです。

93『季節のかたみ』幸田文

63歳から、75歳までに書かれた随筆が54編。

暮らしや毎日食べるもの、
気の持ちよう、
いろいろなものが削ぎ落とされ、
研ぎ澄まされていく。

「どんなに気の合う人でも、
自分ひとりより以上に、気の合うことはない、
というそうですが、
確かにそういう節もあります。
軽快です。強がりでなく、
ほんとにひとりはいい‥‥」

さて私は、この年齢にさしかかった時、
どんなことを思うのでしょうか?

94『贅沢貧乏』森茉莉

ずいぶん前、
パリのアパルトマンの屋根裏に住む、
バレリーナの卵の食事風景を
(映画だったか、テレビのドキュメンタリーだったか、
そこのところははっきりしないのだけれど)
観たことがあります。

それはけして「ごちそう」とはいえない、
つましい料理でしたが、
気に入りの皿に盛り、
ナイフとフォークを器用に操り、
背筋を伸ばして食べるその姿が、
とても気高くて美しいのでした。

この本を読むと、
いつもその光景が思い浮かぶのです。

贅沢に見えても、
貧しい人はいるし、
貧乏だからって、みじめなわけじゃない。

どう生きるかは、
つまりその人の心も持ちようってこと。

95『酒肴酒』吉田健一

粋なタイトルだなぁって思う。
酒、肴、酒、だもん。
この三文字に興味を持って
手に取ってみれば、
そこにはぎっしり420ページ、
(しかもとても小さな文字で)
吉田健一の世界が詰まっています。

420ページ制覇したら、
中の「文学に出てくる食べもの」
の本を読んでみてはどうでしょう?

こんな風にして読書の道幅が広がるのが、
本のおもしろいところです。

96『人は成熟するにつれて若くなる』ヘルマン・ヘッセ/フォルカー・ミヒェルス(編)

ここのところ、「老いる」ということに興味があります。
老いのその先には、「死」があって、
それを不安に思う人も多いと思うのだけれど、
私のまわりにいる、
人生の大先輩たち(おそらく私より死に近い)は、
不安を通り抜けて、
どこか達観したような表情をしているし、
どこかたのしげでもある。

「老いた人々にとってすばらしいものは
暖炉とブルゴーニュの赤ワインと
そして最後におだやかな死だ──。
しかし、もっとあとで、今日ではなく!」

そういったのは、ドイツ生まれの詩人、ヘルマン・ヘッセ。

この「老年」をテーマにした本は、
43歳のヘッセが記録した観察からはじまります。
年をとるってどんなことなんだろう。
ずっと先のことかもしれないけれど、
あっという間に訪れそうなこのテーマを、
この本を機会に考えてみよう、
そう思うのでした。

97『おいしいおはなし 台所のエッセイ集』高峰秀子編

「料理という作業はそんなにむずかしいことではなく、
ちょっとした工夫、ちょっとした心使い、
つまり相手に対する愛情の有無が、
味のよしあしを決めるのだ。」

という高峰さんによって編まれた、
アンソロジー。

安野光雅、池部良、宇野千代、
それから夫の松山善三‥‥。

「食べものに情熱をかたむける人は、
仕事に対しても猛然と情熱を燃やす人だ、と信じている。」
という高峰さん。
おいしい話は尽きることがなさそう。

98『散歩の時、何か食べたくなって』池波正太郎

散歩をするから、おいしいものに出会えるのか、
おいしいものに巡り会いたいから、
散歩をするのか?
どちらかと聞かれたら、
「どちらも」。

食べ歩きのエッセイは世の中にたくさんあれど、
やはり「散歩」と聞いて思い浮かぶのは、
池波正太郎さんの、この本。

中で「横浜あちらこちら」という
エッセイが出てくるのですが、
浜っ子としては、
地元を褒めてもらえたようで、鼻高々になる。
あなたの見知った街が、
載っているかもしれませんよ。

99『貧乏サヴァラン』森茉莉

森茉莉さんのエッセイを読んでいると、
上等な「バタ」をたくさん使った、
焼き菓子を少しずつ味わっているような気分になる。

「だいたい贅沢というのは
高価なものを持っていることではなくて、
贅沢な精神を持っていることである。」

P34からはじまる「ほんものの贅沢」では、
偽物の贅沢に触れていて興味深い。

さて、ほんものの「贅沢」とは、
どんなものと書かれているでしょうか。

100『遊覧日記』武田百合子

「夫が他界し、娘は成人し、独り者に戻った私は、
会社づとめをしないつれづれに、
ゴムそこの靴を履き、行きたい場所へ出かけて行く。」

青山、浅草、上野、世田谷‥‥。
気の向くままに歩いて、
気の向くまま文を書く。

「私、思うのだが
(素人の私が言うのは、はばかり多いことだが)
剥製は口の中がもっとも難しいのではないかしらん。
粘膜や歯ぐきや舌の色つやとか形が、
なかなか難しいのではないかしらん。」

これは、浅草の蚤の市で見つけた
ライオンの剥製を見た時の一文。

心のつぶやきがそのまま文となってあらわれていて、
おもしろい。

(伊藤まさこ)

100冊の古書[5]

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71『光の粒子』かくたみほ

音の粒を感じる人がいるかと思うと、
光の粒を感じる人がいて、
そのどちらにも、そう敏感ではない私は
素直に「いいなぁ」と思うのでした。

どの風景にも、
いろんな光の表情があって、
それはいつも同じじゃない。
そんなところが光に魅かれる理由なのかもね。

72『日本民藝館へいこう』坂田和實/山口信博/尾久彰三

展示替えするたび、
駒場の民芸館を訪れます。
その前か後に、読むのがこの本。

骨董の世界で名を馳せる坂田和實さん、
グラフィックデザイナーの山口信博さん、
民藝館の学芸顧問である尾久彰三さんの3人が、
民藝館の魅力について語るのですが、
それがほんとうに「好きで好きで」という印象を受けます。
とかく固苦しく語られることの多い「民藝」を
とても身近なものにしてくれているのです。

73『日々の野菜帖』高橋良枝

幸運なことに、高橋さんの料理を食べたことのある私は、
ここに載っている料理が、どれだけしみじみおいしくて、
どれだけ愛がこもっているかを知っています。

73歳にしてインスタグラムをはじめ、
日々の料理を紹介したものに加筆し、
本にまとめた一冊。
料理撮影用に作られた料理ではない、
飾らない(でも美しい)料理がならびます。

74『京暮し』大村しげ

じゃがいものおひたしの作り方は?
しそのごはんの作り方は?
しげさんは、ぞうきんをどんな風に使っていたっけ?

時々、この本を開いてはたしかめて、
納得します。
ああ、そうそう。こんな風だったって。

「へえ? へえ? それどないして炊きますのん」
これは、すみれご飯を初めて知った時のしげさんの言葉。
いくつになっても、好奇心旺盛なしげさん。
そのすみれご飯を
「まるでマリー・ローランサンの絵のようなかんじ」
と少女のように言います。
こんなおばあちゃんになりたいな、
読むたびにそんなことを思うのです。

75『雪は天からの手紙 ― 中谷宇吉郎エッセイ集』中谷宇吉郎/池内了

天然雪の研究から、
やがては世界に先駆けて人工雪の実験に成功したという、
物理学者の中谷宇吉郎。
雪の結晶ってどうやってできるんだろう?
子どもの頃に不思議に思ったことを、
思いだけにとどめずに、
研究した人がいたんだ!
はじめてその存在を知った時は、
なんだか宝物を見つけたような気持ちになりました。

このエッセイ集を持って、
いつか加賀の雪の博物館を訪れてみてはどうでしょう。
そこには「雪博士」中谷宇吉郎の世界が待っていますよ。

76『山のパンセ』串田孫一

そこに山があるから登るのかもしれないけれど、
頂上を目指すだけじゃもったいない。
その道中にも、
すてきな何かがたくさん待ち受けてくれているもの。
そのことに気づかせてくれたのが、
串田孫一さんのエッセイです。

串田さんが編集に関わった『アルプ』や、
著書『山のABC』などは、宝物。
山登りをしない私の、
「空想山登り」のおともになっています。

77『旅は俗悪がいい』宮脇檀

建築家という仕事柄、
毎年、百数十日は海外に渡るという宮脇檀さん。

好奇心旺盛で、
観察眼がするどいけれど、
どこか洗練された雰囲気が本全体に漂うのは、
きっとお人柄。

旅に出る時、荷物にぽい、と紛れ込ませたい一冊です。

78『暮らしのかご』片柳草生

かごは好きですか?
私も御多分に洩れず、好きです。
もう「大好き」と言っていいくらい。

キッチンで、
テーブルの上で、
出かける時も。
ああ、この本を書いた人は、
本当にかごを愛しているんだなということが、
本を通してひしひし伝わってきます。

巻末には、かごを売る店や工芸館の紹介も。
ぜひとも訪れてみたいのは、
暮らしの中で生み出され、
使われてきた民具を展示する
武蔵野美術大学の民族資料館。
なんと竹細工は3000点にもおよぶそうですよ。

79『白洲正子と歩く京都』白洲正子/牧山桂子

大和や近江をはじめ、
生涯数多くの土地を旅したという、
白洲正子。
それでもやはり
「京都は特別な場所。生まれ故郷のようだ。」
と吐露しているのだとか。

白洲正子の京都は、
私の知らない景色も多い。
同じものを見ても、
感じ方の違いで、
まったく別の景色になる。

さてこの本を手に取ったあなたには、
京都という場所がどんな風に見えるでしょうか。

80『こんにちは』谷川俊太郎/川島小鳥

前半の、
ちょっとリラックスしていたり、
仕事机に向かっていたり、
街中に佇んでいたりする
ポートレートを見て、
ああ谷川さんって美しいな、
そう思いました。
撮ったのは川島小鳥さん。
近からず、遠からずの関係が(きっと)
見ていてなんだかいいのです。

写真あり、対談あり、いろいろな人への質問あり、
もちろん詩もあり。
どういう本かと質問されれば、
なかなか「こういう本です」とは答えにくい。
つかみどころがないところが、
逆にちょっと気になるんです。

81『わたしの献立日記』沢村貞子

「おいしいもので、お腹がふくれれば、
結構、しあわせな気分になり、
まわりの誰彼にやさしい言葉のひとつも
かけたくなるから──しおらしい。」

折に触れて、読み返す本がありますが、
これもそんな一冊。

「献立に大切なのは、とり合わせではないかしら?
今日は魚が食べたい、とか肉にしよう──などと
主役は決まっても、
それを生かすのは、まわりの脇役である。」

舞台、テレビで名脇役として活躍した、
女優、沢村貞子の献立日記。

82『ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯』クレア・キップス/梨木香歩(訳)

拾い子のイエスズメと暮らした、
キップス夫人の記録です。

小さなスズメが、
夫人にとってかけがえのない大きな存在になっていく。
彼(キップス夫人はスズメをそう呼ぶ)は、
早朝に素晴らしい歌を歌い、
タイムズ紙の一面のページで、
想像上の砂浴をする。
言葉は通じないけれど、
言葉で交わすより、もっと深く通じ合う「ふたり」。

キップス夫人のまなざしがやさしい。

83『ノーザンライツ』星野道夫

「生まれ変わったら、男になりたい? それとも女?」
時おり、こんな質問をされることがあって、
うーむと考え、
「次も女かなぁ‥‥」などと
曖昧な返事をする(だってよく分からないから)。

「男に生まれたい!」
そう猛烈に思うのは、
星野さんの写真を見たり文を読んだりする時。
自然と、そこで暮らす人々の声に耳を傾けて
旅ができたらどんなにいいだろう。
星野さんのように。

84『心の中に持っている問題 詩人の父から子どもたちへの45篇の詩』長田弘

この本は、
20年ほどの間に、
「詩人の父から子ども達へ送った45編の詩」
が載っています。

装丁は平野甲賀さん。
ああいい佇まいだな、そう思って手に取ると
平野さんの、ということが多いのですが、
これもまた。
ブルーのこの本、うちにも一冊欲しいなぁ。

85『日曜日の住居学』宮脇檀

「要は生活なのであって、
住居などというものはその生活の容器として
存在しているにすぎない。」
‥‥ではじまる、
建築家、宮脇檀さんの「日曜日の住居学」。

「住まいの形ではなく、住まい方が第一、
生活をどう営むかが第一で、
住居はそれをフォローする役目しか持たない」

住まい方は生き方。

もしも家を建てる予定があるならば、
まずはこの本を読んでみるといいかもしれません。
「容器」を作る専門家の言葉は、
たくさんのなるほどが潜んでいるから。
宮脇さんは「住まう」の専門家でもあるのです。

(伊藤まさこ)

100冊の古書[4]

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55『アンソロジー カレーライス!! 大盛り』杉田淳子

カレーが食べたいと一度思うと、
いてもたってもいられなくなる。
なにか代わりのもので、
そう思ってもそれは土台無理な話し。
もう心も口の中もカレー一筋になっているのです。
どうしてカレーはこんなにも
人の心を惹きつけるのでしょうか?

「カレーライスとよぶよりは、ライスカレーとよびたい。」
そう書いたのは池波正太郎。
「『まずうぃカレーが食べたい』と思うことがある。」
と書いたのは、中島らも。
赤瀬川原平、ねじめ正一、伊丹十三‥‥、
様々な人のカレーの思い出を収めたアンソロジー。

56『ほどほど快適生活百科』群ようこ

こんな時どうすればいいんだっけ?
時々ふと、疑問に思うことがあるものです。

健康のこと、貯金のこと、
人間関係のこと。
もう大人なのだから、
自分で考えなければいけないとは思いつつも、
みんなはどうしているんだろ? と
疑問が頭をもたげる。
そんな時、この本を開くと
そうか、こういう考えもあるのだなと、
ちょっと目の前が拓けた気分になるのです。

「ほどほど」っていう、
ゆるっとしたタイトルが肩肘張っていない
本の中身を語っています。

57『どうして書くの? ─ 穂村弘対談集』穂村弘

「書くものに性差を感じる瞬間。」
「書くのは対象を客観視しているということ。」
「普通の人間のまま書く。」

書くって、
書くって???

穂村さんが、「書く」を職業にする作家と
「書く」について話す対談集。

いろいろな人がさまざまなツールで文を書く今、
「書く」を仕事にしている人たちの
貴重な言葉が載っています。

58『ごはんのことばかり100話とちょっと』よしもとばなな

「本は読みません」という人はいたとしても、
「私、食べません」という人はいない。
だって死んじゃうものね。

本をたくさん読み、
かつ食いしん坊な人が書く文章は
ただそれだけでおいしそう。

ちっとも気取っていなくて、
気取った店も出てこなくて。

家で食べるごはんってやっぱりいいなぁ、
家族や気のおけない友だちと食べるごはんっていいなぁ。

59『彼女のこんだて帖』角田光代

「彼女」とは、恋人と別れたばかりで羊を食べる協子。
「彼女」とは、漬物名人の母を持つ智香子。
「彼女」とは‥‥。

14回のごはんと最後のごはん、
こんだてを中心にした小さな話がぜんぶで15。
「彼女」は一度の登場でおわりかと思いきや
そうではなくて‥‥。

いろんな「彼女」のこんだて。
メニューではなく、
こんだてというところに身近さを感じます。

60『音の晩餐』林望

「ここに、私の発明にかかる
決定的かつ安全なる眠気覚しの妙法を伝授しよう。」

なになに? と読み進めると、
なんとそれは
「車の眠気覚しにはせんべいを食うのである」
と大真面目。
その時の音が「ばりっ」なのです。

鳥皮の煮こごりは、ぐつぐつ、
焼きりんごは、ほくほく、
イカの輪切りフライは、ほっほっ。

おいしい音は無限にあるものだなぁ。

61『食味歳時記』獅子文六

春には春の、夏には夏の、
秋には秋の、冬には冬の。
その季節にしか味わえない味があるものです。
春夏秋冬に限らず、その間あいだにも、
美味はひそんでいるものだから、
うかうかとしてはいられない。

5月のパリ、
自分の部屋で茹でたアスペルジュ(アスパラガス)。
夜寒の始まる頃の純白のフロフキ大根
(と、それにかかるとろりとした黒い味噌)、
秋の恵みというより「一年中の口福」という、
レモンを絞った初牡蠣。

この本に何度となく出てくる「ウマい」。
うかうかしていると、それを逃すことになるから、
一年中、気が抜けやしない。

62『二十億光年の孤独』谷川俊太郎

知っていましたか?
谷川さんが少年の頃、模型飛行機を作ったり、
ラジオを組み立てるのと同じやり方で
詩を作っていたということを。

知っていましたか?
「自分の前にある世界の一部を見て、
ことばという部品をつなげていくと、
世界のひな形みたいなものが
できることがおもしろかった。」
と思っていたことを。

私は知りませんでした。
この本を読むまで。

63『バーボン・ストリート』沢木耕太郎

呑み友だちとお酒を酌み交わしているうちに、
出てきた話の芽をもとにしたエッセイ、
しかもそこで呑まれているお酒はバーボンだったから、
タイトルはバーボン・ストリートと
つけられたのかというと、
そうではないらしい。

では、なぜ?
‥‥とあとがきを読み進めると、
タイトルの意味に、ああなるほどと納得。
まさか、ボリス・ヴィアンの『北京の秋』から
きていたなんて!
(『北京の秋』というタイトルがつけられた理由にも
驚きがひそんでいます)。

64『台所のおと』幸田文

今はあまり感じなくなったけれど、
私が子どもの頃は、
夕方、家に帰る途中、
近所の家の台所から、
プーンと晩ごはんの
いいにおいがただよってきたものです。

その匂いのもとに近寄ると、
必ず「音」がしました。

トントントン、野菜を切る小気味いい音。
パチパチと、魚を焼く音。
ごはんですよ、と子どもたちを呼ぶお母さんの声。

この本の背表紙を見るたび、
なぜだかその時の、
ちょっとほわん、となる感覚を思い出すのです。

65『新版 吉兆味ばなし』湯木貞一/花森安治

「この道、一筋などと誰でも心安くいいますが、
この湯木さんくらい、それがぴったりする人を知りません。
まるで金太郎あめのように、どこを切っても、
味のことしか、料理のことしか出てこないのです。」

そう言ったのは、
暮しの手帖の花森安治。

延べ300時間以上にわたって、
聞き書きし、
湯木さんによってあれこれと手を入れできた
「味の話」。

毎日のごはん作りのヒントが詰まった本です。

66『かわいい夫』山崎ナオコーラ/みつはしちかこ

タイトルだけで、愛に溢れてるとは思いませんか。

さらにページを開くと、
まず現れるのがこんな一文。

「顔がかわいいのではなく、存在がかわいい。
ざしきわらしのようだ。
だから本を書くことにした。」

いつも近くにいる人のことを、
こんな風に書いてもらって、
「夫」いいなぁ。
幸せだなぁ。

一生懸命、花で何かを編むチッチと、
クールな表情で蝶々を見つめるサリーが表紙。
見つめ合っているのではなく、
ただふたりがそこにいて、
幸せそうなのがいい。

67『パスタマシーンの幽霊』川上弘美

2006年から、雑誌「クウネル」に掲載されていた
川上弘美さんの小説。
1号ごとに読み終わる、
そのページが大好きでした。
だから、それが1冊にまとまった時は、
うれしい気持ちになったものでした。
雑誌で読むのと、本で読むのとでは、
またちがう味わい方ができるなぁって。

おだやかなんだけれど、
時おりくすっとしちゃう、
私の身近なところでおこりそうな、
22の小さな話。
川上ワールド、堪能できます。

68『みずうみ』いしいしんじ

日常のざわざわやあれこれを忘れて、

文字の世界に浸りたい時、
いしいしんじさんの本を開きます。

「麦ふみクーツェ」「ぶらんこ乗り」
「プラネタリウムのふたご」‥‥。

読んでいるうちに、
「たゆたう」という、いつも感じない感覚に
なるのが、なんだかここちいいのです。

69『「ん」まであるく』谷川俊太郎

谷川さんの本は、
今までに何冊も買ってはいるのだけれど、
友人が遊びにやって来て、
本棚からそれを手に取り、
ぱらぱらめくって、
興味深げにしているのを見ると、
なぜだかプレゼントしてしまいたくなるから、
何冊もずらり、と並ぶことがなかなかないのです。

でも、
これは唯一ずっと本棚に置いてあって、
時々、読んでる。

「『ん』という音が好きだ。
力がこもっているくせに軽みがある。
『ん』という字も好きだ。
大地に足を踏ん張っていて、しかも天へと流れている。」

谷川さんは、
「ん」という文字みたいな人なのかな、
とこの一文を読むたび思うのでした。

70『強く生きる言葉』岡本太郎

いろいろなことが曖昧で、
なにかと人の意見に左右されがちな今、
「俺はこうなんだ」と、
強く、はっきり言ってくれる人の存在は
心強いし、ありがたい。

「こんな服を着ておしゃれをしたから、
どんなふうに自分が変わったかなんて
外見的なことばかりで鏡を見ないで、
自分と対決するために鏡を見る。
これが、本当の鏡の見方だ。」

はい。

(伊藤まさこ)

 人をつなぐ糸。

未分類

伊藤
「weeksdays」で毎日更新していて思うのは、
ウェブは文字量の制限がないということ。
どれだけ書いてもいいし、短くてもいい自由があり、
ここを直したいって思ったら、更新の前日でも直せる。
もちろん書籍や雑誌で校正が入って、
事前に何回も校正紙をチェックする、
という仕事も好きなんですけど、
どっちもやれてるのが、すごくおもしろいんです。
河野
「weeksdays」は雑誌で言えば
テーマを変えながら、ずっと
スペシャルな連載を続けてるようなもので、
ありとあらゆるものが出て来るわけだし、
切り口っていうか、伊藤まさこらしさ、
っていうのがちゃんと感じられるっていうところも
すごいと思って見ていますよ。
僕なんか、考えたことのなかったもの、
結構多いですもん。
身の回りのもの、
これについては考えたこともないな、
っていうもののほうが、多いですよ。
伊藤
たしかに、いつも
「これはどうしてこの形なのかな?」
と思ったり、
「もっとこうすればいいのにな」
と考えたりしています。
テーブルの脚の形について、
カップの口あたり、
寝た時に目にはいる天井の質感、
身につけるものの着心地‥‥
いろいろ。
河野
たとえば壁について考え始めたら、
その間は結構壁について集中して考える?
伊藤
ずっと壁のことを考えて、
目にはいる壁の写真を撮ったり、
質感について考えたり。
そのおかげで、電車を
乗り過ごしたりするんですけどね。
河野
おもしろいなあ。
いま、雑誌の記事を読んでいると、
伊藤さんがなさっているようには、
記事が、編集者のからだを
1回通っていないところがありますね。
伊藤
「からだを通っていない」!
その感じ、わかります。
たとえばわたし、
何回も家を改装してるんですけど、
考えて実行してお金を使って失敗して、
はじめてわかることってたくさんあるんです。
河野
本はいいものを読まないと、
悪いものの判断がつかなくなるっていう一方で、
こんな本を買っちゃったっていう
「失敗」もないと、先に進まないんですよね。
伊藤
ほんとうにそのとおりです。
河野
さっきまさこさんと
雑誌を扱う古書店に行きましたね。
そこで昔の雑誌を見ていて
匂いが違うなと思ったのは、
あのころは、時代の空気を吸いながら、
編集者がその空気の代弁者として企画を出し、
読者に代わって、本当にお勧めだというもの、ことを
伝えていましたね。
ちょっと“押し出してる”感はあったけれど、
いまは、どっちかというと、商業寄り。
生産者の論理を汲んでっていうところで、
使い手の側からは、
ちょっと遠のいてるような気がします。
伊藤
いつからか、広告を取ることが‥‥。
河野
そうそうそう、そっちに力を入れてると思う。
雑誌っていうのはまさに「雑」、
その「雑」は悪いことじゃなくてね。
まさこさんがやってらっしゃるようなことは、
雑貨、雑品を扱っているわけだけれど、
生活っていうところに足を置いている。
「雑」(いりまじること)っていうところに、
ちゃんと自分の足で立ってる感じがするんです。
片や、雑誌は、カタログに近いところがあって。
伊藤
あたらしいモノをいかに多く載せるか。
河野
そっちからお金をいただいて、
そこの雑誌社のブランドイメージに乗せて、
いかに読者につなげるかを考えている。
カタログをカタログとしてつくったら、
いかにもそれは、読者とのつながりが生まれないんだけど、
出版社っていう粉にまぶしてカタログ“誌”を出せば、
どっちもいいじゃないのって、
そういうビジネスとして成立しているんですね。
伊藤
神保町に来て、いろんな古い本や雑誌を見ていると、
あらためてそういう発見がありますね。
今回、本の感想を書くのに古書をめくっていたら、
「黄色の‥‥」っていう一文があったときに、
本の間からポロッと偶然、
黄色の紙が落ちてきたんですよ。
そういうことも、古書のたのしいところです。
河野
僕が近年笑っちゃった出来事としては、
韓国から東大に留学していた留学生が、
帰国にあたって神保町で古本を買い込んだらしいんですよ。
そして韓国で国際学会があるというので、
僕の友人が韓国に行って、彼に会ったら、
「読んでいた本から、これが出てきました」って、
一枚の紙切れを渡されたんだそうです。
それは、僕の、大学の履修届だったんです。
伊藤
えーっ! まったく関係のないかたからですか?
河野
そうなんです。
その友だちが僕を知っていたから、
もらって帰って来て、僕に送ってくれたの。
すごいでしょう。
伊藤
すごいですね。その履修届には、
覚えがあったんですか?
河野
僕、その履修届にある授業は、
受けた思い出がないんですが、
おそらく、提出だけはしたんでしょうね。
そしてその本は、
僕が大学時代にお世話になった教授の蔵書で、
亡くなったとき、遺族が処分したものらしいんです。
なぜか「出したけれど出なかった授業の履修届」が
先生の本に挟まれたまま、市場に出たんですね。
それが、めぐりめぐって、海を渡ってやってきた。
すごいでしょう、こういうの。
ヤシの実以上に流れて着いたっていう感じ。
伊藤
すごいですね!
本の海を渡って、ほんとうの海も渡って、
学生時代の履修届が戻ってくるって。
本は、そんなふうに人をつなぐんですよね。
そういえばわたし、学生時代に夜遊びをしていて、
仲良くなった女の子がいたんです。
彼女は昼間働いて、
夜間のクラスに行っていたんですが、
わたしと、教室もテーブルもおなじだと知り、
いつしか彼女に渡したい本を
そのテーブルに置いておいて、
彼女はそれを受け取り、読み、
またおなじ場所に返して、と、
まるで文通のようなやりとりを
するようになったんですよ。
本を介して。
河野
おもしろいね。
さっき『洋酒天国』の豆本を
伊藤さんが買われたでしょう?
あれね、僕、全巻(36巻)持っているんです。
うちでは本の上に本を重ねて並べていて、
ちょうど昨晩、それが地震の影響で崩れちゃった。
そこにあの豆本のセットがあったので、
久し振りに取り出して眺めていたんですよ。
そうしたら、今日は最初に豆本ではなく、
親本の『洋酒天国』を見つけましたね。
そして店先に出たら伊藤さんが豆本を見つけた。
ちょっと不思議な縁ですよね。
本は、そういう思いがけない糸を
つないでいくんだね。
伊藤
今回、古書を売るという話をしたら、
「古書が1冊売れたら、
自分のつくった本が1冊売れなくなるんだよ」
とおっしゃった出版社のかたがいて。
なるほど、
経済の論理で言えばそうなのかもしれないけれど、
私が読まなくなった本を友人知人にあげるように、
知らない人でもまわりまわって、
読み継がれる、ってなんだかいいと思うんです。
河野
それを言い始めるとね、
図書館も敵になっちゃうよね。
伊藤
そうなんですよね。
ああ、いくらでもお話ししていられそうですが、
最後に、ひとつお聞きしていいですか?
その、東大のミック・ジャガーはその後‥‥。
河野
ミック・ジャガーはね、
高校の先生になりました。
きっといい教師だったと思いますよ。
伊藤
きっと、生徒から、好かれたでしょうね。
すごく年上の人は?
河野
わりに早く亡くなっちゃったんですよ。
伊藤
そうでしたか‥‥。
きょう河野さんのお話を聞いて、
学校っていいなって感じました。
河野
そういう気持ちはありますか、
これからでも、どこか入りたいと。
「ほぼ日の学校」に入ってみようとか?
伊藤
でも、いま、毎日が学校みたいなものなんです。
先生がうんと近くにいる学校です(笑)。
河野さん、ぜひまた、ご一緒させてください。
ありがとうございました!
河野
こちらこそありがとう。
またぜひ。
学校にも遊びに来てくださいね。

撮影協力:
神田伯剌西爾
magnif

100冊の古書[3]

未分類

37『呑めば、都 ─ 居酒屋の東京』マイク・モラスキー

生まれと育ちはアメリカ、
でも味覚と肝臓はすっかり日本人という著者が
日本の居酒屋の魅力を語ります。

といっても、
外から来た人の俯瞰した目‥‥ではなく、
もはや日本人以上に日本人の語り口。

そりゃそうだ! というタイトルにも、
思わず引き込まれました。

38『時をかけるヤッコさん』高橋靖子

スタイリストの草分け的存在の高橋靖子さん。

デヴィッド・ボウイや矢沢永吉、忌野清志郎など、
「とんでもないエナジーを持った」
スーパースターから、最近では、
オカモトズやももいろクローバーZをスタイリング。

いつも時代の先っぽにいる、
お転婆ヤッコさんのエッセイです。

39『幸せについて』谷川俊太郎

夏だったら、洗いざらしのベッドリネンに
体をすべらせた時。

冬だったら、ぬくぬくの毛布にくるまっている時。

おいしいものを食べている時。

好きな人が笑っている時。

「幸せ」について考えたら、
こんなことを思ったけれど、
でもじつは、幸せについてなんて考えない、
ふつうの毎日を送れていることこそが、
幸せなのかもしれないね。

40『池波正太郎のそうざい料理帖』池波正太郎/矢吹申彦

今日のごはん、何にしようかな?
自分の台所を持ってからは、
自分で好きなものを作れるのがうれしい。
けれど、それがめんどくさいこともある。
そんな時のために、そうだこんな風に、
食べたものを記しておけばいいんだ。

折詰の鯛の塩焼き
調理は塩と酒のみ
加えるのは豆腐のみ
薬味は刻み葱のみ
たとえば「鯛の塩焼き鍋」は、こんな風。
イラストとともに、
書かれたのはシンプルきわまりないメモ書き。
それがいかにもおいしそう。

41『Q健康って?』よしもとばなな

だれでも、健康でいたいって思っていると思うのです。
ことに年齢を重ねれば重ねるほど。

この本は、
健康のために「こうするとこうなる」というメソッドが
細かく載っているわけではありません。
それでも会話の中に、
あらゆる「そうなのか!」ということが
散りばめられていて、
読み終えたあと、なんだか自分の中に
新しい風が吹き込んできた、
そんな気分になるのです。

「病気も含めて、
その人らしいエピソードに満ちた人生になる。」

「体が生きたいように生きる
『身がまま』になることがベスト。」

そうなのか、そうなのかって。

42『愛する言葉』岡本太郎/岡本敏子

岡本太郎さんは青い字で。
岡本敏子さんは赤い字で。

それぞれの言葉は、純粋でまっすぐで、
目が離せなくなってくる。

「相手がすべてを捨てて、
こっちに全身でぶつかってくると、
それはやはり全身でこたえる。」(太郎さん)

「愛する」ってパワーがいるのだなぁ。
私にはできそうにないけど、
できそうにないからこそ惹かれるものがあるのです。

43『人生の道しるべ』宮本輝/吉本ばなな

宮本輝さんと吉本ばななさんの対談集。

タイトル通り、
人生の道しるべについて、
おふたりが語っているのだけれど、
その中で赤毛のアンの話が出てきます。
赤毛のアン!
すっかり記憶の向こうに置いて行ってしまった本なだけに、
なぜだか猛烈に読み返したくなったのでした。

全部、読み終えたらまたこの本が読みたくなるでしょう。
きっと新しい発見があるにちがいないから。

44『<とんぼの本>向田邦子 暮しの愉しみ』

新潮社のとんぼの本が、何周年だったか
何冊目だったかの節目の年に、
とんぼの本について何か書いてください、と言われて
迷わずえらんだのがこの本でした。

器、料理、服、買いもの、旅。
食いしん坊に贈る100冊の本、なんてのもあり。

向田さんを知る手がかりが、
この本にはぎゅっと詰まっているのです。

気風がよく、でもどことなく女らしい。
時にはおっちょこちょい。
私の憧れが形になったような人、
それが向田さんなのです。

45『かるい生活』群ようこ

年齢を重ねると、だんだんと、
「あれ? こんなはずじゃなかったのになぁ」と
嘆くことが多くなってくるもの。
新陳代謝のおとろえとか、
顔や体のたるみとか。
体だけでなく、
いろいろなことやものが、すこーしずつ重くなってくる。
そう、生きてきた分の重みがずしりと‥‥。

ベランダのゴミ、服、家族のしがらみ、
体の水分‥‥。

いろいろなものを軽くしたら、
気持ちも軽くなってきた、
そんな群さんのエッセイです。

46『森正洋の言葉。デザインの言葉。』森正洋を語り・伝える会/ナガオカケンメイ

森正洋さんがデザインした、
G型しょうゆさし、という醤油差しを知っていますか?
「知らない」そう思ったあなたでも、
きっとどこかで目にしているはず。
テーブルにひっそり馴染むその姿は、
とても「ふつう」。
でもその「ふつう」の中に、
さまざまな意匠が凝らされているのです。

「『あなたはそういうけれども、
やっぱりこれはいいんじゃないか』
『私の生活にはこれがいい』と、
自分なりのものの見方を身につけなければいけませんね。」

日本を代表するプロダクトデザイナーの言葉は、
もの作りをする人の心(そうでなくても)に、
きっとずしりと響くことでしょう。

47『イギリスだより ─ カレル・チャペック旅行記コレクション』カレル・チャペック

20代の頃、グリーンフィンガーに憧れて読んだ本が
カレル・チャペックの『園芸家12カ月』でした。
それから、この本は入れ替わりの多い我が家の本棚で、
ずっと変わることなく置いてある。
本棚にあるだけで、
なんだかほのぼのうれしいのです。

この本は、
フォークストン、ロンドン、ケンブリッジ、
オクスフォードなど、
イギリスのあちこちを訪れたチャペックの旅行記。
読み進めるうちに、自分がなぜだか
ご機嫌になっているのが、
チャペックの文の不思議なところ。
マダム・タッソーの蝋人形館の話に思わずクスリ。

48『秘密のおこない』蜂飼耳

蜂飼耳さんの本を読むのは、はじめてです。
だから「はじめまして」という気持ちで本を開いたら、
ぱらりと紙が出てきました。
あれ? と思ってよく見ると、
それはサインをする時に
向かい合わせのページに
インクが染み込まないようにするための紙。
そう、これはサイン本なのでした。

どういういきさつで、
今ここにあるのか?
本のいきさつをあれこれ推測できるのも
古書の楽しみのひとつです。

49『あの人に会いに』穂村弘

この本で、穂村さんは
「よくわからないけれど、あきらかにすごい人」に
会いに行き、話をします。
谷川俊太郎、荒木経惟、吉田戦車、
横尾忠則、宇野亜喜良‥‥。

「溢れそうな思いを胸に秘めて、
なるべく平静を装って。」

対談では「なるべく平静を装った」
穂村さんを感じますが、
「逢ってから、思うこと」という対談後記では、
じつはその時、
ひそかに緊張や興奮、高揚していたことが読み取れて、
なかなか興味深いのです。

50『高峰秀子 旅の流儀』高峰秀子

「寝心地のよいベッドと清潔なシーツと、タオル。
洗面所にお湯が出て、
エアコンが完全ならば、他のものは一切いらない。」
ホテルに「由緒」とか「最古」とか。
そんな肩書きは必要ない、という高峰さん。

日常を凝縮したもの、それが旅。
したがって旅の流儀は、
その人の流儀になるのではと思うのです。

51『完本 山靴の音』芳野満彦

山はおだやかでやさしく、
包んでくれるような大きさがあるかと思うと、
時おりとんでもなく意地悪でのっぴきならない。
山の近くに住んでいる時、
よくこんなことを思ったものです。

それと同時に、
私たち人間は自然の一部。
よく考えれば当たり前のことに
気づかせてくれたのも山なのでした。

のんきな山歩きをしている私の、
何倍、何百倍も山に近い
アルピニストの著者が感じる山とは?
ひそかに思いを寄せていた彼女から借りた
ピッケルの話が、
切ない。

52『すてきなあなたに よりぬき集』暮しの手帖編集部

かつて「暮らしの手帖」で
連載をしていたことがあります。
その時に、楽しみにしていたのがこの
「すてきなあなたに」のページでした。

この連載が始まったのは、1969年。
当時の編集長の大橋鎮子さんは、
「なにもない普通の暮らしのなかで出会った、
いろいろなことや、
お目にかかった何人もの方々のお話しの中から、
私が大切に思い、すてきだなぁと思い、
生きていてよかったと思ったこと、
私ひとりが知っていてはもったいない、
読者の皆様にもお知らせしたい。」
そう語っています。

「普通の暮らし」の中から生まれた、小さな話。
どの家にも、どんな人の心の中にも、きっとある。
あるけれど、それに気づくかどうか、
それが肝心。
気づける人になれたらいいね。

53『パリ仕込みお料理ノート』石井好子

時おり、
無性にサンドウィッチが食べたくなることがあります。
食パンを買いに走り、
バターをぺたぺたと塗って、
野菜やらハムやら、
焼いた卵やらをはさんでがぶりとやる時の、
幸福ったら!

「冷蔵庫に首を突っ込んで、
二枚の食パンにはさみきれないほど野菜や肉を積み重ね、
大口を開けて食べる。
ときには風呂場まで持ち込んで食べる。」
石井好子さんのエッセイに出てくる、
アメリカのブロンディーという漫画の亭主
ダグウッドのくだりが、
まるで、サンドウィッチを食べる時の私のようでおかしい。

大口を開けて食べる時、いつもこの一文を思い出すのです。

54『北大路魯山人』小松正衛

昔よく行っていた蕎麦屋の箸おきが、
なにやらよいかんじだったので、
いいですねぇと撫でながら褒めると、
なんとそれは北大路魯山人の作ったものでした。
その人の打つ蕎麦は
他ではけして味わえない味だったのですが、
なぜそうなのかといえば、
それは味だけでなく、箸おきをはじめとしたしつらえが、
そう思わせたのではないかと、今にして思うのです。

本の前半は、カラーとモノクロの写真で、
魯山人の作品を紹介。
その後、生い立ちが綴られます。
作品からは知りえなかった魯山人の素顔は‥‥?

(伊藤まさこ)

再入荷のおしらせ

未分類

完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
7月25日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。

saqui 丸衿プルオーバー

▶商品詳細ページへ

ブラック、ネイビーが入荷します。

「首や手首の出るバランスが絶妙なプルオーバー。

おしりがかくれるか、かくれないかの丈も

またいいかんじなのです。
同素材のパンツと合わせてセットアップにしても。

写真のように前身頃の裾を少しだけパンツに入れると

表情が豊かになります。」
(伊藤まさこさん)

saqui テーパードリボンパンツ

▶商品詳細ページへ

ブラック、ネイビーが入荷します。

「ウェストがゴムなので、
はいていて楽なのですが、
きちんとして見える計算されたパターン。
とにかくシルエットがきれいなのです。
コーディネートによって、
カジュアルにも、ちょっとおめかし風にもなるので、
1枚持っているととても重宝します。」

(伊藤まさこさん)

小ひきだし

▶商品詳細ページへ

2月、6月と入荷するたびに人気の小ひきだし。
今回も抽選販売で限られた数にはなりますが、
再入荷いたします。
ぜひこの機会にご応募ください。

「この小ひきだしを使い始めてしばらく経ちますが、
リビングに置いて、
いろいろなものを入れてはいいなぁ、
使いやすいなぁと思う毎日です。
そして、美しいなぁとも思う。
置いてある姿も、
また、ひきだしの中の様子までも。

小さなひきだしですが、
これがあるのとないのとでは大ちがい。
身の回りのこまごましたものが、
気持ちいいほどすっきり片づきます。

いつも、あれない、これない、どこいっちゃった?
なんて探しものをしているとしたら、
時間が少しもったいないと思う。
ものの置き場所をきちんと決めて、
こまごましたものをひきだしにおさめたら、
ものだけでなく、
気持ちの整理整頓にもなるはず。

入れるものは、あなたの自由。
使い方も自由です。
小さいけれど、大きな役割をしてくれる、
このひきだしはきっと暮らしの役に立つはず。」

(伊藤まさこさん)

 違う場所へ。

未分類

伊藤
いろんなところに連れて行ってくれるのが、
本というもので、
河野さんはそれをつくる、
そしてつくる人(作家)たちと
出会う仕事に就かれた。
中央公論社に就職して、どんな感じでしたか?
河野
先輩から最初に
「本は、読んでるのが一番いいよ」
って言われました。
「作家とつきあうとがっかりしちゃうよ」って。
でも、僕は、作家にそういう幻滅を感じることは、
あまりなかったんです。
あまりにも偶像視してる場合は
そうだったのかもしれませんが、
学生のときに実際の物書きと出会う場面もあったので、
こういう作品を書く人が実際はこうなんだと、
わかっていたところがありました。
そうした中で、本当に縁のある人が、
また人を紹介してくれたりして、
そこには著名な作家もいたりして、
いろいろな人を知ることができた。
そういう下地ができていたんです。
伊藤
「出会う」人だったんですね、河野さんは。
河野
伊藤さんも、きっと、おありでしょう?
自分の進路をパッと照らしてくれた人。
その出会いが若いときにあったから、
いまの自分がある、というような人。
アイスクリームから、次の何かに
連れて行ってくれた人。
伊藤
はい。いつも20ぐらい年上の大先輩がいました。
それが、いまは糸井さんや河野さんなのかな。
最初は20歳くらいのとき、
文学者でもあり、さるミュージシャンの研究家でもある方。
河野
はい。
伊藤
自宅をサロンみたいにしてらしたんです。
河野
ああ、あの家ですね?
伊藤
そうです。行かれたことあります?
河野
あります、あります。
伊藤
ミュージシャンのかたや、女優の卵とか、
いつも15人ぐらいが彼を慕って集まり、
だらだらとお酒を飲みながらいろんな話をするんです。
まだ若かった私は、
何なんだろうここは? と不思議に思いながらも、
すぐに馴染んで、大きなキッチンをお借りして、
ベトナム風揚げ春巻きをつくったり。
そこでは本当にいろんな出会いがありました。
河野
そういうことですよ。
利害に関係なく、
ちょっと変なやつが集まってる場が、
おもしろいと思うしね。
やっぱり、僕もね、年上の人が多かったかな。
お手本にするっていうよりも、
社会的な縁をつくってくれた人。
伊藤
そのときに誰かに言われたのが、
あなたは、決断が早いから、
分かれ道があったときにいろいろ考えるより、
パッと、こっち! って思ったほうを信じなさい、と。
それ、結構いまも守っているんです。
河野
なるほど。
伊藤
演出家の串田和美さんとは、
私が松本に住んでいた時に、よくお会いしていましたが、
「まさこさん、こんなおもしろい人がいるんだけどね」
なんて話をしてくださる。
その後、偶然その人にお会いできたりすると、
あのとき串田さんがおっしゃってたことって
こういうことだったんだなって思ったり。
おもしろいですよね。
河野
うん、うん。
伊藤
それから、娘が尾山台の
「オーボンヴュータン」のケーキが好きで、
ちっちゃいころからよく2人で行っていたんですね。
そこにはわたしの尊敬する
河田勝彦さんっていうシェフパティシエがいて、
ふと、こんなことをおっしゃったんです。
「うちのお菓子ばっかりじゃなくて、
いろんなお菓子を食べさせたほうがいいよ。
世の中にはいろんな味があるっていうことを、
絶対に、知ったほうがいいから」と。
なるほどな、と思いました。
河野
そういうふうに言ってくれる人がいるということ、
すばらしいですよ。
僕も感謝しているんです、
年上の人から、すごく親切にしてもらえたなって。
そして、なぜかはわからないけれど、
その仲間に紛れ込めたっていうこと。
たぶん伊藤さんも、
すごいそこでヒントをもらってると思うし、
逆にいうと、人に見られる自分を
発見するようなことも、
すごくあったと思いますね。
その揚げ春巻きも、
喜ばれることってこういうことなんだなとか、
何気なく放った言葉が
こういうふうに響いちゃうんだとか。
そういうことを若いときにやれてるっていうのは、
すごくいいですよ。
いまは、伊藤さんが
そういうことをやってらっしゃるんですよ。
伊藤
だんだん、年下の友だちが増えてきて、
そういう年になってきたのかな。
何かするつもりはないんですけれど。
河野
そんなふうに触媒になってくれる人っていうか、
ハブになってくれる人っていうのは、
とっても貴重だなと思っているんです。
僕も、さっき言った出版社に入って、
僕が編集者になろうと思った
きっかけをつくった編集長は、
入れ違いで辞めちゃうんですよ。
僕は、あてが外れたんで、
その方の家を訪ねて行ったんですね。
そしたら、その人の家にはいろんな作家や、
彼に世話になった書き手が、次々に来る。
なぜか僕は
「大学の勉強がおもしろくなくてグレたやつ」
「下宿でミステリーばっかり読んでたやつ」
っていう紹介のされ方で、
学生時代まじめに本を読んでいたのになあ、
と思いながら、何度もそこに呼ばれるようになり、
出版社の1年生が絶対に会えないような書き手に
次々とお会いするんですよ。
僕はその会社に入ってるんだけど、
その人は辞めているから、
そこで聞かされるのって、会社の悪口もあるんです。
そんな話を聞いているから、
新入社員にして客観的、っていう感じになる。
と同時に、やっぱりそこで話されてることは
おもしろいんですよね。
とってもレベルの高い話だし。
そういうところに居合わせるっていう
幸せ感がありました。
だからさっきの、伊藤さんがおっしゃっていた
「友人の家からとにかく5冊借りて来る」話、
それは半分以上直感だし、
偶然に身を任せるみたいなところがあるんだけど、
それがいいんだと思うんです。
僕もわりと、“仕事だから”誰を紹介するとか、
あまりそういうことじゃなくて、
誰かと誰かは気が合うんじゃないか、とか、
会ったらおもしろい話になるんじゃないか、と、
あまり考えないで、無責任に紹介しちゃう。
責任を感じたら、そんなこと、できないんですよ。
伊藤
紹介して、気が合わなかったら、
それでいいんですものね。
河野
それで終わりだし、それもアリだなと。
本もね、
「この本、君、絶対読んどいたほうがいいよ」
なんて言うのは、すごい押しつけがましいし、
もらったほうも窮屈だけど、
「この人に会ってみたら?」みたいな感じで、
どこまで本気かわからないけど、言われたら‥‥。
伊藤
すなおに受け取ることができますよね。
今回の企画も、買った人に
どの本が届くかわからないので、
「あなたのために」ではないんです。
偶然来ちゃったから、ちょっと読んでみようって、
そのくらいの気持ちでいてくださるといいな。
そのとき、ふーんとか思っても、
ずっと本棚にあって、何年かぐらいしてから、
しっくりくる本かもしれないし。
河野
伊藤さんは、ありますか、
ずっと本棚にあるような本。
伊藤
その人自体がすごく好きなのが、向田邦子さん。
きっぷのいい女の人が好きなんです。
高峰秀子さんも好きです。
上辺だけじゃなくて、気取ってないし、カッコいいし。
カッコいい女の人が好きなのかもしれません。
河野さんはずっと本棚にある本がありますか?
年に5、600冊古書店に行くなかで。
河野
あります、あります。
手放せないし、大事にいつか読むだろうと思いながら、
背中だけを見てる本っていうのもありますよ。
本当に読みたくなる時期が来るだろうなって、
予感をしている本が、いまも、ありますよ。
伊藤
出版社を辞められて、
いま、校長先生をなさっているわけですが、
そこに心境の変化はありましたか?
河野
あまりね、そこに大きな変化はないんです。
僕の中ではそのまんま来てる感じなんですよ。
紙の世界で本をつくるっていうことと、
紙ではないけど、ある空間に講座を開いて、
読者ならぬ受講生を迎え入れて授業をやる。
本質的には変わらないなと。
だから講座のラインナップを考えたり、
誰に講師として来てもらって、
どういう演出で話してもらおうかというのは‥‥。
伊藤
それが紙になるか、本になるか、
イベントか、コンテンツになるか、
その違いということなんですね。
河野
どうやって言葉を届けるか、でしょう。
読者がその言葉を受け取って、
どういうふうにそこから感じ取って、
その人の生き方に反映していくか。
学校のほうがダイレクトだから、
よりおもしろいよと。
出版は、最近また本が売れなくなっているので、
この企画じゃ売れないよとか、
常に数字に脅かされていますが、
学校は、すごくダイレクトに反応が返って来て、
こうやったらいいんだなと、
日々呼吸しながら常におもしろいことに
チャレンジできるという意味で、
非常にエキサイティングですよ。
伊藤
すぐ声が届くんですね。
河野
「届く」っていうよりね‥‥、
受講生、全然遠慮しないんですよ。
今度来てください。
伊藤
もじもじしないんですか?
トークイベントで、質問がある方、と訊くと、
みんなもじもじしちゃうんですよね。
学校にも、そういう感じの空気が
流れてるのかなと思いきや‥‥。
河野
違うんです。
シェイクスピアをやったときには
講師には大学の先生もいるし、
串田和美さんみたいな演出家もいて、
またアマチュアでありながら、
シェイクスピアを語る熱においては
専門家に負けないぞっていう人も入れたんですよ。
松岡和子さんって、シェイクスピアの全集を
まもなく完訳しようという翻訳家にも来てもらって。
すると、ほかのカルチャーセンターとか、
大学で教えてるときと
まったく違うって言うんですよね。
大学では学生からの反応はない、
みんな何を考えてるんだと思うところで
授業をしていると。
カルチャーセンターで教えていても、
もちろん勉強しに来ましたという高齢のかたが
静かに聞いてくれるわけだけれど、
「ほぼ日の学校」は受講生から圧を受けるっていうか、
熱気がすごくて、ついつい乗せられて
しゃべっちゃうんだと。
伊藤
嬉しいですよね。
河野
嬉しいですね、そういうふうに言ってもらったら。
講師の方からメールで、
「ほぼ日の学校」にはホスピタリティの空気があって、
すごく温かく迎えられて、
それは運営してるスタッフもそうだけど、
受講生もそうで、すごく楽しかった、
こんな思いを味わったことはなかった、
っていうふうにおっしゃってくださって。
雑誌ではね、そういう感じはないんです。
伊藤
そうですね、わりといま、SNS、
インスタグラムなどで行き来できるとはいえ、
一方通行のところが多いですよね。
河野
多いですよね。

撮影協力:
神田伯剌西爾
magnif

100冊の古書[2]

未分類

19『有元葉子の台所術』有元葉子

「これ以上ないくらい簡単なものだけれど、
きちんと手間はかけている。」
本に紹介されるのは、
有元さんがふだん作る料理についての工夫や考え方。

冷蔵庫の中は見通しよく。
箸の先に神経を集中させて、
その料理がいちばんおいしく見えるように器に盛りつける。

いつもきりりとしていて美しい人は、
なぜそうなのかの理由がちゃんとあるのです。

20『THE OUTLINE』深澤直人/藤井保

深澤さんがデザインしたものを、
藤井さんが撮る。
ぱらぱらとめくっていると、
あっという間にふたりの世界に引き込まれてしまって、
そんな自分にびっくりするのでした。

写真は一枚の風景のよう。
落ち着くかというとそうではなく、
本から何かものすごい「引力」を感じます。

21『小さな森の家 軽井沢山荘物語』吉村順三/さとうつねお

幸運にも、吉村順三さんが建築した家を
いくつか訪れたことがあります。
いつもなぜだか親しい人の家を訪れたような、
そんな温かな錯覚に陥るのが不思議でたまりません。

「暖炉右手のベンチは、
この山荘を建てる時に切り倒したニレの木でつくった。
緑色のおりたたみ椅子も僕のデザインだよ。」
第1章の「山荘案内」では、
こんな風に語りかけてくるのですが、
それが私だけに話してくれているような気分になって、
なんだかうれしい。

22『普段に生かすにほんの台所道具』吉田揚子/佐野絵里子

竹ざる、すり鉢、おろし具、せいろ、
シュロのたわしに曲げわっぱの弁当箱‥‥。
昔から日本の人々に使われてきた道具には、
料理をおいしくする「何か」があるのです。

それぞれの道具に合った料理や、
あつかい方、手入れの方法なども載っていて、
読みごたえあり。

久しぶりに巻きすを出して、
海苔巻きでも作ろうかしら? なんて思いました。

23『海苔と卵と朝めし』向田邦子

「日本に帰って、
いちばん先に作ったのは海苔弁である。」
この一文にそうだそうだ、
それがいちばん食べたいものだと膝を打って以来、
私も旅から帰ってすぐのごはんは海苔弁一辺倒。

思えば、向田さんの本からは
たくさんの「おいしい」を教えてもらった気がします。
「海苔と卵と朝めし」
「幻のソース」
「海苔巻きの端っこ」‥‥。
目次に並ぶ文字を追うだけで、
お腹がグゥと鳴ってきます。

24『地平線の相談』細野晴臣/星野源

クーラーが壊れてどうしよう? とか、
ベッド・シーンどうしよう? とか、
かけ算おしえてほしーの! とか。
細野さんと星野さんは、
自由にたのしそうにこの本の中で会話をしているけれど、
読者をけしておいてけぼりにはしない。
喫茶店に偶然隣に居合わせた、
おもしろいおじさんとお兄さんの話をこっそり聞いて、
思わず忍び笑いしてしまうようなたのしさが
この本にはあるのです。

25『しない。』群ようこ

群さんのエッセイには、
共感する部分がたくさんあって、
いつも本を手にしながら、
そうそう、
うんうんとうなづく自分がいます。

化粧、後回し、必要のない付き合い、
それから最後は、
自分だけは大丈夫と思うこと。

いろいろ「しない」と決めたら、
目の前がすっきり、さっぱり、
気持ちいい。

「しない」をする、きっかけになります。

26『おいしい人間』高峰秀子

「性格およそぶっきら棒、人づきあいは大の苦手で
『お前さんは変人です』と夫に言われる私──。」
という高峰さん。
それでも、
「筆を持てばやはり『人間に関することしか書けない』と、
自分でもこっけいになる。」

気風がよくて歯に衣着せず。
高峰さんの文章を読んでいると、
こちらもなんだかスカッとしてくるのです。

中の「おいしい人間」というエッセイに出てくるのは、
私も知る中華の店。
つつましやかな、あの店を
「よい」と思う高峰さんの舌のセンスのよさに、
舌をまくのでした。

27『つるとはな 創刊号』岡戸絹枝/松家仁之(編集)

ページを開くと、
川上弘美さんのエッセイ。
次のページは海辺に建つ、小さな家のこと。
小澤征爾さんへのインタビュー、
アイルランドの老姉妹のおはなし、
姿勢の正し方、
須賀敦子の直筆の手紙、
それからそれから‥‥。

ぜんぜん「雑」じゃない、
ていねいに編まれた「雑誌」が『つるとはな』なのです。
これは記念すべき創刊号。

28『夢で会いましょう』村上春樹/糸井重里

糸井さんと村上さんの対談集ではありません。
「短編集でもなく、エッセイ集でもないし、
かといって雑多な原稿の寄せ集めでもない」
そして、
「とにかくフシギな本だ」と村上さんは言うのです。

「ア」は、アスパラガス、アンチテーゼ、
「エ」はエリート、エチケット‥‥。と、
文字にちなんだエッセイが綴られます。
そして最後の「ワ」は、ワン(犬の鳴き声)でおしまい。
途中の「シ」のシティ・ボーイの糸井さんの文が、
洒落ていていいんですよ。

29『バウムクーヘン』谷川俊太郎/ディック・ブルーナ

白い小さな本は、
角の部分がまあるくしあげられていて、
読む人にやさしい。

見開きごとに、
書かれた詩は、
すべてひらがなと時々カタカナで
綴られていて、
これもまた読む人にやさしい。

バウムクーヘンってタイトルだって、
なんだかあまい匂いがただよってきそうで、
うれしい。

色とか手触りとか、
いろいろなものがやさしい。

30『パリのすてきなおじさん』金井真紀/広岡裕児

おじさんが67人いれば、
67通りの生き方があります。
もちろん、おじさんになるまでに、
いろいろなことがあったにちがいないのだけれど、
「それが人生さ」とばかりに、
自分の人生を軽やかにたのしんでいて、
なんだかいいのです。

「ほとんどの問題は、
他者を尊重しないことから起こる。」
「2分考えれば済むことを、
みんな大げさに考えすぎだよ。」

なるほど、なるほど。

31『アホになる修行 横尾忠則言葉集』横尾忠則

「まかせよう、運命に!」

「他人を信じる前に
自分を信じることができないと、
他人さえ信じることが
できないのではないか」

どこを開いても、
素晴らしい言葉が飛び出してくる。
まったく押しつけがましくない、
横尾さんによる人生の教科書。

32『開口閉口』開高健

「とれたての山菜にあるホロ苦さは
まことに気品高いもので、
だらけたり、ほころびたりした舌を
一滴の清流のようにひきしめて洗ってくれる。」

長い冬が明け、
やっと芽吹いた山菜を味わう時の気持ちを
どうあらわすのが
一番ふさわしいだろうと思っていたけれど、
この本のこの一文がそれを解決してくれました。

33『にょっ記』穂村弘

穂村さんの本を読んでいるといつも、
なぜこの人は、こんなにおもしろいことに
遭遇するのだろう? と思うのですが、
それは穂村さんが、おもしろいことに目を向け、
耳を傾けているから。
時間はだれにでも平等に与えられているのだから、
こんな風にキョロキョロして、
おもしろいことを見つけた方が、
ぜったいにたのしいにちがいない。

34『江戸切絵図散歩』池波正太郎

地域別に作られ、携帯に便利な「切り絵図」。
中で池波正太郎は、
「私のような江戸期を舞台にした
時代小説を書いている者にとっては、
欠かせないものだ。」
と語っています。

上野、築地、日本橋、渋谷、青山‥‥。
渋谷は新開地で、発展途上の街。
駒場の辺りは田園風景。
そこには私の知らない東京があるのでした。

35『恋愛について、話しました。』岡本敏子/よしもとばなな

よしもとばななさんと、岡本敏子さんの対談集。

「とにかく、変な枝ぶりの植木は
それなりにおもしろいのよ。」
これは、男性を植木に例えた岡本さんの名言。

名言は本のそこかしこに飛び出しますが、
それをばななさんが、うまい具合に受け止めて、
そのふたりのやりとりが、すごくいいのです。

36『へたも絵のうち』熊谷守一

「地面に頬杖をつきながら、
蟻の歩き方を幾年も見ていてわかったんですが、
蟻は左の二つの足から歩き出すんです。」

30年もの間、
家からほとんど出ず、
庭の植物や虫を観察し、
奥さんと碁を打ち、
絵を描いた熊谷守一さん。

この本では、その前、
子どもの頃や美術学校時代のことにも
触れられているのですが、
全編にわたって聞き書きだったというから驚き。
魅力的な「話し手」と、
それを引き出す「聞き手」によって、
こんな本ができあがるんだ!
と感嘆せずにはいられません。
だってまるで、すぐそばで熊谷さんが
話しているかのような、
自然な文体なのだから。

(伊藤まさこ)

 本とアイスクリーム。

未分類

伊藤
もともと本がお好きでいらしたから、
下宿にこもって本を読む生活は、
さぞやおもしろかったでしょうね。
河野
おもしろかったですよ。
伊藤
でも、読む本の中には、
馴染めないものもありますよね。
河野
もちろんありました。
入院してる間に夏目漱石と出会ったんですけど、
これは馴染みすぎて、サッカーに戻れなくなりました。
逆に、ある時代の女性作家の作品は、
ちょっと苦手だったかな。
いまの女性作家と違い、
昔の人たちが苦しんでいるテーマ、戦ってることが、
あまりにも自分と違うものだから、
理解はできるんだけど、感情移入したり、
好きな小説として愛読するっていうものじゃなかったな。
かといって、三島由紀夫ならどうかというと、
うーん? と思いながら、
それでも、とにかく読みました。
伊藤
とにかく、読むんですね。
河野
全集主義だったんですよ。
その作家の全部を読む。
そうすると、わかってくることがあるんです。
伊藤
くだらない話をしてもいいですか?
わたしは高校生のときに、
自由が丘のアイスクリーム屋さんを、
全部制覇しました。
お店ごとに、全種類食べるんです、とにかく。
そのときに知ったのは、
「食べ込まないとわからないことがある」
ということでした。
河野
同じく!
伊藤
すみません、くだらなくて‥‥。
河野
いや、そのとおりだと思います。
心としてはまったく同じ。
小林秀雄が言っていますよ、全集を読め、
その人と徹底してつき合えと。
それから、いいものを選べ。
おいしいものもそうでしょう?
おいしいものを食べていないと、
おいしくないものとのちがいもわからないしね。
器だって何だって、そうだし。
伊藤
そうですね!
河野
全部に通じるところがあります。
「全集を読め」。
だから、そういう意味で、
全集が出ているぐらいの作家っていうのは、
世の中で評価をされているわけで、
そういう人をとにかく、徹底して読めと。
伊藤
さっき、神保町の古書店を
河野さんといっしょに回ったら、
全集が安くなってるとおっしゃっていましたね。
かつての10分の1ぐらいの価格だと。
全集ってなかなか手を出せずにいましたが、
なるほどって思いました。
それで──、6年間、
ひたすら読むわけですか?
専攻に関する本も?
河野
僕は露文(ロシア文学)だったので、
それはもちろん読みました。
伊藤
原文で?
河野
僕に、ロシア語のことは聞かないでね(笑)。
ロシア語って難しいんですよ。
しかも、ドストエフスキーとか、厚いし、
でも学部の学生は、ロシア語を習いながら、
原文を1日数ページとか、
苦労しながら読んでいるわけです。
僕はそういうのが我慢できなくて、
サッサ、サッサ、ページをめくっていきたい。
だから、ロシア文学は全部翻訳で読んでいます。
しかもみんなより先に読んじゃうわけだから、
早々と生意気なことを言うわけですよ。
「『悪霊』? 先週とっくに読んじゃったよ」
なんて。ドストエフスキーを制覇して、
ドストエフスキーという作家について語りたいのに、
みんなは原文にかじりついて、
はぁはぁ言っているわけです。
伊藤
(笑)小学校のころの読書感想文に始まり、
いつもすごく俯瞰したところから
「読むこと」を見てらっしゃいますよね。
河野
そういえばサッカーもそうですね。
僕は最初から監督志望なんです、選手じゃなく。
これも不思議だと思います。
選手としては一流には絶対届かないと思ってた。
伊藤
最初から編集長だし、
「ほぼ日」では校長先生。
飛び級みたいな?
河野
押しつけやすいんじゃないかな?
僕にそういう能力があるっていうことじゃなくて。
だって、編集者になろうと思ったのも、
中央公論編集長の日記を読んで、
こういうのがおもしろいんだなと、
お手本を真似たわけです。
大学のサークルで雑誌をつくったのも真似事ですし。
伊藤
そんなふうになにごとも俯瞰する河野さんが、
安部公房の小説は
熱に浮かされたように読んだということは、
それだけは心にズドーンと来たわけですか。
河野
うん、結構、ズドーン! だったかな。
全然日本的じゃなくて、じめじめもしてないし、
SF的なつくりで、驚いちゃった。
男が突然箱をかぶって生活し始めたりとか、
砂丘で生活する女がいて、
男がそこから出られなくなってしまうとか。
最初の伊藤さんの話につながるけれど、
ポーンとあっち側に飛んじゃう感覚ですよ。
絶対に日常の自分が考えもしないところに追い込まれて、
いろんなことを考えさせられるのが
おもしろいと思ったんです。
生活とべったり地続きの私小説が多い、
そんな日本の文学風土のなかで、
安部公房は思い切って違うことをやっていたわけです。
とはいうものの、私小説作家の“情痴小説”も
大好きだったりするけれど(笑)。
伊藤
同じものでも、読む年齢によって違いますよね。
河野
違いますよね。
伊藤
でも、小説家になろうとは
思わなかったんですね。
河野
自分が作家になろうとは思わなかったです。
ああいう才能はない。
いろんな作家を読んでいたり、
“動物園”みたいなクラスで、
さまざまな個性を見ていると、
ますます俯瞰するような感じで見るようになりました。
伊藤
そっか、だから、まさに編集者。
河野
ずっとそういう感じかな。
人とつき合ってて、好き嫌いも、もちろんあるんだけど、
個性の違いをおもしろがるっていうか。

撮影協力:
神田伯剌西爾
magnif

100冊の古書[1]

未分類

1『コーヒーと恋愛』獅子文六

主人公のモエ子が入れるコーヒーは、
一度飲んだら飛び上がる味。
「こんなおいしいコーヒーは東京中歩いたって
飲めるものではない」
と無類のコーヒー好きの勉君は言います。

モエ子と勉君はコーヒーがきっかけとなって
いい仲になりますが‥‥。

さてこの先は読んだ人だけのおたのしみ。

物語の舞台は昭和30年代。
「獅子文六」という著者名を伏せ、
文中に今時のツール(携帯電話とか)を足したら、
令和の恋物語と思う人もいるんじゃないかな。
なんて感じさせる、
軽やかで生き生きしたラブストーリー。

2『ラオスにいったい何があるというんですか?』村上春樹

季節外れのギリシャ、
夏の盛りの(でも寒い)フィンランド、
「ほとんど何も知らない」ラオス‥‥。

旅する数だけ、
今まで見えなかったものが見えてくる。
旅する数だけ知らない景色に出会える。

その先に何があるのかは、
旅した人でなければ分からない。
だから人は旅に出るのかもね。

3『贅沢貧乏のお洒落帖』森茉莉

森茉莉さんの文章を読んでいるといつも、
永遠に手がとどかない、
とどかないからこその憧れのようなものを感じます。

「贅沢はお金では買えない。
幼い時からの食物、体を洗ってきた石鹸の類、
わずかの間着ては捨ててきた下着の数、
嗅いで育った煙草がどんな煙草か、見た絵本の種類。
(中略)
それらの条件で贅沢ができる人か、
しようと思ってもできない人か定る。」

はい、そうですと頭を垂れるばかりです。

4『夢について』吉本ばなな

夢についてのエッセイをまとめたこの本を読んで、
そういえば最近まったく
夢を見ていないことに気がつきました。
夢はいつだって唐突で辻褄が合わなくて、
とんちんかんなことばかり起こるけれど、
目が覚めた時の「???」の感じは嫌いじゃない。

今は夢が見られるくらい、
睡眠にゆとりができることが、私の夢。

5『ジーノの家』内田洋子

本のいいところは、開いただけで、
行ったことがない場所に自分を連れて行ってくれたり、
会ったことのない人に会ったような気分に
させてくれるところではないでしょうか?
私はこの本を読んで、
菜の花のパスタを食べたり、
胸の広く開いたブラウスを着た、
ルンバの歌い手に会い(ような気になった)ました。

そして、無性にイタリアに行ってみたくなりました。

6『蚊がいる』穂村弘

表紙のインパクトに手を取ったら、
穂村弘さんの随筆集でした。
クレジットを見ると、
装丁は横尾忠則さん。

穂村さんの文が読めるだけでなく、
横尾さんのデザインまでたのしめるなんて!と
勝手に得した気分でにこにこ。

中の紙の質感もいいんです。

7『夜明けのブランデー』池波正太郎

「あれ、これ絵も池波さんが書いているの?」
と表紙を見た娘。

ブルターニュ地方の婦人の民族衣装、
お祝いにいただいた万年筆、
東北地方を旅して集めたこけし‥‥。
どの絵も、いい感じに肩の力が抜けていて、
眺めていてなんだか心地いいのです。

エッセイの名手は、絵の才能にも長けていて、
「天は二物を与えず」という言葉は、
池波さんには当てはまらないのだなぁと、
この本を見るたびしみじみするのでした。

8『ミナを着て旅に出よう』皆川明

ただ「かわいい」だけじゃ、
こうもみんなの心をつかむ服は作れないと思うのです。
この本の中には、
ミナの服ができあがるまでの
皆川さんの心の中の様子が書かれていて、
なるほどなぁと思ったり、
そうだったのかと感心したり。

本が出版されたのは2003年。
もしかしたら今のミナファンは、
知らないことも潜んでいるかもしれませんよ。

9『礼儀作法入門』山口瞳

人生のセンパイからは
学ぶべきことがたくさんあって、
それが一冊の本にまとまっているのは、
なんともありがたい。
本棚から時々、取り出して読み返したい本です。

「マナーに関しては、
美しく見えることが正しいことなのである。
ミットモナイことは悪である」

ほんと、その通り!

10『文学ときどき酒』丸谷才一

一人称で語られるエッセイとはまた別に、
対談形式の場合は相手がいるものだから、
話しが思わぬ方向に
いったりきたりすることがあるものです。
ましてや丸谷さんの話し相手は、
ただものならない作家や評論家。
おもしろくないわけがないではありませんか。

会話の途中に入ってくる本を、
読んでみたくもなったりして‥‥。
こうして読書の幅が広がっていくのですねぇ。

11『私の小さなたからもの』石井好子

石井さんのエッセイは、
たいてい読んだつもりになっていたけれど、
知らない話しがまだまだたくさん潜んでいました。

「小さなたからもの」は、ものだけにあらず。
胸を打つ手紙、
古くからの友人と過ごす時間、
汽車の旅‥‥。

自分の中の小さなたからものを、
探すきっかけになる本です。

12『猫語の教科書』ポール・ギャリコ

まず、この本のたたずまいがいい。
黄色をベースにした装丁はちょっと洒落ているし、
タイプに向かった知的そうな猫の写真も
興味をそそられるではありませんか。

第1章は人間の家を乗っ取る方法、
第7章は魅惑の表情をつくる、
第15章は別宅を持ってしまったら。

頭がよくてちょっとシニカル、
観察力がするどく、策略家。
猫の視線ってこうなのねぇ、
ちょっとモテる女の人みたい。

13『私の釣魚大全』開高健

その昔、冬の湖の
ワカサギ釣りに誘ってくれた人がいました。
その時私は、
じっとしていられないタチだから
きっと向かないだろうし、
だいいち寒いじゃない!
と断ってしまったのです。

あの時、
「ワカサギ釣りは冬のお花見であること」
の章を読んでいたら、
きっと喜び勇んで出かけたことでしょう。
だってなんだか楽しそう。
なんていったって「お花見」なのですから。

14『新しい分かり方』佐藤雅彦

分かっているつもりになっていても、
分からないことは山ほどあるものです。
ものごとは、ひとつの側から見てばかりいると、
おもしろくないし、広がらない。
この本の中には、なるほどねぇと思うことが
散りばめられていて、
読み終えると、なんだかいつもの毎日が
新鮮に思えてくるのです。
佐藤さんの無駄がなく温かい文とともに、
写真やイラストもたくさん載っていて
ページをめくるのが楽しい。
親子でたのしめそうな本でもあります。

15『毎日っていいな』吉本ばなな

必死になって文字を追い、
ページをめくる(終わるまで、寝つけもしない)
推理小説とはちがい、
どこから読んでも、ほのぼのあったかい気持ちになる、
こんなエッセイ集はありがたいものです。
毎日っていいなと思うとともに、
家族っていいな、
友だちっていいなとも思わせてくれる、
そんな本。

16『私の住まい考』有元葉子

家の下見に来た時に、そこを借りようと決めたのは
ピアノとバイオリンの音が聞こえてきたから。

いつだって自分に正直で、
自由に生きる有元さんの「住まい」の考え方。
押しつけがましさなんて1ミリもなく、
読むと自分まで風通しがよくなるのです。

17『ゆるい生活』群ようこ

体の不調から、漢方の薬局に通いはじめた群さん。
「みんな食べる物に
興味がなさすぎると先生はいつもいう。
何が流行か何が安いのか、
どの店が人気あるのかには興味あるのに、
その食べ物の質までは考えていない。」
先生とのやり取りの中から、
毎日、口にするものに気をつけ、
自分の体の声に耳を傾けて‥‥。
微妙な年頃にさしかかった人も、
またそうでない人にも読んでほしい。
だって自分の体は自分で作るしかないのだから。

18『こうちゃん』須賀敦子/酒井駒子

文と絵が、交互に、時には合わさって。
大事に作られた本ということがよく分かる、
すてきな一冊です。

「なんだ、きいろのぷちぷちはおかしいだろう。
おみなえしだよ。」

21ページ目のこんな一文を読んでいたら、
本の間からきいろの何かが落ちてきました。
前の持ち主を感じさせるのが、
古い本のいいところ。
そのままお届けしますね。

(伊藤まさこ)

 サッカー少年の挫折。

未分類

伊藤
大学を卒業されてから
編集者になられたわけですが、
10代のうちから、そうなりたいと
思っていらしたんですか?
河野
そのゴールは、決めていなかったですね。
大学のときに、改めて本と出会ったわけですが、
それをどういうふうに職業として具体化していくか、
というイメージはなくて。
大学‥‥6年いたんですよ。
伊藤
あら?!
河野
勉強が好きだったので‥‥本当ですよ。
それに、長くいたからといって怒られるところでもない、
とわかったので、ちょっと長めにいたんです。
でも、将来の選択肢は、そんなに多くなくて。
文学部だったし、学者になる道も考えました。
でも学者というのは、ひとつのことを、
コツコツ、コツコツやっていく仕事ですから、
向いてないと、ハッキリ思ったんです。
ではどういう仕事がいいのかな? と考えていたときに、
たまたまある雑誌で、中央公論の編集長が
仕事日記を連載しているのを読みました。
そこには彼の日常が書いてあって、
おもしろい本に出会うと、
著者を訪ねてあちこちへ行くんです。
うらやましくてね。
そこで話をしたことが翌月のプランに生きて、
会った人の著作にも反映されていくんだと知り、
そういう職業があるんだ、それが編集者なんだ、
ピーン! と思ったんです。
それで中央公論社っていうところに入りました。
伊藤
いきなり、編集者に?
大学のときは‥‥。
河野
サークルみたいなところで、
雑誌をつくってはいました。
何も知らないのに、最初から編集長で。
というのも、先輩がいなかったからなんですけれど。
伊藤
先輩がいないということは、
サークルを立ち上げたんですか。
河野
芥川賞作家も輩出していた由緒ある文学研究会が、
大学紛争で休眠状態になっていたんです。
でも、部室もあるし、名称も残っていた。
だから、それを復活させれば、誰かと集まって、
ダベったりするのに部室を使えていいな、と、
そんな考えで大学に申請したら、通ってしまった。
けれども
「有名無実じゃ困るので、
部としての活動を示してください」
って言われたんです。
「何をすればいいですか」
「たとえば同人誌をつくるとか?」
「じゃあ、つくります!」
みたいな形で、いきなり雑誌をつくることになりました。
どうやってつくるんだって、誰もわからないんです。
「誰か原稿書けよ!」
「書くやつ、いないよ」
「じゃあ、俺が書くか」
って。
伊藤
どんなものを書かれていたんですか。
小説を?
河野
小説を書く自信はなかったですよ。
エッセイとも評論ともつかないものかな。
伊藤
河野さんは、大学紛争の世代よりは‥‥。
河野
ちょっと下です。
なので文化系サークルも紛争でほぼ休眠状態。
僕よりちょっとあとに、野田秀樹さんたちが出てきて、
あらたに演劇活動を始めます。
僕の頃は、学生紛争の名残で、
内ゲバなんかもあったり、陰惨な感じがありました。
伊藤
その状態をどう思われたんですか。
河野
「何をやってるんだ?」と思ってました。
学生運動そのものが形骸化して、
セクト対セクトの憎しみだけが
残っているみたいでしたから。
いっぽうで、僕の属していた語学クラスは、
吹き溜まり中の吹き溜まりみたいなところで、
そっちのほうが、おもしろかった。
伊藤
吹き溜まりって‥‥、東京大学ですよね。
河野
そうなんですけどね、同級生20人で、
10人が女性なんですよ。これも珍しい。
しかもそれぞれが、かなりの個性派ぞろい。
10人の男も、僕が最年少。
大学に現役で入って来て
何も知らないっていうのは僕だけでした。
一番すごかった人は、昭和5年生まれで、
僕が28年生まれですから、23歳年上でした。
彼は中学を出て炭鉱で働いて、
そのうちいろんなことがあって
炭鉱の仕事に見切りをつけ、
そこから調理師をめざすんですよ。
調理師免許を取って、調理人になって、
料理本を出そうとしたのだけれど、
いくら自分ががんばっても、
人においしいところを持っていかれたりして、
そのことに彼はすごく憤ったんです。
そして、自分に学歴がないからだ、悔しい、と、
検定で高校卒の資格を取って、受験勉強をして
入って来たっていう人でした。
伊藤
すごい‥‥。
河野
日活ロマンポルノの俳優をやっていた、
っていう男もいたんですよ。
伊藤
!!!
そんな刺激は、高校を卒業したばかりの
十代の男の子には‥‥。
河野
もう、目が点になるわけですよ。
それから、もう、とにかくね、
見てくれからしてすごいやつがいて、
風体はミック・ジャガーみたいなんだけど、
小さいときに病気をして、足に障害がありました。
そいつがギターをかき鳴らして、
吉田拓郎の「人間なんて」なんかを歌うと、
もう誰も文句の言えない迫力だったんです。
さらに、1年、2年上の学年から
落っこちてきているのもいる。
そういうのが、ひしめいてるクラスでした。
そんな中にいるとね、
タテカン(立て看板)の前でがなってるやつらのコトバが、
本当に子どもっぽくて空々しく聞こえてしまうんです。
伊藤
その時代、河野さんが、
本をまた読もうと思ったきっかけは
何だったんですか?
河野
一番のきっかけは──、
そもそも、僕は高校に入ったとき、
将来就きたい職業は全日本サッカーチームの監督、
って書いたぐらいのサッカー少年だったんです。
それから高校3年になる昭和46年かな、春休みに、
当時の全日本のサッカーチーム、いまでいう日本代表が、
海外チームとの対戦を前に合宿をやります。
それを見たいと思ったんだけれども、
いまみたいに、インターネットも何もないから、
どこでやっているのかもわからない。
そうだ『サッカーマガジン』の編集部に
行けばわかるだろうと、
岡山から東京に出てきて、
神保町の近くにあった
ベースボール・マガジン社を訪ねるんです。
これが世に聞く神保町かと思って歩いたのを覚えています。
そして、練習場所を教わって、
その足で久我山にあったNHKグラウンドで、
代表チームの練習を見ます。
そこで当時の全日本のコーチや監督と
はじめて話をするんですよ。
それから、まだ
原宿と渋谷の間の岸記念体育館にあった
日本蹴球協会を訪ねて、
いろいろ資料をもらったりして帰ります。
そういう青春期なんですよ。
そうして大学に入ると、
僕の1年上の高校時代の先輩が
サッカー部に入っていたので、
有無を言わさず練習に来いって言われて。
伊藤
ええ。
河野
岡山県大会で優勝してインターハイに出たこともあって、
最初からきつい練習メニューでした。
たちまち入学後の健康診断で血尿、
要再検査といわれたんですが、
その頃は血の小便が出て一人前、みたいな、
そういう時代です。
こんなもんだと思いながら、やっていたんですね。
ところが、さすがにからだの調子を悪くして、
1カ月、入院しちゃうんですよ。
さらに悪いことに医療ミスが起きて、
七転八倒してるところに
高校のときのサッカー部のマネージャーが来て、
僕のあまりの苦しみように
「河野君が死んじゃう!」って大騒ぎして、
高校サッカー部のみんなが順番に
見舞いに来たぐらいだったんです。
伊藤
そんなドラマが‥‥。
河野
病院から出たときはフラフラ。
幽霊のようになって、
みんながサッカーをやってるのを見て、
どうしてもそこに戻ろうっていう気持ちが
自分の中に湧いてきませんでした。
ああ、自分は、そこまでサッカーを好きじゃないんだな、
これが才能の限界だなって、思ったんです。
それで、いずれ読もうと思っていた本の世界へ、
よしっ‥‥、と。
切り替えたら、今度はそっちに一直線。
そこからはね、もう、下宿にこもって、
夜じゅう起きて本を読んで、朝になって寝る、
そんな生活が始まりました。
伊藤
何を熱中してお読みになったんですか。
河野
そうだな‥‥最初に熱中して読んだのは
『安部公房全集』でしたね。
同時に日本の近代文学は
ちゃんと読んでおかなきゃと、
主だった作家の全集を順番に読んだんです。
だから、安部公房のような現代文学、
それから外国文学、3本立てでどんどん読みました。

撮影協力:
神田伯剌西爾
magnif

 深呼吸をするように。

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伊藤
今回「weeksdays」で紹介するのが、
SHOZO COFFEEの瓶詰の、
シロップ入りコーヒーエッセンスなんです。
牛乳で3倍に割ると、甘みのあるカフェオレ、
大人っぽいコーヒー牛乳ができます。
もうすぐ夏休みに入ることですし、
そんなおいしい飲み物と一緒に、
ゆたかな時間を提供するようなことをしたくって、
いっしょに古書を売ることにしたんです。
「たのしむ時間」ごとお届けするコンテンツにしたくて。
河野
なるほど。
伊藤
それで、長野県上田市にある古書店、
バリューブックスさんに協力していただいて、
本をあつめて、一緒に届けようということになりました。
以前「生活のたのしみ展」で河野さんがなさった、
「河野書店」
「出会う古本X(エックス)」という
企画がありましたよね。
包装して中身が見えないまま、
それがどんな本なのかはわからない状態で
短い解説文つきで販売をするという。
それに近いことを、100冊、やろうと思うんです。
河野
もしかして、100冊の解説文を、
伊藤さんが書かれるの?
伊藤
はい、1冊につき、200文字ぐらいですけれど。
河野
それはすごい。
ひとことでも、書くのは大変ですよ。
伊藤
でも、楽しいですよ?
河野
楽しいけど‥‥。
ひとつずつどんどん書いていくんですか。
それとも、ためらって、ちょっと脇に置いたり?
伊藤
ためらってる暇はありません(笑)!
河野
じゃあ、パッパ、パッパ、次から次へ。
それもすごい。
伊藤
本を読み終えた時、一番心に残ったことを
書き留めていきました。
仕事柄、献本いただくこともありますが、
お返事は全て、その第一印象を書きます。
河野
いやいや、短いひとことの感想って、
簡単なことではないですよ。
僕は本を頂いたら、とにかく早く
返礼を出すようにしていますが、
「本日貴著落掌」とか、そういう感じで、
感想を書くには至らないなあ。
伊藤
日々送っていただくから、
だんだんそれに慣れていき、
お礼をしなくなるのが嫌だなと思って、
とにかく、すぐ読んで、
すぐ返すようにしているんです。
河野
でも、それ以外の本もお読みになるわけでしょう?
伊藤
はい。本が好きです。
本のいいところって、急に知らない世界に、
ポイッ! って入れるところですよね。
魔法使いになったり、昔の世界に行ったり、
人の家に入って、食卓に加わらせてもらったり。
本を読むとそういうことができるのが、
すごくおもしろいなと思っていて。
世界には、それが無限に、
本の数だけあるわけじゃないですか。
河野
いま何気なくおっしゃってるけど、
本好きじゃない人って、その
「何にでもなれる」っていうところに、
最初の高いハードルがあるんです。
日常が重くあるから、
なかなか本の世界に飛び込めない。
それが本に対する苦手意識のひとつです。
伊藤さんは本の世界は無限にあるっておっしゃるけど、
飛び込みやすい世界はこれぐらい、っていうことを
決めている人が、多いんですよ。
本を読む人が減っているなか、
無限にどこにでもポンポン入って行けるっていう人が
さらに少なくなっているから、
伊藤さんはマイノリティ×マイノリティです。
伊藤
(笑)わたしが最近おもしろいなと思っているのは、
友だちの家に行って、
ヒョイって5冊ほど、本を借りてくることなんです。
えらばず、無差別に。
読んでいる本は人をあらわすなぁと思うと同時に、
本棚を見るのもたのしい。
予め、ちゃんと背表紙も揃えて、
見られてもいい本棚をつくっている人もいて、
性格が出るなぁと。
河野
並べる本の高さや色まで揃っていたりしてね。
伊藤
そう、誰に見られても胸を張っていられる本棚を
つくっている人もいますし、
本当に適当だなぁっていう人もいて、
本棚の設えひとつとっても、すごくおもしろい。
そんな人たちから借りる5冊は、
思いも寄らない、
知らない世界に連れて行ってくれるんです。
河野
それ、おもしろいね。
やったことなかったな、
人の家で5冊、バッと、っていうのは。
人の本棚には、興味がありますけどね、たしかに。
伊藤
ありますよね、やっぱり。
でも見られたくない人もいますよね。
その人の性格も、あるでしょうし。
河野
そのへん、どうですか? ご自身の本棚を、
訪ねて来た人に見られるのは?
伊藤
本棚は全然恥ずかしくないです。
というか、うちは、
どの扉を開けてもいいようにしています。
もちろん食器棚も大丈夫ですし。
河野
なるほど。本の入れ替えは
どれぐらいされてるんですか?
伊藤
本棚に入らなくなると、近しい人に
さしあげるようにしています。
洋服、食器、雑貨、ぜんぶそうしているんです。
河野
誰からも嫌がられない趣味ですね。
古本屋さんに来てもらうのではなく、
そうやってこまめに整理していく。
伊藤
「いったんあの人の手にわたったんだ」って思うと、
行き先がわかってうれしいんです。
河野さんもきっと、ご自宅の本の量、すごいですよね。
あふれた本はどうなさっているんですか。
河野
僕は20代から、決まった古本屋さんに
来てもらっているんですよ。
年に1回、年末に、5~600冊かな。
伊藤
えっ、1年に?!
河野
それを40年やってます。
伊藤
ご自身で買われる本も多いですよね。
河野
はい、新刊も古本も。
伊藤
読む時間はどうなさっているんですか。
河野
なんだろうな、
朝、深呼吸をするように。
伊藤
「深呼吸をするように」! わぁ!
河野
そんなカッコいい話じゃないですよ。
伊藤
その「深呼吸」は、
ちっちゃいころからされてたんですか?
河野
小学生のころは、夏休みなら、
早起きして、ラジオ体操に行く前に読むとか、
ラジオ体操から帰って来て読むとか、
そういう時間は持っていました。
でも午後は遊びに行っちゃって、
本なんか全然読まないし、
夜は疲れて8時半を回ると寝ちゃう。
ヘトヘトになるまで遊んでいましたよ。
男の子ですから。
伊藤
子どものころって、夏休みの宿題に
読書感想文がありましたよね。
それは得意でしたか?
河野
書き方が決まったものは好きじゃなくて。
読書感想文はこういうふうに書けば通りがいい、
っていうのがわかった時点で、嫌になったんです。
中学、高校のころは、
本当に本を読まなかったんですよ。
読みたい、という気持ちはありながら、
サッカーに明け暮れる毎日で、
本からは遠く離れていました。
だから夏休みは、とにかく一番薄い本を選んで、
読書に時間をなるべく割かないようにして、
適当な感想文を書いて提出していたんです。
でもね、いつか自分は本をすごく読むだろうな、
っていうことは、思い続けていました。
それで大学へ入ってからすこしして、
本ばかり読むようになったんです。
先日インタビューを受けて、
中高生のころのことを話したら、
「そのころは、まだ見ぬ恋人だったんですね、本が」
と言われました。
たしかに、そういうふうに言われれば、そうだなって。

撮影協力:
神田伯剌西爾
magnif

上田の古書店、VALUE BOOKSのこと。

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今回「weeksdays」で「こんな本がいいな」という
伊藤まさこさんのリクエストを受けて、
100冊の本をあつめてくださったのが
上田の古書店、VALUE BOOKS。
彼らの倉庫は、巨大な図書館なみで、
その蔵書数は、なんと183万冊。
ほんとうに「ありとあらゆる」本が
集まってくるのです。

インターネットで本を売買する、
その仕組みごと開発をしたのが、
VALUE BOOKSの若き社長である中村大樹さん。
中村さんはなによりも本が好きで、
「人と、本が、出会う機会をつくりたい」
と考えたことが、起業のきっかけだったといいます。
本を通してくらしが豊かになることを、
まっすぐに信じているのですね。

古書に定価はなく、「市場価値」で取引されます。
みんながほしいのに数が少ない本には高値がつき、
とても有名なベストセラーでも、
あまりに流通している数が多いと安く、
ときには「古書としての価値がない」と判断されることも。
その価格は、本の内容や文化的な価値とは、
ほとんど関係がない。
なんともふしぎなことですが、
中村さんは、市場価値がつかなくても、
それが「いい本」であれば、廃棄をせず、
きっと読み手がいることを信じて、
老人ホームなどの施設や学校に無償でとどけたり、
上田市内の直営店で、うんと安い価格でおすそわけを
したりしています。

そんなVALUE BOOKSに、「選書」の仕事をしてきた
編集者の飯田光平さんが参加したことから、
「本のある暮らし」の提案は、
VALUE BOOKSの得意科目のひとつになりました。
上田市内にオープンしたカフェ併設の古書店「NABO」(ネイボ)は、
おいしいコーヒーやお菓子をたのしみながら、
テーマごとにつくられた棚をめぐって、
本をさがすことができるお店です。

▲飯田光平さん


今回、伊藤まさこさんのリクエストに
応えてくださったのも、飯田さん。
「夏休みに、おいしいカフェオレといっしょに
時間をすごす本」というテーマ、
そして伊藤さんの読書の傾向をみて、
「えっ、そんな本があったの?」
「知っていたけど、読み逃していた!」
そんな本があつまりました。

ラインナップは、すべて、「weeksdays」の
コンテンツで、伊藤まさこさんのコメントといっしょに
紹介をします。
どうぞ、おたのしみに!

SHOZO COFFEEのカフェオレベースのこと。

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カフェオレベースは、
2年前ぐらいから展開しています。
お家でもおいしいカフェオレを
たくさん飲んでいただきたいなと、
つくったアイテムなんです。

カフェオレに使うコーヒーは、
濃いほうがおいしいのですが、
ふつうにお家でドリップコーヒーを淹れると、
牛乳で割ったとき、コーヒーがうすくなってしまう。
フランスやイタリアのように
機械で圧力をかけて抽出した濃いコーヒーを
たっぷりのミルクで割ればおいしいのですが、
それを家庭で再現するのは難しいですよね。
やっぱり気軽にお家で
おいしいカフェオレを飲んでほしいという思いが
ずっとあって、その一つの答えが、このアイテムです。
もともとSHOZO COFFEEが
カフェオレで出している斉藤珈琲の豆を使って、
お店の味を再現できるよう、開発したものです。

ちょっとお砂糖が入ってるほうが
カフェオレはおいしいという思いがあって、
3倍の牛乳で割ったとき、甘すぎず、
ちょうどいい按配になるように
砂糖の分量を調整しています。
「小っちゃいころ好きだったコーヒー牛乳の、
大人っぽい感じ」と言ってくださるかたもいます。

ミルクを替えると、味も変わりますから、
脂肪分の濃い牛乳、低脂肪乳、無脂肪乳、豆乳、
いろいろ試していただけたらと思います。
ちなみにSHOZO COFFEE STOREでは
市販の乳製品メーカーの無調整の牛乳を使っています。

容量は、275ミリリットル。
3倍の牛乳で割るので、
できあがる総量は1100ミリリットルという計算です。
でも、コーヒーをほんのちょっとにして、
ほんのりコーヒーの香る
アイスミルクにしてもいいですよね。

アイスカフェオレだけじゃなく、
ホットカフェオレにも、もちろん使えます。
少ない量だったら常温のコーヒーに
温かいミルクを入れて、
ちょっと多めに作りたいときは、
最初から混ぜて温めてもいいですよ。

お水で割って甘いアイスコーヒーにしたり、
そこにアイスクリームをいれて
コーヒーフロートにしたり、
コーヒーゼリーやコーヒー寒天にも。
コーヒーゼリーなら生クリーム、
コーヒー寒天ならこの原液を黒蜜がわりにかけるとか。
もちろん、アイスクリームにかけてもおいしいですよ。

(談)

SHOZO COFFEEのカフェオレベース

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本とカフェオレ

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夏休みにしたいこと。

ちょっと手の込んだ料理を作ってみる。
昼寝をする。
食器棚を片づける。
手紙を書く。

書き出してみたら、
家の中でしたいことばかり。
「家でのんびり」って、
時間がある時じゃないとなかなかできないものだから。

中でも一番したいこと、
それは本を読むこと。

あの人に借りた本、
買っておいたのになかなか読んでいない本、
読むといいよとすすめられた本、
久しぶりに読み返したい本もあるなぁ。

ソファで、
時にはベッドの上でごろごろしながら。
日がな一日、本と向かい合っていたい。
そこにひんやり冷たいカフェオレがあったら、
最高です。

今週のweeksdaysは、
SHOZO COFFEEのカフェオレベースと、
1冊ずつえらんだ古書をセットにしてお届けします。

コンテンツは
ほぼ日の学校長、
河野さんとの本談義と、
100冊の本の解説を毎日少しずつ。

あなたの夏休みのおともにぜひ。

再入荷のおしらせ

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完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
7月11日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。

ma.to.wa キャミソール


▶︎商品詳細ページへ

パリのオペラ座の衣裳室出身という
ユニークな経歴をもつデザイナーの惠谷太香子さんが、
この素材と出会って立ち上げた下着ブランド
ma.to.wa(マトワ)の製品です。
シルク100%素材を、糸の段階で
家庭で洗濯のできるウォッシャブル加工をほどこし、
リブ素材をつくって立体縫製したキャミソールです。

「着心地のよさはもちろんですが、
なんともいえない上品な色合いも気に入っています。
weeksdaysのオリジナルカラーは、
ピンク寄りのパープル『モーブ』。
モカ、ネイビー、モーブ。
繊細な色合いは日本人の私たちの肌に馴染みます。」
(伊藤まさこさん)

ma.to.wa キャミチュニック


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脇に縫い目のない、丸胴仕上げ。
縫い目が肌に当たらず、
ストレスフリーで着用いただけます。
胸元はスッキリ見せるVライン。
そこにシンプルでやわらかな
ポリエステルのストレッチレースをほどこしました。

「このキャミチュニックは、
かなり深めのVネックなので、
胸元から下着がちらりと見えてしまう心配がいらず、
安心して身につけることができます。」
(伊藤まさこさん)

ma.to.wa Vネック長袖


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脇に縫い目のない、丸胴仕上げ。
縫い目が肌に当たらず、
ストレスフリーで着用いただける、
シルク100%のVネックの長袖下着です。
袖のパターンも、体型を気にせず、
ぴたりとやさしくなじんで着用いただけるかたちです。

「薄手なので表に響かない。
襟ぐりが広いので、服の下から下着がのぞいてしまう、
そんなこともありません。」
(伊藤まさこさん)

ma.to.wa ショーツ


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脇に縫い目のない丸胴仕上げで、
ヒップをすっぽりつつむ安心丈。
縫い目が肌に当たりませんから、
ほんとうにストレスフリーで穿きやすい。
足口にゴムを入れていないので、
鼠径部、リンパを圧迫しません。
ショーツの内側のマチもシルク100%です。
この重ね部分は、フライス素材を使っています。

「歩いたり、座ったり、横になったり。
毎日、私たちはいろんな体勢ですごしますが、
そんな時に体に窮屈なショーツを履いていると、
とてもつらいものです。
今回のマトワの下着は、横に縫い目がないので、
肌への負担がとても少ない。
身につけると、はいていることを感じさせず、
一言で言うと、
まるで空気のような存在。
また、着る人の年代を問わないデザインもいいところ。
80代の母や、年頃の娘にも、喜んでもらえそうです。」
(伊藤まさこさん)

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

全アイテム、サイズは「M」と「L」の2種類。
製品の性質上、お客様都合での返品ができませんので、
各ページのサイズ目安表を参考にお選びください。

期間中配送手数料無料! 「weeksdays」は ほぼ日ストアお買い物応援キャンペーンに参加しています。

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期間中配送手数料無料! 「weeksdays」は
ほぼ日ストアお買い物応援キャンペーンに参加しています。

6月30日(日)午前11時から
7月16日(火)午前11時まで開催している
ほぼ日ストアお買い物応援キャンペーン。
この期間中にご注文いただいた商品について、
配送手数料(通常:756円税込)、
代引き手数料(通常:216円税込)、
ラッピング手数料(通常:500円税込)が無料になります。
「weeksdays」のアイテムについても
適用となりますので、
ぜひこの機会をご活用くださいね。
くわしくは、特設ページをごらんください。

▶︎ほぼ日ストアお買い物応援キャンペーン

かごの使い方

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かごに花を生け、
部屋の片隅に。
浅めのガラスの鉢などに水を張れば、
かごや花の色をじゃませず、すっきりします。

花器の代わりに、
かごを使うと、
軽やかそして涼やかに。

きちんとした着物姿にも似合うかごですが、
ほらこの通り、ワンピースとの相性だっていいんです。

ハンカチとお財布と、電話。
必要なものをぽいと入れて、
ちょっと買いものへ、なんて時にぴったりでしょう?

少し藍を感じさせる深めのネイビーのワンピースに、
サンダル。
夏にはこんな姿もいいものです。

深めのかごには、季節のフルーツや野菜を入れます。
なんといっても風通しがいいし、
床に置けば、中に入れたものが一目瞭然。
今日は柑橘とそれに似た色合いのメロンをひとつ。
かごは外から見た目も大切ですが、
内側の風景だって大切なのです。

平たいかごはタオルと着替えを入れて
いざ温泉へ!なんて時にも重宝します。
雑誌とお財布入れて喫茶店、とか
ワインとチーズ入れて友だちの家へ、
なんて夢が広がります。

(伊藤まさこ)

別府のかご

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繊維が緻密で曲げに強いとか、
水切れがよく弾力があるとか。
育った地域によって、竹の個性はいろいろ。
それぞれの素材の持ち味を生かした
ひごの取り方や編み方はそれこそ千差万別です。
作る人の工夫と知恵のかたまりのような竹細工は、
知れば知るほど奥が深いのです。

そんなに好きならばと、
いつだったか通い始めたのが竹細工教室。
好きが高じて‥‥とはよくも言ったものですが、
自分で編めば編むほど、
手強く、難しい。
職人さんがいかにすごいかを思い知った経験でもありました。

竹には根曲がり竹や篠竹
(こちらは寒さの厳しい土地で育ちます)、
真竹などいくつか種類がありますが、
私が通っていたのは、真竹を使って編む教室。
質実剛健なイメージの根曲がり竹とはちがい、
その姿はすらりと端正。
お茶の道具などはもちろんのこと、
ざるやかごなどの暮らしの道具までもが
すっきりきれいなのです。

▲別府で出会った真竹細工。

さて、その「真竹」ですが、大分県別府市が
有名な産地のひとつです。
そもそもは日本書記の昔から伝えられ、室町時代に産業化、
江戸時代には別府温泉にやってくる湯治客の土産物として
広がったのだそう。
別府で作られる竹細工は、
国から伝統工芸品として指定を受けている
技術としても知られています。

▲別名「白竹」とも呼ばれる真竹。
 こちらは、職人さんの手によってていねいに整えられたひご。
 これから様々な竹細工が作られていきます。

街を歩いていると、
あ、あそこ、あれ? ここにも! といった具合に、
竹細工を並べるお店が見つかります。

日本では唯一の竹工芸の訓練支援センターがあり、
今ではずいぶん減ってしまったと言いますが、
真竹を細工するため、
白竹に加工する「製竹所」もある別府の街。
その製竹所の方に、
「竹ってどんな存在ですか?」とうかがった時、
「いつも身近にあるから空気みたいな存在だねぇ」
そうおっしゃっていたのがとても印象的でした。

今回ご紹介するのは、
熟練した職人さんの手によって作られた別府のかご5種類。
きちんと編まれた白竹細工は、
何十年も長持ちし、
使えば使うほど、
いっそうつややかに、
いい味わいに変化していくそうですよ。

(伊藤まさこ)

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
[編集部より]
今回のレポートは、伊藤まさこさんが自著
『白いもの』(マガジンハウス)、
およびその前身である「ほぼ日」の連載
「白いもの」の製作時に
取材した内容をもとに、構成しています。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

戸隠のかご

未分類

慶長7年、戸隠村の徳武利左衛門という人が、
根曲がり竹の伐採を許可され武細工を始めた‥‥
そんな言い伝えが残る、戸隠の竹細工。
400年以上も前から作られ続ける、
戸隠を代表する工芸品です。

寒さの厳しい戸隠の山奥に自生する根曲がり竹は、
繊維が緻密で曲げに強く、かごなどを編むのに適した素材。
さらに、水に強く水切れもよいことから、
土地の名産品でもある戸隠そばを盛る蕎麦ざるが
多く編まれてきたのだとか。

私がはじめて戸隠をおとずれたのは、10年以上も前の夏。
野尻湖に遊びに行った帰り道、
「ちょっと寄ってみようか」ということになったのでした。

戸隠神社を背に、坂を下って行くと
そう広くはない道の両側に、
かごを売る店が立ち並んでいます。
蕎麦ざるはもちろん、
信州の郷土料理の「とうじそば」に使う
とうじかごと呼ばれる持ち手のついた小さなかごや、
茶碗かご、手さげかごなど、
根曲竹を使った竹細工がたくさん。
かご好きの血が騒いだのは、
言うまでもありません。

▲我が家のざる。丈夫で長持ち。10年ほど使っていますがへこたれません。

道をはさんで、
あっちへうろうろ、こっちへうろうろするうちに、
見つけたのが、手力屋という店。

そこで長年にわたって竹細工を編んでいるのが、
中川綱昌さんです。

中川さんの編むものは、
どれもかぎりなくシンプルで、
使い勝手がよく、
今の私たちの暮らしにちょうどよい。
なんだかいいなぁ。
そう思ったのがきっかけで、
まずはざる、次はかご‥‥
という具合に増えていったのでした。

今回weeksdaysで売る手つきのかごもそのうちのひとつ。
細長いめずらしい形ですが、
書類を入れたり、パソコンを入れたり、
新聞を入れたりと、なかなかに使い勝手がいい。

じつは同じ形のかごを持っている知人がいるのですが、
(なんと今から50年も前、
中川さんのお父様が編まれたかごらしい)
今でも現役とか。
その話をすると中川さん、
「根曲竹はとても丈夫なので、
大事に使えば長持ちしますよ」
とにっこり。

使えば使うほど、味わいが出る。
育てがいのあるかごなのです。

(伊藤まさこ)

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
[編集部より]
今回のレポートは、伊藤まさこさんが自著
『信州ハンドクラフト手帖』(信濃毎日新聞社)
『松本十二か月』(文化出版局)2冊の製作時に
取材した内容をもとに、構成しています。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

日本のかご

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美人ぞろい

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ああ今日はからりと晴れたなぁ。
そんな日には、風通しのよい場所に
持っているかごをすべて並べて、
深呼吸させます。
風が通ったかごは、
清々しくて気持ちいい。

時々こんな風に虫干ししては、また使って。
毎日の暮らしに、
または出かける時も、
かごは私にとってなくてはならないものになっています。

こうして一緒に過ごしてきた我が家のかごは、
どれもこれもなかなかいい味わい。
かごがある分だけ、
思い出もつまっていて、
愛着もひとしお、というわけ。

たくさんあるからもういらないんじゃない?
なんて言われそうだけれど、
いいかごを見るとついつい欲しくなっちゃう。
今週のweeksdaysは、
そんな魅力的な竹のかごをご紹介。

どれもこれも、
ていねいに編まれた美人ぞろい。
使って、時々手入れして、また使って‥‥
少しずつ変化するかごの様子ごと
おたのしみください。

再入荷のおしらせ

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完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
7月4日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。

サロペット(ネイビー)

サロペット(ブラック)

今回の入荷分から、肩紐の長さと着丈を若干短くして、
小柄な方にも着やすい丈に調節できるよう、改良しました。

▶商品詳細ページへ

こちらは、他のアイテム同様、
fog linen workの店舗で試着いただけるようになりました。
詳しくは店舗までお問い合わせください。
[お問い合わせ先]
■fog linen work ☎︎03-5432-5610 公式サイト

※こちらは、weeksdays限定商品となりますので、
店舗ではお買い上げいただけません。
※2019年9月末ごろまでの期間を予定しています。

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今回のサロペットは、
発売の前に「生活のたのしみ展」にて、
多くの方にご試着いただける機会に恵まれました。

「気持ちいい」とか
「らくちん」とか、
「軽いですね!」とか。
みなさまに、
たくさんの感想をいただきました。

中でも一番うれしかったのは、
「気になるアイテムだったのですが、
なかなか勇気が出なくて。
でもこれなら大人も着られますね」
とおっしゃるお客様がとても多かったこと。

そう。
パンツ部分に生地をたっぷりとったので、
一見、キャミソール型のロングドレスのようにも見える。
ネイビーと黒というシックな色合いも、
「大人が着るサロペット」になった
理由のひとつかもしれません。

もちろん大人だけのものではなく、
「親子で着ますね」という方もたくさん。
大人には大人の、
若い人には若い人なりの、
リネンのサロペットの着こなしを、
どうぞおたのしみください。

(伊藤まさこさん)

家の中に居場所をつくる。

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伊藤
この消火器は、
どういうところに置かれることを
推奨しているんですか? 家の中で。
北里
今回、新しい取説でも提案をしてるんですが、
家の中で、みんなが共通で生活する場所ですね。
伊藤
つまり、おとうさんの部屋にあればいい、
じゃなくて、全員が行き交い、
目にする場所に置きましょうという提案ですね。
北里
よく言うのは、リビング。
そして玄関です。
伊藤
絶対に全員が通る場所。
北里
みんなすぐに取りに行けますし。
伊藤
へぇー。
そういったことも含め、
取説も充実していますね。
北里
普段はもっと文字ばかりの事務的な取説なんですけど、
今回、今城が1からリニューアルしてくれたんです。
いま、この取説になってるのは、
この消火器だけなんですよ。
ほかは文字しかない。
──
すごいことですね、それは。
読む気になるか、ならないか、
大きいですよね。
今城
いままで「置いてはいけない場所」は
書いていたんですけど、
「どこに置けばいいのか」は書いていなかったんです。
きっとみなさん、あまりイメージできないだろうなと、
おすすめの場所を載せることにしました。
伊藤
なるほど。
北里
リビングとか玄関に置いて、
家族みんながあそこにあるって
知っていてもらうことがすごく重要です。
お母さんが勝手に隠しちゃうって、
けっこうリスクなんですよ。
お母さんがいなかったときにボヤが起きて
消火器どこだっけ、ってなっても遅いので。
伊藤
発売されてどれくらい経つんでしたっけ。
北里
2019年1月の発売ですから、
まだ半年ですね。
伊藤
買われたお客様からは
なにか反応がありましたか。
北里
ぼくらもうれしかったのが、
私はこうやって置いてます、みたいな写真を
インスタグラム出してくださったり、
友だちの新築祝いであげた、
という人がいたりしたことです。
やっぱりこの消火器にしたからこそ
出てきたアクションなので、
すごくうれしいなと思いました。
伊藤
消火器って一般家庭に
どのくらい普及しているものなんですか。
北里
業界調べで言うと、
だいたい4割ぐらいの家庭が
持ってるということになっています。
伊藤
そんなに?
北里
その中で、期限があることを知らずに、
備え続けているものもあるんだと思います。
そういう期限切れのものも合わせて41%ぐらい、
それを抜いたら3割弱ぐらいと言われています。
そう考えると、消火器を持っていない家庭が
まだまだ多いですね。
ある程度、きちんと家の中の火災を予防しようと思ったら、
消火器を置いてほしい、というのは、
メーカーとしての姿勢なんですけれども。
伊藤
何も起こらないのがいちばんだけれども、
何かのためにというのが安心ですもんね。
地震とか多い国ですし。
北里
おっしゃるとおり、ほんとに。
最近増えてるのは電気の火災です。
タバコ吸わなくなりました、とか、
オール電化だから安全だと
安心してもいられないんですよ。
最近、ガスコンロの火災よりも増えているのが、
タコ足の配線に起因する火災ですから。
伊藤
埃がたまりがちですものね。
北里
電気しか使ってなくても、火はおこるんです。
そのための備えってやっぱり必要です。
伊藤
ほんとですね。
火災なんて、みんな自分とは
関係ないと思っているかもしれませんけれど。
北里
関係ないと思っていても、
この消火器だったら、まぁ、置いてみてもいいかな?
って考えてくれる人が増えるといいのですが。
あとは、さっき言ったように、
期限切れのものをそのまま置いている人たちが多いので、
この消火器は、購入日と、使用期限を、
お客さん自身が書けるように、
アクセントとしての
使用期限は本体のラベルの下のところに
書いてはあるんですけど、
タグにして、ちょっと目に入るようにすることで、
最初に意識付けをしていただこうと。
デザインのアクセントでもあるし、機能でもある。
いままで業界的にもやったことがない
取り組みの一つです。
今城
こういうのを付けるという感覚は
これまでの消火器の中になく、
工場のラインもそういうふうにはなってなかったので、
このタグ1つ付けるだけでも、
生産の工程にけっこう影響が出るため、
立ち上げるときは大変でしたけど、
結構アクセントになって、
これの応用も、これからいろいろしていきたいなと
思っているんです。
伊藤
へぇ!
北里
こういうものが付いてることも、一つの特徴ですし、
これだったら買ってみようと
能動的になってもらえる仕組みになれば
すごくいいなぁと思っています。
それこそ、プレゼントとして、
消火器をあげるということを
ひとつの文化にできたらすごくいいな、
ということも思っています。
これだったら可能性があるんじゃないかと、
少しずつ模索しながら広げていくという感じです。
伊藤
なにをあげていいか迷う人いますよね。
なんでも持ってるし、
いいもの知ってるし、みたいな。
そういうときに、すごくいいと思います。
北里
たしかに、さっきおっしゃったように、
2本来たり、3本来たり、
流行って3本来ちゃったら大変だなってなるんですけど、
それだったら、1部屋に1本ずつ置いといてもらえたら
いいだけなんですけど。
──
ペイ・フォワードの考え方で、
持っている人は持っていない人に
渡すというのもいいですよね。
北里
持ってないんだったら、どうぞって。
白って挑戦だけど、
そういう意味でも、
いちばん象徴的になるだろうなと
思ってはいたんですね。
それをほんとに、
すごくうまくデザインに落とし込んでくれた。
ぼく含めて3人のチームで
このプロジェクトを立ち上げたんですが、
残り2人は女性なんですけれど、
彼女たちも、やっぱり、
消火器というものを家の中に置くということを、
一緒に考えてきた仲間なんです。
うちの会社は、こういう住宅用消火器以外は、
一般のご家庭向けの商材をあまり作っていないので、
これから、ぼくらがこのブランドで
次に展開していくようなものもふくめ、
もっとやっていきたいなと思っています。
伊藤
次はどんなことを考えてるんですか?
北里
防災の製品って、家の中で
居場所がなかなかつくれないし、
買ったあとも追いやられてしまうケースが多いので、
今回の消火器と同じように、
防災の居場所をつくるということを
やっていきたいと思っています。
それは、物かもしれないし、
どういうところに置いたら、
どうやって運用したら、
家の中で防災を取り入れやすいか、
っていう提案かもしれません。
伊藤
これさえ持って出れば安心みたいな防災セットとか?
北里
よく言われますよね、防災セット。
あれも、買って安心というわけでもなく、
どういうところに置くのか、何を入れるのか、
自分の家族にそれは適しているのか‥‥。
お子さんがいるのに、
大人のものしか入ってないとか、けっこうあるので、
そういうことをぼくらの視点で
デザインしていけたらいいなと思っています。
でもやっぱりね、まずはこの消火器を成功させないと!
伊藤
まだ成功とまでは言えない?
北里
まだまだこれから、という感じだと思います。
伊藤
まだ半年ぐらいですもんね。
知ってもらうのが大事ですよね。
北里
そうなんです。
なので、ほんとにありがとうございます、今日は。
伊藤
いえいえ、こちらこそありがとうございました。
知っているようで知らないことばかりでした。

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