REPORT

別府のかご

大分県別府市は、真竹を加工してつくる
白竹細工で有名です。
竹好きが高じて教室に通ったこともあるという伊藤さんに
別府のかごの魅力を教えていただきました。

(写真=有賀傑)

繊維が緻密で曲げに強いとか、
水切れがよく弾力があるとか。
育った地域によって、竹の個性はいろいろ。
それぞれの素材の持ち味を生かした
ひごの取り方や編み方はそれこそ千差万別です。
作る人の工夫と知恵のかたまりのような竹細工は、
知れば知るほど奥が深いのです。

そんなに好きならばと、
いつだったか通い始めたのが竹細工教室。
好きが高じて‥‥とはよくも言ったものですが、
自分で編めば編むほど、
手強く、難しい。
職人さんがいかにすごいかを思い知った経験でもありました。

竹には根曲がり竹や篠竹
(こちらは寒さの厳しい土地で育ちます)、
真竹などいくつか種類がありますが、
私が通っていたのは、真竹を使って編む教室。
質実剛健なイメージの根曲がり竹とはちがい、
その姿はすらりと端正。
お茶の道具などはもちろんのこと、
ざるやかごなどの暮らしの道具までもが
すっきりきれいなのです。

▲別府で出会った真竹細工。

さて、その「真竹」ですが、大分県別府市が
有名な産地のひとつです。
そもそもは日本書記の昔から伝えられ、室町時代に産業化、
江戸時代には別府温泉にやってくる湯治客の土産物として
広がったのだそう。
別府で作られる竹細工は、
国から伝統工芸品として指定を受けている
技術としても知られています。

▲別名「白竹」とも呼ばれる真竹。
 こちらは、職人さんの手によってていねいに整えられたひご。
 これから様々な竹細工が作られていきます。

街を歩いていると、
あ、あそこ、あれ? ここにも! といった具合に、
竹細工を並べるお店が見つかります。

日本では唯一の竹工芸の訓練支援センターがあり、
今ではずいぶん減ってしまったと言いますが、
真竹を細工するため、
白竹に加工する「製竹所」もある別府の街。
その製竹所の方に、
「竹ってどんな存在ですか?」とうかがった時、
「いつも身近にあるから空気みたいな存在だねぇ」
そうおっしゃっていたのがとても印象的でした。

今回ご紹介するのは、
熟練した職人さんの手によって作られた別府のかご5種類。
きちんと編まれた白竹細工は、
何十年も長持ちし、
使えば使うほど、
いっそうつややかに、
いい味わいに変化していくそうですよ。

(伊藤まさこ)

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[編集部より]
今回のレポートは、伊藤まさこさんが自著
『白いもの』(マガジンハウス)、
およびその前身である「ほぼ日」の連載
「白いもの」の製作時に
取材した内容をもとに、構成しています。
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2019-07-02-TUE