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ローコストという精神
- 伊藤
- 吉田さんにはじめてお便りしたとき、
自己紹介を兼ねて、
糸井さんとの対談を添付したんです。
- 吉田
- そうでしたね。もちろん拝読しました。
ちょっと話飛ぶけど、「ほぼ日」で
南伸坊さんと糸井さんと篠原勝之さんが
「老いと死」なんてテーマで話をしてるでしょ。
だけど、まだお若い。私より10歳若いの。
これからの10年がたいへんなんだよと。
これからの10年がね、ぜんぜん違う。
だからこの方たちはハッピーな話をしてるなと思って。
- 伊藤
- なるほど(笑)。
- 吉田
- 一年一年がね、
去年できたことができなくなっちゃう。
- 伊藤
- 吉田さん、ちょうどうちの母と同い年で。
- 吉田
- あなたがうちの娘と近いからね。
うちの娘や、うちの研究室のOBたちに
「ほぼ日っていうのを、
なんか糸井さんがやってらっしゃるの、知ってる?」
って訊いたら、みんな知ってるんですね。
それでいろいろ調べたら、
伊藤まさこさんという人も
すごい方なんだっていうのがだんだんわかってきて。
- 伊藤
- 私がですか?
そんな、それはちょっと違いますよ。
- 吉田
- それで今回、対談で会いたいっていうから、
これはおもしろそうだと思ってお受けした。
こういう方と建築のお話をするの、おもしろいなと。
- 伊藤
- ありがとうございます。
- 吉田
- ただ、この家はもう50年経ってるボロ家だから
来るのは勘弁してくださいよって
言ってたんだけどね(笑)。
「ほぼ日」であなたが対談をしていた深澤直人さん、
あの方も建築家じゃなくデザイナーなんだけれど、
あの家(アトリエ)を見たら、またすごいんですよ。
要するに、あれは工芸ですよ。
私どもがやってるのとぜんぜん違う。
あんなすごいのを見てらっしゃって、
ご自身でも巾木のない家をつくった人が
うちに来られちゃ困るなって。
- 伊藤
- いやいや、そんな!
- 紀子
- うちはローコスト、と言っているんですけど。
- 吉田
- そうなんです。私の主義はローコスト(*)なんです。
(*)吉田さんの提唱した「ローコスト」は、設計や資材の工夫で
よりよい建築をつくりたい、という精神論。「工場より安く、教会のように爽やかに」
という言葉は、自身の事務所のキャッチフレーズに。
- 伊藤
- そのことが、すごくおもしろいじゃないですか。
建築家のご自邸って、
「どうだ!」みたいな感じがあるように
思っていたんですが。
- 吉田
- そういう時代もありましたね。
僕がローコスト住宅に行ったのは、
さっきお話しした山口文象先生の影響なんです。
戦前に建てられた家によく呼ばれて行って、
いろんなものを見たその雰囲気が、
私の建築の原点になっている。
先生は、戦後、たいへん苦労なさった方なんですね。
大学ではなく徒弟(とてい)学校を出られた(*)。
そこから世界的にっていうぐらい
有名になっちゃった方なんですよ。
(*)山口文象は浅草の大工棟梁の家に生まれ、
府立一中(現・都立日比谷高校)に進学するが
親の反対で入学翌日に退学、
東京高等工業学校附属職工徒弟学校木工科大工分科入学
(現・東京工大附属高校)から
父のいた清水組(現・清水建設)へ就職。
しかし建築家に憧れ、逓信省営繕課の製図工を起点に、
建築家への道を歩みだした。
- 吉田
- その方のところにも何回か出入りをしているうちに、
ローコストっていうものの精神を叩き込まれた。
そして先生の建築家としての地位が
グーッと上がっていくのを見て、
そういう建築家ってすごいなぁと。
ちょうどその頃は“おもしろい建築”を建てるのが
流行ったんですよ。
「どうだ? どうだ!」っていうような。
それに対して、山口文象っていう人は、
実に着実にローコストを守ってらっしゃった。
それが僕の身についている。
伊藤さんは、あんなふうにやりたいことをやったら、
けっこうお金かかったでしょう。
- 伊藤
- はい、お金、かかりました。
- 吉田
- 巾木にしても、なくすよりも、
普通の巾木をつけるのがローコストなんです。
安いのはそれしかない。
「小さくする」ことはわりとお金に関係ないけれど、
「なくす」ところまでいくのはね、
工芸の世界に入ってるから。
それは建築のローコストではないんだ。
- 伊藤
- そうなんですよ。
いかに綺麗にするかは、
職人さんの技が必要で。
- 吉田
- 建築では「納まり(おさまり)」っていう
言葉がありましてね。
納まりっていうのはモノのぶつかったところ、
あるいは切り離しのところ、
そこをどう納めるか。
そこをキレイに納めようと思うと、金がかかっちゃう。
欠けないようにするために、部材がよけいに必要だから。
そういう建築に対して、私のはローコストで、
だから一見すると非常にこう、何て言うかな、
粗雑なイメージがあるんです。
たとえば簡単な話、この壁。
90㎝の幅のボードを打ち付けていくと、
突きつけになったところに線が出ます。
場合によっちゃ割れが出て来る。
それを目立たなくするにはいろいろ工夫があるんだけど、
この家はそれを一切してないんです。
ローコストで建てたいという方が訪ねてらっしゃると、
こうなっちゃいますよと言うんですね。
「あなたの予算ではこうですよ」と。
「これでいいです。これでいい」って
感心して帰られるんですけど、いざ作ると、
「吉田先生、あそこに筋が出るの嫌だ。
あれは施工が悪いからでしょ」
って言われちゃうわけ。
「だから言ったじゃない」ってね。
言うんだけども、皆さんそれを欠点として見ちゃう。
だからね、あなたの家は写真で見ても
お金がかかっているというのがすぐわかるんです。
- 伊藤
- そうなんですよ。
途中で妥協ができなくなっちゃった。
- 吉田
- そうでしょう。
こういう精神の方はそうだと思いますよ。
粗雑なものを見ると、
気持ち悪くなっちゃうんじゃないか。
何やってるんだと。
- 伊藤
- そんなことはないんですけれどね。
でも軽井沢の家は、とにかく好きなものを作ろう、
そのために頑張って働く! っていう気持ちでした。
今度の家は、大工さんと設計士さんに
「低コストでやりたい」とお願いをしているんです。
建築って、かけようと思えばいくらでも
お金がかけられると思うんですが、
工夫で乗り切りたいなと。
吉田さんにお目にかかると言ったら、
「じゃあ、聞いてきてください」って。
- 吉田
- 釈迦に説法じゃないけど、申し上げると、
時代ってやっぱ動いてますでしょ。
私の時代にはローコストは価値があったんですよ。
だけど、時代がよくなってくると、
ひとりでローコストで頑張ってても、
だんだん客が離れていっちゃう。
しかも私の年代で年を取った施主は、
みんなお金を稼いでいるから、
今さらローコストじゃない、
せっかくならいい家を建てたいっていう方が増えていく。
だから客がいなくなっちゃうんですよ。
ま、それは愚痴だけれども、
時代っていうのはやっぱり変わっていくんだなと思います。
その頃は美徳だったものが、
だんだん離れていってるなってわかりますね。
ローコスト住宅をやってきたから、
僕らもギリギリの生き方をしてきた。
リッチな建築家たちっていうのは、
どんどん稼いでいくでしょ。
事務所を畳んだのはもう10年くらい前になるけれど、
最後までローコストなんて言って、
だんだん時代に合わなくなってきちゃって。フフフ。
- 伊藤
- ローコストだと、必然的に‥‥(*)。
(*)建築家の受け取る建築設計料(設計監理料)は、
施工費(工事費)からパーセンテージで計算される。
決まりはないが、現在、新築で10~15%といわれる。
- 吉田
- そうなんです。
当時は5%ぐらいが普通でした。
- 伊藤
- でも、時間もかかるし、
手間もかかるお仕事ですよね。
- 吉田
- 僕、主婦向けの雑誌に書きまくりましたよ。
デザイン料を10%は払ってくださいって。
そこで施主を叱るような原稿まで書いたら、
とうとうクビになっちゃってね。
「先生、そんなこと書いたら、
雑誌が売れなくなるからやめてください」って。
私は10%が限度でしたね。
あの当時12%取れたの、
吉村順三さん(*)くらいじゃないのかな。
(*)吉村順三は1908年生まれの建築家。
日本文化とモダニズム建築を融合した作風で知られる。
代表作に皇居新宮殿、軽井沢の山荘、国際文化会館、
八ヶ岳高原音楽堂、愛知県立芸術大学など。
頼れるものにはなんでも頼る
- 大久保
- じゃあ、一気に紹介しちゃっていいですか、私。
- 伊藤
- お願いします。
- 大久保
- これも、まさこさん、買っちゃうんじゃないかな。
- 伊藤
- なんですか、それ。
- 大久保
- 穿いてるだけで‥‥。
- 伊藤
- (食い気味に)買う、買う!
- 大久保
- EMSが、お腹とお尻、全部ついてるんですよ。
だから穿いてるだけで、
プルプル、プルプルって刺激されて。
「イーサンテ EMSトレーニングボトムス」
EMSとはElectrical Muscle Stimulation
(筋電気刺激)のことで、
電気刺激によって筋肉を鍛える技術。
この機器はスパッツ型で、
おなか、お尻、内ももに、同時にアプローチ。
- 伊藤
- それ、どうやって? スイッチがあるの?
- 大久保
- そう。ここにカチャッて電源をつけると、
ブルブルブルってなって、
穿いてるだけでしまります。
- 伊藤
- やるーー!
- 大久保
- これを穿いて簡単なストレッチとか
エクササイズをすれば、効果2倍。
- 伊藤
- じゃあ、毎日のルーティンの中に
これも組み込まれてるんですね。
- 大久保
- そう。骨折して穿くのが面倒臭かったんですけどね。
でもこれEMSだけど、水をつけなくてもいいんです。
これ、おすすめ。
- 伊藤
- そういう情報ってどこで得るんですか。
- 大久保
- 『ノンストップ』の通販コーナーから。
- 伊藤
- あ、そうか。
- 大久保
- 後は、これもおすすめ。
まさこさん、白髪ないですか。
- 伊藤
- ありますよ。3週間に1回染めてますよ。
- 大久保
- 3週間に1回は大変だ。
それしんどくないですか。
- 伊藤
- しんどいですけど。
でもなんか2回に1回ぐらい、
分け目だけこれで染めるんです。
そうすると、なんとかかろうじて。
- 大久保
- なるほどね。染めてから10日ぐらいで
生え際から白髪が出て来るじゃないですか、
シルバー、グレー、ステキな人ももちろんいるけど、
顔立ちもあるなと思ってて。
白髪は人を選ぶんですよ。
一気に山姥みたいに老けるパターンの人もいる。
で、そこに抗うのもいつまでかわからないけど、
今はこれ。すぐれもので、すごくいいんですよ。
「モンローブロンドR ヘアトリートメントファンデーション」
美容液ベースのヘアファンデーション。
部分白髪など気になる部分にブラシでひと塗りする。
- 伊藤
- これって根元に?
- 大久保
- そう。こめかみのところとか、
白くなって気になってる髪の根元に
刷毛でシャッシャッシャッてやるとよくて。
回し者みたいですけど、こげ茶色の1色で
どの髪色にも適用できて。
- 伊藤
- え!
- 大久保
- 自然のものしか使ってないんで、肌に悪くなくて。
- 伊藤
- ちょっと、もう、なんかもう!
- 大久保
- 買います?
- 伊藤
- (笑)買わせてください!
- 大久保
- 普通に薬局で売ってるものよりは、
ちょっと割高になりますが。
- 伊藤
- へえー。いやいや、もう買いますよ。
- 大久保
- こちらお買い上げですね、伊藤さま、
ご用意しておきます。
- 伊藤
- 買います~! あと、その‥‥。
- 大久保
- これはね、アンミカさんが通販でやってて。
「CBDスポーツバーム」
CBDとアルニカオイル、メンソールのリフレッシュバーム。
疲れた筋肉にすりこむように塗る。
- 伊藤
- 強いですね。
- 大久保
- アンミカ姉さんと私が海外ロケで一緒になったとき、
首がつまるって私が言って。
疲れたりお酒が残ると、首、つまりません?
- 伊藤
- 今日つまってまーす。
- 大久保
- あ。そしたら「これ、ええで」って言って。
「これ、どこに塗っても」。
スースーする系なんです。
これを塗ったら、効いたんですよ。
そっからつけてるんです。
‥‥買います?(笑)
- 伊藤
- 買っちゃうわ~。
首、つまってるし。
- 大久保
- CBDが入ってますね。
- 伊藤
- なんですか、それ。
- 大久保
- CBDってなんかちょっとアレだよね。
- 伊藤
- ちょっと、アレ?
- 大久保
- 麻薬系じゃないけど、大麻の成分ですよね。
もちろん合法で(*)。
(*)CBDは(カンナビジオール:Cannabidiol)は大麻から抽出した天然成分。リラックス効果、睡眠の質、心身のバランスのサポートが期待される。依存性がなく安全とWHOも報告しており、日本の法律上でも合法で、オイル、食品、スキンケア用品などで使われる。
- 伊藤
- こういうふうに直接聞くと、
やっぱり欲しくなっちゃいますよ。
- 大久保
- それはたしかにそうです。
信用できる人が言ってくれるとね。
- 伊藤
- 全部買いそうになってますもん。
今日大変。大忙し。
- 大久保
- めっちゃ爆買いじゃないですか。怖いですね。
- 伊藤
- こわーい。怖い。
私はこれ。ご存知ですか。
「シックスパッド パワーガン アクティブ」(SIXPAD)
充電式のコードレスマッサージガン。
5段階のレベルで、4種類のアタッチメントが付属。
- 大久保
- あー、マッサージの? ガン?
これ系、私1個持ってるけど、
なんか違ったりするんですか。
- 伊藤
- ‥‥わかんない。
- 大久保
- ええーっ?
- 伊藤
- 売り場にちっちゃいのもあったんですけど、
ちょっと高そうな方が効きそうかなと思って。
- 大久保
- えー、よくない選び方してません。それ?
高そうなのが効くって。
- 伊藤
- 値段って比例しないのかなぁ。
- 大久保
- まあね。
- 伊藤
- アタッチメントで先が替えられるんです。
- 大久保
- 米倉涼子さんが宣伝してるやつ(*)は、
私持ってますよ。
(*)「ドクターケア エクサガン ハイパー」
- 伊藤
- だからほんとにもう大忙しですよ。
全部終わったら1日が終わってるのかな。
- 大久保
- やることいっぱいでねー。
怖いっすね。
- 伊藤
- 後はまあ、ちょっとこれで。
「uka scalp brush kenzan」
シリコン製の頭皮用ケアブラシ。
クレンジングやシャンプーで使う。
ソフト、ミディアム、55、ケンザン、バリカタの
5つの硬さがあり、伊藤さんが使っているのはケンザン。
- 大久保
- 持ってるかも! 使ってないけど。
頭皮マッサージですよね。
大事って言いますね。
- 伊藤
- これいいんです。
頭皮はお顔の一部ですっていう人がいて。
- 大久保
- マッサージして頭皮の血流をよくすると、
白髪も生えにくい説もあって。
だから血流をよくしてくださいと言われますね。
- 伊藤
- たしかにつながってるもんね、と思って。
薄毛とかも防止できるのかな。どうなんだろう。
- 大久保
- かもしれないんですね。
血流大事です。
- 伊藤
- 去年、爪がボロボロになった時期があって。
- 大久保
- わかる!
- 伊藤
- え? なります?
- 大久保
- 爪というか、爪回り。
ささくれもそうだし。
- 伊藤
- 欠けたりとかもすごくて。
でね、これは良質の馬油らしいんですけど、
爪と指の間に入れるんですって。
ここが爪を育てるらしくて、
毎日毎日塗って。
ベリュマン ハンドセラム No.1(BeLLEMAIN)
国産馬油を90%使用し、爪ダメージの修復と育成、
手荒れの改善を目的にしたハンドセラム。
- 大久保
- 毎日やってるんですか。
- 伊藤
- はい、朝晩。
- 大久保
- それはケア、大変だ。時間なくなっちゃう。
- 伊藤
- そう。だからケアが終わると1日が終わる。ふふふ。
- 大久保
- で、満足して。
- 伊藤
- そうなんです。
はじめまして、吉田さん
- 伊藤
- 吉田さん、はじめまして、
伊藤まさこです。
今日はご自宅にお邪魔させていただき、
ありがとうございます。
- 吉田
- ようこそいらっしゃいました。
- 伊藤
- どういうご縁かをお話しさせていただきますと、
私の家がある軽井沢で、
とても素敵な古いお家が売りに出たんです。
私、物件広告を見るのが好きで、
よくながめているんですが、
「あれ? このお家、うちの斜め前だ!」と。
それで一目惚れをしてしまい、中を見てみたいと思って。

前のオーナーが50年もの間、夏を過ごした思い出の山荘。下をのぞけば小川が、2階の窓からは軽井沢の森が望める。(撮影=伊藤まさこ)
- 吉田
- すでに別荘を持ってらっしゃるのに、もう一軒?
それは普通じゃないですよ、あはは。
- 伊藤
- そんな、ぜんぜん、買うつもりはなかったんですよ。
誰か知っている人が買ってくれたら、
行き来ができてたのしいなあと思い、
友人に紹介したところ、
「夫がそんなに(別荘に)行くのかなぁ? と言ってる」
とか、
「資産価値はあるのかしら?」と言って、
なかなか決断できない。
でも物件は巡り合わせなので、
迷っているうちに
だれか知らない人の手に渡ってしまったら、
いやだなぁと思って、
「私が買う!」ということに。
- 吉田
- そういうメールをいただきましてね。
普通のストーリーとしてはあり得ないじゃないですか、
自分が別荘を持っているのに、
向かいの家が売り出したから買う気になったって、
これ、どういう方だろうと思いましたよ。
ぜんぜん存じ上げなかったんです、
伊藤まさこさんという人を。
- 伊藤
- いきなりメールをお送りしましたね。
その建物が吉田さんの設計だと知ったのは、
契約をするときだったんです。
前の所有者がいらして、
「これは吉田研介先生に、うちの父が頼んだものです」
っておっしゃった。
「え? 『チキンハウス』(*)の吉田研介さん?」と。
チキンハウスのことは、雑誌で紹介されていたのを見て、
とても素敵だなあと覚えていたんです。
調べたら、ホームページを持ってらっしゃったので、
ダメ元で連絡をさしあげたところ、
すぐにお返事をくださって。
(*)にわとり小屋のように小さな家、
という意味をこめて、吉田さんが自邸につけた名称。
- 吉田
- いやあ、そりゃ、びっくりしましたよ。
最近、そんなに驚くこともないんです、
この歳で、平穏な毎日を送ってますからね。
そしたらそういうメールをいただいて、
「へえー、変わった方だなぁ」と。
メールには「ほぼ日」のことも書かれていて、
これ、なんて読むんだ? ホボビかな、
というくらい、知らなかった。
で、まあそれは置いといて、
その家が自分の設計だということが思いだせなくて。
- 伊藤
- 最初、連絡を差し上げたときのお返事は、
「確たる記憶が無いのですが、たぶん‥‥」と。
- 吉田
- でもオーナーの名前が書かれていたので、
その方のお父さまが、うちの母と交流があったことが
だんだん思い出されてきて。
はっきり覚えてるのは、そのお父さまが、
私が学生の頃だったか、あるいは卒業してからか、
「自宅の玄関の庇(ひさし)を作ってくれ」
とおっしゃったんですね。
- 伊藤
- それは東京の?
- 吉田
- そうです。ご自宅と私の家が近かったんですよ。
- 伊藤
- そんなご縁が。
- 吉田
- そしてしばらく経ったらば、
「吉田さん、ついでだから、
軽井沢に別荘を建てるので、設計してくれる?」
っていうんで、「おお、やりましょう」と。
僕は事務所を持つ前で、
初めての戸建ての設計だったから、
とにかく見よう見まねで線を引いたんです。
天井高があるので狭さを感じない。(撮影=伊藤まさこ)
- 伊藤
- ということは、あの家は、
吉田さんの住宅設計の処女作?
- 吉田
- そういうことになりそうです。
はっきりと図面は思い出せないんですが、
形を見れば見るほど、いいじゃないか、これ、って、
だんだん自分で思い出すに、庇なんかは、
山口文象先生(*)の家の庇がお手本だなぁと。
駆け出しの僕をかわいがってくださっていた、
建築界ではもうたいへんな大御所のかたで、
その方の家のつくりを参考にしているんです。
もちろん全体の形はぜんぜん違うんですけども。
(*)山口文象は、1930年代から60年代にかけて
活躍した建築家。近代日本建築運動のリーダーのひとり。
- 伊藤
- そうだったんですね。
- 吉田
- たいへん専門的なことなんですけれど、
庇が普通から比べるととても深くて、
民家風でもなければ農家風でもなく、
数寄屋造りでもない。
まったくの無国籍なんですよ。
それでだんだん「私の設計だなぁ」
ということがわかった。
「これはやってるよ、なかなか」って、
われながら思います。
- 伊藤
- いや、もうほんとに素敵なんです。
うちに遊びに来てくれた人に、
「ちょっと斜め前の家、見る?」って、
お連れするんですよ。
今はかなり古びているけれど、
全部キレイにしたらもっともっと素敵になるよ、って。

改装前のリビングの様子。照明はイサム・ノグチ。時を経て和紙部分がぼろぼろになっているので、同じものを新調する予定。(撮影=伊藤まさこ)
- 吉田
- もちろんいいって言ってくださったのは
たいへん光栄であるけれど、
まあメールのやりとりだけで、
それっきりにしよう、と思っていたら、
雑誌に出ていた、あなたがご自分でやってらっしゃる
軽井沢の別荘の白い建築、
その記事を、紀子が覚えてましてね。
- 紀子
- 「あの雑誌よ、あの雑誌!」って。
- 吉田
- メールを頂いて
「伊藤まさこさんだって」と言ったら、
この人が名前を雑誌で見たっていうわけ。
すごい家をつくった人だと。
- 紀子
- すごく目を引いたんです。
うわー、これだけ余計なものを
排除した家はないなぁと思って。
- 伊藤
- 私が軽井沢の家の取材を受けたのと、
吉田さんのチキンハウスが紹介されたのは、
同じ雑誌の同じ号だったんですよ。
- 吉田
- それで「この人だったか」とわかった。
改めて雑誌を見て、
ちょっとこれは只者じゃないぞと。
まずね、単純な話、巾木(はばき)っていうものが
家には必ずついてる。
この人の家にはそれがなくツルンとしてるわけですよ。
枠もない。
なんだ、これは? と思って見始めた。
今、日本の建築界で、こういう、
全部をそぎ落とした家を作るので
有名な建築家が、ふたりいるんですよ。
そのうちのひとりが、
私の友人なんだけども、窪田勝文さん(*)、
もうひとりは小川晋一さん(*)。
両方とも有名なんです。こういうふうにそぎ落とす。
でも、そういうふうにそぎ落とす人は、
たとえばスイッチを見せなくするように
モノの後ろにつけたり、裏につけたり、
ボックスを作ってその中に埋め込んだりするんだけれど、
この方の家にはスイッチが見えるところについてる。
だから、この方はちょっと違うぞと。
僕、それがショックでね、
あぁ、これは返事書かなきゃと思って。
(*)窪田勝文さん(1957-)、
小川晋一さん(1955-)はともに山口生まれの建築家。
それぞれ、広島と東京に拠点を持ち活躍中。

スウィッチは、無駄がなく、見えても美しい、パナソニックのSO-STYLEを採用。下のモフモフは、ドアの隙間からの冷気を防ぐドアクッション。
- 伊藤
- でも、やっぱり洗濯機もいるなぁとか、
ちょっと反省してます。
東京に持って帰ればいい、と考えていたんですけれど。
- 吉田
- 近くに温泉があるからバスタブは要らないと、
シャワーだけにしたというじゃないですか。
しかしわざわざ温泉に行くのと、
ちょっと風呂に入ってすぐ寝るっていうのは違いますよね。
- 伊藤
- 違いますよね。
- 吉田
- でも「かっこいいな、この人は」と思った。
- 伊藤
- ただ、家を使う人は私だけじゃない。
遊びに着た友人が
「お風呂、ないの?」とか
「バスタブに浸かりたいなぁ」とか言うんです。
そこはいま改修している家で実現させようかと。
骨が弱くなりました
- 伊藤
- この前美容家の方のYouTubeを見ていたら、
顔につけるゴムバンドで
「とにかく上げるのよー」とか言って、
がんじがらめにしてた。
またおもしろくなっちゃって。
- 大久保
- それ、でも、その瞬間上がってるけど‥‥。
- 伊藤
- 寝るんですって、そのまま。
- 大久保
- で、その状態を顔に覚えさせるみたいなこと?
筋肉を? 朝怖くないですか、
はずした瞬間、一気にドーンと落ちる、
みたいな感じにならないのかしら、それ。
でもわかんない。美容家の方が言うんだから。
- 伊藤
- やった後に、逆立ちしてれば落ちないんじゃないですか。
- 大久保
- ちょっと待ってください。
- 伊藤
- いや、しないけど。(笑)しないよ。
- 大久保
- ちょっと待ってね。考えるけど。
ちょっと考える気力を失ったんで、
もう考えないですけど。
- 伊藤
- 見ます? そういう美容系のYouTubeとか。
- 大久保
- 美容系は見ないなぁ。
ありがたいことにこの仕事してると、
化粧品とかもらうんで、
それをいっぱい使ったりはしますが。
- 伊藤
- メイクさんと接する機会もすごく毎日のようにあるし、
それでいろいろ訊いたりとか?
- 大久保
- そうですね。なんか迷うのは、
一個下の世代だと、
HIFU(*)とか、
美容系の施術があるじゃないですか。
そこにいつ手を出すかどうかっていう話はよくします。
世代的に、若い子の間ではそれはもう普通のことだし、
整形でもなんでもないってわかりつつも、
この年で一回やっちゃうと、
もうやり続けなきゃいけないんだろうなというのもあるし。
そこは足踏みしてる感じはありますね。
(*)ハイフ、High Intensity Focused Ultrasound。高皮膚のたるみを改善するための、密度焦点式超音波治療法。
- 伊藤
- 私もそうなんです。
そっち手出していいのか、みたいな。
- 大久保
- ねぇ。でもまあやってみて、
成功体験じゃないけど、すごく合うってなったら
やるかなとは思うけど。
- 伊藤
- 試しに顔の半分だけやるとかいうわけにもいかないから。
- 大久保
- ガッチャガチャになっちゃうからね。
ほんとに誰かが強引に誘ってくれて
「行きましょうよ。ノリで行っちゃいましょうよ」
って言ったら行くのかもしれない。
- 伊藤
- 足踏み状態ですね。
- 大久保
- だから持ってきましたけど、
NMNサプリっていう
サプリを。
「NMN +9000」(Gaah)
NMNは「ニコチンアミドモノヌクレオチド」
(nicotinamide mononucleotide)の略。
ビタミンB3の一種で、加齢とともに減少する成分を補い、
アンチエイジングにつながると期待されている。
- 伊藤
- それ、なんですか。
- 大久保
- 唯一私が今、唯一お金を使ってるサプリ。
この1瓶39,600円です。
- 伊藤
- もう、背に腹は代えられません。ほんとに。
- 大久保
- そう。
- 伊藤
- そうなんだ。どれぐらいもつの?
- 大久保
- 毎日飲むから1瓶で1カ月。
同級生の女の子の知り合いが
誕生日に1回くれて、
その子すっごい夜遊びする子なんですよ。
アッパーでエネルギッシュな子で。
- 伊藤
- いまだに?
- 大久保
- いまだにいるんですよ、同い年で。
- 伊藤
- それってもしかしてそのお陰なのかな。
- 大久保
- そう。で、「なんか効く気がするんだよね。
大久保さん、使ってみて」って。
これはもうわからないじゃないですか。
1日1,300円相当を飲んでるから、
元気な気になってるパターンもあるじゃないですか。
元気じゃなきゃいけないみたいな。
- 伊藤
- えー、気になる。
- 大久保
- それでなんか元気な気がする1カ月を過ごし、
自分で買うようになって。
NMNサプリってアンチエイジング効果が
唯一研究でわかったサプリだって言われてるのかな。
元気にもなるし、肌にもいいし、って。
なかには5,000円で買えるものもあるし、
なんなら3,000円とかでも、1万円のも。
何が違うかわかんなくて。
- 伊藤
- そうなると大人としては高いの買っちゃいそうになる。
- 大久保
- そう。そこ。1回下げて、
1万円台のを買ったんですけど、
「あれ? 高い方が効いてた気がするな」と思って
こっちに戻って。
わからないですよ、わかんないですけれども、
これは頑張れるおまじないというか、
飲んでるから頑張れるみたいな。
- 伊藤
- そうなんだ。もうひとつ、サプリ。
- 大久保
- これはカルシウムです。
私が今年の夏2カ月ぐらい松葉づえ生活をして。
「カルシウムSIMAパウダー 飼い主さん用」(GOKURAKU CLUB)
1gの中に約370mgのカルシウムが含まれるパウダー。
北海道の八雲地方、1500万年から2000万年前の
地層から出土したカミオニシキ貝の風化化石を使用。
- 伊藤
- それ、大変でしたねー。
- 大久保
- 大変。もう大変。
- 伊藤
- 私の周り、みんな骨折ってて。
けっこう知り合いの
ふたりにひとりってぐらい。
- 大久保
- 私の周りもみんな骨折ってます。
ほんとに、今年。
大袈裟じゃなくてね。
私も1週間に1回ぐらい、
あの人が骨折りましたっていう情報が入って来るんです。
冗談じゃなく。
- 伊藤
- 笑いごとじゃなくね。ほんとなんですよね。
情報入ってなくても、包帯巻いてたりしてて、
あれ? もしやと思うと「そうなんです」。
- 大久保
- これがついにあれじゃないですか。
デジタル世界に入って、
スマホとかみんな一人一台持つようになって、
何かこう飛んでるから、
骨が弱くなったんじゃない?(笑)、
としか思えないぐらい!
- 伊藤
- 折った理由を訊いてもいいですか。
- 大久保
- ロケとロケの間だったんですけど、
普通に道ばた歩いてて、
まあお酒飲むロケだったのもあり、
ちょっと陽気にはなってたけれど、
でもまだぜんぜんしっかりしてるときで、
「じゃあ、次の場所に移動します。
ロケバスに乗ってください」ってなったときに、
歩いてたらおばちゃんが
「大久保さん、テレビで見るよりキレイだね」
って声かけてきたから、
「テレビがどれだけブスなんだよ」
みたいなことを言ってたら、
道路にある段差でグニッてなって。
- 伊藤
- あ、グニッてなったんですね。
- 大久保
- なっただけ。言ったら、なっただけなんですよ。
で、まあ捻挫だなあと思って。
まさかこんなことで折るわけないと思って、
ただ、みるみる腫れてきてるなと思いながら。
- 伊藤
- そのときロケは続けたんですか。
- 大久保
- はい、後半戦のロケやりましょうってなって、
歩くとこだけカットしてもらって。
でもメッチャメチャはじけてましたよ、骨折した私。
すっごいおもしろかったですけどね。
- 伊藤
- 変なアドレナリンが出た。
- 大久保
- 出ちゃって。
痛みを隠そうとするアドレナリンも出てたのか、
なんか変なラップとかやってましたよ。
それで翌日になって腫れもひかないし、
怪しいぞってなって、翌々日かな、レントゲン撮ったら、
骨折ですから、と言われて2カ月間。
- 伊藤
- ええーーっ。
私の友だちも、私と一緒にお酒を飲んで、
家帰ったら、ヨガマットにつまづいて。
- 大久保
- うわー。そんな健康のためのヨガマットで骨折するなんて。
- 伊藤
- そうー。ねぇー。しかも
「私と一緒に深酒をし過ぎた」っていう。
- 大久保
- ちょっと罪の意識を感じます?
- 伊藤
- ごめんって言わなかったけど。
- 大久保
- なんでですか!
- 伊藤
- 言えばよかったですね。なんか、でも。
- 大久保
- どっかでそれは自己責任だろうと
思ってるからじゃないですか(笑)。
ヨガマットを敷いてるのも悪いし。
- 伊藤
- でも飲ませちゃったしなぁとは思って。
- 大久保
- そう。ほんとそうなんですよ。
- 伊藤
- うちの姉も転んで骨折してて。
ついに身内まで。
- 大久保
- 20代30代、まあ40代前半までは、
たぶん捻挫ですんでたと思うんですよ。
だから骨がもろくなってる。
後は実感したのは、視界がすごい狭まってると思った。
昔の方がたぶん周りを見ながら生きてたのが、
今こうだと(手で目の両側をふさいで)こうなんですよ。
- 伊藤
- たしかに。
- 大久保
- 老眼も入って来てるから、
ほんとに世の中のクリア度は少なくなってると思われます。
- 伊藤
- 鼻は大きくなるわ、視野は狭まるわ。ねぇ。
- 大久保
- 慎重に生きていかないと
いけないっていうことを学びました。
- 伊藤
- じゃあ、そのサプリは飲んでるとやっぱりいい?
- 大久保
- これね、これがまたね、
ほんとに人ってよくできてるなと思って。
骨折してる2カ月間はこれとビタミンDと、
ヨーグルトだったり、
久々に牛乳買って飲んだりしたのに、
治った瞬間パタッと飲んでないんですよ。
人ってすごくないですか。忘れちゃうの。
もう大丈夫だって過信しちゃう。
- 伊藤
- 飲んで!
- 大久保
- わかります。飲まないとね。
- 伊藤
- 飲みます、私も。予防。
折ってからじゃ遅い。
- 大久保
- ほんとは普段飲んでて骨を強くして、
ぐねっても骨折にならないっていうね。
飲みます、これ。
せっかく磯山さやかちゃんに紹介されたんだから。
- 伊藤
- 買います。お買物が忙しいわ。
無言の圧力
- 伊藤
- 毎日どれぐらいの時間に寝てるんですか。
- 大久保
- 疲れちゃうから、もう11時前後。
- 伊藤
- 疲れますよね。なんでこんな疲れるんだろう。
- 大久保
- すっごい疲れます。
- 伊藤
- 疲れるなって感じだしたの、何歳ぐらいからですか。
- 大久保
- 私、ここ数年。
- 伊藤
- やっぱり!
- 大久保
- コロナ明けぐらいからの方が疲れてる。
仕事の現場が落ち着いて、
昔の働き方じゃなくなり、
長時間拘束されるみたいなことが
なくなってるのもたしかなんですけど、
午前中から仕事して、
昔、たとえば2本(収録が)できた、
なんなら3本やってたのが、
いまは2本目にちょっと集中力が切れる。
女性10人ぐらいの番組に出たりするんですけど、
その中で頑張って喋ろう、みたいなのは、
ほんとにもう1本で疲れちゃって、
2本目はちょっと静かになっちゃう。
- 伊藤
- そうですよね。
トークのできるかたって、
普通の人の5人分をひとりで喋ると言うから。
- 大久保
- そうなんですよ、もう。
- 伊藤
- それが10人ぐらいいるんですよね。
それぐらいパワフルな人が。
- 大久保
- 個性の塊のパワー録りで、
今日前に出て売れてやろうみたいな人が入ってると、
もう大変で。
- 伊藤
- なんか「もらっちゃい」そうですね。
- 大久保
- 「もらっちゃう」ってありますね。人の影響ね。
昔はたぶん自分がそこまで食らわなかったけど、
やっぱりちょっと、なんでしょう、
すごくパワフルな人とか、
すっごい元気だったりする人がいると、
ちょっと疲れてきちゃうっていうのは、昔よりあるかも。
- 伊藤
- そうかぁ。
でも、私の希望として、
更年期を過ぎた人って“ぶり返し”ませんか。
元気になってません?
- 大久保
- どうだろう。
私、今更年期真っ只中な気がするから、
もうちょっとなのかな。
- 伊藤
- あ、炭酸、お注ぎしますよ。
- 大久保
- このぐらいかしら。
- 大久保
- あー、おいしい。おいしーい!
- 伊藤
- ほぼ日で「生活のたのしみ展」っていう
イベントがあって、モノを売るお店が
ワーッと並ぶんですけど、
前だったらけっこうずっと立っていられたのに、
最近は1時間お店でお客様の相手をすると、
2時間ぐらい横にならないと回復できない。
- 大久保
- 回復しないですよね。
寂しがり屋‥‥そんなかわいい言葉、あれですけど、
ひとりがしんどいなとも思ったり、
人も好きなとこは好きですけど。
1日、人といたら、
ほんとにひとりの時間がないと、回復できない。
- 伊藤
- あ、ひとりの時間!
- 大久保
- 絶対に必要ですね、
昔は休みがあったら、誰か誘ったり、
夜は飲もうかなと思ったけど、
今はもうひとりでいいよって。
その方が回復するということがわかりましたんで。
ほんとは会いたいな、
ちょっと行っちゃおうかなって衝動にかられるんですけど、
いや、これ、行ったらまたいつもと同じで、
疲れて、翌日また仕事スタートしたときに
スッキリしてないぞ、
だったら今日我慢してひとりでいよう、とか。
- 伊藤
- そうか。それはでもこの本でいうと、
年代ごとにけっこういとうあさこさんとか、
島崎和歌子さんとか。
- 大久保
- いやあ、疲れる。
もう今の「二大疲れます」です。
二人とも声がでかい。ほんとに。
ありがたいことに、私が年取ったように、
ふたりをはじめとする友だちも年を取ってるんで、
同じように疲れ出してます。
和歌子さんも2回「もう帰ります」って言ったら、
「わかったぁ」って言うようになったんで。
- 伊藤
- なるほど、なるほど。
同世代のお友だちって大切ですよね。
- 大久保
- 大切ですね。
話が早い。ほんとに。
- 伊藤
- 親の話とか、
自分の健康の話とか。
- 大久保
- そうですね。
やっぱり、20代の子にそんな話、ねえ。
- 伊藤
- 「疲れるんだよ~」とか言っても、
「そんなの知らねえよ」っていう話ですもんね。
- 大久保
- 「親がさぁ」とか言っても、
親が私の年ぐらいですからね、ピンとこないから。
- 伊藤
- 実際自分が若いときも、
そういう話を振られると、ちょっとわかんないし、
みたいな気持ちではいた。
- 大久保
- たしかにね。
あれ、そうするとほんとに
若い子と何を喋ったらいいか、むずかしくないですか。
- 伊藤
- 若干緊張しちゃいません?
- 大久保
- そうですね。今「何ハラ」みたいなのがあるし、
それは個人情報だ、みたいになっちゃうと、
訊けないことがいっぱいありますから。
あれかな、
「最近どのアーティストが流行ってるの?」とか、
教えを乞うというスタンスがまだ。
- 伊藤
- なるほど。私はつい「肌キレイだねー」とか
「何使ってるの」って言うんだけど、
同じもの使ったってそんなになるわけないのにね。
だから「かわいいね」とか言っちゃうかも。
- 大久保
- あれ、どうなんですかね~。
- 伊藤
- 気持ち悪いですかね。
気持ち悪いですよね。
- 大久保
- 年上のババアが。
- 伊藤
- そうですよね。でも言っちゃうの。
- 大久保
- 私もすぐ「かわいい」って、女の子にも言うし、
男の子にも言っちゃうんですよ。
「かわいい顔してるね」とかさ。
気持ち悪いかもしれないですね。
- 伊藤
- うーん。注意しましょ!
- 大久保
- でも注意し出すと‥‥。
- 伊藤
- 注意したら、注意だらけなんですよ、今の世の中。
- 大久保
- そう。無言ですよ。
そうしたら無言の圧力って言われて。
- 伊藤
- あ、そうか。なんにも言わないと。
- 大久保
- 無言は怖い。
何考えてるかわかんないおばさんになりますよ。
- 伊藤
- あ、そうか。
じゃ、言わなくて、
口角上げてるっていうのはどうかな。
こうして‥‥(無表情で口角を上げる)。
- 大久保
- 怖い! 絶対怖いです!
何も言わないで、かたまった口角上げ。
- 伊藤
- そうですよね。そうか。
なんかほんとにどうしたらいいんだろうって気持ち。
- 大久保
- まあだからと言って、何を毎日実践して、
「こっちから声をかけよう、一言必ず」
とも思ってもないし、
交わらないところは交わらないんだろうな。
でも、まあ嫌な感じにならなければいいな、
ぐらいを目標にしときます。
- 伊藤
- そうしましょう。じゃあ、無言で、口角上げはなし。
- 大久保
- それが一番手っ取り早いってみんな思ってますよね。
この業界の人ってやたらと口角上げてません?
黙ってるとき。
感じ悪くならない方法の一つが
口角上げるってことなんだろうなと思う。
- 伊藤
- たしかにそうです。
下がってるとやっぱり不機嫌そうに見えるから。
ちょっと飲んでもいいですか
- 伊藤
- 収録中や生放送で咳が止められないとき、
どうしてるんですか。
病気にもなれないじゃないですか。
- 大久保
- 今どきは病気になったら休めますよ。
熱が上がったと言ったら、来ないでくださいって。
ちょっと調子が、っていうときは、
のど飴をお尻の下に隠しておいて、
時々舐めながらなるべく咳が出ないようにやってます。
- 伊藤
- なるほど。スタジオって乾燥もしてるだろうし。
- 大久保
- してます。咳出てケンケンして、
水飲んだら変なところ入っちゃって、
またケンケンして、もう無限。
- 伊藤
- 喉もだんだん弱くなりますよね。
- 大久保
- あと、飲み込めない。
おばあちゃんじゃないですけど、
噛み切る力も弱いでしょ、
ロケとかで和牛のA5ランクですって
いいお肉が出たときに、
コメント言わなきゃいけないから、
プライベートだったらもうちょっと噛みたいんだけど、
わずかなところで飲み込むじゃないですか。
そうすると、またむせそうになって。
- 伊藤
- でもそんなのもおくびにも出さず、
たのしいコメントを!
すごいなぁ。
- 大久保
- ほんとに変なことがあったら
カットしてもらってますよ。
- 伊藤
- 歯と言えば、この6年の間に、
私、前歯と下の歯が出てきたんですよ。
- 大久保
- 出てきたって、前に?
- 伊藤
- 前に。
あれ、こんなはずじゃと思って歯医者さんに訊いたら、
「いや、出て来るんですよ、年取ったら」。
- 大久保
- たしかに出てきますね。
- 伊藤
- 骨格の変化と共に。
年取ったら顔も伸びるじゃないですか。
- 大久保
- 伸びる。
- 伊藤
- 鼻も大きくなるでしょ。
- 大久保
- 横にね。
- 伊藤
- 目は垂れるでしょ。
- 大久保
- そう。
- 伊藤
- あはは、すごくおもしろくなってきちゃって。
- 大久保
- よかった、じゃあ。
おばあちゃんと同じ顔になっていきますよね。
それをたのしめるってすごいです。
- 伊藤
- いや、ほんと。
いや、そりゃたのしくないけど、
想像したらおもしろい。
- 大久保
- おじいちゃん、おばあちゃんの顔って、
ほんとに無邪気で、
欲というものがなくなって、
カッサカサな感じに、
みんな同じような顔になってて。
ほんとに赤ちゃんに戻るんだと思って。
まあ欲深いジジイ、ババアもいますけど、
だいたいはそういうふうに戻っていく。
- 伊藤
- いつが一番汚くなるんだろう。
‥‥今?
- 大久保
- それは欲深い時期じゃないですか。
もうだいぶ抜けてるんじゃないですか。
どうですか。
- 伊藤
- そうね、笑えるし。
- 大久保
- 私、歯が長くなってますもん。
- 伊藤
- うっそー? 歯が?
- 大久保
- ほんと。隠してますけど。
- 伊藤
- じゃあ、歯ぐき。
- 大久保
- 歯ぐきが下がってくるから、歯が長く見える。
- 伊藤
- なんでそんな大陸移動するんですかね、顔は。
- 大久保
- 筋力じゃないですか。
すべての筋力がゆるんでくるから。
- 伊藤
- あ、そうか!
- 大久保
- 隠してますけど、歯がどんどん長く。
恥ずかしいけど。
- 伊藤
- それもプラスしますよ、私のこの妄想に。
- 大久保
- うん。だからおもしろいんですよ。
おもしろがったらおもしろいし、
抗(あらが)ったら、歯ぐきを引き締める
歯磨き粉どうしようかなとか、
マッサージしたら上がるらしいよとか。
- 伊藤
- そうか。そんな抗いの塩梅を、
今、どういうふうに受け入れようか。
アンチエイジングも興味あるし、
なんだかんだしてるけど、
最近アンチ・アンチエイジングって
流行ってるじゃないですか。
- 大久保
- アンチ・アンチエイジング。
アンチエイジングのアンチ。
- 伊藤
- アンチエイジングしません。
でも、キョンキョンとかが言うんならわかるけど。
普通の人が言ったらね。
- 大久保
- そこなんですよね。
石田ゆり子さんとか、それこそあのぐらいの方が、
「ナチュラルがいいんですよ」は非常にね。
でもまさこさんは
ていねいな食生活してますよね、ほんとに。
- 伊藤
- 私ですか。でも私、お酒をすごく飲むんですよ。
お酒がすべてダメなんじゃないかって。
- 大久保
- でも、お酒飲む時間がほんとに1日の終わりで。
ひとりで全部メイクを落として、シャワー浴びて、
パコ美ちゃん相手に、フッという、
あの時間がなかったら、
もうたぶん生きていられないと思う。
- 伊藤
- そうですよね。そうですよね、ほんとに。
- 大久保
- たぶんお酒はもうね、やめられないでしょ、絶対。
- 伊藤
- やめるつもりないです。そしたら汚くていい。
- 大久保
- そうですね。うん。
だからそのための肝臓だけを
キープしとこうというのは。
- 伊藤
- そうか。肝臓かぁ。
- 大久保
- うん。まあ、肝臓、心臓、全部か。
身体ですね。
- 伊藤
- そうですね。でもその話の流れで言うと、
最近蒸留酒にはまっていて。
- 大久保
- おー、いいんですね。
- 伊藤
- ジンとウイスキーと、あとまあ焼酎。
ワイン(醸造酒)を毎日飲んでたんですけど、
週に1、2回みたいにしたらなんかスッキリ。
- 大久保
- 蒸留酒は残らないってことですか。
- 伊藤
- 残らない。
- 大久保
- やっぱ、いいんだ。
- 伊藤
- うん、身体がラク。
- 大久保
- でも、まあお酒は自分の身体に合う合わない、
なんとなくわかりますよね。
これを飲んだら絶対二日酔いになるわ、
っていうのがあるから。
- 伊藤
- 今日、大久保さんに日本のジンを持ってきました。
持って帰ってください。
右の3つは国産ジン。
左から「Le Gin de Christian Drouin」、
「BEAR’S BOOK 45%」(T’s CRAFT)、
「NOZAWA GIN」(野沢温泉蒸留所)、
「No.7[draft]ハイジュニパージン」(新蒸留研究所)。
- 大久保
- え、くださるの?
うれしい。
これちょっと割って飲んでもいいですか、今。
- 伊藤
- え、ほんと?
- 大久保
- うん。いい?
- 伊藤
- もちろん。それ、緑茶の香りがついてるんですよ。
「No.3 緑茶の香気抽出に関する研究」(新蒸留研究所)
「祇園 北川半兵衞」と共同開発した緑茶のスピリッツ。
- 大久保
- 紙コップだけいただいてもいいですか。
- 伊藤
- 紙コップとはいわず、ちゃんとしたグラスを。
- 大久保
- さすが! そこは。
昔は絶対こんな時に飲むのなんてダメだと思うから、
我慢してたけど、
今は、飲みたいと思ったら
「飲んでいいですか」って言っちゃうんですよね。
- 伊藤
- それが年の功ですよね。
図々しくなってくるのが自分でも許せるし、
周りも許してくれるし。
- 大久保
- 周りもしょうがないかなと思ってくれるから。
我慢しない。
今日ちょっとお酒飲めるのかなと思って来たから。
- 伊藤
- すみません。
- 大久保
- ううん、ぜんぜん私の勘違いなんで。
- 伊藤
- 緑茶の匂いします?
- 大久保
- そう言われると、する。
なんで緑茶の匂いがするんですか、このお酒。
- 伊藤
- 日本のお酒なんですけど。
- 大久保
- (老眼で)一つも字が読めない。どうしましょう。
- 伊藤
- そうそう。そんなの、もちろんです。ほんとに。
- 大久保
- ほんとに怖い。
- 伊藤
- メガネ忘れたときとか、携帯で撮って、
グワーンって拡大。
- 大久保
- あー、いいですね。わかる。
Wi-Fiのパスワードとか、撮ってね。
あのちっちゃいやつを。
- 伊藤
- そうそう。ほんとはジンの定義として
ジュニパーベリー(*)っていうのが入ってるんですけど、
これには何故か入ってなくて。
(*)ジュニパーベリーは、ヒノキ科の針葉樹「ジュニパー」の球果。松のようなウッディでスパイシーな香りがする。ベリーに似ているが、実ではない。
- 大久保
- このお酒は富山県でつくられてるんだ。
- 伊藤
- そう。今、日本も、すっごくいろいろ作っていて、
こっちは野沢温泉なんです。
クロモジとかスギを使ってるんですよ。
- 大久保
- ジンの原料って何ですか。
- 伊藤
- ジンの原料は‥‥アレです。
あれ、あれ。
- 大久保
- 出てこない。うわー、怖い。
- 伊藤
- やだやだ!
- 大久保
- やだー!
なんですか、ジンの材料って。
- 伊藤
- ジンの材料は‥‥。
(教えてもらう)「穀物を蒸留して作られる」。
- 大久保
- すごい。これ、104/116って書いてありますよ。
そんな貴重なもの、いただいていいんですか。
- 伊藤
- もちろん。いろいろ迷ったんですけど。
やっぱ、お酒だなと思ってね。
私は今日は(車なので)飲めないんですけど。
- 大久保
- うれしい。
すみません、もう。
ロックがいいですか。
- 伊藤
- 私はいつも食事のとき飲んでるので、
炭酸で割ってるんだけど。
でも、ロックでチビリチビリと。
- 大久保
- 炭酸も置いといてもらっていいですか、じゃあ。
- スタッフ
- おつぎしまーす。えーっと。
(ドボドボドボッと豪快に注ぐ)
- 伊藤
- あ、多い! それぐらいでっ!
- 大久保
- 「それぐらいでっ!」っていうのが
ちょっと強過ぎますよ。
言い方が。
- 伊藤
- 強過ぎるよね~。
- 大久保
- もうちょっと柔らかく言わないと。
- 伊藤
- ほんと。
舐めるように飲んでください。
- 大久保
- あ、そうなの? 舐めるように飲むんですね。
- 伊藤
- 炭酸入れるときは、ゴクゴク飲んでます。
唐揚げとかと一緒に。
- 大久保
- うわ、いいですね。
そうか。若いときって、
ジントニックにはまった時期がありました。
そういうことですよね。
- 伊藤
- そう。トニックは甘いじゃないですか。
もう大人になった今となっては、
やっぱり炭酸でジンソーダ。
- 大久保
- めっちゃ緑茶を感じる。一瞬、口の中。
えー、何、これ? おもしろーい。
- 伊藤
- 「プレゼントにしたいんですけど」って言ったら、
「これ、おもしろいですよ」ってお店の方が。
- 大久保
- うれしい。いや、ほんとに、
翌日残らないお酒をちょっと求めてるんで。
- 伊藤
- あと、せめてものダイエットにもなるかなと思って。
- 大久保
- ダイエット?
- 伊藤
- 蒸留酒は糖質が少ないんです。
ジンにはほとんどない。
- 大久保
- あ、そういうことか。糖質制限。
ありがとうございます。
- 伊藤
- いえいえ。
今お手持ちの緑茶のお酒は富山のもの。
クマのジンは熊本で、柑橘が香るから、
食事のときに合う感じがします。
- 大久保
- 熊本だ。ほんとだ。かわいいですね。
- 伊藤
- フランスのものもあって。
それぞれ味が違っておもしろい。
しかも開栓しても日持ちがするから、
私、ズラッと並べて飲んでます。
- 大久保
- いいですね。その空間もオシャレ。
- 伊藤
- ついスタイリストの性で、
お酒をラベルで買っちゃったりとかするんです。
- 大久保
- 私なんか、もうほんとに
缶チューハイとかパーンと開けて、
氷ガンガン入れて、ガバッと飲んで、
1缶ぐらい飲んだら「あー、気持ちいい」ってなって。
そのくらいの雑な感じでお酒飲んでます。
子・牛・寅・卯・辰・巳‥‥
- 大久保
- デンキバリもいいって聞いたことあります。
やってるんですか、それ普段、まさこさんは。
- 伊藤
- やってますよ、朝晩。
- 大久保
- え、朝晩?!
- 伊藤
- 元、取ろうと思って。
- 大久保
- そうでしょ!
- 伊藤
- 高かったもん。
- 大久保
- いや、でも肌キレイだし、
ハリがパンとあるから、
努力の賜物じゃないですか。
でもやめたらどうなるのか。
やめられなくなりますよ。
- 伊藤
- そうなの。
やめたらほんと、
すごいことになるんじゃないかと。
- 大久保
- いや、わかります。
こうしてルーティンが増えてってるわけだけど、
どれかのルーティンを一個やめたら、
今かろうじてこういう状況なのがどんどん崩れていくし、
でも、これ以上ルーティンを増やしたら、
日々の時間がルーティンでなくなるんじゃない?
っていう。
- 伊藤
- 仕事してる場合じゃなくなるんですよね。
- 大久保
- そう。朝から始めて午前中が終わっちゃうから、
増やすこともできないし、
減らすことも今できないんです。
- 伊藤
- だからYouTube見ながらのエクササイズを30分?
- 大久保
- 軽い筋トレエクササイズ。
仕事が遅いとき、2、30分。
疲れてたら10分。
それから掃除機をかける、これも10分。
それから、顔を。
- 伊藤
- パコさま(大久保さんの愛犬)の散歩も?
- 大久保
- パコさまの散歩は、
パコさまの気が向いたらですね。
あの子も年になっちゃって、
人間で言ったら今同い年ぐらいなんですけど、
散歩に行きたがらなければ行かない。
そのぐらいかな、ルーティン。
- 伊藤
- でもこれからどんどん増えるんですかね、ルーティン。
- 大久保
- あります?
- 伊藤
- 足乗っけて、筋肉を鍛えるやつ。(*)
(*)「シックスパッド フットフィット3」(MTG SIXPAD)
電気による刺激で
⾜裏からふくらはぎまでを同時に鍛える健康器具。
- 大久保
- ブルブルやるやつ?
- 伊藤
- そうそうそう。デンキブラシをやりながら。
- 大久保
- すっごい優雅。
- 伊藤
- ぜんぜん優雅じゃない。
誰にも見せたくない。
- 大久保
- いや。でも足腰、やったほうがいいって言いますもんね。
ブルブルやってるだけで、
歩いたぐらいの運動になってるとかってことでしょ。
- 伊藤
- そう。なんとかしてラクして、なんとかしたいんですよ。
- 大久保
- そんな器具、山ほど出て来てるじゃないですか。
- 伊藤
- インスタとかでちょっと見ようものなら、
これ好きでしょ、あれ好きでしょとか、
すごいすすめてくるじゃないですか、
インスタの人たちが。
- 大久保
- そうやってちょっと金持った高齢者が
狙われていくんですよ、ほんとに。どんどん。
- 伊藤
- 気をつけましょうね。
- 大久保
- うん、うん。お金そこに注ぎこむようになっちゃうから。
- 伊藤
- だって、もうほんと今、
その口に入れるの、私買う! って思って。
- 大久保
- なんでですか。
頰が気になるってこと?
- 伊藤
- っていうか、おもしろいから。
- 大久保
- あ、おもしろいから!
お古でよかったらあげたいぐらいですよ。
でも嫌ですもんね。ずっと口に入れてるから。
さすがにね。
- 伊藤
- そうですね。ちょっとね。
- 大久保
- 今日、こういう対談でいいんでしたっけ?
こんなフリースタイルでいいんですか。
本もちょっと取り上げていただけるんですか。
- 伊藤
- もちろんですよ。
この本はやっぱり佳代子さんを知るのに、
すごくいいじゃないですか。
- 大久保
- 私、意外と包み隠さず書いてる方だと思うんです。
書いて12年。干支一回り。
- 伊藤
- 干支の話するのって、年の近さを感じます。
- 大久保
- そんなさ、干支ですぐ
何歳下ねなんて計算もできないんですけど、
なんでしょうね、干支を訊くのって。
- 伊藤
- 干支って若い人ってどうなんですかね。
娘とかも言わないもん。
- 大久保
- なぜわれわれは干支をこんなに意識して
生きてるんでしょうね。
子牛寅卯辰巳‥‥と覚えさせられましたよね。
「干支一回り違うね」はよく言いますし。
そっか、私たち、まだ干支世代なんですね。
干支がなんとなく通じてる世代。
年齢は訊けなくても
干支は訊いてもいいかなと思いますもん。
- 伊藤
- その干支ひとめぐり、12年の間に
掲載誌は『POPEYE』から。
- 大久保
- 『Tarzan』に引っ越して。
ずっと伴走してきてくださった編集者のかたがいて、
最初の担当者だった山口さんというかたなんですが、
私が原稿を送った後、ちょっと感想みたいに
返信を書いてきてくれたのがうれしかった。
最初の読者である人にちゃんと伝わってて、
かつ、褒めてくれて、
私がおもしろいなと思ったところを
わかってくれてるなっていうのを返してきてくれたので、
それを多少意識しながらやってきたのは
あると思います、今思えば。
- 伊藤
- たとえばどんな感想が返ってきます?
- 大久保
- 覚えてない。(笑)それは一つも覚えてない。
- 伊藤
- でもうれしかったことは覚えてる?
- 大久保
- うれしかった。
伝わるかなーとか思いながら書くじゃないですか。
ちょっとこの感じ伝わるかな、
伝わったらいいけど、まあ強引にいっちゃえみたいなとか、
今回ここ意識して書いたんだけどなってところを
ちゃんとわかってくれてたなっていうのは、
思い出しました。
- 伊藤
- 伴走者ですね、まさにね。
- 大久保
- うん。そうですね。
- 伊藤
- 一回も原稿が遅れなかったって、すごーい。
- 大久保
- 私、そこはたぶんね、渥美半島で昭和46年に生まれ、
国立大学にガッツだけで行った人間としての
人間性だと思います。
- 伊藤
- あ、なるほど。そうなんだ。
- 大久保
- 生真面目。やれるときにやっちゃおうって、
すごくちゃんとやったから。
- 伊藤
- 時間の捻出の仕方とかもすごくないですか。
- 大久保
- いやあ、時間はなんとでもなりましたよ、前は。
今の方が時間にルーズかも。
なんか、わかっちゃったんですよね、
多少遅れてもなんとかなるっていうことも。
でも、それでももういいじゃないかと。
だから人が遅刻してきても、
私はそんなに怒らないかな。
- 伊藤
- でも大久保さん自身は、遅刻をしないですよね。
そんなことない?
- 大久保
- そんなことないですよ。
今日だって20分ぐらい遅れてきましたよ。
- 伊藤
- そっかぁ。
それで、原稿は、バーッと書いて送るのではなく、
一晩寝かしてたとか。
1日置いてから音読して、
引っ掛かりがないかを徹底的に検証したと。
- 大久保
- それ、私が言ってるんですか。ですよね。
- 伊藤
- 大久保さんが言ってます。
すごいと思いましたよ。
そこでまた伴走者の山口さんが
「カヨコグルーヴ&リズム」があると。
‥‥ふふふ。
- 大久保
- いじってます? 大丈夫ですか。
- 伊藤
- いやいやいや!
- 大久保
- ちょっと半笑いだから!
- 伊藤
- 「とにかく心地よく揺さぶられる文章なのだ」と。
でも、ほんとそうだと思いました。
- 大久保
- あら、うれしい。
- 伊藤
- どっから読んでもいいし。
- 大久保
- そうですね。それはありますね。
どっからでも読んで、
お気に入りの1本を見つけてくれて、
「あれ、もう1回読みたいな」みたいになったら、
最高じゃないですか。
- 伊藤
- 私はおかゆの増えちゃう話(*)が好き。
(*)「風邪をひいたら何食べる? 全然減らない無限粥地獄。」(『パジャマあるよと言われても』収載)
- 大久保
- 無限おかゆね。怖いですよね。
おいしくもないものを食べ続けるっていう悲しさ。
- 伊藤
- ちょっと目を離すと、少し冷めたぐらいに、
パンパンに膨れ上がってるんですよ、米が水吸って。
「あるある」と思いながら読みました。
- 大久保
- おかゆなんていうのは、ほんとに病気のとき、
ちょっと一人前作ろうと思ったら、
生米はほんの少し手に取るぐらいでいいってことですか。
- 伊藤
- そうそうそう。
- 大久保
- じゃないと、2、3日かけても食べ切れない
無限のおかゆが出来ちゃうから。
それを1合とかでやっちゃうからですね
- 伊藤
- 1合なんて!
- 大久保
- とんでもないですよね。
‥‥ウ、ケホケホ。
ほんと、喉も弱くてすぐイガイガする。
- 伊藤
- ちょっと給水タイム。
カヨコのデコルテ
- 伊藤
- 私、1週間ぐらい前かな、
テレビで大久保さんを発見して、
たんぽぽの川村さんと温泉めぐりしてた。
(テレビ東京『大久保・川村の温泉タオル集め旅』)
- 大久保
- あれやってるんですよ、よく。
温泉のロゴ入りタオルを集めるっていう旅番組。
- 伊藤
- そのときにタオル巻いて温泉に入ってるじゃないですか。
すっごいラインがキレイで
「カヨコーッ!」って思いました。
「ちょっと!」って。すごい。
- 大久保
- 「カヨコのデコルテ!」って思ったんでしょ。
- 伊藤
- そう。デコルテ!
- 大久保
- 「カヨコのデコルテー!」って。
- 伊藤
- いや、ほんとに、ほんとに。デコルテもそうですし、
やっぱりテレビに出る人の輪郭をしていると思って。
これ、絶対伝えなきゃと今日思ってました。
- 大久保
- そこなんですよ。いや、うれしい。
- 伊藤
- いや、すっごー! と思いました。
それ、なんかやってるんですか。
- 大久保
- あのね、でも、デコルテがキレイだな、
悪くないなと思ったのは、
もうけっこう40代ぐらいからなんですよ。
- 伊藤
- うすうす気づいてたんだ。
- 大久保
- うすうす気づいてて、
温泉のあのロケが始まったのが、
それこそコロナ禍ぐらい。
やっぱり人様にさらすもんだし、
こういう反応が1、2個あったら、
なんかそこはちょっとがんばらないとね。
- 伊藤
- 1、2個どころの騒ぎじゃないと思いますよ。
- 大久保
- あ、じゃあ、皆さん、静かに思ってるわけですね。
- 伊藤
- そうそうそう。
- 大久保
- そしたらもう、せっかくならと思って鍛えてます。
鍛えてるっていう言い方は大袈裟ですけど。
エクササイズ。
- 伊藤
- ジムに通ってるんですか。
- 大久保
- ううん。朝起きて、寝起きで頭が朦朧としてるところに、
YouTubeを見ながら30分、運動を。
- 伊藤
- ルーティンがあるって書かれてますね。
- 大久保
- そうそう、ルーティン、ルーティン。
- 伊藤
- でも、それで言うと、前の対談のときに、
朝寝起きのときに
「伊藤さん、寝て、こうなったときの
下から写す顔、すごいよ」(*)って。(*)対談「女子たるもの。」第6回。
「でも、ほんとに私、朝、寝起きの顔を
みなさんに見せたいです。
すーごい、もう、ほんっと妖怪ですよ。
私、戒めのために、朝起きて、
髪ボサボサで化粧もしない状態で、
あえて手鏡を上向きに置いて、
のぞき込むんですよ。
そうするとね、顔が重力に負けて、落ちるの。
ほんと妖怪の、油すましみたい。
「うわっ、怖い」と思って。」
- 大久保
- すっごいです、もう。
- 伊藤
- やってみたの。いや、もうほんと、すごくて。
- 大久保
- あ、見ちゃいました?
- 伊藤
- そうそう。けっこう見た。
でも最近はそのすごいのに慣れてきたんだけど、
最初のときの衝撃たるや!
そこからだんだん作り込んでいって、
あの伸びしろすごいですよね、あそこからの。
- 大久保
- われわれの作り上げ方はすごいと思いますよ。
- 伊藤
- ねー。
- 大久保
- まさこさんも人前に出られるんで、
見られてるのもあるし、
どこまで自分を上げて、
やっと晒せるかっていうのは、
もう長年やってるわけで。
- 伊藤
- 私はあんまり動画に登場しないけど、
写真で一番痩せて見える角度みたいなことは
研究してますよ。
- 大久保
- 素晴らしいです。
- 伊藤
- 大久保さんの場合は、全方向からでしょう。
温泉とかも、後ろ姿だって出てる。
その緊張感、すごいなと思いました。
- 大久保
- だから私は自分のオンエアは
見ないんですよ、基本的には。
- 伊藤
- かっこいい!
- 大久保
- いや、それはもうほんとに昔からで、
おもしろいと言われるより、
キレイだねって言われる方がいまだにうれしいんです。
キレイ、かわいいと言われる方が。
- 伊藤
- そうですよ。当たり前じゃないですか。
言われたいですよね。
- 大久保
- 当たり前ですよね。言われたい。
- 伊藤
- 言った方がいいと思う。
(取材に同席している人たちに向かって)
みなさんもね。
- 大久保
- うわ、すごい人数がいた。びっくりした。
よくこの状況で喋れてますね、私たち。
- 伊藤
- ふふふ。
- 大久保
- オンエア見ないのはね、
ロケで自然光で、直射日光のとき、
一番きつかったりするのもあるんですよ。
まあ、いい太陽のときもあるけど。
- 伊藤
- ライトを当てられてないと、ということ?
- 大久保
- そう。スタジオでライトをガンガン当てられてるときは、
まだぜんぜんOKラインなんですけど、
やっぱ、どっかでなんかほんとに
直射日光でゴリラ丸出し、じゃないですけど、
それを見ると、一気にテンション下がっちゃうんですよ、
- 伊藤
- そうかなぁ。
温泉の旅も自然光でしたよね。
あれは大丈夫でしたよ。
- 大久保
- そうですね。
なんだろ。カメラかな。
- 伊藤
- よい仕立てになって、写ってた。
びっくりしちゃった。
- 大久保
- ここでしょ。
- 伊藤
- そう、デコルテ。
- 大久保
- たしかにそれはもう、
このラインは親に感謝。
たしかにここだけはあんまりたるまないかも。
- 伊藤
- なんかやってないんですか。やってるんですか。
- 大久保
- いやぁ。別にここを鍛えることはやってない。
- 伊藤
- あれ、でも今日お持ちいただいた、これは?
- 大久保
- あれは美顔器。
「セルキュア4TPLUS」(BELEGA)
洗浄、細胞活性、表情筋エクササイズ、
美容成分の浸透などをおこなう電池式の美顔器。
- 伊藤
- そうなんだ。
私のもあるんですよ。
デンキバリブラシ。
「デンキバリブラシ(R) 2.0」(エレクトロン)
ブラシ型の低周波美容機器。
頭皮をほぐすヘッドスパ機器として開発された。
- 大久保
- うわ、デンキバリブラシ、出たー。
これ、たまにメイクさんが持ってたりする。
私のはセルキュアだっけな。高いの。
でもどういうツテかわかんないけど、
「半額で買えるよ、大久保さん」って言われて、
それでも高い。私、貧乏性だから、
絶対元取ってやろうと思って、毎日やるんですよ。
クレンジングモードで毛穴の汚れ取って、
5分間ぐらいで、ピピピピッて
EMS(電気的筋肉刺激)なのかな、
この引き締めみたいなやつは
週イチでやればいいみたいなんですけど。
- 伊藤
- それを、毎日やってるんですか。
- 大久保
- クレンジングモードはね。
じゃないと、毎日テレビとかでメイクで、
ほんとに塗装工事ぐらい
ファンデーション塗りたくるんですよ。
- 伊藤
- 今はそんなに塗ってないですよね。
- 大久保
- 塗ってます。バッチリ、
しこたま塗り上げてます、これ。
- 伊藤
- え? そう?
- 大久保
- そう。そうすると、毛穴が埋まっちゃう。
- 伊藤
- あ、だから今日、
素顔を見せてくれなかったんですか。
「仕上がってから来てください」って。
- 大久保
- たしかに。
ほんとにこっちがスッピンで帽子かぶって、
いかにも声かけないでくださいってなってるときに、
たまに変なディレクターとかに
「おはようございまーす!」みたいな感じで来られると、
イラッとしますんで、
それはちょっと仕上がりをお待ちください、と。
- 伊藤
- それ、なんですか。
- 大久保
- 頰の筋肉を上げるやつです。
こうやって口に突っ込んで。
ほら。
「ミリオンスマイルT(ターボ)」(スターアベニュー)
美顔トレーニング機器。
口に入れて頰を挟んで使うことで
筋肉をほぐし、鍛え、温める。
目元や鼻などには当てて使うそう。
- 伊藤
- え! 買いたーい。買います。買えるかな。
やだ私、今すごい汗かいちゃった。
- 大久保
- なんで?
- 伊藤
- (笑)なんか興奮して。
- 大久保
- え? 私がこれ口に突っ込んでるとこ見て?
興奮しちゃった? あら、まあ。
- 伊藤
- 汗をかくほどに。
- 大久保
- 私『ノンストップ』という番組に出演してるんですが、
毎回、通販のコーナーがあって、
そうするとスタジオが盛り上がっちゃって、
やたらと、買った方がいいよ、買おうよみたいになって。
- 伊藤
- 私、もう今、買う気満々ですもん。
- 大久保
- ほんとに? でも、これ、
ほんとに毎日やらないとね。
おっぱいの下の北斗七星
- 大久保
- 伊藤さん、私たち、6年ぶりですって。
前回、何を話したんでしたっけ。
こんな感じですか、やっぱり年相応の話題?
もう、腰は痛いし‥‥。
- 伊藤
- あれからの6年が、
私もうけっこうつらくて。
- 大久保
- あはは、つらい入口ですよね。
- 伊藤
- つらかった。
でも、この前の対談を読み返したら、
大久保さんは二日酔いでいらしてました。
- 大久保
- あ、マジで? 元気でしたね。
- 伊藤
- ねぇ。元気だった。
あのときビール一緒に飲んだじゃないですか。
「なんか二日酔いが治ってきた」
とかっておっしゃってました。
- 大久保
- 今や二日酔いになることもめずらしいぐらい。
- 伊藤
- なんか恐ろしくて。
- 大久保
- そう! 飲めない。
- 伊藤
- やっぱり?
なんなんでしょうね。このセーブする感じ。
- 大久保
- でもセーブしていかないと。
じゃあなんで昔は二日酔いで
やろうとしてたんだろうなって、
そこもすごい。
なんとかなってたんですかね。
- 伊藤
- 勢いですか。
なんとかなってたんじゃないですか。
顔とかも。
- 大久保
- 顔とかもね。
- 伊藤
- 体調とかも。
今や、なんとかならないじゃないですか。
- 大久保
- なんとかならないです。
ほんとに頭は痛い、気持ちは悪い、
その結果、なんか言葉も出てこない。
結果、人にちょっと嫌な感じで当たっちゃう。
そんないろんなものが付随して、
二日酔いというものは
最悪な1日を迎えるということが、
経験としてやっとわかったというか。
- 伊藤
- あのとき、私、すごく暑がってました。
- 大久保
- 私、今暑いです。
- 伊藤
- 暑いわ。暑いですよね。
- 大久保
- 暑いから、衣装を用意してもらっても、
肌触りが気になるものや、
ちょっとでもストレス感じるものを
排除するようになっていきましたね。
- 伊藤
- じゃあ「カヨコーデ」も変わってきたんですね。
- 大久保
- カヨコーデね。
カヨコーデはもう自分の体にストレスを与えないものを
着るっていうのが一番かもしれないですね。
- 伊藤
- だんだん、ほんと、そうなる。
前だったら、かわいい、着たい、着る、
みたいな感じだったのに、
痒くなるしとか。
- 大久保
- そうですね。暑くなるし。
でもほんとにちょっとでも
自分のコンディションがよくないと、
自分も嫌だし、
何が嫌って人にちょっと嫌な感じを見せてしまうのが。
- 伊藤
- 嫌な感じ、見せてないですよ?
- 大久保
- じゃあ、自分が思い過ぎてるのかなぁ。
それか、自分がいい人であるという
ハードルが高めなんですかね。
こうあるべきだとか。
- 伊藤
- ああ!
- 大久保
- 基本、幼少期から、
人に嫌われることだけは嫌だっていうところがあるので、
その結果ちょっと我慢したり、
人に嫌な顔を見せたりしないようにしてきました。
でも、昔に比べたら、出してますけどね。
結局この年になって、ちょっと喋らないとか、
ちょっと無表情でいることが、
もう圧をかけてるっていうことにね、
なるじゃないですか。
- 伊藤
- 現場ではたと気づくと一番上っていうのは、
5年ぐらい前からあって。
- 大久保
- ありますよ。
- 伊藤
- 「あれして、これして」って言うだけで、
あ、圧かけてるかもって。
- 大久保
- ほんとにね。
- 伊藤
- なんかビクビクしてる自分っていうか。
- 大久保
- そうなんですよね。
でも、強く言い過ぎたからといって、
「でもこれは今そういうことじゃなくて」って
フォロー台詞をつけるのも、
なんでだよーと思うし。
- 伊藤
- フォロー台詞、もう、わずらわしい。
あと、言ったことを忘れるから、
「これ前言ったかもしれないけど」とか。
- 大久保
- ありますね。前と後に言うのね。
いとうあさこさんが毎回
「これ、前にもお話ししたかもしれないんですけど」って、
ほんとに、前話したこと喋るんですよ。
- 伊藤
- いや、でもほんとに忘れちゃうんですよ。忘れるの!
親しい人だとフォロー台詞を言わないから、
「それ聞くの4回目だよ」とか言われて。
- 大久保
- 「それ聞いたけど?」って。
- 伊藤
- つらーい。つらいですね。
- 大久保
- まあまだ同年代だったら、それが許されるし、
どっちもせっかちだから、どっちかが話をまとめて
「いや、それ聞いたけど! こうこうこうなんでしょ」って
話が終わるんですけどね。
同年代はそのラクさはありますね。
- 伊藤
- そうなんですよ。だから今日は同年代ならではの、
「あ、そうそうそうそう」
っていうことを言いたくて。
- 大久保
- 「そうそうそう」話は大歓迎です。
そんなことばっかやってるんだけど、
やらないとしんどいから、
- 伊藤
- 急ですけど『パジャマあるよと言われても』(*)。
(*)42歳から54歳までの12年間,雑誌連載を続けたエッセイをまとめた大久保佳代子さんの著書。マガジンハウス刊。
- 大久保
- いやだー。ありがとうございます。
- 伊藤
- これ、発売したのって5月ですか。
あのときもう速攻で買いまして。
- 大久保
- いやだ。うれしい。
ありがとうございます。
私の12年間。
- 伊藤
- すごくないですか、12年。
- 大久保
- 12年、すごいですよ。
- 伊藤
- そうですよ。すごいですよ。
しかも、カヨコ42歳-43歳、
カヨコ44歳-45歳って、
ちょっとずつ変わってきてますよね。
- 大久保
- いや、変わ‥‥、自分が読んで、
同じ人間だと私は思えないぐらい。
カヨコの42って、
「ひど! 気持ち悪い、何、この女?」
って思いません? なんか。
- 伊藤
- いや、うん、あの。
- 大久保
- もちろんエンターテインメントの文章なんですけれども、
なんかもう、男の人のこと書いてて、
性欲がどうこうとか、もう!
- 伊藤
- でもちょっと“盛って”ますよね?
- 大久保
- もちろん盛ってます。
- 伊藤
- 北斗七星の話とか。
- 大久保
- おっぱいの下に出て来たほくろの話。
あれだって、もちろん盛ってますよ!
盛らせてくださいよ。
盛ってますけど。
- 伊藤
- ほんとは、じゃあ北斗七星ではない、ほくろは。
- 大久保
- 北斗七星そのもの、ではない。
- 伊藤
- それ気味?
- 大久保
- 気味。
ただ、ほんとにパパパパッていう
散りばめられてる感があったんで、
これが北斗七星みたいなお星さまだったら
キレイだなって。
- 伊藤
- そういうのって、
ハッと裸の自分を見るわけじゃないですか。
そういうときに、北斗七星を発見する。
それをメモっとくんですか。
- 大久保
- メモっときますね。
でも、すごくショックだったんですよ。
なかなか自分の身体って見ないじゃないですか。
でも、ちょっと運動しだした時期があって、
ほんとに胸の位置が上がっていったなと思って、
ちょっとこう裸になって見たわけですよ。
- 伊藤
- それは何年ぐらい前ですか。
- 大久保
- いつだろうな。
コロナのときにメチャメチャ運動したんですよ。
時間があり余ってて。
そしたらちょっと身体が締まって、
「あ、いい感じになってきた」のに、
年取ると変なほくろとかいぼとかってできるの。
知ってます?
- 伊藤
- できますね。
あれ、嫌ですよね。
- 大久保
- すっごいショックだったんです。
え、なんでこんな?!
- 伊藤
- 前からあったんじゃなくて?
じゃあ、気づいてなかったかもしれないですね。
- 大久保
- だからもしかしたら
凝視しない方がいいかもしれない。
- 伊藤
- そうか、そうですね。
- 大久保
- 「こんなになんかできてるんだ」
みたいなのがショックで、
そのショックが残りつつ、
トークをテレビでしなきゃいけなくなったときに、
「最近びっくりしたことあるか?」
みたいなフリでこれを思い出して、
でもこれだけ言っても
おもしろくならないなと思って、
そっからちょっとアレンジした結果、
一つのこのエピソードトークが出来上がり‥‥、
っていう流れです。
- 伊藤
- なるほど。そっか。
イブル、私の使い方 伊藤まさこ

クッションカバー(ブラック)/イブル(チャコール)
東京の家と軽井沢の山荘。
どちらの家もイブルは大活躍。
ことに山荘は、
床が黒いタイルなので、
シックな色合いのイブルと相性がいいんです。
夕暮れ時、
薪ストーブの前にイブルを敷いて、
ヌビのクッションも置いて。
ぬくぬくしながらの読書は最高です。

クッションカバー(ブラック)/イブル(チャコール)
この時はふたつ折りしましたが、
折らずに敷くときも。
撮影スタジオで器を広げる時は、
四つ折りにすると、
クッション代わりにもなって安心。
家だけでなく、仕事でも使える。
イブルの使い道、まだまだ広がりそうな予感がしています。

イブル(チャコール)
こちらはベッドルーム。
向かって右は、
グレーのイブルをカバーに。

クッションカバー(チャコール)/イブル(チャコール)
窓辺に置いたニーチェアの色ともぴったりです。
今回3色作ったイブルは、
落ち着いた色合いがベース。
我が家のようにモノトーンでまとめてもいいけれど、
赤や黄色やピンクなど、カラフルな色とも合いそう。
その人らしい色合わせで、
ぜひ部屋を作ってほしいなと思っています。

クッションカバー(ホワイト)/イブル(ホワイト)
その左のベッドには白を。
色が違うと印象が変わる。
ここでは同色のクッションカバーを合わせました。
「マイ箸」ではないけれど、
家族それぞれ自分の色のイブルを持つ、
なんていうのもすてきです。

クッションカバー(ホワイト)
ヌビのクッションは、
椅子の上に置くとその場がやわらかな雰囲気に包まれます。
我が家では、
家のあちらこちらにクッションを置いていますが、
「使う」以外に、こんなふうに「見せる」ことも多い。
気軽に部屋に変化をつけるアイテムとして重宝しています。

クッションカバー(チャコール)
こちらはソファ代わりにしているデイベッド。
以前作ったリネンのクッションカバーを
ずらりと並べているのですが、
ここにチャコールのヌビが仲間入り。
ひとつちがった素材が入ることにより、
リネンの質感が引き立つ。
それと同時に、ヌビの存在感も出る。
これは新しい発見でした。
イブル、あのひとの使い方 小堀紀代美さん
小堀紀代美さんのプロフィール
こぼり・きよみ
料理家。
東京・富ヶ谷にあった人気カフェ
「LIKE LIKE KITCHEN」を経て、
現在は同名の屋号にて料理教室を主宰。
大きな洋菓子店である実家をルーツとし、
世界各地への旅で出会った味をヒントに、レシピを考案。
著書に
『ライクライクキッチンの10分世界食堂』(宝島社)
『いつもの野菜ひとつで美味レシピ:
おかず、おつまみ、常備菜、使い切りにも。』(小学館)
『予約のとれない料理教室「ライクライクキッチン」の
特製レシピ65 コボリ喫茶室』(KADOKAWA)
『ライクライクキッチンの旅する味 予約の
とれない料理教室レッスンノート』(主婦の友社)、
『ごはんにかけておいしい ひとさライス』(西東社)
など多数。
「weeksdays」でもこれまでに
いくつかのコンテンツに登場。
「サンデーがいるから、
ソファやベッドにカバーをかけて、
気兼ねなくゴロゴロできるようにしています」
という小堀さん。
サンデーとはこの子。
「毎日が日曜日のようなおだやかな日々を過ごしてほしい」
そんな願いを込めてつけた名前なんですって。
取材中、何度も(いや何十回も)
かわいい! と言ってしまったけれど、
白と黒のむくむくした様子が本当にかわいくて、
性格もおだやか。
動くぬいぐるみのようなサンデーは、
ご近所でも人気者で、
お散歩に出かけると、
「サンデーですよね?」なんて
声をかけられることも多いのだとか。
今回は、
引っ越して数ヶ月という新居におじゃまして、
イブルを使っている様子を見せていただくことに。
レンガ色のタイルと、
チャコールのイブルがよく合ってる。
ソウルの布の問屋街でもよく目にしていたというイブル。
「でも、weeksdaysのイブルは洗練されていて、
商品名に『イブル』と書かれているのを見るまで、
気がつかなかった」
と小堀さん。
白いチェアに重ねた様子もいい感じです。
「チャコールもとてもいい色合い。
ソウルで見かけたグレーはもう少し紫っぽかったけれど、
こちらはシック」
そう、weeksdaysのイブルは落ち着いた色が自慢。
洋にも和にも。
幅広く使えるところもいいんです。
「お客さまが来る時以外は、
布をかけている」という、
階段下に置かれたソファは、
サンデーの特等席。
きれいな水色のソファに、
白いイブルとチャコールのクッション。
そして白と黒のサンデー!
「汚れたらすぐに洗えるから、
重宝しそう。
白は漂白もできますね」
いいお天気の午後。
今日は日曜日ではなかったけれど、
サンデーのおかげで休日みたいな気分に。
ママのお膝で、
うれしそうなサンデー。
イブルも気にいってくれるとうれしいな。
「weeksdays」仕様でつくりました
- 伊藤
- 日本でのイブルの需要は、
以前に比べて増えてきましたとおっしゃいましたが、
皆さんどうやって使ってるんでしょう。
- 洋奈
- ベッドだけじゃなくソファーカバー、
そしてラグに使う方も多いですよ。
- 伊藤
- なるほど。
赤ちゃんのいる人にもいいだろうなあと思いました。
- 香
- いちばん小さいサイズを赤ちゃん用になさる方、
そしてペット用になさる方も。
ペット用の需要、多いんですよ。
- 洋奈
- キルティングなので
ペットが爪で引っかけちゃうこともあるんですが、
なにより洗えるっていうのがいいみたいで。
- 伊藤
- 今回、本来のイブル(薄手の布団)のほか、
その生地であるヌビを使った
クッションカバーが素敵だなと思い、
パイピングやファスナーのカラーを整えた
「weeksdays」仕様のものを作っていただきました。
メールだけのやりとりでしたが、
こんなにすばらしく仕上げてくださって!
もちろん8182のアイテムそのままでも
じゅうぶん素敵だったんですけれど、
せっかくつくるなら、ってわがままを言いました。
- 洋奈
- 私たちのほうこそ、ありがとうございます。
韓国側の方たちもほんとに親身になって
「これはどうかな」と、色ひとつにしても、
サンプルをたくさん送ってきてくださったりして。
そのあたりって、韓国のいいところで、
既製品のファスナーでも微妙な色が豊富にあるんです。
これ、作ってくださってる工場の写真です。
- 伊藤
- すごーい。
けっこう行かれるんですか。
- 洋奈
- 年に2回ぐらいですね。
- ──
- その時はお2人で?
- 洋奈
- 韓国側のスタッフがいるので
3人で動くことが多いです。
- 伊藤
- 最初からそのチームで?
- 洋奈
- 本格的に一緒に仕事をするようになったのは
途中からですけれど。
- 香
- 私は遊びがてら美味しいものを食べたいというので
ついて行っていたんです。
- 伊藤
- でも今は企画からお2人で。
- 香
- 今はそうですね。
- 伊藤
- 意見の相違もあまりないとか。
こんなに近い関係で仕事をして、
ぶつからないのが不思議なくらいです。
- 香
- たぶん、好きなものが同じなんですよ。
見て「あ、これいいね」っていうのが
まあまあ一致する。
だからあんまり意見がぶつからないのかもしれない。
- 伊藤
- 素敵な関係性です。
さらに「そもそも」をお聞きしますが、
韓国にどうしてこの布が出来上がったんでしょう。
- 洋奈
- 私が聞いたのは冬の寒さゆえに
キルティングが使われたということです。
寝具にも衣類にも。
- 伊藤
- お寺の周りの店にお坊さんが着る法衣に
ヌビが使われているのを見ました。
- 香
- そうです、そうです。お坊さんが着ていますよ。
法衣でもあり防寒具でもあり、
とても大切にされています。
- 伊藤
- そうですよね。素敵だなと思って、
防寒用に買おうか、迷ったくらいです。
- 洋奈
- かわいいですよね。
とてもあったかいですし。
- 伊藤
- しかも、洗える。
綿だからチクチクしないですし。
- 香
- そうなんですよ。
- 洋奈
- 私も肌が弱いのでありがたいです。
あったかくて肌ざわりもいいので。
- 伊藤
- 今回のイブルは
生地も中綿もオーガニックコットンなんですね。
- 洋奈
- そうなんですよ。
ちょうど作れる工場さんだったので、
対応してくださって。
- 伊藤
- ‥‥この写真は?
- 洋奈
- 染色するときに使う機械なんですけど、
すごく高い温度のものなんです。
イブルは一貫して同じ工場で作るというより、
染色は染色の工場で、というふうに
提携工場で分業されているんです。
- 伊藤
- 韓国の工場の方たちは、
日本の人がこんなにイブルがいいって感じていること、
どう思われているんでしょう。
- 洋奈
- 驚いてます。「まさか」って。
- 伊藤
- 「まさか」。
- 洋奈
- 「日本にも、いいものがあるでしょう」って。
- 伊藤
- 私も言われました。韓国の友達に。
「お坊さんの色だよ」とも。
- 香
- そう、そういう感じなんですよ。
- 洋奈
- たしかに韓国のお坊さんは
こういう色目のヌビで仕立てた法衣を着ていますよね。
- 伊藤
- でも一般家庭では、
イブルが使われているんですよね。
- 洋奈
- はい、使ってます。
基本的にはベッドですね。
ラグとしても使いますし、
脱衣所に敷いたりも。
- 伊藤
- ベッドっていうのはベッドカバー的に?
- 洋奈
- 敷きパッド的な感じで使うことが多いですね。
冬はあったかく、夏は夏で涼しいので。
- ──
- なるほど。
- 洋奈
- 8182では、若干厚めのドットのキルティングは
冬場も使いやすいですよと言っているんです。
- 伊藤
- こういうドットっていうのは
元々あったものではなくオリジナルですよね。
こんなこともできるんですね。
- 洋奈
- はい。韓国でいちばんベーシックなのは
日本で雲柄って呼ばれているキルティングなんです。
カラーバリエーションも多くて。
- 伊藤
- すごくいいですよね。
とてもきれいだし。
私がソウルで買って来たのは
まっすぐのステッチですが、
もうちょっとステッチの幅が広くて、
ふかふかしているんです。
今回「weeksdays」のための
イブルとクッションカバーは、
幅の細いものを選んだことで、
すごくしっかりした感じになりました。
- 洋奈
- 伊藤さんから「ほっこりした感じじゃなくて、
キリッと」っていうリクエストがありましたね。
- 伊藤
- そうでしたね。それをちゃんと汲んでくださって。
最初にお願いしてから
どれぐらいで完成しましたっけ。
- 洋奈
- 2月にお会いしてスタートし、
最終サンプルが出来上がったのが夏ぐらいですよね。
そこから量産に入りました。
ところで伊藤さんは私たちのこと、
どんなきっかけで知ってくださったんですか。
- 伊藤
- 私が韓国で出会ったイブルに惹かれた、
という話を「weeksdays」のミーティングでしたら、
みんなが「いい!」とか
「気になってました」と言ってくれて。
そこからwebsiteで探し、
8182の存在を私に教えてくれました。
お2人のつくったイブルを見たらとてもよくて、
これは「weeksdays」でぜひ! って。
気になることって、言っておくものですね、
いろんなことが繋がって今に至るんですから。
- 香
- よかったです。
- 伊藤
- 今回はイブルとクッションカバーですけれど、
8182でスリッパをつくられているように、
ヌビを素材として、
いろいろなものがつくれるように思います。
- 洋奈
- そうなんです。なんでもおっしゃってください。
- 伊藤
- ありがとうございます。
今後とも、どうぞよろしくおねがいします。
- 洋奈
- うれしいです、よろしくおねがいします。
- 香
- 素敵な機会をありがとうございました。
- 伊藤
- こちらこそありがとうございました!
「8182」ができるまで
- 伊藤
- イブルというと、
いわゆる「韓国のお布団」として知られていますから、
本国ではちょっとほっこりしたというか、
生活に密着した道具の印象があるように思います。
でも「8182」のものには洗練を感じるんですよ。
とても素敵なものを作ってらっしゃいますよね。
- 香
- ありがとうございます。
現地のものとは、
また雰囲気が違いますでしょう?
- 伊藤
- はい。たとえばキルティングのピッチ(縫い線の幅)。
細いんですよね。
- 洋奈
- このピッチができる工場が限られてることもあって、
とりわけ今回のものが細いので、完成したときは
「ああ、いいものができたな」と思いました。
新しい世界というか、新鮮な印象がありますよね。
- 伊藤
- このサイズのピッチは、今まで、なかったんですか。
- 洋奈
- 生地としてはあるんですけど、
お布団にはありませんでした。
それができる工場を探すところから始めたことが、
とても面白かったです。
- 伊藤
- ありがとうございます。
完成してよかった!
- 洋奈
- いやあ、ほんとうに!
- 伊藤
- それでは、お2人のブランド
「8182」(はちいちはちに)について
教えていただけますか。
どういう成り立ちなんでしょうか。
- 洋奈
- 元々は、私が18年ほど前に
韓国雑貨を輸入するお店を始めたんです。
そのときにイブルと出会いました。
使い心地がよく、
アトピーを持っている私にも気持ちよくて、
洗ってすぐ乾くという良さもあったので、
実際に自分が使うために輸入をして
販売を始めたんです。
そこから長年販売をしてたんですけれど、
向こうの工場を紹介していただいて、
オリジナルアイテムを作るようになりました。
実際にブランドとして立ち上げたのは
4年ほど前のことです。
- 香
- 最初は8182(はちいちはちに)という名前ではなく、
イブルは韓国雑貨の一商品でした。
- 洋奈
- それをブランドにしてみるのはいいかなと思って。
- 伊藤
- それは、やっぱり需要が増えてきたってことなんですか。
- 洋奈
- それはありますね。タイミングもあったと思うんです。
イブルっていうものが日本でも
浸透してきたというか。
- 伊藤
- イブルって、韓国では問屋街で
売っているじゃないですか。
韓国のお友達に、
「すっごく素敵だよね、どういう存在なの?」
って訊いたら、「んー?!」だったり、
「え、何が?」って感じなんですよ。
- 洋奈
- きっとそうですよね。
- 伊藤
- いろいろ知りたくて深く掘り下げようとしても、
「別に、前からあるものだし」みたいな感じで。
私たちにはすごく新鮮なんですけれど。
- 洋奈
- 「おばあちゃんが使ってたもの」
っていうイメージが韓国の方にはあるみたいです。
- 伊藤
- おばあちゃん。なるほど。
- 洋奈
- 色も韓国特有の赤とか黄色とか、
原色のものが多いので、
なぜそれを日本の方が好きなの? みたいに、
韓国の方は不思議に思うみたいです。
- 香
- おばあちゃんの家にあった、とか、
地方に行ったらあった、みたいな感じ。
- 伊藤
- そういえば、
「若い人たちで、使ってる人はいないよ」
とまで言われてしまいました。
- 洋奈
- そうなんですよね。
- 香
- 確かにそう、韓国の若い人は
たぶんあまり使ってらっしゃらない。
- 伊藤
- でも問屋街にはいっぱいありますよね。
- 香
- あります、あります。
あんなに消費できないっていうくらい。
- 伊藤
- 私、2024年の秋に
20年ぶりぐらいに韓国に行って、
問屋街で比較的落ち着いた色味のイブルを見つけ、
やっぱりこれって素敵だなあと感じたんです。
それで買って来て友人たちに見せたんですよ。
紹介したいなと思って。
- 洋奈
- そうなんですね。
- 伊藤
- 洗えるし、いろいろな使い方ができるじゃないですか。
- 洋奈
- そうなんですよ!
- 伊藤
- 「そもそも」を知りたいんですが、
なぜお2人は韓国と繋がったんですか。
- 洋奈
- たまたま韓国旅行に行ったんです。
その時はこれが最初で最後かなという感じで
「一度は行っとかないと」って。
それがきっかけだったんですよ。
- 香
- パック旅行で、私も一緒に。
- 洋奈
- 二人とも初めて行ったんです。
そしたら、すごく面白くて。
- 伊藤
- へえー!
その時はソウルですか。
- 香
- ソウルでしたね。
雑貨が、すごく新鮮に感じられて。
- 洋奈
- 色とかデザインに惹かれてしまった。
あ、こんなに近くの国なのに
何も知らなかったっていう衝撃もあったし、
「焼肉とキムチしか知らなかったなぁ」って。
- 伊藤
- とくに雑貨に惹かれて?
- 洋奈
- はい。デザインがすごく優れていたり、
こういう暮らしのものを使うなんて、
知らないことばかり。
そしてその時に出会った人たちとの
ご縁が始まりとなって‥‥。
- 伊藤
- それが18年前?
- 洋奈
- はい、2007年の秋でした。
- 香
- 11月1日が仕事を始めて18周年だったんですよ。
- 洋奈
- 初めて行ったのが、その半年前ぐらいだったのかな。
「これは面白いから日本に紹介できたらいいなあ」
ということを思い、向こうで出会った方に相談したら、
「すぐやればいいじゃない」。
日本語のできる韓国の方だったんですけど、
そう言われて「そっか」ってそのときに思って。
- 伊藤
- すごくないですか、それ。
初めて行ってから半年後に仕事に!
- 洋奈
- そうなんですよ。
ほんとにその勢いで始めました。
ショップもオンラインだったこともあって、
始めやすかったというのもあります。
- 伊藤
- その前もそういうお仕事をされてたんですか。
- 洋奈
- いや、全然違う仕事でした。
ヨーロッパのファッション関係、
コレクション系の雑誌を作る編集者でした。
- 伊藤
- えっ。すごい。
- 洋奈
- そこから韓国に行ったことをきっかけに、
なぜか急に韓国にベクトルが向いて。
- 伊藤
- そんなことって、あるんですね。
- 洋奈
- 友達にも驚かれてます。
「まさかの韓国! ヨーロッパじゃないの?」みたいな。
- 伊藤
- そこからお店を始められたわけですが、
他にどんなものを売られてたんですか。
- 洋奈
- 文具的なもの、アクセサリーもありますし、
向こうのブランドの洋服です。
- 伊藤
- じゃあ買い付けて撮影をして、紹介して、
オンラインで売っていた。
- 洋奈
- 今もファッション系のアイテムは
続けているんですけれど、
「8182」はイブルとヌビに特化しているんです。
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
12月25日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
fog linen work
バスマット(厚地、薄地)
2018年の、
「ほしいものはたくさんある。」
という鼎談から生まれたバスマット。
水しぶきを気にしないで使える、
大きなサイズのバスマットがずっと欲しかったのです。
使い始めて5年経ちますが、
さらりとしたリネンが、
お風呂上がりの足元を、
気持ちよく迎えてくれる。
私の暮らしになくてはならない存在になっています。
洗って乾かしてもへこたれず、
いつでもきれいさっぱり。
今回作ったのは厚地と薄地の2種類。
お好きな肌触りをえらんでくださいね。
(伊藤まさこさん)
이블(イブル)
はじめてソウルを訪れたのは、
20年くらい前。
布の美術館や博物館をめぐり、
旅から帰ったあと、
自分なりのポジャギ(*)を作る‥‥という取材。
毎日、朝から晩まで、
目にするのは布、布、布。
とくに問屋街の物量には圧倒されたものでした。
限られた時間で、
気に入りの布を探すというミッションを抱え、
必死に問屋街を歩き回る私。
それでも、
疲れないし、飽きることなどない。
「好き」という気持ちはすごいのです。
昨秋、娘と久しぶりにソウルを訪れ、
問屋街に入ったとたん、
思い出したのは「イブル」という存在。
そうそう、こんなキルティングの生地、
前も見た気がする。
いや、でもだいぶ洒落たものになっているぞ。
その時会った友人に、
イブルって韓国の人にとってどんな存在?
と尋ねると、
「?」と不思議そうな顔。
あまりに生活に定着したもの過ぎて、
今の私たち日本人から見た「おしゃれ」なイメージに、
ピンとこないんですって。
今週のweeksdaysは、
韓国のイブルをご紹介。
今の私たちの暮らしに合うような、
シックでシンプルなものができましたよ。
(*)ポジャギは褓子器と書き、韓国伝統的の布。
端切を縫い合わせてパッチワークでつくる。
日本の風呂敷のように物を包んだり、飾ったりして使う。
服が私に与えてくれるもの
- 伊藤
- 滝口さんは
「nest Robe」のプレスをされてきて、
今はご自分でも、
ものづくりをしてらっしゃるんですよね。
- 滝口
- そうですね。
当時はプレスを担当しながら、
企画会議などにも入っていたんです。
「この時期にはこういうものを作ると売れやすい」
というようなこともわかってきて、
15年ほど、企画から宣伝まで携わりました。
うちの母が美容師で
子どもの頃から手を動かしているのを見ていたので、
「自分もモノを作る人になりたいな」
という想いはずっと心の中にはあったんです。
それで大学は服飾系に進んだんですけど、
卒業していざ服に携わる仕事となると
なるべく自分でも作りたいなと、
今でも思っています。
- 伊藤
- 先ほど伺ったリネンのスカートのほかには、
どういったものを作られているんでしょう。
- 滝口
- 刺繍の図案を考えて、
デニムに入れたりしています。
実際の作業は、
山形でパッチワーク教室の講師もしている義母に
お願いしているんですけど。
- 伊藤
- あら、お義母さまが刺繍を?
- 滝口
- はい。デザインは、
私が10代の頃に気に入って着ていた
ヴィンテージの服があって、
その刺繍をベースに
オリジナルのものを考えているんですけど、
刺繍は義母にしてもらっているんです。
サンプル制作の段階では、
手伝ってくれている妹がそれを送ってくれて、
「糸の色はこっちでお願い」という感じで、
お菓子といっしょにお戻して、完成に持って行く。
そんなふうに一緒に仕事をしているんですよ。
- 伊藤
- それはお義母さまはうれしいでしょうねぇ。
- 滝口
- そうだといいなぁと。
「やらなくちゃ」って、
日々の張り合いにはなってるみたいですね。
完売したりするとなおさら。
- 伊藤
- それはすごいですね!
次に作るものの計画もあるんですか。
- 滝口
- ちょうど今「fofofofa」で制作しているのが
「DWELL TROUSERS」(ドゥエルトラウザーズ)
というデニムです。膝から下くらいに
筆記体の欧文をプリントしているんですが、
その言葉は、制作に携わっているみんなからの
「守りたい場所」をテーマにしたものなんですよ。
- 伊藤
- 言葉、ですか。
- 滝口
- たとえば、もう閉店してしまって今はないけれど、
子どもの頃父と行った喫茶店の名前。
そういった自分の中で大事にしたい場所や言葉を、
一緒に作っている方たちと持ち寄って、
ばーっと並べたデザインです。
- 伊藤
- おもしろそうな試みを
いろいろされているんですね。
好きな服は、歳とともに変わりますか?
- 滝口
- ベースの部分というか、
自分のスタイルは変わらないかもしれません。
アクセサリー感覚で
「こういうのが欲しい!」という
突発的な欲求はあります。
- 伊藤
- パンチのある柄ものとか。
- 滝口
- まさにそうですね。
刺繍、大切にしたい言葉たち‥‥。
菊池(亜希子)さんもそうなんですけど、
伝えたいこと、表現したいことがたくさんあるんです。
- 伊藤
- それはすごいことですよ。
- 滝口
- 「言いたいことを言わせてくれよ」
みたいな、
ちょっとパンクなバンドマンに
近い感覚かもしれないです(笑)。
- 伊藤
- かっこいい!
それが服づくりに現れてますね。
- 滝口
- 菊池さんとのものづくりでは、
どちらかというと私は受け止める係になろうかな、
と思いながら彼女が、私を、ひきだしてくれる事が
たくさんあるんです。
「あ、こういうことなんだ」と、
自分で驚いたりするんですよ。
方向性が合わないことももちろんありますけど、
それはそれで出来上ったものがおもしろい。
「こう合わせたら私も好きだなあ」とか
方向性が合わない事があっても
それ自体が面白い! (笑)
周りにいるいろんな方もサポートしてくれるから、
ライブみたいな感覚で作っています。
- 伊藤
- すごくいい関係ですね。
私たちはセレクトショップだから、
自分たちでアトリエや工場をもって
一からものを作っているわけではないんです。
作ってくれる人がいる。
そこが、滝口さんの仕事と、少し違うかも。
「こんなのが欲しい」というのを伝えて、
それを作ってくれそうなところを探したり。
- 滝口
- 一から作るとなると、
途方もなく時間がかかりますものね。
- 伊藤
- 生地からとか、
もっと考えたら糸からとかね。
食材づくりのような感じですよね。
- 滝口
- 天然素材の服を作る工程の話を
聞いたことがあるんですけど、
糸をつくるまでに、
まずは畑からリネンの草を刈ってきて、
1度水に浸して腐らせる
ということをするらしいんですよ。
そうすることで、レッティングといって
草から繊維を取り出しやすくなる。
たとえばエジプトでは
雨があまり降らないので、川の水に浸し、
雨が降るヨーロッパでは、
畑の土の上でレッティングをする。
その結果、同じリネンであっても、
場所が違うとできる糸の色が全然違うんですよね。
- 伊藤
- すごいですね。
結局、やっていることは「農業」ですよね。
私も日本酒を作っている方に取材したときに、
「お酒造りは農業だ」って言われてました。
水と土からお米を作って、
それを醸造してできるわけだから、
なるほどたしかに、と思って。
- 滝口
- 本当にそうですよね。
考えてみれば服もそうだなと気づきました。
知れば知るほど奥が深いというか、
何ごともわかった気になったらいけないなと。
何年も仕事をしてきましたけど、
学ぶ気持ちは忘れちゃだめだなと感じます。
- 伊藤
- でもそういうことを知っていると、
愛着が湧いて手離せなくなりそうですよね。
- 滝口
- なります。
大切にしなくちゃって。
- 伊藤
- ALWELのことも、
こんなに素敵な服をどうやって作ってるのか
詳しく聞いてみたいですよね。
今度、展示会にご一緒しましょう。
- 滝口
- ぜひ伺いたいです。
たのしみにしていますね。
洋服好きが、きっと好きになる
- 伊藤
- 滝口さん、こんにちは。
今回はALWELのベストを着てくださって
ありがとうございます。
- 滝口
- こちらこそありがとうございます。
どちらを表にして着るかで雰囲気が変わるので、
着こなしがたのしめました。
- 伊藤
- どちらを表にしようか、
迷っちゃいますよね。
- 滝口
- そうなんです。
ファーを外にするときは、
中に白いシャツを着て、
ショートパンツにタイツを合わせると
きれいめのコーディネートになって
素敵だなと思いました。
- 伊藤
- いいですね!
そんな時は、小さいバッグを持ったりして。
- 滝口
- そう!
この服には「小さいバッグ」が似合いますよね。
ファーの質感が、小物でほっこりした印象になって。
この服、手持ちのいろんな服に合う気がするんですよ。
- 伊藤
- 私もこのベストを見たとき、
「これはいい!」って思ったんです。
1枚着るだけで
なんとなく今らしい着こなしになりそう。
- 滝口
- そう「今の感じ」がするんですよね。
ぐんと冷えてきたけど、
電車の中は暖房で暑いし、
分厚いアウターやダウンはまだ着たくないな、
というときにも、ちょうどよさそうです。
車移動が多い方にもいいですよね。
- 伊藤
- たしかにそうですね。
気温が変わりやすい季節にも便利かも。
寒いときには、
ファーを中にして着たら暖かかいんです。
- 滝口
- 機能的なだけじゃなく、
着方によって表情が変わるのも
すごくうれしいですよね。
- 伊藤
- そうなんですよ。
裾を絞ったり、
前のジッパーを開けたり閉めたり、
着る人に自由がありますよね。
ファーを外にして着たとき、
腕の下の脇線のところだけファーがないでしょう。
ここまで全部ファーだったら、
着たときにちょっとモコモコになりすぎる。
さすがだなぁと思うんです。
- 滝口
- 全面ファーだったら、
シルエットも変わってきちゃいますものね。
- 伊藤
- ナイロンを表にしてジッパーを閉めたときに
首元のファーがちょっと出るのもかわいいんです。
ALWELって、こういうバランスが、
ほんとに上手なブランドなんですよね。


- 滝口
- わかります。
細かいところまで、
きちんと計算されて作られている気がします。
- 伊藤
- 縫製もきれいで、
ものすごくいいんです。
ALWELって、洋服がすごく好きで
ベーシックなものはひと通り持っているという方も
気に入ってくれるブランドかもしれない。
「おや?」みたいな発見があるんですよね。
- 滝口
- それはあるかもしれません。
だから1枚でも「なんか素敵じゃない?」って
思わせてくれるんでしょうね。
- 伊藤
- 滝口さんは、
毎シーズン、お洋服を買われますか。
- 滝口
- 買います。
自分のと、娘の分もあるので、
部屋が服でいっぱいになっちゃって(笑)。
そろそろ断捨離しなくちゃと思っています。
- 伊藤
- ふふふ。そんなに?
お洋服が好きなんですね。
- 滝口
- 好きですね。
私の中では「服を買う=夢を買う」
みたいに感じているところがあって。
こんな自分になりたいなぁという
願望を満たしてくれるツールだと思ってます。
- 伊藤
- 「夢を買う」。
そうかもしれないですね。
- 滝口
- 基本はデニムやオーバーオールに
Tシャツやニットを合わせることが多いんですけど、
「こういう恰好がしたいな」
「これにあれを足そうかな」
なんていつも考えています。
- 伊藤
- スカートはあまり穿かれないですか。
- 滝口
- 多くはないんですけど、
実はいま、私が穿きたいスカートを
作っているところなんです。
- 伊藤
- あら。
ご自身のブランドで?
- 滝口
- ボリュームたっぷりのリネンのスカートなんです。
足元にぶわっとギャザーが広がって、
マニッシュな生地感と女性らしさが感じられるものが
欲しいなと思って進めています。
- 伊藤
- いいですね。
そのスカートにもこのベストは合いそう。
- 滝口
- 絶対合うと思います!
それから菊池亜希子さんと一緒に取り組んでいる
「fofofofa」というものづくりプロジェクトがあって、
最近はハーフパンツが私たちの中でブームなんですよ。
以前作ったものが人気だったので
今回コーデュロイ生地でも作っているんですけど、
それにこのベストを合わせてもすごくかわいいと思います。
ちょうどお尻が隠れるベストだから、
ハーフパンツの裾を見せて、
タイツも合わたらバランスもよさそうです。
- 伊藤
- そう、丈感もいいですよね。
色も素敵だし。
- 滝口
- 黒でも茶でもなく、
何でもあわせやすい絶妙なカーキですよね。
- 伊藤
- 今日は滝口さんに3パターンほど
着こなしを紹介いただきましたけど、
最初にこのベストを見たときに
「あの服に合わせよう」って
ピンときたんですか。
- 滝口
- そうですね。
このベスト自体が、
いつもの私というか、
無理をして頑張っていないときの自分の装いに
ぴったりだなと感じました。
デニムにも合うし、
シンプルだけどアクセントにもなる。
きれいな感じで着たいときは
ファーを外にしてヒールの靴に合わせてもいいし、
反対側はアウトドアっぽく着られるのもいいなって。
もう、コーディネートが無限に浮かんできました。
- 伊藤
- 考えるのがたのしいですよね。
これを羽織るだけで “いい感じ” になるし。
「ALWEL」の服って、
どれもすごくわかって作られてるなって思うんです。
Tシャツも、ありそうでない、
欲しかったと思えるものが見つかったり。
- 滝口
- わかります。
うちの70歳になる母が
山形の実家で美容師をやってるんですけど、
「ALWEL」のTシャツをプレゼントしたら
とても気に入って着てるんです。
ブランドには詳しくない人なんですけど、
毎日のように着ていて、
それでも生地と縫製がいいからなのか、
全然くたびれた感じにならないんです。
いつもの母が、なんかおしゃれなんですよ。
- 伊藤
- 素敵。
そう、おしゃれになるんですよね。
- 滝口
- 不思議です。魔法かなって。
袖のカットなのか、首のカットなのか、
何かが違うんでしょうね。
- 伊藤
- すこし前にALWELのジャンパーも
取り扱わせていただいたんですけど、
それもとってもよかったんですよ。
いろんなバランスが、すごくいい。
そんなブランドだなと思います。
ふわふわ、もこもこ
ふらりと入った骨董屋で、
小さな瀬戸の片口をしげしげと見ていると、
「なんて気持ちよさそうなコートなの!
触ってもいい?」
お店の方にそう声をかけられました。
はじめて会ったその人は、
とてもにこにこうれしそうで、
私も思わず答えたのでした。
もちろん! って。
もこもこのコートが縁で、
話が弾み、
晴れてその片口は私のものになったのですが、
その方に声をかけられていなかったら、
もしかしたら買っていなかったかもしれない。
話は変わって、この週末。
撮影用にと娘から借りてきたくまのぬいぐるみを、
なんとはなしに玄関に置いてみたら、
いつもの我が家の玄関が、
チャーミングになった。
小さくて白くてすこし古ぼけたそのくまが、
そこにいるだけで、
こんなにもうれしい気持ちになるなんて!
今週のweeksdaysは、
ALWELのリバーシブルファーベスト。
ふわふわ、もこもこって、
人の心をやわらげる作用があるよね。
デザインは「人」なんです
- 臼井
- 伊藤さんは、インプットしたことは、
しばらく寝かしておく、っていう感じですか。
- 伊藤
- どうなのかなぁ。どうだろう?
- 臼井
- ひょっとして、しぜんと
周りの人に話してるんじゃないかな。
- 伊藤
- 「こんなものを見たよ」とか
「これ、よくない?」とか。
たしかにそういうことは、すぐにしていますね。
「weeksdays」のチームLINEには、とくに。
- 臼井
- やっぱり。僕と伊藤さん、似ていると思うんですけど、
インプットしたことを、すぐに発信してるんだと思います。
伊藤さん、内緒にしてること、あります?
あんまりないと思うんだけどなあ。
- 伊藤
- ふふふ、どうでしょうね。
でもやっぱり人と会ってしゃべると、
インプットもアウトプットもして、広がりますよね。
話すといってもそんな根を詰めて
「デザインとは何か」じゃなくて、
「あそこに行ったらこんな店がよくて!」みたいな。
- 臼井
- 先日、アパレルの人たちと話す機会があったんです。
僕たちがやってる家電とか工業デザインとは
全然違う世界なんだけれど、
話してみたら根っこは一緒だなって思えて。
いいものを作りたい、そういうものを届けたい、
そういう気持ちは一緒なんですよね。
そういうクリエイティブな仕事の人たちと話すと、
自分自身の学びになるって感じがしました。
- 伊藤
- それもまた、
チームのみなさんのいい仕事につながる。
- 臼井
- はい。デザインって人なので、
いい環境を整えていい仕事のやり方をデザインし、
いい若いデザイナーたちがフルスイングできる場所を
つくりたいなって思うんです。
今は、僕が具体的な製品のデザインを
するわけじゃないので、
そういうフルスイングできる場所を用意するのが
マネージャーとしての僕の仕事です。
- 伊藤
- そういう意味でもこの場所を作られたのは
すごくいいことなんですね。
- 臼井
- すごくよかったと思います。
いいタイミングで、ラッキーでした。
でもまさかのコロナはびっくりしましたよ。
せっかく作って人が集まっていたのに、
コロナ禍を機に誰も来なくなってしまった。
でも、出社しなくても仕事ができるようにもなり、
それでワークライフバランスをとってる人たちも
いっぱいいるわけで、
たとえば介護をしながら仕事をする人もいるのに、
それを無理に出社しろとは言えない。
人が集まることの難しさを感じます。
僕としては、ここをもっと魅力的で、
行きたいっていう場所にしないと、って思います。
「行きたいオフィス」っていうか。
- 伊藤
- 臼井さんは執行役員になられて、
マネジメントというか経営側の視点も
もたれていると思うんですけれど、
デザイナー出身で経営側ということについて
葛藤みたいなものはありますか。
- 臼井
- 僕はデザインやブランドの仕事をしてるじゃないですか。
すると「お前は非財務だからいいよな」みたいな印象を
持たれることがあるんですよ。
「お前の言うことは青臭い」とか
「お前の言うことは金のにおいがしない」とか。
もちろん数字をターゲットにすることは大事だけれど、
僕が言うのは
「僕たちがやってるのは別に非財務じゃない。
でも短期的な売上ではなくて、長期財務だと思ってる。
こういう活動ってじわじわ効いてくる話なんだ。
僕たちは未来に向けて考えてるし、
お客さん側から考えている」と、
一所懸命説明するんですよ。
これから儲かる話をしてるんだよ、と。
- 伊藤
- でも経営って1年ごとに区切りがあるわけじゃないですか。
- 臼井
- そうです、そうです。
ただデザインやブランドのことをやっている僕には
あまりそこの追求はないんですよ。
だから周りから見るとお気楽な人みたいな感じに、
どうしても、なっちゃうんですよね。
- 伊藤
- そんなことないと思いますけれど。
- 臼井
- あはは、でも逆にそれを利用してね、
ちゃんとお客さん側から見ることをやろうと。
海外の家庭調査訪問もそれなんですよ。
僕がすごくインプットをたくさんしているのは、
世の中に変化が起きてるところを自分で見ておきたいから。
数字を見ている人たちが手が届かないところを
ちゃんとやっときたいなあと強く思うんです。
これはちょっと真⾯⽬に。
これ、経営にとってすごく大事なことじゃないかなって。
でね、これがわかる経営者を増やしたいんですよ。
だってリベラル・アーツ(*)って言ったって
日本の経営者は腰が引けるじゃないですか。
センスとかデザインって言葉に過敏。
(*)リベラル・アーツは「人が、自由になるための学び」。いろいろな分野から広く知識を吸収して、人格の成熟を目指すこと。
- 伊藤
- そうですね。なんででしょうね。
- 臼井
- それを言われるのがすっごい嫌なんじゃないかな。
「あなた、センス悪いですね」って言われたら
もうショックで立ち直れないんだと思いますよ、たぶん。
伊藤さん、ズバズバ言いそうだけど。
- 伊藤
- そんな、言わないですよ~。言えないですよ。
- 臼井
- でも柔らかく言うでしょ?
- 伊藤
- いやあ‥‥、ま、身近な人には、ね。
- 臼井
- ほら。あはは!
ほんと、そこ、大事でね、
松下幸之助も裏千家でお茶を点てていたし、
阪急の小林一三だってすごい文化人だし。
昔の経営者ってすごい文化人じゃないですか。
- 伊藤
- 確かに。そうね。そうか。
- 臼井
- だから伊藤さんとかやられてるようなこと、
とっても大事なんです。
ファストファッションができてから、
ファッションって、下が上がったけれど、
上は下がりましたよね。
昔の方がおしゃれな人がもっといっぱいいた。
- 伊藤
- そうか。確かに。
ところでお宅訪問、国内でも、
Panasonicのデザイナーが、
じっさいのユーザーのお宅を訪れるような
取材も見てみたいです。ユーザーとして。
- 臼井
- ああ、それ、面白いと思いますよ。
コロナで今まで見えなかった家の中が
SNSで公開されるようになりましたよね。
日本人って今まで
家の中をあんまり公開してなかったから、
インテリアを人が見ることがなかった。
これ、見栄えだけの話じゃなくて、
実際の体験とか動線とか、
家の中ですごく大事なそういうことが含まれているから、
取材を通してそれがわかるといいですよね。
- 伊藤
- テレビはふだんクローゼットにしまってるんですとか、
夜、階段が暗くて怖いからLEDのランタンを置いてます、
とか、家電のことにしても、
「そうか!」って思うことがありそう。
- 臼井
- そういう具体的なシーンがあった方が
「これをうちに置き換えたら」って考えられますね。
文章で言われてもなかなかイメージが浮かばないけれど、
そういう具体的なものを見せてあげると。
そういう意味で、伊藤さんの軽井沢のおうちは、
いろんな実験の要素が盛り込まれていて面白いですよね。
- 伊藤
- またぜひいらしてくださいね。
- 伊藤
- 話が尽きませんが、そろそろ予定のお時間に。
臼井さん、お忙しいなか、
今日はありがとうございました。
またぜひゆっくりお話をさせてくださいね。
- 臼井
- こちらこそありがとうございました。
またぜひいらしてくださいね。
僕も遊びに行かせてください。
インプットの多さ、アウトプットのはやさ
- 臼井
- ところでこのHalf Round Table、
奥行きがあるように感じるんですよ。
半円なのに、それ以上というか。
面白いなあと思って。
- 伊藤
- これ、ちょっと秘密があって、
完全な半円じゃないんです。
2つ合わせても正円にはならないんです。
- 臼井
- そうなんですか!
- 伊藤
- 半円をいちばん美しくしよう、
っていうコンセプトで設計をしていて、
ほんのすこし奥行きを足しています。
- 臼井
- あぁ、それはすごい!
- 伊藤
- その天板の大きさもそうですし、
脚のラインであるとか、
こまかいところを家具のチームといっしょに
かなり考えてつくったんです。
角に丸みを持たせすぎるとファンシーになりすぎる、とか。
といってシャープにしすぎると
「かっこよく」なっちゃうから違うね、とか。
- 臼井
- 伊藤さんの細部への目はすごいですよね。
軽井沢の家にあったカウンターのハイチェア、
裏っ側がかっこよかったですもんね。
脚の付け根のところ。

撮影=有賀傑
- 伊藤
- あれはソファーに座ったときに見えるので、
始末をきれいにしてほしかったんですよ。
でもそれはね、プロの方たちがやってくれるので、
私はこれがいい、って言うだけなんです。
- 臼井
- 最初に言ったように、テーブルにくっつけてみませんか。
よいしょ‥‥(運ぶ)。
ぴったりでしょう。
- 伊藤
- すごい! イメージ変わりますね。
お仕事のテーブルが、かわいくなりました。
面白いなあ、角と丸の違い。
- 臼井
- あえて離して置いたのは、
仕事をするところと、
ちょっとブレイクするところが、
いい感じで離れてるのがいいかなって思って。
でもくっつけても、違う世界がありますね。
- 伊藤
- 臼井さん、いかがですか、半円家電。
- 臼井
- あはは! でも炊飯器だったら
中のお釜まで作んなきゃいけないからなぁ。
- 伊藤
- そっか、そういうこと。
かんたんじゃないですよね。
- 臼井
- ピザ釜は全体が丸いほうがいいし。
‥‥空気清浄機ならできるのかな。
- 伊藤
- 「weeksdays」では
半円の傘立てを扱いましたよ。
- 臼井
- 「半円にならないかな?」は、
課題として面白いですね。
いろんなものに当てはめて考えると。
「これほんとうに、四角くなくちゃいけないの?」って。
家電の場合は中の機構の問題がありますけれど、
昔、Panasonicでデザイナーズ商品っていうのがあって、
たとえばこれ、当時の電話機なんですよ。
面白くないですか。
- 伊藤
- え、かわいい!
見たことなかったです。
- 臼井
- このCDラジオも引き算のデザインです。
以前、社長が言ってくれたんですが、
「デザインを良くしたら、
お客さんは大事にしてくださるから、
それが一番ロングライフになるよ」って。
だからデザインってすごく大事なんです。
- 伊藤
- 「いい家具はずっと使える」のと一緒ですね。
- 臼井
- やっぱり丁寧に作って丁寧に使ってもらう、
っていうことがすごく大事だと思います。
Panasonicの家電も、
社内で過剰品質って言われてるぐらい、
“やりすぎ家電”なんですよ。
ちょっとやりすぎじゃないの、
もっと効率化して安くできるじゃない? みたいに。
でもいちユーザーになったら
そのくらいやってくれてるから
お金を払いたいって思う。
僕はそのくらい過剰でいいんじゃないのかな、
と思うんです。
同時に、デザインはシンプルにすることを考えながら、
「シンプルになったあとをどうするか」も
考える段階に来ているんです。
具体的に言うと、家電のリサイクルや、
修理をしてもっと使えるようにする、
という取り組み。そういう違う軸が要るなと思います。
2023年からは、さまざまな理由で当社グループに
戻ってきた家電をもう⼀度使える状態に再⽣しご提供する
Factory Refreshもスタートしました。
- 伊藤
- なるほど‥‥。
- 伊藤
- 臼井さん、月に1回は海外に行かれるのは、
インプットをすごく大事にしているということだと
おっしゃっていたんですよ。
そんなにインプットして大丈夫なんですか。
頭の中がぱんぱんになっちゃいそう。
- 臼井
- え! そんなこと考えたことなかった。
スケジュールはちゃんと調整してもらってるんですが、
それでもこの間、上海に0泊2日だったかな、
そんなこともあるんだけれど、
いくらネットで情報や動画が見られても、
やっぱり自分で行って見て体験したものが
全てじゃないかなって思うんです。
北欧に行ったときにはサウナに入って
冷たい海に飛び込みましたよ。
- 伊藤
- あら、それはどんなお仕事なんですか。
- 臼井
- 家庭訪問調査です。
これがめちゃくちゃ面白いんです。
- 伊藤
- わぁ‥‥一緒に行きたいくらい興味があります。
- 臼井
- でしょ。やっぱり暮らしなんです。2025年の
「世界幸福度ランキング」(国連がまとめたもので、
「人生に対する自己評価」をもとに算出している)で、
日本って55位なんです。
前年の51位から下がった。
で、フィンランドは8年連続1位なんですよ。
それはなぜなんだろう、
幸せに暮らすってどういうことだろう、
ということを実感したくて。
フィンランドの人、
インテリアがとてもきれいなんですよね。
冬は夜が圧倒的に長くて、家で過ごす時間が長いから。
そして家を訪問したいというと、
多くの人が快く迎え入れてくれる。
逆に、スペインでは、まず家に上げてくれない。
「だったらバルに行こうよ、家は来なくていいよ~」って。
どうしてもってお願いして訪ねて見たら、
家のなか、そうとう、散らかっているんです。
だから人を呼ばないんでしょうね。
でもスペインの人は
外でみんなでお酒飲んでおいしいものを食べて、
絶対人生楽しいよなあっていう暮らしをしている。
そんなふうに幸せなところを
ちょっと見に行くという仕事です。
- 伊藤
- そのインプットしたことは、
どんなふうにアウトプットなさっているんだろう。
- 臼井
- インプットをしたことはけっこうすぐみんなに
いろんなところで話します。
たとえば僕、部下全員に、
誕生日メッセージを送ってるんですよ。
毎日のように。
多いときで1日に7人ぐらいになるんですけど、
誕生日の朝起きたら、誕生日メッセージが、
AIじゃなくて僕が書いたものが届くように。
僕、これ、部下とのコミュニケーションにおいて
すごく大事にしていることなんです。
ほら、スマホだと、このくらいの文章です。
- 伊藤
- (スマホをのぞいて)えっ、すごい!
ちゃんと長いお手紙。
- 臼井
- これを1対1のコミュニケーションでやってます。
面白いんですよ、履歴が残ってるから、
1年前にはこんな話をしたということもわかる。
「え、もう双子が1歳になったの?」って書いたら、
「そりゃそうですよ、1年経ったんですから」みたいな。
それで子どもの写真を送ってくれたのを見て、
「そっか、お父ちゃんを、ちゃんとやってんだなぁ」って。
- 伊藤
- そうなんですね。すごい。
- 臼井
- だからデザイナーの名前と顔と仕事内容は
だいたいわかってますね。
くじけそうになるときあるんですけど、
海外出張のときは海外先から書いてます。
「今どこどこにいるんだけど」って。
- 伊藤
- お忙しいなかで!
- 臼井
- 眠たいときは「やばいっ」。
時差で日本は次の日になっちゃう!
と思って、慌てて書いて。あはは。
でもいいコミュニケーションになるんですよ。
だから入れたものをすぐ出してるんだと思います。
引き算をしよう
- 臼井
- 僕が1990年にプロダクトデザイナーになったとき、
デザインは技術の視覚化でした。
中に入ってる技術をいかにお客さんに伝えるかみたいな。
だからいい音のものだったら
いい音が出ることを強調したデザインのラジカセを作った。
音を誇張する、みたいな感じですね。
でも僕が日本に戻って来た2016年、
みんなに言ったのは「引き算をしよう」ということでした。
電子レンジに何百個のメニューがあっても、
使ってない機能があったらお客さんは使いづらい。
じゃあいらないものを省いてって
ほんとにプリミティブなものを作った方が
いいんじゃないの、って。
伊藤さんの軽井沢のおうちなんて
もうまさに引き算の家みたいな感じじゃないですか。
無駄なものがいっさいない。
「え、ドアもないの?」みたいな。
巾木すらない、カーテンもいらない、
「え、バスタブ? いらないでしょ」って。
あれはもうすごく伊藤さんならではの
「行き切った」感じだけれども、
僕たちもそれに近いものっていうか、
引き算をしようよ、と。
でも引くのって、すごく難しいんですよ。
ことに、会社の中でやるのは。
足すより引くのが難しい。
- 伊藤
- そうですよね。
私「ほぼ日」では引き算担当。

カーテンも巾木もいらない。ダイニングテーブルもなし。(撮影=有賀傑)
- 臼井
- それ、すごく大事ですよ。
お客さん側から見たときに。
- 伊藤
- 「これ欲しいけど、ここにロゴやタグがなければいいのに」
っていうのありません?
- 臼井
- あります、あります。
- 伊藤
- そういうもやもやを一気に解消してるのが
私たちのお店です。
- 臼井
- うん、うん。
そうだ、これ伊藤さんに紹介しましたっけ。
- 伊藤
- あら、これ、開化堂さんの茶筒?
- 臼井
- そうそう、でもね、蓋を開けると‥‥。
- 伊藤
- あれ? あっ!
- 臼井
- これ家電なんですよ。
- 伊藤
- えっ! スピーカー?
- 臼井
- 蓋の開閉がオン・オフで、
こうして蓋をすると音楽が止まるんですよ。
- 伊藤
- 商品ですか。そんなの作ってるんですか。
- 臼井
- これね、ミラノ・サローネ(国際家具見本市)に
出るっていうときに作って、賞をもらったんです。
実際に生産もしたんですよ。
1個30万円で100個限定で作り、一瞬で売り切れました。
会社の中では
「こんな30万円のBluetoothスピーカーなんて
誰が買うねん」みたいな話になってたらいまわしになって、
それでもなんとか。

ミラノ・サローネで受賞したときのトロフィー(木馬型)。
- 伊藤
- まさしく京都をベースになさっているから
できたものっていう感じがしますよね。
- 臼井
- 「Kyoto KADEN Lab.(京都家電ラボ)」
というプロジェクトで、
ほかにも京都的な家電のプロトタイプがあるんです。
水道の水のように、
豊富に物をつくれば人々の暮らしが豊かになる、
それがこれまでのPanasonicだったけれど、
今はそれをやる会社がたくさん出てきてる。
日本の家電メーカーもどんどんなくなってきている。
じゃあ今のPanasonicは何をやるのっていうと、
こういうことをやらないと生き残れないんじゃないか。
それでプロトタイプを作っているんですよね。
- 伊藤
- 私たちが知ってるPanasonic製品、
冷蔵庫とかドライヤーとか
家の電気基盤みたいな「必要なもの」のほかに、
こういうこともなさっていこうと。
- 臼井
- そうですね、はい。
より文化的な側面、日本らしさを入れ込んで、
もう1段階ステップアップしたいなと。
バランスが難しいんですけれどね。
やりすぎるとトゥーマッチになっちゃうから。
でもこういうプリミティブなものを試行錯誤中です。
まだ、答えはないんですけど。
- 伊藤
- 私が臼井さんに提案してるのは、
おうち1軒まるごと、なんです。
リノベーションして、
さりげなくPanasonicのものがあるっていう。
「あ、冷蔵庫がこういうふうに置かれてるんだ。
こういうふうに食洗器って使えばいいんだ」
みたいな自然光が入る一戸建てのショールーム。
そういうのがあったらいいんじゃないかなあと思って。
‥‥って勝手に言ってるんですけど。
- 臼井
- でも京都だったらあるかもしれないですね。
町家の再生プロジェクトと一緒にやるとか。
中国では家の中を丸ごとPanasonicでリノベして
老人ホームや住宅をやったりしてるんですよ。
- 伊藤
- 壁の色と家電を揃えるとか、
そういうのもいいかもしれないですね。
- 臼井
- そうですね。確かに。
- 伊藤
- そういえば移動できるテレビも驚きましたよ。
- 臼井
- そういう、僕たちの既成概念を
壊していくことはできると思うんですよね。
伊藤さんの軽井沢の家を拝見してから
ずっと家のことを考えているんですよ。
たとえばコンセントって隠せないのかな、とか。

暮らしをどこまで引き算できるか?と考えながら作った軽井沢の山荘。コンセントもなければないでどうにかなる。ただ「ちょっと不便くらいがいい」と思えるのは、別荘だからなのかも?(撮影=有賀傑)
- 伊藤
- 深澤直人さんのアトリエでは、
壁のむこうに空調機器があって、
天井近くのスリットから温冷風が流れ、
床近くのスリットでは吸気をするしくみになっていて、
いつも風がめぐって常に快適な温度と湿度でした。
それもデザインですよね。
- 臼井
- うちの空調チームが、今まさに、
そういうことをやってますよ。
東京の⽇本橋に実験施設をつくって、
時にはお客様と共創しながら
デザイン起点でのソリューション開発を推進しています。
今、エアコンってすごく飛び出してるんですよね。
省エネをしようと思うとどうしても
奥行が必要になるんですよ。
- 伊藤
- 軽井沢は、もともと夏でも
空調機器がいらなかった地域なんですけれど、
だんだんいるようになってきて、
うちのところもおそらく5年先には暑くなるから、
先につけちゃいましょうって。
だから天井に埋め込みました。
家を作るときって、家具の配置を考えがちだけれど、
それよりも電気の配線をどうするかとか、
そういうのをきれいにすることを
すごく考えましたね。
- 臼井
- 順番からいうとそうですよね。
- 伊藤
- とはいえ、かんたんには作れないですものね、家。
私の東京の住まいも賃貸ですし。
‥‥Half Round Tableの話に戻りますが、
スペースや見た目だけじゃなくて、
角がないことで近くを歩くときの動線が
とてもスムーズになるんです。
- 臼井
- いま置いている入口脇も、絶対そうですよね。
四角だったら当たっちゃう。
- 伊藤
- これで半円がすごくいいなと思って
薪ストーブも半円形でつくってもらったんです。
- 臼井
- あれ、いいですよね。
- 伊藤
- はい。そしたら職人さんがやってみましょうって言って。
結果、やっぱり動線がうまくいって。
臼井さん、家電にも半円はいかがですか。

形や色合いは、Half Round Tableを意識してデザイン。結果、同じ空間にあってもすっきり。(撮影=有賀傑)
- 臼井
- 半円家電! あはは。
- 伊藤
- そう、半円家電。
- 臼井
- 天井の角に取り付けるコーナーエアコンっていうのを
昔やってたんですけどね。
コーナーに置くと風が部屋中に拡がる、っていうので。
- 伊藤
- あら、それ、やってないんですか、今。
- 臼井
- 今はやってないんです。
CI-VA、わたしのつきあい方 伊藤まさこ
CI-VAのバッグは母と共有していて、
今、私の家にあるのが今回販売する、
ブラックとグレー。
季節を問わず、
服をえらばず。
過去に何度も販売してきたCI-VAですが、
この2色はだんとつで使い勝手がいい。
「はじめてのCI-VA、何色がおすすめですか?」
と問われたら、
ブラックかグレーはどうでしょう? と、
胸を張って薦めたい。
私の中でも特に気に入りの2色です。
バッグはふだん、
木のオープン棚に収納しています。
かごバッグやトートバッグは、
そのまま棚に。
CI-VAのバッグやクラッチなど「平たいもの」は、
箱に立てて収納し、
引き出しのようにして使っています。
こうすることで型崩れも防げるし、
中に何が入っているか一目瞭然というわけです。
お財布、スマートフォン、鍵、
ハンカチ、リップクリーム、ハンドクリーム、
それから水筒にエコバッグ。
私のふだんの荷物はこの8つが基本。
バッグの形はフラットでかなりコンパクトな印象ですが、
意外なほど容量はたっぷりで、
基本の荷物がすべて収まる。
水筒(350ml)を入れても大丈夫なんです。
このバッグは、
最初の販売の時に買ったから、
使い始めてもう6年。
ふだんのお出かけにはもちろん、
旅にも何度も持って行きました。
6年前に比べると、
革の様子はしっとり、つややかになりました。
特にこれといったお手入れはしていないのですが、
使うごとにいい感じになっていく、
それってすごいことなのではと思うんです。
仕事柄、革製品をたくさん見てきましたが、
CI-VAの製品は、とてもなめらかで上質。
ヒモ部分は長さ調整のため、
何度も結んだりまた元に戻したりを
繰り返しているにもかかわらず、
擦り切れない。
これはバッグのすみっこにも言えること
(すみっこが擦り切れたバッグほど
もの哀しいものはないですよね‥‥)。
ずっと使いたくなる理由は、そんなところにもあるのです。
こちらはここ最近の私のCI-VAコーディネート。
アウターにブラックを持ってくるときは、
中は肌馴染みのいい色でまとめます。
デニムコートやレオパード柄のコートを着る時は、
ブラックを。
また、フラットなので、
ショルダーバッグとしてはもちろん、
バッグインバッグとして使えるところもいい。
‥‥と好きなところを語りだすと、
止まらない。
CI-VA好きが集まって、
CI-VA愛を語る。
そんなコンテンツもいつか作ってみたいなぁ。
違和感がないことのたいせつさ
- 臼井
- 僕は、チームのみんなに、
課題の本質がどこにあるか、ということを
考えてもらうようにしています。
僕もいろいろぶつかってきたんですよ。
プロダクトデザインで家電製品を作ることにかけては、
僕もプロフェッショナルだったんですけど、
営業や技術の人にいろいろリクエストされて、
「お店で一番目立つ冷蔵庫を作ってくれ」とか。
- 伊藤
- えっ、家電売り場で目立っても仕方ないですよねえ。
- 臼井
- そうなんです。だから
「すいません、僕、お店で一番目立つものを
買ったことがありません。
だからそういうのを作んない方がいいと思います」
みたいな感じでやってきました。
課題の本質は違うとこにあって、
いいデザインとは何かをどうやって決めるかっていう。
- 伊藤
- どうやってお客様に届けるか。
- 臼井
- そうです。そのプロセス。
CMの話も同じことで、
どういう表現がお客さまに届くのか、
っていうことなんですよね。
- 伊藤
- それこそ小型のシェーバーのCMで、
洗面所の棚に置かれているシーンを見ると、
「あ、こんな小っちゃいんだ」とわかるし、
これが家にあると、こういう風景になるんだなって
イメージがつかみやすい。
- 臼井
- シェーバーって黒と銀で
なんだか「男の世界」みたいな印象でしたよね。
でも洗面所に置いとくんだったら
石ころみたいな方がいいんじゃないのかな、って。
サニタリールームに置いて違和感がないものを、と。
- 伊藤
- 石ころというキーワードは、臼井さんが?
- 臼井
- いえ、若いデザイナーが、
河原で石を拾った、っていう話から始まりました。
じゃあそういうマテリアルを探そう、と。
僕はもう細かいデザインはやっていないんですよ。
- 伊藤
- そうなんですね。
技術の進歩もありますよね、
小っちゃくできたっていうのは。
- 臼井
- 今までって、技術が先にあって
デザインはその後に考えることが多かった。
だけどこれはこのサイズがいいから
このサイズに入れ込もうとなった。
その技術がすごいと思います。
このサイズ、握り心地がよかったり
出張のときとかに鞄にポイって
入れていくだけでいい。
Type-Cだからスマホと一緒の充電器で充電できるし。
- 伊藤
- すごいですね。優しい感じがする。
さきほど「サニタリールームに置いて違和感がない」
というデザインだとおっしゃっていましたが、
私、家電売り場で冷蔵庫を買う時、
宣伝のことばや写真がいっぱい、
冷蔵庫のドアに貼ってあるのを見て、
これだと家に置くイメージが
全然わからないって思ったんですよ。
- 臼井
- ああ、POPがいっぱいだから。
- 伊藤
- そう。だから取ってほしいとお願いしたら、
お店の人、取ってくれました。
- 臼井
- いい電器屋さんですね。
- 伊藤
- その冷蔵庫、料理家の友達が使ってたんですよ。
購入のきっかけは、やっぱり使ってある様子。
食洗器もそうです、あるかたのおうちで
「これいいですね」と品番を控えさせてもらいました。
友達がどういうふうに生活に馴染ませてるかとか、
うまく使ってるのを知ると、
「これが欲しい」ってなりますね。
- 臼井
- パナソニックのデザインフィロソフィー(哲学)で、
3つのプリンシパル(重要だとしていること)があって。
それは
「人の思いを察して」
「場に馴染んで」
「時に順応する」
ことなんです。
とくに場に馴染む、空間にとけ込むことは、
すごく僕たちのデザインとしては大事にしてる。
人に威圧感みたいなのを与えない、
あくまでも人が主役。
家ってそういう場所ですから。
- 伊藤
- 人が主役。そういう哲学でいろいろなものを
デザインなさっているわけですね。
- 臼井
- うちの会社って音楽のための機器もデザインしてるし、
コーヒーメーカーなどの調理器具も
もちろんデザインしてるし、
自転車もやってるんですよね。
- 伊藤
- 自転車も?!
- 臼井
- そうなんですよ。
唯一日本でツール・ド・フランスで優勝してるの、
Panasonicなんですよ。
そういう、なんかこう、
風を浴びたり音楽を聞いたり、
コーヒーの香りを感じるみたいな暮らしを、
ちょっと豊かにするようなものを作ってるんです。
そういう暮らしをお客さんに届けたいな、
っていうのはずっと考えています。
伊藤さんのキャリアも、
「食」(食器)から入られて、「衣」もなさって、
今「住」に強く興味をお持ちじゃないですか。
僕、すごく面白いなあと思ってて。
衣食住、全部なさっているのが。
- 伊藤
- どんどん広がってきた感じです。
- 臼井
- でも、衣か食か住か、手段が変わってるだけで、
目的はあんまり変わっていないんじゃないのかな。
心地いい暮らしってなんだろうと、
伊藤さんはずっと考えられてるのかなって。
そういう面で、家電のデザインとは違うけれど、
目指してるところはすごく似てるんじゃないのかな、
そんなふうに思っているんです。
- 伊藤
- 最初の「食」で、
料理家のかたのテーブルのスタイリングでは、
テーブルの上のことだけだったのが、
「じゃあ、テーブルもいいものがあったら」とか、
「テーブルのあっち側の窓のカーテンは」と、
どんどん広がっていったような感じがします。
窓からどんな光が差し込むかも
スタイリングのひとつだと思っていて。
- 臼井
- そうですよ、世界観を作ろうと思うと、
絶対そうなりますもんね。
- 伊藤
- 私がアシスタントをしていた30何年前は、
撮影となったらハウススタジオを借り、
家具も借りて運び入れ、
全部コーディネートをしていたんです。
それが、私が30歳ぐらいのとき
『クウネル』っていう雑誌が出てきて、
そういうのがなくなったんですよ。
普通の人の暮らしが注目されるようになった。
「やっぱり作り込んだものじゃないのがいいんだ」と
あらためて感じました。
ちょうど私に子どもが産まれて
家の中にいることが多かったことも
関係していたのかもしれません。時代の流れと共に。
臼井さんって、なにをしている人?
- 伊藤
- 以前は京都にはデザインの拠点がなかったんでしょうか。
- 臼井
- 元々は滋賀と大阪で、
デザインの部署がバラバラだったんですよ。
それを一つにまとめようと思って。
そのときにどこにまとめるかすごく悩んで、
いろんな人に話を聞いたときに、
「10年先だったら東京でいいけれど、
100年先を考えるんだったら京都がいいよ」
と、京大の教授に言われたんです。
特に暮らしのデザインをしているのなら、
日本の豊かな暮らしと、人との繋がり、
文化が残っている場所にすべきだと。
- 伊藤
- 京都には“人間らしい”感じがあるわけですね。
- 臼井
- そうですね。それで京都にしようと決めたものの、
空いてるオフィスがないなかで、
たまたまここが見つかったんです。
元々は大手の通販事業の会社が入っていました。
いちどスケルトンにして、デザインのメンバーみんなで
どんなオフィスにしようかを考えました。
- 伊藤
- 滋賀と大阪にあったデザインの部署は、
こんな雰囲気ではなかったんですか。
- 臼井
- 工場の隅っこにデザインの部屋みたいなのがあって、
なんか黒い服着てる秘密結社みたいな感じでしたよ。
ほかのみんながデザイン室にはなかなか入りづらい、
みたいな雰囲気で。
だけどやっぱりいろんな人が集まる場所にしたかった。
そのためには街中で、
人が来やすいような雰囲気にしようと。
ここを作ってから採用もすごく増えたんです。
- 伊藤
- あ、そうなんですか!
- 臼井
- キャリア(転職)の人からの
応募数も一挙に上がって。
- 伊藤
- すごいことですね。
「ここで働きたい」ってことですよね。
- 臼井
- そうです、そうです。
空間って人を引き付ける力がある。
こういうことにコストをかけることについて、
僕たちみたいなメーカーだと
疑問視する声もあったんですが、
当時のトップの人たちの中に
「やっぱりデザインはいい環境でやることが大事だよ」
「いい環境で、デザインがよくなるんじゃないかな」
と言ってくれる人がいて。
あと松下幸之助が、商売は大阪でやってたんですけど、
いろんなこと考えるのは京都だったんです。
だからデザイン部門が京都にあるのは、
この会社のストーリーテリングとしても
すごく合ってるよね、と。
- 伊藤
- こうやって自然光が射し込むところは
家電に絞れば私たちが使っている環境に近いし、
閉ざされた空間で蛍光灯の下、みたいな机の上だけで、
っていうのとは、違う気がしますね。
- 臼井
- しかも、外に出たら生活感があり、
外国人がスーツケースをガラガラと運んでいる。
そういう世の中の動きみたいなものを
肌感で理解できる場所でデザインするっていうことが
大事かなあって。
- 伊藤
- なるほど、だんだんわかってきました。
いま、臼井さんの仕事ってなんですか。
- 臼井
- 僕、何してるんですかね。
- 伊藤
- そういえば。
- 臼井
- 基本的にはPanasonicのデザイン部門の責任者です。
もともと僕たちがしているのは家電の
プロダクトデザインだったんですけど、
プロダクトデザインだけをよくしても
お客さんに伝わらないと思い、
僕はけっこう仕事を越境してやっているんです。
たとえば、もともとマーケティングにあった
コミュニケーション‥‥CMとか作ってる部隊も
デザインに持って来たりとか、ブランディングとか、
ちょっと違うことまで広げているんですよ。
デザインをすることをデザインしてるみたいな。
最近PanasonicのCMがちょっと変わったと思いません?
以前に比べて、タレントさんではなくて、
物中心でデザインをしているんです。
ほかにもSNSとかでバラバラだったデザインを
統合していったりも。
そういう全体の世界観づくりですね。
- 伊藤
- 20何万人も社員の方たちいらして、
いろんな部署があるのを、
デザインを通してまとめる。
- 臼井
- そうです、そうです。
デザインとしてのパナソニックの世界観を
作っていくためには
どういう理念とかどういうガイドラインとか
どういうシステムで運用していくか。
それ作って現場に戻していくんです。
- 伊藤
- なるほど。あまりにも規模が違うけれど、
私たちの「weeksdays」もそうなんです。
インスタの投稿の写真はこういうルールで、
みんな好き勝手に上げないでね、
こういう言い回しはやめましょう、
みたいなことをちゃんと考えるようにしているんです。
- 臼井
- そういうことです。
全く一緒だと思いますよ。
「それはちょっと、うちっぽくない」って。
でもこれってガイドラインを明確にできる話じゃなくて、
やってる人はイメージがあるんだけど、
明文化できない。
- 伊藤
- 「weeksdays」のチームは小さいので、
私が伝えたことに対して
すぐにみんなからの反応がありますが、
臼井さんの率いるチームは
すごく大きいじゃないですか。
- 臼井
- いや、もう、めちゃくちゃ大変ですよ。
毎日、けっこう、仁義なき戦い、じゃないですけど。
例えば、意図は合っていたとしても
表現されていることがブランドのパーソナリティーに
合っていないものを⾒つけたら
その時は「こう変えませんか」と⾔います。
- 伊藤
- あら、本当にそういう言い方なんですか。
もうちょっとハッキリ怖い感じとか? ふふふ。
- 臼井
- いや、そんな感じなんです。
- 伊藤
- でも臼井さんに言われたら、
反抗的な気持ちにはならないように思います。
- 臼井
- 言い方としては、
「これあと何年ぐらいやろうと思ってます?」とか。
「これ5年ぐらいやります?
5年先もこれでいいと、そこまで考えてます?
‥‥考えてないですよねぇ」みたいな。
- 伊藤
- だんだん、こう、埋めていくんですね(笑)。
なるほど。
日本らしさを考えるきっかけ
- 臼井
- 伊藤さん、こんにちは。
今日は京都までお越しくださって
ありがとうございます。
- 伊藤
- こちらこそありがとうございます。
臼井さん、こんな素敵なお部屋でお仕事を?
- 臼井
- ありがとうございます。
- 伊藤
- Half Round Tableを
使ってくださっていて
とても嬉しいです。
- 臼井
- これ、実はこのテーブルの奥行きと
ぴったりおんなじサイズで、
高さも同じなので、
くっつけても使えるんですよ。
最初、Half Round Tableが届いたときは、
テーブルに寄せてセッティングしていたんです。
メンバーと、角が半円になるのが面白いなあ、って。
いまはこうして壁に寄せて
飾り棚のようにしていますけれど。
- 伊藤
- とっても嬉しいです。
このオフィスは、ちょっと住宅のような
おもむきがありますね。
- 臼井
- オフィスに暮らしを引っ張りこんでいる、
みたいなイメージなんです。
だから、ほら、
ターンテーブルとコーヒーとお花。
- 伊藤
- いつもそうなんですか?
- 臼井
- あはは、お花は、すみません、
今回の取材のために
僕がいつも自宅に飾るのに
買いに行っているお花屋さんが
器といっしょに用意してくれたんです。
- 伊藤
- ご自宅はお近くに?
- 臼井
- ここ(京都の中心部)から1時間ぐらいです。
でも毎日ここに来ているわけではないんですよ。
- 伊藤
- たしか、月に1回は海外に行かれているとか‥‥、
あ、「weeksdays」の読者のみなさんには
臼井さんは「はじめまして」ですね、
そこからお話をすると‥‥。
- 臼井
- 『& Premium(アンド プレミアム)』という雑誌で、
うちの女性デザイナーが対談をさせていただいたのが
ご縁のはじまりでした。
- 伊藤
- そうでしたね。
- 臼井
- そのあと、社内イベントで
トークセッションを開いたとき、
伊藤さんに京都に来ていただいたんです。
伊藤さんがうちのシンプルなドライアイロンを
使ってくださっていたのを知ったので、
ぜひ、と思ったんです。
トークセッションは、
暮らしの豊かさ、がテーマでしたね。
それで伊藤さんの軽井沢と東京の二拠点生活とか、
無駄なものをそぎ落としていく暮らしについて
お話をききたくて。
- 伊藤
- 臼井さんたちは、そのトークセッションの前に、
軽井沢の家に来てくださって。
- 臼井
- セッションでは「研ぎ澄まされたものってやっぱりいい」
という話で盛り上がりましたね。
- 伊藤
- 社内向けの動画配信だったので、
目の前に人がいなかったんですが、
社員のみなさんが20万人くらいいらっしゃると知り、
全員がごらんになっているわけではないでしょうけれど、
その数にびっくりしつつ、
楽しくお話をさせていただきました。
その時、糸井さんの「ほぼ日」で
「weeksdays」というお店をやっている、
という話をしたら、
Half Round Tableに興味を持ってくださって。
- 臼井
- 家に欲しいなって思ったんです。
でも今回、伊藤さんが「weeksdays」の対談に
呼んでくださったと知ったうちのメンバーが
「臼井さんの家よりも会社でちゃんと使ってください」。
- 伊藤
- このオフィス(Panasonic Design Kyoto)も、
お家っぽい雰囲気がありますよ。
この臼井さんのお部屋に限らず、
上のフロアに大きなキッチンがあったりして。
- 臼井
- そうです。ベランダに植栽をしたり、
ビールサーバーやワインセラーを入れたりとかして、
夜はみんなで飲んだりするような感じです。
暮らしの延長みたいなところで
デザインすることが大事だと考えて、
こんなふうにしているんですよ。

「京都家電ラボ」制作の、ワインクーラーのプロトタイプ。
- 伊藤
- Panasonicといえば、臼井さんを知る前、
深澤直人さんのアトリエにおじゃましたとき、
たまたま電灯のスイッチが気になったんです。
そうしたらPanasonicなんですよ、って、
それが「so-style(ソー・スタイル)」
だと知って、「あ、発見!」っていうか。
- 臼井
- Panasonicって家電のイメージがあるんですけど、
そういったスイッチ類もそうですし、
実はコンビニの決済端末とか
病院のマイナカードの認証機械も、
よーく見たらPanasonicって書いてあるんですよ。
あと空港の顔認証ゲートとか。
もちろん家の中でお料理したり
髪の毛を乾かしたりするのもそうなんですが、
家の外に出ても、けっこういろんなところで、
人々の暮らしのとこに溶け込んでるんです。
- 伊藤
- 初めましての方に向けて言うと、
臼井さんはその中で“偉い”人として。
- 臼井
- いやいやいや! そんなことはないですよ。
- 伊藤
- デザイナーから初めて役員になった人、ということで
ニュースになっていましたよ。
臼井さんの仕事の歴史を
教えていただいてもいいですか。
- 臼井
- はい。僕は1990年、
バブルがはじけるちょっと前ぐらいに入社しました。
ちょうどその頃ってテレビ売上がすごいときで、
僕も最初はテレビのデザインをしていました。
もちろん液晶テレビとかじゃなくて
ブラウン管の箱みたいなテレビのデザインを
10年ぐらいしていたんです。
そのあとに家電に移って、洗濯機などのデザインをして、
次にアジアの家電を全部統括するみたいな仕事になり、
中国にデザインセンターを作るからっていうので、
2007年、北京オリンピックの前の年、
40歳になるちょっと前ぐらいに上海に行き、
9年間を上海で過ごしました。
上海の最後の方は中国の人だけじゃなくて
ヨーロッパや中米の人も一緒に、
多国籍にやっていたんです。
自分で欧中連携っていう言葉を勝手に作って、
ロンドンのデザイン事務所と一緒に仕事をしたり。
ところが日本に帰って来たら
「日本は全然変わっていないぞ?!」っていうので、
これはまずい、と、そのことが
この京都の拠点をつくるきっかけになったんです。
- 伊藤
- 「日本は全然変わっていない」というのは、
ご不在の9年間、まったく変わらなかった、
という印象を持たれたということですか。
- 臼井
- はい、その危機感です。
2007年から2016年って、中国では
北京オリンピック、上海万博があり、
もうすごい勢いでぶわーっと伸びた時期なんですよ。
- 伊藤
- とても面白いときに上海にいらしたんですね。
- 臼井
- そうです、そうです。
僕が最初に行った2007年って、
上海の電器屋に行ったら
Panasonicのテレビが他の⽇本メーカーの製品と⼀緒に
エスカレーター前のいいところに
並んでるような感じだったんです。
でも途中で日本メーカーはなくなり、
韓国メーカーさえもなくなり、
最後にはもう電器屋自体がなくなって、
全部eコマースに移る、みたいな。
5本くらいだった地下鉄が20本近くになったし、
中国はそのくらいの変化をしたんですよね。
- 伊藤
- 街の人はそのめざましい変化に
ついていってるんでしょうか。
- 臼井
- ついていっています‥‥けれど、光と影があります。
めちゃめちゃついてってる人がいる一方で、
配送とかはデジタルにならないから、
ほこりだらけのバイクが街にあふれたり。
そういう激しいコントラストはありますが、
全体的に見ると、すごいスピードで、
日本は中国に一挙に抜かれていった、と感じました。
- 伊藤
- それをほんとに見てきたわけですものね。
- 臼井
- そうですね。だから日本に帰って来たときの、
変わってない感じに危機感をおぼえました。
「外堀、かなり埋められてるぞ」って。
ならば、僕たちはやっぱり
自分たちの強みでしか勝てないから、
日本らしさみたいなところの再定義をしようと、
京都っていう場所にしたんです。
- 伊藤
- なるほど。
やわらかなイメージ
自分で作るのもいいけれど、
時には誰かに作ってもらったごはんが食べたい。
そんな時に行きたくなるのが、
山の麓の和食屋。
ていねいで実直。
食べるとお腹がほんわかあったかくなって、
満ち足りた気分になる。
おいしいお米と、しじみの味噌汁。
魚はいつもいい焼き加減。
添えられた小鉢や漬けものは、
季節の野菜をふんだんに使っていて、
量も過不足なし。
思い立った時に、ひょいと行ける距離ではないから、
ますます恋しくなるのだけれど。
つい先日たのんだのは鯖の定食。
ふっくら焼き上げられた鯖は、
もちろんおいしかったのだけれど、
印象的だったのが、蕪の煮もの。
ほっくりとやわらかく煮てあるのに、
型くずれなし。
よくよく見てみると、
ひとつひとつ面取りしてあって、
口あたりがやさしい。
その小さな器の中の美しい蕪を見ながら、
そうか、遠くても通いたくなる理由は
こんなところにあるのでした。
今週のweeksdaysは、
Half Round Table。
半円のテーブルは、
見た目にやさしく、動線もスムーズ。
角がないというだけで、
こんなにもやわらかなイメージになるのだなぁ。
人も、丸くなると「角が取れた」なんて、
言いますものね。
コンテンツは、
Panasonicの臼井さんと対談。
そうそう、weeksdaysの定番、
CI-VAのバッグの再販も。
盛り沢山な1週間です。
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
12月11日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
Fatima Morocco
シンプルバブーシュ
(グレー、ホワイト、ブラック)
家の顔とも言える玄関なのだから、
そこに並ぶ室内ばきは、
気に入ったものを揃えたい。
履き心地がよく、
たたずまいの美しいものを。
値段も飛び抜けて高くなく、
一年中履けるものがいい。
ファティマ モロッコのバブーシュは、
どれもが合格点。
ことに、かかと部分に入ったクッションがふかふかで、
足に負担がかからないところがいいんです。
今回、
weeksdaysでご紹介するのは、
無地のロゴ無しタイプ。
すっきりした見た目は、
さまざまなインテリアに馴染みます。
履いてうれしく、
置いて美しい、
そうそうこんな室内ばきが欲しかったんです。
色は、
ブラック、ホワイト、グレーの3色。
インテリアに合わせてお好きな色をどうぞ。
(伊藤まさこさん)
Le pivot
ブロードロングシャツワンピース
(ブラック、ブラウン)
第一ボタンをきっちり留めたり、
または2、3個外したり。
襟を少し立て気味にしたり、
ベルトでウェストマークしたり。
中にパンツやスカートを重ねて、
ちょっとコート風に着たりと、
一枚でいろんな表情が作れるシャツワンピースです。
前からはもちろん、横のラインも、
また背中に寄ったギャザーもきれい。
シャツが長くなっただけではない、
見せ方(魅せ方)の工夫がそこかしこにあるんです。
一枚サラッと着ただけで様になりますが、
レースのストッキングやフワフワ靴下、
ブーツやスニーカーなど、
足元のおしゃれを忘れずに。
サンダルと合わせてもいいなぁ‥‥と思うと、
一年を通して着られるアイテムではないでしょうか。
(伊藤まさこさん)
COGTHEBIGSMOKEのトップス、こんなコーディネートで 伊藤まさこ 02 差し色に加えるなら、ぜひレッド
レッドに、COGのタグが映える。
このタグの後ろ姿を街で見かけると、
なんだか勝手に仲間意識。
つい話しかけたくなります。
「いいブランドですよね!」って。
そして、かなりの確率で、
COGの服を着ている人って、
すてきな大人の女性が多いんです。
今回、モデルをつとめてくれた
カイノユウさんもとてもよくお似合い。
ANNA LOOSE HIGH-NECK TOP(レッド)/COG THEBIGSMOKE
スカート ¥24,200/le ciel de HARRISS(株式会社 金万)
ブーツ ¥75,900/DIVINA(株式会社 金万)
シンプルなパンツはもちろん、
ギャザーたっぷりのスカートとも相性よし。
ANNA LOOSE HIGH-NECK TOP(レッド)/COG THEBIGSMOKE
ジャケット ¥48,400/Harriss(株式会社 金万)
スカート ¥24,200/le ciel de HARRISS(株式会社 金万)
ジャケットや、
コートにも。
「赤」って着るだけで、
インパクトがある。
そして着るだけで元気にもなるんです。
ベーシックなMID GREYやNAVYもいいけれど、
もしも差し色をワードローブに加えたいなら、
SCARLETもおすすめ。
このSCARLETのトップスは、
私自身が持っていて、
デニムに合わせたり、黒のパンツに合わせています。
印象的なカラーなので、
1泊2日の旅に持って行くことも。
同じパンツやブーツでも、
初日はトップスをグレーに、
2日目はレッドにすればイメージはがらりと変わる。
軽くて、畳めばコンパクトになるので、
旅行にはもってこいというわけです。
旅に、街に。
仕事にも。
きちんと見えて、でも楽ちん。
この冬、欲しいのはそんなアイテム。
COGTHEBIGSMOKEのトップス、こんなコーディネートで 伊藤まさこ 01 ベーシックに使えるグレーとネイビー
前身頃と後ろ身頃のバランスが絶妙なCOGのトップス。
気になる腰回りをカバーしつつ、
着た自分を引いて(鏡でチェック)みると、
全身のバランスがいい。
これ、本当にすごいと思うんです。
ANNA LOOSE HIGH-NECK TOP(グレー)/COG THEBIGSMOKE
ストレートスカート(ブラック・38)/SAQUI
ブーツ ¥97,900/trippen(トリッペン原宿店)
首回りは適度なゆとりが。
袖はぴたりとし過ぎず、
スッと見せてくれる。
素材のよさもあいまって、
ブラックのスカートにブーツ、
なんていうシンプルなスタイルもバシッと決まる。
大ぶりのピアスにしたり、
時にはスカーフを巻いても。
タートルニットなので、
髪はまとめてすっきり見せるといいみたい。
REVERSIBLE SLEEVELESS JACKET/ALWEL(2025年12月発売予定)
ANNA LOOSE HIGH-NECK TOP(グレー)/COG THEBIGSMOKE
ストレートスカート(ブラック・38)/SAQUI
ブーツ ¥97,900/trippen(トリッペン原宿店)
カーキのベストを上に。
裾からちらりとのぞくグレーがいい表情を見せてくれます。
ANNA LOOSE HIGH-NECK TOP(ネイビー)/COG THEBIGSMOKE
パンツ ¥35,200/Harriss × Keiko Okamoto(株式会社 金万)
ブーツ ¥49,500/DIVINA(株式会社 金万)
こちらはNAVY。
グレーのワイドパンツに合わせてみました。
NAVYは、
どんなアイテム、どんな色とも相性のいい色。
グレー、黒、または同色の
ネイビー同士でまとめてもいいし、
バッグや靴に差し色を持ってきても。
首元はこんな風にくしゃっとさせてもいい感じ。
寒い時に、首回りを守ってくれる。
それでいて、窮屈じゃない。
これから春までの、
数ヶ月、きっとあなた(私も)の
役に立ってくれるはずです。
ここに来れば
夏の終わり頃から、
骨董市通いが続いています。
きっかけは、とあるイベントのための器集め。
もう充分な量の買いつけができたにもかかわらず、
それでもまだ足が向く理由は、
そこで過ごす時間が楽しいから。
何度か通ううちに、
自分好みの店が分かってきて、
店主と顔馴染みになったりもして。
「こういう感じ、お好みでしたよね」
なんて、
奥の方からがさごそ言わせながら、
新聞紙で包んだ器を出してきてくれる。
ここに来れば、
なにかいいものが見つかる。
そんな店の存在って、
ありがたいことだなぁと思うのです。
今週のweeksdaysは、
COGTHEBIGSMOKEのトップス。
私にとって、
「ここに来れば、
なにかいいものが見つかる」
頼りにしているブランドなのです。