「LERET.H」の鈴木ひろこさん(チャコさん)と
「MAISON N.H PARIS」の佐々木ひろみさん。
パリ在住のふたりに、t.yamai parisの服のもつ
「パリらしさ」についてききました。
t.yamai parisをいとなむ
山井孝・自子(よりこ)さん夫妻とのおつきあいも古く、
もちろんt.yamai paris歴の長いふたりならではの視点は、
伊藤さんも深く頷くことばかり。
ちなみに9月中旬に行なわれたこの鼎談は、
夕方5時の東京と朝10時のパリを結んで
オンラインでおこなわれました。

鈴木ひろこさんのプロフィール

鈴木ひろこ すずき・ひろこ

東京でスタイリストとして活動後に渡仏。
パリ在住35年。
現在は日本の女性誌を中心にパリをはじめ、
ヨーロッパ各国での取材、執筆、撮影オーガナイズを行う。
2022年、ライフウエアブランド
「LERET.H/ルレ・アッシュ」をローンチ。
パリ風味をひと匙加えたコレクションはすべて日本製で、
地球環境に配慮した植物由来の素材の
アンダーウエアやバッグを展開している。
weeksdaysでは、コーディネートやエッセイなど
いろいろなコンテンツ
に登場。

■チャコさんのInstagram
■LERET.Hのwebsite
LERET.HのInstagram

佐々木ひろみさんのプロフィール

佐々木ひろみ ささき・ひろみ

日本での編集者時代を経て渡仏。
2004年、パリでキッズブランド
「mini tsu tsu」をスタート。
2011年「Hope and Love」を通して
石坂紀子さんと知り合い、
2014年「MAISON N.H PARIS」の立ち上げに加わる。
weeksdaysでの登場コンテンツはこちら

■MAISON N.H PARISのウェブサイト
■MAISON N.H PARISのInstagram

02
左岸のイメージ

鈴木
t.yamai parisのお洋服は、
シャツやブラウスに関して言うと、
洗い込んで、洗い込んで、さらに洗い込んで、
肌に馴染んでくるっていうか。
自分のセカンドスキンみたいな感じで、
肩の形とか、自分に馴染む、引き寄せることができる、
そういう天然素材を使ってるっていうことも
大きいと思うんです。
そのちょっとクタっと感も「パリっぽいな」と思って。
長く大切にできる服ですよね。
私、本当にすごく長く着てるんですよ、
何年前から着ているか忘れちゃったぐらい。
ちなみにきょうもt.yamaiのブラウスです。
ずいぶん前に買ったものなんです。
コットンに、麻が入ってるのかな、
一年中、着られる。
大人が着ても甘くなりすぎず、
私はよくデニムを合わせたりしてます。
伊藤
着ている人のほうに寄り添ってくれる?
鈴木
そうですね。
伊藤
そのブランドを着てます、っていうんじゃない、
そういうところがパリっぽいのかもしれませんね。
佐々木
それはあるかも。
鈴木
うん、そうかもしれない。
伊藤
今回、「weeksdays」で紹介するジャケットは、
今ひろみさんが着ているものと形は同じで、
素材が少しだけふんわりしています。
それと同素材でパンツも。
佐々木
私はワイドじゃなくて、
ちょっと下が細くなっているパンツと
セットアップで買ったんです。
伊藤
セットアップで着ることも?
佐々木
はい、ありますけれど、羽織りものとして
ジャケットを単品で着る機会が多いですね。
この羽織り感、もう最高で。
鈴木
先週も、それ着てたでしょう?
伊藤
そのときは、下は何を合わせてたんですか。
佐々木
先週はワンピースでした。
伊藤
パンツにも合うし、ワンピースにも合うんですね。
鈴木
私、きょうデニムなんですよ。
伊藤
本当だ。
鈴木
わりとごっついベルトをして。
パリ、きょうは涼しいので、
ちょうどいい感じです。
伊藤
ちなみに、何度なんですか?
鈴木
きょう最高で22度という予報です。
いまは朝だから、ちょっと寒いぐらい。
佐々木
パリ、いま16度ってなってる。
伊藤
いいなぁ。でもそれを考えると、
夏に太陽を求めにバカンスに行くのは必然なんですね。
冬もとても長いし。
鈴木
冬はさみしいんですよ。
11月からが、どんどんさみしくなっていく。
お日様を見ない日が結構ありますから、11月、12月。
伊藤
t.yamaiの服はそんな環境から生まれたんですよね。
いまは東京をベースにしながらも、
ずっとパリのテイストの服をつくり続けている
山井さんたちってすごいなって思うんです。
鈴木
そうですね。
佐々木
パリの匂いっていうか、感じがしますものね。
伊藤
やっぱりすごく影響を受けたんですかね、パリ時代に。
鈴木
私の中ではt.yamaiのお洋服は左岸のイメージがある。
右岸じゃない感じがします。
ブティックがサン・ジェルマンにあって、
リュクサンブール公園がそばで、
彼女たちが住んでいたのもずっと左岸で、
だからかなって思うんですけど。
伊藤
その「左岸の感じ」って、
もうすこし説明すると
どういう表現になるでしょうか。
鈴木
セーヌを挟んで、右岸と左岸で、
パリは2つに分かれるんです。
地図でいうと北が右岸、南が左岸。
右岸のほうが、いまの動きをキャッチしてトレンドに敏感。
だから若者が多いし、いまだとK-POPが好き、
みたいなお嬢さんたちが、膝を出して歩いてる、
そんなトレンドに敏感なイメージです。
伊藤
たとえば、マレ地区とか?
鈴木
うん、マレはそういうイメージですね。
佐々木
さらに右岸を10区のサン・ドニのほうへ行くと、
ボボ(BOBO)って呼ばれる人たちがいて。
なんて言ったらいいんだろう、ボボって‥‥。
伊藤
育ちがよくて自由というイメージでしょうか。
佐々木
そうですね。
鈴木
ブルジョアでお金はあるんだけど、
あえてお金持ちっていうのを見せないんです。
ちょっと昔ですけど、ジェーン・バーキンみたいに、
ヒッピーテイストな感じで暮らしてるんだけれど、
実は超お金持ちだったり、
いいところの家柄の方だったりする。
そんな彼らが、あえて、カッチリ見せず、
生活スタイルやファッションを崩していった、
そんな意識の高い層のことをボボって、
もう何年も前から言うんですよね。
そして右岸はわりとボボな感じ。
左岸はもっとベーシックでクラシックです。
クラシックって言っても、頑固じゃなくて、
ブレずに、昔の古き良きパリからずっと
継承してる感じがします。
パリのエスプリもスピリッツも、
やっぱり左岸がベースになってる気がする。
佐々木
そうですね。
伊藤
なるほど、そうなんだ。
ちなみにボボと呼ばれる人たちは、
どういう感じの服を着てるんですか?
鈴木
わかりやすいブランドものとかは着ないのね。
佐々木
古いものと、新しいいまどきのをミックスしたり。
鈴木
本当に、昔、ジェーン・バーキンがしていた、
シンプルなリトルブラックドレスに、
ものが入りきれないぐらいのカゴバッグを持ってる、
というようなイメージですね。
ドレスにエルメスを合わせちゃったら普通なんです。
佐々木
あえて外す、みたいなね。
鈴木
うん、崩しが上手なの。
佐々木
右岸には、そういったお店がすごく増えてますよ。
世界中のスパイスや、エスニックな食材を取り入れた、
新しいフレンチとか、雑貨屋さんとか。
伊藤
あのラムダン・トゥアミ(*)もその流れ? 
(*)Ramdane Touhamiは、フランス系モロッコ人のアーティスト、クリエイティブディレクター、起業家。最近パリのマレにつづいて東京・中目黒に、今のパリの右岸文化を凝縮したような複合店「WORDS, SOUNDS, COLORS & SHAPES」をオープン。
鈴木
ああいう感じです。
伊藤
そしてt.yamai parisは、そっちの流れではなく、
同じパリでも、
左岸のクラシックな空気をまとっているわけですね。
鈴木
はい、それをずっと継承してる気がします。
伊藤
そうなんですね。
話をお聞きしていたら、
パリに年に一度は行かないと! 
っていう気持ちになりました。
チャコさん、ひろみさん、ありがとうございました。
佐々木
ありがとうございました!
伊藤
日本に戻られたときもお会いしたいです。
鈴木
年内に一度行けたらいいな。
そのときにぜひ!
(おわります)
2025-10-14-TUE