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あのひとのコーディネート。その2 料理人 野木早苗さん
野木早苗さんのプロフィール
のぎ・さなえ
料理人。
2013年より〈宇宙べんとう〉の名で
自転車ケータリングを始め、
2015年から南青山にて、今は伝説的とも称される
〈喫茶クレッセント〉を手がけていた。
現在は渋谷区東4-11-4にて
〈太陽傘(パラソル)〉を営み、
日々、おいしいお弁当を作っている。
身長163cm。
スナックのような、定食屋のような、
人情あふれるお弁当屋さんを営む野木早苗さん。
親しみやすく、おおらかな性格と
愛情あふれるお弁当に惹かれて
毎日、たくさんのファンが訪れる人気店です。
野木さんのお弁当は、蓋が閉まりきらないほど
たっぷり大盛りのおかずと、
寝かせ玄米がトレードマーク。
運がよければ、お手製のマーラーカオや
カンノーロというおやつも買うことができます。
「お弁当は日替わりで売り切れ次第終了。
3時すぎに閉めたあとは、
毎日、近くのスーパーマーケットへ買い出しに。
そんなときはいつも、
このくらい小さなバッグと
買い出し用の大きなトートだけを持って出かけます」
持ち歩くものは必要最低限、という野木さん。
だからバッグは小さくて用が足りる。
むしろ大好きで
毎日、小さなバッグを持ち歩いているのだとか。
「いつも素肌にリップをするくらいなので、
化粧道具も持ち歩きません。
リップはお店に置いてあるし、
パソコンとか資料を持ち歩く必要もない仕事。
バッグの中には携帯電話とコインパース、バーム、
気分転換に使うアロマスプレーくらいかな」
清々しいほどに身軽な野木さん。
夜、食事に行くときは、
一度帰宅して着替えてから。
「お店に立っているときは
やっぱり汚れても洗えて、
動きやすい服装がいちばん。
制服みたいなものですね。
私用で出かけるときは、気分が上がるような
おしゃれを楽しんでいます」
今日見せてくれたのは、そんな一張羅。
黒いバッグには、タイダイプリントのワンピースに、
仲良しのデザイナーのニットベスト。
茶色のバッグにも同じデザイナーの
スエードのワンピースとカシミアパンツを合わせて。
モノトーンだったりワントーンだったりしても、
どこか個性的な主張があるところが
野木さんらしい着こなしです。
「毎日お弁当を食べに来てくれている
デザイナーの服を着るのは、
エネルギーの交換みたいな感覚。
着心地が良くてリラックスしてはいるけれど、
どこかピッと背筋が伸びますね」
あのひとのコーディネート。その1 ブックデザイナー 福間優子さん
福間優子さんのプロフィール
ふくま・ゆうこ
ブックデザイナー。
書籍やブランドブック、カタログなどの
紙もののデザインを手がけている。
料理や生活まわりのテーマが多く、
自身も料理や器が大好き。
身長157cm。
料理本を始め、さまざまな書籍のデザインを手掛けている
ブックデザイナーの福間優子さん。
福間さんのデザインはすっきりとシンプルで
わかりやすいレイアウトでありながら、
ピリッとしたアクセントが効いているのが特徴です。
それは福間さんが住む家のインテリアや、
ご自身のファッションにも共通する趣味のよう。
「基本的には黒とか白のモノトーンが多くて、
シンプルな服装が好みです。
だけどたまに、全身ピンクとか、
レモンイエローのインナーとか、
裏地が柄ものとか、
そういうパンチが欲しくなる(笑)」
今回のバッグ(黒)を合わせた服装も、
黒を基調としたコーディネート。
お気に入りのカーキのオールインワンに
薄手の黒いタートルネックを重ねて、
靴下やブーツも黒。
「最近、髪を伸ばしているので、
ヘアアクセサリー選びが楽しみなんです。
このコーディネートのポイントも、
実は黒いカチューシャ。
小さな黒いバッグに黒いカチューシャって
可愛くないですか?」
アクセサリーはゴールドが多めという福間さん。
今回のバッグは金具が燻しゴールドな点も
可愛いなとつぶやきます。
「もうバッグが小さいっていうだけで
なんだか可愛いですよね。
容量はすごく少ないけれど、
アクセサリー感覚で持ちたくなる」
普段は仕事柄、荷物が多いのが基本。
だから肩にかけられて、資料やパソコンがざっくりと入る
布や革の大きめバッグが定番だそう。
「でも旅行のときとか、
小さめのポシェットが欲しいなって
ずっと思っているんです。
前にweeksdaysで紹介されていた
CI-VAの赤いポシェットも欲しかったけれど、
売り切れていて間に合わなかったの」
服装がシンプルだから
ちょっとポイントになるようなバッグを
探しているのだとか。
そこで茶色のバッグは、
オールホワイトのコーディネートに合わせることに。
髪もちゃんとアイボリーのヘアクリップでまとめて。
「靴下だけピンクなのがポイントです。
家で仕事をする日は
着心地がよくて、ラクな格好が多いけれど、
外に出かけるときは、こういう
少しパリッとした格好に着替えます」
華奢な体型にボリュームのあるボトムスがよくお似合い。
「ボリュームのあるボトムが多いんですよね。
その分、トップスはタイトにまとめています。
バッグが小さいとバランスが取りやすいですね」
CI-VAのがまぐちバッグ
散歩のおともに。
時間に余裕のある朝は、
散歩に出かけることにしています。
まだ動き出していない街は、
まっさらな感じがして、
すがすがしい。
すたこらと早足で歩きながら、
いつもの道を通るのだけれど、
不思議と毎回、何かが違う。
桜並木の葉っぱの色づき、
風のにおい、
空の機嫌。
周りだけではなく、
自分もその日によって違うものだから、
一年を通すと、「同じ」は一度もないんです。
散歩のおともは、がまぐちのバッグ。
肩にかけられて、
両手が空くから楽ちん。
必要なものだけが、
過不足なく入る、ちょうどよい大きさ。
ちょっと懐かしい見た目もいいんです。
今週のweeksdaysはCI-VAのバッグ。
散歩のおともにどうですか?
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
2月10日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
杉工場の鏡
大きすぎず、小さすぎず。
ちょっと鏡が見たいな、という時に
自分の顔が頃合いよく収まるサイズです。
今、我が家は
玄関にかけていますが、
出かける前の最終チェックができてすごくいい。
こういう鏡が欲しかったんです。
作ってくださったのは、
小引き出しでお馴染みの杉工場。
今回も表から見ても横から見ても(裏の部分まで!)
美しく、そしてていねいに仕上げてくれました。
素材は、
オークとウォールナット。
家の家具や、壁の質感、色合いなどを考えて、
合う方をえらんでくださいね。
引越し祝いなど、
贈り物にしても喜んでいただけそうです。
(伊藤まさこさん)
たのしい神保町。
- 伊藤
- それも好き! すごく普通にすっと入るでしょう。
- 田辺
- そうなんですよ。
「銀座文明堂」の「匠のバームクーヘン」にも
一時期はまってました。
なんて言うんですかね、
私、デパ地下のお店は詳しくても、
路面にあるお店に弱いかもしれないですね。
- 伊藤
- ああ、逆にわたし、路面の方が強いかもしれない。
- 田辺
- 路面に強いの、うらやましいですよ。
今後は路面にも強くなっていきたい部分もあるんですけど、
やっぱ路面で買うの、怖いんですよ。
- 伊藤
- でも、「さゝま」にも行けたし!
- 田辺
- いや確かに。
「さゝま」に行けたのはだいぶ強いかもしれないですね。
でもちょっとデパ地下に強くてよかったなって
思う部分もあって。
- 伊藤
- 例えば?
- 田辺
- テレビに出るにあたって、
言っても迷惑がかからないところですね。
最近、デパ地下を歩いてると、
お辞儀をされることがあるんですよ。
今まではただ眺めるだけ、が、できたんですけど、
お辞儀されたら買わないと悪いかもって思っちゃうから、
最近は瞬時に、お辞儀される前に、
買うかどうかの判断をしないといけなくて。
- 伊藤
- それで、さらに感覚が研ぎ澄まされますよ。
- 田辺
- 本当にそうです。
じっくり立ち止まって店員さんのおすすめを聞いて、
っていうことができなくなっちゃった。
なんだか恥ずかしくなってきて。
- 伊藤
- そっか。
- 田辺
- だからなるべく会話をせずに、
感覚で買うっていうことを覚えました、最近。
- 伊藤
- 多分、感覚で買っても、
大失敗ってことは少ないんじゃないですか。
- 田辺
- 確かに。
- 伊藤
- それは食べこみによるんですよ。
- 田辺
- そうです、食べこみによって!
それでも幅が狭まってる気がしますね。
焼き菓子ばっかりいっちゃうんですよ。
- 伊藤
- でもババロアもお好きでしょう?
- 田辺
- はい。先日TVで紹介した神保町の
「Tea House TAKANO」さんに行ったら、
おかげさまで完売しましたって言われました。
ババロア来てるんじゃない? って勝手に。ハハハ。
- 伊藤
- みんなちょっと忘れてただけで、おいしいですよね。
- 田辺
- はい。おいしいんですよ。
もっともっと普及してほしいです。
あと何より、派手すぎるお菓子を私は撲滅したいです。
- 伊藤
- 例えば、例えば?
- 田辺
- 派手なお菓子は好きなんですけど、
派手「すぎる」お菓子は、ちょっと、と思うんです。
ごてごてした、何が入ってるか分からないぐらい
いろんなものがたくさん入ってるカラフルなお菓子。
私はやっぱりシンプルな茶色や白のお菓子が好きです。
- 伊藤
- 茶色、大好き。
ごまかしがきかないっていうか。
そういえば神保町界隈では
ポルトガルのお菓子屋さん行かれましたか。
えっと‥‥。
- 田辺
- 「ドース イスピーガ(DOCE ESPIGA)」ですね。
- 伊藤
- さすが。
予約が必要だから、
めったに買えなくて。
- 田辺
- そうなんですよ。
あとどこだろう。神保町界隈。
- 伊藤
- 洋食屋さんなら、
「ランチョン(Luncheon)」かな。
ランチがおいしい。
- 田辺
- あららら、行ってみます。
ハンバーグ屋さんなら
「アルカサール(Alcazar)」も。
- 伊藤
- 「プペ」っていう喫茶店の
オムライスも最高ですよ。
神保町界隈、楽しいですよね。
- 田辺
- 神保町、いい町ですね。
- 伊藤
- いい町です。
月に何回かは劇場に?
- 田辺
- はい。今まではライブ始まる直前にリハやって、
ライブやって、またリハやってライブやって、
となっていたので、食べる時間が正直なくて、
本当にしんどくって。
で、私が「3ステ、4ステあるのに
いつご飯食べりゃいいの」と苦言を呈して。
- 伊藤
- え、1日でそんなにやるんだ!
- 田辺
- そうです。大阪の人は10ステとかやるので、
3ステ4ステで騒いでちゃいけないんですけど。
でもリハをライブ直前にやったら
結局20分ぐらいしか合間なくてご飯も食べに行けなくて。
せっかく神保町にいるのになんてもったいない!
ってなって、ちょっと騒いだことがあるんです。
そしたら支配人がシステムを変えてくれて、
朝に全部まとめてリハをやって、
1時間、2時間と、空きを作ってくれました。
だからみんなで神保町のランチを
楽しめるようになったんです。
- 伊藤
- よかった、やっぱり、仕事も大切だけど、
ちゃんとお腹を満たして、それもおいしいものでっていう
時間が、仕事をより充実させるんですよ。
- 田辺
- 本当にそうです。それのおかげで後輩とご飯に行って
仲も深められたりしますし。
- 伊藤
- すごい、じゃあ田辺さんの一声で、
劇場のシステムが変わって。
- 田辺
- そう、ご飯のシステムが、フフフ。
- 伊藤
- わたしも撮影の時、空腹になると頭がまわらないです。
- 田辺
- 本当に食べ物は大事です。
- 伊藤
- 田辺さん、
これからやりたいこと、ありますか?
- 田辺
- うわー、どうしよう?
やっぱ、あの、海外ですね。
海外留学をしてみたい。
- 伊藤
- おお、いいですね。
- 田辺
- 英語科に行ってたのに、
あまりにも英語がしゃべれないんです。
ちょろっと趣味でやった韓国語のほうができるくらい。
「これ間違ってたらどうしよう」って
急にもじもじしちゃうんです。
多分、コンプレックスが強すぎて喋れない。
- 伊藤
- じゃあ英語圏に留学したいと。
- 田辺
- そうですね。こんな世の中じゃなくなったら。
もちろんマネージャーやぼる塾のメンバーと
相談して考えますけれど。
- 伊藤
- いいな、そっか、そっか。
まだ30代ですもんね。
行っても戻ってこられる!
でもなぁ、田辺さんが
いなくなっちゃうの寂しいですよ。
- 田辺
- ハハハ、すぐには行かないですよ!
でも、人生の目標として、
絶対、叶えたいですね。
- 伊藤
- 今、こうして言ってると、
きっと叶いますよ。
- 田辺
- そうですね、もうぼる塾のメンバーにも
今のマネージャーにも一応言ってはいます。
でも行って英語が話せるようになっても、
何をしたいは正直分かってないです。
本当にただコンプレックスをなくしたいっていうだけ。
私の好きなKAT-TUNの亀梨さんも英語が話せるんですよ。
- 伊藤
- そうなんだ!
- 田辺
- そうなんですよ。「いつ勉強したんですか?」って思って。
あんな忙しい人が。
- 伊藤
- 確かにね。
- 田辺
- だから恥ずかしくなります。
自分はそんな忙しくなくって、
それなのに毎日ぐうたらして‥‥。
努力できる人ってすごいなと思ってます。
- 伊藤
- でも、お菓子についていろいろ調べて、
マメに足を運ぶっていうのも、
できない人から見たらすごい努力だなと思うはず!
- 田辺
- あら。ハハハ。
- 伊藤
- 本当、そうですよ。
さて‥‥もうそろそろお時間ですね。
残念。またぜひお話を聞かせてください。
わたしも「これは!」というものを探しておきます。
- 田辺
- お願いします。一生しゃべれる気がしますね。
- 伊藤
- ずーっと「これおいしいですね~!」って。
今川焼もおいしかったです、ありがとうございました。
- 田辺
- こちらこそ本当にありがとうございました。
ごちそうさまです。
よかった。おいしいものが食べれて、しゃべれて、
本当、最高です。
- 伊藤
- 最高です!
スイーツ女王。
- 田辺
- (プレッツェルを口にして)
わぁ! 本当に一噛みで、
甘い・しょっぱい・おいしい。
この香ばしさもまたいいですね。
プレッツェルの‥‥あ、「やばい」! これ。
どの味も、おいしい。
- 伊藤
- プレッツェルにチョコをかけちゃえ、なんて、
よくこういうものを考えるなと思って。
ハワイに、オレオのチョコ掛けを売っている
チョコレート屋さんがあるんですよ。
最初、オレオにチョコレートかけたものが、
はたしておいしいのかしら?
って一瞬思ったんですけど、
食べたら、すっごくおいしいんです。
自由な発想がすごいですよね。
- 田辺
- おいしい、うん。最高です。
これ止まらないやつだ。
3つの味、全部オススメって意味が分かりました。
本当に全部食べたほうがいいですね。
- 伊藤
- フフフ。
- 田辺
- うま~い。
私、おせんべいも好きなので、
こういうの、たまらないです。
- 伊藤
- まさかの米菓、おせんべいも好きとは。
- 田辺
- おせんべいはずっと「赤坂柿山」で育って。
- 伊藤
- そうなんだ! それもお母さまが。
- 田辺
- そうです。
英才教育に感謝してます、本当に。
- 伊藤
- 今のこの状況を、
お母さまはどういうふうに思われてるんでしょう。
- 田辺
- 本当に、喜んでいますね。
芸人を「やめろ」と言われたことはなかったんですけど、
私、正直、結婚願望とか全くないものだから、
「一人で生きてくっていうことを、考えなさいよ」
とはずっと言われてましたね。
- 伊藤
- 仕事をどうするか。
じゃあ今、テレビをつければ見ない日はない、
みたいになって、ね。
- 田辺
- 本当、よかったです。
- 伊藤
- よかったね。
- 田辺
- 母になにかプレゼントしたいなって思うんですが、
「余計なお金は使わないで」って言われてます。
でもよかったです、本当に、この状況。
私、「スイーツ女王」って自分で言い始めたんですけれど、
「ぼる塾」として出始めたころは、
なんて言うんですか、あんりしか、
仕事で呼ばれないことがあって。
それで「やばいかもしれない」って思ったんですよね。
あんりだけ呼ばれて、私とはるちゃんは仕事がない。
で、二人で会議をしたんですよ。
どうするって。私たちこのままなのかな、
仕事やばいよ、ってなって、
「私はスイーツの方向で行く」って言ったんですよ。
- 伊藤
- そこに向かって行くことも決めたし、
スイーツ女王とも言いだして。
- 田辺
- 自分で言いはじめました、ハハハ。
でも言って、その最初テレビに出始めた時に、
「3時のヒロイン」と「ぼる塾」のなかで、
インスタとかツイッターのフォロワーが
私が一番少なかったんですね。
その時に、どう増やしていいか
全く分かんなかったんですけど、
絶対超えるって口に出して言ったんですよ。
そしたら、超えました。
- 伊藤
- わぁ!(拍手)
- 田辺
- 増やしかたもなにも分かんなかったんですけど、
更新をマメにしたり、
自分の考えを、思ったことを、
ツイートするようにしたんですね。
そしたら結構共感してくださる方がいて。
- 伊藤
- それ、すごく大事かもしれないですね。
わたしも20、30年ぐらい前、
インテリアのスタイリストの
アシスタントをしてるときに、
ある日、お料理本一冊をまるごと
スタイリングする仕事があったんです。
「え、ちょっと待って、仕事のたびに
こんなにおいしいものが食べられるの?!」って、
それでわたしは独立したら
料理のスタイリストになりますって宣言しました。
- 田辺
- うわあ! ハハハ。口に出すって大事ですね。
- 伊藤
- 本当にそれが大事だし、
好きなものをつき進めることも、すごく大事ですよね。
- 田辺
- 大事ですよね。
本当に、今まで雑に
食べ物を食べてこなくてよかったと思います。
- 伊藤
- 分かります。
- 田辺
- ハハハ。ひとつひとつ、結構ちゃんと
食と向き合ってきたんですよ、自分なりに。
食べたら調べるとか。
- 伊藤
- そうなんだ。
- 田辺
- はい。親会社や子会社まで調べます(笑)。
- 伊藤
- 素材もさることながら、親会社と子会社まで!
でも、そっか、ルーツが分かるものね。
- 田辺
- そうなんです、このバームクーヘンと、
このバームクーヘン、作ってるところが一緒なんだとか。
- 伊藤
- ああ、なるほどなるほど。
「あ、やっぱりそうなんだ!」
みたいな答え合わせしたくなりますね。
好きなものどうしだったら。
- 田辺
- そうなんですよ、最近も、
「らぽっぽ」っていうところの
大学いもをずっと食べてきたんですよ。
で、最近セブンイレブンの冷凍の大学いもを食べたら
「あれ、同じ?」ってなって、調べたら、
「らぽっぽ」が出していたんです。
「あ! やっぱり!」。
- 伊藤
- それ、味だけで?
- 田辺
- ハイ、味で。
「あれ、これ食べたことある、このカリカリ具合は」
ってなって。気になるから調べたんですよ、そしたら
「あ、やっぱり私の味覚は間違ってなかった」
って勝手に自分の自信にもつながりました。
- 伊藤
- すごい。野球は練習すればするほどうまくなる、
みたいな感じで、食べれば食べるほど、
味覚も研ぎ澄まされていくんですよ。
- 田辺
- 味覚って育ちますよね。
- 伊藤
- 「食べこみ」の量、必要ですよね。
「走りこみ」みたいに。
バッティング練習を毎日100本しかしない人と、
1000本する人ではきっと成果が違うように、
食べこみもそうですよ!
- 田辺
- 「食べこみ」(笑)。
1本とられた、ハハハ。
本当に違います。
- 伊藤
- 今日ご紹介できなかったおやつに、
高知の芋けんぴで、
大きな缶に入ったものがあるんですよ。
あれが家にあると、ずっと食べちゃって危険!
- 田辺
- 芋けんぴ、やばいですよね。
私は高知といえばいつもミレービスケット。
- 伊藤
- そうなんだ! かわいいですよね。
ああ、こんなふうにおやつの話をしていると、
きりがないですね。
そうだ、きょうは持ってきていないんですが、
さきほど話に出たシュトーレンで、
ぜひ食べて欲しいものがあるので、
こんど、お送りしますね。
- 田辺
- うわ! いいですいいです。そんな。
- 伊藤
- いやいや! もう絶対喜んでくれるはず。
「ダンディゾン(Dans Dix ans)」っていう、
吉祥寺のパン屋さんのものなんです。
- 田辺
- ありがとうございます。
- 伊藤
- そうだ、食べてほしいバームクーヘンもあるんですよ。
「オーボンヴュータン(AU BON VIEUX TEMPS)」の
バームクーヘンをご存じですか?
- 田辺
- いや、知らないです。
- 伊藤
- 尾山台にある、わたしがフランス菓子で
ここが日本で一番好きっていう店のものなんです。
そこのパート・ドゥ・フリュイもすごいんですけれど。
- 田辺
- わ、パート・ドゥ・フリュイ大好きなんですよ。うわあ。
- 伊藤
- そのお店に「ガトー・ピレネー」という
大きなバームクーヘンがあるんです。
小・大・特大とあって、
知人の還暦祝いに
いちばんおっきいのをさしあげたりします。
確かアンズのジャムが入ってる。
- 田辺
- アンズ‥‥!
うわあ、アンズ。
- 伊藤
- それが隠し味になってて。
アンズ大好き。
- 田辺
- 私もアンズ大好きです!
- 伊藤
- アンズって加熱すると、
なぜあんなに「化ける」んでしょうね。
- 田辺
- すごいですよね、アンズの可能性。
- 伊藤
- お酒にしてもおいしいし。
- 田辺
- わあ、いいですね。
フランスに行きたい。
- 伊藤
- さて‥‥、これも、開けてみてください。
- 田辺
- 「パティスリーフォブス(Pâtisserie FOBS)」‥‥。
え、なぁに、これ?!
- 伊藤
- ふふふ(ガッツポーズ)。
浅草にあるお店なんです。
- 田辺
- (表示を見て)卵、粉‥‥。
あっ、あっ! これは!!!
これ「シャリシャリ」ですか?
ゴーフル? 来た~っ!
- 伊藤
- ご存じでしたか。
- 田辺
- 私、ここのじゃなくて、
神楽坂のフランス菓子屋さんのものを
(Aux Merveilleux de Fred )
いただいたんですよ。
あれはゴーフルなのかしら、
ワッフルなのかしら。
ゴーフレットという言い方もありますよね。
- 伊藤
- このゴーフルは、フランス北部の
リールっていう地方の銘菓らしいんです。(編集部註:ワッフルはベルギーのお菓子、
ゴーフレットは「小さなゴーフル」の意味だそうです。)
- 田辺
- 私、この手のお菓子には、ちょっと目がないんですよ。
本当に。
- 伊藤
- いただきましょう!
- 田辺
- (サクッと噛んで)
んーっ! これはっ!
今まで食べたのとまた違うーっ!
‥‥バニラだっ!
- 伊藤
- 分析してますね!
- 田辺
- はい。ああ。いいですね、この風味がまた。
- 伊藤
- お砂糖がじゃりじゃりっとしますよね。
- 田辺
- (深くため息)‥‥ああ、おいしい、これ。
バターが溶け出しすぎて手が汚れてしまうこともなく、
食べやすくって、いいですね。
最近芸能界にも、このタイプのお菓子を
好きな人が、結構多くて。
- 伊藤
- やっぱり、情報交換とか、なさるんですか。
- 田辺
- 指原莉乃さんとは何かあるとすぐに情報交換です。
- 伊藤
- ご本の帯にも言葉を寄せていらっしゃって。
わたしも、あの本には知らないもののほうが多くて、
そうそう「有機おやつグラノーラ」、買いました。
- 田辺
- あのグラノーラ、いいんですよ、体にもよくて。
- 伊藤
- あれも大人の値段でしたね。
- 田辺
- そうなんですよ!
- 伊藤
- でもおいしいからいいんです。
- 田辺
- これ、どんどん食べちゃいますね。
本当に「おいしすぎる」。
- 伊藤
- 見た目もかわいいし。
- 田辺
- ああ、フランス。
フランスに行きたいです、私は。
- 伊藤
- 行きたいですよね!
田辺さん、パリに行ったら、
どうにかなっちゃうかも。
おいしいものがいっぱいで。
- 田辺
- そうなんですよ、そうなんですよ!
- 伊藤
- パリでは、ぜひ行って欲しいところが
いっぱいあります。
- 田辺
- 行くとき、本当に、
教えてもらいにまいります。
ご連絡します!
今はフランスの本を買って夢想してるんです。
『ベルサイユのばら』も好きで。
- 伊藤
- あ、わたしも、わたしも!
- 田辺
- じゃ、「アナスイ(ANNA SUI)」とか
「マリクワ(Mary Quant:マリークヮント)」と
ベルサイユのばらがコラボして
タオルやハンカチを出したのはご存じでした?
- 伊藤
- そうなんだ! 知らなかったです!
- 田辺
- もうめちゃくちゃかわいすぎて!
- 伊藤
- 田辺さん、お仕事が忙しいのに、
いろんなことを知ってますね、
すごいと思う。
「好きなものに一直線」?
- 田辺
- はい。それと、周りにアンテナをはってる友達が
多いのかもしれないです。
ベルばらコラボも友達が教えてくれたんです。
もしかしたら私自身は
そんなに詳しくないのかもしれないです。
- 伊藤
- わたしも、そうかもしれない。
新しい店とかはだいたい編集の人とか、
食関係の仕事をしている友達が教えてくれます。
- 田辺
- でも教えてもらっても、
行動しない人は行動しないですもんね。
教えてもらったところで
買いにいかなきゃ意味ないですもん。
だから行動力はあると思ってます、
自分で。フフフ。
- 伊藤
- 確かにそうですよ。
ちょっとの休憩時間でも、
近場のお店なら、調べて買いに行くとか?
- 田辺
- 行きます。
- 伊藤
- わたし、デパートの
地方銘菓のコーナーが大好きで。
- 田辺
- 私も大好きなんですよ。
あそこで知ることも、多いですよね。
- 伊藤
- 例えば昨日、日本橋の高島屋で
岐阜の中津川の「すや」の栗きんとんを売ってて。
- 田辺
- え、あの、「すや」ですよね、
すりつぶしたみたいな栗のきんとん。
あれ大好きです。
- 伊藤
- 玉川高島屋もいいですよね。
- 田辺
- 伊勢丹新宿店もいいのがありますし、
池袋のデパートにも。
- 伊藤
- チェックしてますね!
さあ、そして、これも食べていただきたいんです。
「weeksdays」オリジナルのチョコプレッツェルです。
- 田辺
- うわあ!
- 伊藤
- チョコプレッツェルについては、
ニューヨークにさかのぼるんですよ。
現地では、スーパーでもがさっと売られている
カジュアルなお菓子なんですけれど、
「甘い」と「しょっぱい」の組み合わせ、
最強なんですよ。
- 田辺
- はい、それはきっと、最強ですね。うわー。
- 伊藤
- よかったら召し上がってください。
ビター、ミルク、キャラメルがあります。
どれもおすすめ。
- 田辺
- ああ、私、ニューヨークも行きたいんです!
- 伊藤
- これまでに行ったことは?
- 田辺
- ないんですよ。
ニューヨークは「ゴシップガール」を見て、
聖地巡礼がしたいと思っているんです。
あと漫画で『バナナフィッシュ(BANANA FISH)』
っていう。
- 伊藤
- 吉田秋生さんの。
- 田辺
- はい、その聖地もめぐりたいので、
絶対行こうと思ってます。
- 伊藤
- そっか、わたしの世代だと
「セックス・アンド・ザ・シティ」の
聖地巡礼しようよ、っていう感覚と同じですね。
キャリーの住んでいたあのアパートに行きたい! とか。
そんなニューヨークで見つけて、
「日本にもあったらいいのに」と、
つくることになったのが
このチョコプレッツェルなんですよ。
あ、お飲み物、コーヒーもありますけれど‥‥。
- 田辺
- 紅茶派で、私。
すみません。フフフ。
- 伊藤
- 紅茶派っていうのも女子力が高い感じがする!
- 田辺
- 私の6畳の狭い部屋に
紅茶が百何種類もあります。
- 伊藤
- えー!
どこのが好きなんですか。いろいろ?
- 田辺
- そうですね、いろいろ集めちゃいますね。
でも最近よく買うのはTWG Tea系かな。
あと「ベッジュマン&バートン
(BETJEMAN & BARTON)」っていう
銀座シックスに入ってるところです。
- 伊藤
- 今日のはキャンベルズ・パーフェクト・ティーっていう、
本当に癖のない紅茶です。
- 田辺
- すごくおいしいです。
- 伊藤
- よかった。かわいい黄色い缶なんですよ。
いろんなお菓子に合うので、これがいいかなと。
お酒はそんな飲まないんですか。
- 田辺
- そうですね、お酒はあんまり飲まないですね。
はじめてのパネットーネ。
- 伊藤
- 巴裡 小川軒のショコラスフレ、ふわふわで、
本当に「空気」みたいなので、
ふた口ぐらいで食べられちゃう。
- 田辺
- いけちゃいますね、ちょっともう本当に。
(もぐもぐ)これは‥‥うわー!
空気です、これは!
- 伊藤
- 空気でしょ!
- 田辺
- チョコレートのふわふわの生地と
生クリームのバランス、「やばい」ですね。
- 伊藤
- ちゃんと風味が大人っぽいんですよね。
- 田辺
- そこに、この生クリームもおいしいから。
- 伊藤
- お誕生日に1本食べたいです。
- 田辺
- 1本食べたいですね!
恵方巻もこれで。
- 伊藤
- これでいいですよね~!
- 田辺
- おいしい。
これは。
うわー。
- 伊藤
- 手土産を渡すとき、
巴裡 小川軒のパッケージだから
元祖 レイズン・ウィッチかな、
って思わせておいて、これ。
- 田辺
- 私、まんまと、それにはめられて(笑)!
絶対、元祖 レイズン・ウィッチだと思ってました。
- 伊藤
- でも、うれしい、本当によかった。
食べたことあるものばっかりだったらどうしようって。
- 田辺
- 私の情報源は、ほとんどがデパ地下ですから、
知らないものもたくさんあるんですよ。
でも最近、「イータリー(EATALY)」っていうところに
注目しているんです。
インスタを見ていて、いいな、って思って。
- 伊藤
- イータリー、行きました!
最近、お店が増えましたよね。
それでは‥‥ジャーン。
- 田辺
- ??? もしかしたら、それは、
まさしくイタリアのお菓子ではないですか。
「イータリー」のインスタを見て知りました。
- 伊藤
- はい、「パネットーネ」です。
- 田辺
- はじめて現物を見ました!
- 伊藤
- これは「レス(LESS)」っていう、
恵比寿のお店のものなんです。
もともとミラノの古いお菓子屋さんで生まれた
イタリアの方が、
向こうから種を持ってきて、日本で作っているんです。
一年中。
- 田辺
- え、一年中!
- 伊藤
- そうなの、わたし、かねてから
パネットーネって、クリスマスシーズンだけじゃなく、
一年中食べられたらいいのにって思っていたんですよ、
おいしいから。そしたら、このお店ができて!
- 田辺
- うわあ! あらー! え! これ、もう、
すごいですよ。これ、もう!
- 伊藤
- ちょっと香りを。
- 田辺
- (くんくん)ああ‥‥、これは!
- 伊藤
- 知らない香りですよね。
- 田辺
- はい。うわあ。えーっ!
- 伊藤
- よっしゃ!(ガッツポーズ)
- 田辺
- 本当に、パネットーネは私にとって、
ずっと、謎の食べ物だったんです。
とりあえず存在だけは情報として足しておこうと、
「イータリー」のお店にも行ったんですよ。
でもいっぱい種類があり過ぎて、
何を買ったらいいのやら‥‥。
母と行ったんですが、結構、お値段もするし、
そんな謎の物体に、私、そんなに、お金をかけられなくて。
- 伊藤
- 作るのに、すっごく手間がかかっているんですって。
焼き上がったパネットーネは、
専用の機械で天井から逆さまに吊るすとか。
- 田辺
- え! えっ!
- 伊藤
- そうなの。そして、焼き上がりと、
熟成したものとで、味わいが全然違うんです。
熟成させると、お酒にも合うようになる。
- 田辺
- 「シュトーレン」も、
ここ最近はやってきましたよね。
私、2年前ぐらいからやっと目覚めたんですけども、
そのブームは‥‥古いってことですか、もう。
- 伊藤
- いやいやいや(笑)!
シュトーレンもありつつ、
パネットーネもありつつ。
- 田辺
- 食べるものがいっぱいあり過ぎて!
- 伊藤
- さあ、手でちぎって
食べてもおいしいかも? どうぞ!
- 田辺
- そうですねー!(腕まくり)
- ──
- 伊藤さん、パネットーネは、
いろんなメーカーのものを買うと
おっしゃってましたよね。
- 伊藤
- よく行くイタリア料理店のもの、
イタリア食材屋さんのもの‥‥、
いろいろ買いますよ。
毎年、4台ずつくらいかな。
- 田辺
- え!
- 伊藤
- でもね、最近、娘と話して、
「やっぱり1台を大切に食べるのがいいよね」と。
- 田辺
- (パネットーネを手でちぎって)
‥‥まずはこの香りが。ああ、柑橘系の‥‥
色もすごくないですか。
こんな輝かしい色、あります?
こんな輝かしいパン!
- 伊藤
- きれいですよね。
- 田辺
- いただきます。
(もぐもぐ)‥‥これは!
- 伊藤
- ふふふ。
- 田辺
- これは毎シーズン、食べるべきだわ。はい。
- 伊藤
- 鼻を抜けるときの香りが、初めての感覚ですよね。
- 田辺
- はい、はい。もう一噛みしただけで全然違う。
- 伊藤
- よかった。
- 田辺
- おいしい。
- 伊藤
- また店ごとに、作ってる人ごとに、
全然違うんですよ。
のっているお砂糖の結晶も、たまらないですよね。
サクサクしていて。
- 田辺
- そうなんですよ、これ「やばい」と思って!
だから上からいきました。
本当は最後にとっときたかったんですけど、
このシャリシャリ。
- 伊藤
- クラストっていうんですって。
ミラノ発祥のあられ糖らしいですよ。
- 田辺
- パネットーネって、私、
もっと癖が強いものだと思ってたんですよ。
この香りから、もっとスパイシーすぎるものを想像して。
でも食べると、そんなことないんですね。
- 伊藤
- いろんなタイプがあるので、ひょっとして、
なかにはそういう印象のものもあるのかも。
- 田辺
- じゃあ、最初にこれをいただいたのはラッキーですね!
もうパネットーネに関しては
贅沢に舌が肥えましたね。
これはやばいな。
こんなおいしいものを知ったら、本当に。
- 伊藤
- わたしがときどき行くイタリア料理屋さんには、
これを使ったアイスがあるんですよ。
それもおいしいの。
- 田辺
- おいしすぎますね。
入っているのはオレンジですか。
- 伊藤
- オレンジピールですね。
- 田辺
- オレンジピール、なじみがいいですね。
邪魔にならないです。
生地との溶け込みがいい。
- 伊藤
- 確かに。素材それぞれに個性があるのに、
1個のお菓子としてまとまってるんですよね。
- 田辺
- すごいですね。一噛みどころか、
口に入れて半噛みぐらいで「わっ!」って
言っちゃいましたもん。
これは買いたい、これは。
- 伊藤
- 作った人も喜んでくださっていると思います。
- 田辺
- これ、いつでも買えるんですか?
- 伊藤
- イタリアでパネットーネは
クリスマスのお菓子なんですが、
「LESS」では定番のものが
一年中いつでも買えるんですよ。
クリスマスシーズンになると、
いろんな食材店で本国から仕入れたりして、
いろんな味のパネットーネが楽しめます。
わたしがよく行く「PIATTI」という
イタリア食材屋さんが
イタリアから取り寄せているパネットーネもおいしくて。
そこで売ってるイタリアのウエハースともども、
ファンなんです。
そこに、ぜひ行って欲しいな。
- 田辺
- わかりました!
私、イタリアのウエハースも大好きなんですよ。
- 伊藤
- あの本にも載っていましたね!
「バビ(BABBI)」。
高級なウェハースですよね。
- 田辺
- はい。イタリア、やばいです。
3つの味のチョコプレッツェル
知らないものがいっぱい。
- 伊藤
- その「ちょっと逸れちゃった」8歳の時、
そういう田辺さんを、お母さんは、
どう思っていらしたんでしょう。
- 田辺
- ちょっと怒ってたかもしれないです。
- 伊藤
- 見て見ぬふり、は、してくれてた?
- 田辺
- してくれてはいたんですけど、
「いいもの食べさせてんのになぁ」
と、もしかしたら思ってたかもしれないですね。
- 伊藤
- 高校は東京にとおっしゃったということは、
ご出身は‥‥。
- 田辺
- 千葉だったんですけど、
私の住んでた場所は、そんなにおいしいものが
ありふれてなかったんです。
小学生ぐらいのときは母と祖母と私で
都内のデパートに行って、
食堂でババロアを食べるのが楽しみで。
- 伊藤
- そうそう、ババロアがお好きなんですよね!
- 田辺
- そうなんですよ、ババロアが!
- 伊藤
- わたし、田辺さんのおかげで
ババロアというものを思い出して。
このごろあんまり見ないですよね?
- 田辺
- そうなんですよ。ないんです。
ところが、神保町には2店舗、
おいしいババロアの店があるんです。
- 伊藤
- この前、テレビで紹介なさっているのを見ました!
- 田辺
- 「ラヴィット」で。
- 伊藤
- テレビのこちら側で
「田辺さんが出てます!
しかも神保町のスイーツ特集で!」
って、「weeksdays」のグループLINEが
もりあがりました。
そしたら「御菓子処 さゝま(ささま)」に
行かれていて。
- 田辺
- あ、「さゝま」大好きなんです!
今回、神保町でロケをするならば、
「さゝま」だけは入れてくれ、って言いました。
- 伊藤
- わたし、毎週の「weeksdays」の
打ち合わせのとき、必ず「さゝま」に寄るんです。
季節の和菓子と最中をチェックして。
- 田辺
- 最中の皮の、あの香ばしさ! 衝撃的でした。
私は最中イコール「空也(くうや)」で。
- 伊藤
- 本にも載ってましたよね。
- 田辺
- はい、「空也」の最中で育ってきたんです。
「空也」の最中か、「たねや」の最中、
どっちかですね。
- 伊藤
- 「育ってきた」! いいですね!
- 田辺
- だいぶ、贅沢に育ってきてます、本当に。
- 伊藤
- それって、絶対、いいと思う。
いいものをちゃんと知ってるからこその、
他との違いもわかるわけですしね。
- 田辺
- はい。そんな私が「さゝま」さんに出会って。
- 伊藤
- 劇場からすぐそばですものね。
- 田辺
- 劇場から、もう「秒」です。
でも見て見ぬふりをしてたんですよ、
見た目も高級そうで、上品ですし、
なんだか門構えが‥‥。
- 伊藤
- そうそうそう! ちょっと怖いという気持ちね。
結界を超えるみたいな。
- 田辺
- そう、怖いんですよ。
だから私が入っちゃ駄目だろうなって思っていたんです。
それから、たまに、門構えだけのお店も
あるじゃないですか、見た目はいいけど味は、って。
そんなふうだったらどうしようと勝手にイメージして、
もう見て見ぬふりを‥‥7年ぐらい、していたんです。
- 伊藤
- そんな期間があったんですね。
- 田辺
- そうです、そうです。
本当につい最近、あんり(ぼる塾)と
「ちょっとうどん食べに行こう」って、
劇場から出たついでに、
「怖いからついてきて」って。
- 伊藤
- 1回、あの結界を超えると、
じつは、全然大丈夫なんですよね。
- 田辺
- そうなんですよ! 全然怖くなかったです。
もっと早くに食べるべきだったなって思いました。
- 伊藤
- 7年も!
- 田辺
- はい、7年も見て見ぬふりして。
他にも神保町界隈には和菓子屋が3店舗ぐらいあるのは、
制覇していたんですけれど。
- 伊藤
- テレビでは、そのあとに
神保町界隈のババロアをご紹介なさっていたんですよね。
紅茶専門店の「Tea House TAKANO」と、
「山の上ホテル」の「コーヒーパーラーヒルトップ」。
山の上ホテルにもババロアがあるなんて、
知りませんでした。
- 田辺
- あのババロア、美味しいんですよ。
- 伊藤
- そうなんだ。こんど食べに行ってみます。
さて、それじゃ、次のおやつを食べましょうか。
- 田辺
- あっ、これは‥‥!
「巴裡 小川軒(ぱり おがわけん)」って言ったら、
私の中ではもう元祖 レイズン・ウィッチなんですけれど、
それとはちがうんですね。
- 伊藤
- あえて‥‥、
フフフ。
じゃーん。
- 田辺
- え! えっ! これは?!
知らなかった!
あらー! 何これー!
- 伊藤
- うちでは「空気」って呼んでいる、
「ショコラスフレ」です。
- 田辺
- 「空気」! わぁ、楽しみ。
- 伊藤
- 元祖 レイズン・ウィッチもおいしいですよね。
- 田辺
- はい。いろんなレーズンウィッチがありますが、
私、ここのが一番おいしいと思います。
クッキーが厚くてサクサクで。
でもショコラスフレは知りませんでした。
- 伊藤
- よかった。田辺さん、もう何でも知ってるから、
すごく悩んで。
- 田辺
- いや、私、そんな知らないんですよ。
- 伊藤
- いやいや!
- 田辺
- 本当に知らないところのほうがいっぱいあって、
それがまた悔しいんですよ。
- 伊藤
- 分かります! 悔しい~。
- 田辺
- そうですよね! 本当に悔しくて。
- 伊藤
- 人が自分の知らないおいしいものを食べているとね。
- 田辺
- そうなんですよ、うわーってなって。
- 伊藤
- 「なんで知らないの、わたし?!」みたいな。
- 田辺
- そうなんですよ! それ、本当に分かります。
本当に悔しいですよね。
その人に対してというよりは、
知らない自分が悔しいんですよ。
- 伊藤
- なんなの、何をしてきたの、なんで知らないのって。
- 田辺
- そうなんですよ。
この生きてきた分、食べてない分、
私って損してるなってなるんですよね。
- 伊藤
- よかった、おんなじ。
でも田辺さんって、コスメとかもお好きじゃないですか。
思考の何パーセントぐらいが
食べることで占められてますか?
- 田辺
- 98パーセントぐらいかもしれない。
- 伊藤
- わたしも、わたしも!!!
- 田辺
- ハハハ!
- 伊藤
- よかったー。
- 田辺
- 私だけじゃなく、多分、ぼる塾4人、
みんなそうなんですよ。
- 伊藤
- そうなんだ。
聞く所によると、あんりさんはお酒をあんまり飲まなくて、
はるちゃんは飲むんだそうですね。
- 田辺
- めちゃくちゃ飲みます。
酒寄(さかより)さんは、量に関しては
人並みしか食べられないんですけど、
食べ物に対する知識がすごくて。
- 伊藤
- そうなんだ!
- 田辺
- 酒寄さんも多分英才教育系ですね。
お母さまが詳しくって、そこから受け継いで。
その酒寄さんのお母さんの情報を、
私も引き継いでる感じです。
- 伊藤
- すごい。でも、食べ物のことが
思考の98パーセントを占めている、
とか言うと、ひかれません?
- 田辺
- 本当にそうです。
じゃああなたの好きな亀梨くんはどうなの、
とかいろいろ言われるんですけど、
亀梨くんも、その2パーセントのなかで、
だいぶすごいっていうことなんですよ。
- 伊藤
- じゃあコスメは‥‥?
- 田辺
- 100パーセントの中に全部入れるのは、難しいですよね。
- 伊藤
- わかる。そうですよね、
全部足すと、100じゃおさまらない。
でもスイーツに対する気持ちは98って言いたい。
- 田辺
- はい、気持ちは98です。
でも「コスメは?」と聞かれたら、
50を軽く超えちゃう。
パーセンテージがおかしくなっちゃうんですよ。
- ──
- ショコラスフレ、切れました。どうぞ!
- 田辺
- すいません。わー。あららら。あー!
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
2月3日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
saquiのフォーマルウェア

▶︎商品詳細ページへ
スリークォーター スリーブ ワンピース
ノーカラー スリットスリーブ ジャケット
きちんとしていて、品があって。
袖を通すと気持ちが引きしまる、
saquiのフォーマルウェア。
体にしなやかに寄り添う、
フォルムの美しさはsaquiならでは。
襟ぐりの開きや袖丈なども絶妙で、
女の人を美しくやわらかく見せてくれます。
お別れのシーンでは、
パールや黒のストッキングと合わせてひかえめに。
また、組み合わせる小物によって、
華やかにもなる。
岸山さんのスタイリングをぜひ参考にしてみてくださいね。
生地は、
saquiの服ではおなじみの
「Faliero Sarti(ファリエロ サルティ)」のもの。
上質で着心地がよく、
さらにはシワになりにくい。
一枚持っているととても重宝するアイテムです。
(伊藤まさこさん)
小さな贈りもの。
贈りもの名人の友人は、
いつも別れ際に、
ポケットからガサゴソと小さな包みを出して、
「はい、これ」なんて、
小さなお菓子やお茶の包みを渡してくれる。
これが、さりげなくってなんだかいい。
そういえば‥‥と考えてみると、
もらっても、
こちらに気を遣わせない、
ちょうどいい贈りものって、
なかなかないものです。
おいしいのはもちろん、
パッケージがかわいくって、
(値段もかわいくて)
ああ、また食べたいなと思わせる、
小さな贈りもの。
今週のweeksdaysは、
オリジナルのチョコプレッツェルをご紹介します。
味はいつものダークに加えて、
新しくミルクとキャラメルの3種類。
パッケージも新しくなりました。
友だちと会う時や、
仕事先で。
バッグからガサゴソ言わせながら、
「はい、これ!」なーんて、
プレゼントしたいなぁと思っています。
コンテンツは、
ぼる塾の田辺智加さんにご登場いただいての、
スイーツ対談。
どうぞおたのしみに。
スイーツ英才教育。
- 伊藤
- はじめまして、田辺さん。
伊藤です。今日はありがとうございます。
- 田辺
- 田辺です。
どうぞよろしくお願いします。
- 伊藤
- 神保町界隈には、よくいらっしゃると
お聞きしました。
- 田辺
- そうなんです。
劇場(神保町よしもと漫才劇場)が近くて。
- 伊藤
- そうですよね!
- 田辺
- これ、おみやげです。
御座候(ござそうろう)っていう今川焼です。
- 伊藤
- ありがとうございます。
わぁ、あったかい!
それに、重い!
今、買ってきてくれたんですね。
- 田辺
- 余ったら、冷凍もできますから。
- 馬場(カメラ)
- では撮りまーす。
おやつを囲んで。
- 田辺
- (瓶入りフルーツに目をとめて)
あーっ! これは!
- 伊藤
- ふふふ、近江屋洋菓子店のフルーツポンチです。
- 田辺
- 存在は知っていたんです。
でも私、ここで食べたことがあるのは
ストロベリーバターと、
みかんの入ったロールケーキだけなんです。
これには、ちょっと手が出せなかったんですよ、
高級品ですから。
- 伊藤
- ご主人が毎朝市場に行って、
旬のくだものを買ってくるんですって。
ちょっと形が崩れていても、一番おいしいものを
この瓶に閉じ込めるらしくて。
たとえば秋だったら
栗が入っていることもあるんです。
- 田辺
- インスタでみました。
フルーツポンチに栗が入ってるって、
どういうこと? って思ってました。ふふ。
- 伊藤
- おやつを前にすると、田辺さんって、
もう本当に幸せそうな顔をされますよね。
- 田辺
- すいません本当に。ハハハ。いやー。
- 馬場(カメラ)
- もうちょっとだけこっちにぐいーっ、と。
いいですね。うれしいスマイル下さい。
- 田辺
- ああ、いい香り!
- 馬場(カメラ)
- OKです~。ありがとうございます。
- 伊藤
- 田辺さん、出版おめでとうございます。
『ぼる塾 田辺のスイーツ天国』、拝読しました。
以前からテレビで田辺さんを見ていて、
なんて幸せそうに食べる人なんだろうって
思っていたんです。
しかも、愛があって、詳しくて。
だから本になってよかった! って。
- 田辺
- ありがとうございます。
本は、出したいってずっと思っていたんですが、
まさか、本当になるとは。
- ──
- お茶をどうぞ。
- 田辺
- (ポットを見て)
うわ、こんなおしゃれなものが存在するんですね。
- 伊藤
- 北欧の古いもの(*)なんです。
ほの温かさをキープしてくれるんですよ。
(*)シグネ・ペーション – メリン
(Signe Persson-Melin)のウォーマーつきティーポット
- 田辺
- 私、お茶を淹れて冷めてしまうと、
レンジで温め直しているんですが、
風味がやっぱり落ちてしまうんですよね。
これだったらいいですね。
- 伊藤
- そっか、お茶もたしなまれるんですよね。
- 田辺
- そうなんです。紅茶がすごく好きで。
- 伊藤
- これ、本当にオススメです。
田辺さんって、あんな膨大な量の知識を、
どうやって収集しているんですか。
- 田辺
- 私、幼いころから、
とにかく食べることが好きで。
- 伊藤
- お母さまの英才教育があったとか?
- 田辺
- はい、母が食べるのが大好きで。
- 伊藤
- うちも食いしん坊一家だったんですけれど、
育った環境って、絶対、ありますよね。
- 田辺
- ありますね。
私、子供の頃、袋に入ったお菓子、
スーパーとかで買ったお菓子を
食べたことがなかったんです。
駄菓子も知らなかったんですよ。
別に金持ちだったわけじゃないんですけれど。
- 伊藤
- それはお母さまの方針?
こういうものを食べさせたいと思われたのかな。
- 田辺
- 母が赤坂に勤めていたんですが、
赤坂界隈っておいしいものがいっぱいあるんですよね。
そうするといただくお菓子もおいしくって、たとえば
「マキシム・ド・パリ(MAXiM’S DE PARiS)」や
「トップス(Tops)」のケーキをいただくと、
母が持って帰ってきてくれるんです。
私はそういうのばかり食べていて、
みんなが子供の頃に食べるお菓子を食べてこなかった。
本当にいっちょ前で生意気な子供でした。
- 伊藤
- そんな子、いないですよね!
- 田辺
- 金持ちだったらまだしも、
うち、アパートに住んでたんですよ。
でもお菓子だけは本当にいいものを食べてました。
- 伊藤
- じゃあ、逆に、憧れちゃうんじゃないですか。
「駄菓子が食べたい!」と、
ちょっと道をそれたくなりませんでしたか。
- 田辺
- ハイ、憧れがあって、
1回道をそれました、やっぱり。
- 伊藤
- やっぱりそうなんだ。
- 田辺
- 袋菓子やカップラーメンを
隠れて買い食いすることを覚えました。
でも、家には持って帰らないようにして、
外で食べてましたよ。
結果的に、どのジャンルもいけるようになったので、
道をそれたのもよかったなと思ってます。
- 伊藤
- いくつぐらいのときのことですか。
- 田辺
- 8歳から12歳ですね。
そしたら、それとともに、体重の増加もちょっと。
フフフ。
で、中学校ぐらいになったら、
3年間は部活の合唱部に夢中になって、
また元に戻るんです。
そして高校になって東京の学校に行きはじめて、
デパ地下に目覚めました。
- 伊藤
- なるほど、そんな変遷が。
‥‥って、おやつを前に、
お話ばかりでごめんなさい。
いただきましょうか!
まずは近江屋洋菓子店のフルーツポンチから。
- 田辺
- ハイ、いただきます!
- 伊藤
- フフフ。おいしそうな顔をなさいますよね。
- 田辺
- あー、うまい!
いけない、「うまい」とか言っちゃって、
こんなおしゃれなところで、ハハハ。
「おいしい」です!
- 伊藤
- なにをお出ししようか、
すっごく吟味したんですよ。
そうしたら、今は作っていないものもあったりして、
「ほぼ日の近くの、神保町界隈で探そう」と、
方針をかえて。
- 田辺
- 近江屋洋菓子店を知ったのは、
「ぼる塾」が売れる前だったので、
とても買える余裕はなかったんです。
やっぱりこれは、とてもぜいたく品ですよね。
憧れではあったんですけど、手が出せなかったんですよ。
- 伊藤
- そうそう、ちょっと優雅なもの。
そういえばわたしも
自分用に買ったことがないかも。
いただくか、さしあげるか、ですね。
- 田辺
- もう、どのフルーツもおいしいですよ、本当に。
- 伊藤
- 田辺さんが食べているのを
見ているだけで嬉しくなります。
- 田辺
- 甘~い! うん。
- 伊藤
- フルーツのおいしさを活かした
シロップの甘さですよね。
- 田辺
- 本当にいいですね。
「フルーツいかし」が最高です。
- 伊藤
- 「フルーツいかし」!
まだいろいろあるので、ほどほどに。
おなか、いっぱいなっちゃうと思うので。
- 田辺
- そうだ、私、すぐ勢い余って、
すっごく食べちゃうんですよ。
フフフ。でもおいしい。
- 伊藤
- おいしいよね。
- 田辺
- このまんまでももちろんおいしいですけど、
アレンジしてもおいしそうですね。
炭酸水入れたりとか。
甘くないやつで、シュワッとさせる。
- 伊藤
- さすが!
サイトーウッド、わたしの使い方。 伊藤まさこ
花粉に悩まされる、これからの季節。
今までは、鼻をかんだ後、
いちいちキッチンのダストボックスに
捨てに行っていましたが、
今年はこのバスケットがあるから安心。
ドアの向こう側にさりげなく置けば、
見た目に感じがいいし、インテリアのじゃまもしません。
じつは、横のチェストの中にティッシュが入っているので、
テッシュを取り → 鼻をかみ → すぐにポイッ、
‥‥と、動線もスムーズなのです。
weeksadaysオリジナルで作ったのは、
シンプルなグレーと落ち着いたトーンの水色。
部屋の雰囲気に合わせて
えらぶといいかなと思ったのですが、
いざ置いてみると、どちらも合うんです。
私はいくつか買って、重ねておき、
(あまりギューギューに入れると
取り出しづらくなるので要注意)
納戸において、出番を待ちます。
お裁縫途中の布を入れたり、
撮影に使う色紙の収納に使ったりと用途は色々。
重なった姿も美しいでしょう?
仕事の道具を収納している棚に2つ並べて置きました。
右は、税理士さんに送る領収証や書類。
左は、出版社などから送られてくる明細書や、
請求書などなどをざっくり仕分け。
ここがいっぱいになる前の、
10日に一度を目安に、処理していきます。
気がつけば、すべてグレー!
Macの色ともぴったりで、
この棚を見ると、
「よしやるぞ」と仕事の意欲も増すのです。
ここ2年ほどで、手洗いがすっかり身につきました。
撮影などでスタッフが来る時も、
みんなまずは洗面所に直行。
洗面所にハンドタオルを
たくさん用意しておくのも習慣になりました。
ウッドボックスは、
使い終わった後のタオル入れに。
撥水加工が施してあるので、
(と言っても、直接水を入れたり、湿ったものを長い間置きっぱなしにするのは禁物です)
こんな使い方もできるんです。
サイトーウッド、あのひとの使い方。 吉川修一
「くずかごに関しては、いろいろ探して
結局いいものが見つかっていなかった」
という吉川さん。
白や黒、スチールのもの、ウッド系はあるけれど、
私たちの暮らしに「ちょうどいい」ものって、
たしかにありませんでした。
「インテリアに関していうと、
くずかごって、二の次、三の次。
もっというと四の次くらいの位置付け。
インテリアのスタイリングの中に、
あまり入ってこない、かわいそうな存在ですよね」
そうそう、そうなんです。
「いい感じだなと思うくずかごが見つかったとしても、
日本のサイズ感に合わないものも多い。
アメリカの大きな家だったら、
アルミやステンレスの
大きなものも合うと思うんだけれど、
多くの人が50~70平米の広さに住む
日本の家にそれを置くと、
大きさに違和感を感じてしまうんです」
ご自宅や、オフィスには「これ」というものが見つからず、
外国製の大きなシルバーのものをキッチンに置いて、
その都度、捨てに行っていたとか(私もでした)。
weeksdaysのウッドバスケット、
そんな吉川さんを満足できるといいなぁと
ドキドキしながらオフィスを訪ねると‥‥。
しっくり。
ぴったり!
私たちが「こんな風に使って欲しい」と
頭に描いていた絵を
形にしてくださっていました。
「このバスケットは、インテリアの一部にもなりますね。
これ、欲しいです!」
なーんて、うれしい言葉をいただきました。
吉川さんがえらんだこのグレーは、
他の家具とも相性ぴったり。
そして、この日の吉川さんのコーディネートにもぴったり!
木の床や家具に、また質感や色の違う木が加わると、
時に少々野暮ったい印象になってしまうことがありますが、
ペイントしたバスケットが
いい繋ぎ役になってくれるんです。
デスク横のサイドテーブルの下にも収まってすっきり。
「あと、蓋がないのっていいですよね。
捨てたい時に、すぐポイッとできる。
オフィスにも1人1つずつ、
デスクの下に置くといいのでは?
統一感も出るし、
何より足元にこれがあるとうれしいです」
「汎用性があるから、
布を入れたりもできますね」
そうなんです。
こまごましたもの入れにも最適。
布や紙ものなどと付き合うことの多いお仕事柄。
またいつか、すてきな使い方、見せてくださいね。
[オンライン対談]サイトーウッド 齊藤拓也×伊藤まさこ
- 伊藤
- 齊藤さん、こんにちは。
どうぞよろしくお願いします。
- 齊藤
- こちらこそよろしくお願いします。
- 伊藤
- サイトーウッドのバスケット、
色塗装をしていないタイプを使ってる人が、
わたしのまわりで、すごく多くて。
形がいいなって思っていました。
そして雑誌「Casa BRUTUS」で
グレイに塗装しているものを発見して。
- 齊藤
- そうでしたね。
- 伊藤
- すぐに電話したら「今は作ってないんです」と。
- 齊藤
- そうなんです。
- 伊藤
- その時は諦めて、
「機会があったらぜひ」
ということだったんですが、
思えば、電話でご対応くださったのは、
社長である齊藤さんだったんですよね。
- 齊藤
- はい、その時はじめてお話をさせていただきましたね。
あの製品については、
何件か問い合わせいただいたんですが、
限定品というか、
手が空いたときに、年に1回ぐらい
作る商品だったんですよ。
定期的には作っていないんです。
- 伊藤
- そこから、今回「weeksdays」で
別注させていただくという話がスタートしました。
こんなふうに完成して、ほんとうに嬉しいです。
齊藤さん、会社のなりたちをお聞かせいただけますか。
なぜ、この「成型合板」という技術を使う
木工製品がうまれたのか。
- 齊藤
- はい。一番最初は、戦中ですね。
第二次世界大戦のとき、機械の設計者だった私の祖父が、
静岡から、飛騨高山の軍需工場、研究所に行って
働いていたんです。
当時は鉄が不足していたので、
そこでは、飛行機の燃料タンクを
木材で作れないかという研究をしていたそうです。
- 伊藤
- 木で燃料タンクを?
- 齊藤
- そうなんです。
もともと世界中に合板の技術はあったので、
それを利用して日本でもできないか、と、
当時はドラム缶ぐらいの大きさのタンクを
作ろうとしてたみたいで、
祖父は、実際にサンプルを作ったと言っていました。
でも研究の途中で戦争が終わり、
中断したんだそうです。
- 伊藤
- 機械の設計者だったおじいさまが、
戦時中に合板の技術と出会ったわけですね。
- 齊藤
- そうですね。
そして静岡に戻ってきた祖父は、
手先が器用だったので、一番身近にある木で
バットとか建具なんかを作りはじめるんです。
でもまだ最初は、合板はやっていなかった。
創業は川根という、ちょっと田舎のほうだったので、
もっと大きな仕事がしたいっていうことで、
都会である静岡市内に、仲間を頼って出てくるんです。
最初は一人で、静岡市内に工場を借りて。
それと前後して、戦時中に研究していた
成形合板の技術を使いはじめるんですよ。
丸い小物入れがスタートだったと聞きました。
- 伊藤
- お一人で! そういう「小さなもの」は、
今は、お作りになられていないですよね。
- 齊藤
- そうなんです。
技術的には作れるんですけど、
価格が高くなってしまうんです。
というのも、成形合板って、大きいものを作るのでも、
うんと小さなものを作るのでも、
そんなに手間が変わらないんですよ。
なので「小さい割に結構高いね」と言われてしまう。
- 伊藤
- なるほど。
でも、おじいさまがつくられたものと、
いま、三代目の齊藤さんがつくられるものは、
大きくは変わっていないわけですね。
- 齊藤
- そうですね。基本的に、
作ってるものは変わらないです。
祖父の頃は、アメリカ向けの
輸出品ばっかりだったんですよ。
国内ではほとんど売っていなかった。
- 伊藤
- そうなんですか!
じゃあ、おじいさまは、
アメリカに輸出することを念頭に
デザインをしていたんでしょうか。
- 齊藤
- 祖父がデザインしたものもあるんですけど、
戦後、アメリカ人のバイヤーが静岡に来て、
アメリカ向けの商品を作らせたんです。
なので、彼らから祖父に、
そうとう、デザインのアドバイスがあったと思います。
- 伊藤
- なるほど! だから、いま、たとえばイームズの
一人掛けのチェアの横に置いても、
なんとなくマッチするデザインができあがったんですね。
- 齊藤
- そうかもしれないですね。
ほかにもアイスペールとか、
戦後の日本人じゃ思いつかないような、
日本の家庭では使わないようなものも、
いろいろつくっていたようです。
アイスペールは向こうでとても受け入れられて、
当時の主力商品になりました。
外側が木で内側が金属ですから、
金属加工の工場といっしょにつくるんですよ。
そうなると、現代では再現が難しくって、
たとえばつまみの部分なんて、
今、つくっているところがないんです。
- 伊藤
- 再現したくてもできないことがあるんですね。
- 齊藤
- アメリカを旅行して、古道具屋に行くと、
たまに見かけるんですよ、うちのアイスペール。
- 伊藤
- さぞ、たくさん作られたんでしょうね。
そんなふうにアメリカへの輸出から、
現在のような日本国内での販売に主力が移ったのは、
なにか理由があったんでしょうか。
たとえば日本人の生活様式が
だんだん洋風になってきたから、とか?
- 齊藤
- うちの場合は生活様式よりも経済的な理由だと思います。
1ドル360円という固定相場制の時代が終わり、
1973年、変動相場制になったことで、
輸出が途端に減ったんですよね。
それで国内向けの販売に移行せざるを得なかった。
祖父がまだ現役で、のちに二代目となる
父が手伝い始めた頃だと思います。
- 伊藤
- 国内販売に切り替えた頃の主力商品は‥‥。
- 齊藤
- お盆と、バスケット(くずかご)です。
お盆は飲食店、バスケットは旅館向け。
そういう形で展開してました。
- 伊藤
- バスケットは、今回、販売するのと同じかたちで、
塗装をしていないタイプですよね。
- 齊藤
- そうですね。
- 伊藤
- 今思えば、記憶にある昭和の家庭のくずかごって、
サイトーウッドのバスケットが多かったんだと、
今回、わかりました。
ほんとうに多くの家にありましたよ。
しかも、ずっとデザインが変わっていない。
- 齊藤
- そうなんです。
1960~70年代あたりから
変わっていないんです。
- 伊藤
- 塗装タイプを出したのはいつ頃なんでしょう。
- 齊藤
- 塗装したバスケットは、
輸出じゃなくて国内向けの商品として、
1970年ぐらいにありましたね。
ただし、当時は木目が透けて見えるような塗装でした。
内側だけとか、外側だけというのが10年ぐらい前から、
今回のようなマットに全面塗装したタイプは
5年ぐらい前からです。
- 伊藤
- なるほど。公式ウェブサイトに掲載のある
ワインラックであるとか、
傘立てであるとか、マガジンラックとか、
そういうものをつくるようになったのは、
齊藤さんが参加なさってからでしょうか。
- 齊藤
- はい、その辺は僕が担当しました。
10年ちょっと前くらいからかな、
外部のデザイナーさんと組むようになったんです。
たとえば藤城成貴(ふじしろしげき)さんっていう
デザイナーさんと一緒に物作りをしたり、
名古屋芸術大学のデザイン学部の学生と一緒に
産学協同プロジェクトでつくった製品もありました。
- 伊藤
- 今は主力商品は‥‥。
- 齊藤
- 昔も今もバスケットです。
- 伊藤
- やっぱりそうですよね。
これ以上の形はないですよ。
くずかごとしての用途にかぎらないのもいいですね。
今回取材させてもらったアパレルの会社では
布のサンプルを入れたりしてました。
今回は色を塗ったから、
子供のおもちゃを入れたりするのもいいですよね。
- 齊藤
- そんな使い方もできますよね。
- 伊藤
- わたしたちはこのバスケット、
「くずかごだけにしておくのはもったいない」
という気持ちで薦めたいんです。
雑誌のインテリアのページには、
椅子とかテーブル、棚はあるのに、
くずかごってそこに組み込まれない。
でも絶対必要なものだから、
なんだかかわいそうな感じもするんです。
好きな椅子の隣にこれがあったらいいと思う。
絵になる、と。
そういうことを言いたいなと思っています。
- 齊藤
- ありがとうございます。
- 伊藤
- お使いになるかたに、
なにか伝えておきたいことはありますか。
- 齊藤
- そうですね、みなさん、くずかごとして、
ビニール袋を中に入れて使われるんですが、
あまりかけないで欲しいかな。
もし汚れたら水ぶきしていただければ
きれいになりますから。
いわゆる生ごみを入れるようなごみ箱とは違うので、
においや、水気のあるものは避けてほしいです。
- 伊藤
- そうですよね。
バナナの皮とかはキッチンのごみ箱に入れてもらって。
ということですね。
あっ‥‥、例えば、うちだったらお客様用に
ちいさなハンドタオルを一人ずつ使ってもらうんですけど、
それを使った後、一時的に、
バスケットに直接ポイするっていうのは可能ですか?
- 齊藤
- それなら、全然大丈夫ですよ。
- 伊藤
- そうですよね。
よかった!
齊藤さん、ありがとうございました。
お目にかかれるようになったら、
静岡に伺いますね。
ぜひ、むかしの製品も見学させてください。
- 齊藤
- ありがとうございます。
お待ちしています。
サイトーウッドのバスケット
毎日眺めるもの。
必要なのに、
「これ!」
というものになかなか出会えないもの。
みんなの家に必ずあるのに、
インテリアの主役になかなかならないもの。
それがくずかごではないかな。
ごみを入れるからって、
「これでいいや」とおざなりにはしたくない。
毎日眺めて、
「いいなぁ」と思うものをえらびたいと思うのです。
weeksdaysは、
今の私たちの部屋に置きたいと思う、
すっきり美しい形のくずかごを提案。
色は2色あるんです。
部屋に馴染み、
あるとうれしいサイトーウッドのバスケット。
「バスケット」という呼び名からも分かるとおり、
くずかごだけではない、別の使い道は、
コンテンツをどうぞごらんくださいね。
3色のマグ、それぞれのつかいかた。 その3 ブルージーンズ、そして。
リエットをいれて。

うつわ=ブルージーンズ 小 Ⓒmonohanako
唐津に美味しいバゲットを焼く
パン屋さんを見つけたので、
リエットをたまに作りたくなります。
このブルージーンズという釉薬は
(毎回焼き上がりのニュアンスが違うのだけど、
それはそれで面白いと思っている)、
テーブルを明るくしてくれます。
ちょっと気持ちが弾んでいる時に使いたくなる器です。
ブルージーンズは
クリーミーな色との相性がよいようです。
ちなみに私はブルージーンズのマグで
毎朝チャイを飲んでいます。
(中里花子)
洋梨と。

うつわ=ブルージーンズ 小
洋梨の色を見た時、
これはブルージーンズのマグと相性がよさそうだな、と
ピーンときました。
黄色とブルーの組み合わせが、大好きなのです。
一口大に切った洋梨は、
器の口から出すように、こんもりと盛って、
桜の枝で作った楊枝を刺します。
シルバーのフォークも使いやすいけれど、
同じ形がひとつとない楊枝を刺すと、
テーブルの上にリズムが生まれて楽しくなる。
マグカップも、なんだかいつもと違う表情をしているように
見えてくるから不思議です。
(伊藤まさこ)
3つの色で。

うつわ=すべて小
3色、勢揃いさせて、
クラムチャウダーの朝食。
盛るスープは同じのはずなのに、
それぞれの色ごとに、
料理の印象が変わる。
器っておもしろいなぁと思うのは、
こんな瞬間です。
家族や友人たちと、
「わたしはこの色」、
「わたしは、こっち!」、なんてワイワイ。
焼きたてのパンがあれば、
あとはコーヒーだけで充分満足。
楽しい1日の始まりをどうぞ。
(伊藤まさこ)
3色のマグ、それぞれのつかいかた。 その2 ホワイト。
心をリセット。

うつわ=ホワイト 大 Ⓒmonohanako
畑好きのパートナーがホーリーバジルを植えました。
植えた、というよりも苗を植えたら勝手に育った、
というような自立心旺盛なこのハーブは
野生味溢れる味がします。
ホーリーバジルを乾かしたものをお白湯に入れるだけで
なんとも言えない滋味深い味わいで、
夕食後に決まってホーリーバジルティーを飲んで寛ぎます。
カフェインもないから夜も安心して飲めるし、
ほっこりと身体が癒されます。
他にも疲れた時によく飲むのが梅干を入れた白湯。
どちらも白いカップがなんとなく落ち着きますね。
白い器は心をリセットしてくれるような気がするので。
(中里花子)
花器のように。

うつわ=ホワイト 小
ミントはカップに挿しておくと、
ちょっと使いたいなぁ‥‥なんて時に重宝します。
ガラスのコップに入れることもありますが、
マグカップだと茎が目立たずきれいに収まる。
ワサワサした葉っぱと、
カップの色や質感が好相性で、
部屋がとたんに清々しい印象になります。
隣に置いたのは、
数年前の唐津旅行で手に入れた、花子さんのピッチャー。
さすが同じ人の手から生まれた器同士、息がぴったり。
こんな風に、ひとつひとつ手に入れていく楽しみが、
作家の器にはあるのです。
(伊藤まさこ)
チャイニーズ・スープ。

うつわ=ホワイト 右が小、左が大
ふだんのおかずに合わせて、
ちょっと何か温かいものを。
そんな時によく作るのがワンタンのスープです。
スープボウルでもなく、
漆器でもない、
この持ち手のついたカップが、
「ちょっと」の気分に合うんです。
今日は、香菜のグリーンを目立たせたかったので、
えらんだカップはホワイト。
中国の古いレンゲを合わせて、
いただきます。
(伊藤まさこ)
3色のマグ、それぞれのつかいかた。 その1 チョコレート(飴釉)。
気軽に、マグでお抹茶を。

うつわ=チョコレート 大 Ⓒmonohanako
トロリと溶けたチョコレートのような飴釉。
和でも洋でも合うような、
落ち着きのあるトーンで
渋好みの方にぴったりだと思います。
私のパートナーが和菓子が好きで、
たまにおやつに和菓子とお抹茶をいただきます。
お抹茶茶碗を使うのではなく、
自宅の食卓でカジュアルに飲むお抹茶には
マグを使うこともあります。
茶筅ひとつでシャシャっとお茶を点てて、
サクッと飲んで、あとはチャチャっと水で洗うだけ。
とってもカンタンで美味しい時間を味わえるので最高です。
口が広い大きめのマグだと茶筅も通し易く、
底に緩やかな曲線があるのでお抹茶も点て易いです。
飴釉のマグとお抹茶の緑との相性も良い感じで
気に入って使っています。
今回のマグは持ち手の幅を大きめにしたので
持ち易く手の馴染みも良いようです。
(中里花子)
キャンドルを浮かべて。

うつわ=チョコレート(飴釉) 右が小、左が大
新色のチョコレート、
色合いや肌合いが、とってもいい感じで、
食器棚にしまっておくのがもったいない。
リビングの片隅に大小1つずつ置いて、
その姿をしばらく愛でることにしました。
それから数日経ったある日、
ロンドンに住む友人から届いたのは、
月桂樹とローズマリーのキャンドル。
さっそく小さい方のカップに水を入れ、
キャンドルを浮かべると‥‥
ああ、いい感じ。
カップの中が静かに照らされて、
また違う一面を垣間見たような気になりました。
(伊藤まさこ)
器のように。

うつわ=チョコレート(飴釉) 大
容量たっぷりのマグは、
こんな風に器のように使っても。
ちょっと質感の違う、小さめの磁器のカップを合わせて、
チョコレート色を盛り立てます。
中には、
黄色から茶のグラデーションが楽しい、
ドライシトラスを。
入れるもので、ずいぶん印象は変わるもの
(花子さんは、このカップにお抹茶を組み合わせていて、
それがとても新鮮でした)。
臆さず、あれこれ盛って欲しいなと思います。
(伊藤まさこ)
あまいもの。

うつわ=チョコレート(飴釉) 右が大、左が小
チョコレート色ですもの、
なんと言っても一番似合うのは、
ホットチョコレート!
マシュマロを浮かべて、
あまーい気分を盛り上げます。
器から立ち上る湯気が、
いかにもあったかそうではありませんか。
(伊藤まさこ)
中里花子さんのマグカップ
朝の習慣。
起き抜け、
ブランケットに包まりながら
花子さんのマグカップで白湯を飲みます。
カップに注いだお湯が冷める頃、
身支度はすっかり終わって、
気持ちがしゃんとしている。
このカップとつき合うようになって、
今まで慌ただしかった朝の時間が、
ちょっと変わったような気がしています。
のんびり、でもなく、
きっちりでもない、
「しゃん」。
20分とか30分の
わずかな時間だけれど、
この数十分は、わたしにとても重要なのです。
今日は何色にしようか?
カップは3色あるから、
その日の気分に合った色をえらぶ。
両手で持つとじんわり温かさが伝わってきて、
ああ、やっぱりこのカップいいなぁ、
好きだなぁと思うのでした。
今週のweeksdaysは、
去年、好評をいただいた中里花子さんのマグカップ。
新色もあるんですよ。
どうぞおたのしみに。
おはしの手入れ。 伊藤まさこ
すっとした佇まいが魅力の、黒檀のお箸。
weeksdaysチームの一人は、
「持つだけで、なんだか所作がきれいに見えるような‥‥」
なーんて言っておりました。
まさに!
このお箸を持つと背筋が伸びる。
お箸にふさわしい自分でいたいという気持ちになるのです。
器とか、料理道具とか、それからこのお箸も。
よいものがもたらす力ってすごいなぁと思う。
さて、
ここでは私のいつものお手入れ法をご紹介していきますね。
まず、洗う時はスポンジを使わず、
指先でやさしく汚れを取ります。
油がついている時はぬるま湯で。
(それでも取れない場合は、薄めの洗剤をつけて。)
なぜ? って思うかもしれませんが、
スポンジだと、
例えばちょっとご飯粒がついていたとしても、
気づかない場合があるでしょう?
乾いてから、あれ? カピカピのごはんが
箸先に残っていた!
なーんて残念な思いをすることもある。
ですから私は、「指先」という、
感じやすい場所を使って、
きれいさっぱり洗うのです。
すっかり乾いたらしまいます。
でも、その前に布で磨くといつもピカピカ。
使っていると、少々かさっとしてくるのですが、
でも大丈夫。
ちゃーんと蘇ります。
布はふだん使っているキッチンクロスなどでじゅうぶん。
キュッキュと磨けば、
「かさっ」から「しっとり」に。
このひと手間で、黒檀の持つつややかさが保てるのならば、がんばれるというものです。
毎日とは言わないけれど、
たとえば、お湯が沸くのを待つ時間とか、
ちょっとした台所仕事の隙間時間にすれば、
手間とも感じないのではないかしら?
さあ、手入れしたお箸でごはんの時間。
姿勢正して、いただきまーす。
舞鶴へ、お箸づくりを見学に。 ──吉岡民男さんの仕事場へ。 その2 ぴたっと寄りそう。
木材はその性質上、
反ったり曲がったり割れたりする。
それらの狂いが箸に現れないよう、
吉岡さんは、箸の原型に切り出した木材を、
2~3年は寝かせるのだという。
適度な乾燥と湿度。
ふたつの環境下に置いて保管するのだそうだ。
その詳しい方法は、企業秘密。
吉岡さんがこれまで研究に研究を重ね、
編み出したものだという。
「だから、この木材でお箸を作ってくださいと
突然言われても、できないんです」
つまり、weeksdaysで販売する黒檀の四角箸は、
ようやくその材料である黒檀が2~3年の時を経て、
準備万端整ったということ。
満を持しての登場。
なんだかもう、ありがたみを感じずにはいられない。
黒檀の八角箸、それから四角箸‥‥、
形や長さの違う箸を、
吉岡さんがいくつか目の前に並べて見せてくれる。
四角や八角のお箸は、やはり物がつかみやすいのですか?
という私の問いに、
「普通のお箸はね、こうやって2本並べて置いた場合に、
箸先が少し開いとるんですね。
私のは、初めから閉じとるんです」
と吉岡さん。
そう言われて、箸先に目線を移し、はっとした。
吉岡さんの箸は、どれも箸先がぴたっと寄り添い、
わずかな隙間もないのだ。
「だから箸でなにか物を持とうとしたときには、
もうつかめているというね。
お箸を買われた方には、
よくつかみやすいって言われますよ」
箸先に込められた技と心配り。
そんな吉岡さんの箸に、愛用者の武井さんが太鼓判を押す。
「細い塩昆布、1個からつかめちゃう。
じゃこだってつかめますからね」
コロナの影響で、
箸を毎月百単位で卸していた専門店が休業し、
仕事がぴたりと止まってしまったという吉岡さん。
それでも粛々と箸づくりを進め、
箸の直販も手探りのなかスタートした。
厳しい状況にあっても、
箸を購入されたお客さまから直に寄せられる感想が、
大きな励みになっているという。
「食事のレベルがあがる、って感想がありましてね」
と頬をゆるめる吉岡さんに、武井さんがうなずく。
「すごくわかります。吉岡さんのお箸は、
食卓に置いたときの佇まいがきれいなんです。
ちょっと器をいいものにしよう、とか、
盛り付けをきれいにしよう、とか、
そういう気持ちと、
このお箸がすごく合う気がするんです」
きりっとした黒の直線美、繊細に寄り添う箸先。
黒檀の四角箸は、なんとも景色のいい箸だ。
でも「それだけではない」と、言葉を続ける武井さん。
「吉岡さんのお箸を使うことで、
所作がきれいになるんですよ。
きれいに食べようって、
そういう気分になるお箸なんです」
なるほど、ほんとうに。
その場で黒檀の四角箸を右手で持ってみたら、
その言葉が、すとんと腑に落ちた。
箸という道具に、あらためて尊さを感じるような、
背筋が自然と伸びる感覚。
吉岡さんのお箸には、不思議な力がある。
さて、この四角箸で、なにを食べよう。
炊き立ての新米ごはんと、なめこたっぷりのお味噌汁、
鯛のかぶら蒸し、春菊とりんごの白和え‥‥。
食事の献立が、次々に浮かぶ。
いつもよりもちょっと手をかけて、ていねいに。
そんな食卓へと、心がはやるのだった。
(おわります)
舞鶴へ、お箸づくりを見学に。 ──吉岡民男さんの仕事場へ。 その1 八角箸の技術をいかして。
「吉岡さんのお箸は、手に持つと、
惚れ惚れするような美しさがあるんですよ。
すごくいいものを使っているなって。
そして、丁寧な気持ちにもなるんです」
京都・舞鶴市の吉岡木工で制作されている黒檀の箸を
そう絶賛するのは、weeksdaysの編集担当の武井さん。
5年以上、吉岡さんが作ったお箸を毎日使い、
「ファン」だと熱っぽく語る武井さんと共に、
吉岡木工のある舞鶴市へと向かった。
すぐ北には日本海の舞鶴湾が控える海辺の町。
側道を車で登った先に、
こんもりした木々を背負うようにして、
吉岡民男さんの木工所がある。
背の高い鉄塔(集塵機だそう)が目印の木工所には、
重厚な機械たちが居並ぶ工房と、
その横には在庫などを保管する事務所がある。
吉岡さんが、いまはひとりで箸づくりに勤しむそこは、
元はお父さんが運営していた製材所だったそうだ。
木工所から、ちょうど東へ50kmほどのところに、
塗り箸の産地で知られる福井県小浜市がある。
吉岡さんいわく、
小浜市には規模の大きな箸の問屋がいくつもあって、
そのうちのひとつからの依頼で
大量生産の箸の下地を手がけるようになったのが、
箸づくりのはじまり。
吉岡さんの代になってからは、
箸専門の木工所へと舵を切った。
安価な木材で箸の下地を作るだけではなく、
もっとなにかできないか。
あるとき吉岡さんは、黒檀を用いて箸を作り、
問屋へ持ち込んだ。
堅牢でいて、しなやかさもある黒檀。
銘木といわれ、その箸は高級品に分類される。
「そうしたら、なかなかいいって言われて。
黒檀だったら、もっとこういうものができるんちゃうかと、
そうやって少しずつですね‥‥」
漆黒で艶のある黒檀そのものの美しさをいかすため、
装飾は施さない。
箸先まで八角形を保った端正な八角箸は、
いまでは吉岡さんの代表作だ。
黒檀の箸は、一般的に「作るのが難しい」
「技術がいる」と言われている。
なぜならば、「石のように固い材だから」と吉岡さん。
実際に材を触らせてもらったら、まるで砥石のような、
木とはとても思えない硬度。
密度も高い。
だから木材から箸の原型を切り出すときに、
「のこぎりがなかなか入っていかない。
機械がね、ガッと途中で止まってしまう時もあって。
機械でスースーっとは、いかないんです」。
吉岡さんのような熟練した技と経験がなければ、
その作業は困難を極めるという。
さらに難易度をあげているのが、
独特の「細さ」と「やわらかな手ざわり」。
weeksdaysで販売する四角箸は、
7mmという細さで(しかも先端は2mmの極細!)、
吉岡さんが通常制作している9mmの箸よりも、
さらに細い。
材が割れないよう細心の注意を払いながら、
ミリ単位の加減で細く、でも強く、仕上げてゆく。
箸の形ができあがったら、今度は角を取り、
丸さのある、やわらかな触感を目指す。
四角い箸は、そのままだと角の部分が手に当たるためだ。
「角を取りすぎてしまったものは、もう戻らない。
だから手作業で少しずつ。
難しいですよ。時間もかかります」
一本一本、紙やすりで角を均等に削ってゆくなんて、
気が遠くなりそうな作業だ。
しかも吉岡さんは、箸先まできっちり角を取るのが信条。
箸先の角が立っているのと、立っていないのとでは、
口先や舌先に触れたときの感触がまるで違うのだという。
はぁぁ、なんと。ひえぇぇ。
箸づくりの手間と労力に、
いちいちため息が出てしまう私たち。
さらに驚かされたのは、木材が一対の箸になるまで、
想像以上にずいぶん長い時間がかかっている、
という事実だった。
(つづきます)
行為に寄り添って溶けていく。
- 伊藤
- 自分に「終の住み処」のイメージがない、
とお話ししたんですけれど、
自分でデザインするわけでもないのに、
ひとつだけ一軒家のイメージはあって、
それは「子どもが描く家」なんです。
三角屋根の四角いおうち。
「子どもが描くような」というのは、
わたしがどなたかにデザインの依頼をするとき、
大事にしていることなんですよ。
コップにしても「子どもが描くようなコップ」とか。
- 深澤
- 僕も同じ気持ちで、ここを建てました。
周りの子どもに影響されたこともあるし、
もうひとつはユングの言っている「集合的無意識」、
例えば、おうちだったらこういうもの、
机だったらこういうものっていう、
その原型‥‥アーキタイプっていうんですけど、
そういうものは時代を超えたり、世代を超えたりして、
遺伝するんですって。
- 伊藤
- 遺伝。
- 深澤
- つまり、伝えなくても時間を超えて同じ概念を持つ、
っていうことをユングは言っている。
だから子どもにはちゃんと伝わってるんです。
日本人が、ある程度、日本的文化の中で
育ってるっていうのは、
日本の哲学を教えたわけでなくても、
一応は「整っている」じゃないですか。
絵のことに関しても、
子どもの持ってる概念に関しても、
正しいというか、大切なことだと思います。
- 伊藤
- NHKで、母校を訪れる番組、
「課外授業 ようこそ先輩」に出演なさいましたよね。
子どもたちにどんなことを教えたんですか。
- 深澤
- 「考えずにやってしまうことを探そう」と、
観察して写真を撮ってきてもらい、
その観察したことをヒントにしながら、
最終的にはプロダクトの模型をつくろう、
というものでした。
- 伊藤
- えっ、すごい。
- 深澤
- スーパーとか学校の下駄箱とか、
場所はグループワークで決めておいて、
みんなで写真を撮りまくるんですよ。
そうすると、無意識にやっちゃっていること、
っていうのが見つかるんです。
例えば傘はこう立てるとか、
靴はこういうふうに脱いでるとか、
むき出しになったパイプに雑巾をかけているとか。
その写真を撮るときには気づかなかったことがあって、
でも「いい写真が撮れたね」と言うと、
子どもは「ハッ!」とするわけです。
その時初めてわかる。
- 伊藤
- 子どもたちは余すことなく撮れてるんですか、写真を。
- 深澤
- もちろん全部がそうじゃないですよ。
でもたまたま撮った子がいたら、
全員にそれが分かるから。
「そう、みんな、これ、やっちゃうよね!」
みたいなことを言うと、
「おお、そうだね~!」みたいな。
そして、じゃあ、それを使って
デザインしようっていうのが2日目。
- 伊藤
- わあ!
- 深澤
- たとえば、傘が自立できるように、
傘の先をうんと太くしたいという子がいました。
普通は傘は倒れるもんでしょってとこから始まっちゃうし、
傘立てを作るんだったら筒形のもの作りましょう、
みたいなところから入っちゃうのがデザインだけど、
その子は、自分で自立する傘を作ろうって、
考えたこと自体が、フレッシュなんですよ。
だから「すごい!」と思いました。
僕ら大人からすると。
- 伊藤
- その授業、すばらしいですね。
その子どもたち。いいな。
- 深澤
- ある子は自分の家で、鍵を置く場所が玄関なんです。
そこに何があったらいいかな?
みたいなことを聞いていくと、
その子は鍵が誰かに見つかって盗まれても困るから、
それを隠す場所のデザインをしたいって言って。
そこから若干誘導はするんです。
「鍵を、何の中に隠すかな?
キーホルダーがどんな形だったら盗まれにくいかな?」
みたいなことを。
そうすると、「あ、植木鉢!」と言うんですよ。
そして、葉っぱのような形をしたキーホルダーを作る。
完璧じゃないからまだ目立ってはいるんだけれど、
「結構いいじゃん!」と。
もう、二人とも、超うれしかったですよ。フフフ。
- 伊藤
- 子どものそういう感覚って!
- 深澤
- 子どもも大人も、今言ったことは同じで、
そういうことをたどっていくと、
そのたどった先に必ず正解がある。
そういうことを探し当てることが
デザインをすることだと思います。
だからその、行為に相即(そうそく)するっていう、
相即って非常に難しい言葉ですけど、
行為に寄り添って溶けていくっていうものを作るっていう。
- 伊藤
- ええ。
- 深澤
- 例えば、エレベータのボタン、
何階がどの位置にあるか、覚えてる人なんていやしない。
無意識の中で使ってるから。
でも、探さずに、自然に押せるってことが
いいデザインであって、
格好いいねとかそういうことじゃないんですよ。
実はそういうことって無意識の中にあって、
エレベータに乗る人は視線が真ん中から上、とか、
二人だった場合は必ず壁側に寄るとか、
そういう力が働いているんです。
- 伊藤
- こういうふうにお話をしている時にも、
それぞれの「心地いい形」がありますよね。
- 深澤
- そういうことです。
いま、すこし離れて座っているけれど、
「そうじゃありませんか?」って、
ソファに手をついて、伊藤さんのほうに
ぐいっと身を乗りだしたら、
急に親しくなった印象が生まれますよね。
- 伊藤
- ほんと、そうですね。
- 深澤
- そういうことで世界は出来上がっている。
そんなふうに全部がインテグレート
(複数のものが一体となって機能するように組み込む)
された世界を、どうやって作るか。
そういうことが好きで、いつも考えているんです。
- 伊藤
- 子どもにデザインをさせる、
ということとも、きっと、違うんですよね。
- 深澤
- 子どもにはデザインはできないんですよ。
あまりにも素直すぎるから。
だから子どもの頃からデザインの教育をしましょう、
っていうんではなくて、
子どもにはとにかく「いいこと」を体験させるべきです。
- 伊藤
- 知り合いに著名な建築家がお父さまという女性がいて、
彼女がちっちゃいとき、
「このアニメのキャラクターの靴が欲しい」と言うと、
「それはデザインがちょっと」と、
何かにつけてご両親からダメだと言われたんだそうです。
大人になってからは、親が言っていた
「いいデザイン」とはこういうことか、
と理解はできたのだけれど、
子供心にはすごく嫌で、ある日爆発して、
「デザイン、大っ嫌い!」と言ったんですって。
- 深澤
- うちの娘も、小学校に上がるのにランドセルを買うとき、
彼女は赤や青を欲しがったのだけれど、
僕はえんじの、ちょっと大人が格好いいと思う
ブランドものを買ったんです。
そしたらすっごい泣かれて。
「絶対、それは嫌だったのに、それにしろって言った!」
と、ずっと後まで言われました。
今では笑い話になっていますけれどね。
彼女も、途中からスタンダードが変わって、
デザイナーになるって言い始めたのが16歳くらいかな。
そこから周りの生活を見渡すようになったら、
自分の住んでいる家がいかにきれいか、
やっとわかったって。ハハハ。
- 伊藤
- いろんなお友達のうちに行って、
理解が生まれるんですよね。
- 深澤
- 今は、僕よりうるさいですよ。細かいところ。
- 伊藤
- そっか、いかに「いいもの」を体験させるか。
- 深澤
- 無意識に「いい」と感じているものを
感じさせてあげるか、ってことですね。
- 伊藤
- これいいでしょって押し付けるんじゃなくて、
結果的に、あ、これ感じがよかったっていうこと。
- 深澤
- 何でも高級なものがいいとか、
なんでもデザインのいいものを教え、
体験させよ、ってことではなくて、
それはその場にあった適正な調和を生み出しているか、
それがいいものだ、と考えることが重要です。
そういう場を作ってあげるのがいいと思います。
- 伊藤
- なるほど。
- 深澤
- ちょっと生意気な話になっちゃった。
- 伊藤
- いえいえ、とんでもないです。
深澤さん、いろいろ、まだまだ、
大忙しじゃないですか!
- 深澤
- 大忙し‥‥ですね。
- 伊藤
- わたしにとって深澤さんはちょっと先を
行ってくださっている先輩です。
深澤さんが杖をデザインなさったら、
私、買いますね。
ほんとうに、ありがとうございました。
楽しかったです。
- 深澤
- 今日は静かにして、
ペラペラしゃべらないようにって思ってたのになぁ。
- 伊藤
- いえいえ、しゃべっていただいた方がいいです。
ありがとうございました。
- 深澤
- コロナ禍が落ち着いたら、
ぜひ、あらためて遊びに来てください。
- 伊藤
- あら! わたし、料理をつくりますよ!
- 深澤
- いいですね。飲みましょう、その時は。
わたしのおはし
「終の住み処」って何だろう。
- 伊藤
- わたしは、ずっと、家にわいわい人を招いて
ご飯を食べていたんですけど、
コロナ禍の2年間、それが全然なくなり、
それに馴れてきたら「あれ、結構いいかも?」と思って。
もちろん大勢のお客さまも楽しいんですけど、
集まるのはぜんぶで4人くらいでいいかな、と思って。
- 深澤
- そうそう、仕事の仲間の人数も
だんだん決まってきます。
最初はたくさんだったのが、
この空間にいい人数っていうのが決まってきますね。
- 伊藤
- 将来、もし家を作れるとしたら、
ダイニングテーブルはいらないんじゃないかとすら。
- 深澤
- それはありますね。
逆にダイニングテーブルにいる可能性が高いから、
ソファーはいらないっていう人もいます。
最近は、キッチン食べがいいというのが
コロナ禍で勉強したことで、
わざわざ食卓まで運ばずに、
キッチンで作りながら飲んじゃうみたいな。
- 伊藤
- 調理台の延長線で、
立てるところがあればいいんじゃないかなとか。
- 深澤
- 自分一人でも、誰かがいても、
そのくらいで始まったほうがいいですよね。
- 伊藤
- だから、きちんとした形じゃなくて、
みんなもっとわがままに暮らせばいいのになと。
コロナ禍って、自分にはこれが必要、これは不要、
と分けて考えるきっかけになったのかなって思いました。
- 深澤
- そう思いますよ、すごく気づきがあったと思う。
- 伊藤
- 友人が中古マンションを買おうと探したら、
不動産屋さんがリフォームしたものばかりなんですって。
しかもそれがどこも同じ印象だったと。
スケルトンで販売してくれれば自分でつくるのに、
と言ったら、あなたのような人はいません、
皆さん何を選んでいいか分からないから、
これがいいでしょう、というものを
用意しているんですよと。
それが、どうにも、つまらないんですって。
- 深澤
- どんな高級マンションでも、安いマンションでも、
内装の建材は同じですよ。
場所がいいとか、高そうに見せるフェイクなだけで。
- 伊藤
- 深澤さんが以前住まわれていたマンションは
一回すべて壊してつくられたんですか。
- 深澤
- 全部壊しました。
すごい顰蹙(ひんしゅく)を買いますね。
それに、入れたい家具を入れる動線がないので、
窓から入れるのにクレーンが必要になるし、
そのために交通整理の人も必要になるから、
リフォームの費用がどんどん上がります。
とくに昔のマンションは窓が低いので、
さらに梁が出ていたりしますし。
それを逆手にとってスケルトンにして直接ペンキを塗って、
雑っぽく暮らしている格好いい人もいますね。
でも、ちゃんとやりたいなって思うと、
かなり難しいです。限界がある。
僕はリフォーム前提だったら
壁構造のマンションを探します。
ラーメン構造(長方形に組んだ床・柱・梁の骨組で
建物を支える構造)だと梁が出るので、
置きたい家具が置けないし。
壁と天井の角が見えないと部屋がカッコ悪い。
- 伊藤
- わたしは、これだけ住むことについて興味があるのに、
「家」となると、「終の住み処」(ついのすみか)
っていう考えがなくて。
いつが「終い」なのかがまだよくわかっていない。
もちろん欲しいんですけど、
- 深澤
- そうですか。
- 伊藤
- 子どもがちっちゃいときと、
22歳になった今では環境が違いますよね。
いずれ彼女も家を出る。
すると子ども部屋はいらなくなる。
結局、一人で快適な場所、
それが終の住み処なのかな‥‥と。
- 深澤
- 僕はこのアトリエを
終の住み処として思い入れがあって作りました。
でも、使い始めたら「まだ終の住み処じゃないな」って
思ったりもしますが‥‥。でもやっぱりそうかな。
- 伊藤
- もっとやりたいことがあるんですか。
- 深澤
- これは‥‥多分「ほぼ日」でしか
言わないことかもしれないんですけど。
- 伊藤
- 話してくださるんですか。
- 深澤
- ちょこっとだけ話すと、
例えば自分の父や母が亡くなるじゃないですか。
そうすると今のマンションではお葬式ができません。
僕は昔から田舎に住んでいたから、
葬式は家であげるものでした。
でも、最近、みんな、
そういうことができなくなっちゃってる。
お通夜でもその人の家に行くことが出来ない。
でも、その人を偲ぶっていうことは、
そこまで近寄れるっていうことだから、
家っていうのはそういうものかなって
思ったんですよ。
- 伊藤
- はい。
- 深澤
- こんなこと本当に、ここだけで言いますね。
全体をL字にしているのは、
僕の最期にみんな会いに来てくれるかななんて。
訪ねて来てくれやすいかたち。
そんなことまで考えて、っていうのは
ちょっと変かな、
そうするかどうかも分からないけど、今は。
でも、例えば寝室に寝ている自分が、
リビングにいる人からちらっと見えるっていうのも、
最期までみんなといたいななんて思ったんですよ。
- 伊藤
- 家に、最期までいたいと。
すごいです。
そのときの姿を具体的に想像するんですか。
- 深澤
- いや、まぁ‥‥、
ただ、みんなが、故人の家に集まって、
「あの人、こうだったよね」とか言っている、
そんな風景って、なくなっちゃってるじゃないですか。
斎場とか、セレモニーホールですからね。
- 伊藤
- はい。
うちの父が亡くなったときは、家に連れて帰ってきて、
本当に仲のいい人だけでみんなでシャンパンを飲んで
思い出話をして見送りました。
- 深澤
- いいですよね、そういう感じです。
それが欲しいです。
それが僕にとっては終の住み処かな。
一番、時間を一緒に過ごしてるのは、
下にいるみんなとか娘で、
うちのみんなはすごく優秀に育ってくれて、
もう長いんですよ、途中でやめないんです。
考えてみると、彼らと、
生活の長い時間をシェアしてるでしょ。
彼らと生活を共にする場として、
そして大切な人が集まりやすい場として。
そういうことも考えます。
- 伊藤
- わたしは死んだらすぐに、
病院から火葬場に送ってもらい
灰にして撒いてもらえばいいやって思っていました。
- 深澤
- そう思いますか。
僕も今の考えが変わるかもしれない。
ここを作るときにはそう思ったけど、
将来どう変わるかは分からないですから。
でも、そういうことよりも、
斎場という仮設の場所があることに対しての
違和感ですね。
- 伊藤
- あんなところで、って思う気持ちは同じです。
- 深澤
- きっとみんなその感覚を持っていると思うんですよ。
- 伊藤
- あんなところに行きたくない。
その違和感で言うと、
父が亡くなりましたっていうとき、
葬儀屋さんがすぐにやって来て、
ここのお寺で、とか言うんですね。
みんなは父の死に呆然としているんですよ。
それでそのまま「はい、はい」と言ったら、
三姉妹の長女が、ハッ、て。
「パパ、全然信心深くないのに、
そんな知らないお寺でお葬式? いいの?」
それでみんなもハッとなったんです。
それは姉が感じた違和感ですよね。
- 深澤
- メニューが決まってるんですよね。
- 伊藤
- そうなんです。
- 深澤
- 家を作るとき、終の住み処っていうんだったら、
少なくともそのくらいのことは考えて
建てなきゃな、って思うんですよ。
- 伊藤
- 本当に「終の、終」ですね。
そんなことまで考えたこともなかった!
- 深澤
- そもそもの発想は、家をそうしたい、というよりも、
最近出来た斎場やセレモニーホールに
僕は行きたくないって思ったことですけれど。
あの違和感の塊の中で、
なんで最後に型にハマっちゃうかな、と思って、
それがちょっと嫌だった。
- 伊藤
- その「終」に行くまでに「老い」っていうものがある。
例えば手すりとか、杖とか、
そういうもののデザインの必要が、
新たに増えるかもしれないですね。
- 深澤
- そうですね、増えますね。
デザインをしていきたいなと思いますよ。
年を重ねると、デザインの感覚も変わってくるし。
地下のスタジオにあったサンプルの椅子は
背中があたるところがちょっと飛び出していましたよね。
年取ってくればくるほど、
そういうファンクションが重要だったりするんです。
- 伊藤
- 椅子から立ち上がるとき
「よっこいしょ」なんて手をつきたくなったり。
- 深澤
- そんなの若いときは分からないじゃないですか。
でも段々分かるようになってくる。
自分も年を取って、やだな、
とか思ったりもするんですけど、
意外と、その視点は重要だと。
- 伊藤
- 最近、機能的で、1台何役もできるフライパンを、
料理家の方からいただいたんです。
わたしはずっと重い鉄製のものを使っていたんですが、
その機能的なフライパンの軽さに驚いて、
自分が老いていくと、これが必要になるって感じました。
きっと、大好きな琺瑯鍋も、重く感じる日が来るんだって。
それを考えると、欲しいものは買った、という満足も、
次に必要な新しいものに置き換えられていくんだなって。
- 深澤
- そういうこと、いっぱいありますよね。
杖はいつもデザインしてみたいなと思うんですが、
まだそこの身に自分がなってないから、
必要としている人に質問して作らなきゃいけない。
そうじゃなくて自分が「こうあったら」を理解してから
デザインすればいいかなと。
- 伊藤
- 年を取るとガスの青い炎が見えづらくなると聞いて、
ショック。
だからIHがいいんだな、とか。
- 深澤
- そんなふうに経験で分かるっていうことがあるので、
これからデザインするものはなくならないと思うんですよ。
働き盛りで健康でピークな時が
一番いいものをデザインするっていうふうに
思っちゃうんですけど、そうじゃないんですよね。
その年齢に対して、まだまだやれることって
いっぱいあると思うから。
葬式の話で何ですけれど、
セレモニーホールのデザインの依頼が来たら
どうするかみたいなことを考えたりも(笑)。
- 伊藤
- スウェーデンに、「スコーグスシュルコゴーデン」
(Skogskyrkogården=森の墓地)という
有名な共同墓地がありますよね。
- 深澤
- 僕、行きました、雪の日に。
- 伊藤
- 眠るんならここがいいって思ったんですが、
あそこの墓地に入るには、
ストックホルム市民にならないといけないんですって。
- 深澤
- 来た人が暖をとる
すごく小さな小屋があるのを御存じですか?
素敵ですよ。石でできてるんです。
- 伊藤
- えっ、知らなかったです!
あそこ、建築家のアスプルンドが
設計に参加しているんですよね。
- 深澤
- アスプルンドはいいですよね。
- 伊藤
- 深澤さんのデザインする
セレモニーホールや
老人ホームも見てみたいな。
- 深澤
- ハハハ。
自分がそうなってきたとき、
見渡したら「え、こんな?」っていうのが多すぎるから、
結構、怖いですよね。
ピンク色の偽物の革の長椅子に座ってご飯食べるのかぁ、
みたいな。
- 伊藤
- プラスチックの食器は味気ないだろうな、とか。
もっと普通の食器使えばいいのにっていったら、
重いんですって、
プラスチックがいいのは扱いやすいだけじゃなくて、
軽さもある。
- 深澤
- ところがね、やればできるんです、それも。
- 伊藤
- そっか、飛行機の機内食のトレイなんて、
ちゃんと、かわいいものがありますよね。
- 深澤
- メラミン樹脂でできているものですね。
そういう施設とかって「定番」になっちゃうんですよ。
施設に入るにしても、
それまでにいいなと思っていた暮らしができなくなるのは、
人間の生き方としてちょっと違うんじゃないかなって。
- 伊藤
- 深澤さん、行かれたら、
「僕はこの手すりが嫌だから掴まない!」
なんておっしゃるんじゃないかしら。
- 深澤
- 雰囲気が、どうにも。
- 伊藤
- ああ、なるほど、雰囲気が。
- 深澤
- 文化レベルとして、
共用施設とか共用部分を、
デザイナーも、国も、地域も、
なぜ真剣に手がけないのだろうかと、
それが今の僕の一番の違和感です。
だから最近はエレベータのデザインとか
エスカレータのデザインとか、
そういうもの積極的にやりたいと思ってるんです。
そういうもののデザインを良くしていくと、
みんなは通り過ぎていくかもしれないけれど、
「なんとなくいい感じ」は得る。
その「いいんじゃない?」で十分なんですよ。
- 伊藤
- デザインが解決できることって、
きっといっぱいあるんですね。
- 深澤
- あるんですけど、
自分も65歳で下降線もひかれてるから、
だんだん生活レベルが落ちてくるんですよ。
そんななかで、デザインがされないのは、
ちょっとないんじゃないの、みたいな。
- 伊藤
- みんなそうなっていくんですもんね。
- 深澤
- みんなそうなっちゃうんだけど、
病院に入って、自分では何も決められない状態で、
イチゴ柄のパジャマを着るんですよ。
- 伊藤
- なるほど、貸し出すパジャマにだって
デザインが必要ですね。
- 深澤
- 必要ですよ。いいホテルは、
パジャマもいいし、バスローブもある。
快適ですよね。
‥‥って、こんな話になるとは思わなかった、
すみません。
- 伊藤
- いや、とても面白いです。
- 深澤
- 大丈夫でした?
- 伊藤
- はい!