8/6(木)から渋谷パルコ「ほぼ日曜日」で開催される
「weeksdays」初の展覧会「まさこ百景」。
その会場構成のためのイラストレーションと、
オリジナルグッズであるトートバッグの絵を、
イラストレーターの勝山八千代さんにお願いしました。
「ほぼ日」初登場となる勝山さんのこと、
いろいろ、ご紹介します!

勝山八千代さんのプロフィール

勝山八千代 かつやま・やちよ

アーティスト/イラストレーター。
1986年静岡市生まれ。
白と黒で、道具や、“笑わない人物”を
モチーフとした作品を描く。
主な仕事に広告、商品パッケージや
アパレルへのイラストレーションの提供、
書籍・雑誌の挿絵を手掛けるほか、
各地で個展・グループ展を行なっている。

■勝山さんのウェブサイト
■勝山さんのInstagram

全1回
勝山八千代さんインタビュー

──
勝山さんのことは、
伊藤まさこさんが教えてくださったんです。
気になっている方がいる、と。
Instagramを見ていたら、
石に絵を描いているのを見て、
とても素敵なんですよって。
それで、展覧会を開くにあたって、
会場構成のためのピクトグラムみたいな
イラストレーションがほしいねという話や、
オリジナルグッズをつくりたいという話のなかで、
ぜひ勝山さんにお願いしよう、となりました。
勝山
ありがとうございます。とても光栄です。
──
グッズは、イラストレーションをプリントした
トートバッグにしようと決まって、
そこに描くアイテムを何にするか、
ということころから相談しましたね。
100枚の写真を見ていただき、
勝山さんにお渡しして、
描きたいものを5種類、
選んでいただきました。
勝山
描きやすいものがいいなということ、
そして形がかわいいものがいいなぁ、
と考えて選びました。
あとは、すぐにあのブランド、
とわかるようなものじゃないこと。
「よくあるような形のもの」ですね。
──
なるほど。
それで、やかん、ブラシ、
スニーカー、ランプ、ミトン。
──
ひとつの絵を、時間をかけて
描くっておっしゃってましたよね。
勝山
描けちゃう時はすんなり描けるんですけど、
描けない時は全然描けなくて。
最初から絵のイメージが
しっくり決まらない時もありますし。
──
どんなふうに描いているんでしょう。
スミ(黒)一色ですよね。
勝山
じつは2色なんです。
最初にアクリル絵の具の黒で
ベタの分を塗り、
線の部分を白で描いていくんです。
──
版画みたいなイメージなんですね。
普通の絵筆で?
勝山
絵筆です。でも細い線は、
一番細い筆を買ってきて、
さらに半分くらいに
毛を切って使っています。
イラストとして文字を描くときなどは、
そうしていますね。
──
さきほど、描きはじめられない時がある、
という話でしたけれど、
逆に、なにをもって完成と
なさっているんでしょう。
‥‥「ピンとくる」とか‥‥。
勝山
そうですね、「ピンとくる」感じは
あると思います。
それまでは、ひとつの絵を、
ずっとこねくり回してる感じですね。
「違う」と思って、消したり、描き足したり、
また消して直したりを、ひたすら。
だから1日かけても1枚が描き終わらないことも。
描けちゃうときはサラッと描けるんですけれど。
──
そういう意味で、今回はいかがでしたか。
時間がかかった絵はありました?
勝山
やっぱりスニーカーですね。
あと、ペンダントライトもちょっと。
──
例えばこのランプのコードの
S字の具合とか、
「これだ!」という瞬間があったんだな、
って想像ができます。
きっとそこに行き着くまでの
試行錯誤があるんでしょうね。
勝山さんは、わりと最初から
こういう画風だったんですか。
勝山
‥‥、いや、そんなことはないです。
あるとき、頼まれて描いたなかに、
いまのような黒いベタの絵があったんですね。
2012年頃だったと思います。
それを、自分であらためて、
迫力があっておもしろいんじゃないかと思って、
そこからこのスタイルが増えていきました。
もともと、ずっと趣味で描いてたんですよ。
美術教育みたいなものは受けてなくて、
先生についていたわけでもなく、
ただ好きで絵を描いていて。
それを周りの人たちがおもしろがって
「もっといっぱい描けばいい」って言ってくれたんです。
──
ということは、描いた絵を、
周りの人に見てもらう機会があったんですね。
勝山
‥‥それが、そもそもは
「盛大な勘違い」という話なんです。
──
盛大な勘違い?!
勝山
私、描くのも好きですが、
見るのも大好きだったんです。
それで、『ビューティフル・ルーザーズ』っていう
映画があるんですけど、それを見て、
「自分でも描ける! 発表できる!」と、
そういう盛大な勘違いをしたんですね。
好きなアーティストでいうと、
マーガレット・キルガレン(Margaret Kilgallen)や
バリー・マッギー(Barry McGee)に憧れ、
私も絵を描くのが好きだし、
映画のような感じで
もっとみんなに発表していけばいいんだ、って。
──
映画『ビューティフル・ルーザーズ』がきっかけで!
勝山
そうなんです。
それで発表をしてみたら、
周りの人たちが優しい人ばっかりで、
個展に来てくれて‥‥。
──
それが、そのうち、描いてって
頼まれるようになった?
勝山
はい、最初は知り合いのお店の方から頼まれた
「コーヒーを飲む人の絵」だったかな。
そのうち、ちゃんとした仕事の形に
なることが増えてきて、
2018年に独立をしました。
だからまだプロとしてのキャリアは浅いんですが、
いまは画業でやっていこう! 
という気持ちでいます。
──
ほんとに子どもの時から
描くのが好きだった、っていう感じがします。
勝山
絵を描くのはすごく好きでした。
それくらいしか得意なことなかったかも。
でも美大に行くほど上手でもないと思っていました。
だからずっと「趣味として、楽しければいい」
と思っていたんですよ。
──
そうだったんですね。
今回は私たちからのリクエストで
イラストのなかに「weeksdays」という文字を
入れていただきましたね。
勝山
文字を描くの、好きです。
かなり精魂込めてます。
──
ご自身の作品に入れる言葉を
選ぶ時は、なにか理由があるんですか。
勝山
いえいえ、気の利いたことは、
なにも描いてないはずですよ。
ポットだったらポット、
ブラシだったらブラシぐらいしか。
セリフっぽいものは、
たまたま読んだ本から触発されるとか、
知ってる英単語を描いただけとか、
そんな感じです。意味はなくって。
──
Instagramで、本に見立てたような、
背表紙にタイトルを描いているような
作品がありましたね。
勝山
あれはすべて、都市の名前なんです。
昨冬に作った作品で、
まだちゃんと発表していないものなんですが、
3㎝ぐらいの木片を
ホームセンターで100個ぐらい切ってもらい、
描いて並べて、本の背表紙みたいにしているんです。
──
イラストレーションのお仕事とは別の、
アートとしての活動なんですね。
それでさっきちょっと話に出てきた「石」なんですが。
伊藤まさこさんも、いいなって思ったという。
これもアートですよね。
勝山
石、好きです。
あれは石に直接
アクリル絵の具で描いています。
黒に白を描くのと同じ手法で、
石の地の色に合わせて、
ちょっとベージュとか、グレーっぽい絵の具を使って。
──
伊藤さんは、拾ってきたかわいい形の石を
部屋に並べておくのが好きだというので、
すごく気持ちが通じるかもって。
勝山
わかります(笑)。
──
いま、個展も開催しづらいでしょうが、
いつかほんものを見られるのを待ってます。
こうして伺っていると、
勝山さんはイラストレーターよりも
アーティストに近いかたなのかなって思いました。
近々、なにかおしらせはありますか。
勝山
たしかにコロナの影響もあって、
なかなか展示の予定が立てにくいんですが、
毎年、カレンダーを出していて。
2021版年も出す予定なので、
その原画をどこかで飾りたいなと思ってます。
──
たのしみにしています。
勝山さん、ありがとうございました!
(おわります)
2020-08-07-FRI