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ほぼ日刊イトイ新聞

2021-04-14

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・ぼくはあんまりクルマに興味ない、と言っている。
 それは、うそじゃないつもりなのだけれど、
 クルマについて考えている時間もけっこう多いのは、
 ひょっとしたら、興味があるのかもしれない。

 いま、あらためて思っているのは、
 世界的な「SUV(Sport Utility Vehicle)」の流行のこと。
 都会の舗装道路での乗り心地も悪くなくて、
 いざとなったら自然の山道や雪のなかに入っていける。
 キャンプやら山の釣りなんかに使いやすいし、
 どこにも出かけなくても街でふつうに走っていられる。
 SUVがこんなに普及する前には、
 自然に乗り出すというとRV(Recreational Vehicle)が、
 なによりの選択肢だった。
 盛んに釣りに出かけていた時代には、ぼくも、
 ごつくて大きな四輪駆動のクルマに乗っていた。
 ふつうの乗用車で釣りに出かけて、
 車高が低くてお腹をこすっちゃうという経験もしたから、
 RV車に乗り換えるのも、自然な成り行きだった。
 ただ、釣りをすることができなくなると、
 でかくて燃費もよくないRVはやめることになった。

 そして、いまは、流行に乗っていると言われても、
 SUVに乗って機嫌よく東京都内を走っているのである。
 どこか山道を走るような機会は、まず、ない。
 雪が降ったり積もったりしたら、おそらく運転しない。
 だったら、アウトドアに都合のいいクルマに乗る
 という意味はまったくないのではないか? 
 ふっふっふ、それがね‥‥説明しよう、知性の人よ。
 「そうです。ないんでーす」なのである。
 自然の中に入って行くことはないのだが、
 いつでも「行けば行ける」というだけのことなのだ。
 都会と自然は、地続きにつながっているという感覚、
 その気持だけがほしくて、SUVに乗っているのである。
 昔よくからかわれていた「陸サーファー」みたいなもの。
 本気出したら山でも海でも行けるという「気分」。
 たぶん、SUVの流行とは、その気分の流行なのである。
 クルマというのは、服よりも外側のファッションなので、
 「わたしの好きな気分」を表現する人たちが、
 そういう気分をたのしんでいるということなのである。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
たぶん、それほど自然が「ごちそう」になったんだろうな。


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