うれしかったことも、
なにげないできごとも、
この1冊につまっています。
2010.03.11
ほぼにちわ、です。

昨日の手帳クラブをご覧になったみなさんから、
「卒業おめでとう」のメッセージとともに、
あたたかい感想をたくさんいただきました。

「みんなの笑顔が素敵で涙がでそうでした」
「3年8組のみんな、がんばれ! わたしもがんばる!」

自分の高校生活を思い出したり、
遠く離れた友だちのことを思い出したり、
みんなの笑顔になぜかほろりときてしまった、
というかたが多かったようです。
かくいうわたしも、同様でした。

さて、1冊のカズンをクラスの交換日記として
1年間使ってきた3年8組のみんなは
カズンにどんなことを書いていたのでしょう。

ワイワイガヤガヤとにぎやかに
たのしいひとときを過ごした後、
担任の大迫由香先生に、
カズンを見せていただきながら、
あらためてお話をうかがいました。

3年8組、高校生活最後の夏。

ーー とっても元気いっぱいのクラスですね!
昨年の夏にうかがったときから
さらにパワーアップしている気がしました。
大迫 きょうのほうが日常なんです(笑)。
夏のときは緊張していたみたいで
いつもよりずいぶんおとなしかったんですよ。



ーー 旅立ちのお祝いにと思って
プレゼントした「ほぼ日手帳」を、
みんなが喜んでくれて
ほんとうにうれしかったです。
もう、あちこちで
さっそく書きはじめてくれていて!
大迫 取材していただいた記事が載っている
『公式ガイドブック2010』を
教室に置いているんですけど、
じつは、それを見ながらみんな、
ほしい、ほしいって言ってたんですよ。
ーー そうでしたかー。うれしいです。

前回うかがったときには、
クラスの交換日記をはじめて
2カ月くらいが経ったころでしたが、
さきほど教室でその後のページを
見せていただいたところ、
使いかたも変わってきてるかな、と。
たとえばこれ、新聞の貼り込みが。



大迫 ああ、新聞記事を貼ることを覚えました(笑)。
ーー そう、前に見せていただいたときは、
「貼る」という使いかたはしてなかったんです。
これは、なにかきっかけがあったんですか?
大迫 このころが部活動の全国大会のピークで、
新聞などでも取り上げていただく機会が
増えはじめた時期なんです。
ーー ああ、そうでした。
夏に見せていただいたときにも
「全国大会まであと30日!」とか、
カウントダウンがはじまってました。
女子と男子のサッカー部、
ソフトボール、野球と、クラスの半数以上が
運動部に在籍しているんでしたね。
大迫 はい。それで、
「そうだ、ここに記事を貼っておけば
 ずっと残しておける」と気がついて(笑)。



ーー なるほど。で、マーカーを引いてあるのが
3年8組の生徒さんの名前。



大迫 はい。いつのまにかそこにまた、
誰かが書き込みを加わえていたりするんですよ。
ーー 9月になると‥‥
「白紙が目立ちます」って先生がなげいてます(笑)。
白いページがでてきたのも、夏以降では?



大迫 そうですね。
2学期に入って、
それぞれ自分の進路のことで
本格的に忙しくなったんです。
受験や就職の面接がはじまったり。
ーー そうか、真剣ですよね。
でも、この9月の白いページも
高3の忙しかった日々の証ですね。
で、そういう先生の書き込みを読んで
すぐに書き込むというわけでもなく(笑)。
大迫 でも、ぼちぼちまた増えてきて。
ーー 10月は、またいっぱい書かれてますね。

秋から冬‥‥そして旅立ちの日へ。

大迫 そういえばこのころ、
未来の自分に手紙を書いた子がいるんです。
ーー へええー。あ、ここですね。
「20歳の今ごろの私へ」



タイムカプセルみたいですね。
20歳の今ごろっていうと‥‥2年後。
ふむふむ、友だちへのメッセージあり‥‥
で、結びが
「では、今日の私は今日を頑張りたいと思います。」
いいこと言いいますねー。
大迫 (笑)
ーー そして、同じページに、
「新型インフルエンザ発生!」です。
これは、たいへんだ。



大迫 このときは新型インフルエンザが流行って、
学校に来れる子の人数がどんどん減ってしまって。
ーー 「女子だけでエンフェス準備がんばろう♪」
この「エンフェス」というのは?
大迫 「エンジェルフェステイバル」っていう、
高校最後の学校行事だったんです。
クラスごとに模擬店を出すことになっていて、
うちはチーズケーキを販売する予定だったんですが、
出て来れる子がクラスの3分の1くらいになってしまって。
結局、用意していたチーズケーキは別のクラスに託して
うちのクラスは急遽、
とうもろこしを焼いて販売することになったんです。



ーー 「なぜ?? WHY??」
訳すと
「なぜ、チーズケーキがとうもろこしになったのか?」
残念な気持ちがにじみでてます(笑)。
大迫 参加できる人数が少なくて、
2年生といっしょに、とうもろこしを販売したんです。
3年間でいちばん寂しい
エンジェルフェスティバルになったんですけど、
みんなに支えられました。
で、来れない子の分もがんばったり、
お休みの子たちも気にしてメールをくれたり、
それぞれにクラスの友だちを思う様子が
うれしかったです。



ーー 一方で、このあたりから、
「だるかったー」みたいなつぶやきもちらほらと(笑)。
でもね、そうでした、自分のことを思い出せば。
高校生の本音だと思います。
先生はうれしくないかもしれないですけど(笑)。
大迫 複雑です(笑)。
ーー そして、このページ。
さきほども見せていただきましたが、最高ですね。



大迫 全国高校サッカー選手権大会の県大会を前に、
女子サッカー部の子たちが
男子サッカー部3年生全員の似顔絵を描いたんです。
ーー 「国立連れてって!」というメッセージが。



大迫 全国大会の準決勝から、
国立競技場での試合になるので。
ーー で、全校応援があったり、
メンバー予想があったりしながら
サッカー部は着実に勝利を重ねて
男子サッカー部は県大会でみごと優勝。
「合格おめでとう」のメッセージも
ぞくぞく増えていって‥‥。

ん? 「ばくろ」?



大迫 このときにわたし、みんなに告白を(笑)。



ーー おおー。
ご結婚されることをクラスのみんなに。
あらためて、おめでとうございます!
生徒さんたちの祝福を受けて、
大迫先生は、「鍵山先生」になられて。
大迫 「結婚するときは、かならず教えてね」って
言われていて、まっ先にみんなに報告するから、って
約束していたんです。
まだ内緒にしててね、って言ったら
みんなちゃんと約束を守ってくれて。
でも「お母さんにだけ話していい?」って(笑)。
ーー かわいい(笑)。
で、「お母さんには言っていいよ」って?
大迫 はい(笑)。
ーー そして‥‥この日は?



大迫 これは、学校にトランプを持ってきた子がいて
そのトランプをわたしが取り上げて。
ーー なるほど、その攻防を
ゲームっぽく書いてあるんですね。
下のほうの「Salviaが全部ぬかれた日」という
書き込みは‥‥?



大迫 ふだんあまり書いてなかった子なんですけど、
お花係で、大事にサルビアを育ててたんです。
それが、植え替えのために
サルビアが全部抜かれてしまった日ですね。
ーー ああー、言葉少なく。
そのなかにいろいろな思いが込められてそうですね。
大迫 そうですね。
ーー そうして、2009年も
じょじょに終わりに近づいて‥‥
暮れもおしせまったころ、
全国高校サッカー選手権大会の、
全国大会が幕を開けました。
鹿児島県代表として出場した
神村学園男子サッカー部の一戦目が、
年が開けた1月2日。
大迫 はい、新年はサッカーではじまりました。



ーー わたしたちも、神村学園が
「全国ベスト8」になったというニュースを
拝見していました。すごいです。
あらためて、おめでとうございます!
大迫 もう、男子も女子も、
みんなほんとよくがんばったね、って。

で、最後の試合、負けた日は、
真っ白なんです。
ーー ああー、書けなかったんですねえ。
大迫 そうなんでしょうねえ。
ーー そして、日常に戻って‥‥
1月13日、鹿児島に4年振りの積雪。



大迫 路面が凍って電車も動かなくて、
臨時休校になったんですが、
うちのクラスは、
お約束のように雪合戦です(笑)。

気がつけば、もう‥‥
残りのページもこんなに薄くなってしまって。
ーー 登校日も少なくなっていくでしょうし、
ここからはみんな、
それぞれ自分の手帳に書いていくのかもしれませんね。
大迫 そう、みんなすっかり夢中でしたからね。



ーー で、そこには「3-8」の仲間の
誕生日が書かれている。
男の子も女の子も、さっそく
クラスメートの誕生日を書いてましたもんね。
いちばん最初に書き込んだのが
友だちの誕生日って、いいなぁー。
大迫 ほんとに。
ーー 女の子はけっこう書くのが好きかな、って
想像できたんですけど、
男の子もずいぶん書いてますよね?
大迫 ええ、逆に、
男子のほうが書いていたかもしれないですね。
ーー 卒業式は、3月2日。
それからは先生が保管して、
同窓会に持っていくと約束をしていると
うかがっています。
大迫 はい。
ーー 先生がこれを持っていてくれると思うと、
ずっとみんなとつながっている気がしそうですね。

こうして1冊のカズンを
クラスみんなで1年間使ってきて、
いかがでしたか?
大迫 そうですね、この1年の間のことでも、
こんなことがあったなぁって、
忘れかけてたようなことを
見返して思い出したりしますから、
やっぱり書いていてよかったと実感してます。




卒業式を過ぎ、3年8組のみんなも、
これからの新しい生活に向けて、
それぞれの場所に旅立っていきました。

忘れてしまいそうなささやかな出来事も、
思い出に残していきたい、
一日一日を大切に過ごしてほしい。
大迫先生がそんな思いを込めて用意した
3年8組のカズン。
一度しかない高校3年の思い出がいっぱい詰まった
みんなの宝物となりました。

これからは、ひとりひとりの新しい手帳に、
さまざまなことが刻まれていくことでしょう。
みんなは、もうその一歩を踏み出しています。

(つづきます!)