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はじめまして。
今日は、どうもありがとうございます! |
鈴木 |
こちらこそ。
ぼく、パソコンとか、機械が全くだめなんで、
フラカン(フラワーカンパニーズの略)のページと
「ほぼ日」だけを見て、パソコンを消すんです。
「ほぼ日」を本で知って、
これはちょっとパソコン買わねばいかんなと思ったので、
パソコンは「ほぼ日」を見るために
買ったって言えるぐらいです。
ライブでも「ほぼ日手帳」を使っているっていう話は
よく言っていたんですね。
ほぼ日手帳はかなり使いやすいっていうことを
バンドマンやボーカリストに広めたいんですよ。
ボーカリストだったら、
「MCのことを全く考えてない」と口では言うけど
絶対考えると思うんです。
よっぽどMCがないバンドは別にして。
実際に使っている人も多いですし。
ライブハウスで何回か、言われましたもん。
「あれ、それ、俺も使ってるよ」って。 |
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いきなりうれしいお話をありがとうございます!
噂のMC手帳、どのように使っているか
具体的に教えていただいてもいいですか。
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鈴木 |
どのライブもなんですけど、
手帳には何を喋るかと、
その日のライブの曲順がばーっと書いてあるんです。
もう十八年もバンドをやってるくせに、
毎回「フラワーカンパニーズです」から
「京都・磔磔(たくたく・京都の老舗ライブハウス)、
元気ですか」と
こんなあおりまで書かないとダメなんですよ。
十八年もやってて、そこから書いてる人って
多分ぼくしかいないと思います。
挨拶なんて、わかるだろうっていう感じなんですけど、
でもね、やっぱね、体になじませることが大切なんです。
ライブはね、出だしが肝心なんですよ。
最初のMCが気持ちよくウケると、
もう気持ちがのってるんで
最後まで楽しくいけるんです。
こっちが楽しいムードで話してると
お客さんにもムードが伝わるものですよね。
ところがおっかなびっくりでやると、
お客さんも何かね、探りながら来るので、
最初ってものすごく肝心なんですよ。
それはやっぱね、出だしの、
「こんにちわー」からが大事。
そこはね、やっぱ書いておかないとダメなんです。
ライブは死ぬ程やってるし、
やり慣れてるはずなんですけど、
毎回、ギリギリまで悩みますね、MCは。 |
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それはもう十八年前から変わらないんですか。 |
鈴木 |
変わらないですね。
十八年前‥‥昔の方がよっぽど考えてなかったです。
ここ十年ぐらいで
書かないと不安になるようになってきて、
すごく書くようになりましたね。
ライブの前の日までにある程度
なにを話してどんなオチにするかまで
全部考えて組み立てるんです。
ライブのときは楽屋で、
本番5分前まで開いて、復唱する。
(手帳を開きながら)こうやって、ほんとやるんですよ。

本番の時間になったら、
ちゃんとペンを、手帳にぐっと差し込んで
確実に閉めてからステージに行きます。
もしかしたら誰かが見るかもしれないじゃないですか。
ちょっとこれ、ガッカリするんじゃないかと、
オチまで全部書いてあるから(笑)。
だから開けっ放しでは絶対にヤバいですよね。 |
ーー |
流れの箇条書きとかではなく、
ほんとうに一言一句、全て書いているんですね。 |
鈴木 |
全部、書かないとね、覚えられないみたいなんです。
曲順をがーっと書いて、覚える。
暗記するときも書いて覚えていた世代なので、
やっぱり書かないと始まらないというか、
書かないと不安なんですよ。
MCとか曲順とか、
体に何かなじんでない感じがするんですよ。 |
ーー |
書いてなじませるって、すごくわかります。 |
鈴木 |
曲順もライブの前の日ぐらいから
いろいろ悩んだ過程が
いろんなところに書いてあるんです。
で、丸が囲ってあるやつが、決定なんです。
何個も書き直して全然違う曲順でやったりとか。
基本的にケシゴムは使ってないので‥‥
いろいろ迷ったときはとにかく書いてるんですよね。
アンコールの曲は、その場で決めているので、
ライブが終った後に手帳に書くんですよ、忘れないうちに。
ぼくたちはライブを年間百本やってるかもしれないけど、
お客さんが来るのは年に二回とか三回ですよね。
それぐらいしか観ない人に、
前に来たときと同じ曲順だといけないので、
同じ場所ではかぶらないように書いておくんです。
手帳がないと
ツアーも回られないって感じですね、ほんとに。
MCも書いておかないと、平気で同じ話とかしますから。
いかにも初めて喋ったような顔して得意気に喋ってるけど、
みんな、気づいてたみたいなこと、ありますからね。
オチまで知ってるのに、
気を使って笑ってくれたりするんですけど
ムードでわかるんですね。
こーれ、しまったな、やっちゃったかなって(笑)。 |
ーー |
(笑)今年はそんな失敗はないですか? |
鈴木 |
ええ。今年はないですね。全部書いてるので。
何かね、後から見るのを楽しみに
書いてた時もあります。
だから日記的な感じでもある。
何年か後に見たら
強烈に恥ずかしいんだろうなと思いながら。

ライブ中の鈴木圭介さん。 |
ーー |
でも読み直しがいがありますよね。
MCの話はその日によって違うと思うのですが、
内容としてはどういうものが多いのでしょうか。 |
鈴木 |
そうですね、ライブを行う町にまつわるネタも
最初はいいんですけど、
さすがに年に三回ぐらい同じところに行って、
それをもう、十年ぐらいやってるわけじゃないですか。
時事ネタも、そんなに毎日、
大事件が起きるわけでもないですし。
なるべく同じネタはやらないようにしてるんですけど、
自分の中でものすごい自信作もあるんですよ。
ばーんと受けたやつは、やっぱりね、
場所によって二、三回使うんです。 |
ーー |
同じ話でも毎回手帳に書いているんですか? |
鈴木 |
もう毎回書きますね(笑)。 |
ーー |
毎回書く(笑)!
もし、さしつかえなければ、
どんな話をしているか、ひとつ教えてもらえますか? |
鈴木 |
(手帳を見ながら)
えっと、何回か使ってたのはね、
今年の四月、五月、
ちょっと喉にポリープができて
休んだ時期があったんですね。
ライブをキャンセルして、
声を出さないようにして、
二ヶ月間ツアーをやらなかったらすごく太ったんですよ。
で、それまではけていたステージ用のズボンが
ものすごくパツンパツンになってしまったんですね。
あまりにもパツンパツンなので、
今日はもうこれ以上膝が曲がりませんって、
(実際に立ち上がって、ひざをちょっとだけ曲げながら)
「曲がらないので、今日はもうこれ以上、
下には屈まないよ!
この状態でライブやらせてもらいます」
っていうのが最初のMCのオチなんです。 |
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(笑)もうライブハウスが大爆笑?! |
鈴木 |
いや、そうでもないんですよ。
苦笑いみたいな感じだったり。
そうすると、クッソーって思うんですけど、
実は結構うれしくて、
何かね、燃えて来るんです。
二ヶ月の休み明けのときは
この話をよく言ってましたね。
(明日に続きます) |