●ユーカリが丘線、こあら号登場。
山万ユーカリが丘駅にて細川さんと待ち合わせ。
まずは乗ってみようということになり、
電車が来るまでのあいだ、
このユーカリが丘線のことをお訊きしました。
|
|
|
ほぼ日 |
この、ユーカリが丘線って
なんでこういう名前なんですか? |
細川 |
まぁ、ご覧のとおり、
ここは「ユーカリが丘」っていう街なんですね。
1970年代、環境破壊が社会問題になり始めたときに
この街の開発が始まったわけです。 |
ほぼ日 |
はい。 |
細川 |
そんな時代背景ですから、この街は
そういった問題とは無縁な街にしたいと考えました。
「自然と都市機能が調和した21世紀の新環境都市」を
目指し、その象徴として、殺菌や空気清浄の作用がある
ユーカリの木を街に植樹したんです。
それでその名前をそのまま街の名前にいただきました。
▲これがユーカリの木。ちなみにこの写真の木は
ユーカリが丘に生えているものではありません。
|
ほぼ日 |
でも、またその街に電車を走らせるとは
思い切ったことをしましたね。 |
細川 |
やっぱりクルマを主とした交通網だと
渋滞による遅延や公害の問題が
大きく浮き彫りになると考え、
鉄道をメインの交通網とすることに決めました。 |
ほぼ日 |
いきなり鉄道の運営って
できるものなんですか? |
細川 |
できません(キッパリ)。
そもそも国から鉄道を走らせてもいい、という
許可をいただかないといけないんです。
いまでこそ規制は緩くなったかも知れませんが、
当時の運輸省(現、国土交通相)から
なかなか認可が下りず
だいぶ苦労したと聞いております。
でも、おかげさまで戦後、
民間では初の鉄道認可取得をいただきました。 |
ほぼ日 |
へぇー。 |
細川 |
ふつう、街ができるときって、
鉄道会社さんが先に鉄道を走らせて
そのあと不動産ができていくという図式なんです。
しかも電鉄会社さんが不動産もやります。
でも、「ユーカリが丘」はまったくの逆で、
不動産屋が「電鉄を走らせたい」と言ったわけです。 |
ほぼ日 |
聞けば聞くほど無茶ですよ(笑)。 |
細川 |
それをやったわけです(笑)。
あ、向こうのほうを見てください。
電車が来ましたよ。 |
ほぼ日 |
え? あっ! 本当だ。
▲ユーカリが丘駅に向かってくる電車。小さいけどわかります?
かなり可愛らしい!
あ、「こあら号」っていう名前なんですね。 |
細川 |
住民のみなさまから公募して
選ばれた名前なんです。
1号、2号、3号と
全部で3台のこあら号が走ってます。
▲これがこあら号。1号、2号、3号とも3両で編成されています。
せっかくだから運転席乗ってみますか? |
ほぼ日 |
えー、いいんですか!?
みっちゃん(やまかわ)、みっちゃん!
せっかくだから運転席に乗せてもらいなよ! |
やま かわ |
い、いいんですか?!
ありがとうございます!
なんか緊張するなぁ。
▲この場所に立てる機会はそうありません!
路線図作ってて本当によかった!(やまかわ)。
▲ちなみにこれが運転パネル部分。けっこうシンプルな印象でした。
|
ほぼ日 |
いま運転席から見えたんですが、
こあら号ってふつうの鉄道みたいに
2本のレールを走るんじゃないんですね。 |
細川 |
えぇ、そうなんです。
新交通システムってご存知ですか? |
ほぼ日 |
しんこうつうしすてむ? |
細川 |
2本のレールを走るのが通常の鉄道ですが、
新交通システムっていうのはそういう方式ではなく
一般的にゴムタイヤなどで走行する
小型の鉄道のことを言います。 |
ほぼ日 |
これ、タイヤで動いてるんですか?! |
細川 |
そうです。この方式は、
東京のお台場を走っている
「ゆりかもめ」と同じなんですよ。 |
ほぼ日 |
へぇー。
▲これがタイヤが走る線路。矢印の路面部分をタイヤが走って‥‥。
▲まんなかのレール部分をローラーで挟み込んでます。
|
細川 |
ただ、向こうは運転手も車掌もいない
無人自動運転なんですが、
うちは運転手がひとり乗っています。 |
ほぼ日 |
なるほどー。 |
細川 |
じゃあ、そろそろ発車時間なので乗り込みましょうか。 |
ほぼ日 |
あ、はい。
よろしくお願いします! |
●超ストレートな駅名はコミットメントのため?!
細川さんとほぼ日路線図チームを乗せたこあら号は
山万ユーカリが丘駅を出発。
天気は快晴。鉄道日和のいい日です。
|
|
|
細川 |
ユーカリが丘線の路線は
ラケットのような形をしていて、
ここ山万ユーカリが丘駅を出発して、
1周グルッと回ったのち
またここに戻ってくるんですよ。 |
ほぼ日 |
はい。路線図に載せたときも
ラケットのような形でおもしろいな、と
思ってたんです。 |
細川 |
運行距離は約5キロで、ユーカリが丘の街を
グルッと1周するような路線になっています。
1周だいたい13分です。
|
ほぼ日 |
さきほどこの列車がタイヤで動いていると
おっしゃってましたが、意識して乗ってみると
やっぱり鉄道の乗り心地とは違いますね。
タイヤで走っているのがわかります。 |
細川 |
あ、駅に着きましたよ。 |
ほぼ日 |
この駅はずいぶん見晴らしがいいですね。
えぇっと何駅かな‥‥。
公園駅だ! |
細川 |
ここには駅名の字のごとく、
ユーカリが丘南公園という公園があります。 |
ほぼ日 |
路線図を作っているときに
ずっと気になっている駅でした。
ここまでストレートだと気持ちがいいですもん。 |
細川 |
(笑)。 |
ほぼ日 |
なぜここまでシンプルな名前なんですか? |
細川 |
ユーカリが丘線の駅名って、
このユーカリが丘という街を開発するにあたって
コミットメントの意味合いが強いんですよ。 |
ほぼ日 |
コミットメント‥‥ですか? |
細川 |
たとえば、地区センター駅というのは、
この街の中心部になることを期待して
その駅名をつけているんです。
センターというからには、
人が集まる場所にしなくちゃならない。
そこに商業施設や医療施設などを
誘致する必要があるわけです。
だから、ユーカリが丘線の駅名は
「将来、そういう駅にします」という
公約に近い意味合いがあるものなんです。 |
ほぼ日 |
あぁ、なるほど。
じゃあ、公園駅は「ここに公園を作りますよ」
っていうことだったわけですね。 |
細川 |
そうですそうです。
|
ほぼ日 |
じゃあ、女子大駅も
「ここに女子大ができますよ」
ということなんですね。 |
細川 |
そのはずだったんですが‥‥。
もろもろの問題がありまして、
女子大の校舎は誘致できなかったんです。 |
ほぼ日 |
えぇ! そういうこともあるんですね。
じゃあ、女子大がないのに女子大駅‥‥。 |
細川 |
そのかわりといってはなんですが、女子大の
セミナーハウスとグラウンドがあります。 |
ほぼ日 |
あ、それなら。 |
細川 |
ただ、一部ではいまおっしゃられたように
「女子大生がいない女子大駅」なんていう
言われかたもしてるんです(笑)。 |
ほぼ日 |
‥‥。
えぇっと、次は何駅ですかね。
あ、中学校駅だ。
ここには中学校が‥‥ある? |
細川 |
ありますあります。 |
ほぼ日 |
あぁ、よかった。
あるとホッとしますね。 |
細川 |
(笑)。 |
ほぼ日 |
でも、女子大駅のような例もありますし、
駅名を変えるような動きはなかったんですか? |
細川 |
いや、じつはあったんです。 |
ほぼ日 |
あ、やっぱり。 |
細川 |
2008年に山万ユーカリが丘駅を除く5つの駅の
新駅名を一般の方から募集したんです。 |
ほぼ日 |
それはなぜ?
|
細川 |
我々としては開業から四半世紀経過して、
いまの駅名に対するコミットメントは
実現できたと思っております。
それで次の四半世紀に対する
コミットメントをご提示できればな、と
考えていたんです。 |
ほぼ日 |
なるほど。 |
細川 |
ところが、いざ募集をしてみたら、
「慣れ親しんだ駅名だから変えないでほしい」
というご意見を多数いただいたんです。 |
ほぼ日 |
えぇっ! |
細川 |
本当に驚きました。
その声が圧倒的に多かったので
応募いただいた方には申し訳ないんですが、
けっきょくそのままになった、というわけです。 |
ほぼ日 |
へぇー‥‥そういうことがあったんですね。 |
細川 |
「ユーカリが丘線」という鉄道が
地域の方々にご支持をいただいていることを
改めて認識しましたね。 |
ほぼ日 |
うんうん。 |
細川 |
しかも、ユーカリが丘の住人の方だけでなく、
外からユーカリが丘線を応援してくださる方々からも
「そんな駅名、ユーカリが丘線じゃない!」という
ご意見までいただいたほどです。 |
ほぼ日 |
そこまで支持してくださる方がいるんですね。
ちょっとすごいかも‥‥。
でも、たいへんで勇気のいる決断だったと思います。
|
細川 |
そんなこんな話をしているうちに
最初の「山万ユーカリが丘駅」に戻ってきました。
これで「ユーカリが丘線」1周したわけです。 |
ほぼ日 |
1周でだいぶ
「ユーカリが丘線」のことがわかりました。
小さな路線だけど、ドラマがぎゅっと詰まってますね。 |
細川 |
そう言っていただけると光栄です。 |
ほぼ日 |
では、最後に細川さん、ひと言お願いします。 |
細川 |
いろいろネタはあるので
『タモリ倶楽部』あたりが
取材に来てくれないかな、と思ってます。 |
ほぼ日 |
あはははは!
ありがとうございました!
▲「ほぼ日の路線図2010」と細川さん。
なんでもデイリー・フレッシュの
アッキィさんの中学時代の同級生だとか。なんたる偶然! |