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活火山。

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伊藤
以前、奥田民生さんの歌を歌っていても、
矢野さんは、矢野さんの歌になるんだなあ、
って思ったことがあります。
その“何をやってもアッコちゃんになる”
っていうのはどうしてなんだろう、と、
矢野さんにお訊ねしたことがありました。
そしたら「私、活火山なの」って。
山だから、誰が登ってきても一緒にできる、
というようなことをおっしゃってて。
矢野
(笑)山だから、いろんなものが出てきちゃう。
伊藤
マグマが?
矢野
そうそう。
伊藤
そのマグマに、いっそ埋もれたい、みたいにして、
せめて熱をあびるように、
私たちは矢野さんの曲にふれているんですね。
でも同じように音楽で表現する人たちは、
その活火山に登ったらどうなるんだろう?
と思うんじゃないかしら。
マグマは危険だけど、登ってみたい、みたいな。
──
あまたの冒険家たちが。
伊藤
(笑)そうそう、最後に矢野山脈に登りたいって。
矢野
あたらしいアルバムがね、
ぜんぶの曲、どなたかと一緒に歌っているんです。
いろんな方と組んでいるんですが、
その人、その曲によって、
私のほうから、アプローチを変えているんですよ。
活火山に登ってきてもらう人もいれば、
「私はいいです」っておっしゃるかたもいるから(笑)。
伊藤
「いいです」とおっしゃる方は、
どのくらいの距離感なんですか?
矢野
登りはしないけれど、側にいます、
みたいなかたもいれば、いろいろですね。
そのアプローチの仕方は、私が決めているんですけどね。
ある場合は、活火山を一瞬とめて、休火山のふりをしたり。
伊藤
(笑)いつ爆発するか!
矢野
爆発しないようにしてる、とか。
──
上原ひろみさんと矢野さんが組むときは、
上原さんの活火山を、
矢野さんが活かすほうに行く印象があります。
矢野
そうですね、両方活火山だからね。
伊藤
そうですね。
ともに活火山ぶりを発揮したら、
破壊力がすごくなっちゃう。
そこで2人だけで楽しくなっちゃうと、
お客さまが置いていかれるのかな。
いっそ、それも見てみたいです。
矢野
私たちがどういうふうにやってるのかっていうのを、
お客さまが眺めて楽しむっていうことなので、
基本的には、そうですよね。
そして、相当音楽に詳しくなければ、
私たちがどのように面白いかっていうことは、
おそらく分析はできないと思う。
だけれどもできるものがあまりにも巨大なものならば、
それはそれで、それ自体が面白いわけです。
伊藤
音楽の素養がなくても楽しめる。
矢野
そうですね、それはありますね。
伊藤
ブルーノート東京の公演に行った時に、
その場にいたお客さまがみんな、
良い大人のマナーを持った人だったし、
とてもくつろいでいるのがわかるんです。
みんな、ほんとうに楽しそう。
とても良い空間で、良い時間を
一緒に過ごさせてもらったなと思いました。
生きてて良かった、みたいな。
矢野
ありがとうございます。
──
ブルーノート公演が始まった頃は、
お酒や食事をたのしみながらライブを観る、
というスタイルがどうにもなじめず、
矢野顕子の演奏の前で食器の音などさせてなるものか、
と、そう思う客も多かったですよ、自分も含めて。
でも、今ではお客さんの意識も
変わってきたように思います。
音楽をたのしむってそういうことばかりじゃない、
ってわかってきたのかもしれないし、
そういう年齢になってきた人が
増えているのかもしれないし。
伊藤
それは、矢野さんから見て、どうですか?
矢野
うん、私たちの演奏に適した態度を
皆さんとってくださる、
そういうお客さんがほとんどですから、
全然心配はないですね。
伊藤
矢野さん、フェスに出られたりとかすると、
そういうお客さんばかりではないですよね。
矢野
フェスの時はもう、いつどこでやっても、
「はじめての矢野顕子」でやってますね。
皆さんに分かりやすい、
いちばんお見せしやすい部分で。
伊藤
そうか「はじめての矢野顕子」ね。
緊張させちゃうといけないし。
矢野
私は自分が他の人を
緊張させているっていうことを、
長年知らなかったんですよ。
伊藤
お客さまを緊張させるということですか。
矢野
ううん、どんな人でも。
伊藤
へえー!
矢野
「矢野顕子ってさ、怖いじゃん?」
「何か、すごいんでしょ」
みたいなふうに言われることが多かった。
いや全然、私、普通に、
今日はもうインスタントラーメンでいいか、
みたいな人間なのに、
どうしてみんな恐怖を感じたりするんだろう、
って思ってたの。
でもだんだん年を取ってきたら、
あ、そうか、私が見ている自分と、
他の人から見える自分は違うんだ、
って、ようやく気が付いたんですよ。
伊藤
ふむふむ。
矢野
それでそういうフェスとかね、
はじめてのお客さまの時には分かりやすくあるように
心がけるようになりました。
でも昔は全然そういうことがなかった。
「今日、わたしが歌いたい曲をやります」
「はい、次は」みたいな。
伊藤
それは糸井さんがおっしゃる、
「アッコちゃんは生意気だったんだよ」
という時代ですね(笑)。
矢野
(笑)そういう時期もあった!
伊藤
矢野さんはステージで
横向きにピアノに向かいながら、
顔は客席を向いて歌われますけれど、
当時はちがっていたんですか。
矢野
客席を向いてはいましたけど、
心が向いてなかった。
それがだんだんと、お客さんがみんな
自分の音楽を聴きに来てくれているんだ、
お金まで払って来てくださっているんだ、
ということがわかるようになるわけです。
なかにはほんとに残業しなくちゃいけないのを、
誰かに代わってもらって来た人もいるだろうし、
今日だけは、子ども、
おばあちゃん、お願い見ててね、とか、
いろんな立場の人たちが来てくださっている。
その機会を、
自分が今日やりたい音楽のために使うのは、
ないだろう、って思って。
そしてだんだん、皆さんとちゃんと
会話をする気持ちになってきました。
そして今となってはもう、
「皆さんが喜んでくださる曲なら何でもやりますよ」
みたいな気持ちなんです。
私がやりたい曲が、ないわけじゃないんだけど、
それより皆さんのほうが大切って、
今、ようやくなりましたね。

猫について。料理について。

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伊藤
矢野さんはずっと猫がいる暮らしですよね?
いない時期もあったんでしょうか。
矢野
いない時期は4か月ぐらいありました。
4匹いたのが次々死んでしまい、
最後の子が死んだ時、
もう猫と暮らすのは諦めようかなと思ってたんです。
でも家に帰ってきても生き物がいないと、
もう全然ここは家じゃないっていう感じで。

そしたらご近所で
「捨てられちゃった猫がいるんだけど」
「えー、じゃあ見るだけ」
‥‥次の日にはもう、籠持って引き取りに。
それがいまここにいる、タイタスです。
伊藤
とっても人懐っこい、いい子ですね。
美雨さんは、
あんまりニューヨークに来ないんですか?
矢野
来ないですねえ。
来るって言ってたんですけど、
やっぱり小っちゃい子がいるとね。
そうだ、「ほぼ日」でも猫を飼えばいいのに。
──
ビルの規約で、どうぶつは立ち入り禁止なんです。
矢野
ああ、そうなの。
──
オフィス猫って、
夜、どうするんでしょ。ほっとけばいいのかな。
矢野
夜はいいんですよ、
食べ物と水とトイレさえ置いておけば。
猫はそれができるからいいんです。
ニューヨークのレストランでも、
猫を飼ってるところ、けっこうありますよ。
ネズミ除けにすごく効果があるんですって。
伊藤
スタッフのひとりですね。
矢野
昔はそのへんのデリとかでも、
看板猫がよくいました。
でもずいぶん減ってしまった。
ネズミ除けの役割も、
衛生管理がよくなってるからね、今は。
伊藤
(お皿がからっぽなのを見て)
あ、矢野さん、おかわりありますので。
矢野
はい、ありがとうございます。幸せです。
伊藤
良かった。ご飯つくるのって楽しいです。
仕事を集中してしているときなど、
たまに「何か刻みたい!」みたいになるんです。
あんまりいろんなことを考えないから、
料理っていいなって。
過去の心配とか未来の心配とか、
過去の後悔とか、関係ないから。
──
料理は未来に向かった前向きな作業ですね。
伊藤
手を動かせば進むから。
原稿書きとかと違って。
矢野
清水ミチコさんもね、よく夜中に
料理をしているみたいですよ。
伊藤
へえー!
矢野さんと清水さんが
プライベートで一緒にいるところって、
どんな感じなんだろう。
矢野
ん? 普通だよ。
伊藤
普通じゃないです(笑)。
さて、そろそろ、にゅうめんにしましょうか。
矢野
いただきます。
いまちょっと風邪気味だから、
とっても嬉しい。
伊藤
矢野さん、啜らないんですね。
その音が苦手ということですか。
矢野
ううん、そういうわけではないんですが、
アメリカ生活が長いと、
人前で麺をすすらなくなるんです。
音は全然大丈夫。
伊藤
そうか、啜っているひと、いないですよね。
ニューヨークってずいぶん
ラーメン屋さんが多いけれど。
矢野
日本通で「俺は日本食をよく知ってるぜ」
みたいな人が、
頑張ってズズッてやってたりもするのね(笑)。
伊藤
トレーニングしないと、できないかも。
矢野
そう、最初ね、できないの。
伊藤
そうなんですよ!
それにしても‥‥目の前ににゅうめんを食べる
矢野さんがいるというのが、あらためて不思議です。
私たちにとって矢野さんは、
あのステージの矢野さんなんです。
──
あこがれのミュージシャンが
どこでどう生活してるか、
ほとんど知りようがないわけですものね。
でもキッチンの戸棚には
布巾が重なって置いてあるし、
お鍋もお皿もある‥‥。
矢野
そうなの、
「ご飯、自分でつくるんですか?」って、
実によく聞かれるんです(笑)。
「だって、他につくってくれる人いないんだから」って。
主婦を40年もやってきたわけだし、
私としては、ご飯をつくるってことは、
当たり前の生活の中のこととして
占めてるんです。ただ──、
そこに楽しさは見出していないんですよね。
伊藤
そうなんですね。
矢野
お料理が好きな人たちは、
次は何をつくろうかとか、
美味しいもの食べたら、
これどうやってつくるんだろう、
自分でもやってみようとか、
そこにつくる喜びっていうのかな、
そういうものがあると思うんです。
私の場合は、たぶん、つくる喜びが
全部音楽のほうに行っている。
もちろん、どうせ食べるなら
美味しいものが好きですよ。
だから自分で精一杯ベストを尽くして
美味しいものをつくりたいとは思うけれども、
そこに「つくる喜び」はないですね。
むしろ、人が来た時につくって、
美味しかったって言ってもらえたら、
満足と、与える喜びはあるけれどもね。
伊藤
じゃ、私がみじん切りするために
「よっしゃ」って、包丁研いで、
ガンガンガンってやってる時の幸せは‥‥。
矢野
ないない。微塵もない!
伊藤
でもそれが音楽に込められている。
矢野
そうなんです。
伊藤
私、最初に買ったレコードが矢野さんで、
それは印刷されたジャケットに、
プレスされたビニール盤だったわけで、
その向こうに生身の人がいるということを、
わかってはいても、
うまく処理ができなかった。
そう、初めて買ったシングルは『春咲小紅』で、
LPはYMOでした。
矢野
そっか、ありがとうございます。
伊藤
音楽もいろんな積み重ねというか、
足し算で曲ができるわけですよね。
料理なら鶏肉があってシャンツァイあって、
それを組み立てる。
でも音楽って、目に見えない音というものを
組み立てるわけですよね。
そこには共通性があるのか、
想像もつかないから、
どうやって曲ってできていくのか、
それがすごく不思議なんです。
矢野
そうですね、言われるとそうね。
ここにある料理ををつくるために、
材料を刻んで、タレを入れて、
みたいに考えるデータっていうのは、
音楽の場合、頭の中にあるわけです。
そこには音楽の素養をはじめとして、
いろんな部分がしっかり入っている。
今までたくさん、いろんな音楽を聴いてきた蓄えもあるし、
自分でつくりたい音のイメージもあります。
しかしそれを実現させるためには、
私の場合はピアノを弾くので、
ピアノでそれを具現化する技術がないとできない。
そのためにピアノの練習を小さい時からしてきて。
これは料理で言う包丁のようなものですかね。
だから、音楽をつくることっていうのは、
頭の中から出てきたものを
道具を使って表現してる、という意味では、
ちょっとこじつけて言うけれど、
料理との共通点があるわけです。
伊藤
楽器を弾くだけ、曲をつくるだけ、
歌を歌うだけの方もいらっしゃいますよね。
でも矢野さんは全部なさる。
もちろん他の方が作曲とか作詞とか
されてるのもあると思うんですけど、
一連で、全部できるっていうのは、すごいです。
矢野
たぶん、自分の場合は、
たまたま、そうなってるんだと思う。
それが全部一緒くたになって、
自分の表現になっているんです。
伊藤
最初から、そうだったんですか。
矢野
最初からそうだったわけじゃなくて、
小さい時にはピアノだけだったし。
歌っていうのは‥‥いまだに自分のことを
「歌手」とは思っていないくらいです。
歌でお金をもらっちゃいけないんじゃないの?
というぐらい、
ピアノに比べれば歌は付属品のような時代が、
ずっとあったんですね。
それがだんだん皆さんからいろんな評価をもらって、
あ、何か歌で表現するってことも
なかなかいいものだわ、
そこに自分の気持ちも入れられるんだ、
ってことが分かってくると、
歌もピアノも同等になってきて。
伊藤
なるほど。
矢野
今となってはそれが合体しているので、
どこを切ってもこんがらがってて分かりませんみたいな
表現方法になったんじゃないでしょうか。
でもばらしていけば、
ピアノだけで表現もできるし、それも好きだし、
歌手の人の伴奏をするのも大好きなんですね。
そういう喜びもあるんです。
でも、歌だけっていうのは、ないわけじゃないですね。
作曲だけ、というのもあるしね。

BGMのこと。ちょっと昔のこと。

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伊藤
矢野さん、そう言えば、
お家にいらっしゃる時は
音楽をかけておられないんですね。
矢野
バックグラウンドミュージック? ないんです。
音楽がかかると、ちゃんと聴いちゃうから。
レストランとかでも、食事よりも、
流れている音楽が気になることがあるんです。
ちょうどね、この前、
ニューヨークタイムズに出ていて
知ったんですけど、
坂本龍一が、好きな日本料理屋さんで
かかってる音楽が残念だと言って、
彼が選曲をすることになったんですって。
私、すごく、それってある、と思うんです。
味が好きなのに、
かかってる音楽が苦手だ、みたいなこと。
伊藤
そのお店も、坂本さんがいらっしゃる、
みたいなことで、
BGMを考えたりはしなかったんですね。
矢野
音楽家がBGMを
そこまで聞いているんだっていうことを、
ふつうのかたは知らないでしょうね。
BGMってことになるとね、
私が今行ってるジムが好きなのは、
プールがあるからっていうのがいちばんなんだけど、
ロッカールームで、いつもジャズがかかってるの。
トレーニングルームはもうイケイケな曲が
かかっているんですけど、
ロッカールームだけはジャズ。
それがすごく好きなのね。
たまーに、スタッフが自分用に
チャンネルを変えて激しいのをかけたりすると、
すぐ抗議しちゃう。
一同
(笑)
矢野
やっぱりどんな音楽が
流れてくるかっていうのは、すごく重要。
伊藤
逆にどういうのが、ダメなんでしょう?
街の音、車の音とかは気になりますか?
矢野
いわゆる生活音は平気です。
音楽も、ダメな時は遮断するようにしていますし。
あるいは、あえて聴いて、
「ああそうか、低音はこの程度出せばいいんだな」
「このテンポならば、やっぱり人は
頑張ろうって気になるんだな」
と、制作者の立場で聞く。
そうすれば、そんなに損はないですね。
そうそう、こちらでは、歌ものなんかがかかると、
歌っちゃうのね、みんな。ジムなんかで。
伊藤
歌っちゃうんだ!
矢野
そう。おそらく、専門家は、
ジムでどういう音楽をかければ、
どのくらい運動に集中して頑張れるか、
考えることができると思うんですよね。
伊藤
その音楽家ならではの観点が、とても不思議です。
私は楽器も弾けないし、
歌も苦手だからかもしれませんが、
矢野さんを見ていると、
何かこうピアノと身体が
繋がってるように見えるんですよ。
ピアノが身体の一部、みたいな。
「風邪をひいてしまって」という日の
ライブでもすごいな、と感じましたもの。
矢野
とんでもないですよ。
──
矢野さんの1992年のドキュメンタリー
『ピアノが愛した女』を見て、
完璧に演奏をし、歌うことって、
矢野さんでも簡単なことじゃないんだって、
ちょっと思いました。
ピアノと歌だけのアルバムを録音するんですが、
そのフィルムでは、
ミスをするシーンをあえて写しているんです。
矢野さんは、完璧にできるまで、続ける。
「ピアノと身体が繋がってるように見える」、
その背景に、ああいう時間があるんだなって思いました。
矢野
あれは、やっぱりね、若かったんだなと思います。
当時は「できるまで、やること」が、できたんですね。
今は、できない‥‥というよりも、
できるまでやることに、あんまり価値を感じていない。
途中で「まあいいか、明日やろう!」みたいな。
1回休んでからやったほうがいいかも、って思うんです。
伊藤
「今」というのは、ここ数年ですか?
矢野
たぶんここ10年ぐらいかな。
伊藤
ありきたりになっちゃうんですけど、
それは、肩の力が抜けてきたってことですか。
矢野
そうだと思います。
それとね、疲れちゃうなあ、みたいな。
伊藤
ところで、矢野さんは
糸井さんと長いおつきあいですよね。
糸井さんって、昔はどういう感じだったんですか?
糸井さんも矢野さんと同じように、
肩の力が抜けてきたのかな? って、
ちょっと思ったんです。
矢野
「昔」って、どのくらい昔(笑)?
伊藤
どれぐらいなんだろう。
『春咲小紅』をいっしょにつくられたのは
80年代の頭ですよね、
矢野
そう、80年代前半はやっぱり彼も若かったし、
大きな仕事をいっぱいしていたし、
「俺が!」っていう前に出て行くところは、
あったかも。
伊藤
そうですよね、逆にそれがなかったら、
できないこともたくさんあったと思うんです。
矢野
ないわけ、ないですよね。
私が生意気だったのと同じように、
やっぱり彼だって生意気だったんだと思う。
でもお互いそれが嫌じゃなかった。
だから表面に現れた部分ではない部分で、
「こいつとはウマが合うな」
っていうのがあるんじゃないかな。
伊藤
お二人を見ていると、
何か、戦友感があるんですよね。
その時代のことはもちろん作品でしか
私は知らないですけど、
矢野さんのことは、糸井さん、
よく嬉しそうに語られてるんです。
「アッコちゃんはさ!」みたいにね。
矢野
でもさ、最近、
ブイコが来た時の写真が送られてきた時、
「これ‥‥ただの好々爺じゃん!」って思ったよ。
一同
(笑)
矢野
それを、イトイの娘にメールしたら、
「その通り!」って。
伊藤
メロメロ、ね。
矢野
これでほんとうにおじいちゃんになったら、
どうなることやら。
(註:この取材のときは、まだ糸井重里に
孫は生まれておりませんでした。)
伊藤
そうか、じゃ糸井さんは
初めて「おじいちゃん」の立場になるんだ。
矢野
そうよ。(ほおばりながら)美味しい。幸せ。
伊藤
良かったです。考えてみたら、
簡単なものばっかりでした。
矢野
こういうのがいいんですよ。

夜更かしなのに。

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伊藤
ニューヨークの、街の魅力って、
いちばんはどんなところですか?
矢野
うーん。
伊藤
私がにわかに来て思うのは、
ダウンジャケットの人もいるなかに、
ビーチサンダルの人もいたりする、
そんな自由なところなのかなって。

日本ってすっごく安定‥‥、というか、
「みんないっしょ」な感じが
あるように思うんですよ。
矢野
日本には「衣替え」があるくらいで、
季節に応じて着るものこうであるほうがいい、
みたいなところがありますよね。
みんなが「こうあるべき」というような。
伊藤
そうですよね。
矢野
こっちの場合は日によって人によって、
着るものひとつとっても、全然、自由なんです。
伊藤
きっと、体感温度も
ひとそれぞれで違いますものね。
矢野
そうそう、違いますよね。
そして、それこそモデルさんが、
かなりひどい格好してそのへんを歩いて
コーヒーを買いに来ていたりしても、
全然オッケーなんです。
伊藤
本人も、まわりのひとも、気にしない?
矢野
そう。でも東京にいると、
変な格好をしていたらいけないんじゃないかな、
なんて思いますよね。
伊藤
そうかもしれないです。
東京だと、人の目を気にしちゃう。
ニューヨークに移住した友人がいるんですが、
彼女を見ていると、日本にいるときよりも、
ちょっとずつ自由になっている気がします。
矢野
それは良かったですね。
わたしも、昔はね、
ニューヨークで着てるものそのままで東京に行き、
スタッフからすごい不評を買って!
伊藤
え、どうしてだろう。
ふだんからおしゃれになさっているのに。
矢野
たとえば身体の線が出るものが
アメリカは当たり前なんですよね。
女性の身体のカーブが美しいことを
強調してる服が多いので、
おっぱいの大きい人は、見せてなんぼ。
わたしもちょっと若い頃で、
そういう中に暮らしていたので、
それが普通だと思っていたんです。
ところが日本に行くと、「え?」って。
伊藤
「矢野さん、そんな格好で!」って?
矢野
「はしたない」みたいな。
だから、性を消す、という意味では、
たとえばコム デ ギャルソンのような服は、
日本だからこそ出てきた発想なのかも
しれないなって思います。
伊藤
女性的であることを
否定するぐらいのデザインで
世界に衝撃を与えた服ですものね。
矢野
そう。
伊藤
じゃあニューヨークの人は‥‥?
矢野
私のまわりでは、
やっぱり身体のラインを
強調する服の人が多いかな。
伊藤
(顔をじっと見て)
矢野さん‥‥美肌の秘訣、何ですか?
矢野
アハハハハ!
まさこさんもすごくきれいですよ。
伊藤
いや! 何かしてますか? 食べ物?
矢野
お話しできるようなことは、してないです。
乳液などはヘアメイクの人から、
メーカーが分けてくださる
サンプル品をもらって、‥‥それだけかな。
伊藤
夜更かしはされない、とか?
矢野
夜更かし、するする、メチャクチャする。
ほっとくと朝と夜が逆転しちゃう。
そうならないようにと思ってるんですけど。
伊藤
夜はお仕事を?
矢野
日本とアメリカで時差があるでしょう。
音楽業界って、始業が遅いので、
メールが来るのは、
こちらで夜中の10時過ぎからなんです。
それが下手すると1時、2時ぐらいまでかかっちゃう。
「ちょっと急ぎなんで」とか言われて
集中して作業をしていてフッと見ると、
「あ、3時!」ということも。
‥‥と、まあ、それを理由にしてるんですけど、
小っちゃい時から夜更かしだったんです。
伊藤
ふむふむ‥‥それでその美肌‥‥。
以前60代後半の漫画家の先生が
とてもきれいなお肌をなさっていたので、
「秘訣は」と訊いたら、
「洗わないの」って!
矢野
ええっー?!
伊藤
「締め切りの前はお風呂に入らず、
1週間ぐらい洗わないの」
‥‥ですって。びっくりするくらいおきれいでした。
矢野
ま、お風呂入らなくたって、
死にはしないよね!
(愛猫のタイタスに)
タイちゃん、ダメよそれ、
食べ物じゃないですよ。やめてね。
伊藤
矢野さん、猫に対しては、
ちょっと別人になるんですね。
矢野
(笑)どうぶつには、だいたいそうなるんですよね。
でも、孫たちにはもっとそっけないけどね、フフフ。
伊藤
‥‥えっ、孫?
矢野
一応、いるんですよ。
伊藤
そうか、そうですよね!
美雨さんが、おかあさんになったから。
‥‥てことは矢野さんが「おばあちゃん」?
どういう感じのおばあちゃんなんですか。
矢野
うーん? どういう感じなんだろう? ふふふ。
伊藤
(笑)私たち、こんなふうに適当におしゃべりしていたら、
このまま帰っちゃいそうです。
おききしたいこともいろいろあったのに、
矢野さんは、こちらに暮らして何年ですか?
矢野
郊外のほうに住んでいたのを含めて、
もうすぐ30年になりますね。
伊藤
30年!!!

住んでる街ごと。

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伊藤
矢野さん、おじゃまします。
きょうはお約束どおり、ごはんをつくりに来ました。
矢野
ようこそ、いらっしゃいませ。
遠路はるばるニューヨークまで!
キッチンは自由に使ってくださいね。
伊藤
はい、さっそく。よいしょ。
矢野
‥‥うわぁ!
こんなに、食材、
どこで買ってきてくださったんですか。
伊藤
調味料のいくつかは日本から持ってきました。
食材はユニオンスクエアのグリーンマーケットです。
野菜をたっぷりと、丸鶏。
きょうはアジア風の、
かんたんなものばかりなんです。
矢野
おおお、よだれが‥‥!
あそこ、野菜はもちろん、
お魚屋さんもいいんですよ。
伊藤
はい、美味しそうでした。
矢野
ほんとに、その日獲ってきたお魚なんです。
だいたいロングアイランドのものなんですよ。
でもね、先週買ったお魚が美味しかったから、
今週も、と思って行っても、
「獲れなかったよ」って言われることも。
伊藤
同じものが、なかったりするんですね。
矢野
そうなんです。うちのわりとすぐ近くにも、
土曜日にマーケットが出るんですけれど、
そこの魚屋の息子さんがつくっている
スモークドフィッシュ、
白身魚の燻製がすごく美味しいので、
「来週もお願い」って言ったら
「息子の機嫌が良かったらつくると思うよ!」って。
だいたいそういう感じなの。
伊藤
商売っ気がないんですね(笑)。
燻製はどうやって召し上がるんですか?
矢野
サラダにふりかけたりとか、
お客さまの時にはオードブルで。
すぐそばにマンハッタン・トランスファーっていう
コーラスグループの
ジャニスという友人が住んでるんですけど、
彼女はとてもお料理が好きで、グルメなんです。
お家にときどき呼んでくださるんだけれど、
彼女は世界中をツアーしているので、
「わあ、どっから仕入れてきたの?!」
みたいな料理が並ぶんですよ。
スモークドフィッシュは、
ちょっと変わったライ麦系の薄ーいパンに乗っけて、
それをプロシュートで巻くの。
伊藤
すごーく、美味しそうです!
矢野
これはもう
「さあ、ワインを飲め!」
と言ってるようなものですよね。
それでね、プロシュートって、
プロシュート自体が美味しくないといけないから、
彼女は新鮮でいいものを決まったお肉屋さんで
買ってくるんですって。
自分でも真似してやってみるんですけど、
何かが違う!
伊藤
私のつくるものは、
そんなに手の込んだものじゃないんですよ。
でもユニオンスクエアのグリーンマーケット、
ほんとうに素材がいいので安心です。
お買い物も、とっても楽しかったです。
矢野
あそこはね、朝行くと、
女優さんとか有名なモデルさんが、
ふつうにお買い物をしていたりするんです。
伊藤
ほんとうに?
矢野
ノーメイクでふらりと。
「あら? あの人は?」みたいな。
伊藤
そういうところもニューヨークらしいですね。
‥‥それにしてもきくらげ、
すごい量を戻しちゃった!
矢野
きくらげ、大好き。
伊藤
よかったです。
台湾でいつも、枕ぐらい買ってくるんです。
矢野
枕(笑)。
伊藤
すっごく体にいいんですって、きくらげって。
矢野
そうなの? へえー。
伊藤
‥‥こんなふうに台所を使わせていただいて、
ありがとうございます。あらためて
「ほんとに来ちゃった、ニューヨーク!
しかも、矢野さんのお家に!」
って思ってます。
最初、編集会議のとき、何か冗談っぽく、
矢野さんに会いたいな、
って話をしていたんですよ。
──
「じゃあ東京にいらっしゃった時に、
お願いしてみましょうか?」と言ったら、
「ううん、ニューヨークに行きましょう!」って。
伊藤
住んでる街ごとで、
矢野さんにお会いしたいなって思ったんです。
矢野
そうなのね。
‥‥と話している間に、
どんどん料理ができていく。
伊藤
これで混ぜればほんとうにお終い。
矢野
きくらげを、何と混ぜたの?
伊藤
ごま油と醤油と酢です。
シャンツァイの茎の部分と、
クコの実も入れました。
茎の部分っていうところが
ポイントなんですよ。
矢野
へえ、美味しそう。
伊藤
これは台湾で食べた味なんです。
それにしても大きなガス台。
日本で家庭用だと
ここまで強い火力のものはないんです。
矢野
これね、上に鉄板をかぶせて
ホットケーキとか焼けるらしいです。
私はほとんど使ったことがないけれど。
──
日本の家庭用のガス台は、
立ち消え安全装置がついていないと、
だめなんだそうです。
伊藤
年をとるとガスの火が見えなくなるんですって。
点いてないと思っちゃうみたいで。
矢野
私は見えるけど、よく忘れるの(笑)!
だからもうとにかく必ず、
調理中はタイマーを持って歩くんです。
伊藤
ちょっとつまみ食い、してみますか?
矢野
えー、いいの? ほんと? じゃあちょっと。
伊藤
どうですか?
矢野
美味しい、美味しい。
うん。コリコリ。
いろんな味がする。
──
細かく刻んだ生姜が効いていますね。
矢野
うんうん、これ入ってたほうがいいよね。
──
さっき、買い物の途中で生姜がみつからなくて、
あまりにもお腹がすいた伊藤さんが諦めかけて、
「生姜、なくてもいいかな」っておっしゃるから、
「いや伊藤さん、あったほうがいいですよ」って。
アジア料理なんだから。
伊藤
私もひどいですよね、
というのも、お腹が空きすぎると、
いろんなスイッチがオフになっちゃうんです。
五感もにぶくなるみたいで、
先日、ステーキハウスに行った時、
店中に肉の匂いが充満していたらしいんですけど、
あまりにオフになっていたので、気がつかなくて。
ところがビールをひとくち飲んだら、
急に全部の感覚がよみがえって、
「ああ、お肉の匂いがする!」って騒ぎ出し、
同席の友人があきれていました。
この匂い、ドアを開けたときからずっとしていたよって。
‥‥さあ、できました!
矢野
早い!
伊藤
野菜のお料理をたくさん食べていただいて、
お食事の後半になったら、
丸鶏のだしで、にゅうめんもつくりますね。
矢野
すごーい。
伊藤
シャンツァイは、搾菜とゴマ油で
混ぜただけなんですよ。
矢野
あ、大きいゴミはここにどうぞ。
伊藤
はい、ありがとうございます。
ニューヨークのゴミ事情ってどうなんですか。
国や都市によっては、
瓶とバナナの皮を一緒に捨ててもいい、
というくらいのところもあるようですが。
矢野
ニューヨークは、もうちょっと分別するかな。
でも、瓶と紙は別で、あとは全部一緒。
それに比べたら、日本はこまかいほうですよね。
私、日本のスターバックスに行って、
プラスチックの蓋と紙カップを分け、
飲み残しはこちらへ、というような仕組みを目の前に、
もう、どうしていいか分からなくて!
中に飲み物が残っていても、
全部一緒だもの、こっちって。

わたしが ふだん つかうもの [14] ラッピングには紐を

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季節のくだものを使った
ジャムやシロップ作りは、
私の通年行事。
くだものは、
そのまま食べてもおいしいけれど、
手を加えたのもまた格別ですから。

できあがった瓶詰めは、
友人知人へお裾分け。

そのまま渡すのも味気ないから、
茶色や白の素朴な紙で包んで、
紐でキュッとしばります。

リボンではなく紐をえらぶのは、
素朴で、紙の質感にも合っていて‥‥と
理由はいろいろあるのですが、
なにより一番の理由は、
中身よりも目立たないところ。
ラッピングは、さりげなさが命と思っています。

外国へ行くと、
スーパーや文房具屋をのぞいて紐探しをします。
品揃えのいい店より、
どちらかというと回転のあまりよくない、
ひなびたかんじの店に、
掘り出しものがあることが多い。
要は売れ残りというわけですが、
私にとっては宝みたいなもの。
この宝探しはなかなかたのしくて、くせになります。

いつか、昔見た外国の雑誌の家のように、
キッチンの一角にラッピング用の作業台を作りたい。
その時は、この紐をずらりと並べて‥‥
と妄想は広がるけれど、
そうしょっちゅう瓶詰めを作るわけでもなし。
きっと妄想だけで終わるんだろうな。

(伊藤まさこ)

わたしが ふだん つかうもの [13] くつ下

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もこもことしたウールの靴下はリトアニアのもの。
手編みなので、サイズが少しずつ違うらしいのですが、
そんなところもいいな、と思います。
だって、なにもかもすべてが
同じでなくたっていいじゃない?
そう思うから。

ルームシューズが見つかるまで、
その代わりに‥‥と思って買ったこの靴下。
あったかいし、ぬいぐるみみたいで愛着が湧いてきた。
どうやら今年の冬は
この靴下だけで過ごすことになりそうです。

ひとつ難点は、
すべりやすいこと。
でも冬休みの間に、
裏に革を縫いつけようかと思っているので、
それも解消されるでしょう。

「こんなものがあったらいいな」
と頭の中で思った通りのものが、
じっさいあればいいけれど、
工夫を重ねて気に入りに近づけていく作業もなかなか。
自分だけのものになった気がするし、
「ああでもない、こうでもない」と考える時間は、
自分にとってとても有意義だから。

(伊藤まさこ)

わたしが ふだん つかうもの [12] 石ころ

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海辺や河原に行くと、
「いい石、落ちてないかな?」
とついキョロキョロ。
景色よりも足元に目がいきます。

まあるいの、細長いの、小さいの。
色も柄もいろいろで、
ずっと見ていても、飽きることがありません。

気に入りは、
すべっとした丸いもの。
荒波やはげしい流れに
もまれたでしょうに、
そんなこと全然感じさせないところがいい。
いつか、こんなおばあちゃんになりたいものです。
「昔はいろいろあったけどさ、
今じゃ丸くなったわよ」
なんてすべっとした肌で言ったりして。

拾ってきた石は、
じゃぶじゃぶ洗って乾かして、
器に入れておきます。

時々、ペーパーウェイトになったり、
箸置きになったり。
大きなものは漬物石にすることも。

道具として作られたわけではないけれど、
立派に道具の役割を果たしてくれる石。
見るたび、使うたびに、
ああ、いいなぁと思うのです。

(伊藤まさこ)

わたしが ふだん つかうもの [11] 部屋のあちこちにスツールを

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「この家、スツールがたくさんあるね」
友人のそんな一言がきっかけで、
どれどれ・・・と並べてみたら全部で6脚ありました。

リビングのすみっこに2脚、
廊下に1脚、
バスルームに1脚、
玄関に1脚、
娘の部屋のベッドサイドに1脚。

「座る」という本来の目的よりも、
どちらかというとサイドテーブル代わり。
ライトや本、トレーにのったお茶など、
ちょっと何か置くのにちょうどいいんです。

20年以上前に買ったもの、
ヘルシンキで一目惚れしたトナカイの革の座面のもの、
新入りは冬のはじまりに買った座面がモフモフのもの。
ひとつふたつと揃えていくうちに、
こんなにたくさんとなったわけですが、
こうして並べてみると、
それぞれ愛嬌があって、なんだかかわいい。

昨日まで、リビングにあったスツールが
今日からバスルームに。
バスルームにあったスツールが
今はベランダに。
そんなことがしょっちゅうの我が家。

スツールをちょっと移動させて、
部屋の小さな模様替え。
気分転換になるから、
好きなんです。

(伊藤まさこ)

わたしが ふだん つかうもの [10] 空き缶には何を入れる?

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この世の中には、
かわいい缶に入った食べものがたくさんあるから困りもの。
だって、どんどん空き缶がたまっていってしまうから。

それでもせっかくだからと、
それぞれの空き缶に用途を与えるのが私の使命。

クッキーの缶には小銭や新札入れを。
キャンディーの缶にはミシンの下糸をいくつか。
おかきが入っていた渋めの缶にはポチ袋を。
缶と中に入れるものがぴったりだと、
すごくうれしい。
「空き缶」から
「用途のあるもの」になるのだから。

先日、フランス土産にいただいた
プルーンのお菓子の缶に入れたのは、
シルバー磨きの布と専用の磨き剤。
今までカトラリーの引き出しに、
ポンと入れていただけなのですが、
大きさも深さもちょうどぴったり。
缶も役どころを得てうれしそうではありませんか。

ところで先日、実家の屋根裏部屋で
探しものをしていた時に見つけたのは、
鯛せんべいの缶。
年季の入ったその缶の中には、
若かりし頃の父の写真がおさまっていました。
どうしてアルバムじゃなくて缶なの?と母に尋ねたら
「さあ、缶が気に入ったんじゃないの?」という返事。
血は争えないものですねぇ。

(伊藤まさこ)

わたしが ふだん つかうもの [9] しましまパジャマ

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もう何年、いや何十年(?)も、
上下お揃いの、
いわゆる「パジャマ」を着ていませんでした。

では何を着て寝ているかというと、
夏はシルクのスリップ、
冬は部屋着にもなるワンピース。
ワンピースはコットンやリネンなど、
気持ちのいい素材が基本で、
形は、ピーンポーンと突然、配達の人が来ても、
まあまあ変ではない範囲の、
ネグリジェっぽくないものを。

ところが、どういう風の吹きまわしか、
このサンスペルのパジャマを見た時、
着てみたい!
何かがピーンときたのです。

男物をそのまま小さくしたような形は、
ありそうでないし、
お父さんのパンツみたいなしましま柄も、
なかなかいいじゃないですか。

昔から
「なんでも形から入るタイプ」と
言われ続けている私ですが、
形から入るのも悪くないもの。
だって、不思議なことに、
これを着ると
「さあ寝るぞ」とか、
「さあ起きよう」なんて気分になる。
気持ちや時間の区切り方が、
潔くなったとでもいえばいいのかな。

しましまパジャマの効力はすごいんです。

(伊藤まさこ)

わたしが ふだん つかうもの [8] 先っぽにコルク

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旅には、ペティナイフと
ワインオープナーを持って行きます。
ホテルで借りれば、それでいい話ではありますが、
貸してくれるナイフは
100パーセントに近い確率で切れ味が悪いし、
借りに行くのも面倒だし。

ペティナイフの先っぽには、
ワインのコルクを刺します。
これはこのナイフを買った
パリの料理道具専門店のアイデア。
包む前に定員さんが手慣れた手つきで刺して、
刃先を保護してくれたのです。

さすがフランス人、
なんて洒落た廃物利用なのだろう!
といたく感激したのですが、
今ではすっかり私もアイディアを拝借しているというわけ。

旅に出る前は、よくよくナイフを研いでコルクを刺し、
ワインオープナーと一緒に、
小さなテーブルクロスでぐるぐる巻きに。

部屋に着いたら、テーブルにそのクロスを広げ、
ワインとチーズで、
ちょっと休憩。
旅先の慣れない部屋に、
自分のものがあるとほっとするもの。
この3つの道具、
スーツケースにしのばせてはどうでしょう?

(伊藤まさこ)

わたしが ふだん つかうもの [7] 夜の暗さをたのしむ

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照明は「暗い室内を明るくする」という役割だけれど、
一日中、目に触れるものだから、
使わない時も(つまり日中も)、
気に入ったデザインのものにしたい。

リビングにはダウンライトの他に、
メインの照明をつける部分がありましたが、
薄暗いのが好きな私には不要と思い、
そこを取り払い、
パテで埋めてペンキを塗り、
フラットな天井にしました。

その代わり壁につけたのが、
白いふたつのライトです。

光の具合は、
ひかえめでおだやか。
明るいのが好きという人には向かないけれど、
夜は私にとって、
眠りに向かう時間だから、
このくらいがちょうどいい。
ひとつ、またひとつと照明を消していくうちに、
まぶたがだんだんと重くなって、
やがてすやすやと眠りにつくのです。

眠る2時間くらい前、
たまにはテレビやパソコン、携帯電話を見ずに、
過ごしてみませんか。
夜の暗さをたのしむのも、
たまにはいいものです。

(伊藤まさこ)

わたしが ふだん つかうもの [6] 好きな色の中に住む

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この秋、引越しをしました。
新しい家は、前の前の住民の残した「跡」みたいなものが
色濃く感じられるインテリア。
天井と壁は濃いめのクリーム色で、
照明や取っ手はすべてピカピカの金。
どうにも居心地が悪いのです。

照明など、取外せるところは取り外したものの、
それでもやっぱり落ち着かない。
1ヶ月を過ぎたあたりで、
「やっぱり好きな色の中で暮らそう」
そう決意しました。

まず天井は白に。
ダイニングの壁はすべて深いブルーに。
リビングの壁は白、
腰板は薄いブルーグレーに塗り替えました。

色がもたらす効果というのはすごいもので、
「自分の好きな色にする」というそれだけのことで、
ずいぶん気持ちがすっきり。
そこに今まで持っていた家具を配置して、
やっと「自分の家」になった気がしたのでした。

使ったのは、
イギリス製のFARROW & BALLというペンキ。
同じ白にしても、まっ白もあれば、
ちょっとグレーがかった白や、
あたたかみのある白もある。
自分の気持ちにぴったりな色がそろっていて、
そこが何よりこのペンキの好きなところ。

ちょっと部屋に変化をつけたかったら、
色を変えてみるといい。
壁とはいかないまでも、
椅子とか棚とか。
好きな色が身近にあるという、
ただそれだけのことで、
うれしくなったりするものだから。

(伊藤まさこ)

わたしが ふだん つかうもの [5] 針には糸を

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前の日の夜から、
「よし明日はあの服を着るぞ」と決めていたのに、
朝になって、
裾がほつれていたり、
ボタンがとれていることに、
気づくことはありませんか?

「ああ、どうしてこんな時にかぎって!」
と嘆きたくなりますが、
そんな時は、ささっと裁縫箱を出して
対処することにしています。

億劫にならないために、私がしていることは
生成りとネイビー、
よく着る2色の糸を針に通しておくこと。
これなら、後回しにせずに、
今やろう、という気持ちになるものです。

裁縫道具は、小さなシェーカーボックスに入れて、
リビングのすぐ手が届くところにおいています。
「しまいこまない」というのも、
すぐやる気になる工夫のひとつですが、
だからといって、
なんでもかんでも出しておくというのも、
雑然とした部屋になるからこまりもの。
その塩梅がなかなか難しいのですけれど。

(伊藤まさこ)

わたしが ふだん つかうもの [4] 本を飾る

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壁がちょっと殺風景。
でも気分に合う絵がない。

そんな時、私は装丁が気に入っている本を飾ります。

今日はストックホルムの本屋で手に入れた本を。
そして、それだけでは少し物足りなかったので、
大きなきのこの本を後ろに置きました。

きのこの本は、つるつるした表紙を取り去り、
布張りの部分を見せます。
本の前には、追熟中の洋梨、古い鍋にボウルなど、
好きなものを自由に配置。
そう、何もアートを飾らずとも、
雰囲気ある空間は作れるのです。

重さ2キロはある、きのこの本は、
あのファーブルが描いたもの。
時々、好きなページを開いて
サイドテーブルの上に置きます。
写実的だけれど、ちょっとほのぼのした雰囲気が、
きのこ好きの心をくすぐります。

(伊藤まさこ)

わたしが ふだん つかうもの [3] お茶はガラス瓶に

未分類

料理の撮影で、台所に立ちっぱなしの日が
続いたことがありました。
ふだんなら、頃合いを見てお茶を出したり、
おやつを出したりするのに、それがなかなかできない。
どうしたものかと考えて、
ウォーターサーバーの横に、お茶とカップを用意して、
飲みたい人はどうぞご自由に、
という一角を作りました。

黒豆茶、プーアール茶、ルイボスティ、
アーティチョークティー、ほうじ茶などの
ティーバッグをそれぞれガラスの瓶に入れて、
はいどうぞ。

これがなかなか好評だし、私も楽だし。
これはなかなかいいこと考えついた。

ガラス瓶は北欧に行くたびに、
マーケットで少しずつ集めたもので、
密閉するためのゴムパッキンと金具がついていたのですが、
パッキンがよれよれだったり、
金具が曲がっていたり(なにしろ古いものですから)
していたので、思い切って処分しました。
今はガラス瓶の本体に蓋が乗っているという状態ですが、
お茶がすぐに取り出せるし、
まあこれはこれでいいかな、なんて思っています。

忙しい時は、無理しないのが一番ですからね。

(伊藤まさこ)

わたしが ふだん つかうもの [2] 男の道具入れ

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大工仕事は、すべて、
部屋の内装をたのんでいる友人にお願いするので、
自分で手を動かすことはほとんどないのですが、
でもそれなりにトンカチとか、釘とか、
ドライバーは持っています。

大工道具や工具を眺めるたびに、
「男っぽい道具だなぁ」としみじみ思います。
きっとそれはなんだか固そうなものばかりだから?

でも私はその男っぽい道具が、とても好きです。

フィンランドのマーケットで、
この缶を見つけた時、
「これはいい!」とピンときました。
男っぽい道具を入れるのには、
男っぽいいれものがいい、ってね。

聞けば、軍で使っていたものだそうで、
それもなるほどのアーミーカラー。
一見、無骨だけれど、
どの角度から見ても無駄のないデザインで、
それが私には逆に美しく感じられたのでした。

最近、無駄のないデザインを考える時、
軍で使われているもののことを考えます。
デザインとしてシンプルな形を考えたわけではなく、
まずは用途が先に立ってできたデザインが、
結果的にシンプルだった、ということ。

weeksdaysも、
そんなものづくりができたらいいなと思うのです。

(伊藤まさこ)

わたしが ふだん つかうもの [1] 測る道具

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「どうせしまっておくものだから、なんでもいいや」
そういう気持ちでものえらびをすることはありません。

扉を開けた時、
引き出しを開けた時、
いつでも好きなものが目に入ってくる。
そんな状態でいたいと思うのです。

高価なものだからいいというわけではなく、
ものえらびの基準は自分にしっくりくるもの。
それから飽きのこないもの。
自分の持ち物を見返していると、
わりと質実剛健なものが好きみたい。

メジャーや定規などの測る道具も、
こつこつ時間をかけてえらびました。

定規はロンドンの布屋街で、
店の人が布を切る時に使っていたもの。
数字のフォントが気に入って、
どうしても欲しくなり、
「どこで売っているのですか?」とたずねると、
それが案外近所の店。
店を出てすぐに買いに走りました。
探そう、見つけなくては!と意気込むと見つからず、
ひょんなきっかけで手に入る。
ものとの出会いにあせりは禁物だなぁと
思ったできごとでした。

今のところ、
「測る」についての懸念事項は体重計。
どこかにいいものはないかなぁ、
でもいつか出会えるかなぁ、
などと思っているところです。

(伊藤まさこ)

デザイナー・惠谷太香子さんにきく 「私が、シルクの下着をすすめたい理由」

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その3 毎日、着てほしい。

今回、「weeksdays」で
伊藤さんが選んでくださったのは、
トップスにはキャミソール、
ヒップラインまですっぽり隠れるキャミチュニック、
そして袖のパターンがやさしくなじむVネック長袖。
ボトムとして、ヒップをすっぽりつつむショーツ、
この4アイテムです。

トップスは、丈の長さ、肩、袖の仕様がことなりますが、
丸胴仕上げでチューブなので、
縫うところは裾と襟と袖口と脇のみ。
縫い目が肌にあたりませんし、
やわらかく伸びる素材ですから、ストレスフリーです。

いずれも胸元にシンプルでやわらかな
ポリエステルのストレッチレースを使っています。
シルクのレースにすると、レース自体が伸びがないので、
そこを考えて今回は一番繊細なレースにしました。
キャミソールに使っているストラップも、
ソフトでフィット感のあるものを使っています。

それぞれMサイズとLサイズ、
色はモカ、ネイビー、モーブの3色。
モーブはweeksdaysオリジナルの、
パープル寄りのピンクです。

ショーツも、脇に縫い目のない丸胴仕上げで、
ヒップをすっぽりつつむ安心丈です。
縫い目が肌に当たりませんから、
ほんとうにストレスフリーで穿きやすいと思います。
足口にゴムを入れていないので、
鼠径部、リンパを圧迫しません。
ゴムで絞め付けると、肉が分かれて、
色素沈着して肌の色が変わっちゃうんですよ。
水着を着たときにその跡が見えて、
あんまり綺麗じゃないですから。
そうそう、ショーツの内側のマチもシルク100%です。
ここ、とても大事な部分ですから、
そのほうが汚れも早く落ちますし、
ある意味匂いも取れやすい。
マチをシルクにしているショーツって、
たぶん、ないんじゃないかなと思います。
ここはリブだと食い込んでしまうので、
マットにフライスの素材にしています。

ma.to.waは、繊細なものをつくりたかったんです。
なぜなら、肌に近いものにしたかったから。
素材の透け感と伸びを考えると、
ちょっとセレブな爪のついてる指輪をしたままでは
引っかけることが、どうしても、ある。
もっとリアルクローズでバサバサと
日常でどんどん着るものを、というふうにも考えつつ、
やっぱりそのバランスは難しいですね。
それで繊細よりのものに仕上がりました。
おそらく他のシルク100%の製品より、繊細だと思います。

それでもね、ネットに入れて洗濯機で洗えますし、
旅先では手洗いしてタオルに包んで
キュッと絞ったら、すぐ乾く。
出張が多い方にも、ものすごく便利ですよ。

単価としては高いものですけれど、
着る回数を考え、日割り計算すると結構安い(笑)!
そう思っています。

(おわります)

デザイナー・惠谷太香子さんにきく 「私が、シルクの下着をすすめたい理由」

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その2 和の技術で、洋の仕立て。

このシルク素材が「ウォッシャブル」ということにも、
みなさん、とても驚いてくださいます。
この加工、じつはとてもたいへんで、
京都の小さな工房でやって頂いています。
どんなふうにすればそうなるのかは
企業秘密だということなんですけれど、
糸を「かせ」(枠に糸を巻いてとりはずし、
その糸を束ねたもの)の段階で入れて、
ウォッシャブルにしています。
洗いをかけて、温度管理と時間を
いちばんいい状態で加工をするんです。

この加工、歴史がとても古くて、
なさっているかたは「ほんの平安時代から」と仰います。
もともとは、京都御所の中に工房があったそうで、
やんごとなきかたがたの
お召物に使われていた技術だということです。
私個人では巡り合えなかったはずのご縁ですが、
ma.to.waとcohanの製造をしている
豊島通商さんが、
その工房とおつきあいがあったということで、
私にとって、それがとてもラッキーでした。

思い出すのですが、初めて見たとき、
ほんとうにびっくりしました。
ずっとやりたかったシルクの下着が、
この技術があればできるかもしれない! って。
今まで、自分のコレクションは、
ヨーロッパのハイブランドである
ランバンとかニナ・リッチの、
1960年代の生地のデッドストックを頂いて
つくっていたんです。
それはやはりウォッシャブルシルクで、
イタリアのコモという町でつくられているものでした。
エルメスのスカーフでも有名な産地です。
エルメスは、
いかにもウォッシャブルなものではありませんが、
特殊な工房で、コモでおつくりになっている。

そういえば、話が逸れますが、
3ヶ月ほど、コモの工房で、
シルクのプリント図案の修業をしたことがあったんですよ。
私がオペラ座の衣裳室にいたとき、
日本人がどういう図案を描いて、
どういう色使いをするかというのが知りたいと呼ばれて。
私、元々は着物の柄を描きたくて、
辻ケ花の勉強をしていたんです。
面白かったですよ、むこうでつくったものは、
「こんな柄? こういう色なの?」と
向こうの人にはあんまり評判はよくなかったんですが、
それでも気に入ってつくった色が、
日本に持ち帰ったら、まるで違って見えるんです。
光がまったく違うんですね。
‥‥とまあ、ヨーロッパのシルクしか知らなかった私が、
「シルクの仕事をしたい」と言っているのを、豊島さんが
「実は面白いシルクがあるんだけど、
どう扱っていいかわからない」と。
豊島さんの担当の方もずっと悩んでいたそうです。
何を作っていいかがわからないと。
それで私が「是非やらせて欲しい」と立ち上げたのが
ma.to.waなんですよ。
ずいぶん回り道をしましたが、願いが叶いました。
それがいまから3年半ほど前のことでした。

このウォッシャブルシルクは、
もともと和装のための技術ですから、
オペラ座で立体裁断を学んだ私にとって、
まったくの異世界でした。
それで洋装の下着をつくるというのは、
誰にとっても挑戦だったと思います。
ほんとは生地があってデザインを出す
という方が早いんですけど、
正直、その糸自体、リブ編みができるのか、
普通のマットなフライス編みしかできないのかもわからず、
開発がどこまでできるのかもわからないわけです。
ですからとにかく
「こんなものがやりたい」というデザインを出しました。
すると、それは糸番手は何番ですねとか、
匁(もんめ=重さ)を考えてもらい、
サンプルをつくり、そこから生地のバランスを見る。
そんなやりかたですすめていきました。

(つづきます)

デザイナー・惠谷太香子さんにきく 「私が、シルクの下着をすすめたい理由」

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その1 シルクは、第二の肌。

ma.to.wa(マトワ)の名前は、
衣類を「まとう」という言葉からつけました。
シルクはセカンドスキン、第二の肌、
そんなふうにも呼ばれていて、
シルク100%の布を肌にまとわせることは、
とても気持ちのいいことなんです。

以前「weeksdays」で取り上げていただいた
cohan(コハン)というブランドは、
湖のそば、湖畔という言葉からついた名前で、
“リラックスをするもの”ということで、
コットンやウールなど、いろいろな素材を使います。
そちらは、ブランドが先にあり、
私があとからデザイナーとして入りました。
けれどもma.to.waは、
ずっとシルク100%の下着を作りたかった私が、
この素材と出会い、立ち上げから関わっているものです。

「どうしてそんなにシルクが好きなんですか」
と、聞かれることがあります。
なぜ私がシルクをみんなに着て欲しいと思っているか。
それは私のライフワークとして、
体にいいものを作っていきたいということがあります。
いろいろな素材の中で、シルクがいちばん人の肌になじむ。
シルクは、肌と同じ成分であるアミノ酸なので、
理論上、肌にやさしいわけなんですけれど、
みなさんのイメージの「シルク」というのは、
つるつるしていて、ピカピカしていて、
ちょっとひんやりと肌をすべって‥‥
というものだと思います。
これは、じつは、肌にあたる糸の表面の部分は、
シルクとは言えないんですよ。

もともと、蚕が吐き出す糸はとても繊細なので、
それを織物にするためには、
強度を増すために、糸にコーティングをします。
だから糸自体はシルクなんですけれど、
合成物を使って、表面に糸を硬くする加工をし、
織りやすいようにするんです。
皆さんが思われているシルクのサテンとか、
よく出ているシルクの下着は、
洗った後にパリッとするというか、シワになる。
それは糸の周りにコーティングをしているからです。

ma.to.waに関しては、その硬いコーティングをしないで、
糸をそのままニットにしています。
ma.to.waのふわっとした柔らかさは、
それゆえに出ているんです。

逆に言うと、テカテカ・ゴワゴワのほうが、
作り手としては、製品化しやすい。
だからma.to.waに関しては、
作り手がすごく苦労するんです。
それでも、実際に着る方の気持ちになったら、
こっちのほうがいい、と、
自分もユーザーのひとりとして、心の底から思うんです。
ほかの下着とは、つくるときの発想が違うんですね。

何故シルクが好きかと言うと、
やっぱり肌に馴染んで気持ちがよくて、
夏は涼しくて冬は暖かいという、
肌と同じように調節をしてくれる素材だから。
ma.to.waの下着は「白いシャツをめぐる旅。」でも
取り上げていただいていますが、
夏に着てもベトベトしないし、
冬に汗冷えしても寒くない。
旅行に持っていき手洗いをしてもすぐ乾く、
そんな評判をいただいていています。
「汗の匂いもしなくなりました」と
おっしゃるかたも多く、
消臭機能をつけているわけではないのですが、
こういうところは、さすがに自然素材ですよね。
匂いがこもりません。
結構長く着ても、乾きがいいので生乾き臭も少ないです。

シルクを編んだり織ったりしたときに、
ボロボロ落ちていくローシルクから
化粧水や乳液をつくる技術があって、
基礎化粧品の分野では注目をされていますよね。
化粧水は、滲み込みは早いんですけれども、
塗っちゃうと落ちちゃうので、
下着であれば、いつも化粧品を着ている、みたいな、
そんな感じですよね。
じっさい、シルク工場の女の子たちの、
蚕を茹でてお湯から糸を引き揚げる作業をしてる手は、
ものすごく綺麗なんですよ。
そういえば、私が小さいとき、
祖母がもうボロボロになったシルクのお腰を
切り刻んでちっちゃい袋を作って、
その中に米ぬかを入れて顔を洗っていました。
しかも、その後、何もつけないでいても、
とても肌がきれいでした。
亡くなるまでツルツルでピカピカだったんです。
私もじっさい、シルクを身に付けてから、
ストレスでできる吹き出物が
ずいぶん減ったように思います。
私みたいにふだんノーメイクで、
一切何もつけない、という人にも、すごくお勧めです。

ma.to.waの下着は、
シルクってつるつるしてひんやりするでしょう?
‥‥と思っているかたにこそ、
ぜひ、試してほしいと思うんです。

(つづきます)

ma.to.wa

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やさしい肌ざわりを、自分のために。

未分類

年齢を重ねるごとに、
気になってきたのは、
下着の肌ざわり。
やさしく、やわらかく、
なるべく肌に負担をかけないものをと、
くしゅっとさせたり、さすってみたり。

ことに肌が乾燥にさらされる冬は、
いつもより慎重にえらびたいもの。

今週のweeksdaysは、
「ma.to.wa」のシルクの下着をご紹介。
持った時に、ふわり。
着てみると、しっとり体に馴染みあたたかい。
「体がやさしい何かに守られている」
そんな着心地。

キャミソール、キャミチュニック、
Vネック長袖、ショーツ。
色は冬の空気に馴染みそうな、
おだやかな「モカ」「ネイビー」「モーブ」の3色。

「今日はどれにしようかな」
服をえらぶように、
下着もえらびたい。
今年の自分のクリスマスプレゼントは、
「ma.to.wa」の下着にしようかな、
なんて思っています。

私だけのクリスマスケーキ

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ミッション系の学校で育ったせいか、
クリスマスは割と身近だったように思う。
11月末くらいから準備がはじまり、
学校自体が慌ただしくも慈愛に包まれるような、
独特の雰囲気になる。
ミサでは、アドベントキャンドルが
クリスマスまで毎週1本ずつ灯されていく。
其処此処に、生誕のアドベントやツリーが飾られ、
大きなモミの木の点灯式、
聖歌隊の募集に、クリスマス会の練習。
クリスマス会では、最後に聖堂にて
高等部の全員によるハレルヤの大合唱を披露するのが
会の一番の演し物で、
この時期は、クリスマスに向けて
ハレルヤの練習を授業そっちのけでやっていた。
今でも、ハレルヤのソプラノは全て歌えると思う。
思春期には、聖歌隊に誘われないように
静かにしていた位だが、
幼稚園の頃のクリスマス会は、
それは待ち焦がれた一大事であった。

私の一番の楽しみは、
会の最後に表れるサンタクロースが、
園児全員に小さなケーキをプレゼントしてくれる事だった。
ひとりずつに配られるクリスマスケーキは、
小さく作られた丸型で、
バタークリームのバラの花が飾られ、
メレンゲのサンタクロースが乗っているもの。
バニラ味とチョコレート味があり、
ランダムに配られる。
どちらがくるのかは不明で、
その当時はチョコレート味がよかったのか、
開けてみて、白いバニラ味だった時の
落胆した気持ちはよく憶えている。

生家は、商売を営んでいて、
毎年お付き合いという事もあり、
クリスマスケーキが最低でも3~4台はあった。
生クリームのもの、アイスケーキ、焼き菓子のもの。
幼稚園時代は、そこにクリスマス会の小さなケーキ。
このクリスマスケーキの渋滞にあまりいい思い出はなく、
「頑張って食べなければならない」
という、家族全員の静かな決意の元に、
冷蔵庫にある大きな箱がなくなるまで続いた。
特に、生クリームのケーキは急がねばならず、
いつもより大振りに切られたケーキが毎食後並ぶ。
アイスケーキは、まだいい。
急がずとも、お客様がいらした際に
出せばよいという感じだ。
焼き菓子は、これは大体どちらかに
渡していたのではないだろうか?
私自体はあまり食べた記憶はない。

家に数多あるクリスマスケーキの中でも、
特別な美味しさや珍しさもない
バタークリームで作ったクリスマス会のケーキだけは、
別格だった。
私だけに渡されたケーキである。
切られていない丸いままのケーキ。
勿論ひとりでフォークを入れる。
メレンゲのサンタは途中で食べる。
チョコレートの家は一番に。
このケーキを誰が作ったのかも知っていた。
ケーキ屋さんである同級生のお父さんだ。
いつも買いに行くと、
笑顔で迎えてくれる友人のお父さんが作ったケーキ。
それもあわせて特別だったのかもしれない。
毎年同じでも、心待ちにし、嬉しくて特別だったケーキ。
自分だけの小さな丸いケーキにフォークを入れる、
年に一度だけの高揚感を今も手先が憶えている。

白いモスリン。

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十数年前にロンドンの小さな食料品店で出会い、
長年気に入っていた紅茶を輸入し始めて、5年あまり。
出張ティールームのようなイベントも多いので、
ここ最近はクリスマスが近づくと、
ひたすらお菓子を焼く日々が続きます。

イギリスのクリスマスの伝統菓子といえば、
ミンスパイとクリスマスプディング。
ミンスパイは、ドライフルーツやスパイスで作る
ミンスミートを詰めた、小さなパイのこと。
クリスマスから公現祭の十二夜、
毎日1個ずつ食べると幸運が訪れる、
という言い伝えもあって、
イギリスでは毎年シーズンになると、
デパートからスーパーのお菓子売場まで、
ミンスパイが山積みになります。
いろいろな店で買い集めて、
食べ比べをしたこともありました。
有名シェフプロデュースのミンスパイは、
もみの木の香りをつけたお砂糖が
表面にパラパラとかかっていて、
ロマンティックな演出だったけど、
お味は正直‥‥。

いろいろなレシピがありますが、
私は数種類のレーズンやオレンジの絞り汁、
スパイス、刻んだりんごやくるみなどで
ミンスミートを作ります。
欠かせないのは、ブランデー。
香りづけはラム酒ではなく、
ブランデーを使うのがイギリス。
ミンスミートは作りたてよりも、
しばらくおいた方が
味がなじんでおいしいので、
11月になると、
早く仕込まなきゃとそわそわします。

一方で、毎年苦戦しているのが、
クリスマスプディング。
ドライフルーツをふんだんに使った生地は、
材料を混ぜるだけなので簡単ですが、
専用の陶器のボウルに詰めて、
長時間、蒸すのがひと苦労です。
昨年、ロンドンの友人が送ってくれた
彼女のママのレシピでは、
蒸し時間は、なんと4時間。
さらに半年以上、涼しい場所に吊るして干し、
食べる直前にまた温かくなるまで
数時間蒸すというのです。

いったいいつ作って、どこに干せばいいの?
暑くて湿気の多い東京で、
半年もおいて大丈夫だろうか‥‥。
もう少し手軽なレシピもあるけれど、
なかなか手強い。
北国のどこかに物置を借りて、
漬物小屋ならぬ、プディング小屋を作ろうか。
そんな妄想はふくらむものの、
試作すらままならず、挫折のくり返し。

以前、ロンドンのある店で見つけた
クリスマスプディングは、
プディングの入った陶器のボウルを
白いモスリンでふわりと包み、
素っ気ないタグをつけたシンプルさで、
造り物の柊の飾りや
クリスマスカラーのリボンもなく、
モスリンの柔らかな白さが際立っていました。

ガーゼのように薄く柔らかい
モスリンの布は、イギリスでは、
赤ちゃんのおくるみに使われるコットン。
そんなクリスマスプディングに憧れて、
ロンドンの生地街で
イメージ通りのモスリンを探し、
抱えて持ち帰ったのは、もう数年前。
今年こそは、いや、来年こそは‥‥。
出番を待つ白いモスリンを
横目で眺めながら、
寒い12月も、慌ただしく
過ぎ去っていきそうな気配です。

ロロスツイードのこと。

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ノルウェー中部のロロス村。
海抜600メートル、冬はマイナス40度にもなるという
世界遺産としても知られる小さな村で、
「ロロスツイード」はつくられています。

無農薬の牧草で育つ羊の新毛(ニューウール)をつかい、
北欧で唯一、国内で紡績(糸づくり)をしている
関連会社のラウマ社とともに、
染織、機織りまでの製品化の工程を
グループ内で一貫しておこなっているロロスツイード。
その織物づくりの歴史は、
18世紀にまでさかのぼります。

ロロス村はもともと銅鉱山の町として
1644年から333年にわたって栄えてきました。
そんななか、18世紀に、鉱山管理者のヒョルト氏が、
まずしかった村の人々のための基金を設立。
それをもとでに、村人たちは
ウールなどの手織りの仕事をはじめます。
それが伝統的に受け継がれてゆき、
個人宅での手織り仕事をグループ化して、
まとまった販売所をもうけるというかたちで、
1938年にロロスツイード社が誕生しました。
そして1952年には織機を使っての工業生産を開始。
そうして現在のような、世界的に評価される
ロロスツイードがつくられるようになったのでした。

▲ノルウェーにあるロロスツイードの工房

原毛は「ノルウェージャン・ホワイトシープ」から。
無農薬の牧草を食べて育った
健康な羊たちから、春に刈り取った毛をつかいます。
この羊毛のいいところは、
水に強く、かつ、繊維の回復力が高いこと、
そして柔らかさも兼ね備えていることです。
織り上げた生地は、お風呂くらいの温度のお湯で洗浄、
乾燥ののちスチームとブラッシングを繰り返して、
ふんわりと起毛させることで、
ほどよいボリューム感がありながら、弾力性にとみ、
防寒・保温性ばつぐんのツイードがうまれます。

ロロスツイードの魅力は、品質だけでなく、
そのデザインにもあります。
ブランケットなど製品のデザインは、
基本的に社内のデザインチームが行ないますが、
ノルウェーを代表するような芸術家たちとの
コラボレーションも数多く手がけています。
もちろん、長く愛されている定番的なデザインもあります。
品質そして色とデザインのよさ。
これは、冬がながく厳しいノルウェイで、
家の中でたのしくあかるく暮らしたいという
ひとびとの気持ちから、来ているのかもしれません。

▲「ヴィンタースコッグ」(Vinterskog)という
ロロスツイードを代表する「もみの木」柄。

ROROS TWEED

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ブランケットと湯たんぽ

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陽だまり。
毛糸玉。
やかんの湯気。
ぶあつい靴下。
マグカップに入ったミルクティ。
雪柄のミトン。
キャンドルの炎。

空気も地面も冷たくなる、
こんな季節はやっぱりあたたかいものが恋しくなります。

今週のweeksdaysは、
ロロスツイードのブランケットと湯たんぽ。
色は、森のような深いグリーンと
部屋も気持ちも明るくしてくれる赤の2色です。

湯たんぽをかかえて、
毛布にくるまりながら、
読書したり映画を観たり。

寒い日が待ち遠しくなる、
ぬくぬくのアイテム。
冬仕度にいかがですか?

ちいさな革のトートバッグのコーディネート

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ワンピースをさらりと一枚。
それに気に入りのバッグと靴。
そんなシンプルなよそおいが好きです。

今回、バッグと合わせたこのワンピースは、
さらりと一枚着ただけ‥‥なのですが、
ふわりとした袖やスカート部分のフレアのラインなど、
細かい工夫がところどころに感じられるもの。
シルバーにもよく馴染み、
ニットの質感をさりげなく引き立たせてくれています。

そこに合わせたのは、赤いショートブーツ。
少しだけクリスマスをイメージしたのですが、
明るめのブルーとか、
きいろなどのブーツでもよさそうだな、と思いました。
シルバーって、懐の深い色なのです。

バッグの持ち手に、
しなやかな素材のスカーフを結びました。
間口が空いているので、
スカーフを目隠し代わりにしても。

容量はたっぷりながら、
合わせる服によって、
ちょっとした夜のお出かけにも合うのも
このバッグのいいところです。
黒とグレーで統一したコーディネートを、
シルバーがまとめてくれる。
バッグを主役にした着こなしです。

清楚な水玉ワンピースを着る時は、
髪をしゅっとひとつにまとめて。
ふだんは小さなバッグを合わせるところですが、
今日はシルバーのバッグ。
バッグとファーのコートに目がいくから、
アクセサリーもつけません。

マットなシルバー、やわらかな質感のワンピース、
ふかふかファー。
色や服の形だけでなく、
「質感」のコーディネートもたのしんでくださいね。

(伊藤まさこ)

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