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自分の呼吸に合わせてくれる。
cohanの下着をはじめて身につけた時、
ああ、私はこういうのを待っていたんだ、
とうれしくなりました。
日本人の肌質や、体のラインを知り尽くした
デザイナーの惠谷さんが作る下着は、
「だからつけ心地がいいのか!」
と、納得するところがたくさんあるのです。
(明後日からの対談をどうぞごらんくださいね)
ある日、惠谷さんにこんな質問をしました。
「旅に持って行く下着、どうしてる?」
そこでおすすめされたのが、
チュールネットという素材でできた、
ブラジャーとショーツ。
「ほら、見て」
くしゅくしゅと折りたたむと、びっくりするくらいコンパクトになる。
「洗ってもタオルで水気を吸い取れば、
あっという間に乾いちゃう」と惠谷さん。
つけごこちのよさはもちろんのこと、
かさばらず、洗ってもすぐに乾く。
そんな下着、じつはありそうでなかなかなかったのです。
色は黒、ベージュ、ターコイズ、
そしてweeksdaysオリジナルのハーブグリーンの4色。
旅にはもちろん、ふだんにも。
軽くてらくちん。
まるで下着が自分の呼吸に合わせてくれているみたいな、
cohanの下着。
これから少しずつそろえていきたいな、
と思っています。
伊藤まさこさんのドリンクレシピ。
1.お酒が入っていないピニャ・コラーダ


カクテルとして有名なピニャ・コラーダですが、
お酒を入れないと、
あまくて冷たい、
ちょっと南国っぽいドリンクになります。
ココナッツミルクを多めに入れ、
こっくりとさせたので、
小さなグラスでもじゅうぶん満足。
パイナップルジュースではなく
生のパイナップルで作るとおいしさが倍増します。
グラスの淵にパインを飾るとかわいさも倍増。
■材料(作りやすい分量 3~4杯分)
- パイナップル
- 3センチ角くらいに切ったものを10個
- ココナッツミルク
- 100ミリリットル
- 砂糖
- 大さじ2
- 氷
- 10個ほど
■つくりかた
飾り用のパイン(分量外)は、
グラスにはさみやすいように皮に切れ目を入れておきます。
材料をすべてミキサーにかけ、
よく混ざったらグラスに注ぎ、パインを飾ります。
2.リモンチェッロのグラニテ


イタリアの食後酒、リモンチェッロ。
さわやかであまくて飲みやすい‥‥のですが、
じつはアルコール度数はとても強め。
今回は水で割って凍らし、
食後の口直しにぴったりな、
少し軽めのグラニテにしてみました。
リモンチェッロと水の比率は各自お好みで。
水を多めにすると、よりしゃりしゃり感が強くなります。
あまり薄めると凍らした時に物足りないので、
味見をしてみて「おいしい」と感じた濃度でどうぞ。
■材料(作りやすい分量で)
- リモンチェッロ
- 適量
- 水
- 適量
■つくりかた
リモンチェッロと水をステンレスの容器に入れ、
冷凍庫で冷やし固めます。
完全に凍る前に、何度か冷凍庫から出して、
フォークなどでかき混ぜましょう。
あらめが好きな方は2、3回。
細かいのが好きな方は5、6回混ぜると
なめらな口当たりになります。
3.アイスオレンジティー


アイスティーに
柑橘のさわやかな香りと風味を足しました。
飾りにはオレンジの輪切りを。
グラスの口径いっぱいに浮かぶオレンジが、
見た目にうれしいドリンクです。
■材料(作りやすい分量で)
- 紅茶
- ティーバッグ1人1つ
- 水
- 適量
- オレンジ
- 1人分につき1つずつ
- ミント
- 適宜
■つくりかた
お好きな紅茶をティーバッグに入れ、
水を注いで一晩おき、
水出しのアイスティーをつくります。
グラス1杯につき、
オレンジ1/4個分をしぼり、
スライスしたオレンジとミントを飾ります。
4.おまけのおやつレシピ
自分で作るフルーツサンド
娘が小さな頃に、よく作ったおやつがこれ。
器にそれぞれ、季節のフルーツ数種類と
泡立てた生クリームを盛り、
サンドウィッチ用の食パンを添えてどうぞ!
見た目にわくわくするのと、
さらには自分で作る楽しさがくわわって、
とてもよろこんだものでした。
よろこぶのは子どもだけじゃありません。
今回のweeksdaysの撮影時もみんな大盛り上がり。
気軽に作れて、見た目に楽しい。
ガラスの器はこんな使い方もできるのです。
■材料(作りやすい分量で)
- サンドウィッチ用食パン
- 適宜
- 季節のフルーツ
- 3種類くらい(この時はいちじく、バナナ、ソルダム)適宜
- 生クリーム
- 適宜
- 砂糖
- お好みで
■つくりかた
食パンを4等分します。
(みみは、お好みで。)
季節のフルーツは食べやすい大きさに切り、
それぞれ器に盛ります。
甘みや酸味、食感がちがうものを
組み合わせるとたのしいですよ。
生クリームは、好みの量の砂糖を加え、
泡立てて器に盛り、
各自、パンにフルーツと
生クリームをのせてどうぞ。
齊藤能史さんにきく「職人気質の松徳硝子」。
あたらしいコップをつくりました。
「白いお店 &」のときからそうなんですけど、
まさこさんからいただくイメージを
いかにかたちにするかっていうのが
自分の役目だと思っています。
松徳硝子では、それを職人たちが、
さらにかたちにするという二段階の作業があるので、
自分はその間に立つ
「通訳」のようなものだと思っています。
まさこさんって、単純にかたちのイメージだけじゃなくて
「こんな用途、いいかな」ということを伝えてくださる。
それを自分なりに解釈して、最初のかたちをつくります。
型紙で始め、次は職人といっしょにサンプルをつくって、
まさこさんに見てもらい、
じっさいに使っていただいたうえで、
さらなる微調整をします。
「weeksdays」のガラスのシリーズは
その繰り返しでできていきます。
そういう中で、今回、まさこさんから、
「ちっちゃなコップがほしい」
という提案がありました。
たとえばビールを飲むときに使うようなコップです。
松徳硝子のラインナップでいくと「うすはり」のような、
結構、シュッとしたものが多かったりするんです。
料亭や割烹で使われるタイプのものですね。
けれどそれだと「コップ」と名付けたときの
ちょっとしたかわいらしさがありません。
それはやっぱり「グラス」の風情なんですね。
きっとそれはまさこさんの思いとは
違うんだろうなと考えました。
じっさいにまさこさんからも
「『コップ』っぽくしてほしい」
という意見をいただきました。
その「コップ感」のバランスをどうとるか、
そこがぼくの仕事でした。
かなり試行錯誤をしましたが、
最終的には「うん、これですね!」と、
このコップが完成したんです。

▲右が松徳硝子のビールグラス、左が「weeksdays」のコップ。たしかに「かわいい」印象に!
コップから「うつわ」へ。
まっすぐ立ち上がる、底が大きくて背のひくいものは、
「ガラスのうつわ」と名前がつきましたが、
大中小の3サイズをつくりました。
このなかの「小」は、「白いお店 &」のときに
「松徳硝子のコップ」として販売をしたものと同型です。
それはもともと、フランスとスペインの国境にまたがる
バスク地方の伝統的なチャコリというお酒のためのグラス
「ボデガ」がアイデアのもとになっていました。
まさこさんからは、今回、
その形状をそのまま大きくして、
でも高さはそろえつつ、
飲み物だけじゃなく、ヨーグルトやスイーツ、
または冷菜を入れてもいいような、
ガラスのうつわがほしいという提案がありました。
その製作にあたって大事にしたテーマは、
「高さを揃える」ということです。
そしてそれは図面的にも製造的にも苦労した部分です。
というのも、工場見学をしていただいておわかりのとおり
ガラスの型吹きというのは、
型に入れて、下から吹きあげるんですね。
底のかたちを作ってから上に立ち上げる。
この作業は、径が広ければ広いほど
高い技術を要するものなんです。
途中で調子がずれると、段ができてしまったりする。
つまり、「小」は底面積が小さいのでつくりやすいけれど、
「中」「大」になるほど難しくなるんです。
そのこともあって、ガラスの薄さについては、
コップと、うつわの「小」は薄く、
「中」「大」はすこしだけ厚手にしました。
これは耐久性を考慮してのことでもあります。
結果、できあがったものは、
スタッキングすることができ、
その重ねたすがたは、
横から見ても真上から見ても
キレイだと言っていただけるものに仕上がりました。
もちろん、手づくりですから、機械生産のような
完全に均質なものはつくることができません。
どうしても個体差が出ます。
これを無理やり統一しようと、
管理を厳しくなりすぎても松徳硝子の製品は成立しません。
けれども「厳しくしない」ことが過ぎると、
逆にいえば「何でもあり」になる。
精緻に同じ形をつくることならば
機械生産のほうが合っていますし、価格も安くなる。
そこと勝負をしても仕方がないですよね。
やっぱり値段相応の明確な差、
手づくりガラスだからこそ生まれるよさを、
ぼくらは、表現することができなければいけません。
スペインやフランスのボデガは機械生産で、
ほんとうに庶民的なものですから、価格も安いんです。
でも伊藤さんがおっしゃるのは、
「あれはあれでいいんだけど、
家で夜、ちゃんとゴハンを作ったときに、
それでいいのかなと思った」
ということなんですね。
機械生産ではできない、手だからできるもの。
「weeksdays」の「ガラスのうつわ」は、
その期待にそうものができたように思います。
道具としてのプライド。
ガラス自体の透明度は原料と製法に左右されます。
うちは、光学レンズ用の原料を使っていることと、
工場見学のときにもお話ししましたが、
金型の内側に毎日コルクの炭を塗っていることで、
透明度とともに表面のツルツルしたなめらかさを
実現しています。
松徳硝子の職人はストイックですよ。
大先輩に、片桐という職人がいたんですが、
それこそ50何年やって「現代の名工」にも選ばれ、
3、4年前に引退したんですけど、
自分が入ったばっかりのとき、
これからの設計や企画の参考にしたいなと思い、
「親方、今までつくってきて『よかった』とか
『こういうものが好きだな』って、ありますか?」
と訊いたんです。するときっぱり、
「んなもん、ねえ!」
って。
「『これ完璧だ』なんて思ったことねえから、俺は」
‥‥そんな職人が多いんですよ、松徳硝子って。
職人気質といいますか、世の中には、
一流の作陶家に見えてもご自身は「陶工だ」と
おっしゃるかたもいますし、
すばらしいフランス菓子を作るかたが
「自分はパティシエじゃない、菓子職人だ」
とおっしゃったりもする。
そんな気概の職人が、松徳硝子にも集まっています。
うちのガラスは、作品ではありません。
常に道具でありたいと思っています。
酒を飲む道具だったり、料理を楽しむ道具だったり。
ただ、それはとても難しいことでもあります。
ものって、足し算してるほうが簡単で、
引き算で削っていくと、ちょっとしたアラが目立つ。
満足できないです。
でも満足したら終わっちゃうんだろうな、とも思います。
将来──ですか。
今はやるべきじゃないし、
そんな余裕もないし、
いままで話したことと矛盾もするし、
やるつもりがない、という上での話ですけれど、
もしかしたらその「満足したら」の
先にあるかもしれないことを話します。
ヨーロッパなどで、
いわゆる日常使いの器を作る工房と、
それとは別のアート部門が
同じメーカー内にあったりしますよね。
そういうのって、ちょっとだけ羨ましいです。
理想ではありますよね、松徳硝子のクラフト部門や、
そのプロダクトが生まれていくことは。
でも、まだまだこの「職人」のつくるものを
世の中に出していくのがぼくの仕事。
そう思っています。
松徳硝子さんで工場見学。


「電球用ガラス」というところで、
ちょっとびっくりしたかたもいらっしゃるかもしれません。
でも考えてみたら、電球というのは、とても薄いもの。
それを手づくりするには、当然のことながら、
高い技術が必要でした。
つまり当時から松徳硝子には、腕のいい
職人が集まっていたのです。
やがて機械化の時代が訪れ、
電球は、機械生産のものが市場を席捲します。
そんななか、松徳硝子は、手づくり電球から
「ガラス器」へと、主要製造品目をシフトしていきます。
そこで役に立ったのが、
「均質な薄いガラスを吹く」技術です。
電球をつくるテクニックは、
料亭や割烹から依頼される
「薄い、ひとくちビールグラス」
をつくるのに役立ちました。
そうして数千種類にもおよぶ
ガラス器をつくってきたノウハウは、
平成元年(1989年)、ひとつのアイテムに結実します。
「うすはり」グラスです。
ビールやお酒、つめたい飲み物を飲むのにいいと、
TVCMなどでも多く使われることになり、
松徳硝子の名前を世の中にぐんと広めたのでした。
その後、一般的なクリスタルガラスで使われる鉛を
バリウムで代替する技術を確立。
現在、松徳硝子で使っているのはすべてが
「無鉛クリスタルガラス」になっています。
伊藤まさこさんの隣にいる巨漢は、
齊藤能史(さいとうよしふみ)さん。
松徳硝子のクリエイティブディレクターであり、
営業マンから経営までを引き受けているかた。
「weeksdays」の前身である「白いお店 &」のときから
ずっと「ほぼ日」の担当をしてくださっています。
今回、伊藤まさこさんからの
「こんなガラスのうつわがあったらいいな」
というアイデアを、職人さんたちとタッグを組んで、
じっさいにかたちにしてくださったのも齊藤さんです。
松徳硝子の工場は2階建てです。
その2つのフロアの中央に
築炉されているのが都市ガス専焼炉。
それをぐるりと取り囲む2階フロアで
職人さん達が仕事をしています。
この現場、ものすごい熱さです。
ましてや夏。暑いというよりも、熱い!
炉を遠巻きにしているだけで汗が出ます。
そんななかで、職人さん達は
炉から溶けたガラスを竿の先にとり、
息を吹いてふくらませます。
とうぜん大量の汗をかくので、
すみに設置された巨大な冷蔵庫と製氷機から
ジョッキ大のカップに冷たい飲み物を入れ、
脱水症状にならないように気をつけながら
作業をすすめていました。
松徳硝子でつくっているものは、
手づくりとはいっても「作品」ではなく「プロダクト」。
つまり、一定の品質基準と規格を
まもらなければいけません。
つまり、同じかたち、同じ薄さ、同じ重さに仕上げる。
それが職人の技です。
「weeksdays」のうつわは、
松徳硝子で扱う製品のなかでも難易度が高いものだそう。
そこで齊藤さんプロデュースのもと、
熟練の職人さんが3人でチームをつくり、
無駄のないうごきでつくっています。
ガラスの主原料は真っ白な「珪砂(けいしゃ)」です。
これを炉で溶かしたものを竿の先につけるところから
ガラスのうつわづくりがはじまります。




同じ大きさに仕上げるためには「金型」を使います。
その金型の内側には、コルクの粉末を炭にしてつけた
真っ黒な層があり、そこに水分を含ませることで、
熱いガラスが入ってきたときに瞬間的に水蒸気を発生させ、
溶けたガラスと金型の間に水蒸気の膜をつくります。
形をととのえながら、くるくる回しているとき、
ガラスは、水蒸気の膜の内側にあるのです。
ちなみにその炭の層は、毎日剥がしてまた塗って、
という作業をくりかえしています。
このメンテナンスがきちんとできているから、
松徳硝子の製品は、こんなにうつくしく仕上がるのです。
すこしでもダメな仕上がりであれば、
すぐに廃棄の判断をします。
手をかけても最終的にうまくいかないものは、
職人さんたちには、すぐにわかります。
ガラスのいいところのひとつは、
廃棄してもまた溶かせば、
原料として再利用ができるところです。
かたちができたら「冷やす」作業です。
ゆっくり(1日くらい)時間をかけて冷やす
「留めざまし」を行うこともありますが、
「weeksdays」のようにたくさんつくるときは、
「送りざまし(除冷マシンの中を通す)」を行うことで、
うんと時短ができるそうです。
冷めたら、目視で検品をします。
続いて「口」をカット。
まずダイヤモンドカッターで筋をつけます。
その筋から本体を分離させます。
口の部分は、このままでは「なめらかさ」がないので、
まず機械に通して、やすりをかけます。
さらに、回転する鉄板に
水と粒度の細かい砂(金剛砂)を垂らし、
専任の職人さんが、絶妙な力加減で、磨きます。
続いて、洗浄工程にうつります。
やわらかな水流(噴水のようなしくみ)にあてます。
最後に、口のあたる部分に炎を当てます。
こうすることで表面をとかしてなめらかにします。
最終検品では、ひとつひとつ丁寧に目視をして、
できあがりです。
ちなみに松徳硝子では、「つくる」職人さんと
「仕上げる」職人さんは、それぞれが専門職。
そのほうが品質も効率もたかまるのだそうです。
次回は、齊藤さんによるアイテム解説をおとどけします!
松徳硝子 コップとうつわ
テーブルの上で、空気のように。
ガラスの魅力はなんといっても、
その透明感。
陶器や磁器がならぶテーブルの上に、
ぽん、とひとつ置くだけで、
その場所に空気が通る。
ファッションやメイクでいう「抜け」のようなものを
テーブル上で表現したい時に、
ガラスは力を発揮してくれます。
私がまいにち使いたいのは、
かぎりなく余分なデザインをそぎ落としたグラスや器。
それでいながら、
手に持った時の感触や、
口に触れた時の感覚が冷たくないもの。
水やビールをそそいだ時や、
料理を盛った時に、
ぐっとひきたててくれるもの。
今回、松徳硝子にお願いしたのは、
ほんとうにふつうの「コップ」と、
以前作った円筒形をした形のグラスを元に
サイズを大きくした器。
ひとつひとつ手でつくられるため、
感触にはあたたかみが。
それでいながら、
的確な作業が生み出すその姿はとても端正。
中に入れたものを、
「ぐっとひきたててくれる」、
願い通りのものができあがりました。
伊藤まさこさんの THE LIBRARY コーディネート
その3 さし色がいきる、上品なグレー。
同じ形ながら、
ネイビーともトマトともまったく印象が変わる、
ニュアンスのある明るめのグレーの
ワンピースとプルオーバー。
薄いカーキ色のパンツやトレンチコートを合わせ、
全体的にふわりと軽い印象にしてみました。
髪に巻いたのはシルクのスカーフ。
こんな風に、
黄色や赤など、少しさし色を入れると
グレーの上品さがより引き立ちます。
真っ赤なルージュもかわいいかもしれませんね。
ここからは私の私物と合わせた
コーディネートを紹介していきます。
グレーとブルーグレーは私の大好きな色の組み合わせ。
なんといってもシックで上品。
大人だからこそ似合う色合いだと思うのです。
さらにトレンチコートを羽織ればより大人っぽく。
肌うつりのよいグレーは、
冬の街にも映えそうです。
(トレンチコート:YLÈVE)
ロング丈のニットカーディガンを羽織り、
ショートブーツを合わせてみました。
グレーまたはニットと同系色のストールを巻いたり、
シルバーのブレスレットをいくつかつけてみても。
(カーディガン:YLÈVE)
伊藤まさこさんの THE LIBRARY コーディネート
その2 気分うきうきの、トマト。
着るのはもちろん、
クローゼットにかけてあるだけで
気分がうきうきしてしまう
トマト色のワンピースとプルオーバー。
パッと目をひく元気な色合いに合うのは、
やっぱりシンプルなコーディネート。
ワンピースはショートブーツと、
プルオーバーはデニムと。
アクセサリーもなし。
これ以上にないくらい引き算していますが、
形にくわえて「色」がチャームポイントになっているので
さみしい印象にはけしてなりません。
モノトーンを着慣れた方には、
ちょっと派手? と思われるかもしれませんが、
袖を通すと意外なほど、どんな方にもしっくり、すんなり。
これからの季節はコートやニットコートなどを上に羽織り、
トマト色をちらりと見せる、
なんて着こなしもよさそうです。
ここからは私の私物と合わせた
コーディネートを紹介していきます。
ジャージー素材ながら、
きちんとした印象に見せてくれるワンピース。
黒のヒールの靴と小さなバッグを斜めがけすれば、
お出かけのコーディネートは完成。
少し大ぶりのパールのピアスをしたり、
首にスカーフを巻いたり。
ちょっとした小物で着こなしの変化をつけても。
デニム素材は抜群の相性のよさ。
バッグと靴、小物はすべて白にして
軽やかさを出しました。
また、デニムをロールアップしてバレエシューズと
小さめのかごを持っても。
街着から旅の街歩きまで。
小物でいくらでも変化がつけられそう。
(デニム:YLÈVE/バッグ:weeksdays)
伊藤まさこさんの THE LIBRARY コーディネート
その1 すっきりシンプルな、ネイビー。
ダークなネイビーは、
まずはじめに取り入れやすい色。
この色を着ていると「落ち着く」。
そう思う方も多いのではないでしょうか。
まず私がおすすめしたいワンピースの着こなしは、
黒い靴ですっきりシンプルに着ること。
今回は太めのワンストラップが印象的な
trippenを合わせました。
ひとつ気をつけたいのは、
髪をすっきりまとめて軽やかに見せること。
襟元のラインが美しい服なので、
ぜひともそこを見せて、
すっくとした姿勢で着こなして欲しいと思います。
プルオーバーは、
初秋らしく
白の太めのコーデュロイのパンツと。
ネイビーと白。
相性のよいふたつの色の組み合わせは
着る人をシックに、上品に見せてくれます。
同系色のストールを巻けば、
さらに秋の気分に。
このプルオーバー、
じまんしたいのは絶妙な丈。
気になるウェストをカバーし、
全体をバランスよく見せてくれる。
デニムにも、細身のパンツにも。
一枚あると、着まわしのきく服です。
ここからは私の私物と合わせた
コーディネートを紹介していきます。
シンプルなシルエットのワンピースは、
持ち手が印象的な木のバッグや赤い靴など、
ちょっと個性的な小物も
すんなり受け止めてくれます。
もう少し寒くなってきたら、
靴下やタイツとのコーディネートも楽しめそう。
赤い靴には白いナイロンのソックス、
ブルーのスニーカーにはグレーのタイツなど、
ワンピースとの色の組み合わせを考えてみては?
少し光沢のある糸が混ざったスカートとの組み合わせ。
プルオーバーの裾をインして、
スカートのラインを引き立たせました。
ファーのバッグやエナメルの靴など、
いろいろな素材を混ぜても、
全体的にしまってみえるのは、プルオーバーの素材が
ひかえめだから。
コーディネートのしやすさは、
こんなところにも現れるのです。
THE LIBRARYのカットソー
もう途方にくれなくて、大丈夫。
Tシャツでは、ちょっとカジュアルすぎる。
でもニットという気分でもない。
ああ、今日何を着ていけばいいんだろう?
クローゼットを前にして、
途方にくれた経験、だれにでもあるはずです。
できれば、
着ていて体が楽ちんでいながら、
きちんと見える服がいい。
コーディネートによって
カジュアルにもなるし、
ちょっとすました感じにもなり、
仕事にも、そのあとの食事の約束にも
そのまま行けるような
カットソーのワンピースやトップスが
あったらいいのにな、と思っていました。
今回、私のわがままに応えてくれたのは、
THE LIBRARY のチーム。
襟ぐりの開き具合や、袖丈、着丈、色や素材。
服を作るときに、決めることはいろいろありますが、
私が伝えたのは最初に書いたような、
欲しい服の輪郭のようなものでした。
つまりとてもおおざっぱだったのですが、
そこは安心していました。
なぜなら THE LIBRARY のものづくりや、
店のありかたに
とても親近感を覚えていたから。
この人たちなら大丈夫。
そんな安心感もあったのです。
さて、できあがった服は
私の思った通り、
「着ていて体が楽ちんでいながら、きちんと見える服」。
ものすごくシンプルに見えますが、
そのシンプルの中に、
たくさんの工夫が凝らされているんですよ。
好きなものを信じよう。
- 伊藤
- 敬子さんの鞄、やっぱり敬子さんらしいなぁ。
- 岡本
- いかにもね、これって、部族よね。


- 伊藤
- かわいいー!
- 岡本
- この手のバッグは、
もういっぱいあるんですけど、
これが最新です。
南米のつくり手のバッグなんですよ。
- 伊藤
- いったいどこで見つけるんですか?
- 岡本
- 友人のお店でポップアップをやるからと教えてもらい、
わたしの好きなタイプだなと思って行きました。
ぽんぽん入れられるのがいいんです。
こういうバケツ型がとにかく好き。
そして、派手なんだけれど、
あんがいいろんな洋服に合うでしょ。
- 伊藤
- 今日のスタイルにも合いますね。
- 岡本
- そうそう。柄に柄でもぜんぜんおかしくない。
服の、柄の中の一色が、
柄のバックになんとなく入ってると、
そんなへんなことにはならない気がする。
- 伊藤
- そっか、柄もの中の1色を使えば、
失敗しないんですね。
- 岡本
- これはね、フリンジバッグ。
わたしもいちおう鞄をつくってるんです。
タッセルとかフリンジとか大好きで、
大中小とつくったんですよ。
- 伊藤
- きれいな色ですね。
- 岡本
- そうなんです。
赤はね、赤い小物というのがほしくって。
どれも、鹿児島のRHYTHMOS(リュトモス)さんに
制作をお願いしています。
- 伊藤
- やっぱりものを作るとき、って、
世の中に自分のほしいものがないからですか?
- 岡本
- そう。シンプルなタッセルつきがほしいなぁ、
と思って、フラットだったら旅に出られるし、って。
- 岡本
- これはTEMBEA(テンベア)さん。
まさかのビキニ柄!
しかも、わたしに似た人もいたりして、
このビキニ柄、わたしが持たずに誰が持つ?
って、買いました。
- 伊藤
- ビキニが好きっていうのは‥‥
- 岡本
- そうだ、ビキニ、つくる?
一緒に。
- 伊藤
- ビキニ、つくりたい!
わたしも、ほんと、もういいやーと思っているんです。
ハワイもビキニで過ごしてたんですよ。
- 岡本
- それでいいのよ。
- 伊藤
- いいんですよね。
- 岡本
- いいのよ、いいのよ、ぜんぜん。
だって、お腹の出てるおばさんたちだって、
おばあちゃんたちだって、ぜーんぜん着てるもの。
- 伊藤
- 来年の夏を目指してつくりたいな。
- 岡本
- これは、zattu (ザッツ)というブランドなんですけど、
素材がマイクロファイバーで、
すっごい軽くて洗えるの。
飛行機のシートとか、
そういうのでも使われる素材です。
大きいサイズもほんとはあるみたいで、
男性も最近けっこう持ってらっしゃって。
- 伊藤
- すごい、たのしい。
- 岡本
- これはモンクバッグという、
お坊さんが斜めがけするバッグです。
タイのチェンマイで買ったんですけど、
生地自体は、ラオスの古いものを
使っているみたいです。
- 伊藤
- 刺繍ですね。
- 岡本
- 白い服とか、黒い服とか、
なんかそういうときにアクセントとして。
- 伊藤
- 柄物のバッグかぁ。
持ったことないなぁ。
- 岡本
- いろんなところのスーベニールを
買って身につけたスタイルがすごく好きなんです。
旅のミックススタイルみたいなのが。
- 伊藤
- いろんなところから集まったものを
身につけているはずなんだけれど、
ちゃんと敬子さんスタイルになっているんですよね。
- 岡本
- そう(笑)?
- 伊藤
- これもかわいい!
- 岡本
- カリフォルニアの、手編みブランド、
KKIBO(キボ)ということろのバッグなんです。
この人はdosa(ドーサ)という
ブランドにいた人なんですよ。
- 伊藤
- とても素敵。
敬子さんはバッグをいくつぐらい持ってるんですか?
- 岡本
- 数えたことがない!
フリマを開いたりして処分しつつ、
また買っちゃうから。
- 岡本
- これはCI-VA(チーバ)というブランドのバッグです。
向田邦子さんが似合いそうなバッグでしょ?
- 伊藤
- ほんとだ、ほんとだ!
- 岡本
- トレンチコートとか、
そういうのに合わせたらすごいクラッシックで
すてきだなと思って。
- 伊藤
- しかもよく使い込まれていますよね
- 岡本
- これはメキシコのオアハカというところのもので、
たぶん野菜とかを入れるんでしょうね。
この素材はテキーラをつくる竜舌蘭(リュウゼツラン)。
編み目が大きいので、
わたしはここに巾着とか入れて持つという感じです。
- 岡本
- そしてこれは、
ダニエラグレジスというデザイナーの、
わたしの大好きなブランドのバッグです。
リンゴとかを入れる収穫バッグを
イメージしてつくられたらしいんですけど。
- 伊藤
- かわいい。
どのバッグも、口が開きっぱなしなんですね。
- 岡本
- そうそう、そうなんですよ。
- 岡本
- あとは、番外編なんですけれど、
うちの主人がインドに行ったときに、
インドのグジャラート州という
ちょっと西のほうなのかな、
そこで買ってきてくれた、おみやげです。
こういう工芸品もちょっと好きなんです。
- 伊藤
- 旅って、敬子さんのもうひとつのキーワードですよね。
インスタグラムを拝見すると、
いっつも旅に出てますよね。
- 岡本
- 旅に行って、それこそマンウォッチングして、
ああ、なるほど、こういう感じね、とか、
最近の水着の傾向は、うーん、そういう感じね、
とか見ているんです。
このごろは国内が多いですね。
- 伊藤
- お仕事絡み?
- 岡本
- 半分くらいかな。
- 伊藤
- 敬子さんを見ていると、
わたしもそうかもしれないけれど、
仕事と遊び、どっちがなくてもダメっていうか。
- 岡本
- そうそう。オン・オフはない。
オフと言えばオフだし、オンと言えばオンです。
遊んでばっかりだとダメだし、
仕事ばっかりでもアレだし、
すごくつながってる気がしますね。
- 伊藤
- どのバッグも、明確に、
敬子さんの「好きだから買った」っていう
思いが伝わってきます。
そして、あらためて見ると、
敬子さんのバッグって、
上が閉まってない‥‥。
- 岡本
- そうなんです。
ぽんぽん入れられるものが好きなんです。
- 伊藤
- 敬子さん、キャップ閉めないタイプですよね。
- 岡本
- そうなの!
キャップ閉める閉めない戦争というのが
岡本家では、あって(笑)。
わたしが開けっ放し族で、夫が閉める族。
蓋とかドアとか、そういうものはちょっと苦手なんです。
鞄にもたしかに、そうですね!
- 伊藤
- 敬子さんはカゴもお好きですから、
そういう理由があるかもしれないですね。
- 岡本
- そうかも!
まさこさんのバッグも、もっと見せてほしいな。
- 伊藤
- はい。最近よく持っているのがこれです。
- 岡本
- かわいい!
すごく、かわいい。
- 伊藤
- これね、かわいいんだけど、
ものはあまり入らないし、
持ち手が丸いから肩にかけるとごろりと落ちる。
だから手首に二重にして持つんだけど、
それだとごろごろする。
バッグとしては機能的には
ちょっとあれなんですけれど、
でも持っているとすごく褒められるの。
イタリアのCULT GAIA(カルトガイヤ)
というブランドなんですけど、
わたし、バッグに、
そんなに機能性を求めないんですよ。
- 岡本
- もう‥‥(笑)。わかるけどね。
- 伊藤
- これ、10年くらい前に気に入って買った
ジャマン・ピュエッシュのもの。
小さなハンカチとリップくらいしか入らない。
でも持つだけでうれしい気持ちになりました。
かわいすぎるのでさすがに40代になってからは
持たなくなりましたけどね。
- 岡本
- そりゃ入らないでしょうね。
- 伊藤
- でも、かわいいでしょ?
- 岡本
- かわいいね。
- 伊藤
- これ(写真左)もなんにも入りません。
これ(写真右)もあんまり何も入りません。
- 岡本
- もう(笑)。
- 伊藤
- 千円札を折りたたんでぐらいしか入らない。
ハンカチとリップくらいで、携帯も入らない。
でも、持ってるだけで、うれしい。
- 岡本
- パーティーバッグって感じね。
わたしもこういう
ちっちゃいがま口のバッグを持ちますよ。
- 伊藤
- わたしは、バッグのためだったら
自分を合わせられるんですよ。
なんか、すっごい好きな人みたいな感じ?
- 岡本
- はははは。
- 伊藤
- 敬子さんはバッグをその日の気分で選ぶんですか?
洋服に合わせて?
- 岡本
- わたし、その日のスタイリングは、
まずバッグを決めるんですよ。
今日はこのバッグを持とうかなぁっていう感じで、
スタイリングが決まる。
そのために、天気をまずチェックして、
予報、湿度、気温を理解する。
旅行でも1週間の予報を見て決めます。
- 伊藤
- ‥‥わたし、一番見ないのが天気予報なんです。
- 岡本
- もう、真逆ね(笑)。
- 伊藤
- なんとかなるって思っているんです。
旅先でも、雨降ったら出かけるのやーめたとか、
いっそ雨用のものを買っちゃおうかなとか、
でたらめなんです。
- 岡本
- あはははは。
わたしはちょっと旅先が長いんです。
たいがい5日間から12日とかだから。
だから雨用の靴がいるなとか、
寒そうだから羽織るものを持っていこうとか、
そういうことをしますよ。
バッグは、たためるものを何個か持って行ったりするし、
でも、現地調達も多いかな。
- 伊藤
- それは真似できないな、
あまりにも違いますから。
でも、好きなものを信じよう、
という気持ちは同じですね。
好きなものを自分のペースで愛する、
ということを、真似します。
敬子さん、ありがとうございました。
敬子さんはおもしろいけど、
わたしもへんだって、
きょうはよく、わかりました。
- 岡本
- ほんとね(笑)。
- 伊藤
- こんどお宅にお邪魔させてください。
どんなバッグをお持ちかぜーんぶ見てみたい!
好き、が毎日の原動力。
- 伊藤
- 敬子さん、こんなに日焼けをしてる。
日本ってけっこう美白文化だけれど‥‥。
- 岡本
- そうなの。これが好きなの。
日焼けをするし、
ビキニだって好きですよ。
- 伊藤
- 「この歳だから」なんて、ぜんぜんない。
それが見ていて気持ちいいんです。
だから、みんな敬子さんの
真似をしたくなるんじゃないかなぁ。
もうみんな、こうなればいいのになぁ、って思っちゃう。
それは、外見を真似するっていうことじゃなくて、
「わたしが好きだから」ということを
原動力にしていいんだよ、っていうことなんですけれど。
「好き」というのは、敬子さんのキーワードですね。
- 岡本
- はい、それ、ですね。
- 伊藤
- 「好き」だと、ファッションのほうが、
自分についてきてくれる感じがします。
たとえ失敗しても、
その悔しい思いをするっていうことが、
とても大事だと思うんです。
- 岡本
- 恥をかいても、いいのよ。
けっこうかきましたよ、わたしも。
無理して背伸びをして、
そのほころびが出てしまうようなこと。
- 伊藤
- たとえば?
- 岡本
- 若い頃、海外でいいホテルに泊まったとき、
そのホテルから空港までタクシーで行ったら、
運転手のかたが荷物を運んでくださって、
ファーストクラスのカウンターに案内されたんです。
つまり、そこは、
当たり前のようにファーストクラスに乗り、
自分では荷物を運ばないお客様が泊まるホテルだった。
エコノミーシートで旅をしたわたしは
あまりにも身の丈を知らなかった。
ほんとうに恥ずかしいって思いました。
- 伊藤
- なるほど。
年齢を重ねてこそできるようになることって、
ありますよね。じつはわたし、最近やっと、
ハイブランドの靴が買えるようになりました。
いままで、店に入ること自体怖くて。
- 岡本
- そうなの?! ほんとに?
- 伊藤
- ここ2、3年、やっとです。
たぶんわたしにまだ似合わないだろうし、
怖いってことは、まだ自分があんまり
そこにそぐわないってずっと思っていました。
だから持ったことがなかったんです。
敬子さんは、そういうことは‥‥。
- 岡本
- (きっぱり)なかったですね!
- 伊藤
- さすが先輩。
- 岡本
- わたしたちの世代が
たぶんそういうことだと思うんだけれど、
シャネルだったらパリのカンボン通りの
本店で買いたいと思っていた。
エルメスもフォーブル・サントノレのお店で
ちゃんと接客されて買いたいと思った。
それをちゃんと経験しないと、って。
- 伊藤
- そこできちんと接客されるための教養って
すごく必要ですよね。
- 岡本
- そうだと思います。
だからそのためにフランス語を習いました。
というのもね、パリのJ.M. Westonで
はじめて靴を買ったときに、
英語があんまり通じなかったので、
もうフラストレーションが溜まって、
ちゃんと買えなかったという悔しさがあって、
パリで買い物をするために、
フランス語を勉強しよう! と。
- 伊藤
- 買い物のためにフランス語を‥‥。
その、エルメスとシャネルの本店に行ったのは、
おいくつぐらいのときだったんですか。
- 岡本
- 25、26歳くらいかな。若いんです。
バブルの時期だったんですね。
みんながいいものを買いたがり、
本物を探しに行きたがった。
- 伊藤
- それってやっぱりご自分の中で
勉強になったっていうことですよね。
- 岡本
- とくに、恥をかいたことが、ね。
- 伊藤
- わたしがハイブランドを気にしはじめたのは、
だんだん自分が年齢を重ねて、
もうちょっときれいなもの、
ちゃんとした質のいいものを身につけないと、
バランスが取れないんだなと思えたからです。
あとお金のバランスもそれと共に追いついてきて、
そうか、ハイブランドって、
こういうことだったんだ、って思いました。
そんな敬子さんなのに、おもしろいなって思ったのが、
旅行にはリュックで行くでしょう?
ゴロゴロ、スーツケースを引かないんですよね。
- 岡本
- 昔はガラガラ引いてましたよ。
今も海外だったらスーツケースです。
でも最近は国内の電車移動が増えたので、
ガラガラはほんとに置くところがないでしょ?
バックパックだったら網棚に乗せられるし、
便利だなと思って、バックパックが増えていったんです。
大きいものなら2週間ぐらいまで大丈夫です。
- 伊藤
- しかもかわいいの、背負ってる姿が。

▲岡本さんのインスタグラムより。なんとこれで8泊9日分の国内旅行の荷物が! 靴も1足入っているそう。
- 岡本
- アウトドアっぽすぎないスタイルがいいなと思って。
- 伊藤
- それにカゴを手持ちしたり。
‥‥そんなのふつうの人がやってごらんよ、
ちょっとヘンかもしれない!
- 岡本
- ははははは。
それがいまのスタイルになってきました。
- 伊藤
- アクセサリーもね、わたしはほとんどつけないけれど、
敬子さん、なんにもつけていないと‥‥パ‥‥、
- 岡本
- そう! パンツを穿き忘れたような気持ちになるの!
ノーパンでいる感じがしちゃって、
なんかつけないと、って。
ひょっとして、むかーし、わたし、
そういう部族だったのかな(笑)?
- 伊藤
- じゃあわたしは裸族かも(笑)!
家ではパンツ穿いてないほうがいいもん。
- 岡本
- あっはははは! やめて! おかしい。
- ──
- 話をバッグに戻してください。
- 伊藤
- 部族と裸族の話になっちゃった。
今回はふたりでそれぞれ
バッグを持ち寄ろうと話していて。
- 岡本
- うん。まさこさんのバッグ、見たいな。
- 伊藤
- はい!
わたしは小さなバッグばかりです。
しかもたとえばこれは、
新しいものではなく、ヴィンテージ。
- 伊藤
- 人の手を通ってきたからかな、
なじむ感覚があるんです。
ちなみに食事などに行くときは、
これくらいの大きさが基本。
- 伊藤
- これもヴィンテージですが、
セリーヌは新しいものも、持っています。
どちらにしても惹かれるのは、
ちっちゃいバッグなんですよ。
- 岡本
- うんうん。
ほんとに、荷物が少ないね。
- ──
- 伊藤さんは敬子さんのことを
「すごいな」と思ってずっと見ている、
ということですけれど、
そういう「荷物多い族」なところは
真似をしなかったんですね。
- 岡本
- そうよ(笑)。
- 伊藤
- 向田邦子さんのエッセイに
ちっちゃいバッグで済ますのは、
三女とかが多いとか書かれていて、
わたし、まさしくそうだな、って。
長女って、わりと、
あれもこれも、って、心配になるから
大きいバッグを持つんですって。
- 岡本
- わかる。
- 伊藤
- ちっちゃいバッグ持ってる人たちは、
ちゃっかり「リップ貸して」なんて言うんだって!
まあ、リップは借りなくても、
ティッシュある? とか、よく借りてます。
でね、もちろん、旅行に行くときは大きいバッグですよ。
このバッグなら、わたし、二泊三日ぐらい大丈夫。

▲「このバッグ」と伊藤さんが言うのは、今回「weeksdays」でつくった“大きな革のトートバッグ”のことです。うーんと、シンプルです。
- 岡本
- うんうん。たしかに、行ける大きさね。
- 伊藤
- 敬子さんの鞄を見せてください。
すごく見たい。
わたしは散歩と買い物がすき。
- 伊藤
- 敬子さん、荷物は多いほうですか。
- 岡本
- 多いほうだと思います。
まさこさんは荷物が少ないものね(笑)。
- 伊藤
- なにが入ってるんでしょう?
- 岡本
- お財布だとか手帳だとか‥‥、
この暑いときは、汗を拭くものとか、
扇子などが、こまごまと入っています。
そういう、実用でもあるけれど、
おしゃれなアイテムが増えることは、
わたしにとってはうれしいことだから、
物を持つことに関しては、
ぜんぜんいやではないんです。
- 伊藤
- へぇー!
わたしは、ふだん仕事でたくさんの荷物とすごすことが
多いからか、
仕事以外のたとえば、
食事に出かけたり、買い物に行くときは、
荷物はなるべく少なくしたいほうなんです。
バッグも持たず、ポケットで済ませたいくらい。
もちろんおしゃれとして、
小さなバッグを持つことはありますよ。
でもほんとうに実用的じゃないものなんです。
- 岡本
- それはわかりますよ。
わたしはバッグは2個持ちで考えているんです。
大きいほうに必要なものを入れて、
小さいものは、アクセサリーとして持つ。
バングルしてるのと同じような気持ちです。
- 伊藤
- ふたつ持つんですね。
ひとつのバッグに両方の要素を求めない。
- 岡本
- そう。小さなバッグは、
おしゃれなアイテムのひとつ、という感覚で。
- 伊藤
- 敬子さんはよくおっしゃいますよね、
「おしゃれは、失敗しないとはじまらない」。
- 岡本
- そう。ほんとにわたしは
それをずっとうたっていて。
みなさん失敗を恐れるじゃないですか。
- 伊藤
- わたしも敬子さんと同じで、
全然失敗を恐れないタイプなんですけれど、
失敗‥‥しますよね。
- 岡本
- わたしだって、まちがっちゃった! って、
いまだにありますよ。
わたしがどうして失敗するのかというと、
あまりにも自分の欲に正直に買っちゃうから。
それでも、経験を積んだから、
「いい」場合のほうがさすがに多くなったんですけど、
「あのとき調子に乗って買ったけど、
なんだか、ちょっとそぐわないな」ってことは、
いまも、あります。
たとえば、リゾート地で買ったもの!
- 伊藤
- わかります(涙)。
リゾートの盛り上がり感の中で、ついつい、
「わたし、なんでこんなの買ったんだろう?」
って、あとから思うものを買ってしまうこと。
- 岡本
- 東京に戻ったら、
「あれ、なんかわたし浮いてる?」
みたいな感じでしょう?
あれは失敗よね。
- 伊藤
- 器もそうで、持って帰ったら、
「あら? あの日差しの中で感じた色と、
ぜんぜん違う‥‥」って。
- 岡本
- そう、光なんですよ。
洋服も、そうです。
たとえば、シルクのフューシャピンクなんてね、
旅先でうっかり買いそうになるけれど。
- 伊藤
- 似合いそうですよ?
- 岡本
- そうね、いまは平気で着ますけどね。
でもたとえばアジアン柄のものは、
東京で着たら、
某航空会社のフライトアテンダントさんの
制服のように見えたりしてね。
伊藤さんもリゾートで失敗をするの?
- 伊藤
- 先日、ハワイで暑くて、
ちょっと首に巻くなにかがほしいな、
‥‥と思ったんですけれど、
「これ帰ってから、絶対身に付けない」と思って!
- 岡本
- こらえたのね(笑)。
- 伊藤
- 敬子さんは、
若いときから失敗をへっちゃらでしてきたと
おっしゃる。それが糧になっていると。
- 岡本
- そう。わたしはけっこう流行りものに
すぐ飛びつくタイプだったんです。
雑誌でいうと、mc Sister(エムシー シスター)。
プレッピースタイルも好きでしたね。
でも幼少期は、既製の服を着たことがなくて、
というのも母がぜんぶ
手作りで服をつくってくれていたんです。
- 伊藤
- わたしもです!
- 岡本
- わたしはそのことを「服育」(ふくいく)と
言ってるんだけれども(笑)、
その服育のおかげで、
ちょっとほかの人とちがうものに
挑戦することを厭わなくなりましたね。
失敗もへっちゃら。
- 伊藤
- 生地も選ばせてもらったりとか?
- 岡本
- そう、「選びなさい」って。
生地を選んだら、ボタンを選びなさいとか、
すべて選ばせてくれました。
“ドレスメーキング子供服ブック”
みたいな本を前にして。
- 伊藤
- わたしも、わたしも!
- 岡本
- 「なにが着たいの?」っていう感じで、
「これっ!」って言ったら、
つくってくれるんです。
それで生地選びにお出かけしてね。
- 伊藤
- 夏のワンピース特集とか、ありましたよね。
- 岡本
- 母もお揃いのワンピースをつくったりね。
- 伊藤
- それが敬子さんのベースになったんですね。
なるほど「服育」。
- 岡本
- そう、「服育」。
それでね、前言撤回みたいだけれど、
買い物で失敗すると言いながら、
それを失敗と思っていないところもあるんです。
- 伊藤
- つまり、失敗も含めて、
買い物ってたのしいから、ですよね。
- 岡本
- そうそうそう!
買うことが好きなんです。
どこかに行ってぶらぶらして、
なにか買うことが好き。
植草甚一じゃないけど、
「ぼくは散歩と雑学がすき」じゃなくて
「わたしは散歩と買い物がすき」(笑)。
- 伊藤
- 何かが欲しいからというより、
今日、なにか買い物がしたいな、
という理由で出かけることもありますよね。
ほんとうにちいさな、ささやかなものでも、
買うことがうれしいんです。
きっと「ほぼ日」の読者のかたには、
そう思っていらっしゃるかたも
多いんじゃないかな。
- 岡本
- そう。
- 伊藤
- 敬子さんって、自分を服に合わせるというより、
「服よ、オレに合わせろよ?!」
みたいな感じじゃないですか。
- 岡本
- はははは。「オレ」なの?
- 伊藤
- ごめんなさい(笑)、
なんかオレっぽいんだもの。
オレについて来いって感じで、
服を着たおしてる。
それがすごいなぁと思っているんです。
- 岡本
- (笑)なんでしょうね、
もう数々いろんなものを着たから、
というのもあるんですけど。
流行のものを着てきましたし。
- ──
- 流行ということで思うんですが、
30年ぐらい前はみんなが一斉にそっちに行く、
というような「流行」がありましたよね。
- 岡本
- ありました、ありました。
- ──
- でもいまって、いろんなスタイルがOKで、
はやりのアイテムはあっても、
みんながみんな、みたいな感じでは
なくなっているような気がします。
- 岡本
- ただね、わたしはそんな中でみんなが
「定番に安住している気がするのでは?」と思います。
- 伊藤
- ああっ!
- 岡本
- いわゆる定番と言われてるものを着れば安心、
このブランドを着れば安心、というところが、
あるんじゃないかと、ちょっと思います。
- 伊藤
- うーん!
わたしはシンプルなものが好きですし、
冒険はしないタイプだと思うんです。
つまり‥‥安住してるのかなぁ?
- 岡本
- ははははは。まさこさんは違うかも。
安住という言葉がよくなかったかな、
「わたしこれ無理だから」って、
はなから決めちゃうというか。
「わたしは二の腕が太いから、
ノースリーブは着ない」みたいなことね。
- 伊藤
- それは平気!
- 岡本
- 「好き」っていうことが
自分の価値の中にきちんとあって、
その基準でものを選んでいる人は、
やっぱり素敵だと思うんです。
誰かがこれをいいって言った、とか、
雑誌でこれが載っていた、みたいなものを
見るのはいいんですけど、
選ぶときに、もうちょっと自分で
アレンジをしたらいいのにな、って思いますよ。
- 伊藤
- 「自分にとってどうなのかなぁ?」
と、いちど考えることもたいせつ。
- 岡本
- そうなの。
「ほんとに自分は好きなのかな?」って。
大きな革のトートバッグ
斜めがけして、肩にかけて、片手で持って。
バッグになにをもとめますか?
色やデザイン?機能性?
それとも季節感?
私の場合は、ふたつ。
ひとつはアクセサリー代わりになってくれる、
デザインのかわいい小さなバッグ。
もうひとつは、
必要なものがぜーんぶ入る大きなバッグ。
今回、紹介するバッグはその後者。
デザインをそぎ落せるだけそぎ落とした
「箱」をイメージさせる、
シンプルで大きなバッグです。
大きいからなんでも入る。
おさいふ、携帯電話、
パソコン、スケジュール帳、読みかけの本、
眼鏡にハンカチ、リップ‥‥、
たとえば昨日、仕事に出かける時の
私のバッグの中身はこんな具合。
それに着替えや化粧道具を入れたら、
2泊3日くらいの旅にも出かけられちゃう。
夏はワンピースと、冬は厚手のコートと。
季節を問わず、
性別を問わず。
斜めがけして、肩にかけて、片手で持って。
あなたなりのコーディネートと持ち方でどうぞ。
ふんわり、やわらかく、 あたたかみのあるタオルです。
─weeksdaysのタオル ふかふか─
このタオルに使っている糸「スピンエアー」は、
タオルの製作を担当している藤高さんいわく
「空気を紡いだ糸」とのこと。
紡績する際に糸の中心に空洞をつくり、
軽さとボリュームを両立した糸なのです。
洗濯を繰り返しても糸の中空形態は損なわれないので、
長くソフトな風合いを保ちます。
この中空糸をヨコ糸にも使い、
パイル部分の糸はさらに無撚糸に加工することで、
より柔らかく膨らみのある質感に仕上げました。
使った印象は、やわらかく、空気を含んでふかふか。
ぬいぐるみを抱いているような感覚です。
じつは今回の「weeksdays」のタオルプロジェクト、
最初は「ひとつだけ」に決めようと考えていました。
最終的に候補になった6種類のタオルを、
伊藤さんが自宅で使ってみて、
ひとつに決めよう──、
ということだったのですけれど、
「さっぱり」のタオルとおなじくらい
愛着を感じたというこの「ふかふか」を入れて、
「ひとつ」ではなく「ふたつ」にしようと
いうことになりました。
しっかりかたい「さっぱり」にくらべて、
こちらはとてもデリケートなタオル。
毛羽もたちやすいので、
お洗濯はこのタオルだけ、
あるいは白いものだけでするのが、おすすめです。
乾燥機にかけると、ふかふかに仕上がりますよ。
色は、さらしの白。
ふわふわのメレンゲのようなきれいな白です。
織りの密度は「やさしいタオル」よりもあまめ。
サイズはバスは長さ・幅ともにひとまわり大きく、
フェイスは幅は同じ、長さが短めになっています。
さらっと、しっかり使えるタオルを 目指してつくりました。
─weeksdaysのタオル さっぱり─
使っている糸は、ヴィーナスシード。
「やさしいタオル」のパイル面と同じ素材です。
ひざしのあふれるギリシャで育った稀少綿で、
GMO(遺伝子操作の種)は使っていません。
いわゆる「超長繊維綿」ではありませんが、
一般的な綿にくらべ、繊維長が長く、
また、織度(糸の太さ)が太いのが特徴です。
ちなみにギリシャはヨーロッパ最大の
綿花生産国なんですよ。
この糸を選んだポイントは、
しっかりとした拭き心地に必要な、
適度なハリとコシがあること。
さらにそれを2本撚り合わせ双糸にし、
織の密度を高めることで
よりしっかりとしたタオルに仕上げています。
ちなみに、「やさしいタオル」のパイルに使っている
ヴィーナスシードには、糸の細胞組織自体を
形状記憶する「LA加工」をしていますが、
weeksdaysの「さっぱり」は、
その加工はほどこしていません。
使い心地は、さらりと軽い「やさしいタオル」にくらべ、
より「しっかり」「さっぱり」した、かための印象。
こういう感じをタオルの世界では
「ホテルライク」と言うそうです。
外国のちょっといいホテルで使われている、
きっちりと織られたボリュームのある
タオルの感触が、こんな印象なのですね。
色は、さらしの白。新雪のようなきれいな白です。
毛羽落ちも少なく、耐久性に優れています。
織りの密度は「やさしいタオル」よりも高め。
サイズはバスは長さ・幅ともにひとまわり大きく、
フェイスは幅は同じ、長さが短めになっています。
やさしいタオルのチームが、 やさしいタオルのライバルを つくりました。
伊藤まさこさんと「ほぼ日」の
おつきあいのはじまりは、
「やさしいタオル」からでした。
2010年の秋、タオルのリニューアルを終え、
さあいよいよ発売だ! というタイミングで、
写真のスタイリングをしていただいたのと同時に、
「ほんとうにほしいタオルのはなし。」という座談会に、
大橋歩さんといっしょに出席いただいたのでした。
このときの伊藤さんの意見は、
「ごわごわのタオルがほしい」というもの。
「やさしい」を身上とするタオルをつくってきた
「ほぼ日」としては、たいへんおどろきつつも、
そうだよなあ、そういうタオルが好きな気持ちはわかる、
でもぼくらはこっちに行きます! と考えたのでした。
いまも伊藤さんには
「やさしいタオル」のスタイリングをお願いしていますが、
この8年のあいだに、伊藤さんといっしょに、
「やさしいタオル」をベースにした
いろいろな製品をつくってきています。
白一色のタオルや、麻を混紡したタオル、
それからタオルケットなど、
いずれも、基本的には「やさしいタオル」の特徴である、
片面パイル、片面ガーゼという組成を変えずにきています。

▲伊藤さんと「ほぼ日」がつくった「&」というシリーズの、白い「やさしいタオル」。伊藤さんは温泉に行く時や家に赤ちゃんが遊びに来た時の肌がけとして使っているそうですよ。
そんななか、今回「weeksdays」で、
伊藤まさこさんとつくることになったタオル。
これ、じつは「やさしいタオル」とは、
まったくちがうタオルなのです。
●今治の藤高さんの力を借りて。
「やさしいタオル」をつくっている
愛媛県今治市のタオルメーカー
「藤高」(ふじたか)さん。
創業100年になるという老舗で、
タオルの生産売上高は国内1位の大手です。
‥‥大手なんですけれど、
「やさしいタオル」をいっしょにつくっていて思うのは、
藤高さんのものづくりには、
中心には「人」がいる、ということ。

▲藤高の現社長である、藤高豊文さん。

▲タオルの開発は、技術担当のみなさんといっしょに考え、つくっています。今治の藤高本社にて。
糸の開発から染め、織り、プリント、
そのデザインを立ち上げる段階から、
サンプルをつくり、生産管理をし、
納品されるまでのあいだ、
また、納品されたあとのケアまで、
ずっと「人」とつくっている感覚があるのですね。

▲素材は原糸から考えます。

▲本社工場のようす。機械生産ですが、やっぱり人が重要!
藤高さんからしてみたら、
「ほぼ日」はおそらく小さな取組先。
すくないロットでたくさんのデザインをつくりたいという
ちょっとワガママなこのチームにたいして、
ほんとうに丁寧におつきあいくださっているのです。
今回の「やさしいタオル」じゃないタオルをつくるにあたって、
私たちは、藤高さんにお願いをしたいと考えました。
ここまでお読みいただいておわかりと思いますが、
「weeksdays」と「やさしいタオル」は、
担当メンバーがほぼ同じ!
「やさしいタオルのライバル」をつくるのは、
ほかならぬ「やさしいタオルチーム」なのでした。
●やさしいタオルとのちがいはなに?
今回「weeksdays」で発売するタオルは
2種類あります。
「やさしいタオル」とくらべながら、
特徴を説明しますね。
1)両面が、パイルです。
ガーゼとパイルの二重織りではなく、
「weeksdays」のタオルは、両面がパイルです。
素材はコットン100%です。
2)まっしろです。
チェックやストライプ柄を織り込んだり、
プリントをすることなく、
「weeksdays」のタオルは、まっしろ。
精練したさらしの白い糸を使っています。
3)「さっぱり」と「ふかふか」、
ふたつの種類があります。
2種類の糸をつかって、
2種類のタオルをつくりました。
ひとつめのタオルは「さっぱり」という名前。
さらっと、かたく、しっかり使えるタオルを目指し、
「やさしいタオル」のパイルと同じ、
ヴィーナスシードという糸を使っています。
もうひとつのタオルは「ふかふか」。
ふんわり、やわらかいタオルをめざし、
「スピンエアー」という、
糸の中心に空洞をもつ糸を使っています。
使った印象は、「やさしいタオル」よりも、
やわらかく、空気を含んでふわふわです。
4)サイズは2つ、バスとフェイス。
「weeksdays」のタオルは2サイズです。
バス 1300×680mm
「weeksdays」のタオルを
最初に1枚だけ、というかたに
ぜひおすすめしたいサイズです。
お風呂のあと、シャワーのあとだけでなく、
枕カバー、肌掛けなどなど、
ぜひ毎日のいろんな場面で
使っていただきたいサイズです。
フェイス 800×340mm
一般的なフェイスタオルにくらべ、
ちょっと大きめです。
キッチン、パウダールーム、
トイレなどでのふだん使いに、
そしてバスタオルと組み合わせてバスルームで、
など、いろいろな場面に活躍します。
ちょっとしたプレゼント、御挨拶代わりなどにも
ぜひお使いください。
5)ていねいに仕上げています。
糸をいためないよう、
必要最小限の薬品を使用して精錬漂白をしています。
通常、白さを引き立てるために使用されることが多い
蛍光増白剤は一切使用していません。
また加工の際の水の流速もインバーターで制御、
糸にダメージを与えない様に細心の注意を払っています。
(このあたりが、藤高さんのすごいところ!)
さらに、素材の良さをいかすために
常温・常圧で時間をかけて
遺伝子組み換えをしていない、
アミラーゼを主体とした酵素で糊抜きをしています。
‥‥と、かなり専門的な話ですけれど、
そんなふうに手間と時間をかけることで、
素材の本来持っている特性をいかし、
繊維にもともとある油分をほんのすこし残すことで、
吸水性と柔らかさ、という
ほんらい相反する2つの特徴を満たすことができました。
ちなみに、理想の柔らかさを出すため
あえて必要最小限の風合い調整剤を加えています。
6)四国山脈の伏流水で洗っています。
タオルをつくる最終段階の「洗い」。
そこに使っているのは四国高縄山脈の伏流水です。
軟水で入念に洗うことで生地に薬品を残さないよう、
敏感肌にも優しいタオルづくりを目指しました。
7)タグは「weeksdays」。
ハンガーループはありません。
できるだけシンプルにしたかったので、
「やさしいタオル」についている
ハンガーループはありません。
タグには「weeksdays」のロゴが入っています。
weeksdaysのタオル
ふたつのタオル。
私の好きなタオルはどんなものだろう?
外国のホテルで使うような
厚手でごわごわしたのもいいけれど、
乾きづらいのはイヤ。
薄手でやわらかいものもいいけれど、
それではちょっと物足りない時もある。
毎日使うものなのに、
なんとなく「これ」というものが
見つからない。
タオル問題は私の長年の懸念事項でした。
「ほしいものを作る」。
weeksdaysをはじめたきっかけは、そんな気持ちから。
ならばと最初にあがったのが、
タオル作りでした。
まずは6種類のサンプルを毎日使い、
洗って、干して、
時には乾燥機にガンガンかけて、
また使いを繰り返して、
最終的にえらんだのが2種類。
さてこの甲乙つけがたい、
ふたつのタオルのどちらを商品化しようかと、
ウンウンうなっていたら、
娘が一言。
「どっちも使いたい」。
そうか!
「これ」というタオルは何も一種類じゃなくていいんだ。
気分や肌のコンディションによって
使い分けてもいいんだ。
なんだか目からウロコの一言でした。
水分をしっかり吸い取る「さっぱり」と、
ふわっとした空気をはらんだ「ふかふか」。
今日はどっちにしようかな?と
えらぶ時間もまた楽しい。
1日のはじまりから終わりまでを、
気分よくしてくれるweeksdaysのタオル。
まずはその使い心地をためしてみてください。
使うことでなにかが変わったら。
- ──
- オーブンウェアの白とお皿の白、
同じ白でも、違う白ですね。
- 内田
- これは、加熱して使うという特性上、
もとの土の色が違うっていうのと、
鍋は鍋でまた特殊なことをしているということ、
そして、白の展開の中でも、色をそろえるより
バラツキがあったほうがいいと思ったこと。
そんな、いろいろな理由があります。
つくりかたも、見ていただいたような
お皿をつくるときの方法ではなく、
鋳込成形といって、
一つの型の中に流し込んでつくります。
- ──
- 内田さんの最初のプロトタイプは
どうやってつくったんですか?
- 内田
- オーバル耐熱皿はつくっていないですよ。
ろくろでは楕円をつくることができないので、
指示をして工場で型でつくってもらい、
ととのえていきました。
でもキャセロールは僕がろくろで挽いて、
サイズ、フタの感じ、つまみの形、
持ち手の形などを伊藤さんと詰めていきました。
- 伊藤
- 空気穴をあけるとか、
そういうことは内田さんにお任せです。
- 内田
- この作り方もいろいろあるんですが、
縁に「返し」がないので、
空気穴をあけました。
- ──
- ストウブやル・クルーゼだと
返しがあって、穴はないですね。
- 伊藤
- それはそれで、鋳物ならではのよさがある。
でもこれは土もので、やわらかい感じだし、
かといっていわゆる土鍋は和っぽい印象が強すぎる。
今回作った萬古焼のプレートや耐熱皿と合うような、
同じテーブルに載せてもいいようなものを
つくりたいと思いました。
だからわたしからは
「見たときに、何もないほうがいい」と
お伝えしました。
意識して目に留まる部分が
ないほうがいいなと思ったんです。
すごくキレイなんですよ、使っていても。
- 内田
- 白い鍋なので、使っていくと
焦げ跡がついたりしますが、
掃除は基本ラクですよ。
- 伊藤
- ラク、すっごいラク。
- 内田
- あるようで、ないものでしたね。
器の延長ではあるんだけど。
- ──
- 内田さんは鍋類をつくられているんでしたっけ。
- 内田
- ええ。昔はよくつくってました。
- 伊藤
- 持ちやすさとかも、とても考えられていますね。
そのへんがさすがだなと思います。
私には分からないところで、
いろんな工夫をしてくださっています。
- 内田
- 伊藤さんが言った部分もありますよ。
持ち手なんかそうだよ。
- 伊藤
- ほんとに?
- 内田
- 「こうしてくれ」って、
写真を送ってきたりして‥‥。
- 伊藤
- はじから忘れていくから!
よかった、覚えていてくれて。
- ──
- ふたりのつくるものには、
お客さまも期待していると思うし、
僕らもぜひ一緒にやっていけたらと思っています。
なので「売り切れたらおしまい」ではなく、
なくなったら、工場に追加をお願いして、
定番的につくっていきたいです。
レストランで使ってもらったりも、
素敵なことだと思いますし。
- 内田
- そうですね。お店なんかでも、
カジュアルだけどいい料理をつくるとか、
おいしいものをつくるよね、っていうお店が
喜んでくれるだろうし、そこの料理に合うと思う。
「これ使ったら?」って言ったら、
喜ぶだろうなっていうようなお店も知っています。
そういうところで使ってもらって、
「すごくいいよ」って、なるといいですね。
- 伊藤
- 置いてある姿、並んでる姿もいいし、
鍋がコンロの上に置いてあるだけでかわいい。
料理が、美しいっていうのもあるんだけど、
出番を待っている姿もうれしいんです。
- ──
- 大事ですよね、そういうのって。
家にあるもの全般でそれを思います。
電化製品で、機能や使い勝手はいいんだけれど、
置いてあるのが嫌だなって思うものもありますし。
- 内田
- デザイナーはなぜ誇張するんでしょうね。
何か残したいっていうのは分からなくはないし、
ちょっとしたことをやると、
一見「おっ」ってなって、手が伸びるんでしょうね。
そのあたりって、器にもあって、
その部分を出すのが効果的な場合もあるし、
それを抑えたほうが効果的な場合もあるんです。
使われる場所であったり、
そこの雰囲気でも変わります。
だから、量産のものでも
「これはいっけん使えそうだけど使えないな」
「ここをこうしたら、もっと残るのにな」
と感じることもあります。
そのあたりの微妙なさじ加減って大事なんですよ。
これから、さらなる大量生産で大量消費の時代は、
もう来ないわけですから。
「どんどんどんどんつくったら、
どんどんお金になるよ」っていう時代ではない。
だから、いいものをつくって、
確実にちゃんと売り切って、
またつくって、という方法がいいでしょうね。
だからこそデザインをしっかり考えるべきなんです。
- 伊藤
- デザインっていうと、レリーフを入れようかとか、
そういうふうになりがちですが、
横から見た角度だってデザインのうちですものね。
- 内田
- 使われることを想定することが大事ですよね。
どういう姿で使われてるんだろう、
どういう人たちがどういうふうに手に取って、
どういう人たちに向けて使うんだろう。
どういう壁の色のところなんだろう。
そう、ぼんやりとでも想像することが、
みんな欠落しているように思えますね。
- 伊藤
- 私は、自分が使いたいものを提案します。
- 内田
- だからスタイリストという
仕事をしているわけだものね。
- ──
- 作家のものって、作家一代だから、
「いま買わなきゃ」
「いま、同時代に生きてるから」買ったりする。
でも、じゃあ大量生産品がいつまでもあるかというと、
器でも機械ろくろを扱う職人が減っている、
後継者がいないという話を聞くと、
安心してもいられないんですよね。
「鋼正堂」も、人の手がなければできません。
- 内田
- そうなんですよ。
- 伊藤
- だから、一枚だけでも、
お気に入りとして使ってくださるといいな。
何となく使っていたものじゃなくて、
「このためにキレイに盛り付けようかな」
と思うきっかけになるかもしれない。
- 内田
- そういうものをチョイスすることを、
多くの人が、自分でするようになりましたね。
器だって昔は五客とか六客買うのが当たり前だったのが、
一客一客、自分の気に入ったものを買うっていうのが、
今の若い子の日常にありますよ。
ただ‥‥。
- 伊藤
- ただ?
- 内田
- 逆に人を招いたりしなくなったから、
複数の器の使い方を知らないとか、
テーブルのセッティングの仕方を知らなかったりする。
この間もそういう話になったんだけど、
若い人が「家に人なんて入れませんよ」って。
- 伊藤
- そうなの?!
- 内田
- 「外食もしないです」って。
ふたり暮らしなら
「器も2つ以上は買わないです」。
- ──
- 「誰か来たときのために買っておこう」
というのが、ないんですね。
- 内田
- 「来るんだったら外で」となるようです。
だから来客を想定をした家にしていない。
人が来るって思ったら壁に絵をかけようかなとか、
ここに置き物があったらいいなとか、
そういうふうに周りのものにも気を遣うけどね。
だから今、自分オンリーのためのものっていうのは
すごく売れるんですよね。
たとえば酒器は売れる。
いくつも買うもんじゃないから。
- 伊藤
- 気に入った酒器を一個買いますっていうと、
置いたときにテーブルの質感と合わないなとか、
窓にかかっているカーテンの色や素材が違うとか、
だんだん視野が広まっていくと思うんだけれど。
ならないのかな?
- 内田
- ならないんだよ。
- 伊藤
- そうやっていったら、
家の中が気に入ったもので囲まれて、
気分いいと思うんだけれどな。
- 内田
- 人それぞれなんだろうけど、
外食もしない、飲みにも行かない、
車も乗らない人が増えていますね。
ウチは、外国人が何ヶ月もいるとか、
毎日入れ替わり立ち替わり誰かが泊まってたりとか、
僕が帰ってっても僕の知らないやつがいて、
「誰だろうな、こいつ」と思いながら
一緒にご飯食べているような家なんですよ。
「君って、ところで誰?」
「さっきまでいたやつの友だちです」って。
子どもたちは、それをずっと見てるから、
来る人に「今日泊まるの?」って、普通に訊きます。
- ──
- いいお家ですね。
伊藤さんもお客さんウエルカムですね。
- 伊藤
- うちは、
いつでも人が呼べるようにしています。
泊まりはしないけれど、
お茶飲みに来たりごはん食べに来たり。
- ──
- 「鋼正堂」のお皿は、
ぜひ大勢でということでもなく、
ひとりで食べるときも、
大勢で食べるときも、
どっちでもいいと思うんですよ。
だから最初は1枚でも、ぜんぜん。
- 伊藤
- そう、なにかのきっかけになるかもしれないから。
- 内田
- 使ってみると違いが分かってくるはずです。
- ──
- そして、やっぱり2枚欲しいな、
3枚欲しいなってときに、
買えるようにしておきたいですね。
- 伊藤
- そう!
- 内田
- 僕は作家としては、
全然そういうのに対応しない人だけれどね。
言われてつくるのはイヤだからね。
- 伊藤
- そうでしょうねえ。
- 内田
- だから、今回のものはまた違うんです。
光泉セラミックさんといっしょにつくるからね。
- 酒井
- 僕だって言われたからって
つくるのはイヤですよ!(笑)
つくりたいから、つくるんです。
- ──
- 「ほぼ日」も同じです。
つくりたいものをつくりたいです。
だからこの器は、ずっとつくりたい。
- 内田
- ありがとうございます。
- 伊藤
- ありがとうございました。
こうしてできあがって、ほんとうによかった。
内田さん、こんどは、オーバル皿ね!
オーバル皿。
- 内田
- ん?(聞こえないふり)
- ──
- ありがとうございました!
アナログでもなく、デジタルでもなく、
- ──
- でももしかしてみんなは、
「白い皿って、いっぱいあるじゃないですか」
って‥‥。
- 内田
- そうそうそう。
白い器って、たくさんありますよね。
粉引の白だったり、
白い土の透明釉がかかったもの、
九州のほうの磁器の土であったり、
いろんなものがある。
たしかに並べないかぎり、わからないですよね。じゃあ選ぶときはどうかというと、
「これ磁器だから買おう」とか
「粉引だから買おう」ではなく、
自分が使うのに「ここに何を盛りたい」とか、
「こういう器は持ってないから欲しい」とか、
そういうことで選ぶと思うんです。今回つくったタイプの器が、
その選択肢になかった、
世の中になかった理由は、
手間とリスクと原料の高さもあるけれど、
それを使い切れなかったからだと思うんです。
また、それが合うかたちであったり、
それが合う焼き方を知らない人が、
つくる側にいなかった。僕は、個人作家としては
そういう器をつくって出してはいたし、
量産でできたらいいよねっていう話は
今までにもよくあったんですよ。
でも作家としては量産をしませんし、
もし量産をすることになったとしても、
この原料を選ばない。
伊藤さんと組んだからこそ、
やろうと思ったし、できたことなんです。
なにしろ原料が高い。
どれぐらい高いでしょう、酒井さん。
- 酒井
- 今の価格だと約20倍ですね。
- 伊藤
- えっ。20倍?!
- 内田
- お皿の釉薬の原料に酸化錫を使っているしね。
- 酒井
- オーブンウェアのほうはジルコニアを
すりつぶしたものなんですけど、
同じ白でも錫のほうがあたたかいので、
お皿はそれを使いました。
- 内田
- こういうこともね、比べないと分からない。
- ──
- でも比べると、仕上がりが全然違います。
- 内田
- 違う。で、使っていくとね、よりそれが出てくる。
傷になっていったときの具合とか。
- ──
- サンプルを、料理する人が見ると、
「こういう白い器はなかった」って言いますね。
- 伊藤
- じっさいに使ってみると、
じわじわ「いいな」と思う器なんです。
でもたしかに「普通ですよね」
って言う人もいるでしょうね。
- 内田
- そういう人にも「おっ」と言わせる、
作陶のテクニックはあるんですよ。
見どころを強調する、
たとえばエッジの部分をピッとしたりして、
「ああ」って思うような形の工夫をするとかね。
でもあえて今回はそれを入れずにいきました。
伊藤まさこがプロデュースする器に関しては、
そういうことは、しないことにしたんです。
誇張して手づくりっぽくするんじゃなく、
つくる過程でどうしても出る
ちょっとした歪みやゆらぎ、
釉薬の調子とかがちがうことを、よしとしようと。
もし飲食店なんかで使われて、
スタッキングしたときにわかると思うんですが、
量産なのに量産に見えないものになっています。
その絵面、きっと美しいだろうなって想像します。
- 伊藤
- 内田さんは最初から
重ねたところを横から見たときの様子を
よくしたいとすごくおっしゃっていて、
なるほどと思ったんです。
- ──
- 実際に今日拝見すると、
量産ではあっても
「大量生産」じゃなかったですね。
- 伊藤
- そうなんです。手づくりに近い。
確かに型なのだけれど‥‥。



▲型、といっても手作業の部分がほとんど。「このほうが、少量多品種をつくるのには向いている」と酒井さん。
- 内田
- 動力成形、機械ろくろって言うんです。
でもそれをやる職人さんが、
もういなくなってきてるんですよ。
今は、流し込んでつくったりとか、
ローラーマシンっていって機械がビュンと回って、
オートメーションでやるところはある。
でもそれでは独特の味のようなものが出ません。
こんなふうに半・手づくりっていうことは
なかなかないんですよね。思えばろくろだって、そもそもは機械です。
僕はアフリカや東南アジアの工房にもいましたが、
手びねりが「そもそも」であって、
ろくろ自体が、大量生産のために生まれてきた道具です。
何が手づくりで何が手づくりじゃないなんていうのは、
ナンセンスな問題ですよね。僕はコテを使わないで
ろくろを挽くことが多いのだけれど、
それは、コテを使ったろくろと
コテを使わないろくろで比べると、
焼き上がってきたら違うからです。
その部分を敏感に感じる人は感じて、
手を伸ばしてくれる。
このお皿もね、伊藤さんがプロデュースするのだから、
「こういうのって実はないよね」っていうもののほうが、
おもしろいだろうなって。
- 伊藤
- 型を使っても、内田さんだったら、
言葉にできない、数字にもできない
「感じの良さ」を理解して、
つくってくださるんじゃないかなと思っていました。
- ──
- 酒井さんのところで拝見していたら、
つくるとき、1枚ずつ、
それも厳密なデジタルではなかった。
土を何グラム使い、っていうんじゃなくって、
目分量、重さの感覚で決めていました。
勘どころでやってるんですよね。
- 伊藤
- そう、違いますよね。感動しました。
- 内田
- デジカメが出たときに、
ずっとプリントでやってた人たちは
「あんなのデジタルじゃねえか」って言っていた。
でも、今のデジタルから比べたら、
最初の頃のデジタルって、
ものすごくアナログなデジタルだったでしょう?
時間が経っていったら、いま動力でやってることも、
「これ手づくりなんですよ」って言うときが
来るかも分からないね。
- 伊藤
- どんなに技術や時が進んでも
使うのは人ですものね。
絶対そういうことは、分かると思うんです。
そして、お皿って、さきほども言いましたが、
お皿そのもので「完成」じゃないですよね。
料理が入って、昼だったら自然の光とか、
夜だったら電球とか、そういうなかでのお皿です。
そうするとやっぱりシンプルで、
質感が良くて、というものを
「鋼正堂」ではつくっていきたいですよね。
- 内田
- 伊藤さんが提案するアイテムは、
星をとっているような高級レストランよりは、
どちらかというと庶民的なバルであったり、
家庭で使うようなものですね。
器にしても、高級レストランで使われるような
薄くてリムが広いものではないし。
- 伊藤
- 余白を活かした感じじゃないですよね。
- 内田
- だからちょっとした器の厚みが大事だったりします。
これを薄く軽量化してもっとシャープにしたら、
たぶんそういう雰囲気は出ないんです。
- ──
- 「鋼正堂」のスタートは、
平皿が3サイズのほかに、
オーブンウェアのオーバル皿2サイズ、
そしてキャセロール(鍋)がならびます。
火にかけられるものがあるのがおもしろいですね。

▲オーバル耐熱皿。

▲キャセロール。
- 伊藤
- 形、シンプルでしょう?
わたしが30年ぐらい前から使っている耐熱皿は、
フランスの大量生産もので、
メーカー名も書かれていないようなものなんですけれど、
とてもいいなあと思っていて。
使い勝手もよく、
いろんな料理をつくってきました。
ジャガイモにローズマリーをかけて焼いたり、
グラタンをつくったり、
さくらんぼの季節には
クラフティを焼いたり、
もちろん焼きプリンも。
その実用的な感じが
出せたらいいなあと思っていました。
- ──
- キャセロールのほうも、かたちがまっすぐですね。
- 伊藤
- 子どもに「お鍋を描きましょう」って言ったとき、
いちばん単純な線で描いたみたいな、
何も考えない、そんな形が好きなんです。
家だったら三角屋根ですね。
- 内田
- まさしく僕のところにそんな
鍋と皿の絵が来たんです。
「なんじゃこれ、ふざけんなよ!」
って言いたくなるくらいシンプルな絵が(笑)。
- 伊藤
- そうそう(笑)。それで電話をしたらね、
「これでかたちになると思ってんのか?」。
でもね、ニュアンスは伝わったと思う!
- 内田
- あの絵じゃ伝わらないよ!
- 伊藤
- (笑)オーバル耐熱皿は、パリの蚤の市で
買ったものがヒントです。
それも、ヴァンヴやクリニャンクールのような
有名な蚤の市で、じゃなくて、
市役所が出してるようなフリマ情報で見つけた
ご近所の集まりのような場所で買いました。
おばちゃんとかが「もういらないから」
「いっぱいあるし」みたいに出している
大量生産の家庭用品でしたが、
質実剛健な感じがすごくいいなと思って。
- 内田
- このオーバル耐熱皿なんかは、
おいおい2色展開みたいなことも
できたらいいなって思ってます。
でも最初から
そんなことやると大変なんで(笑)。
- 伊藤
- 2色! 素敵ですね。
やりたいことがいっぱいありますね。
将来、ぜひ楕円、オーバル皿が欲しいな‥‥、
でも忙しい内田さんにとても言えないな‥‥、
「オーバル皿が欲しいっ!」なんて。
- ──
- 言ってるじゃないですか。
- 内田
- それも大声でね(笑)。
内田鋼一さん、はじめての“プロダクト”。
- 伊藤
- 最初のきっかけはこのお皿でしたね。
北欧製の、プラスチックの──。
- 内田
- 軍もの、なのかな?
どういう素性かわからなかったんだけれど、
スタッキング(重ねて収納)が
できるようになっていて、
いいかたちをしているんです。

▲これが北欧製の樹脂のお皿。
- 伊藤
- ほんとにシンプルで、
“これぞ、うつわ”っていうかたち。
将来、こういうものがつくりたい、
というサンプルとしてと思って購入し、
とはいえプラスチックなので、
自宅で使うことがないまま持っていました。
- 内田
- たまたま僕が、ここのミュージアム
(内田さんが運営する
「BANKO archive design museum」)
の企画で、素材別の展覧会を考えていたんです。
木とか、石とか、金属とかね。
その中で樹脂とかFRPだったり、
ベークライトやセルロイド、
そういう、自然素材とは違う
化学素材のプロダクトを集めていた。
その話をしたら伊藤さんが
「私、いいの持ってますよ!」
と、譲ってくださったんです。


▲BANKO archive design museum.
- ──
- 伊藤さん、気に入って購入されたのに、
あげちゃったんですね。
- 伊藤
- 「この人が持ってるほうがいいだろう」
って思うものってあるんですよ。
その人にあげたほうが、
きっと役に立つもの。
いま思うと、いい人にあげた(笑)!
- 内田
- それが一昨年かな。
それで、器がつくりたいという話を
伊藤さんから聞いて。
- 伊藤
- 1年ほど前、まだ「weeksdays」という
場がない頃でしたが、
こういうものをつくるならぜひ内田さんと!
‥‥と考えて、お願いをしたんですが、
じつは内田さん、こういったかたちで
プロダクトをつくることは、
それまで、なかったんだそうです。
- 内田
- 僕が表に出て、っていうのはありません。
名前を出さないで協力したことは、
あるんですけれどね。
- 伊藤
- つまり「内田鋼一」の名前を
こういった量産品で出すのは初めて?
- 内田
- そう。なぜかというと、
作家としての自分のためではなく、
こういった「いいもの」を
萬古焼からつくっていけば、
自ずと萬古焼を知ってもらうことができるし、
ブランディングもできていくだろうと思うからです。
このミュージアムでも
売ることができるかもしれないし。

▲ミュージアムにあるショップ。内田さんの選んだ骨董や、道具が並ぶ。自作のものは、ここでは販売をしていない。
- 伊藤
- ということは今回のこのシリーズは
「萬古焼」って呼んでもいいのかな。
- 内田
- 萬古で、萬古の人がつくっている器ですから、
萬古焼かと言われたら萬古焼ですね。
ただ、萬古焼って、アメリカのクレイト&バレルや
デンマークのハビタのものをつくっていたり、
イギリスのコンランショップからも
依頼を受けて食器をつくっていたりもします。
海外でお土産に買ってきた器が、
実は萬古焼だったとか、
そういうものもたくさんあるんですよ。
一目瞭然で「これは萩焼です」とか
「これ備前焼です」とかっていうものではなく、
いろんなものに対応できる産地なんですね。
- 伊藤
- 定義の幅が広いんですね。
- 内田
- 輸出向けのものをたくさんつくってきたので、
自国で使ってる人たちは、
これが日本でつくられた、
それも四日市の萬古焼だ、なんていうことを
知らない人もたくさんいます。
- 伊藤
- そんないろいろをよくわからずに、
「こういうものがつくりたい!」と
相談をしたんです。
- 内田
- そこからがたいへんでしたね。
伊藤さんが望む白というのをつくるのが。
なにしろ色に厳しいからね。
- 伊藤
- 苦労をかけました。
- 内田
- 彼女のことを知っているので、
だいたい想像はできるんですよ。
たとえばフランスの伝統的な陶器
「ジアン」(Gien)のように、
普通の白ではなくて、でも、
日本で一般的に使われる洋食器ともちょっと違う、
ちょっとぽったりした感がある器、
伊藤さんがやりたいことは
きっとそういうことなんだろうな、と。
いっそシャープだったりソリッドなイメージの
白磁の青白い白さを出すのならすぐできるんです。
でも今回のような、ちょっとクリーミーな感じで、
厚みもあって、「ぽったり」した、
ちょっとヨーロッパの田舎のほうで使われるような、
でも清潔感があるもの──。
それを目指して始めたので、手間がかかりました。
僕がたまたまスペインや
オランダの釉薬を持っていたので、
その感じを目指してつくっていきました。
一見、白だけど、できあがって並べてみると
やっぱり明らかに違うっていう感じは、
ニュアンスが分かる人には、
「あ、違う」ってわかってもらえるだろうなと。


▲伊藤さんの持っている、ヨーロッパの古い器。
- 伊藤
- 内田さんは、ヨーロッパに武者修行に出ていて、
いろいろな質感、白のニュアンスをわかっている。
そして骨董にもとても詳しい。
だからその目を信じて、何度もやりとりをして、
「こうしよう、ああしよう」と
話を進めていきましたね。お皿の原型は、内田さんが
ろくろを引いてくださいました。
それにあたっては、北欧のお皿だけじゃなく、
私が昔から使ってる器を全部見てもらったんです。
この形がいい、ということではなく、
「料理を盛って感じがいいのはこのあたり」
ということを伝えました。
わたしが伝えたのはおおまかな輪郭です。

▲原型をつくる打ち合わせは、内田さんの工房で、作業をしながら進めた。
- ──
- つまり料理を盛ったときの美しさ、
みたいなところが、色とともに、
伊藤さんからのいちばん大事なポイントだった。
- 伊藤
- うん、やっぱり、お皿は料理を盛るものだから。
器は器だけで完成しているのではなく、
料理を盛って、食べる人がいて、
見た目も使いやすさも重さも色も形も、
洗うときの始末とか乾きやすさとか欠けづらさとか、
それも全部含めてお皿の個性なんですよ、って。
それを内田さんはすぐに分かってくれた。
- 内田
- だから原型はすぐにできたね。
やっぱり時間がかかったのは釉薬です。
というのも、この色を出すための釉薬は、
ふつう、量産ではあまり使わないものなんです。
それは価格が高く、
かといって代替えの原料では
同じ白でもニュアンスのことなる、
似て非なるものになってしまう。
しかもこれが釉薬反応をしやすくて、
焼成過程でほんのちょっと、
別の色が出てしまうこともある。
そこは今回の工場、光泉セラミックの
酒井さんと相談をしてすすめていきました。

▲三重県四日市市にある光泉セラミック。右が酒井修さんです。
- 伊藤
- ほんとうにありがとうございます。
ろくろで作品をつくるのならOKでも、
それを量産をすることは
まったく別ですものね。
どこまで「ぶれ」を許容するかも。
- 内田
- 焼成過程で時間がかかったのは、
たとえばお皿の裏の処理でした。
古いヨーロッパの器で
使われていた技法で、やりたかったんです。
それは同業者や、興味がある人からすると
「おっ」って言う方法なんですよ。
今みたいに高温で焼く器とは違って、
当時は低めの温度で焼いていたから、
縮みが少なく、変形しにくかったので
可能だった方法なんですが、
いま一般的に流通してるような焼きものの温度帯だと、
一割以上縮むので、引っ張られたり変形したり、
うまくいかないんです。
それをどう解決するかも、ずいぶん試行錯誤しました。
- 伊藤
- そうだったんですね。

▲高台の裏の処理のため、専用の台をつくり、ピンで支え、浮いている状態に。畳付にも釉薬がかかっているので、テーブルの上で擦っても、傷がつきにくい。
- 内田
- 置いて使っている分には見えないところの
処理じゃないですか。
着物の裏地を凝るっていうのと一緒で、
クスッとくすぐられる人はいるけれど、
興味のない人からしたら何てことのないものです。
キャセロールの裏まで全部、
釉薬がかけてあることもそうだし。
でも、それをつくりたい、
しかも量産をしたいと考えたとき、
酒井さんの存在が大きかったですよ。
量産を一番に考えれば違う方法を選ぶところ、
「それじゃこの良さって出ないよね」って、
わかってくれた。
酒井さんがいなかったら、そして、
こんなに面倒なことをしてくれる工場がなかったら、
できないことだったと思います。
どこの窯元にもっていっても、
ふつうだったら、たぶん断られます。
いろんな意味でロスが多くリスクが大きいので、
みんなやりたがらない。
- ──
- さきほど、はじめてのロットが
窯から出てきたのを見せていただいて、
ぼくらは、すごく沸いていたのですが、
内田さんと酒井さんは
「うーん」と難しい顔をなさっていて。
- 伊藤
- なんで笑顔がないのかしらって思っていました。
- 内田
- そんなに「おおっ!」って
喜んでいなかったでしょう(笑)?
一回こっきりだったら、
「よし、これで終わりだ。バンザイ」でいいけど、
思ったのは「これから大変だろうな」

▲最初の素焼きは780~800度で。釉薬をかけて1200度で12時間焼く。1回にできるのは500~600ピースほど。
- ──
- そうして、やっと完成しましたね。
こういう白い器って、
あるようでなかったように思います。
- 伊藤
- うん、ないですよね。
- 内田
- うん、なかった。
鋼正堂のうつわ
ふつうじゃない、 「ふつうの器」。
いろんな器を使ってきました。
いろんな器を買ってきました。
失敗もたくさんしてきました。
そんな私が今欲しいのは、
なんのてらいもない「ふつうの器」です。
でも「ふつう」ってじつは一番、むずかしい。
持った時の質感、
料理を盛った時、どう見えるか。
厚み、リムの大きさ、深さ、重み、
重ねた時の、ちょっとした表情
(人間でいえば仕草みたいなもの)。
シンプルという言葉だけでは済ませられない何かを、
「ふつうの器」にもとめたい。
できれば作家性の強いものではなくて、
毎日使っても飽きがこず、
あつかいやすく、
買い足すことができ、
比較的、買いやすい値段で。
‥‥そう考えた時、
形にしてくれる人は陶芸家の内田鋼一さん以外にいない、
と思いました。
最初は、まるで子どもが描いたような私のメモ書きから
始まった器作り。
途中途中も、大まかな輪郭しか伝えなかったのに、
よくぞ形にしてくれましたとうなるばかりのできあがり。
この器には、
内田さんの土に対する知識と経験が
たくさん詰まっている。
にもかかわらず、たたずまいは「ふつう」。
これってかなりすごいことなんじゃないかなぁと
思っています。
毎日使うようになり、
料理を盛るたび、いいなと思う。
食器棚に重なっている姿を見るたび、
美しいなと思う。
カチャカチャとカトラリーが器に触れる音さえも
いいなと思う。
ふつうじゃない、「ふつうの器」。
たくさんの方の手に渡り、
そのよさを実感していただけるといいなと
思っています。
ひとりで仕事をするということ。
- 伊藤
- 山下さんは、独立なさってから
ずっと1人でお仕事をなさっていますよね。
- 山下
- もちろん、洋服を作るには何人かの協力が必要で、
僕が縫うわけでもないですし、
パターンは別の人もいるんだけれど、
基本的には全部1人でやります。
- 伊藤
- そうですよね。それって、なぜですか?
人に頼むより自分でやったほうが早いから?
- 山下
- 何でだろうな。別にまだ1人で全然できるからかな。
- 伊藤
- 私もよく「アシスタントさん、いないんですか?」
「マネージャーさん、いないんですか?」
って言われるんだけど、結局、頼む仕事がない。
「じゃ、白いテーブルクロス借りてきてください」
と言っても‥‥。
- 山下
- 白もいろいろあるものね。
- 伊藤
- そう! 素材感って自分で見なきゃ分からないし、
だから頼むことがないんです。
原稿なんてとても「お願い」と言えないし、
食材もそう。にんじんひとつとっても、
ちょっと葉っぱが付いているものを
自分だったら買うかもしれないけど、
その人は気にもとめないかもしれないし。
わたしはそういうことで頼めないっていうのがあります。
山下さんもきっとそうなのかなって、
仕事ぶりを見ていて思いました。
- 山下
- そうそう、そうです。
- ──
- 伊藤さんがスタイリングっていう世界で
1人でやっているのは分かるんですが、
山下さんはむしろ会社を大きくするとか、
もう1人すごい相棒がいたら、
たとえば信用できる営業がいたら、
自分はデザインに専念して、
業績を何倍にもすることを目指す、
という考え方もあるように思うんですが。
- 山下
- あるんです。1人増えると、3倍4倍になるんです。
でも、やろうとすることがだんだん薄くなるし、
「僕から買いたい」って言ってくれるお客さんを
無下にすることになる。
もちろんそれを超えなければ大きくならないですし、
超えないうちはまだまだ小さい。
僕らの仕事って、同じ服を1万枚つくるのも
10枚つくるのも、やることは同じなんですね。
発注するゼロの数が違うだけ。
でも、まだ、自分ひとりでやれることのなかにある、
大事にしたいことが、あるんです。
- 伊藤
- 先日「ほぼ日」のみんなと展示会にお邪魔して、
試着をしていたら、山下さんのコーディネートが
ほんとうに的確で。
「あなたは、青じゃなく、黒です」
みたいなことは、山下さんじゃないと
できないなって思いました。
- ──
- 山下さんから買いたいっていうお客さまは、
その体験込みで買いたいんですね。
そのためには、MOJITOをこのサイズで
続けていきたいというのが、理解できます。
- 山下
- よく言うんですけど、
店主の顔とか趣味が見えないお店って売れないんです。
ファストファッションは別として、
個店で、たとえばここのオーナーは
肉が好きかな、魚が好きかなとか、
山が好きかな、海が好きかなっていうのが、
明確に分かるお店って、売れているし、
長く続くんです。
- 伊藤
- 何がしたいのか分からないお店って、ありますもんね。
- 山下
- そうです。ちょっと前まで、
焼き肉屋でジャズがかかってればカッコいいって
みんな思ってたんです。
でもそうじゃないだろうっていうのが、
だんだん分かってきたんですよね。
それと同じようなことです。
だから、今はMOJITOをやり続けたい。
自分が着たいものを、
嘘なく作れるかぎりは、ずっとやりたいなと。
お客さんが増えてくると、
お客さんが喜ぶものを作ろうとするんですよ。
- 伊藤
- ああ、こうしたら売れるかな、とか。
- 山下
- そうそう。そっちが、自分の着たいものを超えるとき、
ブランドが全国区になって、
いろいろできるようになるんだけれど、
自分はそうじゃなくていいかなあと。
- 伊藤
- それこそ、ブレる、っていうことですよね。
人の意見が介在するから。
山下さんはブレていないですよ。
- 山下
- 売れるか売れないかっていうのは、
結局買うか買わないかだから、
それはお客さんが決めることだし、
売ろう売ろうとしてマーケットに媚びてるものって、
見ても何も伝わってこない。
「買いやすいだろう」とか「着やすいだろう」とか
「今のトレンドがこんな感じ」とか、
なんかそういうものって、
僕がやるべき仕事ではないんです。
- 伊藤
- 他に、いっぱいありますからね。
山下さんのような人と一緒に仕事をすると、
「この人と組もう」ということにおいて、
「weeksdays」チームもブレたら
いけないことなんです。
山下さん、まずはショートパンツだけれど、
この先も、いっしょにいろいろと
考えていってくださいね。
山下さんのつくるコートや
ニットにも興味があるんです。
女子が着たらきっとかわいいだろうなと
思うアイテムが、たくさんありました。
- 山下
- 光栄です、こちらこそよろしくお願いします。
-
【男性ならこんなコーディネートで。3】
もともとはフランス海軍のユニフォームだった
横縞のシャツ。
それをMOJITO流の解釈をして、
従来の余白部分にあえて横縞を入れたモックネックに、
ガルフストリームショーツを合わせた
ミニマルなコーディネートです。
靴をブラックのプレーントゥにすることにより
カジュアルになり過ぎない雰囲気にまとめています。
トップスのカットソーをタックインすることで
ガルフストリームショーツの
ディテールポイントである
ウエストベルトを目立たせます。
(山下裕文)
男ものを着るのも、ひざ小僧を出すのも。
- ──
- 25年前に原宿で会った2人が、
こうして一緒に仕事をすることになった。
どこで再会をしたんですか。
- 伊藤
- 『日々』という雑誌をつくっていた高橋良枝さんの
息子さんが共通の知りあいとわかり、
山下さんに連絡をとってくださったんです。
それで2017年の「生活のたのしみ展」に来てくださって、
再会して話をしてすぐに言ったんですよ、
「山下さん、いっしょに何かつくりましょう」って。
- 山下
- 僕は、会わない間に、伊藤さんのことを、
本屋さんで知っていましたよ。
子どもが神保町の塾に行っていて、
送り迎えの待ち時間の2時間ほどを、
大型書店で過ごすのが常だったです。
そこで「伊藤まさこコーナー」を見つけて。
「あれ? どっかで見たことある人だな」
と思って見たら、
「うわ、こんななっちゃったんだ!」と思って。
女性誌を頻繁に見ていれば
伊藤さんの活躍を分かっていたんだと思うんですけど、
僕はあんまりそういうのを見ないし。
- ──
- 伊藤さんも、MOJITOのことは知らなかった?
- 伊藤
- もちろん。だって男の人のブランドだし。
でも山下さんなら、
一緒にできるんじゃないかなと思ったんです。
そもそもわたしは、メンズウェアを
女の人が着てもいいんじゃないかなと思っていて。
あんまり、「メンズウェアだから」とか
「レディースだから」とか、
そういう「○○だから」っていうんじゃないことを、
「weeksdays」でやってもいいと思っていたんですね。
それで最初、山下さんに、
MOJITOの代表的なアイテムを持ってきていただいて、
みんなで試着会を開いたんです。
- ──
- そうでしたね。開襟シャツ、レインコート、
パンツ、ニット‥‥いろいろあったなかに、
このショートパンツがありました。
- 伊藤
- かわいいものがいっぱいあったのだけれど、
私たちもはじめたばっかりだったし、
何アイテムもできるとは思えなかった。
そこで「じゃ、まずひとつ」ということで、
ショートパンツを選んだんです。
なぜショートパンツだったのかというと、
この年になるとひざ小僧を出さなくなるでしょう?
でも私は「別に出してもいいよね」と思っている。
そういうことも言えたらなと思って。
- 山下
- 伊藤さんがよく膝のお話をされてるんですが、
僕らの周り、洋服屋さんの女性たちは
普通にショートパンツをはいて膝を出していますよ。
- 伊藤
- じゃ、そんなに女の人が
ひざ小僧を出すのは問題ない?
- 山下
- うん、全然。
- 伊藤
- よかった。
でももうひとつ、ショートパンツを選んだ理由があって、
「いろんなものを着てみたいという気持ち」が
あったからなんです。
ハッと思ったのは、同い年ぐらいの女性が集まると、
私を含めみんな黒ばっかり着ていて、
魔女の集会みたいになっちゃうの。
だからなるべく黒以外の、たとえば華やかな色とか
柄ものとかを着ていくようにしている。
黒って着ていると安心感があるんだけど、
安心だからとそれに甘んじて
着るものが狭まっていくのは、
いやだな、と思ったんですよ。
だから、若い頃に着ていたセントジェームスの
ボーダーシャツを買い直したり、
似合わないと思っていたTシャツも
着てみようかなと思ったり。
わたしが「Tシャツは似合わないから」
と言っているのは、
みんなが「ひざ小僧、出したくないから」
と言うのと同じなんじゃないかな? って。
- ──
- 伊藤さんがこれを選ばれたときに、
メンズの服って、10年20年、
クッタクタになっても着る良さがあるとも
おっしゃっていましたね。
- 伊藤
- そうなんです、面白いですよね。
靴も、女の人は「今年これ買おう」
みたいなのがあるけど、
男の人ってずっと直して履くんですものね。
-
【男性ならこんなコーディネートで。2】
インドの熟練した職人によりつくられた
ブロックプリントの生地を使った
プルオーバーシャツに
ガルフストリームショーツを合わせ、
足元はローファーです。
トップスの総柄プリントが 無地のショートパンツがもつ
高級な素材感を引き立ててくれる
コーディネートです。
(山下裕文)
25年前、原宿で。
- 伊藤
- 山下さんがMOJITOを始めたきっかけは、
どんなことだったんでしょう。
- 山下
- 2010年、42歳のときにMOJITOを立ち上げました。
それ以前は、フリーランスで、いろんなファッションの
コンサルティングの仕事をしていたんです。
営業のやり方、ブランドイメージの構築を
メーカーやブランドと契約して行なう仕事です。
また、少しだけデザインの仕事もやったりしていました。フリーランスになったのは35歳です。
最後の会社勤めは、カバンを作る会社です。
そこでお店を作ったり、
大手セレクトショップのOEMの仕事をしたり。
35のときに辞めて、
2年間、とあるブランドのお手伝いをしてから
フリーランスになったんです。
その仕事は2008年がピークで、
7社同時に契約をしていました。
とても忙しく、午前中はここ、次はここ、
みたいな感じで1週間ずっと動き、
自分のノウハウやハウツーを切り売りしていました。けれども3年の契約でも2年で終えて
効率良く仕事をしていくのが当たり前の
業界のスピードに磨耗していき、
こういう仕事は長くやるべきではないと思いました。
同時に、自分は洋服が好きなのに、
着たいもの、買いたいものが
世の中になくなっていくことがすごく嫌で。
だったら自分のノウハウとハウツーを、
自分で洋服をつくることに
注ぎ込んでやろうと思ったんです。
そこで1年かけて、
結んでいたコンサルティング契約を引き上げて、
MOJITOを立ち上げました。
- 伊藤
- 山下さんが言う
「着たいもの、買いたいもの」というのは、
MOJITOのテーマである
作家のヘミングウェイのスタイルだったんですよね。
- 山下
- そう。ヘミングウェイっていうのは、
僕らみたいなアメリカ畑というか、
アメリカンな洋服が好きな男性にとって、
ものすごく強い理想なんです。
僕が思うに、ヘミングウェイは、
男性が求めるものを全て持っているんです。
- 伊藤
- 例えばどんな?
- 山下
- ノーベル文学賞を受賞する。
- 伊藤
- えっ、そういうこと?!
- 山下
- お酒が強い。女にめちゃくちゃモテる。
結婚を4回してる。世界中旅をする。
冒険したいなとか、大きい魚を釣りたいなとか、
アフリカ行って狩りをしたいなとかっていう、
もうありとあらゆる、
ちっちゃい男の子が思うようなことを、
ヘミングウェイは全部やってるんですよ。
犬も猫も好きだし、
小さい自分だけの家があって、
大作を発表するたび奥さんが替わって。
もう僕にとってこれ以上もこれ以下もないっていうか。
- 伊藤
- へえ‥‥。奥さん替えたいの?
- 山下
- いやいやいや(笑)!
そういうことじゃ、ないんですけど。
- 伊藤
- ヘミングウェイのように生きることは、
男の夢なんだ?
- 山下
- はい、夢ですね。
- 伊藤
- じゃあ、そうすればいいのに。
- ──
- いまの時代では現実的じゃないですよ。
- 伊藤
- そっかぁ。みんながそうだと困りますよね。
- ──
- 伊藤さんが山下さんと出会ったのは、
もっと前だとお聞きしました。
- 山下
- それはもう、うんと前です。
25年前ですね。
僕が原宿の「PROPELLER」(プロペラ)というお店で
仕入れと販売とプレス(広報)をしていたとき、
伊藤さんをはじめ、今すごく活躍してる人たちが、
たくさん来ていたんです。
- 伊藤
- あのとき、原宿の裏っかわが
すごく盛り上がっていましたよね。
「PROPELLER」に行くと誰かしら
オシャレな人たちがいるみたいな、そういう店だった。
メンズファッションの店だったけれど、
私はそのへんでウロウロ遊んでたんだと思います。
- 山下
- メンズウェアの店でしたが、
100%男性のお客さんじゃなかったんです。
- 伊藤
- メンズのニットをオーバーサイズで着るとか、
女の子がそういうことをしていましたよね。
-
【男性ならこんなコーディネートで。1】
鮮やかなギンガムのアブサンシャツに
ドライな肌さわりが特徴的な
リネンカーディガンのトップス、
そこにMOJITOのアイコン的アイテムの
ガルフストリームショーツを合わせてみました。
春夏シーズンのMOJITOを代表する
このスタイリングは、
流行や年齢の垣根を超えて楽しめます。
足元は、酒場でも釣りへ出掛ける時でも
短パンにスリッポンのローファーを履いていた
ヘミングウェイへのオマージュとして
ローファーを選びました。
(山下裕文)