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少しずつ「自分のもの」に。─ MOJITO

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おしゃれな人って
「自分に似合うものをよく知っている人」
なのだとつくづく思います。

MOJITOの山下裕文さんとは
25年ほど前に知り合いましたが、
その時から彼のことを、
しゃれてるな、
と思って見ていました。

当時の私はというと、
着たい服が着る服で、
自分に似合うかどうかはおかまいなし。
若気の至りと済ませてしまえばその通りなのですが、
あっちにいったりこっちにいったりと、
寄り道しながら好みを探している私と彼とでは
服に対するまなざしがぜんぜんちがう。
とにかく自分の好きなものに向かって
「まっすぐ」なのです。

weeksdaysをはじめる時、
どことなく頭の片隅にMOJITOのことがあって、
何か一緒にものづくりができたらいいなと
思っていました。
メンズだからといって心配することもなく、
彼なら大丈夫。
なんだかそんな安心感がありました。
だって25年近く、
ちょっとかっこいい言葉で言うと
「ブレずに」やってきた人なのだから。

話しを進めていく中で、
気になったのがブランドを始めてから
変わらず作っているというショートパンツのこと。
「ではまず履いてみてください」
と手渡されたその日から、
幾度となく履いては洗ってを繰り返し、
少しずつ「自分のもの」になってきた。
時間をかけて服とつきあうって、
なんだかいいなぁ、
愛着がわくものだなぁ、
そう感じています。

デザイナーとスタイリスト、ふたりの目から。

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Vネックブラウス

袖口や襟ぐりから風が入っては抜けて‥‥。
涼しげな見た目だけではなく、
着ていると風を感じる一枚です。

この感じどこかで‥‥と思っていたのですが、
岸山さんの「平面的な折り紙のような」という言葉で、
そうか、浴衣と似ているんだ!
と気づいたのでした。

去年の夏はこのブラウスで乗り切ったと言っても
おかしくないくらい
洗っては着て‥‥を繰り返しましたが、
手に取る理由はその着心地だけでなく、
鮮やかなブルーのギャザースカートや
黒いパンツ、
ロールアップしたデニム‥‥と、
どんなボトムスとの相性もよいということ。

今日はパンツと白いサンダルで
同系色のコーディネートにしてみました。
(伊藤まさこ)

Vネックワンピース誕生の
もとになったブラウスです。
まだ「saqui」がうまれる前、
「SAYOKO KISHIYAMA」のネームで、
もっとパリッパリの生地でつくったブラウスが原型。
そのとき、こういうハリのある生地でつくると、
立体裁断なのに平面的な折り紙のような
たのしさ、かわいらしさがあることに気付きました。
今回の生地は日本製の上質な、
ハリのあるコットンタイプライターです。
(岸山沙代子)

テーパードリボンパンツ

先日、私と同世代の編集者が
多く集まる編集部に行きましたが、
「一日のうちだれかしらがsaquiの服を着ている」
と言っていました。
この世代、みんな何を着たらいいのだろう?と
本当に困っていると思うのですが、
着ていて楽ちん、
でもけしてだらしなく見えないsaquiの服って、
私たちの救世主になりつつあるみたい。
このパンツのウェストはゴムですが、
考えられたパターンのおかげで全体的にすっきり。
鮮やかな色とハリのある生地、
ウェスト部分のリボン‥‥と、これまた岸山さんの
細かな気配りが随所に見られます。
(伊藤まさこ)

ゆったり目のテーパード、ファスナーなし、
パジャマのようにリラックスして着られるパンツです。
でも、だからこそ、
メンズのスラックスに見られるような
「玉縁ポケット」とヒップにはパッチポケット、
クロップド丈の端正なデザインに仕上げました。
ゴムが入ってて、紐で止めるウエストから、
すとんとしたすっきりとしたテーパードシルエット。
ウエストには白のグログランリボンをつけ、
女性らしさをプラスしています。
(岸山沙代子)

タックギャザースカート

いくつになってもふんわりスカートが好きです。
ただしこの年でそれを着るのは、
いくつかのハードルを越さねばなりません。
まずシックな色合いであること。
上質な生地を使うこと、などなど。

スカートにボリュームがある分、
コーディネートはごくごくシンプルに
夏は白いTシャツと、
秋から冬にかけては同系色のニットでまとめて。
トップスによって手でくしゃっとさせて
ボリュームを出したり、
または抑えたりと形が自分で決められるのもうれしい。

春夏秋冬一年を通して着られる、
スカートです。
(伊藤まさこ)

もともとはドレスに使われる生地ですが、
伊藤さんが、「こんな感じのスカートが欲しいな」
というリクエストに、この生地がぴったり。
イタリア製の形状記憶の生地をつかった
たっぷりしたスカートができました。
自分で押さえてあげれば、
ストンとしたシルエットになりますし、
ここぞっていう時には、ふわっとさせて着る、
そんなたのしみがあります。
ポケットは左右にひとつずつついています。

ウエストはゴム。これもイタリア製の、
とても上質なものなんですよ。
(岸山沙代子)

デザイナーとスタイリスト、ふたりの目から。

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ストラップドレス

肌への馴染みがよく、
シワになりずらく、上質さもあって・・・。
一目見た時、まずは生地の質感に惹かれました。
動くたびに揺れるたっぷりのギャザーは、
動作をしなやかに、
そして美しく見せてくれます。

肌の露出が多いと
気にする方もいらっしゃるかもしれませんが、
羽織ったり重ね着することによって、
また違った表情が生まれる、
「コーディネートのしがいのある服」
そう感じています。

これ以上そぎ落とすところはない、という
シンプルなデザインながら、
胸元のラインやストラップの幅など
ちゃんとsaquiっぽさがある。
岸山さんの裁量がそこかしこに見られる一枚です。
(伊藤まさこ)

リゾートで着る、大人のかわいいサンドレス、
ストラップドレスです。
ふだん、肩なんて出せないと思っているひとも、
リゾートに行くと、
かわいいワンピースが着たくなるものですよね。
そういう時に、こんなドレスがあったら!
という理想をかたちにしました。

イタリア製のストレッチの入っている生地なので、
自分のバストよりも若干小さめのサイズを選び、
素肌に直接、着ていただくこともできます。
裏はつけていませんが、しっかりした生地です。

ハイウエストで、そこからたっぷりのギャザーが、
足首のあたりまでのびています。
オールシーズン着られる生地ですから、
街では透け感のあるTシャツを重ねたり、
カーディガンを羽織ったり、
テーラードジャケットをあわせたり。
上からニットを着れば冬のマキシ丈スカート風にも。

肩ひもが細いことを心配なさるかたも
いらっしゃるかもしれませんが、
胸でちゃんと支えていますから、
肩に重さがかかる印象はありません。
また、とてもじょうぶなコードを使っていますので
華奢に見えても、切れやすいということもありません。
この肩ひもをできるだけ外側につけたことと、
胸元のライン直線的にしたことで、
スタイルがすっきりと見えるようになっています。
(岸山沙代子)

タックワンピース

夏はさらりと一枚で着られ、
かつそれだけでおしゃれに見える
ワンピースが着たい。
太陽の日差しに負けることのない
あざやかな色が着たい。
二の腕もきれいに、
そしてどこかしら品のよさも感じられて‥‥、
と言えるだけのわがままを伝えて
作ってもらった一枚です。

横から見ると分かるように、
開きすぎず、せますぎずの袖ぐりが絶妙。
襟ぐりもまたしかり。
今回は黒いヒールとコーディネートしましたが、
ゴールドなど光る素材の
華奢なサンダルも似合いそう。
少し肌寒くなってきたら、
トレンチコートを羽織ればまた違った雰囲気にも。
トレンチからちらりとのぞくピンクがまたいいんです。
(伊藤まさこ)

「とにかくきれいな色が着たい」
そんな伊藤さんのリクエストで、
はっきりとしたピンクのワンピースをつくりました。
つよい色ですから、デザインはミニマムに。
袖がなく、襟もないことで、素敵に決まる!
と、そう考えたのですが、
ふつうのノースリーブふうにならないよう、
後ろと前に大きくタックを入れています。
脇線も前に来ていて、キューっと中に入っている、
立体的なパターンです。

後ろから見るとわかりやすいのですが、
裾がほんのすこしすぼまっている
コクーンシルエット。
裾は膝下です。
大人の女性が着ることを考え、
ウエストはしぼらず、
膝も出ないという丈感で、
足が細く見える位置にしています。

二の腕だけは気になる、
というかたもいらっしゃるかもしれないけれど、
私は出したほうがいいと思っています。

生地はイタリア製のコットンシルク。
目が詰まっていて、とても着心地がよい素材です。
透け防止に、裏地を付けました。
(岸山沙代子)

ボーダーブラウス

saquiのアトリエに行くと、
盛り上がるのが布談義。
岸山さんが見つけてきた布見本を見ながら、
これかわいい、こっちもすてきと
布好き同士でワイワイするのです。
「布からデザインを考えることが多い」
と言う岸山さんが、
この薄くて華奢なボーダーでブラウスを作ったら
どんなものになるんだろう?
襟はなく、七分袖で‥‥。
大まかなデザインの枠組みだけ伝えて
やがてできあがってきたのがこの一枚。
軽やかでしなやかな素材とほどよい透け具合、
落ち着いた白が魅力的な一枚。
デニムとかごを持って‥‥、
なんてカジュアルなコーディネートも合いそうです。
(伊藤まさこ)

私が持っていたこの生地を
「伊藤さん、これ、かわいいでしょう?」
とお見せしたら、
「こんなブラウスにしたらかわいいじゃない?」
と、パパッとデザインの提案が。
最初は1枚で仕立てたのですが、
身頃が透けることを避けるため、
袖以外は前も後ろも、
生地にグレイベージュの布で裏打ちをしています。
とはいうものの、まったく透けないように
しているわけではありませんから、
ベージュ系のインナーを着けることをおすすめします。

とても繊細な布で、すずしい着心地。
改まった席にも着られる一枚です。
(岸山沙代子)

Vネックワンピース

このワンピースの色違いの
グリーンを持っていますが、
あずき色も欲しいなぁ、
きっと違った印象になるはず。
そう相談してできたのがこちら。

岸山さんは
「きちんとメイクして、
アクセサリーもつけて着て欲しい」
そう言っていましたが、
私も賛成。
ウェストのないデザインだからと気を許さずに、
おしゃれをしてやるぞという心意気で着て欲しい。
背筋を伸ばして、隠れるお腹の部分もきゅっとしめて
さっそうと歩いてくださいね。

また、ベルトをきゅっとしめると
ラインが変わって新鮮。
ハリのあるコットンのギャザーが
生き生きとした表情を生み出します。
(伊藤まさこ)

白のVネックブラウスをもとに、
「ぜったい、かわいいから!」
という伊藤さんからの提案で、
ワンピースをつくりました。
「weeksdays」の糸井さん、伊藤さん対談で
伊藤さんが着ているのが、このかたちのグリーンです。

今回は、ボルドーをえらんだ伊藤さん。
シンプルに見えますが、
ポケットをステッチにすることで表情が出て、
かわいいアクセントになっています。
袖は五分。肘がかくれるくらいの長さです。

裏地なしで1枚仕立てですが、
透け感はなく、風がとおって涼しい!
ふんわりこのまま着ていただいてもいいですし、
ベルトをしてもかわいい。
下にデニムを合わせてもいいですよ。

わたしからの提案は、ぜひアクセサリーを
合わせていただきたいなということ。
ピアスだけでも、腕輪だけでも、
ひとつ加えるとずいぶん印象がかわります。
きちんとしたメイクも、おすすめです。

生地は日本製の上質な、
ハリのあるコットンタイプライターです。
(岸山沙代子)

saqui 岸山沙代子さんのこと。

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最初に勤めたのは、
手芸・服飾系の出版社でした。
だから、そもそもを言うならば
「どちらも」目指していたんですね。

大学は家政学部で被服を専攻しました。
繊維のことなど、理論系の勉強です。
そのころの夢は、いつかパリに行くこと。
といっても具体的ではなく、目的もなく、
10代の女子の、ぼんやりした夢でした。

被服の勉強をしながら、
実践的な服づくりのことがもっと知りたかったので、
大学に行きながら服飾系の学校の夜間部に行き、
デッサンやデザイン画から勉強しました。
大学卒業後はさらに1年間、
ファッションの専門学校のアート科に。
けれどもそこは、賞を狙うような、
モード系、ハイファッション系のデザイナーの卵が
あつまるような場所で、
わたしはそういう世界やデザインに興味がもてず‥‥。
自分で縫う技術も足りなかったので、
怖い先生のもと、すこしへこんだりもして、
大学のときから同時にやりたいと考えていた
編集の仕事をしようと、
服飾系の出版社に就職をしたんです。

服づくりの月刊誌編集部に配属になり、
製図の担当になりました。
毎号、すぐに使える製図が
付録としてつく雑誌だったんです。
思えばそのときの経験、
つまり「服をつくるための平面とは?」
ということが徹底的に頭に入ったことが、
のちのちすごく生きてくるんですが、
当時はそんなこともわからずに、
ただ必死に仕事をしていました。
もちろん製図だけではなく、
特集や記事にもかかわりながら、
3年間をすごしました。

その仕事をしながら、平面だけではなく、
もっと広い世界が知りたいと、
立体裁断の学校に通いはじめました。
「東京立体裁断研究所」というところです。
そこで近藤れん子先生に出会ったことが、
わたしの大きな転機になったように思います。

服をつくるのに必要なことは、
数字、つまり寸法である、と思っているわたしに、
近藤先生は「そうじゃない」ということを
教えてくださいました。
先生は、欧州への渡航が制限されていた
船旅の時代にパリに行き、
5年間、洋服づくりを学び、
バレンシアガに勤めたのち、
帰国して研究所をつくられたかたです。
教えてくださることは、
ほんとうに実用的であり、
また、理想的なものでした。

立体裁断というのは、
布を平面に置いて考えるのではなく、
じっさいに着用するときのようにトルソに下げて、
布が重力でどう落ちるかをみながら、
また、その布がどういう構造なのか、
人のからだはどう動くのか、
着用したときの関節や筋肉の動きまで考えて
布を裁断し、デザインしていくという手法です。
パリのオートクチュールのテクニックで、
それをしっかり理解をするためには
「寸法だけに頼ってはいけません」
というのが先生の教えだったのです。

じゃあなにを指針にするのかといえば、
「もうとにかく、目で見て、
きれいかどうかっていう、それだけだから」と。
目からウロコでした。

けれども、そうやって服飾の世界に魅かれながらも、
同時に編集の仕事でも
キャリアアップをしたいと考えたわたしは、
べつの出版社に転職をしました。
そこで実用書の編集部に配属になり、
かねてから一緒に本をつくりたいと思っていた
伊藤まさこさんにお声掛けをしたんです。
当時伊藤さんは『こはるのふく』という
子供服の本で有名になっていて、
4、5冊くらい著作を出されていた頃だと思います。

そこで伊藤さんと一緒につくった本は2冊です。
子供服のソーイング本『少女の服』と
大人のためのソーイング本『Robe Rouge』。
じぶんの持っていた知識や経験のすべてが生きました。
よし、やりたいことはできたぞ、
そんなふうに考えていたおり、
先輩の編集者から、
大手出版社が女性誌を拡大するにあたって
外部スタッフが必要だから、
あなた、来ない? と誘いが。
それを機に会社を辞め、フリーランス契約で
集英社の『LEE』編集部に入ることになりました。

『LEE』でも引き続き伊藤さんの担当をしました。
充実し、忙しい毎日でしたが、数年経ったころ、
年齢は33か34だったと思いますが、
ふと、こう思いました。
「編集者も10年やった。
さあ、これからどうしよう?」
と。

わたしは社員ではないけれど、
ずっと編集の仕事をするという道もあります。
でも、10代のころから
パリに行きたいという夢もあったじゃないか。
そんなことを考えました。
もっとも、10代のころとかわらず、
「思い切り洋服の勉強をしよう」
なんて決めていたわけではないんです。
それは向こうに行ってから考えればいい、
なんならワインの勉強でもいいかな?
くらいに考えていたんですね。
でもその気になったわたしは、
そこから2年間お金を貯めて、
3年間、パリに留学に出ることにしました。

「編集者をやめて、パリに行きます」

伊藤さんには、そのことを編集長よりも先に伝えました。
そうしたら伊藤さん、驚くこともなく、
「ふぅーん」って。
「決めたんなら、いいんじゃない?」って。
背中を押してもらったような気持ちでした。

パリでの1年目は語学学校に通いました。
そのなかで、友人の家に行ったとき、
部屋に洋裁のミシンと、
パターンが置いてあったのを見て、
「ハッ!」と。

「これだ、これ。これだよ。
これを勉強しなきゃ!」

一気に洋服づくりへの道が見えました。
そこで語学の学校に行きながら、
夏休みからパターン専門の学校に
入学をしたのでした。

パリにはいろいろな洋服の学校があるのですが、
パターンの学校を選んだのは、
自分が洋服をつくるのに
足りない技術がそれだったからです。
そこであらためて平面と立体を学びました。
そして単位をとるために行った
オートクチュールのアトリエで、
ほんとうに美しいものをいっぱい見ました。
派手なだけの生地に目が奪われることなく、
質のよい黒い生地こそ
洋服にしたら仕立て映えする、
そんなことを教えてくれたのも、パリでした。
いま、saquiの服づくりも、生地ありきです。
よい生地を見たとき、
こういうかたちをつくりたい、
というふうに頭に服がうかびます。

やがてパリでの3年が経ちました。
わたしは2度引っ越しをし、
貧乏はしていましたけれど、
街にもずいぶんなじんだころでした。
パリに残るという選択肢もあったのでしょうけれど、
しょうじき、お金が尽きました。
たとえばモデリスト(パタンナー)として
どこかのアトリエに就職することも考えられます。
でもわたしはモデリストになりたいわけじゃない。
かといってデザイナーになりたいわけでもありません。
デザインとパターン、両方をやりたい、
1から服がつくりたいんですね。
しかし、パリで独立して仕事場を探して開業するのは、
資金の問題、ビザの問題、
さまざまな問題が立ちふさがり、
とてもむずかしいことに思えました。

なんとしてでもパリにいたければ
たとえば日本の雑誌編集部に営業をかけ、
フランス在住のライターとして仕事を受ける、
という道もあったのだと思います。
けれどもそれはそのとき、
わたしのやりたいことではありませんでした。
そこまでしてパリにいることを優先するのではなく、
服がつくりたいということを考えて、
日本に戻ることを決めました。

この話をすると伊藤さんは
「そんなに悩んでたんだ!
でも、また行けばいいじゃない?」
とおっしゃるんです(笑)。
そうですよね、日本できちんと仕事をして、
いずれ向こうに行ってもいいわけですよね。
いまでは素直にそう思えます。

それで日本に戻ったんですが、
貯めたお金はパリで使い果たしてしまったので、
開業資金がありません。
そこでしばらく、また、
編集のお手伝いをしたんですが、
わたしが不器用なものですから、
すっかり編集業に熱中してしまい、
「洋服がやりたいのに、編集が忙しい!」
みたいになっていきました。
それを伊藤さんが見て、おっしゃったんです。
「もうね、編集はやめて、
こっちの仕事に専念しなよ」と。
「私はあなたが洋服を作ることを、応援するから」って。
また、背中を押されました。

そこで、とにかく服をつくりはじめたんです。
まだアトリエもブランド名もなく、自宅で、
「SAYOKO KISHIYAMA (サヨコキシヤマ)」
というタグをつけて、
妹にスーツを縫ったり、
友人のワンピースをつくったり。
そのうち、伊藤さんがわたしのつくった
コートやワンピースを着てくださったのがきっかけで、
いろんなところから反響をいただき、
「じゃあ、コレクションをつくってみよう!」。
それが「saqui」の立ち上げとなりました。
2016年のことでした。
そこから年2回、コレクションを発表し、
受注をとり、服をつくっています。

いまも、saquiの服は生地優先です。
ほとんどがインポート生地です。
日本のインポート専門の生地屋さんに
お願いすることもありますし、
年に一度はパリに行って、
いろんなメゾンが要らなくなった生地を扱う
生地屋さんで買うこともあります。
気に入った生地があると値段を気にせず
仕入れてしまうこともあるので、
いろいろな意味で、まだまだたいへんです。

saquiでつくりたい服を言葉にすると──、
まず「らく」。
そして「ちょっとスタイルがよく見える」。
さらに「着心地がいい」
「形がきれい」「女性らしい」、
そんなキーワードになります。
伊藤さんは
「saquiに来ると、なにかほしいものが見つかる」
と言ってくださっています。

ブランドを大きくすることをめざすのではなく、
まずは自分の裁量で、できることをする。
そんなスタイルですから、実店舗をもたず、
自社のオンラインストア、
セレクトショップ、展示会、
口コミでいらしてくださるお客様が主体です。

今回、わたしの何度かの節目をご存知で、
いつも背中を押してくださった伊藤さんと、
こんな場がつくれたこと、
ほんとうにうれしく思っています。

saquiの服

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良い加減。─ saqui

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「いい加減っていうのは、
いい塩梅ってことで、
けっして適当ってことではないのよ。
服を作るときはこの感覚がとても重要なの」

私が服作りを勉強していた時に、
先生がこんなことをおっしゃいました。

同じ「縫う」にしても、
糸を引っ張りすぎるとつれてしまって
変なシワができてしまうし、
ゆるすぎるとぴしっとした仕上がりにならない。
だから加減を感じながら手を動かしなさい、
ということ。
先生のこの言葉は、
当時10代だった私の心にとても響き、
その後の服作りに大いに役立ちました。

岸山さんと初めて仕事をしたのは、
10年以上前のことで、
私がデザインした子ども服の本の
編集を担当してくれました。
その時に感じたのは、
「いい加減」を知った人だなぁということ。
襟ぐりや袖ぐりスカートの丈など、
「ここはこうしたらどうでしょう?」
と彼女がパターンに
ほんの少し修正を入れるだけでぐっとよくなる。
撮影用の服をふたりで手分けして縫った時も、
できあがりがきれいなのはもちろん、
とても「良い加減」なのでした。

その後、編集の仕事を辞めてパリに行き、
服作りの勉強をしながら、
美しいものをたくさん観て肌で感じて、
きっとつらい経験もたくさんして‥‥。
日本に帰ってきてブランドを立ち上げると聞いた時、
そんな彼女ならいい服を作るだろうな、
なんの疑いもなくそう思いました。
そして私(だけでなく、まわりの人は
みんな思っていたと思う)の想像通り、
最初のコレクションは、
今すぐにでも着たい!
まっすぐにそう思える服が並んだのです。

素材にこだわり、
「女の人が美しく見えるように」
とパターンにこだわる。
ひとつの服には、
いろんな想いがつまっているはずなのに、
印象はとても軽やか。
肩肘張らない上質な服という感じです。
そんな加減のよさが、
今の私の気持ちにぴったりなのです。

自由のための靴。

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伊藤
おふたりにはとくべつな
「お気に入りの靴」はありますか?
さきほどミヒャエルさんに、
ずいぶん大きな靴を
履かれているんですねとお聞きしたら、
トゥに余裕があるサイズを
履かれているとおっしゃっていて。
クラウディア
彼の靴はそうですね。
わたしも同じ。前の方は空いているんですよ。

▲ミヒャエルさんの靴は「FLIPPER」、クラウディアさんの靴は「BEACH」。ともに2018SSの作品。

ミヒャエル
いま気に入っているこの靴は、
トゥに空気穴が開いているんです。
換気ができていいですよ。
あまりにもフィットする尖った靴は、
砂時計のオリフィス(くびれ)に
つま先を突っ込んでいるみたいでしょ?
きゅうくつで、すぐに足を洗いたくなっちゃう。
伊藤
(笑)今回の日本への旅には、
ほかにどんな靴を持ってきているんですか。
ミヒャエル
東京にはこの型を色違いで2足持ってきました。
明日の夜に違う色のを履きます。
ぼくはずっとつま先が自然な丸みになっている
靴を履いてきたのですが、ある時、
尖ったつま先の靴も履きたくなったんです。
どうしたらいいのだろう? と考えました。
履き心地と尖ったつま先、
どうしたら両立できるだろうと。
そこで穴をつけてみたんです。
いつも使っているソールは変えず、
トゥだけを変えて。

▲「FLIPPER」は、つま先に穴が!

伊藤
クラウディアさんの靴の、個人的な好みは?
きっとたくさんお持ちだと思うのですけれど。
クラウディア
わたしの好みは靴紐がないものです。
怠け者なんですよ、わたし。
だから伸縮性のあるタイプがいい。
わたしはパターンをつくる仕事なので、
商品になる前の段階で、
すべてのスタイルを試して、
合わなかったり痛くなったりしたら
仕様を変えなくてはなりません。
そのため、サンプルは、
どんなに短くても一日は履き続けます。
そうすると、いちばん長く履きつづける靴、
自分のために取っておく靴は、
履くのも脱ぐのも簡単な靴になりますね。


▲trippenを代表するモデル「YEN」。インナーサイドのゴムがあることで着脱がしやすく、装飾を排しているのにスタイリッシュなスリッポン。

▲「weeksdays」にもこんな紐なしのタイプがならびます。

伊藤
服を着るとき、服から選びますか、
それとも靴から?
ミヒャエル
ぼくの場合、問題ないなあ。
だってぼくは、だいたい同じ靴を履いているから(笑)。
クラウディア
彼は好きな靴を何度も何度も履くんですよ。
ミヒャエル
見本市や展覧会に
すべての靴を持っていくのは難しいので、
僕は大抵、新しいスタイルの靴を持っていき、
それを毎日履いているんです。
伊藤
ベルリンのお宅には、
さぞやたくさん靴があるのでしょうね。
そもそも住宅事情が日本とは違うでしょうし。
クラウディア
はい、大きなクローゼットに、
同じ型で色違いなど、
たくさんの靴がありますよ。
伊藤
1日に何度も靴を替えることも?
ミヒャエル
彼女は50回履き替えてますよ!(笑)
それだけ仕事を頑張っているんです。
クラウディア
(笑)さきほどの質問の答えですけれど、
出かけるときは、洋服を先に決めます。
もしかしたら伊藤さんは、
靴を先に選ぶのがおすすめ?
伊藤
わたしは、今日は、
この靴を履きたかったので、
それに合う服を探しました。
いつも、ということではないんですけれど、
靴が好きなので、この靴が履きたいから、
というふうにコーディネートすることがあります。
ミヒャエル
そうですよね、その方が簡単かも。
女性は毎朝服を決めるのが大変だから、
靴を先に選んで服を決める方が
ずっとらくだと思います。
伊藤さんは、出張とか旅に、
靴は何足くらい持っていくのですか。
伊藤
2、3泊でも、3足くらい
持っていくこともあります。
靴って大事ですよね。
洋服に目が行きがちかもしれないけど、
靴が決まると全身が決まるんです。
だからシーズンごとの
トリッペンのコレクションが見逃せなくて。
わたしは、おしゃれをするために、
靴は我慢するものだとずっと思っていたんです。
それがそうじゃなくていいんだと
教えてくれたのがトリッペンです。
それまで、スニーカーを除いては、
ほとんど歩きづらい靴ばかりだった!
クラウディア
靴を履いたとき、どう感じるかは大切です。
窮屈だったり痛かったり履き心地が悪かったら、
本当の意味で自由になれません。
目の前にいる人に心を開けません。
足が痛い、座るところはないかしら、
などと余計なことを考えてしまうから。
それから、もちろん、
ちょっと背が高くなることも、靴の魅力です。
大きくなると、気持ちいいと感じますものね。
伊藤
はい、わたしも大事だと思います。
そしておしゃれ心も満たしてくれる、
そのバランスがすごくいいんですよね。
今回「weeksdays」で
ぜひトリッペンの靴を扱いたいとお願いした理由は、
売りたいものは、自分が欲しいものだからなんです。
売れるものを売りたい、わけではないんですよ。
なので、今回、つくってくださったものは、
わたしが本当に欲しいものです。
それをきっとみんなも欲しいと
思ってくれると信じて。
ミヒャエル
出来上がったものを持ってきましたよ。
一同
かわいい!
伊藤
全部、いいですね。よかった。
この色にしてよかった。
ありがとうございます。興奮しちゃった。
これを沢山の人に履いていただけるようがんばります。
ミヒャエル
よかった。
伊藤
きょうは、お目にかかれてうれしかったです。
ありがとうございました。
ベルリンにお戻りになられたら、
新しいコレクションに取りかかるんですか?
クラウディア
はい、まさしく今は、
2019年夏のコレクションに取りかかる前で、
アジアで自由な時間を楽しんでいます。
来週にはベルリンに戻って、
新しいコレクションをつくり始めます。
5週間は、かかります。
伊藤
日本に滞在なさって、楽しみながら、
次の靴のことを考えることはないのかな。
遊んでいても、お酒を飲んでいても、
空を見たりとか‥‥、
そうしたきっかけから
デザインが生まれたりすることは?
クラウディア
空が落ちてきて、
頭に直接アイデアが入ってきたり(笑)?
ミヒャエル
残念ながらそういうことはないんです。
最終的には、いつも、ハードワークです。
クラウディア
インスピレーションのことを
いつも考えていられたら素晴しいですよね。
もちろん一日中靴のことを考えていますが、
それはインスピレーションのことではなくて、
大半は日常業務についてなんです。
組織のこと、これをしなきゃ、あれをしなきゃ、
その後はあれをして‥‥などなど。
トリッペンの運営のことで頭が一杯です。
伊藤
これからどんなものをつくりたいとか、
会社をどんな風にしたいなどの展望はありますか?
ミヒャエル
スニーカーはつくりたくないな!(笑)
伊藤
なるほど(笑)。
ミヒャエル
まじめな話をすると、
会社が25周年を迎えるまで、
創立時の原則である「商業性一辺倒にしない」
ということを保持することができました。
これからもそれを貫くことができたら‥‥、
つまりね、商業性と対立するのではなくて、
妥協点を見つけ、
独自のデザインをしてゆくということが続けられたら、
ぼくはとてもハッピーです。
伊藤
売れることだけを考えるのではなく、
自分たちの独自の世界観を守ってつくっていきたい、
ということですよね。
クラウディア
トリッペンはバラエティ豊かな靴をつくっています。
様々な可能性、様々なスタイルがあります。
いろいろな人が、トリッペンの靴から
好みのものを見つけてくださいます。
店には対照的な人々がやってきます。
若い人でも、老いた人でも、
カラフルな服を好む人でも、黒ずくめの人でも、
トリッペンの靴を好きになってくれる。

▲ミヒャエルさん、クラウディアさん、そして日本のチームと。履いているのはtrippen!

ミヒャエル
面白いのは、対照的な彼らが好きになるのが、
往々にして同じ靴だったりすること。
彼らは互いに顔を見合わせて、
「あれ? 自分とまるで違う人が、
わたしの好きな靴を好きになるんだ!」
と驚きます。
伊藤
すごく素敵なお話。
どうもありがとうございました。
いいお話が聞けました。
ミヒャエル
ありがとうございました。
クラウディア
次のイベントの招待状を送りますね。
ベルリンにいらしてくださいね。
伊藤
わぁ! ありがとうございます!

廃番のないものづくり。

未分類

伊藤
ファッションブランドというのは、
少数の定番商品はあっても、
シーズンごとに新作を発表し、
そのシーズンが終われば
新作だったものも廃番になります。
でもトリッペンには廃番がないとお聞きしました。
ミヒャエル
はい。20か30の型から始めて、
今、2000品番以上あるけれど、
ひとつも廃番はありません。
全部、いつでもつくれるようにしていますよ。

▲trippen歴代の靴が大集合したポスター。このなかに廃番はない!

伊藤
わたしたちが見ても昔のデザインも新しいというか、
逆に古びないというか。
ミヒャエル
いつデザインされたのか知らなければ、
すべてが真新しいと思ってもらえる
デザインのはずです。
伊藤
そこが不思議なんです!
シンプルなものだけでなく、
きちんとデザインされたものもあるのに、
古びないんですよね。
ものづくりに筋が通っているというか、
どの靴にも普遍的なトリッペンらしさがある。

▲1994年に登場したtrippenを代表するモデル「HAFERL」(ハーフェル)。デザインが発表されてから、現在にいたるまでショップから消えたことがない、多くのひとから愛されているモデル。

ミヒャエル
デザインの秘密は、
つくりだす最初のステップが、
常に何らかの機能を求めることに
あるからだと思います。
求める機能があって、
それに見合うデザインをする、
というプロセスから、
インスピレーションが生まれ、
デザインに進めるんです。
他の人たちのようにトレンドは見ません。

例えば「エルク」という
鹿皮を使ったトリッペンの靴はとてもやわらかくて、
そのままでは足が固定されません。
ここでの求める機能は
「柔らかい革で足を固定すること」です。
しかも、足は完全に自由で、
ソールの上にきちんと乗らなければならない。
そのための方法を探るわけです。
それが結果的にデザインになっていくんですね。
このように、常に機能とアイデアを
結びつけながらデザインをしているんです。

▲「エルク」。鹿皮のやわらかさをいかしたデザイン。

他の例もあげましょう。
ぼくらの靴は基本的にすべて、
ソールにステッチを施しています。
ステッチには、ソールが小さくなって
靴を軽くするという利点もありますが、
こうするようになったもともとの理由は、
職人に溶剤性の接着剤を使わせないためです。
あれは非常に匂いが強く、
換気をきちんとせず揮発する気体を吸い込んだら、
身体に害を及ぼすほどですよね。
ですから水溶性の接着剤を使っている。
けれどもそれだけでは接着力が弱いので、
ステッチで補強しているんです。
それもまた、結果的にトリッペンらしい
デザインのひとつになっています。

▲この構造を完成させるために、trippenではできる限り身体に有害なものを使用しないように努めている。

▲工房で。

あるいはやわらかい皮の靴は、
足が動かないようゴムを付けたりもします。
ゴムは機能性を高めると同時に
やはり、デザインの一部分でもある。
そんなふうに、デザインって、いつも、
問題を解決しようとするなかで生まれてくるんです。

▲鹿革にゴムを使用している靴「charme」。ゴムが足をホールドするとともにかわいいアクセントになっている、機能性とデザインを融合したtrippenならではのデザイン。

伊藤
その結果、全ての靴が、
きれいな作品になっていくんですね。
トリッペンが日本に上陸して、
2017年に20周年を迎えられたとのことですけど、
日本の人に履いてもらうことで、
なにかもたらされた影響はありますか?
クラウディア
もちろんです。
こと、アンジェラにとっては、
ドイツでも商品が売られているデザイナーを
おおぜい輩出している日本は、
ファッションの国として重要でした。
ですから彼女は常に日本のファッションの動向に
注目してきたんです。
空港などで日本人のファッションを観察したりして。
わたしもそうです。帽子をつくっている人は、
いつも人が何をかぶっているかを見ると思いますが、
靴をつくっている者は、
いつも人が何を履いているか見ます。
街でトリッペンの靴を見かけると
本当に嬉しいんですよ。
休暇中でも、よその町でも、
パリに仕事で来ているときでも。
そんな時、「見て、見て」と騒いでしまうんですよ。
「あの靴は、トリッペンよ!」って。
ミヒャエル
トリッペンを履いていて、
素敵でない人を見たことがない!
自分たちがとても嬉しいから
そう見えるのかもしれないけど。
伊藤
違う文化に接することで、
デザインや形もインスパイアされるんでしょうか。
ミヒャエル
もちろんです。日本の話で言えば、
かかとの木の部分の高さのサイズがいくつかあり、
取り換えられるようになっている靴は、
それは何度も日本を訪問したなかで
思いついたものなんですよ。
東京とベルリンでは住宅事情が違いますよね。
東京では、都心で働いている女性が
夜、飲みに行きたいと思っても、
家まで帰って着替えたり、
靴を履き替えることは難しいと聞きます。
ビジネスのときの格好のままで出かけるにしても、
せめて、かかとの高い靴に替えたいでしょう?
そこでアタッチメントを交換することで
靴のヒールの高さを替えられる靴をデザインしたんです。
かかとに入れる木が交換できるようになっていて、
ローヒールとハイヒールのどちらにもなるんです。

▲かかとの高さを木製アタッチメントで替えられるサンダル「CLAUDIA」。初期の実験的なモデル。

クラウディア
新作の「ZORI」も、日本の草履が原点です。
ドイツ的なものと日本的なものがミックスしています。

▲これが「ZORI」。じつは伊藤まさこさんとトリッペンで、スペシャルカラーも計画中です。

伊藤
かわいいですね。すごくいい。
以前、プロトタイプを見せていただいたときに、
できあがるまでのストーリーを聞いて驚きました。
日本のチームから「こんな靴がつくれないだろうか」と
おふたりのところにアイデアが行ったんですってね。
発想の原点と、しかもほかの国の文化を
ご自身の物づくりに取り入れるのは、
簡単なことではないと思ったんです。
なのにこんなふうにトリッペン的に
きちんと完成した。
ミヒャエル
ぼくは物づくりの伝統をとても尊重していますから、
トリッペンが「草履」をつくるのは不可能だと思いました。
このような靴をつくる背景には
数千年に及ぶ文化、伝統があるのですから。
その伝統に裏打ちされた物を、
モダンなものにつくり直すことはよくない。
なので、最初、すぐに断ったんです。
すると、日本のスタッフは何度も何度も
彼らがつくったサンプルを送ってよこしました。
それを見ているうちに、
そうか、彼らが自分たちの伝統をもとに、
新しいものをつくりたいと本気で思うのだったら、
ぼくらも一緒につくってみよう、と考え直しました。
それからどう展開するかを検討しました。
ベルトをつけてみたり、柔らかくしてみたり、
厚い靴底をつけてみたり。
ずいぶん試行錯誤しましたよ。
伊藤
プロトタイプから、どこがどう変わったのですか。
ミヒャエル
まず、ソールがフラットで
もっと硬い素材を使っていたのを改良しました。
最初のソールは、ぺたっとして、
足についてこないような感じだったんです。
それを反りがでるよう、歩きやすい形にしています。
もうひとつは、革の鼻緒の部分です。
ちょっと硬すぎたんですよ。
そこで全体的に中綿を抜いて柔らかくし、
足を包み込む感じにしました。
それからステッチの位置が
足に当たらないように変更しています。
そのあたりが、大きな変更点です。
伊藤
そんなふうに試行錯誤を重ねて‥‥。
たくさんのアイデアを
デザインに落とし込んでいくなかで、
かなり最終形に近づいてから、
「やっぱりこれ、つくるのをやめよう」
というデザインも、時にはあるんでしょうか。
ミヒャエル
うーん、たくさんつくったなかから選ぶ、
という方法を、ぼくはとっていないので‥‥。

デザイナーには2種類いると思います。
すべての段階で努力をするタイプと、
自分のスケッチブックが真っ白だと嫌なタイプ。
ぼくは後者です。
スケッチブックが真っ白っていうのは、
お金がない時の気分と同じ。
それで、ぼくは、スタイルを収集し、
スケッチブックがアイデアで一杯になるようにして、
それから初めてデザインにとりかかりるんです。
試作するのは、その中から1つ、2つです。
ぼくは長く考えるタイプなので、
始めの段階でセレクションをしているんですよ。
描いたものを何でもつくってみるわけではないので、
後の段階で「やめよう」ということは、
あんまり、ないんです。

クラウディア
とはいうものの、100%ということじゃなく、
ソールまでつくったプロトタイプで、
好きではなくなったからという理由で
お蔵入りした靴もありますよ。
そうなると、もうその型を使うことはありません。
そうしたものは箱に入れて、棚にしまってしまいます。
伊藤
なるほど。

スタートは木靴から。

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伊藤
ミヒャエルさん、クラウディアさん、
お目にかかれてうれしいです。
ミヒャエル
こちらこそ、ありがとうございます。
クラウディア
お目にかかれて嬉しいです。
伊藤
トリッペンというブランド名、
「よちよち歩き」
というような意味だとうかがいました。
ミヒャエル
はい。といっても、こどもの歩き方ではなく、
中世のヨーロッパに源流があるんです。
当時、人々は家庭で出るごみや
いまでは下水に流すようなものまで
すべて道に捨てていたので、
外を歩くと靴が汚れてしまいました。
部屋では美しい絹の靴を履いていた当時の人は、
そのまま外に出ると汚れてしまうので、
とても困っていたんです。
そこで、絹の靴をカバーする木の靴をつくりました。
ところがその木靴を履くとよちよち歩きになる、
そのことを「トリッペン」と言ったんですね。
設立当初から木靴をつくっていたぼくらは、
その言葉をとってブランドの名前にしました。
ビジネス・パートナーである
アンジェラ・シュビーツと一緒に、
6週間かけて20タイプの木靴をつくり、
ベルリンのギャラリーで発表したんです。

▲創業まもない頃のミヒャエルさんとアンジェラさん。

伊藤
木靴からスタートなさったんですね。
ミヒャエル
ぼくらが木靴をつくった最初の思いは、
「何か違うものをつくりたい」ということでした。
手づくりの木靴は、シンプルな形にもできるし、
何か極端な形にもできるでしょう?
とても自由です。

さらに、ブランドを立ち上げた90年代初頭は、
ごみの問題を人々が考え始めた時代です。
ごみを分別してリサイクルする必要性に目覚めた時代。
だから木靴は、使い古した靴を
分別して処理するということを
追求するシンボルでもありました。
トリッペンという名前はリサイクルの
シンボルでもあるんです。
靴を使い終えた後、
その材料を分別する可能性を考える象徴なんですよ。

伊藤
そうでしたか、そんなに深い意味が。
じつはトリッペンという言葉は、
日本語の語感としても、
とても可愛らしく感じられるんですよ。
ミヒャエル
そうなんですよね、
最初は自覚していませんでしたが、
この名前、世界中の誰にとっても発音しやすくて、
しかも「歩く」という意味が入っていますから、
シューズブランドとしては、
結果的に完璧だったんです。
伊藤
創業当時のトリッペンが発表した靴に対する
皆さんの反応はどうだったんですか。
ミヒャエル
熱狂的に迎えてくれましたよ。
ドイツのファッションデザイナーの
Wolfgang Joopがギャラリーに来て、
ぼくらの靴を買い、
ニューヨークのショーで使ってくれたり。
そんなふうに最初から大きな反響がありました。

▲1995年にできたベルリンのフラッグシップストア。現在も同じ場所にある。

伊藤
歩きやすいだけじゃなくて、かっこいい。
それがトリッペンの特徴だと思うのですが、
その2つのバランスをとって
つくっていらっしゃることがすばらしいです。
ミヒャエル
ぼくらにとって、
履き心地とデザインのバランスを取ることは、
常に仕事のインスピレーションの源です。
この仕事を始めた原点の考え方だと言えるでしょう。
この2つのバランスを取ることを考えつづけたから、
ブランドの設立者が2人になったんです。
アンジェラはデザインを追求する人、
ぼくは履き心地とデザインの両立を考える人。
伊藤
時にはお互いの主張について、
「違うんじゃない?」となることもあったんですか。
ミヒャエル
もちろん! 互いにいつも怒鳴りあっていましたよ。
伊藤
あら。それでも、結局折り合って、
いい形ができていったということですね。
ミヒャエル
むしろ、そのおかげで、成功できたのだと思います。
いろいろなアイデアを持ち寄っては、
怒鳴りあいながら、検討を重ねました。
そうした過程を経て、やっと、
1つか2つのアイデアが生き残る。
それでいいんです。
その過程を経てこそ、
トリッペンらしい靴になるんですね。
‥‥とても疲れてしまうけれど。
伊藤
もしかしたら、新作をつくるたび、
毎回、喧嘩してきたんですか。
ミヒャエル
そうなんですよ!
とくに最初の10年間は、非常に激しい
戦いの時期だったと言えます。
ふたりの意見の対立というだけでなく、
世の中とトリッペンの戦いでもありました。
ブランドを始める時、
「これまでにない全く新しい靴をつくるのは不可能」
と言われたんですね。
靴は、他のブランドのやり方を踏襲するしかないし、
ファッションや流行の枠外に出ることはできないと。
でも、可能だということを証明したかった。

▲創業まもない頃、メンバーと。前列中央がミヒャエルさん。

trippenの8足の靴

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trippen、8足の靴。

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「おしゃれは足元から」なんて言いますが、
本当にその通り。
足元が決まっていると、
その人自身がかっこよく見える。
靴っておしゃれのまとめ役のようなものだと
思っています。
世の中に靴好きはたくさんいますが、
私もそのひとり。
クローゼットにはたくさんの靴が並んでいます。
新しい靴を買うとそれはウキウキした気持ちになるもので、
服より「この靴を履きたいから」と、
靴優先のコーディネートを考えることもしょっちゅう。
でもね、「履きたい靴」は、
ヒールがあったり華奢すぎたり。
時として歩きづらくもあるんです。
夜、レストランに行く時に履く、
というのならいいのですが、
仕事で街を歩き回らなくてはいけない時だってある。
さあ、どうする?
この靴問題は私にとって長年の課題でした。
ところが2年ほど前に、
おしゃれの先輩に誘われてトリッペンの展示会に行った時、
出会ったんです。
「おしゃれでかわいい」と「歩きやすい」。
その両方をかなえる靴が。
ずいぶん前から知っていたブランドのはずなのに、
ちゃんと見ていなかった。
まさかこんな近くにあったなんて!と
目からウロコが落ちた気分になりました。
今回、トリッペンが作ってくれたのは全部で8足の
履くだけでなんだかうれしくなっちゃう靴。
おしゃれの仕上げにいかがですか?

「もの」から「こと」へ。

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伊藤
ものを売る以外で、
ネットで見れるからこその楽しい買い物って、
糸井さんはなんだと思われますか?
糸井
やっぱり、ものじゃなくって、
一緒にいる時間に価値がある、
っていうことかもしれないね。
まさこさんも、単純なおもしろさ、
それこそ動物的に考えてやりたいことがあったら、
「あ、これやりたい!」って思えばいいんだと思う。
伊藤
これをしたら仕事になるんじゃないかっていうより、
普段楽しく過ごしてるうちに
「あっ」って思いついたことを‥‥。
そうだ、「旅行」にも興味があるんです。
糸井
旅行ね。
旅行は「仕事としてじゃなく」と
腹をくくればできるよ。
じつは、旅行を仕事にするというのは、
ほんとうにたいへんなことだから。
ただ楽しい体験を提供したいのだったら、
現地集合現地解散にして、
イベントだけを楽しむとか。
伊藤
なるほど。
糸井
イベントは、何人集まるかの
イメージが作れたら、できますよ。
つまり、50人集まればできるんだなっていうことと、
1000人必要なことと、
10000人必要なことは、全部違う。
「ほぼ日」の「野球で遊ぼう」というイベントは、
だいたい1000人でやってきたんだけど、
みんなで野球に行くだけなんです。
で、損するかっていうと損しない。
儲かるかって、そんなこともないんです。
でも、それを楽しみにしてる人たちが
ずーっといるっていうのが、
「ほぼ日はいつも元気だね」って言われる
ひとつの理由のように思うんです。
集まって時間を過ごして何かすると言えば、
バーベキューだっておもしろいよね。
伊藤
そうですよね。
糸井
バーベキューはどう?
伊藤
家でやってました、小さな頃から実家で。
最近では、ウチの娘と母と、
牛タンを一本買ってきて、焼いて、
一本食べるんですよ、ひたすら、
シャクシャクシャクって‥‥。
時々シシトウとかも食べますし、
あと母がおにぎり握ってくれたり。
糸井
‥‥力、あるわあ。
伊藤
そういうのは好きかも(笑)。
糸井
日本のバーベキューは、
ほんとに可能性があると思う。
魚焼くのもバーベキューだし、
野菜焼くのもバーベキューだし。
伊藤
おいしいですしね。
おにぎりを焼いただけでおいしくなる。
糸井
強火の遠火っていうのが、
本当にできる場所なんか、家の中にはないし。
って考えると、砂なんか入らない場所で、
水が出て、火が焚けて、清潔なトイレがある場所で、
いろんな人が主宰するバーベキューをやったら、
ぼくはもうそこに一日中いたいな。
「生活のたのしみ展」じゃなくてさ、
「生活のたのしみバーベキュー」だね。
伊藤
料理家も、料理家じゃない人も、
いろんなかたがつくって。
楽しそうですね。

伊藤さんと内田鋼一さんの新ブランド「鋼正堂」のグラタン皿。撮影時の料理は、伊藤さん作。

糸井
じっさいは、食べ物まわりって、
許可とか設備とか、
すごくたいへんなんだけれどね。
でもいっしょにつくって食べることは、
伊賀の土楽に行ったときの御馳走や、
接待のされ方を思い出すんだけど、
ある種、ケモノっぽい品の良さがあるんです。
そういうぶつかりは、同じ旅でもおもしろいね。

ところで、「weeksdays」の準備で、
やめたり諦めたこともきっとあるでしょうね。

伊藤
いろんなメーカーやブランドの方に
お目にかかって商品の提案や
相談をしてきたんですが、
こころよく迎えてくださっても、
話をすすめていくなかで、先方の会社の方針で
実現にいたらないこともありますし、
わたしがつくりたいと思って
お話をうかがっていたのだけれど、
「ほんとうにほしいものはこれだったのかな」と
いちど立ち止まるべきだと思ったり。
そこで「じゃあ、やめよう」
という判断をしたこともありました。
糸井
それは大事だよ。
そういうのでいちばん素敵だったのは、
崎陽軒の「生活のたのしみ展」への参加が
かなわなかった話なんだけど、
崎陽軒は横浜に関係することだったらウエルカム、
そうではないものは、きっちり断るんです。
これね、素晴らしいと思う。
伊藤
そうなんです! 醤油入れのひょうちゃんの絵に
ぴったりの絵を描く人を知っていたので、
広報の方にお会いしたときに
「いい人がいるんですけど」と言ったら、
「横浜にゆかりのある人にお願いをしています」と。
徹底していますよね。
糸井
「weeksdays」でまさこさんが
商品を選んだりつくったりするとき、
「誰も欲しがらないけど、わたしは好き」
っていうのがもしあったら、
自分の何かを変えるチャンスでもあるから、
「ヨイショ!」って、いい気持ちで、
「失敗してもいい!」と前に進む、
そんな場合も、なくはないと思うよ。
伊藤
そうですね。
糸井
まさこさん、食べ物がそうじゃない?
おしゃれな暮らしだと人が思う姿で、
山手線の駅前ビルの地下にある
おじさんたちが肩寄せあって食べる
とんかつ屋を薦めてくれたじゃない?
あれは、それっぽくないじゃない。
でも、行けば分かる! って
言いたい気持ちがあるから薦めてくれたんだよね。
それは「ヨイショ!」だよ。
あそこ、あっこちゃん(矢野顕子さん)も、
今までいちばんおいしいカツだったって言ってたよ。
伊藤
えっ、矢野さんが?!
糸井
ヒレカツにカキフライを載せた、
「このミックスはやっぱキツいな」って
男たちが言ってるようなセットを、
全部たいらげた。
伊藤
さすがですね!
糸井
同じとんかつ屋を薦めるのでも、
美意識派の人は別のお店が好きだよね。
もちろんそれも本気で言ってるからすごく伝わる。
でも、矢野顕子はたぶん、
「その良さはあるけどね」って言って、
まさこさんが薦めたほうを選ぶと思うんだよ。
ぼくは自分がないから、
人が「いい」って言うほうに付き合うけど。
それぞれ価値を置いてる場所が
違ってておもしろいよね。
伊藤
ほんとですね。
糸井
そういうまさこさんがつくるお店だから、
みんなもたのしみにしていると思うよ。
ほんと、いよいよだね、
伊藤
いよいよです!

決断の速さと責任の重さ。

未分類

糸井
ところで、まさこさんは仕事が速いでしょ?
伊藤
はい。みんなに速いって言われます。
「やさしいタオル」は、
1日に100カットくらい撮る、
餅つきみたいな撮影なんですよ、
ハイッ、ハイッみたいな。
糸井
「完成形にいかなくてもいい」
っていう判断がないと、
その速さにはならないですよね。
伊藤
だって、タオルを使うカットに、
「完成形」って、いらないですよね?

「やさしいタオル」2016夏のコレクション。

糸井
そのとおりだ!
もう横尾忠則さんですよ、それ。
いちばん感動するのはそこだよ、やっぱり。
伊藤
えっ、そうなんですか?
糸井
「これが正しいっていう答えにたどり着くまでに、
ぼくはいっぱい考えた」
って人がいたとしたら、
「え、それで何だったんですか?」
ってなるよね。
伊藤
「じゃあ、あなたの答えは見つかったんですか?」
って。
糸井
答えなんて、ないんですよ、そんなの。
「生きること自体がそうなのだから、
全部プロセスだと思えばいいんだ」
っていうのを、横尾さんが言う。
自分のことを言い訳するために
どんどん考えていったんだと思うよ。
みんな、自分の考えって、
言い訳だから、おおもとは。
伊藤
そうですねえ。
糸井
その横尾さんに、ぼくは感心して、
自分もそうなのにそうじゃないフリをしてたりとか、
そういうのをなるべくやめようとしているんです。
今まさこさんに、
「速いでしょ」って言ったのも、
「あ、おんなじだ」と思ったからなの。
横尾さんも、決めるっていうことに
値しないことだらけなのに、
みんなが腕組みしてウンウン言ってるっていうのを、
「歩いてるのに、次の足をどう出すかなんて
考えなくていいじゃない」みたいに言うの。
伊藤
雑誌の撮影の仕事でもありますよ。
わたしが「これ、ここからこう撮ってください」と
お願いするとしますよね。
すると編集者は
「一応、寄り(アップ)も」って、
カメラの人に頼んでいたりする。
でもわたしは「撮らなくていいですよ」と言う。
だってそれは、絶対に使わないカットなんです。
それが分かってるのに、
どうしてカメラマンに
よぶんな仕事をさせるのかなぁと思います。
そんなふうに仕事をしていたら飽きちゃうし、
自分の仕事も増えるだけです。
「一応」とか「抑えで」は、禁句!
わたしの仕事は、それを先に考えて
スタイリングすることなのに。

メンズブランドMOJITOの麻のショートパンツ。デザイナーが8年履いているという私物を、アイコンとして撮影。

糸井
世の中は、そっちなんだよね。
「抑え」だらけです。もっと言えば、
どういうふうに撮りたいかの3案か4案、
あらかじめラフを持って行って撮影して、
なおかつ、撮ったときに
「これも抑えといて」って言うから、
30案ぐらいになっちゃうことがある。
だから時間がなくなるんだよ。
しかも、そこの時間が
自分の労働時間っていうふうに
カウントされちゃうから、
ものをつくるっていうところに行かないの。
「ほぼ日」では、それはダメです。
伊藤
速いといえば、
「weeksdays」の準備で、
いろいろなメーカーやブランドのかたと会って
オリジナルの色や形をつくってもらったんですが、
それを決めるのも、あっという間に終わりました。
それに、仕事をしている日でも、
なんだかんだいって
17時すぎには飲んでるんですよ、毎日。
糸井
すごいね!
伊藤
それはやっぱり、決断が早いからかなあとか。
早寝早起きというのもあるんですけどね。
糸井
テレビ的時間がないんじゃない?
テレビを観る的な時間が。
伊藤
ふだんテレビは観ないですね。
ニュースとマツコ・デラックスだけ
チェックしてますけど。
糸井
あと、インターネットを
チェックなんかしてないでしょう。
伊藤
してないです。
糸井
この2つで、
なにかしてるような気になる時間を、
世の中の人は過ごしてる。
お家にテレビはあるの?
伊藤
テレビ、あります。でも仕舞ってあって、
観るときはズズズッて出して、差して。
テレビが邪魔なんですよ、暮らしの風景として。
糸井
この話、かみさんが聞いたら
ジーンとくるだろうな、
いいなって思うだろうなあ。
オレなんか、
おもちゃの水鉄砲まで置いてあるもん、そのへんに。
伊藤
(笑)樋口さんも速いですか。
糸井
速いねえ。それはつまり、
「身についてることしかしない」
っていうことですよ。
そうか、上役がいないんだね、
まさこさんも、ウチの奥さんも。
誰かに「これでいいですか?」って
訊く必要がないから決められる。
でもそれは、いつも本当の判断を
しなきゃならないから、
いちばん責任があるわけです。
それを繰り返していかないとダメですよね。
伊藤
その責任は自分で負わなきゃいけない。だから
「わたしは好きじゃないけど、ちょっと売れるかも?」
なんて言い出しちゃダメなんですよ。
ほんとに好きなものじゃないと。
糸井
「ちょっと売れるかも」は、
もうすでに頭に入ってるんじゃない?
身に備わってることしか言ってないわけだから。
伊藤
あんまり意識はしていないんですが、
そうかもしれませんね。
今まで、旅の本を出したら
みんながそこに行ってくれるとか、
おいしいものを紹介したら
みんながおいしいって言ってくれる、
ものをつくったら買ってくれるっていうのは、
わたしがほんとにいいと思ってるものしか
出したことがないからだと思っています。
「これいい!」ってすごく思っているから。
糸井
ぼくらでもそうですよ。
「生活のたのしみ展」で
スピーカーのキットを出したけれど、
あれは分かりやすくて、
「わたしもつくりました、いい音がしました」
「いくらなの? あ、だったら俺も欲しいな」
ということなんです。
そういうのはおたがい、分かるよね?
って言えることだけをしてる。
でも、世の中は
「それのピンクって市場ではどうですかね」
「女性がいるから売れるかもしれませんね」みたいな。
伊藤
嬉しいのは、わたしがなにかを紹介したとき、
「そのまま」が売れるわけではないことなんです。
じゃあ自分に似合うのはどうなのかな?
って考えてくださるお客様が多いと聞きました。
それも「weeksdays」を始めようと思った
動機のひとつです。
糸井
それはすごいね。
お客さんが支えてるんだよね、実はね。

なにかいいこと、カッコいいこと。

未分類

伊藤
糸井さん、お忘れだと思うんですけど、
ブイちゃんが亡くなって
わりとすぐのときにお会いしたときに、
わたしがそのことを話題にすべきかどうか、
どうしようとモゴモゴしてたら、
こんなふうにおっしゃったんですよ。
「伊藤さん、なんか最近いいことあった?!」
って、ニコニコして。
そのことに驚いて、その日から、
もちろん悲しいことは起きるのが
人生かもしれないけれど、
「今日、何がいいことだったかな?」
ということを、
一日の終りに考えるようになりました。
だいたいハッピー系に
気が行くタイプなんですけど、
「今日はコレがいいことだった!」
みたいな、一番を決めるようになったんです。
けっこう、あるんですよね。
糸井
そうだね、あるよね。
伊藤
それを考えることを気づかせてくれたのが
糸井さんの一言だったんです。
糸井
それはさ、まさこさんが、
ぼくにそう訊かせたくなるような
居方をしていたんだよ。
ぼくは、そういう言葉を
あなたにプレゼントしたわけでも何でもなくて、
ただ訊いたんだ。
だって、なんかいいことあったっぽいんだもの。
伊藤
そうでした?(笑)
糸井
「何が、いいことあったの? こいつ、言ってみろ!」
みたいな気分(笑)。
だって、ショボンとしてる人に訊けないよ。
それとね、多分、その時、ぼくがまさこさんの
「いいことあった」という気持ちを、
吸い込みたかったんじゃないのかな。
いいことあった人に会ってさ、
「あ、いいなあ」と思って、
それを受け取りたいなって思ったんだよ。
伊藤
それはすごくうれしいです。
糸井
素晴らしいことですよね。
ぼくもそうなりたいです。
伊藤
ええっ! そうじゃないですか?!
糸井
そう見えてるんだったら、
それはそれでうれしい。
でも自分がどうかは分からないな。
伊藤
うーん。
糸井
誰でも、いつでも、
小さい憧れがあるじゃないですか。
よく例に出すのは、吉本隆明さんの、
お花見の場所とりの話です。
それ、吉本さんがやるんだよ!
朝の8時9時に、いろんな敷物を背負って、
本を一冊カゴに入れて、自転車で出かけてって、
それを敷き詰めて。
でも参加者のみんなは、
そんなに早くから来ないから、
周りにまだ人がいないところで、
ずーっと本を読んで待ってるんだ。
夜になるまで、ひとりで。
伊藤
へえー!
糸井
自分がするかどうかは別としても、
ぼくは、それをカッコいいと思うんです。
伊藤
うん、カッコいいですよね。
糸井
その「カッコいい」が、
「ぼくの心はそっちにありたいな」
って思わせるんです。
もうちょっとできることがあったら
オレもしよう、って。
伊藤
ブイちゃんの話、糸井さんは
「オレは悲しいって言うけど、
かみさんは言わない」とおっしゃって。
それも、どちらもカッコいいですよ。
糸井
喜怒哀楽って、
言わないようにしてる人はいっぱいいて、
それはそれでカッコいいよね。
でも「うれしい」も言わない人もいるわけでさ。
伊藤
そうか、そうですね。
糸井
「ありがとう」の前に
「すいません」が出る人だっていっぱいいる。
でも、それ、ぼくはどうでもいいと思うんだ。
「ありがとうってちゃんと言いなさい」
なんて、そんなに頑張らなくてもいいと思う。
伊藤
その人の表し方がありますよね、
じっくり感謝して‥‥。
糸井
そう、モジモジしただけでもいいじゃないか。
犬なんて、おやつをあげてもお礼を言わないよ。
パクッ、なんて、勢いよく食べる、
それでいいじゃない?
人もさ、「なに食べる?」って訊かれて、
どれもいいなあって本気で思って
「どれでもいい」って言う場合は、
それでいい、と思ってるんだよ。
でも、近代の人はみんな、
「自分の意見をハッキリ言わなきゃいけない」って。
それって借り物っぽく感じる。
‥‥グズグズして、いいと思うんだよ。
そしたらリーダーがさ、
「じゃあお前、これ食わない?」
って言ってあげればいいじゃない。
そうすると、そう言ってくれた人のことを
「ああ、ああいうふうにやるのか」って、
覚えられるじゃない。
伊藤
うんうん。

デザイナー・岸山沙代子さんによる、saquiの夏の服。

「いいなあ」像が、その人をつくる。

未分類

伊藤
個人の作家でも、大企業でも、
いいものをつくっていて、
いっしょにつくりたいものがあったら、
断られてもいいから、
おそれず声をかけようって決めたんです。
糸井
「ほぼ日」のやり方と似ていますよ。
すでに価値を認めあってるんで、
あとはなるべく平らにやりましょう、みたいな。
認めていない人に頼まないしね。
伊藤
そうですね。大企業の場合、
その会社の人がどういう人か、
どういう方針か分からないけれども、
使っていて、ものがいいのは確かならば、
それをつくっている会社の人は
きっと分かってくれる! 
と思って出かけています。
皆さん、ほんとうに素晴らしいんですよ。
温かく迎え入れてくださるし、
おもしろがってくださるし。
糸井
うん、よかった。
「weeksdays」でまさこさんが扱うものは、
衣食住、全部ですよね。
伊藤
はい、そうなんです。
糸井
「何が流行でカッコいいか」
というようなこととは、
まさこさんって、全く関係ないでしょう?
だから、おもしろいんです。
「だって、いいものは、いいじゃない?」
そう言えるんだもの。
伊藤
たしかに、何が新しいとか、
次は何が来るとかは
あまり考えたことはありません。
そういう歳になったのかなあって
思うんですけれど‥‥。
糸井
いやいやいや、歳じゃなくて、
そういうふうに生きたいと
最初から思っていたんじゃないのかな。
例えば、まさこさんが仮に
誰かすっごく新しいもの好きの人に会っても、
なんにも批判をしないはず。
たぶん、そんなことは、どうでもいいでしょう?
伊藤
はい。
糸井
でも、そういう人同士が会ったら、
「え、それまだ着てるの?」って、
なると思うんです。
「それ古いよね」
なんて言い合うお友達同士で狭い場所にいると、
「え、そうなの? じゃあやめようか」
みたいになって、いつも自信がなくなる。
でもまさこさんは
そういう競争から外れているんだ。

内田鋼一さんと伊藤さんが立ち上げた「鋼正堂」のお皿。

伊藤
わたしはたぶん、
ただの“おもしろがり”だと思うんです。
そして、気分良く生きていきたいと思っている。
それで全部の事柄が──自分の生活が、
進んでいるような気がするんです。
よどんだ場所は好きではないし、
着心地の悪い服は着たくない。
掃除や片づけも、
そうしたほうが気分がいいから、
しているだけなんですよ。
糸井
でも同時に、人が
「そんなこと、やめてほしいなあ」
って思うようなことはしていないよね。
ポイントはそこじゃないのかな?
したいことばっかりしているのに、
同時に人が嫌がらないのは。
伊藤
そうなのかな?
ご迷惑をおかけしてませんか。
糸井
「この人はワガママ放題だから楽しいんだね」
って、人は思うかもしれないけど、そうじゃないよ。
伊藤
わたし、たぶん、
ちょっと動物っぽいんだと思います。
日の出とともに起きるとか、
食材の具合を嗅ぎ分けるとか。
その感覚で「これはいい」「これは嫌」
って言ってることが、
みんなに、「あ、そうそう」と
受け入れてもらっているんじゃないのかな。
糸井
でもさ、動物って、生まれっぱなしで、
ちょっとずつ学んでいったことは
蓄積されてるんだけど、
作法とか知識とかってなくて、
だから衝突もする。
いわゆるワガママな人が
「わたし、動物的だから」っていうのとは、
まさこさんは全然違うと思うよ。
誰かに教わったことが結構あるんじゃないかと思う。
母なり、祖母なり、父なり。
まさこさんが母もなく生まれて、
天から降ってきて、
こういうふうになったとは言えないわけだからさ。

じつはぼくは今日、ちょっとしたことで、
「自分はちょっと騙されてる側に回るくらいで
バランスがいいのかもしれない」って思ったの。
なんで自分はそんなことを
思うようになったんだろうって、ふっと考えたら、
そう、祖母に言われていたんだよ。
少年の頃に言われたことが、
70歳の手前になって腑に落ちたんだ。

伊藤
母のおおらかさっていいな、と、
育てられながら、思っていました。
この前、サニーレタスを買ったら、
ちっちゃいカエルが入っていたんです。
ちょうど実家にいたので、母を呼んで、
庭にふたりで逃がしてあげたんですね。
お店で買った野菜に
虫やかたつむりやカエルが入っていても、
わたしは気にしないし、騒ぐこともない、
まあ、そういうこともあるさ、と思う。
その感覚はまさしく母の影響です。
糸井
「いいなあ」像が、その人をつくるんだね。
あっこちゃん(矢野顕子さん)も同じだよ。
伊藤
矢野さんも、ご自分のしたいことが強くあって、
それを実行なさっている。
そして、みんなからすごく好かれていますね。
糸井
あっこちゃんはそれこそ動物ですよ。
動物だけど、大丈夫なのは、
ラインが引かれてるっていうか、野放図ではない。
それはひとりで作ったものじゃないと思うんだよね。
彼女のお母さんはものすごく厳しく、
武士みたいな人だったっていう。
いっぽうお父さんはものすごく優しいんだ。
その中で彼女ができていったんだと思う。
何がキレイか、
何がカッコいいかって思えるのは、
キレイなもの、カッコいいものを
見せてくれた人がいたからだよね。
それを守りとおしたのは本人の努力だけれど。
伊藤
そうですね。
「この人好きだな」って思う人のことは真似て、
「これ苦手だな」って思うことは真似しない。
その積み重ねな気がします。
うちは、きちんとするところはする、
おおらかなところはおおらか。
決して神経質ではない感じでしたよ。
母からも、父からも、
人と比べられたことが一度もありませんでした。
「誰々はどうだから、こうしなさい」
と、言われたことがありません。
糸井
厳しいのを売り物にしちゃうと、
人を責めるものになっちゃうからね。
伊藤
その父を見送ったときの話なんですが、
父が亡くなってすぐ、病院に葬儀屋さんが来て、
○○コースはいくらですとか、
戒名はいくらですとか、
ボーッとしているあいだに、
どんどん、ことが進んでいったんです。
そうしたら姉‥‥長女が、ふと、こう言って。
「そもそもパパは信心深くなかったんだし、
知らない寺でお葬式をあげて、
わたしたち、いいの?!」
さすが長女! と思ったんですけど。
糸井
ハッと気がついたわけだ。
伊藤
はい、それでみんなも「ハッ!」となって、
結局、葬儀屋さんには頼まず、
父を家に連れて帰りました。
リビングルームを小さな会場にして、
長女がお花をたくさん飾り、
父の好きだったシャンパンの大きい瓶を用意して。
ほんとうに仲のいい人だけにお伝えし、
3日間、オープンハウスにして、
いらしてくださった人にシャンパンをふるまって、
父の思い出を話し、ゲラゲラ笑ったり、
泣いたりして過ごしたんです。
それが伊藤家のお葬式でした。
糸井
そいうことがね、全部、実は、繋がってるんだ。
それはもう、まさこさんのラッキーな部分なんだよ。
もらってるものの大きさが、すごいと思う。
伊藤
ほんとですねえ‥‥。
長姉が10(とお)離れていて、
次姉は7つ離れている、
そういう環境も良かったのかもしれませんね。
糸井
うん、それも良かったんだと思う。
それが、まさこさんが、
押しつけがましくなく、人が
「あ、いいな」と思えることが、
できている、おおもとにあると思う。
伊藤
ずーっと、すばらしい大人が、周りにいたんですよ。
糸井さんももちろんそのひとりです。
糸井
無理に入れなくてもいいよ!(笑)

「weeksdays」はじまります!

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伊藤
糸井さん、「weeksdays」の
オープンがいよいよ近くなりました。
糸井
できるね。
伊藤
できます。
「weeksdays」という名前は
糸井さんと一緒に考えたんですよね。
糸井
そうだったっけ?
伊藤
そうですよ(笑)!
わたしが最初に考えていたのは
「365 department store」
という名前だったんです。
企画書もそのタイトルで。
糸井
うん。
伊藤
百貨店って、地下に食品があり、
1Fに化粧品があり、婦人服、紳士服、
家庭用品、家具、こども服、食堂、
屋上に広場、なんでもあるイメージですよね。
だからこのお店のイメージも、
ネットのお店だけれど、
石造りの古いデパートみたいな
イメージにしたらどうかなって。
365とつけたのは、
年中無休ですよということです。
糸井
そうだったね。
それでぼくがぜんぜん違うところから
「weeks & days はどうかな」
ってメールを送ったんだ。
デイリーにこだわり過ぎなくても
いいんじゃないかな? って。
伊藤
あのメールをいただいたとき、
糸井さんが「肩の力を抜いたら?」と
おっしゃっているような気がしました。
そうしたらチームのみんなも
「そっちのほうがいい」って。
──
「365 department store」が
「場所」のイメージだったのに対して
「weeks & days」は
「時間」のイメージだったのが、
なんだかホッとしたんです。
閉じこめられずに、ずっと先にのびていく、
未来へつづく気持ちがあるような気がして。
daysが先じゃなくてweeksが先なのも、
なんだかちょっとひっかかるのが面白いし、
週単位で新作を出したいねという計画に
ぴったりだとも言えますし。

trippen “ZORI”。このシルバーは「weeksdays」の特注色。

伊藤
さらにわたしから、
「『weeksdays』と、
一語にするのはどうでしょう?」って。
ほんとうは英語にはない言葉ですが、
いっそそのくらい思い切ったほうがいいなって。
糸井
うん、いいと思うよ。
──
最初にこういうことをやりたいと
伊藤さんからお声がけくださったのは、
もう1年半か、2年ちかく前のことになりますね。
いろいろな媒体で活躍なさっているのに、
伊藤さんはどうして
ぼくらに声をかけてくださったんですか?
伊藤
「毎日」やりたかったからです。
毎日のワクワクみたいなものが、
ネットのお店で出せたら嬉しいし、
始めたら、できるだけ長く続けたい。
だからそれをすでにやっている「ほぼ日」に
相談してみようと考えたんです。
さらに、わたしが全て考えるんじゃなくて、
いろんな人といっしょにできたらおもしろい。
そういう意味でまず
「ほぼ日」といっしょがいいなって。

もうひとつ、理由があって、
このお店をもしわたしがひとりでやったら、
ある一定の「引き算」の
お店をつくるんだと思うんです。

糸井
うん、引き算ね。
伊藤
「やさしいタオル」のスタイリングから
「ほぼ日」と仕事をするようになりましたが、
スタイリングにおけるわたしの役割って、
引き算担当なんですね。
「そのもの」を語りたいときに、
「他のもの」はいらない、と。
写真なら、そのものと空気感。
光とか、だけでいい。

「やさしいタオル」2016夏のコレクションの、伊藤さんのスタイリング。

糸井
それはいいね。
伊藤
樋口可南子さんが
わたしのアトリエに来てくださったとき、
お豆腐を蒸してゴマ油と
塩をかけただけのものを出したら、
「こんなふうに引けないのよ、引けない」
って言ってくださって。
そして家の中を見て、
「みんな、あなたみたいに引き算はできないのよ」。
糸井
(笑)。
伊藤
タオルのスタイリングも、
場所を決めればあとはもうタオルがいいんだから、
わたしが何もする必要がないんですよ。
風景ができあがってるから、
それを置けばもういい。

でもその方法で商品をつくったり選んだりするのは、
「weeksdays」というお店をつくるにあたっては、
おもしろくないだろうな、と思ったんです。
糸井さんやみなさんと話していると、
ひとつのテーマからどんどん話が広がっていきます。
絵の話をしていたはずがいつのまにか
額の話になっていたり、
もっと突拍子もない話題になっていったりする。
わたしが見落としてしまいそうなおもしろいことが、
いっしょなら、見つかるんじゃないかなって思ったんです。

糸井
「まさこさんにとっても、
『ほぼ日』とやるのはいいよ」
ってぼくも言いたいわけですよ。
その役をみんなちゃんとやろうぜっていうことを、
社内の人たちに言うのが、ぼくの役割だし。
伊藤
‥‥と、言い出したものの、
立ち上げの大変さには驚きました。
ここに来て、オープンの目処が立って、
ようやく実を結んだ感じです。
糸井
(笑)ぼくは最初から言ったよ、
「たいへんだよ!」って。
「ほんとにやるの?」って。
伊藤
そう! それでわたしも
「ムキーッ! ぜったいやりますから!」なんて。
準備はまず、ほかの仕事を減らすこと、体調管理、
そして気合いを入れることでした。
糸井
毎日というのは、病気になれないからね。
考え過ぎると、長期旅行も無理になる。
そこは休み方を発明するしかないんだ。
伊藤
旅行や息抜きがあっての商品ですものね。
糸井
その通りだと思う。
伊藤
「これのことばっかり考えてました」って言うと、
何が売れる商品なのかばかり
考えるようになりそうで。
糸井
たぶんね、「weeksdays」と
「ほぼ日」が違うのは、
「ほぼ日」って意地でも休まないで、
「あきれたよ!」って言われることを
信用にしてきたわけです。
だけど、たぶん「weeksdays」は
まさこさんが
「何日から何日まで休みます」
っていうのを宣言して、
「パリに行ってきまーす」って言ってもいい。
そういうやり方をすればいいと思う。
ただ、頭から離れるってことはなくなる。
伊藤
きっとそうですね。

よみものもたくさん。

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最初のコンセプトが「百貨店」でしたから、
「weeksdays」には
たくさんの商品が登場します。

商品って、お届けするときは、
その「もの」だけをお渡しするんですが、
その背景には、それをつくった人、
つくったメーカー、ブランドのなりたち、
いろいろな「物語」があります。

「weeksdays」ではなるべくそんな物語を
文字にしてお伝えしたいと思っています。

今回の写真は、「weeksdays」の最初の商品となる
ドイツの靴「trippen」(トリッペン)の
創業者であるミヒャエル・エーラーさんと、
その奥さまのクラウディア・エーラーさんに
お目にかかったときのもの。
(「ほぼ日」の事務所のあるビルの屋上で撮りました。)

このとき、伊藤さんが彼らと話したことは、
靴のことがテーマでしたけれど、
いつのまにか「自由」についての
お話になっていきました。
よこで聞いていて「いいなあ、すてきだな」と思った
その内容は、商品を販売する前に、
コンテンツにしてお届けします。

そんなふうに(毎回とはいかないでしょうが)、
対談だったりインタビューだったり、
「weeksdays」は、なるべく
「つくり手の顔」が見えるような
お店にしていきたいなと考えています。

商品って、お届けした先で、
きっと、つくり手が予測しようのない、
使う人それぞれの物語が生まれていくのだと思います。
そして長く愛用したものが
「もう使えなくなっちゃった」となった
何年後か何十年後、
その「もの」が消えてしまったとしても、
ものにまつわる思い出って、
きっと残っていくのだろうと思います。

「百貨店」らしく毎日オープン、
毎週、新製品を! と意気込んでいる
伊藤まさこさんと「ほぼ日」チームですが、
それでもときどきは、新製品を発表せず、
コンテンツというかたちで
「weeksdays」のページをたのしんでいただくような
週をつくってもいいかな? と考えています。

暮らしのこと、食べること、
あそぶこと、旅をすること、
恋をすること、生きること、
先のことをかんがえること。

いろんなかたに、
そんなお話を聞きたいなあと思うのです。
これからどなたに会うのかは
まったく決まっていないのですけれど、
そんなコンテンツも「weeksdays」に
きっと、登場すると思いますよ。

さあこれで予告編5本はおしまい!
次回からは、「よみもの」のトップバッターとして
糸井重里と伊藤まさこさんの対談を連載します。

メンズブランドからも、ながく着られるいいものを。

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8年ほど、はいては洗ってを繰り返し、
くたくたになった、
麻のネイビーのショートパンツ。
作家・ヘミングウエイの世界観をひとつの哲学として
デザインにおとしこんだメンズウェアブランド
「MOJITO」(モヒート)を代表する一着です。

ん? 「weeksdays」でメンズのショートパンツ?
そうなのです。じつはこのショートパンツを
(新品を、ですけど)
伊藤さんが試着してみたところ、
女性が着ることであらわれた独特の表情が、
「武骨でアウトドア」なはずの印象から
「かわいい!」に変化。
そこで、「MOJITO」のデザイナー、
山下裕文さんにお願いをして
「レディースサイズでつくりませんか」と提案、
この夏の「weeksdays」の1アイテムとして
登場することになりました。

ディテールはメンズ仕様のまま3サイズ。
小柄なかたはちいさなサイズを、
おおきめのかたはおおきなサイズを、
性別をとわずに選ぶことができるように考えました。

メンズウェアって、こんなふうに
「くったくた」になっても
着られるよさがありますよね。
10年先をたのしみに買い物をする、
そんな気分も「weeksdays」が
提供したい体験のひとつです。

あたらしい人たちと。

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写真の服は「saqui」(サキ)というブランドのもの。
以前「ほぼ日」の「ベトナム手刺しゅうの服」で
服のパターンを担当してくださった、
デザイナー・岸山沙代子さんのブランドです。

岸山さんは女性ファッション誌の編集部で
編集とライティングの仕事をしてきた人。
伊藤まさこさんの担当編集者でもありました。
もともとは服飾の勉強をしてきた岸山さん、
縁あって編集の仕事に就きましたが、
思い立って編集の仕事を辞めパリに留学、
あらためてパターンの勉強をして、
2016年に「saqui」を立ち上げました。

大人の女性の美しく見せることにたいし
とても敏感で、伊藤さんいわく
「着るものに困り始めている
私世代の救世主みたいな存在」とのこと。

「weeksdays」は、岸山さんのように
「ちゃんと、いいものをつくる」
あたらしい人たちとも
積極的に組んでいきたいと思っています。

今回「weeksdays」で展開する
「saqui」の服は7つ。
色を伊藤さんがアレンジしたものもありますし、
「完全に、いっしょにつくったオリジナル」も!
7月の3週目から、ご紹介する予定です。

衣食住ぜんぶ。

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「weeksdays」の最初のコンセプトは
「デパートをつくりたい!」でした。
衣食住ぜんぶの、えらびぬかれたものが集まる場所、
それをネット上につくろう、ということです。

伊藤まさこさんは、
プロフェッショナルのスタイリスト。
ばつぐんの目利きであることは、
きっとみなさんもごぞんじだと思います。

衣食住って、「着る」「食べる」「住む」、
そしてその3つには分類しきれないような、
「着ると住むのあいだ」や「食べると住むのあいだ」もあります。
「着ると食べるのあいだ」もあるかな?
「weeksdays」では、そんな「もの」も
積極的に見つけていきたいと考えています。

上の画像にある、料理に使っているお皿は、
萬古焼(ばんこやき)のお皿です。
これも「weeksdays」のアイテムのひとつ。
「こんなお皿がほしい」という伊藤さんのアイデアを
作陶家の内田鋼一さんがかたちにしたものです。

洋食器の故郷であるヨーロッパの「実用」のかたち、
そして、骨董品でしか見られなくなっているような、
工房生産だけれど手仕事のゆらぎのある
マニファクチュアな仕上がりをめざし、
内田さんの地元・四日市の萬古焼の工房で、
型を使いながら、熟練の職人さんの手作業で、
1点1点、仕上げたものです。

こんな器があったら、という伊藤さんの思いは、
料理が映える、おいしそうに見える、
というだけじゃなく、
そのお皿のある空間がすてきなものになる、
もっていることがうれしくなる、
そんなひろがりをもっています。
まさしく「食べると住むのあいだ」のアイテムです。

『ちびちび ごくごく お酒のはなし』
『夕方5時からお酒とごはん』
などの著作もある伊藤さん。
日の出とともに起き、
夜10時には就寝するというライフスタイルで、
早朝から元気に仕事をはじめ、
原稿書きや撮影、取材など
いっしょけんめい働いて、
夕方には(まだ明るい時間でも?!)
「さあ、呑もう!」と、
プライベートな時間に切り替えるそう。
(いいなあ、と思いつつ、
なかなかマネができないのですけれど。)

伊藤さんは、料理によってうつわをかえ、
お酒によってグラスを考えるわけですけれど、
意外なことにこれまで
「ビール用の気に入ったグラスがなかった」
のだそう。そこで、以前、いっしょに
バスク風のグラスをつくった、
大正11年からつづく
手仕事のガラスの器メーカーである
松徳硝子(しょうとくがらす)さんに
お願いをしました。

こぶりで、女性でもキュッと飲み干せるサイズ。
粋な日本料理店で見かけるような「うすはり」です。
職人さんの手によって1つずつつくられるグラスは、
「作品」ではないけれど「工業的な量産品」でもない、
その中間に位置するもの。
こんなアイテムも、「weeksdays」には、ならびます。

どこへでも行ける。

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えらぶ。履く。気合いを入れる。
立つ。歩く。階段を下りる。
出かける。立ち止まる。くるっと振り返る。
背伸びする。駆け出す。会う。
いっしょに歩く。いっしょに立ち止まる。
遠くへ行く。どこまでも行く。
脱ぐ。磨く。仕舞う。思い出す。
たいせつにする。

「weeksdays」で
いちばん最初に販売するものは、靴です。
ドイツの靴のメーカーであるtrippen(トリッペン)の、
2000足以上あるというアーカイブのなかから、
伊藤まさこさんがえらび、色を考え、発注した
「weeksdays」のための靴8足がならびます。
(7足が女性用、1足は男性用です。)

お店ですから、商品をつくり、紹介し、
販売をする場所ではあるのですが、
「weeksdays」は、
その「もの」にまつわるつくり手の思いや、
その「もの」がきっと届けてくれる
たのしさやよろこびもお伝えしたいと考えています。

もちろん、商品は、伊藤まさこさんが
心から「いい!」と感じ、なおかつ
「こういうものがあったら、みんなよろこぶのに」
と本気で思ったものをえらびます。
「weeksdays」ならではのアレンジをした、
あるいは、いちから商品開発をした、
ほかにはないものがならぶ予定です。

あたらしい商品は、1週間ごとに発表。
金曜日に「つぎはこんな商品ですよ」という紹介を始め、
土・日・月・火・水に詳細をお伝えします。
そして次の木曜日に、販売スタートです。
ちなみにtrippenの紹介は、7/13(金)から。
どうぞ、おたのしみに!

はじまります。─ 伊藤まさこ

未分類

「いつかお店をひらいてみたい」

そう頭に思い浮かべたのは、
今から10年くらい前のことでした。

その時は、「お菓子屋さんになりたい」とか、
「総理大臣になりたい」とか、
「動物園の飼育係になりたい」なんて、
子どもが思い描く将来の夢みたいな、
遠くて、じつは自分でもよく分からないことでした。

買うつもりはなくても、
通りがかるとついつい寄りたくなっちゃう。
そしてハッと気づくと、
店を出るとき、袋をぶらさげている。
だれにでもひとつやふたつ、
そんな気に入りの店はあるものです。
帰る道すがらや、
家で包みを開けるとき、
なんだかうきうきしている。
もしも自分がお店を作るのだったら、
そういうのがいい。

あんなものを売ったら楽しいんじゃないか?
こんなものを売ったらみんながよろこんでくれるのでは?
この10年、かなうとも分からない、
「いつか開くお店」を頭の中でえがき、
わくわくしていたのですが、
夢は思いつづけるものですね、
とうとう今日、「weeksdays」がオープンします。

「weeks」と「days」。
ふたつの言葉を合わせてひとつにしたこの店名には、
「毎日たのしい何かが起こる」、
そんな意味合いが込められています。
朝起きたときに、
さて今日はどんなものが出ているかな? なんて、
ついついのぞきたくなる、
私たちはそんな店を目指しています。
器に服、靴、バッグにアクセサリー、
化粧品、たべもの‥‥。

ありそうでないもの、
ここだけでしか売っていないものばかりが
集まったらどんなにすてきなことか!

小さな子どもを育てているお母さんや、
忙しくて買いものもままならない人、
はたまた買いものが好きでたまらないという人も。
いろんな人が集まって、
来てくれた人が、
ああ今日はなんだかいいことあったなぁ、
いい買いものした!
そんな風に思ってもらえる店にしたいなと思っています。

まずは明日から、
「weeksdays」はこんな店です、
という予告がスタート。

どうぞよろしくおねがいします。そして──

ようこそweeksdaysへ。

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