COLUMN

真っ青な空を見上げたとき

川上絹子

「weeksdays」に、
さまざまなかたにエッセイを寄稿していただく
コーナーをつくりました。
今回のテーマは「旅」。
2週にわたり、4人のかたにご登場いただきます。

かわかみ・きぬこ

高知市・セブンデイズホテル/
セブンデイズホテルプラス オーナー。

創業50年のガソリンスタンドから
ホテル業へ転身。
創業時から、これまでのビジネスホテルの
「定番」的なあり方を改革、
快適なしつらい、アートのある空間づくり、
あたたかくフレンドリーなサービス、たのしい朝食と、
「まるで自分の部屋のように」くつろげるムードで
たいへんな人気となっている。
国内誌で「世界100選」のホテルに
ビジネスホテルとしては唯一
選ばれたこともある。

■セブンデイズホテルのウェブサイト

真っ青な空を見上げたとき、
ずーと遠くに飛行機が飛んでいるのを見ると、
なぜだか行きたい、行かなくちゃ‥‥どこかに──、
そう思う。

すぐにネットで、
どこに行く?
行きたい国はどこ?
そう自分に問いかけながら、
チープなツアーの中から
できるだけ自由度の高い旅をチョイスする。

旅支度は年々簡素になった。
前はあれもこれも、
何かあったら便利よねと
トランクを一杯にしていたけれど、
帰ってきた時、半分近くは未使用‥‥なんだかなぁ。
今はなんとかなるでしょう、と、
本当に少ない荷ものを目指している。

でもパッキングは美しく。
これは年々こだわりが出てきている。

職業柄、多くの旅の方にお会いする機会がある。
素敵な方がさりげなくバッグのなかからものを出された時、
思わず「すみません、バッグの中を見せて下さい」
と言いたくなるくらい、
一つ一つをていねいにパッキングなさっている方に、
憧れがあるからかもしれない。
トランクを開けたとき、
「完璧!!!」と自分自身が喜ぶことを目指して、
旅に持って行くものを選びたいと思う。
本当に自己満足の為だけれど。

旅の服も、長時間の飛行機、
長時間のバス移動を優先して、
軽くて、着心地が良く、皺にもなりにくく、
でもおしゃれ感もあって‥‥と、
最近、そんなふうに思うのだけれど、
コーディネートはなぜだか毎回同じもの。
その時はあんまり気付いては無いのだけれど、
写真を見たら、
「あれ?! ほとんど毎回同じ服じゃない?」

そうなのです。
軽くて、着心地が良くて‥‥となると、
似たようなものになってしまう。
毎年何かしら新しい服も買っているのに、
旅の服となると何年も同じ服を着ている。

そう考えると、
着心地の良い服や旅に持って行きたい服は
多くは要らないから、しっかりと考えて。
本当に上質な心地よさのものに出会ったとき、
手に入れ、好きなものを大事に着ていきたい。

同じように旅の目的も変わってきていて、
今の旅は、知らない国や町を
「今日は300kmバス移動です」
なんて云うハードなスケジュールが大好き。
バスに揺られて何も考えず、
過ぎ行く景色をぼーっと見る時間がなんとも心地よい。

お昼時、着いた町で
「解散!!」の声と同時に
美味しそうなレストランを見つけ、
贅沢な食事じゃ無くても、
まずはビール!!!

そして町を眺める。

そこにある日常の風景、人、町並み、空気‥‥。
観光ツアーなのに、多くを見なくていい。
その町を感じていたい。

もうひとつ、仕事柄ホテルを見るのも楽しみの一つ。
素敵なホテルに出会ったとき感じる心地よさに、
いいな、ここで暮らしたいな、と思ってしまう。
でも、よく考えてみると、
素敵だな、と思うホテルは
ちっとも非日常的ではなく、
逆に日常を大切に、
何でもない事を大事にしている。
インテリアや醸し出す空気は、
バリバリのカッコよさでは無いけれど、
うぅ、何だかすごくいい‥‥好き、と思うのだ。

旅は色々なことを感じて考える時間。
だから時々無性に行きたくなるのかもしれない。

空を見上げたとき‥‥。

2018-09-17-MON