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じぶんを救うもの。

未分類

伊藤
仕事のこともそうですし、
買い物の失敗もそうですし、
なにに対しても、気に病んだり、
怒ったりいらいらするより、
たのしいほうに向かおうと思うのって大事ですよね。
樋口
うんうんうん。
伊藤
樋口さんもきっとそうですよね。
樋口
そう。悔やむより、
次の対処法を考えたほうがいいですね。
悔やむ時間がもったいない。
伊藤
うんうん。
樋口
対処法を考えるほうが、
前よりもよくなったりする。
悲しいことが起こったら、
女優としてもこれは生かさないと悔しい。
学生時代、女優になる前も、
とても悲しいことがあったとき、
「あれ、わたしどんな顔してるんだろう?」
と思ったことがありました。
その顔が知りたくて鏡を見て。
伊藤
え!
樋口
いま思うと、それはわたしのなかの、
お芝居の資質だったのかもしれません。
じぶんの悲しみにひたるというよりも、
ぽーんと離れて見たい、と思ったんです。
わたしいまどういう顔して泣いてるんだ、って、
そっちの興味が湧いちゃうの。
伊藤
へぇ‥‥!!
樋口
そうか、こういうふうに泣くのか、とか、
あら、ここが赤くなって、みたいなことですね。
学生のときから、
自分観察というのがすっごく好きだったんですよ。
だから、悲しいことが起こると、
その悲しいことだけを考えて悶々とするんじゃなくて、
その悲しいことがもったいない、
せっかく悲しいことがあるのに、
なんとかそれを活かしたい、
どうせ泣いてるんだったら、
その顔はどう泣いてるのか知りたいって。
伊藤
気持ちの持って行きかたというのは、
どうされてるんですか。
樋口
持って生まれたもんじゃないかと思うんだけど(笑)。
伊藤
やっぱり! それ、ありますよね。
樋口
人によって、
同じようにはできないだろうと思うんです。
伊藤
そうですよね。
樋口
だから、どこか楽天的だし、
たのしいと思うほうが、じぶんが楽。
それは、自分を防御する方法なんですよ。
きっと、悲しいことに、
ものすごく弱い人だと思うんです。
でも、育ってきたなかで、
「あ、次のことを考えれば楽になる」って、
たぶん、体で自然に覚えてきたんだと思います。
伊藤
糸井さんがおっしゃったんですが、
ブイヨンが亡くなってしまったとき、
樋口さんがいつにも増して家事をしているって。
樋口
あのときは、体を動かさないと、もたなかった。
伊藤
ほんと、そうですよね。
樋口
織り(手仕事)をしたっていうのもそうです。
ブイヨンが亡くなったとき、すごく悲しかったので、
手を動かすということで、すごく紛れたんですね。
もちろん、織ること、染めることが好きだったんだけれど、
頭が真っ白になって、そのことだけしか考えない、
という時間が、すごく、ありがたくって、
手仕事というのは、すごく、
それだけに集中させるものなんだ、と。
伊藤
精神科医の方の著作を読んだとき、
悩みや怒りは、過去や未来のことで、
現在進行形のことについては、
そうは考えないんだと。
だから、料理って、
すごく気が紛れるんですって。
「いま」に集中するから。
樋口
そうそう!
伊藤
織りや、掃除も、そうなんでしょうね。
樋口
そうだと思う。
たまたま「ほぼ日」の気仙沼の事務所の近くに
「こぎん刺し」の達人というのがいらして。
ものすごいんですよ、こぎん刺し。
もともと興味があったんですけれど、
やったことは、まったくなくって。
「気仙沼ニッティング」の立ち上げで、
編むことの好きなかたが集まったなかに、
ひとり、すばらしい手芸の達人の
手芸屋さんがいらして、そのかたが
「こぎん刺しをやるのよ」と。
伊藤
手芸屋さんなんですね。
樋口
そう。しかも、姉御肌の人なんです。
それで、うちに来なさいよ、と誘ってくださった。
すると、わたしの興味あるこぎん刺しが、
もうすっごい数、置いてあって、
織物、機(はた)もあって、
セーターもいっぱい。
伊藤
こぎん刺しって刺繍ですよね。
樋口
刺繍です。
伊藤
じゃあ、刺繍も、編み物も、
織りもされるかたなんですね。
樋口
そうなの。
こんな手芸の達人見たことない! っていう人です。
そんなかたに
「気仙沼のほぼ日」に行ったおかげで出会って、
こぎん刺しを習いました。
そのかたがおっしゃるにはね、
地震、津波の被害の大きかったなかでも
手を動かしていたと。
そのむかし、船乗りだったご主人が
亡くなったときも、
手を動かしていたから、
わたしは乗り越えられたんだ、って。
伊藤
‥‥。
樋口
そうかぁ、って、すごくジンとしてしまって。
手仕事というのは、
なにかを救うんだなぁ、って。
伊藤
ちゃんと成果が見えますよね。
これだけ進んだっていう。
樋口
うん。
伊藤
料理もそう。
できあがりがちゃんと見えるし、
手を動かすの、いいんですよ、きっと。
樋口
そうね。
で、ブイヨンが亡くなったときも、
その悲しみを埋めるために
赤い布を織ったら、
なんだか元気がでそうな気がしたの。
伊藤
うんうん。
樋口
蘇芳(すおう)っていう、
真っ赤に染まる染料があるんですが、
ちょうど志村ふくみさんの
『わたしの小裂たち』という本に、
真っ赤な布が出ていたので、これは織りたい、と。
そうすると、じぶんが楽になるような気がした。
じっさいに、真っ赤な蘇芳の織りをしたとき、
ほんっとに、楽になったんです。
伊藤
へぇーー‥‥!
樋口
じぶんが好きなもの、求めてるものを、
どこかしら引き出しに収めていたんでしょうね。
その手芸の達人に出会ったときに、
ビビッと反応したのも、そうでした。
やっぱり、好きなものの引き出しというのは、
じぶんを救うんだなって。

キャパとエンジン。

未分類

樋口
最近食べたおいしいものは何?
伊藤
最近だと、パネットーネっていう
イタリアのお菓子です。
樋口
どんなお菓子?
伊藤
ドーム型をした天然酵母の菓子パンで、
ドライフルーツが入っていて
ちょっと甘酸っぱいんです。
ほんとうはクリスマス前に食べるんですけれど、
LESSっていうお店には一年中あるんですよ。
つくるのに3日かかるんですって。
樋口
どうして3日かかるの?
伊藤
パネットーネ酵母という酵母を、
長時間熟成して
発酵させるらしいんです。
作るのにとても手間暇がかかるらしくて。
樋口
どんなふうにおいしいの?
伊藤
口に入れると、鼻に抜ける香りが
「嘘!」っていうくらい、よくって。
イタリアの人たちは、
3週間くらいかけて、
熟成させながら少しずつ、
味の変化をたのしむらしいんですけれど、
わたしはすぐ食べ終わっちゃうんです。
だから3台、
いろんな店のものを買いました。
娘と「これで持つね」と話しています。
樋口
へぇー! ほかには?
伊藤
お寿司屋さんでイカの握りを頼んだら、
ほんのちょっとだけ、海苔が挟まってて、
それがすっごくいい仕事をしてたんですよ。
海苔が隠し味なんだけれど、最高においしくて!
樋口
そういう話をするときのまさこさん、
うれしそうだよねぇ。
この姿を見て、まわりのみんなが
しあわせになるわけです。
「おいしい」って言うとき、
ほんっとにいい顔するのよ。
こっちまで食べたような気さえするもの。
伊藤
(笑)あと、なんだろう。
秋の一番は、栗おはぎでした。
樋口
どこの、どこの?
伊藤
岐阜の中津川のものです。
私は毎年、
栗の時期に京都に行って食べていたんですが、
今年は行けなくて。
そうしたら、料理雑誌の編集者をしている友達が
取材に行って、その日に食べないとだめ、
という栗おはぎを
買ってきてくれたんです。
樋口
うんうん。
伊藤
取材を終えた足で、
品川で新幹線を降りて、
届けてくれたんですよ。
樋口
フットワークが軽い! 
あなたのまわりの人。
伊藤
そうなんです。
「いま、どこどこの交差点です」
と連絡があったので、
「わかった!」と、通りに出て、
「はいっ!」。
樋口
はやい!
伊藤
一刻を争うおいしさなんです。
「はやく食べて!」
「わかった! 今すぐ食べる!」みたいな。
樋口
まわりの人もおんなじなのねぇ。
おいしいものにかける情熱。
伊藤
「今日中だからねっ!」って。
樋口
そういうとき、まさこさん、怖い声を出すのよ。
(低い声で)「今日中だからねっ!」
“超マジ”な声で、真剣になる。
伊藤
あははは。そうです。
で、6個いただいて。
樋口
えっ(笑)。それをその日じゅうに?
伊藤
娘と3つずついただきました。
それがもうほんとうに軽やかなんですよ。
樋口
そんなに食べたの(笑)!
おはぎ3つ。
伊藤
うれしかったなぁー。
樋口
しみじみしてる(笑)。
伊藤
しあわせなことがしていたいです、ずっと。
樋口
特にやっぱり「食」ね。
「食」の次はなあに? 
洋服?
伊藤
うーん? 仕事が好きです。
樋口
仕事ね。
伊藤
仕事を通じて人と会うのも好きです。
結局、人が好きなんだと思います。
おもしろい人がまわりにいっぱいいるので。
樋口さんはどうですか? お孫ちゃんの次は。
樋口
わたしはね、キャパが狭いんですよ。
以前、糸井に言われたんだけど、
エンジンが小さいって。
伊藤
そうなんですね。
樋口
集中して、短距離で、
ガーッと行くのは得意なんだけれど、
持続というのが難しい。
そして人の受け入れ体制が、
すごくちっちゃいんです。
つまり、エンジンもキャパも小さい。
まさこさんのように、まわりに人がいたら、
もうくたびれてしょうがないんです。
好きな友達、何十年の友達はいるんだけど、
人数は少ないですよ。
だから、あなたがすごくうらやましい。
行くとこ、行くところに
友達がいるっていうあなたが。
伊藤
わたしの言う
「みなとみなとのいいオンナたち」は、
わりと年上のかたが多くて、
「まさこちゃんが来たなら、案内するわ」みたいな、
人生の先輩みたいな人なんです。
樋口
ちゃんとかわいがられるタイプなのね。
でも、年下だって大丈夫でしょ。
伊藤
年下、大丈夫です!
樋口
やっぱり、キャパがすごく広いのよ。
伊藤
すっごく、いろんな先輩に
よくしてきてもらったから、
いま、年下に返す番かなぁと思っているんです。
樋口
へぇ!
伊藤
でもね、樋口さん、
わたしがキャパが広い、というのは、
ちょっと違う気がするんです。
だって、いっしょにご飯を食べに行くのは、
ほんの一握りの人ですよ。
誰でもウエルカム、というタイプの
キャパの広さではないんだと思います。
樋口
そうなのね。
伊藤
仕事の相談も、よく
「ピンとこない」と断るんです。
ひどくないですか、その一言。
でも、なんだかピンとこないとしか
言いようがなくて。
樋口
いやいや、
それだもの。
それが基本だもの。
伊藤
そうですか! よかった。
糸井さんから
「相手が断りやすいように頼みなさい」って。
樋口
ん?
伊藤
断る側が気持ちよく
断ることができるように依頼しなさい、
ということですよね。
「どうしても!」なんて言っちゃダメ。
断られて「どうしてですか!」もよくない。
なんとなく、っていうのも断る理由だから。
樋口
受けてもらわないと困る、
みたいになってくると、
相手にとって、負担になるものね。
──
伊藤さんと仕事をしていていいなと思うのは、
企画を立てるとき、
「ダメなら次はない」ということですね。
たとえば今回、樋口さんはお受けくださったけれど、
もし樋口さんに断られても、
「じゃあ、お正月の対談に、
別のどなたかを探しましょう」は、ないんです。
それは断った人に失礼でしょう、って。
だからもし樋口さんがNGだったら、
この連載は、対談ではなく、
別のことを考えていたと思います。
伊藤さんは「もしダメだったら、
わたしが1週間書く」とおっしゃっていた。
樋口
そこもちゃんと考えてる。
ダメならちゃんとわたしが責任取りますっていう
心構えがある。
それがあるから、まわりも気持ちがいいし、
ほかのアイデアを考えたくなるし。
男前、ですよ。
あははは、男前。
伊藤
ある程度、仕事をする人には、
男前な女性、多いですよね。
樋口
そうじゃないと仕事が前に進まないから。
伊藤
そうですね。
いまチームが大きくなってきてるから、
わたしがどんどん決めていかないと、進まないです。
‥‥あれ? おかしいな、
樋口さんのビューティーの秘密を知りたかったのに、
いつのまに、仕事の話に。
樋口
ビューティーはねぇ(笑)、
うちの母が、肌がきれいなんです。
92になるんですけれど、
いまでも、はじめて会う人が、
お化粧してるんですか、と言うくらい。
伊藤
へぇーー!
樋口
これはもう、母の血で、
手入れいらずなんです、ほんとに。
伊藤
目、まんまるです!
樋口
(笑)しょうがない。
母ですよ、母の血が、
やっぱり助けてくれている。
そりゃあ、仕事のときはメンテナンスしますよ。
泳ぐし。
伊藤
泳ぐ?
樋口
仕事に入るとき。
いま、ずっと仕事をしていないから、
ご無沙汰しているけれども、
次の仕事はこれで、ドラマの撮影がこう入る、
とわかっているときには、
それに合わせて、逆算して、体を締めていきます。
そうすると、泳ぐことが、
わたしにとっては一番楽なんです。
仕事のときは、エステもちゃんと行きます。
ほかの人の力を借りて、
じぶんでも仕事に見合うように
きれいになろうと思っていると、
きれいになります。
伊藤
気持ちが大事ですね。
樋口
そう、気持ち。
きれいになろう! 
って思う気持ちがないとダメ。
伊藤
メモメモ。
樋口
仕事を通して、そう言えます。
伊藤
なるほど。
でも、いま仕事してないっておっしゃってて、
この美しさなんですけど。
樋口
それが、母なのよ。
伊藤
そっかぁ。

お孫ちゃん。

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樋口
きれいじゃないの、まさこさん。
いいもの食べてるから(笑)。
伊藤
わたしは、何にしても、
我慢はしてないんです。
樋口
それ、わたしも同じ。
伊藤
そっか。
「我慢しない」。
樋口
好きなことをする。
やなことを考えると、やな顔になる。
ここ(眉間のあたり)にくるんですよ。
じぶんでは気がつかないんだけれど、
人を見ると、気づく。
何でも絶対悪く言う、
っていう人がいるでしょう。
晴れれば、今日はなんだか乾燥して、って言うし、
雨が降ったら降ったで、
今日はじとじとしてるって言う。
そういう人の顔は絶対よくないの。
伊藤
気の持ちようって、ほんとに、
すべてに出ますよね。
樋口
そう。だから、
常に気持ちのいいコンディションでいるために、
ということは考えます。
三食きちんと食べる、とか。
伊藤
三食きちんとですか。
樋口
一食が少なかったりすることもあるけど、
三食をきちんと食べる。
そうしないとイライラする。
お腹がすくのが弱いんですよ(笑)。
イライラすると、みんなに悪いし。
人と一緒の時は、みんなとたのしくしたいから
なるべくいい状態にしておきたいの。
伊藤
たのしいほうの気持ちへの
持って行き方って、
どうすればいいんでしょう。
樋口
(笑)まさこさんが何言ってるの! 
あなたのほうがすごいじゃない。
逆返ししたいぐらい!
伊藤
ということは、性格ですよねぇ。
樋口
あっはっはっは。そうね。
まさこさんには、お母さんとか、
お父さんからの影響はない?
伊藤
ありますね! うちの母は
「もう考えたってしょうがないじゃない?」
みたいな感じです。
コロナのことにしても、できることはやるけれど、
愚痴は言いません。
たのしかった旅行のことを振り返っても、
「いま行けない、チェッ」
みたいに思うんじゃなくて、
「楽しかったね」と言う。
家にいても、庭に出て土をいじれば気が紛れるから、
旅に行かなくたっていいじゃない? みたいな。
樋口
お母さんもそうなんだ。
伊藤
やっぱり、持って生まれた性格っていうのが、
すごくありますね。
それは育った環境にもつながるし。
樋口
そうそう、そうだよね。
伊藤
樋口さんのお母さまは、どうですか。
樋口
うちの母も、そうです。
大変なことが起こると、
すとんと肝が据わるタイプ。
それはわたしも似てる。
大変なことが起こると、
「ん!」とどっしり肝が据わるのは、
母に似てるんじゃないかなと思いますね。
起こったことはしょうがない。
パニックにはならない。
伊藤
そうそう。
わたしは、一瞬うろたえても、
すぐに「もういいじゃん」と流します。
それから、決めなくちゃいけないことが
10個あったとして、
順番に考えているうちに、
5つで頭がいっぱいになったら、
残りの5つは「今、決めるのをやめるね。
宿題にさせて」というふうに、
結論を急がないことにしています。
判断を間違えちゃうから。
樋口
見事だねぇ。
伊藤
胃袋と同じで、
情報が入りすぎたら、
パンクしちゃうんです。
樋口
ふふふ、胃袋として考えるよね、まさこさんは。
伊藤
入る量って決まってるじゃないですか。
じぶんの中でおいしく処理できる食べ物の量と、
頭で処理できる情報の量って、似ているなって。
いっぱいになっちゃうと、
ちょっとイライラしたりして。
そんなふうにイライラしてる人を見たら、
みんなも気分が悪いでしょって思います。
樋口
じぶんがイヤなんだよね。
伊藤
はい。じぶんがそういう人になるのがイヤですよね。
樋口
うん、うん。
わたしは、いま大変なことは何かとか、
大事なことは何かって迷ったとき、
その「一番」はなんなのか、を考えます。
一番が決まると、二番が決まるんですよ。
それから、三番、四番、
ぜんぜん考えなくていいことは何か、もわかる。
だから「一番」を中心に考えるんです。
そうすると、じぶんが気持ちがいい。
伊藤
なるほど。
樋口
だから、引っ越したい、
京都に行きたいなと思ったら、
そのときはそれが一番なんだから、
誰がなんと言おうと、
その気持ちを通したい、と、
その「一番」だけを考えるんです。
伊藤
それ、すごくシンプルだけれど、
なかなかできないことですね。
樋口
そう、なかなかできない。
ちゃんと思わないと、
一番って決められない。
だから、とことん悩みます。
わたし、悩まないように
見えているかもしれないけど、
すごく悩みます。
こうしたらこれがダメになるんじゃないか、
ということは、これは一番ではない、と。
さらに順番を変えて考えて、じぶんが、
「あ、これを一番にすると、すっごくすっきりする」
ということを考える。
伊藤
いまは、ブイコですか。
暮らしの一番は。
樋口
いや、そうじゃないですよ。
「暮らしでたのしい」の一番は、
お孫ちゃん(笑)。
糸井のデレデレ、すっごいですよ。
伊藤
「俺はそんなではないぞ」って
おっしゃるんですけれど、
そうですよねえ。
樋口
すごいもん、恋人を見るよう(笑)。
あんなにデレデレになるとは思わなかった。
今は可愛いだけじゃなく、成長の仕方がおもしろくて。
伊藤
昨日はできなかったこんなことが、
今日はできた、とか。
樋口
そう! 昨日しゃべれなかったのが、
もうしゃべれるとか、
その成長の度合いがね。
伊藤
あと、子どもって、
機嫌のいいときと悪いときに
嘘がないっていうのが好きです。
樋口
正直。
お孫ちゃんは、すんごく、海苔を食べるの。
やめなさいっていうぐらい。
「ほぼ日」で売ってる海苔が一番好きで、
こんなにちっちゃいときから
あの海苔のおいしさを覚えたら、
ほかの海苔が食べれなくなるぐらい、
「ほぼ日」の海苔が好きなの。
──
ありがたいです。
あれ、樋口さんがいなかったら、
ありえなかったプロジェクトですよ。
樋口さんが最初に、交渉してくださった。
樋口
え? そうだっけ?
──
おすし屋さんで使っているおいしい海苔が
どこのものかを教えてもらった
糸井さんと樋口さんが、
うちでも食べたいねと相談して、
樋口さんが林屋海苔店に電話をしたとききました。
そしたら、当時社長だった
相沢さんのお母さんが出られて、
「ふつうの家に、あんなにいい海苔はいらないから、
こっちにしなさいね」みたいに言ったんですって。
樋口さんはそれでも
「いえ、あの海苔がほしいんです」と押して、
分けてもらったその海苔が、
のちの「海大臣」につながるんですよ。
だから最初の交渉係は、樋口さんだったんです。
樋口
ああ、そっか! 思い出した、そうだ、
じぶんちで食べたかったの、その海苔を。
わたし、おいしいものには、押しが強いんですよ。
伊藤
わかります。
樋口
ダメならダメでいいんだけど、
「ダメなの?」って一押し。
あちらも、おいしいから電話してきたんだ、
ということを、わかってくださって、
飲食店にしか卸さない海苔を、
うちに、分けてくださることになった。
伊藤
言ってみるだけ言ってみよう。
糸井さんもそうですか。
樋口
糸井はそんなわがままなことを言わないです。
相手に負担がかかるようなことは一切言わない。
だから、そういう押しの強さが必要なときは、
わたしに「電話して」って(笑)。
わたしは食べ物や好きなものに対しては押しが強いから。
ほんとうにダメなら、諦めも早いけど。
伊藤
うんうんうん。

嘘をつかない。

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樋口
わたしは「相手が好きなこと」にすごく関心があるの。
それを聞くと、その人がわかるので、
はじめて会った人にものすごく質問するんです。
何が好き? 
あれが好きなの? って。
伊藤
わたしはそこまでの余裕がないかな‥‥。
樋口
余裕じゃないの。
わたしはそれがたぶん好きだから、
知りたい人には、すっごく質問して、
とにかく好きなことを聞く。
まさこさん、何が好き? 
伊藤
食べることです!
樋口
そうよ、あなたは、
わたしの知り合いの中で
いちばんの食いしん坊(笑)。
とにかくいままでね、62年生きてきたけど、
いちばんの食いしん坊。
伊藤
えー。
糸井さんも食いしん坊じゃないですか。
樋口
いやいや、桁が違うんだって(笑)!
伊藤
桁! そういえば、
わたしがもりもり食べてるのをご覧になって、
すっごい、よっく食べるわねーと、
感心してくださいましたよね(笑)。
樋口
量もそうだけど、量だけじゃないの。
興味というか、その探究心というか。
伊藤
そうですか!
樋口
やっぱり、根っこはとにかく
食べ物が好きっていうこと。
伊藤
しあわせなんです。
樋口
だからうらやましいのよ、
ものすごくうらやましい。
まわりがそんなあなたを見て、
うれしくなるじゃない。
伊藤
そっか!
樋口
まさこさんと一緒に食事をする人は、
すごくたのしいと思う。
まさこさんが、すごくおいしそうに、
しかも、ちゃんと量を食べるから。
伊藤
(笑)
樋口
おいしそうに食べる人と食べることほど、
うれしいことはないのよ。
それは、あなたは、やっぱりいちばんよ。
伊藤
でも、逆に、てきとうにつくった
てきとうなものを食べなきゃいけないとき、
ものすごく「はぁ‥‥」(ため息)と。
樋口
それがいいの、正直だから。
嘘をつかない。
それは、絶対、信用ができる人ってこと。
みんながこんなにまさこさんを好きなのは、
ひとつ、この人は信用できるなぁって感じがあるからよ。
いろいろな良さがあるだろうけれど。
伊藤
好きなものしか紹介してないです。
樋口
それが通じるのがいいの。
義理があって紹介してるとか、
だからこの食べ物をおいしいって言ってるとか、
それがない人だとわかる。
糸井にも言ってるんだけど、
まさこさんは、いま黄金期。
伊藤
黄金期ですか! 
そんな会話を、おうちで(笑)?
樋口
わたし「ほぼ日」の「weeksdays」に
ハマってますから。
伊藤
チームのみんなが嬉しくて泣いてますー。
樋口
この歳にならないと、
黄金期とは言い切れなかったと思う。
人に紹介するという醍醐味というのかな、
紹介することで、また、じぶんのよろこびにできる。
その背景には、ちゃんとこの歳まで
いろんなものを見てきた、
その尋常じゃない数があるんですよ。
じぶんで好き嫌いのアンテナをはたらかせて、
よりすぐってきた。
それはたぶん持って生まれたアンテナですよ。
伊藤
50歳になりました。
樋口
いいですよ、
ますますいいですよ、うん。
伊藤
いま、いちばんたのしいかもしれないです。
娘も手が離れたし、仕事もうまくいって、
いいチームに恵まれて。
樋口
いま、やっぱりね、体も頭もいい感じで動いて、
いままで貯めてきたものを、
「ほぼ日」という場所で出して。
伊藤
いま、まさにそうですね。
これをやりたいとか、つくりたいとか、
この歳になってできることが増えました。
エッセイをお願いする人とかも、
じゃあ、あの人とあの人に声をかけて、って。
樋口
それが、ここまで嘘をつかないでやってきた人の
信用ですよ。
伊藤
若い頃からお金を使ってきました。
まず自腹切らないとダメだわ、と。
樋口
それは感じる(笑)! 
ほんとにそう。
伊藤
先ほどのお話じゃないですけど、
たとえば服を提供しますと言われても、
どこかで着ないといけないかなぁ、というのが嫌で。
だから気持ちに合わないものは
すみませんと断ります。
樋口
うんうん。
逆にそれって、ものすごく難しいことです。
それができるのはすごい。
伊藤
正直に仕事してきて、よかったんですね。
正直っていうか、わがままっていうか。
樋口
いやいや、わがままじゃないところがすごいのよ。
いないんですよ、なかなかそんな。
でも、黄金期ってそれで終わりじゃないからね。
その上がまたあるんだから。
これで終わりじゃないのよ? 
あるのよ。
伊藤
うれしいです!
‥‥でも、わたしの話はいいですよ!
今日は樋口さんのビューティーについても
訊きたいと思っていたんです。
樋口
ビューティー? 
ビューティー、弱いなぁ‥‥。
伊藤
まずお着物のこと。
志村ふくみさんから
糸井さんがいただいた反物だと聞いて、
もうちょっと地厚なのかと思っていましたが、
さっき触らせていただいたら、すごくしなやかで。
樋口
打ち込みがしっかりしているんですって。
伊藤
打ち込みって、緯糸を通したあとの、
トントン、っていうあの作業ですね。
樋口
そう。ふくみさんがしっかり打ち込んでいるから、
しなやかなのに、しっかりしているんですよ。
きれいでしょう? 
白い結び糸が時々しゅっしゅって入って、
じっと見てると糸の宝石みたいなの。
仕立てていつか着たいと思っていたんだけど、
この対談で叶いました。
伊藤さんも着るでしょう、着物。
伊藤
最近ぜんぜん着てないんです。
樋口
着てないの? でも、ほら、きょうの草履。
ここでこの草履を持ってくるってところが、
センスがいい!
伊藤
ほんとは、
わたしも着物にしようと思ったんですけど、
まさか、樋口さんと一緒に着物を着るなんて、
できないなあと。
樋口
えっ、着ればいいじゃない。
まさこさん似合うのに。
素敵な着物持ってるのに。
伊藤
今年は特に着ていないんです。
外出することもなかったし。
じぶんでは
人前に出るような着付けはできなくて。
樋口
それはわたしも同じ。
家で練習するけれど、
忘れちゃって。
どうやって習ったの?
伊藤
20年ぐらい前に、教室で。
樋口
いつがいちばん、着物を着ていたの?
伊藤
10年ぐらい前ですね。
だんだん着なくなってきました。
樋口
ほんと、そうなの。
わたしも着ないと忘れちゃう。
伊藤
この着物、こんなこと言ってはなんですが、
糸井さんより‥‥。
樋口
そうでしょ! 
絶対わたしのほうが似合う。
伊藤
(笑)ところで樋口さん、
ほんとうに肌がきれいですよね。
小耳に挟んだんですけど、
お風呂にすごく入られてるって。
樋口
うん、よく入る。
それから、寝るのは仕事。
伊藤
やっぱり睡眠ですか。
樋口
そう、睡眠。
寝ないと、次の日に頭も回らないし、
肌の調子も落ちるし、
とにかく寝るのは仕事と思って。
伊藤
それは撮影の前だから、
とかではなく、普段から?
樋口
そう。でも糸井はもうね、
寝るのが朝の4時とか。
伊藤
それぞれの生活する時間帯が違うから、
ふたりで暮らしていても、
わりとひとりの時間が多いよって、
糸井さんがおっしゃってました。
あの人、早く寝るからね、って。
夜中は糸井さんの時間。
樋口
夜中はね。
わたしが寝るのは、
ブイコが来てから、10時ですね。
ブイコが早起きで、
6時過ぎぐらいに散歩行くので、
それに合わせるためには、
10時ぐらいには寝なくちゃいけない。
前よりだいぶ早く寝るようになりました。
糸井は変わらないので、そうね、
夜は糸井の時間ですね。
伊藤
お風呂は好きだから入られるんですか。
樋口
お風呂は好き。
あったまるのが好き(笑)。
わたしは寒がりだから、
お風呂も入るし、冷たいものを飲まない。
伊藤
わたしは、その‥‥。
樋口
暑がりさんでしょ、ねぇ。
うらやましい。
伊藤
夏は水シャワーです。
樋口
うわぁ、寒がりのわたしとしては信じられない!
わたしは真夏でも、とにかく湯船に入る。
伊藤
わたし、湯船を再開したのは10月末です。
それも、短時間。
もうなんか、浸かってらんねぇ! みたいになって。
樋口
ええー! 信じられない!
憧れですよ、暑がり。
わたし寒がりだから、うらやましい。
髪もショートだから、
首のうしろも寒いんです。
伊藤
襟付きのものじゃないと寒い、
って、以前、おっしゃっていましたね。
わたしは、襟がついてると暑い。
樋口
(笑)逆です。
伊藤
それで、その肌の美しさのために、
お風呂と睡眠のほかには、何をされてるんですか? 
何もしてないって言わないでほしいです! 
樋口
(笑)うーん?
伊藤
エステとか?
樋口
このあいだ、何年かぶりに、
『美しいキモノ』という雑誌の仕事をしたんです。
それで慌ててエステに行ったのが、
今年、はじめてですよ。
仕事のためになら行くけど、
そうじゃなかったら行かない。
伊藤
どうすればいいんだろう、
わたしたちが少しでも
樋口さんのビューティーに近づくためには。
樋口
(笑)ビューティーに行きたいのね。
伊藤
行きたい!

キング・オブ・バンブー。

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樋口
そういえば、あなた、
わたしのこと「竹」だって
糸井に言ったでしょう(笑)。
伊藤
はい、竹を割った性格、友人知人の中でNo.1。
「キング・オブ・バンブーですよ」って
糸井さんと話しました!
樋口
竹のキング!
伊藤
そうしたら糸井さんが、そうだそうだと言いつつ、
「俺たちさぁ、キングとか言ってるけどさぁ、
あの人、女の人だよね」って。
「いや、もう、キングってことにしましょう!」
樋口
そこも、なんだか(笑)。
わたし、そんなにはっきり竹って
糸井にも言われたの、はじめてですよ。
伊藤
「竹」の感じがします。
樋口
はっきりしてるからでしょう、きっと。
ダメならダメ、いいならいい。
伊藤
むかしからそうですか。
樋口
むかしからそう。
伊藤
そうなんだ。
樋口
たぶん、女優という仕事は、
はっきり言っていかないと、通用しないんです。
女優さんたちは、特に仕事場で、
はっきりした人が多い。
伊藤
へぇー。
はっきり言う女優さんが求められるんですか。
言わないと、どんどん違う方向に行ってしまう?
樋口
言わずに捉えどころのないような人もいるんだけど、
そういう人も、
またチャーミングなんです、これが(笑)。
それはそれで、羨ましいなって思う。
じぶんがその世界でバランスを取っていく生き方って、
たぶん、人によって違うと思うんだけれど、
女優さんには竹派が多いような気がする。
そして、わたしはたぶん女優の中でもとくに竹派(笑)。
伊藤
そっか、そうですよね。
樋口
みんなの前で表現するのは、
要は「見てください!」ってことですよ。
自分の「モゴモゴ‥‥」っていう(内気な)部分を
捨てないといけない仕事ですから。
伊藤
ほんとですね。
すごいお仕事ですね。
それは、やっていくうちに
気づかれていったんですか。
樋口
そう、やっていくうちに。
若い頃は違っていたと思います。
でもね、こうして「竹」って言われたの、
わたしにとっては、衝撃でした。
それがわかるのは、あなたも竹だからよ。
伊藤
そうかなぁ。
樋口さんを見ていると、
その竹ぶりにみんなが付いていく感じが
かっこいいなぁと思うんです。
樋口
あなたもそうじゃない(笑)。
違う竹かもしれないけれど、竹は竹。
伊藤
よく、「めんどくさい」って言うんです。
なんていうのかな、女子が噂話をする場所が苦手で、
もう帰ろう、みたいな。
樋口
「めんどくさい」は、わたしも言う。
ちょっと端折りたいのよね、そういうことを。
伊藤
そういうことを少しずつやめていったら、
居心地がよくなったんです。
会う人も限られてくるけれど、
それでいいや、って。
樋口
うんうん。
まさこさんは、ものが好きだから、
ものすごい数のものを見るわけじゃない? 
それで、購入したりして、
じぶんのところに入ってくるものの
数も多いんだと思うけれど、
いつもスッキリしている。
どうやって出していくの? 
溜め込まないでしょう。
伊藤
たとえば、服はみんなに着てもらってます。
樋口
ものは?
伊藤
ものも「持ってって」と、
ほしい人に譲って、
家の中のものの分量を
一定にしていますね。
樋口
循環がいいのね。
ものの流れが。
伊藤
そう! 淀むのがいやで、
いっつも、なにかしら、
入ってきた分を出すようにしています。
樋口
うんうん。
それが上手なのよ。
すっごく上手。
伊藤
ものは好きなんですけど、
ものに執着がぜんぜんなくて、
これはもうわたしにはいいや、と思ったら、
たとえば、友人にあげるでしょう。
そうすると
「あの人んちにあるのなら、もうそれでいい」
と思えるんです。
樋口
わたしもね、それに似たところがあって、
京都のうちを手放したんです。
すっごく好きなうちだったんだけど、
さすがにひとりで世話をするのが大変になって。
行き来はそうでもないんだけれど、
やっぱりメンテナンスっていうのかな。
伊藤
着いてすぐくつろげるわけじゃないですものね。
窓を開けて、お掃除して‥‥。
樋口
それで、京都のうちを手放すときに、
家具とか、ぜんぶ、
どうしようかなと思ったんだけれど。
伊藤
置いていかれた?
樋口
そう!
伊藤
(笑)え! あたり。
樋口
それは、あのうちに合わせて選んだもので、
選ぶのが、とてもたのしかったんです。
何箇所かの家具屋さんを、じぶんで探して歩いて。
選ぶときも、絶対掟破りなんだけれど、
ひとつはテーブルの家具屋さん、
ひとつはイスの家具屋さん、
2つの家具屋さんに同時に来ていただいて、
両方をうちで合わせてみて、
合ったら両方からいただくことにするけれど、
合わなかったらごめんなさい、っていう。
それをしてくださる家具屋さんを見つけて。
伊藤
それ、家具屋さんもうれしいと思いますよ。
樋口
そうかなぁ。
伊藤
だって、そんなじぶんにぴったりのものって、
最初からひとつの家具屋さんで
見つけられないじゃないですか。
樋口
そうですよね。
そこに置いてみないとわからない。
それだけして選んだ家具なので、
あのうちに置いておくのが、
家具にとってベストだと思って。
最初、家具は別々に誰かに譲ろうかと、
ちょっと思ったんですけど、
ぜんぶそのままにしました。
で、そう決めたら、まったく惜しいとも思わないの。
なんだろう、「全うした感」があって。
伊藤
よくわたしも
「断捨離ですか?」と言われるんですけど、
そうじゃないんですよ。
樋口
そうなの。そこが訊きたかった、そこ。
伊藤
断捨離っていうと、もういらない! みたいな、
ちょっと突き放した感じ。
そうじゃなくて、わたしも大事にしたし、
大事にしてくれる人がいたら譲ろう、
その人が大事にしてくれるんなら手ばなそう、
ということなんですよ。
樋口
やっぱり、ものに愛があるんですよ。
ただ捨てるっていうんじゃなく、
そのものの行方までもちゃんと考える。
伊藤
そうですね。
大事にしてくれる人のところにって思います。
樋口
そっか。あれだけの膨大なものを
どうやって回転させてるのかなというのが、
不思議だったの。
伊藤
昨年「まさこ百景」という展示を
渋谷パルコでさせてもらって、
ほうきとか、掃除道具とか、
家の中で使っている100の好きなもの、
というのをテーマに、
じぶんの家にあるものをたくさん並べたんです。
そのときに、海外や、国内のあちこちから
大事に持って帰ってきたけれど、
使わなくなってきた鍋や器を出して、
「まさこフリマ」という、
フリーマーケットのコーナーをつくりました。
お客さまに使ってもらおうと思って。
樋口
へぇー!
伊藤
お客さまもよろこんでくださって、
その後も、こういうふうに使ってますと
教えてくださったり。
樋口
それは、よろこぶよ。
伊藤
きっかけは、ちょうどコロナのステイホームで、
ずっと家にいたときのことでした。
うちは娘とふたりなのに、
こんなに食器を使うのかなぁと思って。
収まってはいるんですけれど、
「なんだろう、このものの多さ?」と。
樋口
うんうんうん。
伊藤
そしたら、すごく家の中の空気がすっとした。
フリマに出したら、食器棚がひとつ空いて、
そこに文房具などを収納したら、
こんどは仕事場がすっきりして。
樋口
うらやましい! 
ほんっとうに、うらやましい。
糸井に聞かせてやりたい(笑)。
伊藤
糸井さんって、なんかこう、
うっかりいろんなもの買ってきちゃうとか?
樋口
そう、うっかり‥‥っていうか、
自然に買ってきちゃうのね。
ふつうに家にものが入ってきます。
伊藤
それ、樋口さんがどう思うかなぁとか、
考えないで? 噂によると、
おうちには配送できないものは、
会社に届けてもらってるとか‥‥。
樋口
そう思ってくれるものはいいけれど、
思わないもののほうが、
家に、膨大にあるわけです。
そういうものは処分したいのだけれど、
いきなり処分するわけにもいかないので、
このスペースからはみ出てきたら、
そろそろと思って、
3分の1は処分しますよ、とか、
そんなふうに、少しずつですね。
全部いっぺんには言わないですよ。
伊藤
なるほど! 
それは、糸井さん、
素直に「はい」っておっしゃる?
樋口
そんな、いい返事じゃないですよ(笑)。
「うん? うーん‥‥」みたいな。
伊藤
樋口さんはどうなんですか。
糸井さんになにか言われるような買い物、
絶対にしないでしょう? 
なにこんなの買って! とか。
樋口
それは、たぶん、
糸井は性格的に言わないですね。
伊藤
でも、うっかり買っちゃった、
っていうものは、ないでしょう、樋口さん?
樋口
ありますよー。
でも、うっかりしたときは、すぐに手ばなします。
人にあげたりします。
伊藤
そうなんですね。

いつもたのしく。

未分類

樋口
お正月、一月一日に掲載になるのね。
うれしいな。
伊藤
はい。お引き受けくださって、
ありがとうございます。
樋口
こちらこそありがとうございます。
いい年になりますように。
伊藤
ほんとですね。
対談をお願いするにあたって、
企画書をどう書こうかと迷ったんです。
でも、わたしが伝えたいことは
「樋口さんに会いたい」、それだけで。
樋口
えっ、え(笑)?
伊藤
いつもは、暮らしのことを、とか、
テーマをこちらから提案するんです。
でも、樋口さんには、
ただ会いたい、それだけ。
しばらく、お会いすることがなかったので。
樋口
あははは。
それがテーマ?
伊藤
はい、テーマです。
もちろん「あのことが訊きたい」ということも
あるんですけれど、それを伝えるよりも、
雑談をさせてください、ってお願いしたんです。
それじゃあ断られても仕方がないけれど、
それがほんとうにしたいことだったんですよ。
樋口
まさこさんからの依頼ですもの、
即決です。
伊藤
ありがとうございます。
「weeksdays」でも
よく、お買い物をしてくださっていると、
糸井さんからうかがいました。
樋口
すごく、してます。わたし。
じぶんで頼むのがたのしいの。
ポチッと入力するのが。
ほしいものが完売になってしまっても、
今日は買えなかった! って、それがいいの。
残念だっていうこともふくめてたのしい。
次に気になるものがあったら、
発売日の11時を待って、すぐに頼もう! とか。
伊藤
ありがたいです。
樋口
ほんとう、まさこさんの選び方と、
あとね、丁寧さ。
紹介の仕方が、はやくて、丁寧。
伊藤
はやくて、丁寧。
樋口
丁寧というのは、じぶんでちゃんと企画して、
じぶんで出て、紹介して、品物をつくって、
作り手さんのところもちゃんと取材している。
はやいというのは、
コロナでマスクが必要だとなって、
世の中では売り切れて困っていたとき、
糸井が、まさこさんマスクつくってよ、
って相談したら、
翌日にはもうコンテンツにしていたでしょう?
「ハンカチでつくればいいんじゃない」って。
伊藤
はい、次の日にできました。
樋口
すごくはやかった! 
それから「weeksdays」のコンテンツで、
海外在住のお友達に
リモートでインタビューするシリーズ
伊藤
海外に住んで、
いまどうやって過ごしてるんですか、って。
樋口
あれ、びっくりしたの。
はやいし、その人脈にもびっくりしたのよ。
よく、各地に、ちゃんと!
伊藤
みなとみなとに、いいオンナがいるんです。
樋口
(笑)それがすごいよね。
その人たちと、ちゃんと付き合ってきたのがわかる、
そんな会話になっているのが、とってもよかったの。
あのときに、まさにそれが
みんなの知りたいことだった。
伊藤
なんだか、不安だったんですよね。
だから「みんなどうしているの?」って。
あの取材は、ウェブだからこそ、できることでした。
あと、わたしのお友達の
みなとみなとのいいオンナたちも、
写真を撮るのが上手だったりして。
樋口
そう、その人たちのセンスもいい。
写っているものが、
かわいかったり、きれいだったり、
生活を見ていて、すてきだなって思う。
なぜそんなに、みなとみなとに、いるの?
伊藤
なんでだろう? 
なんでかなぁ。
樋口
人が好き?
伊藤
人、好きです!
好きな人が、好きです。
樋口
ふふふ。
ほんと、すごいね。
はやいしね。
伊藤
たしかに、はやいかもしれません。
でも最近、みんなに任せていますよ。
だからチームとしてのスピードです。
樋口
そりゃあ、ぜんぶを自分ではできないだろうけど、
商品紹介でも、作り手さんの気持ちを、
まさこさんの言葉で、
ちゃんと品物に乗せるでしょう。
だから「はやくて、丁寧」。
伊藤
チームのみんなも妥協しないんですよ。
「ま、これでいいだろう」がない。
立ち上げ当初は
てんやわんやでトラブルもありましたが、
3年目に入って、
だんだん慣れてきたんだと思います。
樋口
そんなになるのね。
伊藤
それでも時々予期せぬトラブルが起きます。
明後日からコンテンツを
始めるはずのアイテムが、
トラブルがあって発売中止が決まったり。
中止は仕方のないことだったんですが、
1週間、すっぽりと穴を空けちゃうことになるのが、
2日前に決まった。
そのとき「おやすみしようかな」という気持ちが
うっすら出たんですよ。
「weeksdays」を始める前、糸井さんから、
「どうしても毎日更新するんだと決めすぎず、
じょうずに休むといいよ」というアドバイスを
いただいたのを思い出したりして。
ところが、みんなにまったく
そんな気持ちがなかった。
樋口
へぇー。
伊藤
「弱りましたねぇ、じゃあ、なにします? 
すぐに準備できることを、考えましょう」みたいな。
そこで、以前紹介して、
いまはトップページから埋もれてしまっているけれど、
まだまだ紹介したいと思うものを掘り起こして、
前面に出し、
「ほぼ日」のみんなのおすすめコメントを集めて、
紹介しなおすコンテンツをつくりました。
そうやって、3年目になりましたが、
慣れてくると、わたし、
新しいことをはじめたくなっちゃうんです。
次は何をしようかな? って。
樋口
尽きないのがすごいのよ。
ほしいものがいつもあるっていうのが。
伊藤
わたし、買い物をしてばっかりです。
樋口
好きなんでしょう、買い物が。
伊藤
大好きです(笑)。
樋口
ほんとに好きで選んでるなって感じが、
伝わるのね。
伊藤
なんでこんなにほしいのがいっぱいあるんだろう。
樋口
そう、それはなに? 
それが訊きたかったの。
なぜ、いつも、そんなに、
ほしいものがちゃんとあるの?
伊藤
なんでかなぁ‥‥? 
じぶんじゃ、わからないんです。
(ここで、カメラの有賀さんから、
撮影位置についての提案があり)
‥‥顔に陽があたっちゃってる? 
ちょっと、ずれましょうか。
樋口
(有賀さんに)
縁側じゃなくてもいいんじゃない(笑)?
すてきな場所、いっぱいあるんだもの。
しゃべってるところでもいいと思うのよ。
伊藤
そうですね。決めすぎなくても。
樋口
ぜーんぜん。
「ほぼ日」だもん。
伊藤
有賀さん、緊張してる? そうだよね。
わたしもですけれど。
樋口
わたしだって緊張するのよ(笑)。
とくに「ほぼ日」だから、緊張する。
だって、みんな、
ブイヨンやブイコの人間のお母さんとしての、
ふだんのわたしを知ってるじゃない? 
逆に、女優としてこういう仕事で出てくると‥‥。
伊藤
そっか、女優の樋口さんに会ったことがないから、
わたしも、緊張しているんですよ。
以前、都内を車で運転しているとき、
樋口さんをお見かけしたのを思い出しました。
お店に入って行かれたところで、
帽子をかぶって、マスクをしてらっしゃったけれど、
なんだかほかと違う人がいる! って。
樋口
(笑)それ、なにか間違ってない? 
違う人なんじゃない? 
伊藤
いえ、あれは樋口さんでした(笑)。
ふふふ。
樋口
緊張していると言うけれど、
いつもたのしそう、まさこさんって。
伊藤
樋口さんもそうですよ。
今日も、別々の部屋でメイクをしていたんですが、
隣から樋口さんのたのしそうな声が。
樋口
あなたもそうだったよ。
どっちの部屋でも、
メイクされてる人がしゃべってるの。
ほんとは、メイクされてる人って、
いちばんしゃべっちゃいけないのよ。
でもね、ふだんは、もっとしゃべるの。
これでも抑えてるの、コロナだから。
ほんとうのことを言うと、もっとしゃべりたい。
出不精なんだけれど。
伊藤
出不精なんですか、樋口さん。
樋口
うん、出不精ですね。
糸井が誘っても、
「それはちょっと」っていうことが多いかな。
出かけても、出かけた先で、
「ごめん、今日はもういいわ」みたいな。
伊藤
人に見られてしまうから? 
樋口
ううん、違う、そういうことじゃないの。
なんだろう、じぶんがね、つらくなる。
伊藤
おうちにいるのは好きですか。
樋口
好きですね。
すごく好きです。
伊藤
お洗濯とかお掃除とか、
樋口さんがされてるでしょ。
樋口
うん。
伊藤
それ、すごくびっくりして。
樋口
だって、誰がするの(笑)。
伊藤
樋口さんのことをよく知らなかった頃は、
お手伝いのかたがいらっしゃるのかなって
思っていたんです。
樋口
お手伝いのかたはいないよ(笑)。
伊藤
「ベットメイキングしておいてね」みたいな?
樋口
いま、そんな人、あんまりいないってば(笑)。
伊藤
それが、わたしの知り合いにいるんです。
「なぜ?」と訊いたら、
夫が毎日シーツは絶対変えてほしいって言うから、
お手伝いのかたにお願いしているって。
樋口
あら‥‥!
伊藤
樋口さんはそういう感じじゃない、と思いつつ、
「女優さん」っていうと、
ひょっとしてそうなのかなって。
樋口
いまの人たちは、自分でやると思う。
伊藤
そっか、そうですよね。
樋口
わたしぐらいの世代からは、
人に頼むと、逆に不自由だと考えていると思うな。
わたしより前の世代の女優さんたちは、
ひょっとしたらお手伝いさんとか、
そういうかたに頼むことがあるのかもしれないけど、
わたしから下の年代の人たちは、
じぶんでやっちゃったほうが自由だと
考えていると思う。
逆に「女優さん」っていう囲いが
不自由だなぁと思い始めた、
そういう世代なんじゃないかな。
そんなの取っ払ったほうが、
いろんなところに行けるし、って。
伊藤
なるほど。
樋口
いつも人が近くにいて、
お世話されるということを、
仕事場ではやってもらうけれど、
わたし生活のところまでお世話されたら不自由だし。
じぶんでやりたいんですよ、きっと。
同年代の人たちを見てきて思うのは、
みんなじぶんで子育てもやっていた。
そのほうが自由だから、なんじゃないのかな。
伊藤
そうですよね。
お話しするようになってから、
樋口さんはそういう樋口さんで、
女優の樋口さんではなかったので、
逆に、今日、
こんなふうにお目にかかるのが初めてで! 
なんだろう、正視できない‥‥。
樋口
それは、メイクのちからです(笑)。
でもね「ほぼ日」の人たちも、
ふだんのわたしへの対応は
難しいんだろうなと思うときもあって。
伊藤
ふーん。そうなのかな? どうですか。
──
女子はみんな
「どんな顔して接すればいいんだろう」って。
樋口
やっぱりそうかぁ、それは感じる。
わたしのうしろに、
なんだか、わからないものがあるんですよ、職業的に。
伊藤
ああ!
樋口
なんとか消せないものかと思うんだけど、
やっぱりそれは無理で、
「ほぼ日」のオフィスにあんまり行かないのも、
みんなが気をつかうだろうなって思うと、
申し訳ないなぁと思うところがあって。
伊藤
でも、お会いできたら、すごくうれしいですよ、
たのしみ展に来てくださったときの、
みんなの喜びよう!
樋口
だから、ひとりで行くの、ぱっと。
友達とも行かない、なるべく。
伊藤
そういうところがいいんです。
じぶんの時間の過ごし方の潔さが、
竹を割ったようで。
樋口
竹ね(笑)。

少しずつ暗くして。

未分類

冬の、
すっかり日が落ちてからの時間が好きです。

部屋の灯りは、最小限。
天井にダウンライトもついていますが、
あまり出番はありません。

暗くないの? 
と聞かれることもありますが、
ぜんぜんへっちゃら。
レストランや店も、
煌々と明るいところより、
薄暗い場所が好き。
包み込まれるようで、
落ち着くのです。

ごはんを食べて、お風呂に入って。
あとはもうベッドに入るだけとなったら、
つけていた照明をひとつ、
またひとつと消していきます。

眠りにつく前は、
こんな風に少しずつ暗くして、
部屋と自分を夜に馴染ませるようにしています。

眠る前の2時間くらいは、
テレビを消して、
パソコンもスマートフォンも
閉じてしまいます。
ついついしていた、
これらの習慣は、
一度やめてみることをおすすめします。
眠りの質がだんぜんよくなるはずだから! 

ひっそり静かな冬の夜、
ハーブティーでも入れて
(私はウィスキーのことの方が多いけれど)
ひとりのんびりしてみませんか? 
たまには、
夜と友だちになるのもいいものです。

(伊藤まさこ)

好きな色。

未分類

クローゼットにかかっている服は、
ネイビーと黒と白がほとんど。
我ながら、好きなものに偏りがあるなぁと
びっくりします。
着ていて落ち着くから、というのが
えらぶ理由のひとつかな。

さて、では部屋はというと、
白をベースに、グレーからブルーにかけての
「何色」とは一言で言い表せない、
微妙な色合いが多いことに気がつきました。

ハタと自分の手元を見てみると、
指に塗ったネイルもそんな色。


▲色合いが気に入って買ったソファはデンマークのもの。
その上に置いたピカソ柄のクッションは、
パリで見つけました。

ネイビーや黒が着ていると落ち着くように、
薄いブルーやグレーに囲まれていると、
どうやら落ち着くみたい。

どこを旅しても、
結局は「家が一番」と思う理由は、
色にも関係するのかもしれません。


▲20年ほど使っている気に入り。
和、洋、中、
意外なほどいろんな料理にしっくり合うんです。

このプレートとカップは、
イタリア人の陶芸家によるもの。
母が旅先で買ってきてくれたものですが、
あら、これもブルーグレー! 
私が好きだからえらんでくれたの? と聞いたところ、
「忘れちゃったわ」との返事。

何も考えていないように見えて、
でも意思がはっきりありそうで。
なんとも言えない表情が気に入って買った、
陶器のオブジェ。
この人も顔以外は、薄い水色でした。

友人は、自分のテーマカラーを黄色と決めていて、
自身のショップカードや、
ここぞという時の服は必ず黄色。
今では、
黄色を見ると彼女を思い出すくらい
印象づけられていますが、
そういう色がひとつあるのも
いいものだなぁなんて思います。

もしかしたら、
器をえらんでくれた母も、
潜在的に私の色と思ってくれていたのかしら?

(伊藤まさこ)

額装のすすめ。

未分類

美術館のショップやギャラリー、
古書店で、
なんとなく買い集めていた
リトグラフや絵。

気に入っているけれど、
もともとついていた額が
部屋に合わなかったり、
額装されていないのもあって、
どうしたものかと思っていました。

その都度、額装をしておけば
こんなにももて余さなかったのになぁ‥‥
とは思うけれど、
なんとなく日々の忙しさにかまけて、
先延ばしにしていたのです。

そうだ、こんな時こそ、
額装をお願いしに行こう! 
と思いたったのは、
ステイホーム中のある日のこと。

縁は木で統一し、
絵とマットのバランスを考えて‥‥。
オーダーしてから、
3週間ほどでできあがると聞き、
その日をたのしみに待ちました。

さて、
仕上がった額の一部がこちら。


▲古書店で手に入れたマチスの画集の1ページ。


▲50年くらい前の日本の型染め作家の作品。
雪のようなモチーフが今の季節にぴったり。


▲もともとついていた白いフレームを木に。
動物柄がたのしげな猪熊弦一郎の版画は玄関に飾ることに。

うれしくなって、
全部かけたくなってしまうけれど、
それは欲張りすぎというもの。
季節や天気、
その時の自分の気分に合わせて、
1枚1枚、ぴったりなものを飾りたいな、
と思っています。

そこに絵があるだけで、
部屋の景色はずいぶん変わるものだから。

(伊藤まさこ)

フックをつける。

未分類

今の家に越してすぐ、
バスルームの壁に、
フックをみっつつけました。

じつは、
そこにはタオルハンガーが取りつけてあったのですが、
存在感がありすぎて、
どうも気持ちにしっくりこなかったのです。

タオルハンガー、
いいのないかな? 

いろいろ探しましたが、
素材はいいけれど、サイズが合わない。
サイズは合うけれど、素材がいまいち‥‥
と、どれも帯に短し襷に長し。
そこでフックに白羽の矢を立てた(大げさ?)
というわけです。

フックにしたことで、
見た目はすっきり、
ドライヤーを入れた巾着袋をかけることだってできる。
これってなかなかいいじゃない? 

それに気をよくした私は、
今年の初秋、
ベッドルームの改装をした時に、
ベッドルームと、
台所にそれぞれ3つずつ、
フックを取りつけることにしました。

ベッドルームにはバッグや服を、
台所には掃除道具をかけて。

これが一目瞭然でなかなかいい。
空いている壁って、
収納の有効利用になるのだなぁと、
しみじみしたのでした。

我が家は、
部屋のドアはどこも開けっ放しなことが
多いのですが、
普段見えていないドアの裏側にも、
フックを取りつけたらどうだろう?
今は、そんなことを考えています。

家のことをあれこれ考えるのは、
たのしいものですね。

(伊藤まさこ)

見せたくないもの。

未分類

家の改装をしていると、
ハタと気づくことがあります。
それは、
ドアノブや扉の取っ手、
コンセントカバーなどのこまごましたパーツが、
気軽に見つけられないということ。

ドアノブと取っ手は、
真鍮の古いものを見つけてやれやれ。
今の懸念事項は、
コンセントカバーをどうするかということ。

間に合わせでは買いたくないなぁと思いつつ、
今の家に越して早2年。
気になるものは、ひとまず隠すことにしています。

リビングの窓辺に取りつけた
ライトのコンセントは、
本を置いて目隠し。
これだけですっきり見えるものです。

その他、コンセントの差し込み口の前に、
絵を置いたり大きなかごを置いたり。
コンセントって、
必要ではあるけれど、
なにも家の中にこんなにいらないんじゃないか? 
とも思う。
いつか一から家を作る機会があったら、
この問題は、
家の間取りや、
壁の質感を決めるくらいの重要案件です。

さて、
それ以外に気になるものといえば、コードの類。

ダイニングに置いた丸い木のボックスは、
背面に穴を開けて、中にWi-Fiルーターを入れました。
(穴にコードをさして、
後ろのコンセントにつなげています。)
時々使う延長コードもこの中に。

古いかごの中には、
パソコンのコードやスマートフォンの充電器を
入れています。

電気関係のものは、
必需品ではあるのだけれど、
それが目に見えるところにあると、
どうにも落ち着かない。

それらを隠してくれる、
かごや木のボックスには、
日々、本当にお世話になっているのです。

みんなはこの問題、
どうしているのかな。
こんなに気にするのは私だけなのかしら?

(伊藤まさこ)

木にもうるおいを。

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乾燥が気になる冬。
顔の保湿はもちろん、
朝晩、全身にボディクリームを塗って、
せっせとケアをしています。

すると目につくのが、
椅子やテーブルなどの木製品の乾き。

ちょっと放っておいたら、
あら大変。
自分にばっかりかまけてごめんね、
と思わずにはいられないほど、
カサカサになっているではありませんか! 

古びたシーツをジョキジョキ切って作ったウェスと、
オイルを出して、いざオイル塗り開始。


▲私が使っているのは、
ドイツ製のケンドリンガーの、
木製品用ポリッシュとワックス。
ラベルのデザインとナチュラルな香りが気に入り。

まずはダイニングから。
テーブル、椅子、木の箱‥‥。
見回してみると意外にあるんです。
木のものがいろいろと。


▲缶の中は、こんなかんじのクラシックなワックス。
フローリングの艶出しにもいいそう。

うれしいことに、
肌の手入れと一緒で、
手をかけた分だけ、きれいになる。
きれいになると、張り合いが出る。

ダイニングのあとは、
リビング、ベッドルーム‥‥と進んで、
気がつけば家中の家具がピカピカ。
一心不乱で作業に集中するから、
気分転換にもなって一石二鳥です。

窓を開けて、半日ほど風通しのよい場所に置いたら、
定位置へ。
今日からまたどうぞよろしくね。

(伊藤まさこ)

テーブルの上には。

未分類

数日、忙しくしていたら、
ふだん何も置かないぞと
心に決めているテーブルの上が、
読みかけの本や、
レシート、郵便物などでいっぱい。
あっという間に雑然としてしまいました。

レシートは箱にしまう。
郵便物はいるものといらないものに仕分けして、
いらないものはゴミ箱へ。
パソコンは1日の終わりに閉じて棚にしまう。

時間に余裕のある時だったら、
すんなりとできるそれらのことが、
なかなかできない。
その雑然とした光景を横目に見ながら、
数日間過ごした時の、
居心地の悪さといったら!

時間に余裕を持つことは、
心のゆとりにも関係してくるものなのだということを
痛感したできごとでした。

ふだん何かと忙しい12月。
今年は、
「予定を詰め込み過ぎない」と心に決めて、
家にいる時間を増やしました。

時間に余裕のある今、
テーブルの上はすっきり、さっぱり。
この光景を見ては、
同じことは繰り返さないぞ、と肝に銘じています。

レシートや領収証、
ポストカードや切手、
麻ヒモやリボンなどは、
それぞれ仕分けして、
このグレーの箱に入れています。

「コシャー箱」と呼ばれるこの箱は、
フランスの公的機関や公立の図書館で、
公文書を保管するために使われているものとか。

シックで美しく、
さらには用途もすぐれた箱を見るたび、
「さすがフランス」と思わずにはいられません。

箱が重なった姿も、きれいでしょう?

(伊藤まさこ)

寝室の改装、その2。

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ペンキがすっかり乾いたら、
ベッドや椅子を置いて部屋作り。
待ちに待った瞬間です。

壁ができた分、
眠る場所はせまくなったけれど、
気になる箇所がなくなったからか、
かえって広くなった感じ。

「あの棚がなくなるだけで、
ずいぶん部屋の印象って変わるんだね」
とは娘の感想。

棚の中に、
ものがたくさん入っていたからというのもあるけれど、
白と木の色だけになった今は、
すっきりしていて気分がいい。
目覚めもいいし、
寝つきもいい。
もっと早く改装すればよかった! 

壁の奥には、
ラックをふたつ置いて服をかけています。

ふだん、部屋の入り口からは、
その様子はほとんど見えないのですが、
ちょっとのぞき込むと、
奥のラックにかけた服がちらりと見える。

いろんな色の服が見えると、
煩雑な印象になるから、
見える側には、
白いシャツをかけることにしました。

そういえば、と思い出したのが、
積み重ねた雑誌や本の一番上に、
気に入った装丁の本を置く、
という人生の大先輩のお話。
「そうするだけで、すっきりきれいに見えるでしょ」
と涼しい顔でおっしゃっていましたが、
なるほど! 

ほんの少しの工夫で家はもっと過ごしやすくなる。
ほかの誰のためでもなく、
自分のためにする、
「小さな工夫」、
まだまだありそうだなぁ。

(伊藤まさこ)

寝室の改装、その1。

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我が家はリビングとダイニングのほかに、
ふたつのベッドルームがあります。

私のベッドルームは東向きで、
朝は燦々と日が差し込む、
光の具合でいうとなかなか感じのいい部屋。

‥‥なのですが、
3方の壁(部屋は不思議な形をしています)に、
以前住んでいた人が作った棚があって、
それがどうにも気持ちにしっくりこない。
棚のせいで圧迫感があるし、
A4サイズがぎりぎり入らないという
微妙なサイズ感が
ずっと気になっていたのでした。

「改装しよう」

そう思い立ったのは、
秋の晴れた日のこと。

思い立ったが吉日です。
すぐにいつも改装をお願いしている友人に相談し、
棚を取り、
壁を白いペンキで塗ることにしました。


▲このさい思い切って片づけ。
中に入っていた本は、友人知人の元へ。

そこでぜひともしたかったのが、
部屋に目隠しになる仕切りの壁を作ること。
クローゼットにぎゅうぎゅうに入っていた服を、
その壁の奥に持っていき、
見通しよくしたかったのでした。


▲本棚が取り払われ、壁ができた状態。
右側はこの奥に1.5畳ほどのスペースがあります。
パテ埋めして、乾いたらペンキ塗りの工程へ。

壁に使ったペンキは、
ほかのどこにもない、微妙なニュアンスをもつ
イギリスF&B社(FARROW&BALL)のもの。

色は白。
そう、決めていましたが、
このF&Bのペンキ、
白にもグレーがかったものや、
きなり色に近いものなど、
たくさんある。
うーむ、どうしようかなぁとしばし迷って、
No.59のNEW WHITEという、
あたたかみのある白にしました。

このNEW WHITE、
いざ塗ってみると、とってもいい!
朝は、光をやさしく取り込み、
夜はライトの明かりをおだやかに包み込む。

1日のはじまりと終わりを過ごす部屋に、
ぴったりなのでした。

さて、できあがった部屋の様子はまた明日。

(伊藤まさこ)

トイレットペーパー問題。

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欲しいものってなかなかないよね? 
そういう時は、どうしたらいいんだろ。

そんなことを、
かつてweeksdaysのコンテンツで
鼎談したことがありました

私がずっと抱えていたのは、
「トイレットペーパーの包装、
もっとすてきにならない?」
という問題。

買って帰る時、
どこかしらかっこ悪さがつきまとう、
この問題は、
ずっと悩みのタネだったのでした。

ある日、
「この手があったのか!」
と膝を打ったのが、
友人のインスタのポスト

「プラフリー目指して、
トイレットペーパーを見直しました。
箱入り、芯なし、プラフリー、
再生紙のトイレットペーパー」

そうか、これなら持ち歩かないでもいいではないか。
大量なので、
置き場所の問題はあるけれど、
まあそれはどうにかなるさ、と
販売元である春日製紙工業のウェブサイト
さっそく買ってみたのでした。


▲段ボールから出して、9個ずつに小分け。

使い始めて1ヶ月あまり。
芯が出ないので取り替えもらくちんだし、
48ロールあるから
「ああ、もうなくなっちゃうから買いに行かないと!」
と焦ることもない。
何より、あの持ち歩く時の
居心地の悪さがなくなったのが、
うれしいではありませんか。


▲紙袋に分けたら、上部はテープで留めます。

さらにうれしいのは、
1ロール、170メートルあるので、
取り替える回数が減ったこと。

トイレットペーパーに関する、
あらゆるストレスが一気に解消されて、
めでたしめでたし、となりました。

(伊藤まさこ)

台所には何も置かない。

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「うちでごはんでもどう?」
なんて、友だちに誘われても、
席に座って、じーっと出てくる料理を待つ、
ということはあまりなくて、
お手伝いをすることがほとんど。

一緒になって料理をすると、
だんだんと、
その人の台所の流儀というか、
作法がわかるとでもいったらいいのかな。
果ては、食べものとの向き合い方まで
垣間見ることができて、
なかなかに興味深いのです。

料理上手な友人は、
掃除や整理整頓もさすがに上手。
感心することも多くって、
いうならば我が家の台所は、
そんな友人たちのお手本の結集という感じ。

先日、いつもお世話になっている、
年上の友人夫婦の台所で
洗いものの手伝いをした時のこと。
食器の水切りかごがないことに気づきました。

食洗機も使わないというし、
どうしているのか尋ねたところ、
水切りマットを使っているとのこと。

「場所をとらないから広々使えていいわよ」
と聞き、なるほど!

洗った器は、洗い上げたままにせず、すぐに拭き、
マットもすぐに乾すのだとか。
わー、これだったらじめっとせずに済む。
気持ちいいではありませんか! 

思い立ったが吉日とばかりに、
帰ってすぐに買ったのが、
このグレーのマット。


▲水切りかごにする前は、
玉ねぎやじゃがいもなどの
根菜入れとして使っていました。

それと同時に、水切りかごを廃止して、
食洗機に入る小さなかごを
流しの中に置くことにしました。
水切りかごの間にたまる水垢が
気になってしょうがなかったのですが、
これでそのモヤモヤも解消です。


▲置いているのは、リネンのキッチンクロスだけ。

このさいだからと、
壁面のタイルに取り付けていた、
ステンレスのナイフラックもやめて、
流しの下の扉にナイフホルダーを取りつけ、
ガス台まわりに出していた塩や木ベラ、
菜箸、やかんも引き出しにしまいました。

我が家を初めて訪ねてきた人から、
「ほんとにここで料理をしているんですか?」
と不思議がられるほど、
なーんにもない台所になりましたが、
これが本当に気持ちいい。

食事の後片づけが終わったら、
作業台と壁、シンクの中など、
拭けるところはすべて拭き、
これで台所仕事は終了。

どこをさわっても、
さらっとした清々しい台所になりました。

(伊藤まさこ)

冷蔵庫の中は?

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娘が小さかった頃や、
お弁当作りをしていた時は、
時間のある時に、ひじきの煮物やおひたし、
和えものなどを作りおきしていたものでした。

毎回、いちから作るほど、
時間にも、
心にも余裕がなかったのです。

ああ、冷蔵庫の中の景色が変わったな。
そう感じたのは娘が20歳を過ぎた頃。

おたがい、それぞれのペースができてきて、
毎度のごはんを家で食べることが
ずいぶん減ったことがきっかけです。

食材の買いおきも作りおきをすることも
すっかり減って、
今では、ほらごらんの通り、
すっきりさっぱり。


▲一目で何がどこにあるか分かるのが理想。

下段には、
ゆで鶏を作った時にあまったスープを入れた鍋と、
ラーパーツァイ(多めに作った方がおいしいものは
作りおきしています)を入れた保存容器と卵。

野菜室にはレタス半分、
かぶ3個、長ネギ1本、玉ネギが2個、
じゃがいもひとつ、しょうがひとかけら。

扉のポケットに入れるものもごくわずか。
上段は五穀米や押し麦。
2段目は味噌と梅干しと漬けもの。
下段は豆乳と料理に使う日本酒など。

買いおきがないと、
不便なこともありますが、
そこは冷凍庫に入っている食材や
乾物を駆使して乗り切る。
おかげで食材をむだにすることは
すっかりなくなりました。

今日は、鶏のスープを使ったレタスのスープ煮と、
冷凍庫の五穀米とじゃこを使った
チャーハン(卵も入れます)に、
ラーパーツァイを添えて、晩ごはんに。
おかげで、野菜室以外の食材が
すっかり無くなってさらにすっきり。

ところで、よく聞かれるのが、
「冷蔵庫のポケットは
どうしてごちゃごちゃしていないの?」という質問。
これらはすべてワインセラーに入れています。
豆板醤、カレー粉、グリーンカレーペースト、
粒マスタード、スパイス‥‥と、
いろいろなものが入っていますが、
こちらも冷蔵庫同様、時々目を光らせて、
むだを出さないようにしています。

冷蔵庫の中を拭いたら、
外側も拭いて、さっぱり。

さぁ、明日は買いものに行かないとね。

(伊藤まさこ)

朝の習慣。

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窓を開け、やかんに火をかける。

もう何年も続いている朝の習慣に、
この夏から床の拭き掃除と
ストレッチがくわわりました。

きっかけは、ステイホーム。
旅に出ることもなく、
出かけることもほとんどなくなった毎日。
パソコンを通じて打ち合わせをしたり、
原稿書きなどの仕事はしているものの、
とりとめもなく時間が過ぎていき、
あっという間に1日が終わってしまう。
これではまずいぞ、
意識的にメリハリをつけないと。
‥‥そう思い立ってのことでした。

どうせはじめるのならよい道具があった方がいい。
まずは、スウェーデン製のモップを買いました。
形から入るのはいつものことです。

じつはモップにはどうもよい印象がなかった私。
だって、あのもさもさした部分がしだいに薄汚れて
見た目に美しくないし、
しぼるのにも一苦労でしょう? 

でも、このモップは一味違う。
マイクロファイバーという繊維が
よごれをすっきり拭き取ってくれて、
しぼるのも簡単。
おまけにすぐに乾くのです。

まずとりかかるのはリビング。
はしっこから始めていき、
椅子やソファを少しずつずらしながら、
全体を拭き掃除。



▲扉の奥もキュッキュと水拭き。

その後、
ダイニング、台所、洗面所、
ベッドルーム、廊下という順に、
進めていくのですが、
拭き掃除が終わったところから、
気がよくなっている‥‥ような気がする。


▲拭き掃除は「廊下に朝日が差し込んでいる間に
終わらせる」が自分の中の決まり。

水拭きをしたところが、
ただ「きれいになる」のではなく、
そのまわり、
やがては部屋全体が気持ちのいい空気になって、
その日1日、気分がいいのです。

さて、そのすがすがしくなった部屋に、
マットとポールを持ち出して、
いざストレッチ。

ハードな運動は性に合わないし、
続かないだろうから、
肩甲骨を伸ばし股関節をまわす、
というらくちんなものが中心だけれど、
するとしないのとでは大違い。
家のメンテナンスだけでなく、
自分のメンテナンスもしてあげないとね、
なんて思う今日この頃なのです。

拭き掃除とストレッチをしはじめて、
掃除機をかける回数が減り、
肩が凝るから‥‥と
整体に駆け込むこともなくなりました。
「まさこ百景」に、
「Clean up⤴︎ではなくKeep→です」
という項目を作りましたが、
掃除もストレッチもまさにそれ。
何か起こってからではなく、
つねに「いい状態」をキープしていたいものだなぁ、
と思っているのです。

(伊藤まさこ)

あたらしいこと。

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12月もあっという間に半ばをすぎて、
今年も残りわずかになりました。

旅に出ることも、
友だちと会うことも、
ほとんどなかったと言っていいくらい、
ひっそりと過ごした1年でしたが、
だからといって、
物足りなさや寂しさを感じることは
不思議なくらいありませんでした。

ベランダに、
鳥がよく遊びに来ること。

家の中に差し込む光が、
1日のうちで、いろいろな表情を見せること。

歩ける範囲に、
気になる小径や、
おいしい店、
見晴らしのいい公園があること。

家にいる時間が長かった分、
今まで気がつかなかったいろいろなことに、
気づけたのが一番の収穫。

外に向かずとも、
身近なところに、
たのしいことや、新鮮な発見はあるものだなぁ。

そうそう、
夏には「まさこ百景」の展示もありました。
これは私にとって、
今年一番の大仕事。

今までしてきた仕事や暮らしを、
見返すことができて、
とてもよかった。
会場に足を運んでくださったお客様と
お話しできたことも、
励みになりました。
ありがとうございました。

今日から大晦日までの2週間は、
「まさこ百景」で紹介しきれなかった、
つづきの「まさこ百景」。

ふだんしていることにくわえ、
新しくできた習慣や、
部屋の模様替えなどを、
文と写真で綴ります。

「まさこ百景」の展示の時に作った、
weeksdaysオリジナルの、
かわいいエコバッグの販売もありますよ。
どうぞおたのしみに。

100点のドローイング。

未分類

伊藤
創形で版画を学んで、パリに行くまでの間は、
どんなふうに過ごされていたんですか。
まさか会社勤めをしていたということは‥‥。
松林
ないです。
卒業後は、高知に帰らず、
東京でしばらくアルバイトをしながら
絵を描いていました。
高知に帰ったのは30歳になる直前ぐらい。
伊藤
アルバイトは、どういうことを?
松林
一番稼いでいたのが、
モザイクで壁画をつくる会社の仕事です。
壁画の仕事と、パチンコ屋さんの
内装のカッティングシートを貼る仕事。
どちらにせよ現場が多かったです。
そんな美術に関係するアルバイトを
情報誌で探しては、行ってました。
なぜそういうことをしていたかというと、
ぼくはアルバイトでお金を貯めて、
外国に行くつもりでいたんです。
スペインに行って絵を描こうかなと思っていた。
でも、東京でアルバイトをしているうちに、
そういう生活に疲れてきたりして、
高知に帰ってみよう、って。
ネガティブな時期だったと思いますが、
それでも、やっぱり絵で食べていきたかった。
それで『イラストレーション』っていう雑誌の
公募にずっと出していたんです。
そこで最終的に大賞をもらって、
イラストの仕事が来るようになりました。
伊藤
じゃあ、30代はイラストの仕事を、
フリーランスで。
松林
そうですね。
伊藤
そこから、アートへと進まれたわけですけれど、
「よしっ!」という手応えがあったのは、
いつ頃のことでしたか。
松林
やっぱり一番大きいのは
セブンデイズホテルの川上絹子さんとの出会いです。
たまたま展覧会を見に来てくださって、
ぼくの絵を気に入ってくれた。
川上さんがいまの本館をつくられた頃かな。
ぼくは、高知からパリに行く直前で、
1年間滞在するのに経済的な不安があったんです。
留学が決まったけど、貯金もあんまりなくて、
ふたりで行くことを決めたものの、
どうしようかなって思っていた。
そうしたら川上さんとたまたま知り合って、
うちに来て、絵をドーンと買ってくださったんです。
伊藤
川上さん、絵を買うときはインスピレーションだと
おっしゃってました。まさしく!
松林
それが、のちに、セブンデイズホテルプラスの
客室の版画や、ロビーの絵につながっていくんです。
パリ滞在中は、日本の料理の月刊専門誌の
表紙の仕事も来て、
贅沢をしなければじゅうぶん過ごすことができました。
1年して、高知に帰ってきたら、
川上さんから、もうひとつホテルをつくるからと、
部屋に飾る版画を依頼してくださった。
伊藤
すごーい!
松林
そして、その絵をもとに
『Room』っていう本をつくってくださって、
その本がいろいろな人のところに渡ったんです。
たとえば皆川明さんから電話かかってきて、
白金のミナ・ペルホネンで個展を開く機会をいただいたり。
伊藤
やっぱり、人とのつながりが、
人をいかしていくんですね。
松林
そうかもしれませんね。
ところで、伊藤さん、
100枚を描いているなかで気がついたんですけど、
最初に出していただいた絵のための言葉のなかに、
かぶっているのがありました。
それゆえ、同じ言葉で2つの絵があるんです。
そういうものは、逆に、
ぼくの絵を見て別の言葉をつけてほしいと思って。
伊藤
えっ、えっ。
何回も見ても間違うんです。
なんでだろ。なぜ? 
松林
ひらがなとカタカナで同じ言葉があったり。
伊藤
そういう気分だったのかなぁ。
松林
あの言葉はタイトルとして
最後まで残るんですか?
伊藤
どうしよう? どうかな。
──
絵を選ぶときに、
ことばがあると、わかりやすいですよ。
その過程もふくめて、この絵だと思うので、
残していただけたら嬉しいです。
松林
そうですよね。
「1」「2」みたいな数字より、
いいかもしれません。
伊藤
わかりました。じゃあ、
かぶっている言葉は、その絵を見て、
あたらしい言葉をつけますね。
今回、額を、松林さんが用意してくださって、
絵をひとつひとつセットしてくださることになって。
これがサンプル? いいですね、
ちょっと絵が浮いてる!
松林
下に、スチロールみたいな素材をかませて、
ちょこんとまるめたテープで
絵を台紙にとめています。
だからちょっと浮いたようになるんです。
伊藤
絵を描かれた紙の縁が、機械的に切った
鋭利な線ではないのがいいですね。
松林
ぼくが手でカットしました。
定規をあてて、シャッて裂くみたいにして。
伊藤
なるほど! 
並べてみましょうか。
どの絵も、とってもかわいいです‥‥。
そっか、わたしの思いつきの言葉が、
こんなふうに絵になるんですね。
しみじみ。
あれ? 紙はどれも同じじゃ‥‥ない?
松林
はい、いろんな紙があります。
洋紙に描いたものもあるし、
和紙に描いたりもしていますよ。
とくに説明はしませんけれど。
伊藤
そうなんですね。
ああ、やっぱり、
1点ずつ描いていただいて、よかった! 
こういうものを買うのって、
なんていうのかな、
“人に自慢できるものにお金をかける”
こととは違うでしょう。
アクセサリーやファッションには、
そういう部分があるような気がするんですけれど、
今年、コロナ禍で、
消費に対するみんなの考え方が、
ちょっと変化したように思うんです。
そのひとつが、家の中に目を向けようということ。
そして、好きな絵を1枚買ったら、
周りのことを考えると思うんですよ。
ここを片付けようとか、
この光をどうコントロールしよう、とか。
そういうきっかけになってくれたらいいな。
松林
ほんと、そうなってくれたら、いいですね。
そして、ぼくの絵でみなさんが
元気になってもらえたら嬉しいです。
伊藤
松林さん、ありがとうございました。
松林
こちらこそありがとうございました。
楽しい時間でした。

スケッチブックとパリ。

未分類

伊藤
自粛中の、高知での暮らしはいかがでしたか? 
ものづくりをされている方って、
ふだんとあんまり変わらなかったよ、
とおっしゃるんです。
松林
そう、ほんとに変わらなかったです。
絵を描いて、ごはんを食べて、って、
いつもどおりの生活をしていました。
ただ、展覧会の機会が減りましたし、
あっても、自分が行くわけにいかなかったのが残念です。
8月に台湾で個展があって、
行く気満々で楽しみにしていたのだけれど‥‥。
伊藤
台湾の「小器(しょうき)」ですね。
松林
はい。でも、100号‥‥つまり、
160センチ×130センチくらいの
大きい絵が売れました! 
外国の人にもわかってもらえてうれしかったな。
伊藤
日々、絵を描いている松林さんは、
そういった個展を開くとき、
やっぱり特別なモードになるんでしょうか。
どうやって気持ちを持っていくんだろう。
気持ちと準備。
松林
やっぱり展覧会の日程が決まると、
それに向けて作品を描いたり、
テーマに沿っていままで描いた絵を集めたりしますよ。
伊藤
おうちにお伺いしたとき、
日々描かれているという
スケッチブックを拝見しました。
すごい! って思いました。
アイデアが、あふれ出すのを、
どうにか記しておこうというような。
あれは「作品」というよりも‥‥。
松林
そう、日記みたいなものですね。
あとで、そのスケッチブックを見ながら
絵の構成を決めたりもします。
だから、あのスケッチブックは、
とくに個展などで
お見せするようなものではないんですよ。
伊藤
松林さんの頭の中みたいなことですね。
松林
そうですね。
伊藤
奥さまが、教職で美術を教えていると
おききしましたが、
創作について、相談はなさるんでしょうか。
松林
展覧会に関しては、すごく相談をします。
会場構成をどうしようか、というようなことですね。
でも、絵を描くときは、ひとりです。
ずっと描いてる。
伊藤
ほんとうの意味で「ずっと」?
松林
はい、ずっとです。
妻にもそう思われているんじゃないかな。
伊藤
ずっと! ちなみに、どういう子ども時代でしたか。
やっぱり、ずっと描いていたんでしょうか。
松林
そうですね。漫画がすごく好きで、
絵というより落書きみたいなものですが、
それで教科書が鉛筆で描いた絵で
ほんとに真っ黒になっていました。
伊藤
子どものことからずっと、なんですね。
『考える人』や『芸術新潮』の編集長を歴任なさって、
いまは「ほぼ日の學校」の校長の
河野通和さんという方がいらっしゃるんですが、
本を読むのは、
朝、深呼吸をするのと同じだとおっしゃっていて。
でも読書については、
自分がしていることの延長として想像できるんですが、
そんなふうにずっと描くのって、
いったいどういう感じなんだろう? 
人に見せるためじゃない絵もあるわけですよね。
松林さんには「あのとき、こうだったから、
いま、こうなったんだな」みたいなことってありますか。
いまにいたる流れというか‥‥。
松林
うーん?
伊藤
松林さん、パリに行かれた時期もありましたよね。
松林
はい、2000年、1年間まるまるパリに行きました。
シテ・デザール(Cité internationale des arts)
っていう、アーティスト・イン・レジデンスが、
マレの近くとモンマルトルにあるんです。
そこでは写真をやったりダンスや音楽をやったり、
いろんなアーティストが暮らしながら
制作しているんですよ。
そういうところにぼくが版画を学んだ
創形美術学校という専門学校が
部屋を持っていたんです。
そこの卒業生が面接を受けて、
合格すると1年間滞在できる。
その時、ぼくは40歳を前にしていて、
「そろそろ行かなくちゃ」って決意したんですが、
でも、まわりからは、なぜパリ? って言われたかな。
当時はアートならニューヨーク、ロンドンだったから、
ファッションならともかく、絵を描くのにパリって? 
って言われました。
伊藤
そうだったんですね。でも憧れます! 
その時代にパリで1年過ごしたのは、
きっと楽しかったでしょう? 
松林
4区で、シテ島のすぐ北側で、
最寄り駅は7号線の
ポン・マリー(Pont Marie)でした。
マレの繁華街が近かったから、よく飲みに行き、
‥‥そうそう、夜のルーブル美術館が開いている日は、
夕食後の散歩をかねて館内をぶらぶらする
“ルーブラ”、最高でした。
伊藤
1年まるごと、っていいですね。
四季をひと通り経験できて、
季節のあいだもあるし。
しかも、その場所だったら、
ちょっと歩けば美術館がいくらでもある!
写真美術館(Maison Européenne de la Photographie)も、
ピカソ美術館(Musée Picasso Paris)も。
松林
そう! ちょうどポンピドーセンター
(Centre Pompidou)が休館から開け、
久しぶりにリニューアルオープンした年で、
すごくよかった。
伊藤
人形博物館(Musée de la Poupée)もありますね。
それこそポンピドーの裏のあたりに。
松林
うんうん、ジュモーのハガキを買ったとこだ。
伊藤
うわー。そのシテ・デザールでは
なにか課題があるんですか?
松林
なにもないんです。
ただ、シテ・デザールの建物と別に
版画の工房があって、
そこに毎日通って版画をつくったりしていました。
一応向こうで最後に個展をしてきました。

言葉をヒントに。

未分類

松林
最初、話をいただいたとき、
100枚という数をつくるには版画がいいのかなって
ぼくは思っていたんですよ。
それで「版画にしましょう」って提案して。
セブンデイズホテルプラスの部屋の作品は、
80点を全部版画でつくっているんですけれど、
あれも正方形なんですね。
版画の方が自分らしさや、作品のクオリティ、
ほかとは違う質感なんかが表現できるという思いが
すごくあって、できたら版画で
やってみたいなって思っていたんです。
エディションと言うんですが、
同じ絵柄で、複数枚をつくるやりかたですね。
10枚ずつ10の版画がある、というような。
伊藤
でもわたしが
「いや、1枚ずつ描いてください!」
と言い張った。
松林さんの版画はとても素敵で、
わたしも大好きなんですけれど、
今回は「自分だけのもの」がいいなって。
わたしはわたしで、
松林さんから個展の案内のDMをいただくと、
松林さんがちょっと言葉を添えてくださるのが
とっても好きで。
だから、そんな気持ちで、
100枚、つくってくださったらなあって、
なかなか、譲らなかった(笑)。
いっそ「言葉」を描くとか、
「言葉を絵にする」というようなことも、
いいのかも? って。
松林
そんなふうに、ぼくの文字を
伊藤さんが好きでいてくださっているのは
とっても嬉しかったんですけれど、
ぼくは詩人じゃないから、
言葉を生むことができないなあと。
伊藤さんが言葉をくださったら、
それを絵にしましょうか、って。
言葉からヒントをもらった絵を描こう、
ということになりましたね。
あるいは僕が自由に描いた絵を見て、
伊藤さんがなにか言葉をつけるとか。
伊藤
そのやりとりがあって、
結局言葉が先がいいっていうことになりましたね。
松林
そんなやりとりを、何度も、メールでして、
伊藤さんに「言葉をください」って言ったんです。
伊藤
わたしが?! と、びっくり。
でも、わたしも詩人ではないのだから、
考えすぎないようにして、
オノマトペ的な言葉にしました。
「フルフル」とか、
そういう言葉ですね。
意味があるような、ないような、そんな言葉です。
歩いていて、思いつくと、
iPhoneのメモに書いて、それを送って。
これは「weeksdays」のチームのみんなにも
ナイショにして、松林さんとだけ、直接、
やりとりをしていたんです。
松林
そうだったですか? 
じゃあ、みんな、今日が初見?
伊藤
そうなんですよ。
そのほうが、面白いかなって。
そうして言葉が決まって、
描くのにどのくらい時間が
かかるんだろうと思っていたら。
松林さん、描き始めたら、
一気に集中なさって。
松林
描き始めたら結構描けました。
大きさも正方形って決めていたから、
すごく描きやすかったですよ。
伊藤
最初は、松林さんの提案は、
色をピンク系で統一して、
強い印象の絵にしたいということでした。
それはとても素敵な絵だったんですけれど、
全部をそうするのはどうなんだろう、って。
結局、ピンクを筆頭に、
いろいろなものを混ぜていただきましたが、
なぜピンクを使いたいという気持ちになったんでしょう?
松林
やっぱりコロナでちょっと暗い気持ちというか、
家に閉じ込められることが続きましたから、
明るいピンクで、
ワーッ! ていう気持ちになれたら楽しいかなって。
伊藤
たしかに、その考え、いいですね。
松林
それで、最初は、
ピンクの絵をたくさん描いたんです。
それで一度見ていただいて、
ピンクだけじゃなく、
例えばベージュだとか白、
グレーや黒などを入れたらどうですか、
っておっしゃって。
結果的に、とてもバランスのいい感じに、
色味がふえました。
伊藤
はじめてアートを買うとしたら、
ピンクだけが並んでいるなかから選ぶのは、
ハードルが高いかな? 
っていう気持ちもちょっとあったんです。
ちっちゃいから大丈夫かなぁ? とも思いつつ。
松林
横で見ていた妻が言うには、
ぼくがピンクの絵を元気そうに描いてるのを見て、
なんだか力が湧くって。
販売は冬になるから、
こういう元気なピンクもいいねと、
そんなふうに話していたんです。
伊藤
松林さんのピンクの小さな絵だったら、
壁に複数、ずらりと並べてもかわいいでしょうね。
ただ、今回は、抽選での販売なので、
なかなかそういうそろえ方が
できないと思うんです。
そのお気持ちはとってもよくわかりますが、
やっぱり今回は「はじめてのアート」で、
いろいろなタイプがあっていいなと。
わがままを言ってすみません。
それに、そもそも松林さんは
気持ちが沈む絵を描く人じゃないから、
絶対大丈夫だと思っていました。

松林誠さんの100枚の絵

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ちっちゃな絵がほしい。

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伊藤
松林さん、こんにちは。
ちょうど東京にいらっしゃるお仕事がある、
というタイミングで、
こうしてお目にかかれてとても嬉しいです。
松林さんの高知のおうちにも、
以前お伺いさせていただきましたね。
あのおうち、
光の入り方がちょうどいい感じでした。
松林
そうですね。古い日本家屋なので、
あんまり日が入ってこないんです。
高知の夏の暑さでも耐えられる、
冷房のない時代の工夫ですよね。
でもね、生活するぶんにはいいのだけれど、
じつは、昼間、絵を描くときは、
灯をつけないと、色が見えにくいんです。
絵描きとして、それもどうかな? って
思うんですけれど。
伊藤
あら(笑)。
2015年に「やさしいタオル」のロケで
松林さんのところに遊びに行かせていただいて、
いつかなにかご一緒できたらいいですねという
お話をしました。
「weeksdays」をスタートさせてからは、
2019年に、セブンデイズホテルのオーナーの
川上絹子さんのお話をうかがいに行ったとき、
松林さんのお話にもなって、
あらためて「一緒になにか」をスタートさせました。
松林
そうでしたね。
「weeksdays」でぼくの作品を
販売したいとおっしゃってくださって。
伊藤
そこから1年半、いろいろありましたけれど、
こうして実現したことが、とてもうれしいです。
松林さんとは、はじめてのお仕事になりますね。
松林
そうですよ、知り合ってからは長いけれど。
伊藤
以前から思っていたことなんですけれど、
ことしのステイホーム中、あらためて、
やっぱりおうちに絵が必要だ! と思いましたよ。
わたしもそうですし、みんなが、
家のことにさらに関心を寄せているいまは、
そのことが、伝わりやすいかもしれません。
松林
伊藤さんはもともと、
アートを飾っていますね。
伊藤
はい。いいな、と思うと、
チョコチョコと買って。
絵を飾ると気分が変わるから、
よく、移動させたり、
つけかえたりしています。
松林
壁面に、シンプルに、余白をたっぷりとって、
一枚の絵を飾る。
伊藤さんの絵のかけかたには、
そんな印象があります。
伊藤
そうですね。
外国のかたのインテリアで、
壁面にたくさんの絵や
写真を飾っているのを見ますが、
あれもいいな、と思いつつ、
わたしは、やっぱり、ひとつかな。
もし、壁を絵で埋めよう! と思ったら、
それ全体がひとつの展示になるように
コーディネートをするでしょうけれど‥‥。
わたしがひとつだけ飾るのは、
「かけかえたいから」という理由もありますね。
わたしは、家具の配置もしょっちゅう替えるし、
壁の色もそろそろ変えようかなとか、
いつも考えているんです。
引っ越しも大好きだし。
でも、いちばん簡単で気分転換になる
部屋の模様替えは、絵を替えることなんです。
松林
今回、ドローイングだけじゃなく、
額までまるごと、お任せくださって。
伊藤
絵だけ届いても、
どうしたらいいのかわからない、
という方がいらっしゃると思ったんです。
絵を手にして「額装を考える」というのは、
ハードルが高い。
松林さんは、額込みで
作品として販売なさることも多いので、
これはお任せしよう! と。
松林
もともとはエッチング(銅版画)で
作品を発表していたのが関係すると思います。
版画ってマット(台紙)とフレーム(枠)が
合わさって完成する世界なんですね。
だから、ギャラリーでの展示にしろ、
家の壁面に飾るにしろ、
作品は額込みで考えることが多いんです。
伊藤
わたしも、松林さんの絵を買うときは
額まで相談できるので、楽なんです。
マットの幅ひとつ考えるのも、たいへんで。
松林
今回は、絵のサイズを正方形にしましょう、
ということを伊藤さんと決めてから、
それに合うマットと額のサイズを考えました。
フレームを数種類試作したんですが、
これじゃ絵を邪魔するなとか、なかなか微妙で、
そうしたら、いろいろ探すなかに、
駆け出しの頃からつきあいのある
高知の額縁屋さんで、
絵によくあうフレームを見つけたんです。
伊藤
よかった!
松林
フレームは受注生産です。
絵をセットして、
みなさんのところにお届けするのは
年が明けて少ししてからになります。
伊藤
たしか、最初にわたしが言ったのが、
「ちっちゃな絵がほしい」ということでしたね。
松林
ええ。それで、ポストカードサイズかな? 
という話も出たんですが、
ポストカードサイズだと、
ほんとうにポストカードを
飾っているようにも見えるから、
絵を飾るのがはじめて、というかたのためにも、
ちょっと馴染みのない形がいいなと。
それで、正方形はどうですかって。
伊藤
最初の1枚として絵を買うとしたら、
ちっちゃい方がいいし、
正方形、賛成! と思って。
ぜひ100枚おねがいします、って、
リクエストをしましたね。

ことばが絵になる。

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るるる

ひょこひょこ

ららら

きょときょと

ジュージュー

ふりふり‥‥

頭に浮かんだ音を伝えると、
松林さんが絵にしてくれる。

クスクス

ゆらゆら

ふるふる

そよそよ‥‥

わぁ、この音は、
こんな絵になったんだ! 
わぁ、かわいい! 

送られてくる
絵を見るのが、
毎回楽しみで仕方がなかった、
100枚の絵。

どれひとつとして、
同じものはなく、
どれもこれも、
あるとうれしくなっちゃう。

絵の持つ力って、
すごいんです。

今週のweeksdaysは、
松林誠さんの描く100枚の絵。
それとともに、
松林さんのイラストをモチーフにした、
冬のあったか小物もご紹介します。
どうぞおたのしみに。

4人、それぞれの老眼鏡。 [2]

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さんにんめ
料理家 なかしましほさん

料理家のなかしましほさんは、
ふだんから、遠近両用のメガネをかけています。
もともと近視がとても強かったなか、
老眼がちょっと入ってきて、
遠近両用のメガネにしたそう。
それまでは近視用のコンタクトレンズだったのを、
メガネ生活に変更しました。
それまでメガネをかけなかったのは、
おもに仕事上の理由から。
料理の仕事は、うつむくとメガネが落ちたり、
蒸気でメガネが曇ることがストレスに。
だから、コンタクトの方が良かったんだそう。
でも、老眼の進行とともに
メガネにすることを決めるとき、
ちょっとよぎったのが、おしゃれのことでした。

「私のまわりでは、
それまでコンタクトをしていた方が、
年齢とともにめがねに変えることが多くて。
おしゃれへのきもちの変化もあるのかなって思ってました。
そして私は、その年頃になったらどうするか、
すごく興味がありました。
実際、自分がそうなった時わかったのは、
老眼が入り始めると、
目がものすごく疲れるんです。
それも、今までとは違う疲れ方。
あまりにも疲れるので、
コンタクトからメガネにかえるんだなって」

小学校のころは近視でメガネ、
年ごろになってからずっとコンタクト。
最近かけるようになったメガネですが、
いまやすっかりなかしまさんのイメージになっています。

近視や乱視をコンタクトで矯正し、
老眼は、必要なときにメガネで調整する、
というひともいますが、
なかしまさんは、まだ老眼が本格的ではなく、
視力が安定していないのだそう。
だから今は様子見の期間としての「遠近両用」。
もうちょっと落ち着いてから、
老眼鏡を作りたいなと思っているんですって。
車の運転用には、遠近+サングラス、
というメガネも持っているそうです。

なかしまさんの、メガネ選びのポイントはなんでしょう? 

「かけて、自分がしっくりくるかというところです。
私も形をひと通り試すんですけれど、
結局、丸い形になるのは、
しっくりきているからだと思います。
あとは、洋服との兼ね合い。
おしゃれな人は何本も持っているとは思うんですが、
私は洋服にあわせて付け替えるということを
そんなにしないので、
どっちにも合うものをと考えて、
金色系か黒を選んでいます。
自分がいつもよく着る服の色を基準にします。
でも、わたしは1日中かける遠近両用だから、
という選び方。
老眼鏡だけの場合、一日中はかけないので、
ぱっとかけたときに、
疲れないものを選ぶといいと思いますよ」

大丈夫! 今回の「weeksdays」の老眼鏡は、
そのあたり、ちゃんと疲れにくさを考えていますから。
なかしまさん、今回のなかでは
どれか好みのものはありますか? 

「自分の持っていないものを、と思うので、
ひと目見たときから決めていました。
ゴールドのこちら!」

おお、チタンフレームの「ゴールド」。


▲こちらはサンプルです。フィッティングを行うと、つるの部分は調整されます。

「かたちがきれいで軽い。
かけてみて、私は耳が痛くならないです。
レンズも、丸じゃなくて楕円。
私は、遠近のレンズを入れて、使いたいな。
セリート(眼鏡ふき)もかわいいです」

ありがとうございます!
いいところ、ぜんぶ言ってくださいました。

ところで、なかしまさんが
教えてくださったことがもうひとつ。
眼鏡をかけるときのメイクです。

「ヘアメイクの草場妙子さんから、
メイクレッスンを受けたことがあるんです。
そのときに教わったのが、
メガネの人がフルメイクをすると、
作りすぎている感じが出ちゃう。
少しキャラっぽくなるというか。
だからメガネをしている日のメイクは、
眉かマスカラ、どちらかでもいいですよと言われました。
私の顔の場合、というのもあるかもしれませんが。
だから、私も今日は眉だけにしています」

なるほど! メガネ女子のみなさん、
ぜひ参考になさってみてください。
なかしまさん、ありがとうございました!


よにんめ
BonBonStore 井部祐子さん

傘ブランドBonBonStoreを主宰する井部さん。
パソコン仕事で数字を扱う時のため、
老眼鏡を使っています。
かけないと、「6」と「8」の区別がつかない!
これ、老眼の人は経験があると思います。

「もともと、視力があんまり良くなくて、
0.7と0.4、ちっちゃいときからそのままなんです。
乱視も激しくて、でも、レンズで矯正すると、
自分の見慣れた視界と違うから
気持ち悪くなっちゃうんですよね。
だから、普段は裸眼です」

今は、自分が老眼だと認めたという井部さん、
40代後半ぐらいまでは、
それが飲み込めなかったんですって。
まだ「全然見える!」と強がったり。

「それが、青山のメガネ屋さんと知り合いになり、
そのお店にきちんと上手に測れる男性がいて、
彼が老眼ということばを使わない人だったんです。
それは当たり前に起こる現象だからって。
それを聞いて、なるほどねって思いました。
そっか、生きていれば普通に起こりうることで、
特別なことではない。
その人の成長にあわせた目の使い方なんだって。
そのメガネ屋さんが教えてくれたのが、
メガネを選ぶときは
いつ必要なのかを考えることだと。
それでわたしは、
パソコンを見るときだけでいい、と答えました。
間違えてはいけないテキストや数字を確認できればいいと。
そこで、その距離感にちょうどいいものを
作ってもらったのが、最初の老眼鏡でした」

それが、いまから3年ほど前のこと。
いま、老眼鏡として使っているのはひとつだけで、
伊達メガネもあわせると
いくつかのメガネを使っているそうです。

「長い時間使うことを考えると、
軽いタイプのものを選びますね。
太いフレームは、夏になると汗をかいて滑る。
だから重くないほうがいいなと思っています」

井部さん、「weeksdays」のものから選ぶとしたら、
どれがお好きですか?

「チタンフレーム系の方が好みですね。
形が丸いのがいいし、軽いし、
老眼チックでもないし。
ちょうど、近視用の持っている眼鏡が、
チタンフレームの丸なので、違和感もありません。
眉毛とアーチが似てる感じのフレームを選んでいるんです」

色は「なんとなく」カーキ。
顔の印象を色で締めようと、
シルバーとかゴールドより濃い色がいいそうです。

「わっ、やっぱり、軽いですねー!」

そうなんです、軽くて丈夫。チタンのいいところですよね。
ところで、眼鏡にあわせる
アクセサリーはどうしましょうか。

「ピアスが好きなんですが、
眼鏡のフレームとピアスの組み合わせは、
本当に悩みますね。
丸いかたちが好きだからといっても、
丸い眼鏡のときに、
丸いフープピアスはつけません。
だから半円のピアスでしょうか」

わあ、ピアスと眼鏡がいい感じです。
いまつけているチェーンも素敵ですね。

「このチェーンはヴィンテージのものです。
ソフィア・コッポラの映画に出てくる
ある女性のゴールドのチェーンの使いこなし方が
新鮮だねって、友達と盛り上がって、
それを真似してみたんです。
老眼鏡にもこんなチェーンがあったらいいですよね。
そうだ、わたし、考えてみようかな?」

わあ、ぜひ、井部さん、おねがいします!
そのときは、ぜひ「weeksdays」で
紹介させてくださいねー。
井部さん、ありがとうございました!

▲セルフレームの「カーキ・ササ」もかけてもらいました。お似合いです。

4人、それぞれの老眼鏡。 [1]

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ひとりめ
COWBOOKS 吉田茂さん

「実は、いつもメガネはかけていないんです」
という吉田さん。
なぜならいまは基本、コンタクトレンズだから。
「子供の頃から高校生ぐらいまで、ずっとメガネ」
だったのが、社会人になってから、
コンタクト生活になったんですって。

それでも「たまに欲しいな」と思うのがメガネ。
メガネ歴が長い人がコンタクトになっても、
メガネがきらいになるわけではなさそうです。
でも、メガネ屋さんに行かなくなるから、
ためしにかけてみたりする機会もなくなる。
また、コンタクトを外したら家ではメガネ、
というひともいるなか、
吉田さんはお家では裸眼で過ごしているのだそうです。

そんな吉田さんに、
今回、久しぶりにメガネを選んでいただきました。
いかがですか?

「そう、久しぶりにメガネを選びました!(笑)
なるほど、幅広く、いろんな方に似合いそうですね」

吉田さんが選んだのは、
チタンフレームの「フォレスト・ブラック」と、
セルフレームの「カーキ・ササ」。

▲チタンフレームの「フォレスト・ブラック」

▲セルフレームの「カーキ・ササ」

「壊れにくそうで、いいですね!」

メガネ歴が長いからか、
割と適当にしてしまったりもして、
金属のフレームはうっかり曲げちゃったり
したこともあったそうです。

「緑色が入っているのがいいですね。
じつは緑色は、COWBOOKSの
テーマカラーでもあるんですよ。
本棚なども緑なんです。
落ち着いていて、かつ、暗すぎない。
本が並んでいるときに背景として映える色なんです」

COWBOOKSは、東京・中目黒にある
セレクトブックストア。
和洋古書を中心に、松浦弥太郎さんがセレクト、
蔵書数は約2000冊という人気の本屋さんです。

吉田さん、メガネをかけたり外したりしながら、
ちょっと思い出話も。

「子供の時って、メガネを選ぶ、なんてできなくて、
持っているものをかけるしかなかった。
ほんとうは“服に合わせて”なんてできたら
素敵だったんでしょうけれど、
そんなわけにはいきませんでした。
だから、こうして大人になってから選ぶなら、
何個か持って、服に合わせたいなあと思います。
老眼鏡も、こんなかたちで、
違うタイプのものを持っているといいのかな」

お店に行くと、色や形もたくさんあるから、
迷うのはたのしいけれど、選ぶのはたいへん。
おまかせください、そんなときのための
「weeksdays」ですから。
吉田さん、ありがとうございました!


ふたりめ
MOJITO 山下裕文さん

「weeksdays」でもおなじみの
メンズウェアのブランドMOJITO(モヒート)を主宰する
山下裕文さん。
文豪ヘミングウェイをイメージした、
かっこいい大人の男のための服をつくっています。

「老眼鏡、すごく使っていますよ。
もともと目がすごく良くて、
両目2.0、駅で向かいのホームの時刻表が読めるくらい。
でも34、5歳ぐらいかな、
わりと早くに老眼がはじまりました。
今は0.7と1.5で、老眼と乱視です」

老眼鏡を初めてかけたときは、
世界ががらっと変わったのだそう。
それまで本や新聞を読むとき視力がおいつかなくて、
億劫になっていたといいます。
仕事をする上でも、細かいチェックをするときに
すごく見えにくく、困っていたのが、
老眼鏡をかけたら、
こんなにクリアに見えるんだ! と感動したのだそうです。
それから、メガネは、いいものと出会ったら買う! 
という感じになっているとか。

「いろいろ持っていますよ。
いま老眼鏡で主に使っているのは、
黒、そしてグリーン系のセルフレーム。
家とオフィス、それぞれに置いています」

そんな山下さん、
「weeksdays」の老眼鏡を選ぶとしたら、
どれがいいですか?

「まず、これ。
チタンフレームのフォレスト・ブラックかな。
金や銀じゃなく、素敵な落ち着いた感じで、
すごくきれいだなと思いました」

そしてセルフレームからは、茶色。

「茶色って、僕自身、すごく好きな色です。
今回の中だったら、これがいちばん好みです」

MOJITOのシャツで、それぞれの老眼鏡に合わせて
コーディネートしてくださった山下さん。
さすがだなあ、大人の男だ!
ところで、アドバイスをしていただきたいんですが、
老眼鏡選びって、やっぱり持っている服を考えたほうが
いいんでしょうか?

「それもいいと思いますが、
普段、メガネをしておらず、必要な時だけかけるなら、
服に合わせるというよりも、
メガネ本体のデザインがきれいだとか、
これが好きだなあ、ということを
選ぶポイントにして、いいかもしれないですね。
ちなみに、重さが気になる方もいるでしょうが、
チタンもセルも、
両方とも軽くて疲れにくそうですよ」

山下さん、ありがとうございました!

「weeksdays」が 老眼鏡をつくりました。 その2 はじめての老眼鏡の選び方。

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伊藤まさこさんのプロデュースで、
JINSがつくる「weeksdays」の老眼鏡。
販売は「weeksdays」つまりネットで行ないます。

みなさんが(とくに「はじめての老眼鏡」をと
考えてくださっているかたが)疑問に思うだろうことは、
以下の点かと思います。

【1】度数は合うのかな?
遠近両用や、近視用のメガネはないの?

【2】かたちや色の似合う・似合わない、が知りたい。
【3】かけ心地が不安、痛くなったらどうしよう。

では順番に解説をしていきますね。

【1】度数は合うのかな?
遠近両用や、近視用のメガネはないの?

「weeksdays」のメガネは、
最初からレンズが組み込みになっていて、
あとから変更ができない老眼鏡
(JINSではリーディンググラスと呼んでいます)を、
2種類の度数で用意しています。
その度数は「+1.00」と「+1.50」。
一般的に、レンズ組み込み型の老眼鏡には
さらに度のつよい「+2.00」と「+2.50」がありますが、
「weeksdays」では初心者用として
弱いほうの2度数を用意しました。

老眼の症状には、
●薄暗いところで、新聞や本などの文字が読みにくくなった
●スマホの画面が見えづらくて、遠ざけてしまう
●以前にくらべて、ピントが合いにくくなった
●パソコンを使ったあと、目が疲れる
●目が疲れて、肩こりや頭痛がする
などがあります。
とくに薄暗いところでの小さな文字が読みづらくなります。

そんなときのための老眼鏡ですけれど、
度数のめやすはというと。

+1.00‥‥近くが見にくくなってきた
+1.50‥‥文字を読むとき、40~50cm程度遠ざける
+2.00‥‥文字を読むとき、50~60cm程度遠ざける
+2.50‥‥文字を読むとき、60cm以上遠ざける

となっています。
すでに老眼鏡をお使いのかたなら、
いまお使いの度数でどうぞ。

(JINSの「初めての老眼鏡の選び方」というコンテンツも
どうぞ参考になさってください。)

でも、「度数が決められない」ということもありますよね。
「もしかしたら+1.50かもしれない」と感じたり、
「いま+1.50だけれど、それでいいのかわからない」、
あるいは「まったく判断がつかない」と。
そんなかたのために、「weeksdays」の老眼鏡は、
もうひとつ選択肢を用意しました。

それは「レンズ交換券つき」のフレーム。
最寄りのJINS店舗に、
商品に同梱する「レンズ交換券」とフレーム本体、
「ほぼ日ストア」からお送りする出荷のおしらせメールを
お持ちいただければ、度数を測定し、最適なレンズを入れ、
快適につけられるよう、フィッティングを行ないます。
ちなみに、このレンズ交換券をご利用いただく場合には、
度数に制限はなく、
老眼用にかぎらず、近眼用のレンズも含め、
レンズをお選びいただけます。
ただし、遠近両用や、ブルーライトカット効果レンズなど、
オプションレンズの場合は別途料金がかかります。

●最寄りのJINSの店舗をしらべる

【2】かたちや色の似合う・似合わない、が知りたい。

「weeksdays」の老眼鏡は、
楕円型のチタンフレームが3色
(シルバー、ゴールド、フォレスト・ブラック)、
スクエア型のセルフレームが3色
(ブラウン、ライトブラウン、カーキ・ササ)です。
伊藤まさこさんが、「みんなに似合うように」と
えらんだかたちと色ですから、
服の色の傾向や髪の色、
好みで選んでいただければと思いますが、
メガネそのものがはじめて、という方も
いらっしゃるかもしれません。
ことばで説明するのはとても難しいのですが、
まずはこちらのJINSのサイト
「メガネの選び方」を参考にしてみてください。
あるいは、お近くのJINSの店舗で、
フレームや色の近いものをためしてみてくださいね。

ちなみに、老眼鏡は「ずっとかけっぱなし」にすることは
あまりないタイプのメガネ。
近視や遠近両用のメガネにくらべて、
「ちょっと派手なもの」や
「ユニークなかたち」を選ぶ人もいます。

【3】かけ心地が不安、痛くなったらどうしよう。

こちらも、最寄りのJINSの店舗で対応します。
お出かけいただいて、
フィッティングの調整をしてもらってくださいね。
(調整は、無料です。)

「weeksdays」が 老眼鏡をつくりました。 その1 鯖江に行きました。

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伊藤まさこさんといっしょに
福井県鯖江市のメガネ工場を訪れたのは、
2019年3月のことでした。

それまでは、東京のJINS本社で、
「こんな老眼鏡がつくりたい」と、
伊藤さんがイメージしている
フレームの色や素材について話し合ったり、
「こんなケースがいいんじゃないかな」
「付属のメガネふきをオリジナルなものにしたいな」
など、いろいろな相談をしてきました。

さらにさかのぼると、スタートは2017年。
「第2回 生活のたのしみ展」で、
「ほぼ日」とJINSとで企画した
「かわいい老眼鏡の店」がきっかけで、
「次は、伊藤さんバージョンをつくりましょう」
と話しはじめていたんです。

フレームは、金属? それともセル?
どんな色がいいんだろう、
どんなかたちがいいんだろう。

大きくみんなのイメージをひとつにしたのが、
伊藤さんが発したこんなことばでした。

「かけているとき、だけじゃなく、
そこに置いたときにも、
風景になるようなフレームがいいなぁ」

また、「ひとつだけ」を選ぶのではなく、
老眼鏡を複数もって、
持ち歩くほかにも、
家の中ですぐに手に取れる場所においておく、
という人が多いことから、
「これがベスト!」をつくるのではなく、
あるていど、選びようのあるラインナップにしましょう、
ということも、決めました。

そうして、チタンフレームと
セルフレームの両方でデザインを詰めてゆき、
3Dプリンターでサンプルをつくり‥‥、と、
その経緯のこまかいことを言うときりがないくらい、
こまかな調整をして、
「このかたち」を決めたあとの、鯖江訪問でした。

さて、鯖江でなにをしたのかというと、
「メガネ工場で、ずばり! の
セルフレームの素材となるアセテートの色えらび」。
なにしろアセテートは色のサンプル数が膨大なため、
東京でそれを行なうことはむずかしい。
すでに、チタンは、シルバーとゴールド、
フォレスト・ブラックという3色を決めていたのですが、
アセテートはじっさいに色を見ないとわからない。
さらに「ぜひ鯖江のメガネづくりを見たい」と、
出かけることになったのです。
(おっと、画像のなかで
みんながマスクをしていないのは、
コロナ以前だったからですよ。)

ちなみに、訪れたのは、海外むけのフレームが約半分、
それも「メイドインジャパン」の高品質を求める
欧米のメガネブランドからの発注が多い、腕のよい工場。
ちなみに鯖江へは海外からの注文が多く、
全体では6~7割にものぼるんだそうです。
鯖江の技術力を信頼して、最近では、
金属とアセテートの両方をつかったものなど、
より複雑なフレームが求められているのだとか。

また、鯖江のすごいところは、メガネづくりの工程が
分業制になっていること。
最初から最後まで1社ですべての工程を
こなせるところはなく、
作業、パーツごとに、大小さまざまな工場があって、
その物づくりが鯖江でできるんです。
つまり、鯖江のまち全体が、
大きなメガネ工場だとも言えるのですね。

さて、膨大なサンプルを前にした伊藤さん、
まずえらびはじめたのはアセテートの茶色です。

「やっぱり最初は、すごくベーシックで、
わたしたちみんなが似合うような茶色が、
ひとつ欲しいと思うんです」

茶色とひとくちに言っても、
明るめの茶色と暗めの茶色、
赤っぽい茶色もあれば、くすんだ茶色も。
フレームが二層、三層になっている
複雑な色味のものもありました。

「うーん? でも、単色がいいですね。
よし、決めた! この、かわいい茶色にします」

うん、はっきりとした色で、きりりと顔をひきしめますね。
そして、伊藤さんから、もうひとつのコンセプトが。

「もう一個の方には、若干のニュアンスで、
かわいいおばあちゃんっぽさを残したいんです」

そうして選んだのが、こんなライトブラウン。
なるほど! とってもおだやかで、品のある印象です。

さらに伊藤さんが気になっていたのが「カーキ系」。
これは、ずらりと並んだサンプルから、
ぱっと気になったものを選んでのことでした。
「四つ葉のクローバーを見つけたときのように、
目立っていたんです」
と伊藤さん。
JINSのみなさんからは
「これを選ばれるとは!」と、感嘆の声があがりました。
(こういった組みかたで、こういう色をえらぶのは、
めずらしいことなんですって。)
でも、むずかしい色かといえば、そんなことはありません。
かけてみると、いろんな人に似合う!

こうしてセルフレームの3色が決まりました。

さて、ここはアセテートの素材倉庫。
さきほど選んだフレームの素材もありました。

厚みがあると、うんと濃く見えます。
アセテートは、ほかのプラスチックに比べると、
比較的軟らかい素材。パルプからできています。
メガネのフレームは、熱を加えて曲げたり、
切削をしたりするので、
アセテートの硬さがちょうどいいのだそう。
そして、アセテートは吸水性が高いので、
そのぶん、かけたときに、肌に優しいんです。
ただし、汗をかいたり、水洗いをしたまま
拭かずにおくのはNGです。
(拭き取っておけば、だいじょうぶです。)
ちなみに、このアセテートは、
兵庫県の網干でつくられています。

メガネをつくる工程はとても多く、
メタルフレームだと300工程ともいわれます。
それに比べてセルフレームは工程数が減りますが、
素材を曲げて、切削しある程度の形状にして、
柄をつけ、鼻パッドをつけ、丁番をつけ、組み立てる、
その過程はメタルもアセテートもおなじこと。
それぞれのパーツにもたくさんの工程がありますし、
メタルではメッキなど、また異なる工程が加わります。
こまかい作業は、分業化され、
なかには個人でなさっているところもあるのだとか。
見学をさせていただいた工場は、撮影不可、
専門的な技術のことは社外秘だそうです。

というわけで、「こうやってつくっています」
というレポートは、できないのですけれど、
これだけは伝えておかなくちゃ、ということがひとつ。
それは、どの工程も「人」がかかわっているということ! 
工場、というと、オートメーションで、
片方から素材を淹れたら、もう片方から製品が出てくる、
なんてイメージをもってしまいそうですけれど、
メガネづくりは、どの部分も、
人がいなくちゃできないことでした。
なかには危険な仕事もありますし、
かなりの集中を要する仕事もたくさん。
世界がなぜ「鯖江クオリティ」を求めるのか、
わかる気がする工場見学でしたよ!

さて後編では、「老眼鏡の選び方」をお伝えします!

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