大人気のファブリックカバー
「MORIKAGE SHIRT シリーズ」
森蔭大介さんインタビュー
2009.10.27
ほぼにちわ。です。

本日より、11月の新作カバーを動画でご紹介しています。
まだご覧になっていないかたは、こちらからどうぞ。
11月のカバーは、
「モリカゲシャツシリーズ」の第2弾として
オリジナル用の「パッチワーク」を、
カズン用には3種類の「マキノコレクション」を
ご用意しました。
今週の手帳クラブでは、それぞれに魅力的な
このファブリックカバーのキーパーソンとなる
おふたりの、インタビューをお届けします。

まず、本日ご登場いただくのは、
「ボタン・ステッチ(チェック)」
「ボタン・ステッチ(ストライプ)」も大人気、
モリカゲシャツシリーズの生みの親、
「モリカゲシャツ キョウト」森蔭大介さんです。

デザインは、使う人ありきの仕事。

ーー 昨年はじめてファブリックカバーを作りまして、
そのとき、シャツ生地を使ったカバーも作ったんですが、
シャツのことならいっそ森蔭さんに相談してみよう、
ということで今回のコラボレーションが実現しました。
本業の、シャツを作るお仕事とは
ずいぶん勝手が違ったのではありませんか?
森蔭 いや、おもしろそうだなというのが先にきて、
できるかなみたいなことは、思わなかったですね。
ふだんやってることと、そんなに違わないですし。
ーー そういうものなんですか?
森蔭 ええ。あの、ぼくら、シャツ作ってますけど、
ファッションをやってるつもりもないんですよ。
デザインしてものを作る、
その工程とか考え方は、シャツも手帳カバーも
そんなに変わらないんです。


ーー まず、見本のカバーを分解してみたと
おっしゃってましたね。
森蔭 そうなんです。
たぶんぼくは、ものの発想とか考えかたが
すごく3次元的なんだと思うんですが、
デザイン以前に、
どうやって作られているかということのほうに
まず、興味がいくんです。
それで、ちょっと申し訳ないなと思いながら、
手元にあったカバーを解体してみたんです。
ーー ええ、はい。
森蔭 そうすると、ほぼ想像していたような
構造ではあったんですが、
そうか、ここに芯を入れてるんだなとか、
ここをこうしてからステッチをかけてるんだとか、
そういうことが、見えてきました。
でね、これ、こことここの生地で、
布の目を変えてあるんです。


ーー ベースの部分とポケットと、ですね。
その、布の目というのは?
森蔭 布って、機織りを思い浮かべてもらうと
わかりやすいかと思うんですが、織るときに、
先に縦の糸を張って、後で横に糸を入れていくんですね。
それで、織りあがった生地は、
縦の方向には伸びにくく、横には伸びやすいという
性質があるんです。
ーー へえぇ。あ、なるほど!
伸びてほしくない方向に、布を縦に使ってるんですね。
手帳の場合は、開閉する方向に伸びては困るから‥‥
森蔭 そうです、そうです。
だから、開いたときの長辺の方向に
縦地を通すのが、必然なんだろうな、と。
で、ポケット部分は、布目が逆になるんです。
ーー 伸びてはいけない方向が逆、ということですか。
おもしろいですねー。
森蔭 布の目をそうやって使うということは、
ストライプの生地を置いたら、
ここが横になって、こっちが縦になるよな、
っていうようなことを、考え始めて。


▲「ボタン・ステッチ(ストライプ)」のサンプル

手帳カバーの構造をいかした、
一番ミニマムなデザインって、
こういうことだろうな、と。
そんなことが、見えてきたわけです。

デザインを考えるとき、こんなふうに
「見た目を絶対にこうしたい」みたいなことは
先にこないんです、ぼくの場合。
ーー シャツを作るときもそうですか?
森蔭 シャツに関しても、そうです。
デザインって、どんなものでも基本は
使う人ありきの仕事だと思うんです。
だから、作る側がああしたいこうしたいという以前に、
使う人はどうしたいかなということを考えてますね。
こちらが一方的に押しつけるのではない、
かといって、言われることを聞くだけでもない、
ちょうどその真ん中ぐらいのバランスのときが、
一番いいものになると思ってるんです。
ーー 森蔭さんはオーダーメイドのシャツも作られていて、
お店で直接、お客さまとやりとりされるなかで
そのバランス感覚が培われているんでしょうね。
森蔭 だから、ものを作るときにまず考えるのは、
使う人がどう思うかなっていうことと、
あと、やっぱり使い勝手のこと。
使っていて、不便なところがあるよりかは
やっぱりちょっと便利なほうがいいし、
そのためには、理にかなった構造になってるほうがいい。
ーー なるほどなるほど。
森蔭 で、もうひとつ。
ちょっと平たい言い方をしてしまうと、
「かわいい」ほうがいいと思うんですよ。
かわいいというのは、
それを欲しいと思う動機になるもので、
それを使ってる自分っていうのが
いいよなと思いながら使えて、
それをまた誰かが見て、
「それ、すごくいいね」って言われたりすると
うれしいと思うんですよ。
ーー 便利なだけじゃなくて、
持っていて、うれしくなるようなもの。
森蔭 デザインされるものって、
そういうものであるべきだと思ってるんです。

機能性とデザイン性を兼ね備えた
ダブルポケット。


ーー 9月から販売している「ボタン・ステッチ」も大人気で、
メールもたくさんいただいているんですよ。
森蔭 ああ、うれしいですね。
ーー 11月の「パッチワーク」を待っていてくださってるかたも
多いんですが、基本はどちらもシャツのイメージですね。
森蔭 そうですね。シャツっぽくしようというのは
最初から思っていたんです。
で、シャツといえば、ボタンとか前立てとか、
いろいろありますけど、なにかこう、
ちょっと立体的な要素を加えたいと思ったんです。
たとえば刺繍であったり、
縁をトリミングするとか、パッチワークとか、
こんなふうなことをやってみたらどうだろうという
アイディアがいくつか出てきて。


▲森蔭さんのアイディアスケッチ
ーー わぁ、アイディアスケッチですね。
これは最初のころのもの、でしょうか。
森蔭 ええ、簡単なスケッチしか描いてないんですけどね。
で、思ったよりも面積が小さかったんですよ。
ーー ああ、手帳にかけると、さらに二つ折りになりますし。
森蔭 そうですね。この面積の中でどうするかと考えると、
これは、実際に作っていかないと
わからないなという感じで、
次はもう、解体したものを元に型紙をおこして
実際にカバーを作りはじめたんです。
ーー それは、縫うところからご自分で?
森蔭 そうです。まぁ、初めてやるようなことは、
ひと通り自分でやってみないとね。
まわりのスタッフにしてみれば、
「‥‥何してるんですか?」っていう話です。
「いやいや、まあ、放っといてくれ。
おもしろいとこだから、話しかけてくれるな」と(笑)。
ーー (笑)さきほどのスケッチにあった
「ポケット両方」というアイディアが実現したのが、
11月の「パッチワーク」のカバーですね。
いつもはカバーの後ろ側にある外側ポケットが
前と後ろと、両方にあるのが大きな特徴です。
森蔭 そうですね、ポケットを両面につけたいという考えは、
初期段階からありました。
単純に、前にもポケットがあったら
使いやすいんじゃないかなと思ったんですよ。
ーー ええ、なるほど。
森蔭 といっても、すでに手帳カバーとして完成した形だし、
これだけ仕様を変えるのは、
むずかしいかもなとも思ってたんです。
でも、カバーの機能としては、たぶん
ポケットがふたつあっても困らないだろうし、
こう、前にポケットをつけられれば、
この辺をシャツの前立てに見せられるよな、と。
パーツの数も増えるので、それぞれ違う生地を使うと、
こういうパッチワークみたいなデザインも成り立つし、
ちょっと表現が広がるんです。
生地を重ねて、縁をトリミングしたりして、
立体感も出せる。
▲パッチワーク(ブルー×キミドリ)

▲パッチワーク(オックスフォード)
ーー どちらも表側から見たときと、裏側から見たときで、
表情がかなり違って見えるんですよね。
生地の柄や色の組合わせが絶妙で、
それもすごくたのしいです。

手帳とお揃いのシャツを作ろう

ーー 生地はすべて、ふだん森蔭さんがシャツに使ってるものと
まったく同じものを使っていますね。
森蔭 そうです。
じつは、手帳カバーを作ることになった時点で、
だったらシャツもいっしょに、っていうのは、
ぼくのなかには最初からあったんです。
まだやるやらないは別として、ですね。
だから、手帳カバーにもシャツ地を使おう、と。
ーー はい、さらっとしたコットンの手ざわりが
すごく着心地よさそうで、わたしたちも
お揃いのシャツがあったらすてきだなぁと
思ってました。
それで「ボタン・ステッチ」も「パッチワーク」も
同じ生地、お揃いのデザインで
シャツを作っていただいて。
森蔭 お揃いのシャツといっても、
別にかならずお揃いで着てほしいとか、
そういうことじゃないんです。
それぞれ単体で成立つプロダクトとして作っていますし。



で、一緒に使う人がいたときに、なんかこう、
「あ、いっしょじゃない?」みたいなことを
だれかが気づくっていう、そういうおもしろさですね。
あの、やっぱりうれしいのって、
人に言われるときやと思うんですよ。
「あれ? これ、いっしょ?」ってね。
ふふふ、実はいっしょなんだよな、みたいな。
ーー やっぱりこれも、使う人がどう思うか、
うれしいと感じるのはなにかっていう発想なんですね。
森蔭 ぼくの場合、絶対こうじゃないといけないというのは、
ほんとになくて、やっぱり、
使う人にとって大事なのはなにかということ。
まぁ、そうすると、作り手としてこだわりはないのか、
という話になるかもしれませんけど、
それって、こちらがあれこれ説明するものじゃなくて
使っている人が使いながら見つけてくれる、
わかっていただくものだと思ってるんですね。
それを使っている人がじわじわわかってきて
気がついていく、ということのほうが
意味があると思ってるんです。

だからこういうのも、なんとなく使ってて、
人に「いいね」って言われたりとか、
「そういえば、ポケットがふたつついてて便利だわ」
とか、そういうふうになってくれればいいなと
思うんですけどね。




「モリカゲシャツシリーズ」の新作、
「パッチワーク(ブルー×キミドリ)」
「パッチワーク(オックスフォード)」は、
11月1日(日)午前11時から販売を開始します
また、このふたつの手帳カバーと、
「モリカゲシャツ ほぼ日スペシャルバージョン」の
シャツは、京都の「モリカゲシャツ キョウト」店頭でも
数量限定で販売されます。
手帳もシャツを手にとってご覧いただける絶好の機会、
ぜひたくさんのかたに足をお運びいただきたくて、
ちょっとしたイベントも計画しています。
くわしくは明日の手帳クラブでお知らせしますので
ぜひ、チェックしてみてくださいね。