リキッド・シリーズを
手がけた平武朗さん
インタビュー。
2009.09.04
ほぼにちわ。です。

9月1日より販売が始まりました「ほぼ日手帳2010」
すでにたくさんの方々にご注文をいただいております。
本当にありがとうございます。

また、52種類もあるカバーを
じっくりと吟味されている方も
たくさんいらっしゃることと思います。
ぜひ、お気に入りのカバーを見つけてくださいね。

さて、本日はプリントカバー
「リキッド・シリーズ」のデザインをてがけた
ファッションデザイナー平武朗さんのインタビューを
お届けいたします。
「ほぼ日Tシャツ」の「Acoustic T」
「SUPERVINTAGE」でお馴染みの平さん。
洋服のデザインはたくさん手がけられていますが、
プロダクトデザインはあまりやったことがないとか。
ましてや手帳のカバーのデザインは初めての体験。
そこにはいろいろな苦労があったそうです。
では、平さん、よろしくお願いいたします。

 平武朗さんプロフィール
ファッションデザイナー。文化服装学院卒業。
2006年秋冬シーズンから自身の
ブランドDesertic(デザーティック)をスタート。
2008年、2009年に「ほぼ日Tシャツ」を手がけ、
その高いデザイン性と品のいいセンスに注目が集まる。

●平さんが出ている「ほぼ日」の記事
「本を読むように、毎日、街を読んでいた。」
「The Other Side of Marine 平武朗さんのシャツ受注展示会」
「平さん50着のパーカ」


僕、洋服のデザインも好きですけど、
プロダクトデザインも好きなんですよ。


ほぼ日 平さんの「リキッド・シリーズ」、
すごくいい反応をいただいてます。
 平 ありがとうございます。
そう言っていただけるとうれしいですね。
ほぼ日 僕らもデザインをお願いした方のカバーが
評判がいいのはすごくうれしいです。
「お願いしてよかった!」って実感してますよ。
じゃあ、まずは、
お願いしたころのお話から聞かせてください。
「平さんがデザインしたカバーを出したい」と
僕らがオファーをしたとき、どう思いました?
 平 いやぁ、さすがに驚きましたよ。
「え? 手帳のカバー?」って。
ほぼ日 ですよね。
 平 でも、単純にうれしかったです。
僕、洋服のデザインも好きですけど、
プロダクトデザインも好きなんですよ。



ほぼ日 これまでにプロダクトデザインを
手がけたものってあるんですか?
 平 あるんですけど、
やっぱりバッグのようなファッションに
関係してくるものになっちゃうんですよ。
ほぼ日 じゃあファッションとはまったく別な
アイテムのデザインって‥‥。
 平 えぇ、初めてでした。
ほぼ日 なるほど。初めてにして
このカバーデザインとは
さすがとしか言いようがないです。
じゃあ、自分の専門の分野とは
ぜんぜん違う分野の依頼だったわけですが、
どうやってデザインを考えていったんですか?
 平 最終的に3種類のリキッド
カバーになりましたが、
最初のころはリキッド以外のデザインで
挑戦しようと考えていて、
リキッドじゃないデザインも
いくつか作ったんですよ。

※リキッド
 まるで生地に液体をかけたかのような
 プリントが印刷されたデザイン。
 平さんといえばこのデザインという
 代表的なデザインです。
ほぼ日 へぇー。
 平 でも、やっぱり初めて手がけるものだし、
表現したいことが伝わりやすいほうがいいな
と思ってリキッドで3種類作りました。
ほぼ日 たしかにリキッドって
平さんにとっては「名刺代わり」
みたいなところありますもんね。
 平 (笑)。


リキッドが持っている雰囲気を
ここまで再現してるのはスゴイですよ。

 平 「リキッドでいこう」と決まったとき
じつは、その場でフリーハンドで
液体部分のところを描いたんですよ。
ほぼ日 えっ?!
あのダラリと液体が垂れているような曲線って
フリーハンドで描いたんですか?
 平 そう。
「ほぼ日」におじゃましたときにその場で。
ほぼ日 (カバーをマジマジと見ながら)
ここ、フリーハンドなんだ‥‥。
 平 今回の手帳カバーに関しては、開いたときに
垂れている長さの長いところと短いところが
バランスよく、アシンメトリー(左右非対称)に
配置されているのがいいな、と思ったんです。
だから、何度も何度も描き直して
やっと納得のいくものが描けたのを覚えてます。


▲右から3つ目の「垂れ」がもっとも長く、
 一番左がもっとも短い。開いて見ると、
 アシンメトリーなのがよくわかると思います。

ほぼ日 その理想がきちんと収まってますよね。
 平 あと、垂れた部分にはきちんと丸みがある、
っていうのも大事なところです。
これはもう個人の好みなんですが(笑)。
ほぼ日 いえいえ、それが大事ですから(笑)。
 平 あとはいかに自然であるかを気にしました。
やっぱり「垂れる」って自然現象ですからね。
ほぼ日 なるほど。
 平 そういういろいろな要素を踏まえてみても
よく描けたと思いますよ。
ただ、洋服の場合はある程度の面積があるので、
デザインしやすいのですが、
手帳カバーの場合はこの小さな面積で
リキッドのデザインを
表現しないといけないわけです。
実際にデザインを起こすときも
面積を「やりくり」するのが
けっこうたいへんでしたね。

ほぼ日 手帳の面積が小さいばかりに‥‥。
そんな苦労があったんですね。
じゃあ、実際に仕上がったカバーを
ご覧になったときはどう思いました?
 平 いや、それはもう、
とてもよくできあがっていることに驚きました。
ほぼ日 それを聞いてひと安心ですよ。
 平 うん、ただ単にインクが生地の上に
ベタっと乗るだけじゃなくて、
乗ったインクから下の生地が透けるような、
そういった雰囲気までも
キチンと再現しているのはスゴイですよ。
ほぼ日 ありがとうございます!
 平 ほかのプリントカバーとは
いろいろと違うらしいですね。
ほぼ日 はい。ちょっとだけ裏話を話しますと、
正直、このリキッドをプリントカバーで
再現するのは少々難しかったんです。
ただのプリントしただけでは
リキッドとは程遠いものになってしまう。
どうやったらリキッド特有の
生地にインクが乗っている質感を表現できるか
いろいろ試してみました。
 平 この再現性の高さの裏には
そんな紆余曲折があったんですね。
ほぼ日 さらに、プリントカバーのなかでも
リキッド・シリーズだけ
糸の太さを太くした生地を使っていて
見た目や手触りを変えてるんですよ。
 平 たしかにこう、
がっしりとした触り心地がありますよね。
生地の目が粗くて、
ナイロンというよりもキャンバスに近いですよね。

ほぼ日 そういういろいろな要素がうまくいったおかげで
今回のリキッド・シリーズの
完成度につながったというわけです。
 平 なるほど。ここまでしてもらえたうえに
やっぱりこの完成度の高さはうれしいですね。
ほぼ日 そういうわけで、リキッド・シリーズを
ぜひとも、よろしくお願いいたします!
 平 よろしくお願いします!


平さん、お話ありがとうございました。
リキッド・シリーズ誕生秘話、
いかがでしたでしょうか?
しかし、平さんのあの液体部分のラインが
フリーハンドだとはさすがに驚きました。
デザインするときにコンピュータはあまり
お使いにならないそうです。

リキッド・シリーズは
現在「ほぼ日ストア」で販売中です。
「リキッド・タータン」「リキッド・アーガイル」
「リキッド・ボーダー」の3種類がございます。
ぜひ、売り場までお越しくださいませ。

また、プリントカバーの「フレンチ・レター」
平さんが監修した「SUPERVINTAGE」のTシャツ
「千鳥とグレンのアップリケ」のデザインを
手帳カバーに落とし込んだものです。
こちらもぜひ。

それでは、また。