斎藤 |
去年の手帳も持ってきたらよかったね!
今年のは持ってきたんだけど。
なんかずいぶん書きましたよ。
よっぽど暇だったんだな(笑)。
だいたいその日に何をしたか、書いてました。
「今日も1日ドリルの整備だ。1月3日」(笑)。
気温も書いてるな。
「正月はマイナス31.8度でした」。
(手帳をめくりながら)
これ何だろう。あ、基地の食堂だ。
なんか酒飲んでるときに描いたんだな。
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ーー |
お酒の席に手帳があったということですか? |
斎藤 |
うん、普段から手帳は持ち歩いてました。
あまりまずいことも書いてないんで、
そのへんに置いておくんです。
(手帳をめくりながら)
大体酔っ払って書いてるんですよ。 |
ーー |
書いてあることに、
南極ならではの言葉もありそうですね。
「ドームふじ、36本、雪尺」? |
斎藤 |
雪尺というのはただの竹ざおなのですが、
ある地点にその竹ざおを立てて、毎年、長さを測る。
すると、そこで雪が
どれほど積もっているかがわかります。
100メートルの中に36本、格子状に立てて、
それを測っているんです。
仕事の細かい記録は
「野帳」というノートにつけていたのですが、
この手帳には個人的に気になったことや、
やったことを書いていました。
‥‥これ何だ?
あ、ベッドだ。雪上車の中だ。
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ーー |
雪上車の中でも手帳を書いていたんですか?
「走った」? |
斎藤 |
そう、そう。
24時間、雪上車で走っちゃったんだ、確か。
時間がないから夜中も。
けっこう疲れたな、これ(笑)。
ドライバーは2人で交代なんだけどね。
車は揺れるし、遅いし、
風景もまったく変わらないんですよ。
「雪の中を走っている」
ただそれだけのことを、書いてますね。 |
ーー |
ある意味、変化がなさそうなのですが、
それを書き留めていることが
後で見返すと楽しいですね。
食べ物のことも書いてありますよ。
「タマネギ、肉そぼろ」? |
斎藤 |
なんでだろう。
これは「しらせ」に乗った日か。
なんかね、
印象に残ったどんぶりだったんですよね。
南極を出て、オーストラリアに向かう
船「しらせ」に乗ったあたりからは
もう、こんなんばっかりだ。
寝て、起きて、食べて‥‥。
船の中でも、船の時間に合わせて
6時前にはちゃんと起きるんですよ。
それで、ご飯を食べて寝ちゃう。
やることとしては報告書づくりがいっぱいあるのに
ギリギリになるまで
提出しないで寝てばっかりでした。
そんな様子が手帳に書いてある(笑)。 |
ーー |
それだけではなさそうですよ(笑)。
「天気もよく、夕日があたるシェッゲが‥‥」? |
斎藤 |
「シェッゲ」というのは
400メートルぐらいの崖なんです。
そこに夕日が当たってすごいきれいだったなぁ。
海から出ている岩なんですよ。
ノルウェー語か何かで
「ヒゲ」って意味らしいんですが、
初めて見た人が、ヒゲのように見えたから
「シェッゲ」って名前がつけてあるみたいです。
南極にいるとスケールがまったくわからなくて、
「たいしたことないなあ」と思っていても、
400メートルぐらいあるんですよね。
そのへんにある岩と変わらないって思っていても
ものすごく高くて、スケール感が全然違いました。 |
ーー |
南極での日々から、旅立ち、到着までに
目に映った景色や感じたことが
描かれている手帳になっていますね。
最後のほうは、シドニーに‥‥ |
斎藤 |
入港の日だ。
「いよいよ文明地」って。
そのあとは続いて‥‥ないですね。
ひどいな、俺(笑)。 |
ーー |
それもまた斎藤さんらしいですね。
奥様との感動の再会の様子とかは? |
亜希子 |
全然書いてない(笑)。
徐々に書かなくなっていくならわかるけど、
100から0。いや、すごい!
旅立つ前は全然書いていなかったので
南極でこんなに書いてるとはビックリしました。
極端すぎますけどね。
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ーー |
また気が向いたときに
書いていただければ‥‥(笑)。
もしくはまた南極に行ったときにでも? |
斎藤 |
また、だんだん行きたくなってます(笑)。 |
亜希子 |
行きたいみたいです(笑)。 |
ーー |
では、またそのときに
ぜひ手帳にびっしりと書いてください!
今日はどうもありとうございました。 |