| 鳥越 |
「ほぼ日」に書くことが
どうして楽しいのだろうと思うと、
自分なりに新聞を隅から隅まできっちり読むと、
ピピピっと何か引っかかってくる違和感かなあ?
自分を全く真っ白にして、無にして、
こうやってページをめくって読んでいく、
向こうから何か矢が飛んでくるんですよ。
・・・違和感というのかな?
記事のほうから、何か信号を発してくるんです。 |
| 糸井 |
「これは何だ?」という感覚でしょう? |
| 鳥越 |
自分で何か探しているというよりも、
向こうから訴えかけてくるという感じで。
それをずっとメモっていくわけですよね。
その中で最終的に原稿になる。 |
| 糸井 |
その読み方は、何かいいなあ。 |
| 鳥越 |
そうやってるんですよ。
その作業が、すごく楽しいんです。
決してつらくなくて、楽しい。
知的なというほどでもないですけど、
ぼくの一種の遊びでもあるんです。
しかも単に書いてあることを写すだけではなくて、
「これは何なんだろう、他紙と違うよ?
どこかがおかしいんじゃないか?」と、
自分なりの吟味ができますから。 |
| 糸井 |
ぼく、想像するんですけど、
鳥越さんが今やっているようなことは、
あとでともだちとか若い人に語るときに、
「いや、だって俺はニュースの職人なんだから、
毎日の新聞をきちんと読むのは当たり前で、
メモしておくのも、別に普通なんだ。
それをやっていただけなんだよね」
って自慢をしそうな気がする(笑)。 |
| 鳥越 |
ははは(笑)。 |
| 糸井 |
で、言われた奴が、
それを「当たり前」って言われたら、
おれは負けだって思わされるんだよね(笑)。
プロの人たちって、そういう、
当たり前に思われてるようなことを
上手に抜く力を持ってますよね。
そういうことをせずに手を抜く能力を持っている。
だけど、それを逆にずっとやり続けるのは、
これはすごい発明だなあと思うんですよ。
吉本隆明さんが、
「どんな職業も毎日10年やると、
一級になれるかどうかは別にして、
必ず『もの』になると思います。
それは、ぼくが断言します」
って、前に言っていたの。
根拠はないんだけど、なるほどと思いました。
「作家になるのでも何でもいいんだけど、
『俺、だめだなあ』と思いながらでも
10年間やっていると、絶対にものになる。
みんな、10年もやらないんですよ」
と言っていたんですよね。
鳥越さんのその作業も、
「そうやるといいよ」と簡単に言えちゃうけど、
でも本当に実践している奴なんて、いない。 |
| 鳥越 |
ちょっとできないと思いますね。
時間かかるものですから。 |
| 糸井 |
うん、大変なことだと思う。 |
| 鳥越 |
新聞を3つそうやって読むと、だいたい、
最低でも1時間半ぐらいかかりますよね? |
| 糸井 |
でしょうね。
で、ビビビが来ないときには、
もちろんもっと時間かかりますよね。 |
| 鳥越 |
それがつらいときがあるんです(笑)。
何回読んでも、ビビビがないときがある。 |
| 糸井 |
そうなると、野球。鳥越さんって、
勝った時にはうれしいからニュースが阪神に行く(笑)。 |
| 鳥越 |
そう(笑)。いよいよ困ったときの阪神。
そのときに勝っていてくれてればいいんだけど、
負けてると書きたくないから、困るんだなあ。
その逆で、巨人が負けて阪神勝ってるとね、
もうそれはそれだけでOK(笑)。 |
| 糸井 |
もう、ここだぞ、と。 |
| 鳥越 |
「糸井さんすいません、阪神勝ちました(笑)」。
すると、糸井さんがまた、その後で
巨人ファンの気持ちを書いてくれて・・・。 |
| 糸井 |
それは、切ないのよ(笑)。
|