「あのくさこればい」の対談版。
(雑誌『編集会議』の連載対談まるごと版)

鳥越俊太郎さんとは、「あのくさこればい」という
連載のやりとりを通じて、毎日お会いしているような
気がしていたが、あらためて「声」でやりとりしました。
いつもの連載と、あわせてお読みくださいな。

第1回 鳥越さん、そうとう覚悟決めてますね。

第2回  当然、しょっちゅう間違うわけです。

第3回  メールの影響が、乱反射している。

第4回 「届いたかな。糸井さん見てくれたかな?」

第5回 失敗例も、じゅうぶん記事になる。

第6回  素のままのほうが、信頼できる。

第7回  換えが効かない。

第8回  毎日確実に読んでくれているから。

第9回 「普通の日本語が読める唯一のページです」

第10回 「あんなものとつきあうと、病気になるぞ」

第11回  人は、会わなきゃだめだなあ。

第12回  毎日10年やると、必ず『もの』になる。


鳥越 「ほぼ日」に書くことが
どうして楽しいのだろうと思うと、
自分なりに新聞を隅から隅まできっちり読むと、
ピピピっと何か引っかかってくる違和感かなあ?
自分を全く真っ白にして、無にして、
こうやってページをめくって読んでいく、
向こうから何か矢が飛んでくるんですよ。
・・・違和感というのかな?
記事のほうから、何か信号を発してくるんです。
糸井 「これは何だ?」という感覚でしょう?
鳥越 自分で何か探しているというよりも、
向こうから訴えかけてくるという感じで。
それをずっとメモっていくわけですよね。
その中で最終的に原稿になる。
糸井 その読み方は、何かいいなあ。
鳥越 そうやってるんですよ。
その作業が、すごく楽しいんです。
決してつらくなくて、楽しい。
知的なというほどでもないですけど、
ぼくの一種の遊びでもあるんです。
しかも単に書いてあることを写すだけではなくて、
「これは何なんだろう、他紙と違うよ?
 どこかがおかしいんじゃないか?」と、
自分なりの吟味ができますから。
糸井 ぼく、想像するんですけど、
鳥越さんが今やっているようなことは、
あとでともだちとか若い人に語るときに、
「いや、だって俺はニュースの職人なんだから、
 毎日の新聞をきちんと読むのは当たり前で、
 メモしておくのも、別に普通なんだ。
 それをやっていただけなんだよね」
って自慢をしそうな気がする(笑)。
鳥越 ははは(笑)。
糸井 で、言われた奴が、
それを「当たり前」って言われたら、
おれは負けだって思わされるんだよね(笑)。

プロの人たちって、そういう、
当たり前に思われてるようなことを
上手に抜く力を持ってますよね。
そういうことをせずに手を抜く能力を持っている。
だけど、それを逆にずっとやり続けるのは、
これはすごい発明だなあと思うんですよ。

吉本隆明さんが、
「どんな職業も毎日10年やると、
 一級になれるかどうかは別にして、
 必ず『もの』になると思います。
 それは、ぼくが断言します」
って、前に言っていたの。
根拠はないんだけど、なるほどと思いました。
「作家になるのでも何でもいいんだけど、
 『俺、だめだなあ』と思いながらでも
 10年間やっていると、絶対にものになる。
 みんな、10年もやらないんですよ」
と言っていたんですよね。
鳥越さんのその作業も、
「そうやるといいよ」と簡単に言えちゃうけど、
でも本当に実践している奴なんて、いない。
鳥越 ちょっとできないと思いますね。
時間かかるものですから。
糸井 うん、大変なことだと思う。
鳥越 新聞を3つそうやって読むと、だいたい、
最低でも1時間半ぐらいかかりますよね?
糸井 でしょうね。
で、ビビビが来ないときには、
もちろんもっと時間かかりますよね。
鳥越 それがつらいときがあるんです(笑)。
何回読んでも、ビビビがないときがある。
糸井 そうなると、野球。鳥越さんって、
勝った時にはうれしいからニュースが阪神に行く(笑)。
鳥越 そう(笑)。いよいよ困ったときの阪神。
そのときに勝っていてくれてればいいんだけど、
負けてると書きたくないから、困るんだなあ。
その逆で、巨人が負けて阪神勝ってるとね、
もうそれはそれだけでOK(笑)。
糸井 もう、ここだぞ、と。
鳥越 「糸井さんすいません、阪神勝ちました(笑)」。
すると、糸井さんがまた、その後で
巨人ファンの気持ちを書いてくれて・・・。
糸井 それは、切ないのよ(笑)。



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★対談は、今日でおしまいです。
 これからも「あのくさこればい」を
 どうぞ、お楽しみくださいね。


(おわり)


鳥越俊太郎さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「鳥越俊太郎さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2000-09-19-TUE

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