「あのくさこればい」の対談版。
(雑誌『編集会議』の連載対談まるごと版)

第10回 「あんなものとつきあうと、病気になるぞ」


※はじめに、以前の「今日のダーリン」を引用します。
 この文章にからめた対談を、そのあとに続けますね。

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土曜日は鳥越俊太郎さんの60歳のお祝いの会だった。
おもしろかったのは、集まったお客さんの種類だ。
主人公の鳥越さんの新聞記者時代、週刊誌時代、
そしてテレビ時代のそれぞれの仲間や友人知人。
そして、学生時代のともだち、遊び仲間、と、
かなりブロック別に色分けできるのが、
ぼくにはなるほどなぁと思えた。
(あ、「ほぼ日」というブロックもありましたよ)
転機というものをを重ねて生きてきた
鳥越さんのスタイルをよく表しているように見えた。
その都度、新しい冒険のフィールドに飛び出して、
脱皮をくりかえして大きくなるような生き方を、
鳥越さんという方はやってきたんだろうなぁ、と。
自分の場合だったら、こんなふうにはならなそうだなぁ。
なんつーか、ぐっちゃぐちゃだろうな。
「あ、おまえ、いつ頃知り合ったんだっけ?」とかさ、
「キミって、どこで知り合ったんだっけ?」とかね、
本人に向かって尋ねちゃいそうだな。
記憶力が格別に弱いっていうこともあるけれど、
ぼくの生きてきた道に「スタイル」ってものが、
まったくないせいなんだろうなぁ。
ま、いいのわるいのじゃないんだろうけど。
どうして、こういう人間になっちまったかねぇ、と、
自分で笑っちゃいますね。
パーティに出席するのはほんとに珍しいことなんで、
いろいろ、感じることも多かったです。
愛されている人を中心にした集いは、きれいでした。
とりあえず、鳥越さん、ぼくが60になるまでは、
いまの速度で走っていてくださいね。
(2000年5月28日の「今日のダーリン」より)

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糸井 前に書いたけど、鳥越さんがすごいのは、
平気で生まれ変わるところです(笑)。
地層の断面みたいな人生を送っていて、
前のストックを飛ばして違うことしています。
鳥越 そうですかね? 
糸井 つまり、あの時はこういうことをしていたな、
と、自分のいる時代をぜんぶ置けるんです。
そのままいたら出世したのになあ、とか、
キャリアになったのになあというのを捨てて、
必ずいつも大冒険に走って、次のフィールドにいる。
だから、パーティーのお客さんを
ぜんぶ「この時代に会った人」と分けられる。

ある意味では昔の価値観から見ると、
鳥越さんのいた場所の人たちは、たぶん、
・・・と言うか絶対に、ぼくを嫌いなはず。
つまり、鳥越さんの仲間の人たちには、
ぼくは「うさんくさい」と思われる人だと思う。
でも、鳥越さんは、ぼくともしゃべれる。
それは、平気に生まれ変われるからなんです。

そういう点が、前の世代の人から見たら、
「鳥越は甘い」と思われるんじゃないかな?
「あんなものとつきあうと、病気になるぞ」
というような話なんですよ、きっと(笑)。
でも、なったとしても治癒力に自信があるから、
鳥越さんは、もしだめな奴なら、そこから
自分が変わればいいじゃない、と思える。
そういうところで話しているから、
ぼくはいつも平気で
鳥越さんに言いたいこと言えるし。


(つづく)

2000-09-17-SUN

TORIGOOE
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