| 鳥越 |
メールを見ると、
けっこう若い人が読んでるんですよね。 |
| 糸井 |
20歳代が一番多いんじゃないですか。 |
| 鳥越 |
それと女性が多いね。
主婦だったり、OLだったり、学生も結構いるし。
それから、大学の先生だとか、
医者だとか、同業者だったりするわけで・・・。
某テレビ局のキャスターが読者だったりする(笑)。 |
| 糸井 |
例えば、鳥越さんが
「もっと俺の本当の考えを
知りたかったら、ネットで読んでください。
テレビでは時間がなくて言えなかったんだけど、
もう少し言いたいことは、こっちに書きますよ。
これを読んでいる人は、わかってね」
と、トータルに伝えられる自信を持てると、
きっと、テレビでしゃべる気分も変わると思う。
どんなに「鳥越、それは違うぞ」と言われても、
毎日確実に何万人が読んでくれている事実が、
「いや、俺は確信を持ってやっているから」
と、鳥越さんを更に踏みこませてくれますよね。
「何が来ても大丈夫、だめなら
次にウェブで話しあえばいいじゃないか」
と自信を持てて、テレビとウェブが敵ではなく
親しいライバルになれたら、うれしいですよね。
でも、テレビ側は、いま売れているから、
ウェブなんか、ほんとはなくていいと考えていて、
「俺たちは何千万人を相手にしてるんだぜ。
1秒いくら経費がかかると思ってるのよ?」
と感じている面が、テレビ側には無意識にあると思う。
「ウェブって、もうかってるの?」
と必ず訊かれるし・・・。
でも、俺は「もうかってるかどうか」って、
あんまり絶対的な価値ではないと思います。
さっきの学生たちの前でしゃべっていたら、
「糸井さんのやってることはよくわかるんだけど、
ビジネス的にはまったくおもしろくないですね」って
メールもらっちゃった・・・んです。でも、その、
「おもしろくない」という言葉は、ほんとは
「ソフトがおもしろいかつまらないか」に対して
言われるべきことであって、その人の言っている
「ビジネス的におもしろいかどうか」というのは、
結局、おもしろいかどうか、
楽しいかどうか、というよりも、
お金がもうかるかどうかの価値でしょう?
俺がもうけていれば、そいつはおもしろいのか?
何か、違うと思います。
コンテンツが大事とかソフトが大事とか
言ううちに、ぼくへのプロボーズが多くなるけど、
それは、イトイが20万人抱えてるという
もうけるための数が欲しいだけですよね・・・。
もうけるもうけないという方向に
すぐに入ってしまったら、だめだと思うんです。
・・・子供っぽいことを言うようだけど、
いま、人間観や幸福みたいなものを
模索している人が、いっぱいいるのは明らかで。
五木寛之さんの本があんなに売れるのって、
本当はそういうことを欲しいからなんですよね? |
| 鳥越 |
そうですね。 |
| 糸井 |
「商品にならないから」という理由で、
その幸せ観みたいなものが、
今までは、ずっと無視されてきた。
その反動が、いま出てきているので、
「ほぼ日は商売大好き!」
と言いながら、もうかってない。
そんな変な場所に今のところはしています。
でも、いつでも、
「俺が金を嫌いだなんて言ったことが、
一度でもある? 大好きだけど、まだなんだ」
と言っているけど・・・。
「ぼくはのうのうとしていますけど、
みなさん、お元気ですか?」
って、ほんとは言いたいわけですよ。
最初から名前も「ほぼ」ってつけてるし、
前を見るための休みをとろうと思うし。
だけど、ちゃんと「ほぼ」にできるぐらいの
質になるまでは、さっきも言ったように、
まだまだ努力をする戦場なんだろうなあ・・・。
実際に、ほぼ日をはじめてしばらくは、
「アポロ13号」とか、戦場でやってる工夫、
みたいなものばっかり見てましたから。
もうそろそろ、
一生懸命働いて休暇を取るような映画を
好きにならないといけないと思います。
みんなが疲れていきますし・・・。
今は、若いやつには、要するに、
マッキンゼーやアンダーセンだのという人たちが
倒れるまで働くのがかっこよく見えるんです。 |
| 鳥越 |
電通の人の過労死もありましたよね。 |
| 糸井 |
あれ、流行っているんですよ、やっぱり。 |
| 鳥越 |
流行りですか?
過労死で若い社員が亡くなって、
お父さん、お母さんが訴えたんですよね。 |
| 糸井 |
あれは、絶対にファッションで。 |
| 鳥越 |
ファッションですか? |
| 糸井 |
はい。
そのほうがいい、というようなムードがないと、
おおぜいが、おなじようには動かない。 |
| 鳥越 |
うーん。むごいなあ。 |
| 糸井 |
いま、もてようと思ったら仕事ですよ。
それはもうはっきりしてる。ぼくは広告をやる時、
「これは流行りだな、これはそうではないな」
という目で見てきたんですけど、
いま、はたらくことは流行りになっている。
前に自分で「働くのが流行っている」と書いた時には、
すごく逆説的な気持ちで書いたんですけど。
・・・つまり、獲物をとる能力に対して
女の子の目がいってるっていうことですよね。
不景気の時には必ず、
こういうタイプの揺り返しが来て、
獲物をとれない男に、女は来なくなる。
いまは、だから獲物をとれるふりをする人が、
陸サーファーのように増えているわけですよね。
「陸ビジネス」と言うか・・・格好だけは同じで。
ほんとうに猛烈に働く人は死んだりしていますし。
で、この次にみんなの考えることというのは、
おそらく、どう遊ぶかに向かうとぼくは思います。
(つづく)
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