「あのくさこればい」の対談版。
(雑誌『編集会議』の連載対談まるごと版)

第1回  鳥越さん、そうとう覚悟決めてますね。


このページは、雑誌「編集会議」の対談と、
録音テープの素材だけは一緒のものを使って、
そいつを「ほぼ日」側が、違うふうに編集して、
勝手にたっぷりお届けして遊ぼうってなコーナーです。
今回は、鳥越俊太郎さんとdarlingの対談だよ。

「あのくさ、こればい!」は、
かれこれ、もう9か月以上、ほとんど毎日、
ニュースを解説してくれているんですよね。
・・・ありがたいことじゃ。
目立たない「ベタ記事」が、時にはその後の
大きな政変につながることも具体的にわかったし、
鳥越さんが、いかに阪神を溺愛しているのかも、
その合間の連載で、よ〜くわかりましたのだ(笑)。

鳥越さんがdarlingとはじめて話したのは、去年の12月。
麻布の鼠穴編集部まで、インタビューに来てくれたんだ。
はじめて会った3日後くらいに、初の原稿が届くという、
わけのわからないスピードの出会いになったんだよね。
「あのくさ、こればい!」新連載開始当初の、
darlingのコメントを、ここに再録してみます。

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・男気の新連載だ。取材にきた鳥越俊太郎さんをナンパして
執筆陣に入ってもらった。それにしても、忙しいだろうに、
すぐに原稿を送ってくれた九州男児の意地には拍手だった!
3分間で、最近のニュースを知る。「あのくさこればい!」
          (99年12月7日の「ほぼ日」より)

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実は、鳥越さんとdarlingって、12月の取材を含めて、
今日に至るまで、まだ3回しか直に会ってないんだよ?
でも、このふたり、メールの会話を毎日つづけている。
親しみの度合いが、なーんか、不思議なのです。
だって、この対談は3回目の出会いにも関わらず、
ふたりが会ってまず交わした言葉って、
「いやあ、昨日のメールはさあ・・・」。
・・・おい、あなたたち! 
いきなり一言目から、メールのつづきかい!(笑)

そんな会話を、今日から連載でお届けします。
今回は、まず、ふたりの会話の「さわり」から・・・。



糸井 伝えることって、むつかしいですよね。
このあいだ、慶応の藤沢キャンパスで、
授業に行ってしゃべる機会があったんです。
去年もしゃべったので、2回目でした。
で、授業の最後に質問を受けたら、

「去年にもこの授業を聞いていて
 とてもおもしろかったんですけど、
 その時に、糸井さんが『***』と
 おっしゃっていたあれは、何なんですか?」

と言う人がいまして。
「おもしろかった」という結論は
とてもありがたいことなのだけども、
その内容の「***」というのが、
実は、去年にぼくの言ったことの、
まったく逆だったんですよ!
目の前で直接しゃべるという単純なことでも
真っ反対に捉えている人たちがいるわけで、
例えばその人が「こうだったよ」と誰かに伝えたら、
1人介しただけで内容がおしまいになってしまう。
受け取る人によって、伝わることが逆になるんだから、
週刊誌でその通りに内容を全員に伝えきることも、
きっと、絶対に無理ですよね?
鳥越 活字の場合は、
まだ一定の露出期間がありますから、
最初の印象で違う受け取め方をしていても、
きちんと何回か読み返してくれさえすれば
本当のことがわかるというところがあります。
でも、今ぼくが「ザ・スクープ」をやる時のような
テレビの報道では、伝える機会が「瞬間」でしょう?
だから、そう言ったつもりなんだけれども、
視聴者は違うふうにとらえているのかなあ?
と思わされることが、とても多いんです。
糸井 それは、ありますね。
鳥越 テレビでの発言は、
久米宏さんのような言葉の天才が
きちんと言えば別でしょうけれども、
ぼくのように素人でモタモタしゃべってると、
まったく正反対に取られてしまいかねないんです。
糸井 たぶん、そこのところカバーをするために、
久米さんの場合は、表情という武器を使いますよね?
あの表情とか体の姿勢が、ぜんぶ言葉がわりで。
そうとう、練れていますよね。
鳥越 とてもじゃないけどまねできない。
糸井 でも、ぼくが「おっ」と思うのは、
テレビでの鳥越さんは、とにかく基本的に、
「少なくしゃべる人」に見えている点です。
そこが、すごくおもしろい。
鳥越 どういうことですか?
糸井 つまり、鳥越さんは、
たくさんの内容がぜんぶ伝わるという
前提に立ってしゃべっては、いないんです。
「伝わるとしたら、これしかないから、
 それなら、ここだけは必ず言っておこう」
という形で、だいたいはお話をしてますよね?
鳥越 それは、そうですね。
糸井 あれは、週刊誌やっていたおかげなんでしょうかね。
見出しでしょう?要は。
鳥越 はい。
週刊誌をやったことも関係ありますし、
テレビに来てから否応なしに学ばされたと言うか。
つまり、長くしゃべっても、
視聴者が受け取る情報の量というのは、
実はそんなに多くないんだなあと感じました。
そうなると、
「結論を最初にぱっと言おう」
とか、比喩で言うだとか、
「他は忘れられてもいいけど、
 今日はこれだけは伝えたい」
とかいうように、こちら側で
覚悟を決めないとだめだと思うんです。
糸井 そうとう、覚悟を決めてますね。
鳥越 ですから、毎回、今日は何を言おうかな?と。
例えば5文字なら5文字で言えることを探す。
このあいだ、森首相の話をした時にも、
「森さんは裏口入学の総理大臣だ」と
それしかきょうは言わないというような・・・
そういう覚悟は、やっぱりあります。
糸井 それをするためには、
放送前の綿密な打ち合わせが
必ず前提になるから、露出は5秒でも、
書くよりも、却って時間がかかりますよね?




★この対談は、明日につづきます。
 「メディアでものを伝えること」について、
 けっこう本格的な会話になっていきますよ。

(つづく)

2000-09-08-FRI

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