| 鳥越 |
ページを読んでくれる人たちは、
「詳しいことを知りたければ、
当事者に聞いてきましょうか?」と言ってくれる。
そういうふうに横に広がっていくのは、
ぼくはウェブの世界が初めてだった。
その大学院の学生さんとのやりとりも、
読んでくれるみんなが見ていて、
それについてまた意見を持ってきてくれて。
もちろん新聞も投書欄があるんだけど、
そういう投書なんかとはちょっと違いますね。 |
| 糸井 |
メールは、枠組みが違う感じがしますね。
その京大の読者のかたと鳥越さんは面識がないし、
だいたい、ぼくと鳥越さんがお会いするのも、
実は今日で3回目で・・・笑っちゃいます。 |
| 鳥越 |
ほとんど毎日やりとりしてるから。 |
| 糸井 |
どちらかがよほどくたびれた時には
文通が途絶えるんですけど、基本的には
「じゃあ、ぼくももう寝ます」とかやってる。
すると、前からやってきている「会う」ことと、
会わないけどこうやって、
毎日頻繁に情報なんだか感情なんだか、
よくわからないものをやりとりすることとの
優先順位が、わかんなくなっちゃいますよね?。
ついこの間の鳥越さんの
お祝いのパーティーでお会いした以外には、
ぼくたちがお会いしたのって、
テレビの鳥越さんの番組取材を受けただけでしょ?
おかしいよね。そういう事実自体が。 |
| 鳥越 |
もう半年以上もほとんど毎日の文通で。
糸井さんがお疲れな時だとか、
埋蔵金を堀りに行ってる時は違うけど(笑)。 |
| 糸井 |
「もうだめ」な日以外は
お返事を出してるんですよね。 |
| 鳥越 |
それがね、ぼくはすごいなあと思う。 |
| 糸井 |
毎日書くって、絶対につらいんですよ。
「俺よりつらいやついないな」
という気持ちに夜中になるはずです。
つまり、鳥越さんが、本当はもう寝て、
どなり散らして酒飲んで寝ちゃいたいなあ、
と感じたとしても、その日もその後、
「書く時間」になるんです。
その気持ちは自分でわかるので、だから、
だれもいないところに送っている、となると、
癪じゃないですか。「つらい」って思う・・・(笑)。
その時に「大丈夫ですよ、私もいます」と言うのが
ぼくの役なんですよね。 |
| 鳥越 |
それは、その通りだと思いますね。
夜中の2時や3時ぐらいとか、
もう本当に酒飲んで酔っぱらって帰ってきて、
「ああ、きょうはまだ書いてない」と思ったり。
そういう予感のある日には、朝に、
1行でも2行でも書いておくんですよ。
頭だけ書いて、保存かけて、それで出ていく。
で、帰ってそれを呼び出して続きを書く。
でも、2時とか3時とかになると、本当に
頭が爆発しそうになってきますよね・・・。
それでもいちおう送って終わって、
眠る前に2階の仕事場から1階で一息ついて、
そのあとまた2階のベッドに行くんですけど、
完全に眠る前に、もう一度仕事部屋に入っちゃう。
起動スイッチを、かけるわけですね(笑)。 |
| 糸井 |
ドラマだなあ。 |
| 鳥越 |
「届いたかなあ。糸井さん見てくれたかな」
「あっ、今日はメール来てない。
糸井さん疲れてもう寝ちゃったのかな」
とか思ったりして・・・。 |
| 糸井 |
それでお互いの疲れ度がわかりますよね。 |
| 鳥越 |
うん。わかるんだよね。
「糸井さんは今臨戦態勢で戦場にいるんだな」
「今日はどこかよそでパソコンを開いてるな」
と、わかる。
正確にどこで何をしているかはわからないけど、
おぼろげながら糸井さんの行動が見えながら、
そういうのを思いながら、ベッドにつくんです。 |
| 糸井 |
逆に、ぼくの方からもそう見えてる。
特にオンエア終わった日には、
鳥越さんがどう動いてるか想像つきます。
「今日のやつが終わった後ぐったりだろうな」
と、生放送からわかるわけですよ。
特に日曜「ジャングル」の放送は夜中に終わるから、
うわあ、今ごろ着いたにしても、この時間から
書くのは、嫌だろうなあと思ったり。
土日と放送をやったあと、つまり
ぼくもわかるのは、魂を使っちゃった日には、
体が、からっぽになるんですよね。 |
| 鳥越 |
はい、「から」になってます。
だから、お酒でそれを多少いやすというか、
そこを埋めようとして飲みに行くんです。
でも、体はからっぽになってるんだけど、
神経だけは、何だかやたらに高ぶっている。
・・・ピキピキしてるわけ。 |
| 糸井 |
その時にもう1つ仕事をするなんて、地獄ですよ。
それをしてくれる人がいるというところには、
わけのわからない、ひな鳥と親鳥の関係みたいな、
ミミズをくわえてもう1人渡して、が要るんで。
だから、羽はぼろぼろになっても、
一匹でもひなに渡していなければ、
もう1回行くのよ。ミミズを取りに。
仕事を終えたあとに、
もう1回エンジンかけ直すことの恐ろしさは、
自分も毎日やっていることですから、
想像をするんですよ。
そうすると、日曜の夜には、本番終了後の
鳥越さんを思って、泣きそうになるよ、俺。
(つづく)
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