「あのくさこればい」の対談版。
(雑誌『編集会議』の連載対談まるごと版)

第4回 「届いたかな。糸井さん見てくれたかな?」


鳥越 ページを読んでくれる人たちは、
「詳しいことを知りたければ、
 当事者に聞いてきましょうか?」と言ってくれる。
そういうふうに横に広がっていくのは、
ぼくはウェブの世界が初めてだった。
その大学院の学生さんとのやりとりも、
読んでくれるみんなが見ていて、
それについてまた意見を持ってきてくれて。

もちろん新聞も投書欄があるんだけど、
そういう投書なんかとはちょっと違いますね。
糸井 メールは、枠組みが違う感じがしますね。
その京大の読者のかたと鳥越さんは面識がないし、
だいたい、ぼくと鳥越さんがお会いするのも、
実は今日で3回目で・・・笑っちゃいます。
鳥越 ほとんど毎日やりとりしてるから。
糸井 どちらかがよほどくたびれた時には
文通が途絶えるんですけど、基本的には
「じゃあ、ぼくももう寝ます」とかやってる。
すると、前からやってきている「会う」ことと、
会わないけどこうやって、
毎日頻繁に情報なんだか感情なんだか、
よくわからないものをやりとりすることとの
優先順位が、わかんなくなっちゃいますよね?。

ついこの間の鳥越さんの
お祝いのパーティーでお会いした以外には、
ぼくたちがお会いしたのって、
テレビの鳥越さんの番組取材を受けただけでしょ?
おかしいよね。そういう事実自体が。
鳥越 もう半年以上もほとんど毎日の文通で。
糸井さんがお疲れな時だとか、
埋蔵金を堀りに行ってる時は違うけど(笑)。
糸井 「もうだめ」な日以外は
お返事を出してるんですよね。
鳥越 それがね、ぼくはすごいなあと思う。
糸井 毎日書くって、絶対につらいんですよ。
「俺よりつらいやついないな」
という気持ちに夜中になるはずです。
つまり、鳥越さんが、本当はもう寝て、
どなり散らして酒飲んで寝ちゃいたいなあ、
と感じたとしても、その日もその後、
「書く時間」になるんです。
その気持ちは自分でわかるので、だから、
だれもいないところに送っている、となると、
癪じゃないですか。「つらい」って思う・・・(笑)。
その時に「大丈夫ですよ、私もいます」と言うのが
ぼくの役なんですよね。
鳥越 それは、その通りだと思いますね。
夜中の2時や3時ぐらいとか、
もう本当に酒飲んで酔っぱらって帰ってきて、
「ああ、きょうはまだ書いてない」と思ったり。
そういう予感のある日には、朝に、
1行でも2行でも書いておくんですよ。
頭だけ書いて、保存かけて、それで出ていく。
で、帰ってそれを呼び出して続きを書く。
でも、2時とか3時とかになると、本当に
頭が爆発しそうになってきますよね・・・。

それでもいちおう送って終わって、
眠る前に2階の仕事場から1階で一息ついて、
そのあとまた2階のベッドに行くんですけど、
完全に眠る前に、もう一度仕事部屋に入っちゃう。
起動スイッチを、かけるわけですね(笑)。
糸井 ドラマだなあ。
鳥越 「届いたかなあ。糸井さん見てくれたかな」
「あっ、今日はメール来てない。
 糸井さん疲れてもう寝ちゃったのかな」
とか思ったりして・・・。
糸井 それでお互いの疲れ度がわかりますよね。
鳥越 うん。わかるんだよね。
「糸井さんは今臨戦態勢で戦場にいるんだな」
「今日はどこかよそでパソコンを開いてるな」
と、わかる。
正確にどこで何をしているかはわからないけど、
おぼろげながら糸井さんの行動が見えながら、
そういうのを思いながら、ベッドにつくんです。
糸井 逆に、ぼくの方からもそう見えてる。
特にオンエア終わった日には、
鳥越さんがどう動いてるか想像つきます。
「今日のやつが終わった後ぐったりだろうな」
と、生放送からわかるわけですよ。
特に日曜「ジャングル」の放送は夜中に終わるから、
うわあ、今ごろ着いたにしても、この時間から
書くのは、嫌だろうなあと思ったり。
土日と放送をやったあと、つまり
ぼくもわかるのは、魂を使っちゃった日には、
体が、からっぽになるんですよね。
鳥越 はい、「から」になってます。
だから、お酒でそれを多少いやすというか、
そこを埋めようとして飲みに行くんです。

でも、体はからっぽになってるんだけど、
神経だけは、何だかやたらに高ぶっている。
・・・ピキピキしてるわけ。
糸井 その時にもう1つ仕事をするなんて、地獄ですよ。
それをしてくれる人がいるというところには、
わけのわからない、ひな鳥と親鳥の関係みたいな、
ミミズをくわえてもう1人渡して、が要るんで。
だから、羽はぼろぼろになっても、
一匹でもひなに渡していなければ、
もう1回行くのよ。ミミズを取りに。

仕事を終えたあとに、
もう1回エンジンかけ直すことの恐ろしさは、
自分も毎日やっていることですから、
想像をするんですよ。
そうすると、日曜の夜には、本番終了後の
鳥越さんを思って、泣きそうになるよ、俺。


(つづく)

2000-09-11-MON

TORIGOOE
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