| 鳥越 |
インターネットの社会では、
やろうと思えば何でもできるんですよね。
3月のなかばの頃、「あのくさこればい」を
連載を打ち切ろうと思えば切れたはずなのに、
逆にぼくの休んでいる間に、例えば読者で
ぼくに代わって「筑後弁はこんなんです」と
教授の役を、ひとしきりやっていた人がいて。 |
| 糸井 |
あれ、おかしいでしょう? |
| 鳥越 |
おかしいです。そういうふうに
自由自在にできるなというのが
本当おもしろかったですね。 |
| 糸井 |
鳥越さんのやっていたことが、
換えが効かないというのがおもしろかった。
ニュースの一部分を出す機能だけなら、
換えが効くんだけど、このコーナーは
鳥越さんにしかできない、換えが効かない。
他の人がやると全く違うものになりますよね。
こういうのって、今まで経験がないんだけど、
全部の情報が個に属するよなあと思います。
誰から聞くかというのがすべてですよね。
雑種の犬を飼っていても、
あの犬じゃなきゃだめなんだ、
というところが、いちばん大事だと思います。
ほんとはそうなのに、プライオリティーを、
他人の価値観というか・・・誰かが作った
住民投票に自分の考えを寄せて考えていると、
システムに縛られて、人間が、どんどん
個性をなくしていくことになっちゃうよね。
あの連載を読んでから
新聞読むようになった人がいるんですよ。
それも、笑っちゃいますよね。
「新聞要らなくしますよ。
3分間でわかるようにします」
というふりをしたページなのに、
逆に新聞がもっとおもしろくなったのだから。
「3分間で、今日のニュースを知る」は、
作りたいなあと思うきっかけがありまして。
去年、雑誌で、吉本隆明さんと
人生相談のページを雑誌でずっとやっていて、
その時に聞いたことがあるんです。
「吉本さんの情報ソースって何なんですか?」
そうしたら「新聞に全部書いてる」って。
「新聞に大体のことが書いてありますから、
ぼくはそれで足りる。新聞って、
義務としていろんなことをぜんぶ書くから、
それを利用すればいいと思います。
職業的に考えるときには他のものが
必要でしょうけど、資料としてではなければ、
新聞にはおおむねのことは、みんな書いてありますし」
そう言われたときに、ああ、新聞はすげえなあ、
じゃあ、ニュースの取り上げ方というのを、
今ある視点じゃなくて、プライオリティーを変えて
連載をすればすごくいいなあ、と思っていた時に、
偶然、鳥越さんに会ったんですよ。 |
| 鳥越 |
糸井さんに「やってみませんか」って言われて
ああそうか、おもしろそうだなあと。
帰って考えてるうちに、やってみるか、と思って、
確かその日か次の日のうちに、
すぐに原稿を送ったんですね。 |
| 糸井 |
最初にファクスで、
「やることにしました」っていただいて。
この文字がね、枡目関係ない書き方で(笑)。 |
| 鳥越 |
筆で(笑)。 |
| 糸井 |
その世界の人が入ってくるってのは、感動しました。
筆ペンが来るぞ!と思った時、おもしろかったな。
まさか本当にこんなに続くとは思わなかった。
毎日続ける大変さを自分でも知ってますから。
連載って、ほんとにお客さんが育てるものですよね。 |
| 鳥越 |
そうですね。
やっぱりね、期待していると言うか、
喜んでいる、楽しみにしているようなメールが
転送されてくるわけですよね。どんどん来る。
そうすると、だんだんと
責任みたいなものが出てくるんですよね。 |
| 糸井 |
この役しているのは俺しかいないだろうな、
というようなちょっとした恍惚も?(笑)。 |
| 鳥越 |
それもあるかもしれない。 |
| 糸井 |
他に、これできる人、1人もいないですから。 |
| 鳥越 |
やっぱりぼくの場合、
期待されてる感が大きいですね。 |
| 糸井 |
これを誰かがはじめるとするじゃない?
でも、俺、絶対挫折するって自信があるんだよね。
何かわけのわからないようないろんな要素が
山ほどないと、これはできないと思うから。
続けていくうちに、動機が失われるんです。
「1回だけ休むか」と、1回ぐらい
平気で休みますよね。もう立ち上がれないよ、普通。
でも、鳥越さんは恐ろしいことに、
病気のあとにも立ち上がるんだよね。
こういうことを、この人はあと10年ぐらい
やりそうだなあと思うと、ぞっとする。
俺も年寄りなんだけど、
「若いやつ、お前、これ見てどうする?
コンパやってる暇ないよ」みたいに思う。
でももちろん、休みが大事だとは感じますけど。
(つづく)
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