「あのくさこればい」の対談版。
(雑誌『編集会議』の連載対談まるごと版)

第9回 「普通の日本語が読める唯一のページです」


鳥越 連載をやっている上で
ぼくがもう1つ驚いたのは、
インターネットならではで、
新聞でもテレビでもできないことです。
それは・・・
例えばぼくが英語教育について書くと、
メッセージが世界中から来るんです。
あの時はびっくりしました。

北京、シンガポール、マレーシア、
アイルランド、ロンドン、ニューヨーク、
ロサンゼルス、そのぐらいだったかな?
もう世界中から。それはつまり、
ぜんぶ日本の駐在員がいる場所なんですよ。
彼らは、日本のニュースに飢えているわけ。
ニューヨークとかロサンゼルスは
現地印刷をやっているから、日本の新聞を、
買おうと思えば買えるんですけど、
でも、その他のところでは、
日本のことはほとんどわからない。
でも、インターネットには、
世界のどこからでも瞬時にアクセスできるし、
外国で新聞を購読するよりも、安いわけで。

ぼくのところに来るメールを拝見していると、
みなさん日本のニュースに飢えていると感じます。
ただ、ぼくはトップ記事だとかそういうのを
ぜんぶ飛ばしてしまうので、その人たちに向けて
日本のいちばん重要なニュースを
お届けすることはできていないんですが・・・。

でもね、メールを見ていると、
日本国内で情報の氾濫している中で来る方とは、
何か意気込みや息づかいが違うんですよ。
それは、すごい発見だったね。
糸井 外国からのメールは、
だいたい、いいですね。飢えが違う。
鳥越 そう、飢えてるのよ。
ニュースへの気がかりがあって。
だから、そういうのが来ると、
やっぱり少々眠くてもやらにゃいかんと(笑)。
外からの思いは、すごく不思議だよ。
糸井 外国で見られている方から、
「普通の日本語が読める唯一のページです」
と褒められた時は、うれしかった。
つまり、ここで使われている言葉は
ぜんぶ話し言葉と地続きですよね。
いつもそのまま使ってる言葉を
外国で聞けると、ほっとするんでしょう。
鳥越 でしょうね。そうだと思いますよ、本当に。
だから、外国にいらっしゃるかなりの人が、
毎日「ほぼ日」読んでいらっしゃると思います。
割と、駐在員の奥さんなんかが多いわけですよね?
だんなは仕事で、奥さんが家にいるでしょう。
そうすると、最近の若い奥さんなんかだと
パソコンを使えますから、つながる。
糸井 書いてある内容にほっとしてるんですよね。
鳥越 しかも、ぼくらが逆に取材をしようと思ったら、
質問を発すれば返してくれます。
糸井 ときどき本当に役に立ってますね、
鳥越さんが「そっちはどうですか?」と訊いて。
鳥越 ぼくは最初からそうできるとは思ってなかった。
でも、自分でわかんないことがあったから、
「わかんないから、これ、誰か、
 わかっている人がいたら教えてください」
と、ついうっかり書いちゃったことがありました。
そしたら、ぱぱぱっと返ってくるわけ。
すると、味しめるわけだよ、こっちは(笑)。
「そうか、そうなるとこれは、
 みんなが持っている情報とか知恵とかを、
 うまく取りこまない手はないな」と。
糸井 ぼくが転送した分で言えば、
鳥越さんが喜んでくださる海外からのメールは、
おそらく10通に満たないぐらいですよね。
鳥越 そのくらいですよね。
糸井 で、客観的にウェブが語られている時には、
数で「たった10通?」と思われがちだけど、
その10通の重みと質が、ほんとにものすごい。
ただ見ましたっていうのが100万通来るのと、
「私はこう考えている、こちらでは
 こういう風にとらえられています」
というのが10通来るのとでは、
どっちが価値あるのといったら、こっちで。
ひょっとしたら2通でもいいぐらいですよね。
その2通は、人間がちゃんと
自分の頭で考えている内容なので、
数字に置きかえちゃいけないんですよ。
意味は数字にないことをかなり重要視しないと、
ウェブは、育てられないと思います。
人って、扱える場所でしか情報を扱わないから、
すぐに数字でとらえようとしちゃうんだけど。
鳥越 ディテールにわたった自分の経験を
ずっと書いてくれるので、すごい勉強になります。
本にも書いてないものだから。
糸井 書いてないですよね。
こちらも生で動きながら質問して、
動きながら答えてもらうという情報が
いちばんやはり大きいですよ。
人の地に蓄積している情報って。


(つづく)

2000-09-16-SAT

TORIGOOE
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