アンリ・ベグランさんに訊く
12月のスペシャルカバー
「アンリ・シリーズ」のこと
2009.11.30
ほぼにちわ。です。

いよいよ明日から12月ですね。
明日は、2010年の手帳を使いはじめよう!
という方も、多いのではないでしょうか。
使いはじめの感想なども、ぜひ教えてくださいね。

そして同じく明日は、12月のスペシャルカバー、
「アンリ・シリーズ(VOLUME)」
販売がスタートする日でもあります。

「アンリ・シリーズ(VOLUME)」は、
「HENRY CUIR」(アンリークイール)の革職人、
アンリ・ベグランさんとのコラボレーションで生まれた、
オール・ハンドメイドの限定版革カバーです。

本日からはじまった、アンリさんと糸井重里の対談
「メイキング・オブ・VOLUME(ボリューム)」では
この手帳カバーができるまでの物語を
全6回にわたってお届けしてまいります。
アンリさんが実際にカバーを作る様子を、
動画でご覧いただくコーナーもあります。必見!

そして、本日の手帳クラブでは、
イタリアのヴィジェーヴァ丿の工房を
糸井重里とともに訪問した
手帳チームのによる、
アンリさんへのインタビューをお送りします。

本編に入る前に、
ここで、もうひとつ大切なお知らせを

「アンリ・シリーズ(VOLUME)」の実物を見たい!
という方のために、
アンリさんのお店、「アンリークイール青山本店」で、
「アンリ・シリーズ(VOLUME)」全5種類のサンプルを
期間限定でご覧いただけることになりました。
くわしくは、このページの最後でお伝えいたしますので、
ご検討中のかたは、どうぞお見逃しなく!



遥かな時を刻んだトンボ玉。

ーー さきほど工房のなかを案内していただいたとき、
ちょっと見せていただきましたが、
しおりについているアンティークのトンボ玉について
教えていただけますか。



アンリ これは、ヴェネツィアで作られたものですね。
とても古い練りガラスのトンボ玉。
たぶん、5、600年くらい前のものです。
かわいいでしょう?
ひとつひとつ、みんな違うんです。
ーー ええ、とても!
それにしても、5、600年前というのは
驚きました。
アンティークとはうかがってましたが、
そんなに歴史があるとは想像もしていなくて。



アンリ そう、ヴェネツィアに生まれて、
交易船に載せられて、アフリカに渡って。
ここまで、ずいぶんと、
長い旅をしてきたんだと思います。
ーー ヴェネツィアから、アフリカへ‥‥。
どんな物語があるんでしょうか。
想像するだけでわくわくします。

刺繍のモチーフに込めた思い。

ーー 今回のカバーには、表と裏それぞれに、
小さな刺繍が入っています。
犬や花、自転車など、
5つのモチーフがありますが、
このモチーフはどうやって
選ばれたものですか?
アンリ 革職人になってこの40年間、
数えきれないほどたくさんのものを
つくってきましたけれど、
そのなかでもとくに、
どこか自分に似ているもの、
自分を思い出せるようなものに
愛着をもっています。

このなかでは、自転車がそうですね。
もっと若い頃には、どこに行くにも、
いつも自転車に乗っていました。
子どもを学校に迎えに行ったり、
買い物に行ったり‥‥。
たぶんその頃、ミラノ市内で
自転車に乗っている人も
あんまりいなかったんですけど。


自転車はとても便利で、からだにもいいし(笑)、
それから、ちょっとロマンティックなところもあって。
過去、歴史、郷愁、自分の思い出もふくめて、
自転車は、大事なモチーフのひとつになってますね。
ーー なるほど。
アンリ それから、花は「自然」のシンボルですね。
自然が大好きなんです。
自然なものが大好きで、人間はもっと、
自然を尊敬しなければならないと思うんです。
いまの時代にこそね。


犬も、そういう自然のシンボルのひとつですね。
たとえば、犬から学べることもたくさんあります。
犬は、基本的に悪いことしませんし、
常に自分の飼い主を尊敬して、忠実です。
信頼とか、純粋であることとか、
とても大事なことを思い出させてくれます。


ーー 犬の刺繍は、5つのカバーすべての裏側に、
共通して入っていますね。
アンリ そうですね。
こんなふうに、ふたつのシンボルを
組み合わせることも、よくあります。
そうすることで、
さらに大きな意味をもってくるんです。

ぼくは、自分のなかにある子どもの部分を
大事にしたいと思ってるんですね。
子どもの気持ちを思い出させてくれるものに、
こういう自然に関するシンボルがあって、
それをふたつでも、3つでも
こうして組み合わせることが、とても好きです。
ーー 「馬に乗っている人」は、
ネイティブ・アメリカンですね。


アンリ そう。ネイティブ・アメリカンも
自然をあらわす大事なシンボルです。
彼らは、とてもすばらしい。
自然のなかで、自然を守りながら
とてもシンプルに暮らしています。
自然をリスペクトして、
自然と共存しながら生きること、
彼らから学べることも、たくさんあります。
ネイティブ・アメリカンのイメージには、
花とか動物、犬とか、すべてが含まれています。
ーー なるほど。



アンリ 人間というのは、とても頭がいい生きもので、
どんどん新しい、
性能のいい機械を作ることができますよね。
それを使えば、いろいろ便利なものを
作れるのかもしれません。
けれども、いまのほとんどの機械は、残念ながら、
自然をリスペクトしていません。
人間も、もともと自然の一部だということを忘れて、
それを置き去りにしたまま生きていくとしたら、
明るい未来は想像できないと、ぼくは思います。
みんながもっと、考える必要がありますね。
こういう、犬だとか、ネイティブ・アメリカンは、
そのシンボル。それから自転車も。
そう、車ではなく、自転車なんです。
ーー ああ、よくわかりました。

5つめのモチーフは「アンリさんの顔」ですね。


アンリ あはは、そう見えますか?
これは、そう、ちょっと特別なシリーズで、
エスニックなテイストがあります。
自分に似たものと、自然が好きだとお話しましたが、
もうひとつ、とても好きなのが、
エスニックの文化です。

自然を大切に思うことともつながっていますが、
素朴なエスニックの、歴史を刻んだものには
とてもすばらしいものがあります。
昔のものはシンプルなものが多いけれど、
その質であったり色であったり、そういうのは、
なかなかいま、もう誰もつくれないんですね。
どんなに優れた機械を使ったとしても、
真似できるものではありません。
そういう、忘れてはいけないことを、
エスニックのテイストのモチーフが
いろいろ思い出させてくれると思っています。

どれもシンプルなものばかりですが、
こういうものから、使う人が何かを想像したり、
何か考えたり、思い出したりしてくれたら、
ハッピーだなと思うんです。

アンリさんの原点の色を。

ーー それから、革についてお訊きします。
この手帳のカバーをつくるときに、
わたしたちは、
アンリさんの原点の色を選んでください、
とお願いしました。
そうして選ばれたのが、今回の5色ですね。
そのことについてうかがえますか。
アンリ この革は、ケミカルなものは一切使われていない
タンニンなめしの革で、
100%自然由来の染料で染めてあります。

色の選択の幅はあまり広くはなくて、
一番ナチュラルな状態では、
このキャラメルに近い色をしています。
薄い茶色から黒までと、あとボルドー、
この5つのバリエーションがすべてです。



でも、原点の色をというリクエストをいただいて、
この5色に決めるのに迷いはありませんでした。
ぼくにとっては、この5色だけで十分なんです。
どれも、この革のよさをもっとも活かせる色。
もちろん、お客さまにとってはもしかすると
ほかの色のリクエストもあるかもしれませんが、
この素材のよさを引き出せるのは、
まちがいなく、この5色なんです。
ーー この革の良さというのは、
どんなところにありますか?
アンリ さきほど見ていただいたように、
オール・ハンドメイドで、
ひと針ひと針手縫いしていますから、
素材はとても重要です。
この革のように上質なものは、革に穴をあけるときや、
縫うときの、針の入り方がぜんぜん違う。
そうすると、仕上がりがよりきれいになります。

それから、この革は、いい歳のとり方をします。
歳をとっても、どんどんきれいになっていく。
色は若干変わったりもするけれど、
長く使うほど、この革の良さを味わえますよ。
ーー 歳をとっても、どんどんきれいになっていく。
すてきですね。
アンリ そうですね。
とくに、いい革ほど、長持ちしますから。
長持ちするということは、とても重要です。

たとえば、このカバーの袖の部分は、
折りやすいように裏側に筋を入れていますが、
あまり質のよくない素材を使うと、
その筋が表側にも出てしまったりとか、
きれいに折ること自体も難かったりします。
あと、穴をあけたところから
壊れてくることもありますしね。
つまり、使えば使うほど、
壊れる可能性が増えてしまうということです。
だから、いい革を使うことは、大事です。
ーー いい素材を選ぶのも、重要なんですね。
革は、アンリさんおひとりで選ぶんですか?
アンリ 革の展示会などに素材を選びに行くときは、
妻と、それから工房で働くアレッシオが
いっしょですね。
妻は、いま素材を選ぶことが大好きで、
経験も積んでいます。

アレッシオは、ご両親ともに靴をつくる職人で、
彼は生まれてからずっと、
その両親のそばで革に触れて育ちました。
両親は自分たちの工房をもっていて、
アレッシオはほんの小さいころから、
学校が終わったら毎日工房で過ごしていたんです。
だから、彼は革をよく知っている。
革のことを、なんでもわかってます。
ーー 革を選ぶときのポイントはありますか?
アンリ いい革を見分けるには、
まず、革を触ってみることですね。
引っ張ったり、折り曲げてみたり。
あと、匂いですね。
そういうことが、とても大事です。

その名は「VOLUME」。

ーー 最後に、今回のシリーズを、
「VOLUME(ボリューム)」と名づけた、
その由来を教えてください。
アンリ 「VOLUME」というのは、
フランス語でもイタリア語でも、
書物に関する言葉で、
たとえば、なにかの全集があったとしたら、
それぞれは、volume 1、volume 2‥‥
ーー あぁ、第1巻、第2巻、
「巻」とか「冊」にあたる言葉ですね。
アンリ そうです。
イタリア語の発音で、ボルーメ。
基本的に大事な中身のあるものですから、
これからそのなかに入れていくものを
大切にするという意味で
この手帳カバーにつける名前として、
ふさわしいと思ったのです。


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アンリさんのオール・ハンドメイドの限定カバー、
「アンリ・シリーズ(VOLUME)」は、
明日12月1日(火)午前11時から販売を開始します

販売期間は、12月10日(木)午前11時まで。
くわしくはこちらをご覧ください。

東京南青山、骨董通りに面してたつアンリさんのお店、
HENRY CUIR アンリークイール青山本店にて、
期間限定で「アンリ・シリーズ(VOLUME)」の
サンプルをご覧いただくことができます。

【サンプルをご覧いただける期間】
12月2日(水)~7日(月)および9日(水)

HENRY CUIR アンリークイール青山本店
〒107-0062 東京都港区南青山6-5-36 キングホームズ青山 1F
Tel: 03-3797-1145
定休日: 火曜日
営業時間:平日12:00 - 20:00 / 土、日、祝11:00 - 19:00


※「アンリ・シリーズ(VOLUME)」はほぼ日ストアでの限定販売です。
 店頭でご購入いただくことはできませんので、あらかじめご了承ください。

※サンプルをご覧になる際には、お店のスタッフの方にお声がけください。
 (サンプルは、店頭には並んでおりません)

※12月3日(木)~6日(日)の4日間には、同店にて
 アンリークイールの「春夏新作お披露目会」が開催されています。
 期間中には多数のお客さまのご来店が予想されるため、
 サンプルをご覧いただく際にお待たちいただく可能性があります。
 あらかじめご了承の上、お運びください。