胸から伝わるっ。
ピーチ・ジョンがふくらんでいく物語。
どういう読み方をされるんだろう?
ある女性のサクセスストーリーにも読めるし、
女性用下着の通信販売で評判のブランドの、
人気の秘密を探るインタビューにも読めるかも。

でも、実用記事として、だけじゃなく、
勇気と友情の冒険物語としておもしろいと思うんだ。

なお、「ピーチ・ジョン」のホームページはこちらです。

第1回 女の子のための下着通販。

第2回 女の人の生き方は。

第3回 生意気なビジネス書。

第4回 広告ほど真実はない。

第5回 カタログを作るということ。

第6回 リアルな野望とリアルなコピー。

第7回 シワもシミも、カタログに載せたい。

第8回 商品を少し隠すことで、反響を生む。

第9回 漠然とした上京。

第10回 会社を休んだ日に、この人ったら。

第11回 リンダと出会う。

第12回 仕事を教えてくれた人。

第13回 ミニクラブってところ。

第14回 雑誌に載っていないことを知りたい。

第15回 「来る?」っていうから「いいっすよ」。

第16回 こんな広告つくるの?!

第17回 何でもできる、手放せない女の子。

糸井 会社の営業は成り立っていたわけ?
野口 会社は、一時期、
卸売でカタログハウスのナンバーツーの業者、
くらいまでは、行っていましたから。

そこはやっぱり、ダンナが商売人で、
卸売で、じゅうぶんに儲かっているんですよ。
しかも、事務所にはダンナとわたしと、
あとせいぜい忙しい時には
バイトの子がふたりくらいいれば、
成り立っちゃうんです。
糸井 卸売では、何を売ってたの?
野口 チャック・ウィルソンさんが広告に出てた、
「ルームジム」という、
自宅でからだを鍛える商品とか、です。
糸井 俺のともだち、買ったよそれ。
野口 あ、そうですか?

あの説明書も、ぜんぶつくりました。
カタログハウスの人と一緒に。
カタログハウスの社長を、
ダンナは、尊敬していたんだけど。
糸井 カタログハウスの社長、おもしろいよね。
商いでやっているけど、
商いで飽き足らないところを、
いつも山ほど持っていて、
そこで、どうやって
仕事をしていこうかという発想を取るから、
おもしろいんですよね。
野口 はい。

ただ、その納品が
すごく大変だったので、
カタログハウスの卸しから、途中で
撤退せざるをえませんでしたけども。

ルームジムを売っていたのは、
1987年とか88年だと思いますが、
台湾の工場の品が
いっぱい出てきた時期でした。

「プラスティックを、
 台湾から買いつけてくると安いんだ」
というのが、当時は、
輸入業者のあいだで話されていたから、
油圧パイプのついた
フィットネスマシーンを、
ワ−っと輸入してね。
だけど入ってくるものの2割ぐらいが不良。

製品は、ワンセットで
30キログラムあるんですけど、
例えば、ネジの穴に、
部品が一個入らないだけでも、
当然、お客さんから、
返品されてくるじゃないですか。

その商品の再生とかクレーム処理とか、
ぜんぶ業者として、
こちらがやらないといけなくて、
無理な規模まで来たので、
早い時期に撤退をしました。
糸井 食えてたほうの仕事を、辞めたんだ?
ドキドキ。
野口 ほんと彼の商売感覚は賢くて、
利益が出たら、
かならず次にまわしてまして。
儲かったらベンツを買うとかじゃなくて、
常に、投資の人なんですよ。
それが、わたしが22歳くらいの時だけど。
糸井 若いなあ。22歳かよそれで。
まだ、結婚はしていないよね。
野口 いや、すいません。
結婚は、入って1年目にしたんです。
糸井 じゃあ、
とても役に立つパートナーの若い子が、
嫁になったんだ?
野口 そうなんです。
糸井 ダンナ、ますます楽だね。
野口 そうなんですよ。
入って1週間目で、
彼がわたしのことを
すごく評価した事件があったんですけど。

えーと。
彼は、ラブホテル向けに、
「スーパーマン」と
「スーパーガール」という
商品を納品してたんです。
持続するよ、みたいな商品で、
筒状の容器にクリームが入ってたけど。

スーパーマンみたいなマーク、
やっぱりちょっと変えてあるんだけど。
佐藤 (笑)ちょっと違うんだ。
野口 まあ、かわいいマークがあって、彼は、
「俺が、これをつくっているんだよね」
とか言いながら、
ビニール袋とか
ポリバケツに入っているクリームを、
容器に詰めかえているんですよ。

「これ、こぼれるの大変だけど、
 ちょっと、詰めてもらえるかな?」
……彼が見本を見せてくれたけど、
なんか、スプーンで
1個ずつ詰めているんです。
非能率的で。

「これは、こうやったら、
 すごい早いんじゃないですか?」
ポリ袋を持ってきて、
そこにクリームを入れて
袋の先っちょを切って、
ぴゅっぴゅっとやったら、
10分くらいで終わった。
彼は、それを3時間かけていた(笑)。

わたしは手が器用なので、
手でやることに関しては、
彼が丸一日かけてやっていたことを、
1時間でできたりするんです。
糸井 彼、だいぶ抜けたところが(笑)。
野口 頭はいいんですけど、
サバイバルな知恵はないというか。
手先が不器用で……。
糸井 (笑)じゃあ、彼、助かっただろうねえ。
よかったね。
野口 そうなんです。

その時、わたしはきっと、
めちゃくちゃ、はたらきものだったんですね。

電話に出るわ、広告はつくるわで、
お客さんが来たらお茶入れてお話をするのも、
水商売のたまもので上手で。
どんなおじさんが来てもうまく話すし。
どんな人が来ても、社交的にやれるし。
ほんとに離せない人間だったと思いますよ。

ダンナは、ボーッとしてて、
「あれがやりたいんだよね」
とか言うから、わたしは、
「はい、わかりました」
と言って、パーッとやって。

(おわり)

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2001-10-24-WED

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