胸から伝わるっ。
ピーチ・ジョンがふくらんでいく物語。

第16回 こんな広告つくるの?!

糸井 仕事は、何をやっていたんですか。
野口 ダンナは、卸売をして浮いたお金で、
少しずつ広告のスペースを買ってきて、
オリジナルの通販を、『週刊宝石』とか
そういうところではじめようとしていたんです。
いわゆるピンク商品から、やろうとしてましたね。
例えば、腰にひくクッションで。
糸井 あ。
ケツに敷くとちょっとあがる、みたいな。
野口 ノリがよくなるとか。
佐藤 そんなの、あるんだ?
野口 あるんです。

でも、ダンナに
「ピンク商品を売るんだ」
と言われて、「ええ?」と思いましたよ(笑)。

いや、広告つくるのは、やりたかったんだけど、
でも、わたし的には、もう、
「『anan』の編集部に入るはずが、
 何で、こんな浮き輪みたいなものを、
 9800円で売る広告を考えなきゃいけないの?」
と思っていまして。

広告費、7万円でした。
版下まで、自分でつくってくれ、と言われて。
近所の写植屋を探して、コピーも自分で書いて。
「ナイトクッション」とか(笑)。
佐藤 テレるね。
野口 テレるよ。
でも、これもまたよい思い出。
コピーも描いて、版下を持っていって、
広告が雑誌に載るじゃないですか。
それで、注文の電話が来ると、
コンピュータなんかなかったから、
台帳をつくって、発送伝票を書いて……。
糸井 おお。ぜんぶやるんだ。
役に立つ女だねぇ。
野口 そうなんです(笑)。
今、ピーチ・ジョンには、
500人ぐらいスタッフがいますけれども、
わたしがみんなに威張れるのは、そこですね。

広告もつくるし、電話受けも、
発送もひとりでやっていたわけだから。
お客さんからの注文が、
1日1件くらいしか来なかった時からやっているので、
そこは、誇りですね。
糸井 商品は、どのくらい売れてましたか。
野口 不思議なんですけど、
通販の広告って、私の経験から言うと、
広告費相当の売り上げしか、ないんです。

7万円かけたら、9800円のものが7個売れる。
だから、原価も含めると、
ぜんぜん採算あわないんですよ。

まあ、ダンナにいろいろ仕込まれたので、
だんだん、通販のことも、覚えるようになりました。
はがきの申し込み用紙のひな型も、
ぜんぶ、つくらなくちゃいけないじゃないですか。
細かい所まで、徹底的に教えてもらったし。

でも、最初の2年間はケンカしましたね。
彼は、それまでのドロドロした通販広告
のイメージを捨てないから、
「白いところに文字を入れろ。
 とにかくもったいないから何でも書きこめ」
みたいなことを言うんです。
それがノウハウでもあるとは思うのですが、
「どうしてそんなに汚いものを、
 つくらなきゃならないんだろう?」
と思って、ほんとに、しょんぼりしちゃって。
糸井 「ナイトクッション」から連続して、いくつも?
野口 もう、いろんなものをやってますよ。
シークレットシューズもやりましたし、
最終的には、
さまざまなピンク商品のカタログまで、つくりましたもの。

バイブレーターとかもぜんぶ集めた
オトナのおもちゃのカタログもつくりました。
でも、巷の汚いカタログをわたしはつくれないし、
女の人にも売ったほうがいいと思っていたから、
あたりさわりなく、女の人にもイメージがふくらむ、
オトナのおもちゃのカタログを制作しました。
糸井 そろそろ、出てきたね。
「今までどおりじゃイヤだ」
みたいな気分は。
野口 何かをきっと、変えたいんです。

(つづきます)

2001-10-16-TUE

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