胸から伝わるっ。
ピーチ・ジョンがふくらんでいく物語。

 
第6回 リアルな野望とリアルなコピー。


糸井 カタログをつくる速度の問題はどう?
ものすごい忙しいんじゃないですか。
佐藤 はい、忙しいです。
糸井 あのカタログだと、
ビュンビュンやっていかなきゃ、いけないよね。
その恐怖って、なかった?
佐藤 でも、もともと、
わたしがコピーライターになって、
はじめての仕事が、
デパートのカタログだったんです。
その時には、ワープロもなかったので
山ほど原稿を書きましたから、
自分としては、量をこなした自信がありましたね。
糸井 ああ、そういう経験って、生きますよね。
佐藤 だから、
「たぶんやればできる」という気持ちがあるし、
「やればできるけど、やっちゃいけないこと」
も、わかりますから。

自分がやらないべき仕事は
まわりに振ったりして、
うまくやってるんですけど。
野口 こんなに整理して、
仕事をまわせる女の人は、いないですよ。
一日やることなすこと。

仕事したぶんだけ、ちゃんと遊ぶし。
いないよ、こんな人。

いまのカタログをつくる環境に関しては、
わたしはリンダに、
ほんとに悪いことしたな、
と思ってることがあるんです。

さっき、ちょっと言ったように、
彼女なら、作家になるチャンスもあるんです。
いまカタログをつくってる時間で、
たぶん小説とかを書けば、
いいものができるはずで・・・。
その時間をつぶして、
カタログつくってくれているんです、この人。
糸井 夫が妻に言うみたいなセリフだね。
野口さんがリンダに関して言うことって(笑)。
野口 (笑)そうですよ、ほんとに。

カタログのジャンルとしては、
英訳して世界中にばらまきたいぐらいです。
いまの野望としては。
それをやるにはどうしたらいいか、
ということを、毎日考えているんだけど。
糸井 世界進出?
野口 世界進出と言うよりも、
このすばらしいコピーを、
ほんとに世界的に読んでもらいたい。
それで、ものを、買ってもらいたい。
糸井 泣かせる女だなあ(笑)。
野口 泣かせるわけじゃなくて、野望、ほんとに。
糸井 野望の中にさ、心こもってるんだよ、妙に。
佐藤 そうですよね、すごいなと思う。
糸井 そこがすごいのよ。
野望ってだけなら、みんなが、
できもしないことを語ってるけど、
あなたの場合は、本気だもの。
野口 だってほんとに、
作家とかになれるチャンスが、いまないんですよ。
佐藤 わたしコピーライターのほうがいいです。
野口 まあでも、商売人にしてしまったわけで、
それほど、彼女のコピーを愛しているんです。
糸井 『PJ』って、リアルさがいいですよね。

ちょうどいま、ぼくは、
野口さんやリンダから、
リアルな話をそのまま聞いて
そのまま本のかたちに出したほうが、
夢物語を集めた企業神話本を作るよりも
ずっと魅力的に読めると感じているんです。

それと同じように、
『PJ』って、カタログにありすぎな、
ツルツルして無害な写真だけが
掲載されていることには、
絶対になっていないですよね。
それが、すごくいいなあと思います。

「それ、マズいんじゃない?」
ってくりかえすうちに、無難で
人畜無害のものだけができちゃうことが、
世の中でいちばんつまんないことだもん。

人間には体毛があるのに、
そこを無視したツルツルしたつくりものを
いっくら作ったって、いまの時代には、
「やらせだ」って、バレますよね。


(つづきます)

2001-09-04-TUE
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