胸から伝わるっ。
ピーチ・ジョンがふくらんでいく物語。

 
第1回 女の子のための下着通販。


ひとつ、ニュースがあります。

この秋から「ほぼ日ブックス」という名称で
ほぼ日刊イトイ新聞は、朝日出版社と組んで、
シリーズものの出版を行っていく予定なんですよ。

ちょっとおおげさなことを言えば、
このシリーズを通して、新書でも文庫でもない、
あたらしい本の姿を提示しようと考えています。

時期やラインナップや狙いなど、
くわしいことに関しては、
後日、お話をしようと思いますが、
とにかく秋から、内容・形態・流通上の
出版実験をさせてもらっちゃいます。

その「ほぼ日ブックス」第1弾の
ラインナップの筆頭にあたるコンテンツを、
今日から出版直前まで、まず、このコーナーで
じわりじわりと紹介してまいりますよーっ。

今日から数回は、
その、「ピーチ・ジョン」の話を
なぜいま、本にしたいと思うのかについて、
糸井重里が、動機を語ります。
では、どうぞ。

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【女の子のための下着通販】

ぼくはもともと、
「ピーチ・ジョン」という会社を
ぜんぜん、知らなかったんです。

ピーチ・ジョンの出している
女性の下着の通販カタログ『PJ』が、
毎号150万部も販売されていることも、
渋谷の109に出されているこの会社の店舗に
女の子が列を作って下着を買いにきていることも、
ぜんぜん、ぼくの耳に入ってきませんでした。

ほら、女の子用の下着って、男には、
あんまり買う機会がないじゃないですか。

ある時、社長の野口美佳さんのことを
「変わったヤツがいるけど、イトイさん会いませんか?」
なんて、紹介してくれる方がいらしたんです。
そうやって、偶然のようにお会いすることで、
ぼくは、はじめてピーチ・ジョンという会社に触れました。

その時の野口さんの話は、
率直に言って、とてもおもしろいものでした。

お会いした次の日の会議か何かで、
ぼくは、仕事の途中の雑談として、
「『ピーチ・ジョン』っていう、
 下着の通販会社の社長と話したんだけど、
 これが、おもしろかったのよ」
ってポロッと話してみたんですよ。

そしたら、その場にいた全員の女の人から、
興奮気味な反応が返ってきました。

「イトイさん、うらやましいな」
「ピーチ・ジョン、イイですよね」
「わたしも、PJで買ってるんです!」

女の人から、
そんなにも支持されていることや、
どれだけ有名なのかということなどは、
そこで詳しく教えてもらったんですよね。

話を聞いていると、
「通販で注文した下着が届いて
 家で封をあける時のよろこびって、
 他にはないワクワク感があります」
「カタログを見てるだけで、楽しいんです」
「かわいいうえに、安いですよ」
「店頭では何着も試着しにくいけど、
 ピーチ・ジョンでは通販だから
 そこがうれしいし、交換もできますし」
って、次々に話題が飛び出してきて・・・。

女の人にとって、下着のチョイスが、
どんなに楽しくて大切なものかもわかって、
「秘すれば花」と言いますか、
隠れたところにこそ文化が成熟するというか、
とにかく、ぼくの知らない世界が、
そこにはあるんじゃないかと思いました。

ちょっと雑談しただけでも
これだけ盛り上がるんだから、
女の子のための下着通販の世界について
本格的に話を伺うのは
きっとおもしろいだろうな、というのが、
ぼくが野口さんたちに話をうかがう
まずはじめの動機になったのかもしれません。

ブラジャーというテーマにしても、
ふだん、あちこちで、でかい声で
話すようなことじゃあ、ないですよね?
それだけに、
「こういう人たちが、こう考えて、
 こうやって、あなたに販売しているんです」
という話を聞ければ、すごく楽しいでしょうし。

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(次回に、つづきます)

2001-08-16-THU
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