胸から伝わるっ。
ピーチ・ジョンがふくらんでいく物語。

 
第13回 ミニクラブってところ。

野口 そのあと、わたしは20歳の時に、
うちのダンナと知りあいまして。
糸井 まだ、それが20歳の時なの?
佐藤 若かったんですよ、すごく。
糸井 話が若いよね。
野口 ナガイさんが亡くなって半年くらい経って、
わたしは、うちのダンナの会社に入ったの。
次の年の4月くらいだったと思うけど。
糸井 ダンナは、もう、仕事をしていたの?
野口 はい。
サラリーマンをやめて脱サラして、
会社つくったばっかりでした。
飲み屋で知りあったんです。
なんか私がデザインとかできるという話で、
「じゃあ、来ない?」って。
糸井 やっぱり、ダンナのことを、
「ステキ」とか思ったわけ?
野口 いやぜんぜん。
麻雀してた(笑)。
毎日いっしょに麻雀やってたんですけど。
糸井 ダチつながり?
野口 そうですね。
佐藤 その頃、ミカちゃんは
おもしろいことを言ってた。
若いのに、
歌舞伎町のことをよく知っていて。
糸井 変わってるよね?
佐藤 久しぶりに会って、わたしが、
「ブルーハーツが好き。ヒロトが大好き」
と言ったら、
「歌舞伎町には、ヒロトの本物がいる」
って言うの(笑)。
糸井 (笑)
佐藤 「知代さん、歌舞伎町には
 ヒロトの本物ばっかりだよ」
糸井 (笑)あはははは。
センスいいよな。
野口 当時、彼女に
「ブルーハーツ大好きで」と言われても、
わたしには、ブルーハーツが、
なんでいいのかわからなかったんです。
佐藤 「本物のヒロト」じゃなくて、
「ヒロトの本物」(笑)。
彼女の中では、雀荘を寝ぐらに
してるようなヒトのことですよ。
ヒロトのよさを、
ぜんぜんわかってない(笑)。
糸井 (笑)あはははは。
野口 わたしの行ってた雀荘に
通って打ちに来る人って、
やくざとかクラブのママとか、ほんとに
住んでるところのない人なんです(笑)。
糸井 「本物」たち。
野口 そう(笑)。
糸井 佐藤さんのあだなのリンダは、
『リンダリンダ』のリンダなの?
佐藤 そうです。
糸井 だいたい、なんで歌舞伎町にいるの?
野口 バイトしてたんです。
10人くらい女のコがいて、
20人くらいがシフトで入れ替わっている、
ミニクラブと言うのかな。
糸井 イラストレーションをやりながら、
野口さんは、そこに勤めてたの?
野口 そうです。
糸井 その頃のイラストの仕事って、
どういうのをやっていたかを、
もし、覚えていたら、教えてもらえる?
野口 何だろう?
おみやげ屋さんの
キャラクターのイラストとか、
あとは、企業誌のさし絵
みたいな仕事ですよね。
社内報のイラスト、とか。
糸井 郵貯のしくみ、
みたいなのを描いてたわけだ。
野口 そうそう。
糸井 でも、19歳や20歳で、
どうしてそういう仕事が入ったの?
野口 それは、ナガイさんがまわしてくれたり、
あとはおともだちですね。
みんな、ともだちが、まわしてくれて。
糸井 「イナカモンで、ひとりぼっち」
みたいなふりしてるわりには、
ともだちがいたの?
野口 ひとりぼっちじゃないです。
ともだちは、多かったですよ。
でも、女のコのともだちは、
ほとんどいなかった。

仙台あたりから、
女のコで大学に入るために上京する子って、
ほとんど、いなかったんです。
同じ高校からだと、3人くらいでした。

だけど、男のともだちは、
東京の大学に来るから。

仙台つながりのともだちから、
あちこちの子とかと知りあって、
という感じ。
糸井 歌舞伎町でバイトして、
ダンナに知りあって、
仕事は、イラストレーションを
少しやっていたんだ。
当時、食えていましたか?
野口 イラストでは食えてないですよ。
だから、バイトしてた。
糸井 そっか。
バイトのほうが安定してるんだ。

(つづきます)

2001-10-08-MON

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