胸から伝わるっ。
ピーチ・ジョンがふくらんでいく物語。

第5回 カタログを作るということ。


野口 カタログのコピーやスペックを書くのは、
ほんとに大変なんです。
1ページに文字がいっぱい入っているから、
ヘタすると、本一冊なんかよりも、
文字量が多かったりするんです。
糸井 PJのカタログを見て思うんだけど、
要するに、薄くても濃くても、
1ページに1コンセプト入ってるんです。

それは、すごいことだよ。

1コンセプトずつ、ページ数だけかけ算して、
しかも、書く速度も、求められてるんだよ。
ああいう仕事やれる人、そんなにいないよね。
野口 いないですよ。
糸井 あれの前の段階で、似たような
大冒険をした人たちが、1組あるんです。

それが、リクルート。

リクルートって、まだ、メディアが、
「メジャーのメディア」しかなかった時代から、
求人というジャンルを探して、
自前でメディア持っていましたよね。
営業の人と広告制作者が、
一緒に、スポンサーとつきあったでしょ。

リクルートの育ち方というのも、ぜんぶ、
「商品の中で、いちばん伝えたいことは何だろう?」
「企業が、いちばん言いたいことは何だろう?」
「お客さんは何を求めている?」
そういうことを真剣に考えるプロセスでしたよね。

だから、ふつうの広告代理店なんかよりも、
すごいなあ、と前から思っていたんです。
コピー修行なんかをやっているより、
コミュニケーション修行をやっているから。
その修行をしながら、
リクルートは、自前のメディアの中に、
コンセプトの塊を作っていた時代がありました。

通販というメディアも、
出はじめた時のリクルートのような
ジャンルのものだとぼくは思います。
自前のメディアを持って、商品やお客さんに、
真正面から向きあっているじゃないですか。

次はインターネットも、そうなると思います。
メディアそのものを新しく開発することと、
表現が変化していくことって、
いつでも、並行して一緒に来るんだよ、きっと。

だから、カタログを作るという仕事は、
たぶん、電通で売れてる子に頼んだとしても、
できないんだと思う。
野口 できないですよね、絶対に。
佐藤 わたしはPJのコピーを
表現する方法として
クチコミというカタチを取りました。

ミカちゃんが、わたしに、
一生懸命に言いたいことを話してくれるから、
そのまんま書きゃいいやって(笑)。

はじめは、小さな会社だったじゃないですか。
でも、小さい会社でもなんでも、
「このブラジャー、いいよ」
って、いちばん信頼している人が
推薦してくれたら、
「じゃあ、買ってみようかなあ?」
って、思いますよね。

その、いちばん信頼してる人に、
カタログがならないと、
ものは、売れないじゃないですか。

まずはわたしを、
説得して、欲しいな、と言わせようとして
しゃべっているんだから、
そのまま、カタログにしたらいいと・・・。
糸井 この2人の関係を、
次の人にバトンタッチするということだよね?
佐藤 そうです。
そのまま、クチコミのままで、
コピーにしようと思ったんです。
でも、わたしは、
楽屋受けみたいの、好きじゃないんですよ。

内輪受けで終わらしてしまうのは、
広告で、いちばんやっちゃいけないことだ、
と思ってましたから。

そこで、
「ミカちゃんが、ややプライベートな感覚で
 下着のネーミングをした場合、
 コピーでうまくコンセプトにつなげる」
とか、そういうことは、
けっこう知恵を使ったと思うんですね。
糸井 なるほどね。
自由でいいし、本音でいいけれども、
清潔な服装で人の前に立とう、みたいなことだよね。
本音だけど、洗いがきいてる、というか。
佐藤 そう。
散らかってても不潔じゃない、みたいなことです。

ミカちゃんの言いたいことは、わかりますけど、
そのまま書いただけでは、広告にはなりませんし。

もし、ミカちゃんに、
「やっぱり、自分でやったほうがいいや」
と言われたら、もう、おしまいですから、
そこのところはがんばった時期があるんです。

いまだに、外部に向けては、
「うちのコピーは、
 社長の言った言葉をそのままコピーにしています」
と、広報に言わせてますよ。
野口 うちのお客さんの中には、
わたしがコピー書いてると思ってる人がいるの。
糸井 それは、ある意味でそうなんだよね。
リンダが、そのくらいに思えるまで、
作っているんだから。
佐藤 それが本当でも、いいんです。
糸井 野口さんがコピーを書いている、というのは、
事実じゃなくても真実だ、みたいな。
PJを読んでいると、
「ああ、あいつの会社だなあ」って思うもの。

おもしろいよね、PJのカタログ。
ページをめくってると、ここで遊びを入れて、
ここのところからは、キリッとさせて、とか、
売るぞと主張したりだとか、すごくいいわ。
佐藤 すごく考えてるんですよ。
わたしの子分みたいのとふたりで、
一生懸命に、やってるんですけれども。
糸井 ふたりで!
一生懸命、やってるんだねえ。


(つづきます)

2001-08-31-FRI
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