胸から伝わるっ。
ピーチ・ジョンがふくらんでいく物語。

 
第4回 広告ほど真実はない。

※いよいよ、今日から
 「ピーチ・ジョン」の野口美佳社長と、
 カタログのクリエイティブディレクターである
 佐藤知代さんへのインタビューが、はじまります。
 もしかしたら逆説に聞こえるかもしれない
 『広告ほど真実はない』というタイトルでスタート!

糸井 野口さん、こんにちは。
野口 どうも。
こちらが、前にお話をした、
ピーチジョンのコピーライターの佐藤です。
ふだん、リンダって呼んでます。
糸井 リンダさん、はじめまして。
佐藤 どうもこんにちは。
野口 もともと、わたしは、
リンダがうちのカタログに書くコピーを、
ピーチジョンのお客さんに読んでもらいたくて
やっているのかもしれないぐらいなんですよ。
糸井 へえ〜。
それ、いいなあ。
野口 この人の書くくらい楽しいコピーだったら、
読んでるだけでも、楽しいじゃないですか。
いかにコピーを読ませるか、という
カタログを、つくりたいなあと思っているんです。
ものを買いたいという楽しさとは別に、
カタログを読んで元気になってほしいな、
という野望を持っちゃって。
糸井 それは、『通販生活』を作っている
カタログハウスのナイスな社長が言ってることと、
おんなじですよね。
「なんで、ものを黙って売るのよ」っていう。

ほかのカタログ会社が、
カタログコピーに冗舌にならずに
黙って、お客さんに何を見せたかと言うと、
「けだるい午後」とか、
何も言ってないのと、
おんなじようなことを、書いてるのね(笑)。

「それじゃあ、何も伝えていないじゃん」
って、ぼくなんかは、思っちゃいますけど。
野口 (笑)そうなんです。
そういう点については、
リンダとふたりで、とことん話しあいました。

他社のカタログを見ながら、
「こういうのは嫌だからやらないで欲しい」
と、今年の年頭に、社員へ向けて話もしまして。

「シャンパングラス片手に、
 大きなジュエリーとかをつけてる
 ブラジャーの写真は、絶対に禁止です!」とか(笑)。
糸井 (笑)
佐藤 それじゃ、ひいちゃうもんね。
野口 うん。
でもほんとに、他社のカタログって、
そんなのばっかりなんですよね。
バラの花束を持っていたりとか。
糸井 わかるわ。なんか、
「読者をナメてる」
って感じがするんだよね。

「けだるい午後」にしても、
「女は、けだるい午後みたいなものが好きで、
 あとは、何も考えていないんだろう」
みたいな勝手な思いこみがある人が、
あんなもんを書けたんだろうなあ、きっと。
野口 「さあ、鏡に向かって、
 きのうとは違うきょうのわたし」
「シンプル&ナチュラルなデイリーウェア」
「恋する予感のランジェリー」・・・。
わたし、そういう例を無限に出せますよ(笑)。
糸井 (笑)さすが本職。
そういう例が、ポンポン出てくる!
ほとほと嫌だと思っていたんだろうね。
それは同時に、ヌードグラビアとかもそうなのよ。

いっつも、
「ミカ、18歳」
みたいのが、書いてあるじゃん。
「はちきれそうなボディで、悩殺」みたいに。
それも、ナメてるよね、読者を。
野口 そうそう。
それでよく、クライアントもOKするよな、
とか、ほんとに思いますよ。

カタログは、広告と雑誌の
すれすれのラインにありますよね。
わたしたちのところにも、
「PJに書いてあることは誇大広告だ」
なんて、クレームが来たりも、するんですよ。

でも、わたしは、
「広告ほど真実はない」
と思っているんですね。
絶対にウソは書けないし、
ほんと、正直に書いています。

雑誌にライターが書くのとでは、
責任感が、ぜんぜん違うんですよ。
それは、あらゆる企業の広告が、
そうだと思います。

広告というのはもともとウソを書けないものなのに、
どうして誇大広告とか言われなければいけないのかな、
と感じることが、多いんです。

雑誌なんかだと、
「これを飲むとヤセるよ」
とか平気で書けるけど、そういうことを、
広告では、絶対に書けませんから。
佐藤 書けないですよね。
でも、ミカちゃん(野口さん)がそうやって
コピーを大事にしてくれるのが、うれしかった。

「わたしは、コピーを読ませたいから、
 コピーが読めるデザインじゃなきゃこまる」
そう、デザイナーに向けて、
はっきり言ってくれたことがありまして。
そこまで思ってくれているんだったら、
わたしも、ちゃんと書こうと思いました。
糸井 そう言ってくれると、
コピーライターとしては、
書ける気持ちになるよね!
佐藤 はい。
野口 リンダは、ほんとは、例えば、
なろうと思えば作家になれるぐらい、
豊かな文章を書ける人なんですよ。
「カタログで、いいのかなあ」
とか、わたしとしては、思ってたんです。
リンダには、すごい才能があるからね。

(次回に、つづきます)

2001-08-28-TUE
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